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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C |
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管理番号 | 1323406 |
審判番号 | 不服2015-21807 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-08 |
確定日 | 2017-01-24 |
事件の表示 | 特願2010-258041号「タイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年6月7日出願公開、特開2012-106668号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年11月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりある。 平成26年4月22日付け :拒絶理由の通知 平成26年7月1日 :意見書、手続補正書の提出 平成27年1月29日付け :拒絶理由(最後)の通知 平成27年4月6日 :意見書、手続補正書の提出 平成27年9月17日付け :補正の却下の決定、拒絶査定 平成27年12月8日 :審判請求書、手続補正書の提出 平成28年8月23日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という 。)の通知 平成28年10月31日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年10月31日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 熱可塑性樹脂材料により形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、 該熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含み、 該タイヤ骨格体の体積抵抗率が5.0×10^(6)Ω・cm?5.0×10^(9)Ω・cmの範囲であり、 該タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を有し、 該タイヤ骨格体はリン酸エステル系のイオン導電剤である帯電防止材料を、該タイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の全質量に対し1?10質量%含有する、タイヤ。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物である引用文献1又は2に記載された発明及び引用文献3に記載の技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2003-104005号公報 引用文献2:特開2003-104008号公報 引用文献3:特開2008-308083号公報 2.原査定の理由の判断 (1)引用文献の記載事項及び引用発明 引用文献1には、「空気入りタイヤ」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 ア.「【請求項1】 左右一対のビード部間に跨がるタイヤ骨格部材を、撚りコードを用いることなく、トレッド部からビード部にかけて複数種類の高分子材料から構成すると共に、前記タイヤ骨格部材の外周上にトレッド層を積層した空気入りタイヤ。」 イ.「【0013】図1及び図2は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間に跨がるタイヤ骨格部材4は、撚りコードを用いることなく、即ち、抗張材としての撚りコードを排除しつつ、トレッド部1からビード部3にかけて複数種類の高分子材料から構成されている。つまり、タイヤ骨格部材4は、タイヤ子午線断面において、ヤング率が異なる複数の高分子材料層4A,4B,4C,4D,4E,4F,4Gを備えている。これら高分子材料層4A?4Gはそれぞれタイヤ周方向に連続的に延在している。ビード部3において、タイヤ骨格部材4には環状のビードコア5が埋設されている。このビードコア5は金属ワイヤのようにタイヤ骨格部材4を構成する高分子材料よりも引張り強度が高い材料から構成すると良い。」 ウ.「【0040】本発明タイヤA:図2に示すように、左右一対のビード部間に跨がるタイヤ骨格部材を、撚りコードを用いることなく、トレッド部からビード部にかけて複数種類の高分子材料(エラストマー組成物)から構成すると共に、タイヤ骨格部材の外周上にゴム組成物からなるトレッド層を積層した。 【0041】エラストマー組成物は、表2の配合比に基づいて作製した。先ず、表2に示す配合比を用いてサンプルを作製した。ポリエステル樹脂ペレットを2軸混練押出機の第1の投入口より投入し、溶融混練した後に、第2の投入口よりポリマー成分のペレットを投入し、ポリエステル樹脂中にゴム成分を微細に分散させた後、第3の投入口より架橋剤成分を表記の比率にて投入し、ゴム成分を動的に架橋させ、ゴム相を固定した。このようにして得られた熱可塑性のエラストマー成分を2軸混練押出機の先端よりストランド状に押出し、水冷で冷却した後、樹脂用ペレタイザーでペレット化した。各材料層に使用するエラストマー組成物のヤング率は表2の通りである。」 これらの記載事項ア.?ウ.及び図面内容を総合し、本願発明の発明特定事項に倣って整理すると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明1」という。)。 「ポリエステル樹脂中にゴム成分を微細に分散させた熱可塑性エラストマー組成物から構成された、左右一対のビード部3、3間に跨がるタイヤ骨格部材4を有する空気入りタイヤにおいて、撚りコードを用いることなくタイヤ骨格部材4を構成した、空気入りタイヤ。」 (2)対比 ア.本願発明と引用発明1とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、引用発明1の「ポリエステル樹脂中にゴム成分を微細に分散させた熱可塑性エラストマー組成物」は本願発明の「熱可塑性樹脂材料」に相当し、以下同様に、「左右一対のビード部3、3間に跨がるタイヤ骨格部材4」は「環状のタイヤ骨格体」に、「空気入りタイヤ」は「タイヤ」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1の「ポリエステル樹脂中にゴム成分を微細に分散させた熱可塑性エラストマー組成物」は、本願発明の「ポリエステル系熱可塑性エラストマー」に相当するから、引用発明1の「ポリエステル樹脂中にゴム成分を微細に分散させた熱可塑性エラストマー組成物から構成された」という構成は、本願発明の「該熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含み」という構成を充足する。 したがって、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「熱可塑性樹脂材料により形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、 該熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含む、タイヤ。」 そして、本願発明と引用発明1とは、以下の点で相違している。 <相違点1> 本願発明では、「該タイヤ骨格体の体積抵抗率が5.0×10^(6)Ω・cm?5.0×10^(9)Ω・cmの範囲であり」「該タイヤ骨格体はリン酸エステル系のイオン導電剤である帯電防止材料を、該タイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の全質量に対し1?10質量%含有する」のに対し、 引用発明1では、そのように特定されていない点。 <相違点2> 本願発明では、「該タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を有し」ているのに対し、 引用発明1では、撚りコードを用いることがない点。 (3)判断 事案にかんがみ、相違点2について検討する。 例えば、国際公開第2010/095654号(段落【0046】及び図1A、2、5等参照)に記載されるように、タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を設けるという技術は、従来周知の技術である。 しかしながら、引用文献1の段落【0004】等に記載されるように、引用発明1の「空気入りタイヤ」は、本願発明の「補強コード部材」に相当する「撚りコードを用いることなくタイヤ骨格部材4を構成」することを発明の課題としている。 そうすると、タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を設けるという周知の技術を、引用発明1に適用することには、明らかに阻害要因があるといえる。 したがって、引用発明1において、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。 なお、引用文献3は、タイヤに用いる導電性ゴム4の体積抵抗率を1×10^(8)Ω未満とするという技術的事項を開示するものであり、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とは関連しない文献である。 また、引用文献2にも、熱可塑性樹脂材料により形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤの発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているが、引用発明1と同様に、撚りコード(「補強コード部材」に相当する。)を用いることなくタイヤ骨格体を構成することを発明の課題としているので(段落【0005】等参照)、引用発明2において、タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を設けることには、阻害要因があるといえる。 (4)小括 したがって、引用発明1及び2において、少なくとも相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは当業者にとって容易とはいえないから、本願発明は、当業者が引用発明1又は2及び引用文献3に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載の技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:国際公開第2010/095654号 刊行物2:特許第3462503号公報 2.当審拒絶理由の判断 (1)刊行物の記載事項及び刊行物発明 ア.刊行物1には、「タイヤ、及びタイヤの製造方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 (ア)「【0037】 図1Aに示すように、タイヤ10は、リム20のビードシート21及びリムフランジ22に接触する一対のビード部12(図1B参照)、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16(外周部)からなる環状のタイヤケース23(タイヤ骨格体の一例)を備えている。 【0038】 ここで、本実施形態のタイヤケース23は、単一の樹脂材料で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤケース23の各部位毎(サイド部14、クラウン部16、ビード部12など)に異なる特徴を有する樹脂材料を用いてもよい。 【0039】 樹脂材料としては、ゴム様の弾性を有する熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができる。」 (イ)「【0046】 図1A及び図2に示すように、クラウン部16には、タイヤケース23を形成する樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26が、タイヤケース23の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部が埋設された状態で螺旋状に巻回されて補強コード層28(図2で破線で示す)が形成されている。また、補強コード26は、埋設された部分が樹脂材料と密着した状態となっている。さらに、補強コード26は、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いるとよい。なお、本実施形態の補強コード26はスチール繊維を撚ったスチールコードである。また、補強コード26の埋設量Lは、補強コード26の直径Dの1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることがさらに好ましい。そして、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されることが最も好ましい。補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/2を超えると、補強コード26が寸法上、埋設部から飛び出し難くなる。また、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されると、表面(外周面)がフラットになり、上に部材が載置されてもエア入りし難くなる。なお、補強コード層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。」 (ウ)「【0048】 なお、本実施形態では、一例としてタイヤケース23を樹脂材料のうちの熱可塑性材料(例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなど)で形成している。」 (エ)「【0066】 このようにして、加熱した補強コード26をクラウン部16の外周面に埋設しながら巻き付けることで、タイヤケース23のクラウン部16の外周側に補強コード層28が形成される。」 以上の記載事項から次の事項が認定できる。 (オ)上記(イ)には、「図1A及び図2に示すように、クラウン部16には、タイヤケース23を形成する樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26が、タイヤケース23の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部が埋設された状態で螺旋状に巻回されて補強コード層28(図2で破線で示す)が形成されている。」と記載され、上記(エ)には、「このようにして、加熱した補強コード26をクラウン部16の外周面に埋設しながら巻き付けることで、タイヤケース23のクラウン部16の外周側に補強コード層28が形成される。」と記載され、併せて図1A、5を参照すると、補強コード26は、タイヤケース23の外周部に周方向に巻回されて補強コード層28を形成するものと認められる。 これらの記載事項(ア)?(エ)、認定事項(オ)及び図面内容を総合し、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「刊行物1発明」という。)。 「熱可塑性エラストマーにより形成された環状のタイヤケース23を有するタイヤ10であって、 タイヤケース23の外周部に周方向に巻回されて補強コード層28を形成する補強コード26を有する、 タイヤ10。」 イ.刊行物2には、「帯電性を改良したゴム組成物及びそれを利用した空気入りタイヤ」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)第4頁右欄4行目から同頁同欄10行目 「本発明の目的は、白色充填剤等を用いたゴム組成物においてゴムの基本物性に影響を与えず、ゴム用配合剤との相互作用で悪影響が出たり帯電防止効果がなくなることがない帯電性を改良したゴム組成物及びそのゴム組成物を空気入りタイヤに利用した場合にも帯電性を改良し、かつ高度にウェットスキッド性能とRRが両立した空気入りタイヤを提供することにある。」 (イ)第5頁左欄50行目から同頁右欄17行目 「また、本発明の空気入りタイヤは、上記記載の帯電性を改良したゴム組成物を空気入りタイヤのトレッド部に用いたことを特徴とする。」 (ウ)第6頁左欄25行目から同頁同欄26行目 「本発明で用いる非イオン系界面活性剤又はリン酸エステルは、帯電性を改良するために配合するものである。」 (エ)第24頁左欄45行目から同頁同欄49行目 「実施例52?60は、本発明範囲のリン酸エステル(A)?(G)を配合したものであり、高度にウェットスキッド性能とRRが両立すると共に、体積抵抗値が小さくなるので導電性となり、静電気の発生が抑制されることが判明した。」 (2)対比 ア.本願発明と刊行物1発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて刊行物1発明の「環状のタイヤケース23」は、本願発明の「環状のタイヤ骨格体」に相当し、以下同様に、「補強コード層28」は「補強コード層」に、「補強コード26」は「補強コード部材」に、「タイヤ10」は「タイヤ」に、それぞれ相当する。 イ.本願明細書の段落【0028】には、「本発明における熱可塑性樹脂材料は、熱可塑性エラストマーを含有する。本発明において『熱可塑性エラストマー』とは、熱可塑性樹脂の一態様であり」と記載されているから、刊行物1発明の「熱可塑性エラストマー」は、本願発明の「熱可塑性樹脂材料」に相当する。 したがって、刊行物1発明の「熱可塑性エラストマーにより形成された環状のタイヤケース23を有するタイヤ10であって」という構成と、本願発明1の「熱可塑性樹脂材料により形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、該熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含み」という構成は、「熱可塑性樹脂材料により形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、該熱可塑性樹脂材料が、熱可塑性エラストマーを含み」という構成の限度で一致する。 したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致している。 <一致点> 「熱可塑性樹脂材料により形成された環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、 該熱可塑性樹脂材料が、熱可塑性エラストマーを含み、 該タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強コード部材を有する、 タイヤ。」 そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。 <相違点a> 本願発明では、「該熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含み、該タイヤ骨格体の体積抵抗率が5.0×10^(6)Ω・cm?5.0×10^(9)Ω・cmの範囲であり」かつ「該タイヤ骨格体はリン酸エステル系のイオン導電剤である帯電防止材料を、該タイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の全質量に対し1?10質量%含有する」のに対し、 刊行物1発明では、そのように特定されていない点。 (3)判断 相違点aについて検討する。 上記(1)イ.(ア)?(エ)及び図面内容を総合すると、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「引用文献2に記載の技術的事項」という。)。 「帯電性を改良するためにリン酸エステルが配合されたゴム組成物をタイヤトレッド部に用いた空気入りタイヤ。」 引用文献2に記載の技術的事項の「リン酸エステル」は、タイヤトレッド部の帯電性を改良するために配合されるものであるから、帯電防止材料であるといえる。 また、通常、リン酸エステルはイオン導電剤として機能するから(必要であれば、特開平8-110711号公報の段落【0026】、【0036】、特開2006-71027号公報の段落【0016】等参照)、引用文献2に記載の技術的事項の「リン酸エステル」もイオン導電剤として機能するものと認められる。 したがって、引用文献2に記載の技術的事項の「リン酸エステル」は、本願発明1の「リン酸エステル系のイオン導電剤である帯電防止材料」に相当する。 しかしながら、本願明細書の段落【0015】、【0112】、【表1】に記載されるように、本願発明は、「該熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含み」かつ「該タイヤ骨格体はリン酸エステル系のイオン導電剤である帯電防止材料を、該タイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の全質量に対し1?10質量%含有する」という構成により、「該タイヤ骨格体の体積抵抗率が5.0×10^(6)Ω・cm?5.0×10^(9)Ω・cmの範囲」となるように、タイヤ骨格体の帯電防止性を確保しつつも、tanδの増大を抑制するという作用効果を有しているところ、タイヤトレッド部の帯電性改良を目的とする引用文献2には、タイヤ骨格体の帯電防止性とtanδの増大抑制を両立するという観点については何ら記載も示唆もされていない。 そうすると、仮に、引用文献2に記載の技術的事項を、刊行物1発明に適用したとしても、タイヤトレッド部の帯電性改良のために、刊行物1発明の「タイヤ10」のトレッド部にリン酸エステルを配合するという構成を想到するにとどまり、相違点aに係る本願発明の発明特定事項である「該熱可塑性樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含み、該タイヤ骨格体の体積抵抗率が5.0×10^(6)Ω・cm?5.0×10^(9)Ω・cmの範囲であり」かつ「該タイヤ骨格体はリン酸エステル系のイオン導電剤である帯電防止材料を、該タイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の全質量に対し1?10質量%含有する」という構成までをも想到することは、当業者にとって容易であるとはいえない。 以上から、刊行物1発明において、相違点aに係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。 (4)小括 したがって、刊行物1発明において、相違点aに係る本願発明の発明特定事項を想到することは当業者にとって容易とはいえないから、本願発明は、当業者が刊行物1発明及び刊行物2に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-01-10 |
出願番号 | 特願2010-258041(P2010-258041) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 柳楽 隆昌 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
森林 宏和 平田 信勝 |
発明の名称 | タイヤ |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 福田 浩志 |