• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1323446
異議申立番号 異議2016-700032  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-15 
確定日 2016-10-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5749980号発明「吸水性樹脂組成物、吸収体及び吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5749980号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?4]について訂正することを認める。 特許第5749980号の請求項2ないし4に係る特許を維持する。 特許第5749980号の請求項1に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5749980号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成23年5月30日に特許出願され、平成27年5月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 株式会社 日本触媒(以下、「異議申立人」という)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年3月7日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月25日付け(受理日:同年4月27日)に意見書が提出され、同年5月30日付けで当審より取消理由通知書(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年7月25日付け(受理日:同年7月26日)で意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、同年9月9日付け(受理日:同年9月12日)で異議申立人から特許法第120条の5第5項に基づく通知書に対する意見書の提出があったものである。


第2 訂正の適否

1.訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「サポニンを含む植物抽出物が、キラヤ又はユッカの抽出物である請求項1記載の吸水性樹脂組成物。」
とあるのを
「吸水性樹脂と、サポニンを含む植物抽出物とを含有し、
サポニンを含む植物抽出物がキラヤの抽出物であり、その使用量が、吸水性樹脂100質量部に対して0.01?5質量部である、
吸水性樹脂組成物。」
に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2に記載の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する吸収体。」
とあるのを
「請求項2に記載の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する吸収体。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落【0012】に
「本発明の吸水性樹脂組成物は、吸水性樹脂と、サポニンを含む植物抽出物とを含有する。サポニンを含む植物抽出物の使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して0.01?5質量部である。サポニンを含む植物抽出物は、キラヤ又はユッカの抽出物が好ましい。」
とあるのを
「本発明の吸水性樹脂組成物は、吸水性樹脂と、サポニンを含む植物抽出物とを含有する。サポニンを含む植物抽出物はキラヤの抽出物であり、その使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して0.01?5質量部である。」
に訂正する。

(5)訂正事項5
明細書の【0034】に「・・・限定されるものではない。」と記載されている後に、「なお、実施例1?4のうち実施例1および2は、実施例ではなく参考例である。」との記載を追加する訂正をする。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
(1)訂正事項1及び訂正事項3
訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、訂正事項3は、訂正事項1に伴い引用する請求項を減じるものであるから、同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、一群の請求項ごとにされたものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項の記載を独立形式に改めた上で、「植物抽出物」を「キラヤの抽出物」に限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、一群の請求項ごとにされたものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項4及び訂正事項5
訂正事項4及び訂正事項5は、発明の詳細な説明の記載を訂正事項2での訂正に対応するように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、一群の請求項ごとにされたものである。また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。さらに、訂正事項4及び訂正事項5は、願書に添付した明細書の訂正をする場合であるが、当該明細書の訂正に係る請求項のすべてについて訂正を請求している。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1-4]について訂正を認める。


第3 本件特許に係る発明

上記第2 3.のとおり、本件訂正請求による訂正は認容されるので、特許第5749980号の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、平成28年7月25日付け訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】(削除)

【請求項2】
吸水性樹指と、サポニンを含む植物抽出物とを含有し、
サポニンを含む植物抽出物がキラヤの抽出物であり、その使用量が、吸水性樹脂100質量部に対して0.01?5質量部である、
吸水性樹脂組成物。

【請求項3】
請求項2に記載の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する吸収体。

【請求項4】
液体透過性シートと液体不透過性シートの間に請求項3記載の吸収体が保持されている吸収性物品。」


第4 平成28年3月7日付けの取消理由通知について

当審において平成28年3月7日付けで通知した取消理由の概要は、

1.本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、本件特許の出願日前に頒布された特開2004-156010号(平成28年3月7日付けの取消理由通知に係る「甲1」。異議申立書の証拠方法である甲第1号証。以下この通知においても「甲1」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない(以下、「取消理由1」という。)、

2.本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件特許の出願日前に頒布された米国特許出願公開第2003/0120228号明細書(平成28年3月7日付けの取消理由通知に係る「甲4」。異議申立書の証拠方法である甲第4号証。以下この通知においても「甲4」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない(以下、「取消理由2」という。)、

というものである。


第5 当合議体の判断

1.取消理由1について
(1)甲1に記載された発明
甲1には、特許請求の範囲の請求項1、13?14、19、【0030】、【0100】、【0103】、実施例1?7、14?21の記載からみて、以下の2つの発明(以下、総称して「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「半発酵茶の抽出物および/または発酵茶の抽出物と、表面部分および/またはその近傍が架橋剤により表面処理された吸水性樹脂とを含み、半発酵茶の抽出物および/または発酵茶の抽出物の使用量が、吸水性樹脂固形分100質量部に対して0.01?5質量部である吸収体組成物、及び親水性繊維を含む吸収体。」 (以下「甲1吸収体発明」という。)

「半発酵茶の抽出物および/または発酵茶の抽出物と、表面部分および/またはその近傍が架橋剤により表面処理された吸水性樹脂とを含み、半発酵茶の抽出物および/または発酵茶の抽出物の使用量が、吸水性樹脂固形分100質量部に対して0.01?5質量部である吸収体組成物、親水性繊維を含む吸収体、液透過性を有する表面シート、および液不透過性を有する背面シートを備える吸収性物品。」 (以下「甲1吸収性物品発明」という。)

(2)対比・判断
ア 本件特許発明3
本件特許発明3と甲1吸収体発明とを比較すると、吸収体の吸水性樹脂組成物が「サポニンを含む植物抽出物」として、本件特許発明3は「キラヤの抽出物」を含むことを特定するのに対して、甲1吸収体発明は、「半発酵茶の抽出物および/または発酵茶の抽出物」を含むことは特定しているものの、「キラヤの抽出物」を含むことが特定されていない点で、少なくとも異なる。
そうしてみると、本件特許発明3は甲1発明と相違することは明らかである。

イ 本件特許発明4
本件特許発明4と甲1吸収性物品発明とを比較すると、吸収体の吸水性樹脂組成物が「サポニンを含む植物抽出物」として、本件特許発明4は「キラヤの抽出物」を含むことを特定するのに対して、甲1吸収体発明は、「半発酵茶の抽出物および/または発酵茶の抽出物」を含むことは特定しているものの、「キラヤの抽出物」を含むことが特定されていない点で、少なくとも異なる。
そうしてみると、本件特許発明4は甲1発明と相違することは明らかである。

ウ 小括
本件特許発明3、本件特許発明4は、甲1発明であるとすることができない。

2 取消理由2について
(1)甲4に記載された発明
甲4には、特許請求の範囲の請求項1、12、15?18、[0029]、[0034]、[0063]の記載からみて、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
「吸水性樹脂と、ユッカ抽出物を含む組成物とを含有し、該組成物がユッカ抽出物を0.01?1重量%含む吸収体。」

(2)対比・判断
ア 本件特許発明2について
(ア)対比
本件特許発明2と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「ユッカ抽出物」は、本件特許の明細書の【0018】の記載からみて、本件特許発明2における「サポニンを含む植物抽出物」であるといえる。そして、甲4発明における「吸収体」は、吸水性樹脂を含んでいることから、本件特許発明2における「吸水性樹脂組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲4発明とは「吸水性樹脂とサポニンを含む植物抽出物とを含有する吸水性樹脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)サポニンを含む植物抽出物に関して、本件特許発明2においては「キラヤの抽出物」であるのに対して、甲4発明においては「ユッカ抽出物」である点。
(相違点2)サポニンを含む植物抽出物の使用量に関して、本件特許発明2においては「吸水性樹脂100質量部に対して0.01?5質量部である」のに対し、甲4発明においては、「ユッカ抽出物を含む組成物の0.01?1重量%」であり、吸水性樹脂に対する使用量が不明である点。

(イ)判断
まず、相違点1について検討する。
甲4には、以下の記載がある。(なお、以下の仮訳は合議体が作成した。)
「Diaper rash is caused by several factors, one of which is prolonged exposure to moisture. Moisture is conducive to bacteria growth and promotes skin maceration and breakdown which allows the bacteria to infect the damaged skin. ・・・Further, some bacteria produce ammonia through degradation of urine. Ammonia is used as a nutritional substrate by bacteria, resulting in growth of more bacteria and production of more ammonia in an increasing detrimental cycle. ・・・Thus, the production of ammonia causes several detrimental effects which can lead to diaper rash. 」([0002]、仮約「おむつかぶれはいくつかの原因で引き起こされるが、その1つが湿気へ長期間さらされることにある。湿気はバクテリアの成長を促進して、バクテリアがダメージを受けた皮膚に感染することを可能にする皮膚の浸軟と損傷を促進する。・・・さらに、いくつかのバクテリアが尿の分解を通してアンモニアを作り出す。アンモニアは、バクテリアによって栄養の基質として使用され、増大する有害なサイクルの中で、より多くのバクテリアの成長とより多くのアンモニアの生産をもたらす。・・・したがって、アンモニアの生産はおむつかぶれにつながるいくつかの有害な作用を引き起こす。」)

「Increases in ammonia also increase offensive odors which can be embarrassing particularly for incontinent adults. Thus, reduction of ammonia production from urine is advantageous for several reasons. Accordingly, there is a need for an absorbent article which reduces production of ammonia.」([0003]、仮約「アンモニアの増加は、特に尿失禁の成人にとって恥ずかしくなる嫌な匂いも増加する。したがって、尿からのアンモニア生産の減少はいくつかの理由で好都合である。結果的に、アンモニアの生産を減らす吸収性物品の必要性が存在する。」)

「In accordance with the present invention, it has been discovered that compositions containing a Yucca sp. extract (hereinafter yucca extract), and more particularly Yucca schidigera are highly effective urease inhibitors (i.e., substances which inhibit production of ammonia from urine) when the compositions positioned in or are applied to an absorbent article. 」([0010]、仮約「本発明のとおり、それはユッカ種抽出物(以下、ユッカ抽出物という)、特にとりわけYucca schidigeraを含む組成物が、吸収性物品中に設置あるいは吸収性物品に適用された時に、高く効果的なウレアーゼ阻害剤(すなわち、尿からアンモニアを生産することを阻害する物質)であることを見いだした。」)

甲4において、ユッカ抽出物がウレアーゼ阻害作用を有するためにアンモニアの生産を抑えることが記載されているが、ユッカ抽出物以外のものが同様の作用を持つことは記載されていないし、示唆もされていない。
この点に関して、異議申立人は、本願明細書の記載によれば、「キラヤ抽出物がユッカ抽出物と比べて格別顕著な効果を奏するとは認められ」ず、また、サポニンを含む植物抽出物には尿に対する消臭作用等があることが知られているから、甲4発明の効果は「ウレアーゼ阻害効果に加えてサポニンに由来する」効果でもあり、キラヤ抽出物とユッカ抽出物とはサポニンを含有する植物抽出物として置換可能な同等物であることが周知であるから、「甲4発明においてユッカ抽出物に換えてキラヤ抽出物を用いることは容易なこと」である旨を主張する(異議申立人が平成28年9月9日に提出した意見書(2-2-2-)(イ))。しかしながら、甲4の上記の摘示事項での記載によれば、甲4発明におけるユッカ抽出物はそのウレアーゼ阻害活性に着目して配合されていることは明らかであるから、当業者が、甲4発明におけるユッカ抽出物に換えて、ウレアーゼ阻害活性を有することが明らかではないキラヤ抽出物を配合することを想到するものとすることはできない。
したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲4発明、すなわち甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

イ 本件特許発明3、本件特許発明4について
本件特許発明3は、本件特許発明2に係る吸水性樹脂組成物を含有する吸収体に係るものであり、本件特許発明4は、本件特許発明3に係る吸収体を保持する吸収性物品に係るものである。
甲4には、吸収体が親水性繊維と、ポリアクリル酸などの高吸収性材料を含むこと([0029]及び[0034])並びに液透過性を有するライナーと外部カバーの間に吸収体が位置すること(請求項1)が記載されているが、上記のアのとおり、本件特許発明2は甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明3、本件特許発明4も同様に、甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

ウ 小括
本件特許発明2ないし4は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

3.まとめ
上記のとおり、取消理由1、取消理由2によっては、本件特許発明2ないし4を取り消すことができない。


第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由1、取消理由2によっては、本件請求項2ないし4に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項2ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1は訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
吸水性樹脂組成物、吸収体及び吸収性物品
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつ適度な吸水速度を有し、吸収性物品に使用した場合の逆戻り性能に優れた吸水性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該吸水性樹脂組成物を用いて製造される吸収体、及び、該吸収体を用いて製造される吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸水性樹脂は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料、ペット用の尿吸収材料、パッキング材等の土木建築用資材、ドリップ吸収剤、保冷材等の食品鮮度保持用材料、土壌用保水材等の農園芸用物品等の種々の分野で使用されている。
【0003】
衛生材料である紙おむつ等に代表される吸収性物品は、体液等の液体を吸収する吸収体が、体に接する側に配された柔軟な液体透過性の表面シート(トップシート)と、表面シートの反対側に配された液体不透過性の背面シート(バックシート)とにより挟持された構造を有する。通常、吸収体は、吸水性樹脂と親水性繊維との混合物からなる。
【0004】
吸収性物品においては、体液、特に尿、血液、汗等を吸収した際に、不快な臭いを発生することが問題となっている。これらの臭いは、皮膚及び消化管に存在しているバクテリアが、尿素、タンパク質等の体液の成分を分解する酵素を生産し、体液の成分がその酵素により分解されることによって発生する腐敗臭であると考えられる。
【0005】
これらの臭いの発生を抑制するために、活性炭、ゼオライト等の臭気成分吸着剤を混合した吸収体(例えば、特許文献1、2参照)や、上記バクテリアを殺菌し、経時的な腐敗臭の増加を防ぐ、銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属を無機化合物に担持させた無機系抗菌剤と吸水性樹脂とからなる組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。臭いの発生を抑制する他の手段として、第4級アンモニウム塩等の殺菌剤と吸水性樹脂とからなる吸水剤(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。
【0006】
また、臭いの発生を抑制するために、抗菌性を有するホスホニウム塩モノマー成分と、該ホスホニウム塩モノマー成分と共重合可能でかつ重合後に高吸水性樹脂となり得るモノマー成分とを架橋重合させた抗菌性高吸水性樹脂が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
近年、介護等において使用される大人用おむつの需要が高くなっている。この場合、使用者は使用後の濡れた感触を忌避する傾向にあり、吸収性物品として、液吸収後の皮膚への液戻りが少ない、優れた逆戻り性能が求められている。
【0008】
このことより、吸収性物品の逆戻り性能を良くするために、吸収体の構成要素である吸水性樹脂には、適度な吸水速度が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-037805号公報
【特許文献2】特表平11-512946号公報
【特許文献3】特表2001-505237号公報
【特許文献4】特開2000-079159号公報
【特許文献5】特開平8-092020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1?3に開示されている臭気成分吸着剤や無機系抗菌剤は、吸水性樹脂との親和性に劣るため、紙おむつ等の吸収性物品を製造する際に吸着剤や抗菌剤が発塵し、製造の際の作業環境が悪化するという問題がある。また、特許文献4に開示されている第4級アンモニウム塩等の殺菌剤と吸水性樹脂とからなる吸水剤は、殺菌剤が、皮膚、粘膜と接触することによる炎症を引き起こす可能性がある。特許文献5に開示されている抗菌性高吸水性樹脂には、抗菌性を有するモノマー成分が高価であるため、経済的でないという欠点がある。また、これらの特許文献においては、吸水性樹脂組成物の吸水速度は、考慮されていない。
【0011】
本発明は、抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつ適度な吸水速度を有し、吸収性物品に使用した場合の逆戻り性能に優れた吸水性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該吸水性樹脂組成物を用いて製造される吸収体、及び、該吸収体を用いて製造される吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の吸水性樹脂組成物は、吸水性樹脂と、サポニンを含む植物抽出物とを含有する。サポニンを含む植物抽出物はキラヤの抽出物であり、その使用量は、吸水性樹脂100質量部に対して0.01?5質量部である。
本発明の吸収体は、本発明の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する。
本発明の吸収性物品は、液体透過性シートと液体不透過性シートの間に本発明の吸収体が保持されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、抗菌、消臭性能に優れ、安全性が高く液状で発塵の問題のないサポニンを含む植物抽出物を含有するため、抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつ適度な吸水速度を有し、吸収性物品に使用した場合の逆戻り性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は吸水性樹脂とサポニンを含む植物抽出物とを含有する。
【0015】
上記吸水性樹脂としては、例えば、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物、デンプン-アクリル酸塩グラフト共重合体の架橋物、ビニルアルコール-アクリル酸塩共重合体の架橋物、無水マレイン酸グラフトポリビニルアルコールの架橋物、架橋イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物等が挙げられる。これらの吸水性樹脂のなかでも、大量の液体を吸収すると共に、多少の荷重をかけても吸収した液体を分子内に保持しうることから、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物が好ましい。
【0016】
上記吸水性樹脂の製造方法は特に限定されず、例えば、逆相懸濁重合法、水溶液重合法等が挙げられる。
【0017】
サポニンは、多くの植物に含まれている天然成分であり、体液が分解されることで発生する腐敗臭のガス(アンモニア、メルカプタン、硫化水素など)と結びつくことで臭いを軽減することができ、消臭剤として使用できる。
また、界面活性作用があるため、細胞膜を破壊する性質もあり、抗菌剤としての性質も有する。
【0018】
サポニンを含有する植物としては、ウコギ科のオタネニンジン、エゴノキ科のエゴノキ、ナデシコ科のサボンソウ、バラ科のキラヤ、マメ科のダイズ、マンサク科のハマメリス、ムクロジ科のムクロジ、リュウゼツラン科のユッカなどが挙げられる。これらの植物の中でも、消臭及び抗菌性能に優れ、また後述の吸水性樹脂に適度な吸水速度を与えることから、キラヤ及びユッカが好ましい。これらの植物の葉、樹皮、根などから、抽出物が製造される。
【0019】
上記サポニンを含む植物抽出物は、一般に商業的に入手できるものであり、例えば、キラヤニンC-100(キラヤ抽出物25質量%含有、丸善製薬株式会社製)、サラキープALS(ユッカ抽出物20質量%含有、丸善製薬株式会社製)等を用いることができる。
【0020】
上記サポニンを含む植物抽出物の使用量は、上記吸水性樹脂100質量部に対して0.01?5質量部であることが好ましい。吸水性樹脂組成物として充分な抗菌消臭性を発現させ、また得られる吸水性樹脂組成物が適度な吸水速度となるようにする観点から、0.01質量部以上が好ましく、使用量に対する抗菌消臭性能に対する費用対効果と、得られる吸水性樹脂組成物が適度な吸水速度が得られるようにする観点から、5質量部以下が好ましい。上記サポニンを含む植物抽出物の使用量は、0.05?3質量部であることがより好ましく、0.1?2質量部であることが更に好ましい。
【0021】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、例えば、以下の(a)?(c)の方法で製造することができるが、本発明にかかる吸水性樹脂組成物はこれらの方法により製造されたものに限定されない。
(a)吸水性樹脂に、サポニンを含む植物抽出物を直接噴霧混合する方法。
(b)吸水性樹脂に、サポニンを含む植物抽出物の水溶液あるいはアルコール溶液を噴霧混合し、乾燥する方法。
(c)吸水性樹脂を膨潤させない溶媒中に、吸水性樹脂とサポニンを含む植物抽出物とを添加し、攪拌混合後、溶媒を除去する方法。
【0022】
本発明において、吸水性樹脂とサポニンを含む植物抽出物とを含有する吸水性樹脂組成物を使用することで、吸収性物品の逆戻り性能が向上する理由は、詳らかではないが、以下の理由に基づくものと推測される。
【0023】
吸水性樹脂組成物の吸水速度が遅い場合、実際に紙おむつ等の吸収性物品の吸収体に使用された際、体液の吸収が遅いために、吸収後の皮膚への体液の逆戻りが多くなり、使用後の濡れた感触が持続することになる。特に、一回の体液量が多い大人の場合、この傾向は顕著になる。
【0024】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、前述のようにサポニンを含む植物抽出物を含有することで、サポニンを含む植物抽出物を含む前の吸水性樹脂の吸水速度と比較して、サポニンの界面活性作用により液体への濡れ性が改善し、吸水性樹脂組成物の吸水速度が速くなり、速やかに液体を吸収することが可能になり、吸収性物品の逆戻り性能が向上すると推測される。
【0025】
吸水性樹脂組成物の吸水速度は、13?30秒であることが好ましい。上記吸水速度が13秒未満であると、吸収性物品が液体を吸収した際、表層付近に存在する吸水性樹脂が液体を吸収し、表層付近で柔らかいゲルがさらに密になることで、吸収体内部への液体の浸透が妨げられ、内部の吸水性樹脂が効率良く液体を吸収できなくなる「ゲルブロッキング現象」が発生し、吸収性物品の逆戻り性能が悪化する傾向にある。吸水速度が30秒を超えると、吸収性物品に使用された場合の液体の逆戻り量を減らすことができないことがある。上記吸水速度は、15?25秒がより好ましい。なお、上記吸水速度は、後述の実施例に記載の測定方法により得られる値である。
【0026】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する吸収体もまた、本発明の1つである。
【0027】
上記親水性繊維としては、例えば、セルロース繊維、人工セルロース繊維、親水化処理された合成繊維等が挙げられる。
【0028】
本発明にかかる吸収体の好適な態様としては、例えば、本発明にかかる吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを均一な組成となるように混合することによって得られる混合分散体、2枚の層状の親水性繊維の間に吸水性樹脂組成物が挟まれたサンドイッチ構造体等が挙げられる。
【0029】
本発明にかかる吸収体には、吸収体の形態保持性を高めるために、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等の接着性バインダーを添加しても良い。
【0030】
液体透過性シートと液体不透過性シートとの間に本発明にかかる吸収体が保持されている吸収性物品もまた、本発明の1つである。
【0031】
上記液体透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の繊維からなる、エアスルー型、スパンボンド型、ケミカルボンド型、ニードルパンチ型等の不織布が挙げられる。
【0032】
上記液体不透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなる合成樹脂フィルム等が挙げられる。
【0033】
本発明にかかる吸収性物品は、例えば、紙おむつ、生理用ナプキンや失禁パッド等の衛生材料、ペット用の尿吸収材料、パッキング材等の土木建築用資材、ドリップ吸収剤、保冷材等の食品鮮度保持用材料、土壌用保水材等の農園芸用物品等に好適に用いられる。
【0034】
以下に、本発明を合成例、実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例1?4のうち実施例1および2は、実施例ではなく参考例である。
【0035】
[合成例]
攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン281gをとり、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS-370)0.83gを添加し、撹拌しながら80℃まで昇温してショ糖ステアリン酸エステルを溶解した後、50℃まで冷却した。
【0036】
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.074g(0.27ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド10.1mg(0.07ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
前記の第1段目の単量体水溶液の全量を、前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で充分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第1段目の重合を30分間行い、第1段目の反応混合物を得た。
【0037】
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.10g(0.37ミリモル)、内部架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド11.6mg(0.08ミリモル)を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0038】
前記第1段目の反応混合物を24℃に冷却し、同温度の前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、30分間吸収させると同時に系内を窒素で充分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応混合物を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら246gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液4.42g(0.51ミリモル)を添加し、その後、125℃の油浴で反応混合物を昇温し、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、吸水性樹脂227.2gを得た。
【0039】
[実施例1]
合成例の吸水性樹脂30gに、サポニンを含む植物抽出物として、サラキープALS(ユッカ抽出物20質量%含有、丸善製薬株式会社製)の1%水溶液7.5gを直接噴霧し、充分に混合した。次いで、この混合物を100℃の油浴で30分間加熱し、吸水性樹脂組成物30.0gを得た。
【0040】
[実施例2]
合成例の吸水性樹脂30gに、サポニンを含む植物抽出物として、サラキープALS(ユッカ抽出物20質量%含有、丸善製薬株式会社製)の10%水溶液7.5gを直接噴霧し、充分に混合した。次いで、この混合物を100℃の油浴で30分間加熱し、吸水性樹脂組成物30.1gを得た。
【0041】
[実施例3]
合成例の吸水性樹脂30gに、サポニンを含む植物抽出物として、キラヤニンC-100(キラヤ抽出物25質量%含有、丸善製薬株式会社製)1.2gを直接噴霧し、充分に混合し、吸水性樹脂組成物30.3gを得た。
【0042】
[実施例4]
サポニンを含む植物抽出物として、キラヤニンC-100を3.6g用いた以外は、実施例3と同様にして吸水性樹脂組成物30.8gを得た。
【0043】
[比較例1]
サポニンを含む植物抽出物として、サラキープALSの1%水溶液1.2gを用いた以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物30.0gを得た。
【0044】
[比較例2]
サポニンを含む植物抽出物として、キラヤニンC-100を7.2g用いた以外は、実施例3と同様にして吸水性樹脂組成物31.9gを得た。
【0045】
[比較例3]
合成例の吸水性樹脂30gを、そのまま用いた。
【0046】
実施例1?4および比較例1、2により得られた吸水性樹脂組成物及び比較例3の吸水性樹脂の吸水速度、吸収性物品の逆戻り量、吸収体のアンモニア発生抑制試験並びに臭気官能試験を以下の方法により行った。
【0047】
<吸水速度>
長さが30mm、直径が8mmの回転子を入れた100mLのビーカーに0.9質量%塩化ナトリウム水溶液50mLを入れ、マグネチックスターラーを使用して600r/minで攪拌しながら吸水性樹脂組成物または吸水性樹脂を2.0g加え、添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定することにより、吸水速度を求めた。結果を表1に示す。
【0048】
<吸収性物品の逆戻り量>
(a)吸収性物品の作製
吸水性樹脂組成物または吸水性樹脂10gと粉砕パルプ10gを、ミキサーを用いて乾式混合した。この混合物を、大きさが40cm×12cmで重さが1gのティッシュに吹き付けた後に、同じ大きさ及び重さのティッシュを上部から重ねてシート状にし、全体に196kPaの荷重を30秒間加えてプレスすることにより、吸収体を得た。得られた吸収体を大きさ40cm×12cm、坪量20g/m^(2)のポリエチレン製エアスルー型多孔質液体透過性シートと、同じ大きさ、同じ坪量のポリエチレン製不透過性シートで挟むことにより吸収体を用いた吸収性物品を得た。
【0049】
(b)人工尿の調製
5L容の容器に、塩化ナトリウム30g、塩化カルシウム二水和物0.9g、塩化マグネシウム六水和物1.8g及び適量の蒸留水を入れ、完全に溶解させた。次に、1質量%ポリ(オキシエチレン)イソオクチルフェニルエーテル水溶液7.5gを添加し、さらに蒸留水を添加して、水溶液全体の質量を3000gに調整した後、少量の青色1号で着色して、人工尿を調製した。
【0050】
(c)逆戻り量
吸収性物品の中心付近に、内径3cmの円筒型シリンダーを置き、150mLの人工尿をそのシリンダー内に一度に投入し、人工尿がシリンダー内から完全に消失してから5分間放置した。吸収性物品上の人工尿投入位置付近に、あらかじめ質量(Wa(g)、約70g)を測定しておいた10cm四方の濾紙(約80枚)を置き、その上に底面が10cm×10cmの5kgの重りを載せた。5分間の荷重後、濾紙の質量(Wb(g))を測定し、増加した質量(Wb-Wa)を逆戻り量(g)とした。逆戻り量が小さいほど、吸収性物品として好ましいと言える。例えば、逆戻り量として18g以下が好ましく、16g以下がより好ましい。結果を表1に示す。
【0051】
<吸収体のアンモニア発生抑制試験及び臭気官能試験>
(a)吸収体の作製
吸水性樹脂組成物または吸水性樹脂1gと解砕パルプ1gをブレンドしたものを、空気抄造によって直径5cmのティッシュ上に形成させ、同じ大きさのティッシュ上に重ねた後、145kPaの荷重を30秒間施して吸収体を作製した。
【0052】
(b)アンモニア発生抑制試験
蒸留水1Lに尿素25g、塩化ナトリウム9g、硫酸マグネシウム(7水和物)0.6g、乳酸カルシウム0.7g、硫酸カリウム4g及び硫酸アンモニウム2.5gを溶解して試験液を調製した。また、ウレアーゼ(MERCK社製、タチナタ豆由来50%グリセリン溶液1000U/mL)を、蒸留水にて1000倍に希釈してウレアーゼ液を調製した。上記(a)で得られた吸収体を100mLマイヤーフラスコに入れ、ウレアーゼ添加試験液(上記試験液30gと上記ウレアーゼ液1mLを混合して作製)を添加して、吸収体を膨潤させた。ウレアーゼ添加試験液を添加後、直ちにガス検知管(ガステック社製、「アンモニア3D」)を装着したゴム栓にて密封した。次いで、30℃で保存し、3、10及び24時間後にガス検知管の読み値を記録した。結果を表1に示した。
【0053】
(c)臭気官能試験
100mLマイヤーフラスコに新鮮な尿50mLを入れ、尿素0.25g、使用済みおむつから採取したパルプ1gを加え、溶液を24時間放置し発酵尿を作製した。次いで、新鮮な尿と上記発酵尿を9:1(質量比)の割合で混合することにより、試験液を調製した(新鮮な尿は無菌なため、発酵尿を混合しないと充分な臭気が発生しない)。
【0054】
上記(a)で得られた吸収体を250mLガラス瓶に入れた後、上記試験液30gを添加して吸収体を膨潤させた。試験液を添加後、直ちに密封し、40℃で24時間保存した。保存後、5人のパネラー(A?E)に、250mLガラス瓶中の臭気を、規定基準の「6段階臭気強度表示法」に準じて下記の基準により判定してもらい、その平均値で評価した。結果を表2に示した。
5:強烈な臭い
4:強い臭い
3:楽に認識できる臭い
2:何の臭いか分かる弱い臭い
1:やっと感知できる臭い
0:無臭
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表1及び表2中のサポニンを含む植物抽出物の使用量の数値は、吸水性樹脂100質量部に対する値(質量部)である。
【0058】
表1から明らかなように、実施例1?4および比較例1、2の吸水性樹脂組成物は、比較例3の吸水性樹脂組成物と比較して、吸水速度が速くなることがわかった。
【0059】
表1及び表2から明らかなように、実施例1?4の吸水性樹脂組成物を用いた吸収体は、臭気の発生を抑制しており、また、吸収性物品の逆戻り性能に優れたものであった。比較例1の場合、サポニンを含む植物抽出物の量が少ないため、吸水速度が遅く、吸収体の逆戻り量が多くなる傾向にあり、またアンモニアの発生や尿の不快な臭気の抑制効果が少なかった。比較例2の場合、サポニンを含む植物抽出物の量に比べて、アンモニアの発生や尿の不快な臭気等の抑制効果は低く、また吸水速度が速くなりすぎるため、吸収性物品の逆戻り量が多くなる傾向であった。
【0060】
一方、比較例3においては、サポニンを含む植物抽出物が混合されていないため、アンモニアの発生や尿の不快な臭気の抑制ができず、また吸水速度が遅いため、吸収性物品の逆戻り性能が低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、抗菌、消臭性能に優れ、安全に取り扱うことができ、かつ適度な吸水速度を有し、吸収性物品に使用した場合の逆戻り性能に優れた吸水性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該吸水性樹脂組成物を用いて製造される吸収体、及び、該吸収体を用いて製造される吸収性物品を提供することができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
吸水性樹脂と、サポニンを含む植物抽出物とを含有し、
サポニンを含む植物抽出物がキラヤの抽出物であり、その使用量が、吸水性樹脂100質量部に対して0.01?5質量部である、
吸水性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含有する吸収体。
【請求項4】
液体透過性シートと液体不透過性シートの間に請求項3記載の吸収体が保持されている吸収性物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-10-12 
出願番号 特願2011-120393(P2011-120393)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 細井 龍史新留 豊  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 守安 智
加藤 友也
登録日 2015-05-22 
登録番号 特許第5749980号(P5749980)
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂組成物、吸収体及び吸収性物品  
代理人 市川 恒彦  
代理人 菅河 忠志  
代理人 市川 恒彦  
代理人 植木 久彦  
代理人 植木 久一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ