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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L |
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管理番号 | 1323483 |
異議申立番号 | 異議2016-700391 |
総通号数 | 206 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-05-02 |
確定日 | 2016-11-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5805967号発明「押出し麺用ダイピース及び該ダイピースの製造方法、並びに押出し麺の製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5805967号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 特許第5805967号の請求項1,3?8に係る特許を維持する。 特許第5805967号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立を却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5805967号(以下「本件特許」という。)の請求項1?8に係る特許についての出願は,平成23年3月22日に出願され,平成27年9月11日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許について,特許異議申立人井上光弘により特許異議の申立てがされ,平成28年7月7日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である同年9月8日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり,その訂正の請求に関して特許異議申立人井上光弘から同年10月18日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正について 1 訂正の内容 平成28年9月8日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は,本件特許の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?8について訂正することを求めるものであり,具体的な訂正事項は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1に 「【請求項1】 長手方向に貫通孔を有する麺線を製造するための、押出し麺用ダイピースであって、 前記ダイピースが、押出し側ピースと押込み側ピースとから構成されたものであり、 前記押出し側ピースには、麺線が押出し形成される押出し孔を有し、 前記押込み側ピースには、麺生地が押込まれる押込み孔と、前記押出し側ピースの押出し孔に先端部が挿通するピンとを有し、 前記ピンは、押し出された麺線に前記貫通孔を形成するもので、基部が先端部よりも太く形成され、前記押込み側ピースの一部として一体成形されたものである、押出し麺用ダイピース。」 とあるのを, 「【請求項1】 ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられ、長手方向に貫通孔を有する麺線を製造するための、押出し麺用ダイピースであって、 前記ダイピースが、押出し側ピースと押込み側ピースとから構成されたものであり、 前記押出し側ピースには、麺線が押出し形成される押出し孔を有し、 前記押込み側ピースには、麺生地が押込まれる押込み孔と、前記押出し側ピースの押出し孔に先端部が挿通するピンとを有し、 前記ピンは、押し出された麺線に前記貫通孔を形成するもので、基部が先端部よりも太く形成され、前記押込み側ピースの一部として一体成形されたものである、押出し麺用ダイピース。」 と訂正する(下線は訂正箇所を示す)。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項2を削除する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は,請求項1に記載された「長手方向に貫通孔を有する麺線を製造するための、押出し麺用ダイピース」に対して,さらに「ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられ」るとの限定事項を付加するものである。よって,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして,請求項1を直接又は間接に引用する請求項3?8についても,同様に特許請求の範囲を減縮するものである。 また,特許明細書に背景技術として「このように麺線の中心部に円形の貫通孔を形成する方法としては、ダイピース(例えば、図5に示すようなダイピース500)を多数セットしたダイスを用いて、麺生地を麺線に押出し成形する方法がある。」(【0003】)と記載され,発明を実施するための形態として「本実施形態のダイピース1が取り付けられるダイス100としては、様々な形状とすることが可能であるが、その一例を図3に示す。このダイス100は円盤状のものであって、図3(A)(B)に示すように、内周側に17個、外周側に25個の貫通孔101が周方向に一定間隔をおいて設けられており、各貫通孔101にダイピース1が取り付けられている。」(【0049】)と記載されていることから,訂正事項1は,特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は,請求項2を削除するものであるから,特許請求の範囲を限縮しようとするものである。そして,請求項3?8についても,その請求項2を直接又は間接に引用する部分を削除することとなるから,同様に特許請求の範囲を限縮するものである。 また,訂正事項2は,特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 3 むすび したがって,本件訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正により訂正された訂正請求項1,3?8に係る発明(以下それぞれ「本件発明1,3?8」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1,3?8に記載された事項によって特定される,以下のとおりのものである。 【請求項1】 ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられ、長手方向に貫通孔を有する麺線を製造するための、押出し麺用ダイピースであって、 前記ダイピースが、押出し側ピースと押込み側ピースとから構成されたものであり、 前記押出し側ピースには、麺線が押出し形成される押出し孔を有し、 前記押込み側ピースには、麺生地が押込まれる押込み孔と、前記押出し側ピースの押出し孔に先端部が挿通するピンとを有し、 前記ピンは、押し出された麺線に前記貫通孔を形成するもので、基部が先端部よりも太く形成され、前記押込み側ピースの一部として一体成形されたものである、押出し麺用ダイピース。 【請求項3】 前記押出し側ピースに形成された押出し孔が、直径1mm乃至3mmの横断面円形の貫通孔である請求項1又は2に記載の押出し麺用ダイピース。 【請求項4】 前記ピンのうち先端部の横断面形状が、前記横断面の中心から径外方向に延びる複数の突出部を有する形状である請求項1から3のいずれかに記載の押出し麺用ダイピース。 【請求項5】 前記複数の突出部が、前記ピンの横断面中心を基準とする3回対称乃至8回対称の回転対称に形成され、 前記ピンが、前記複数の突出部のうち隣り合う突出部同士の間に、前記横断面中心に向かって入り込んだ陥入部を有する請求項4に記載の押出し麺用ダイピース。 【請求項6】 前記押出し側ピースに形成された押出し孔が、直径1.5mm乃至2mmの横断面円形の貫通孔であり、 前記ピンのうち先端部の横断面形状が、前記横断面の中心から径外方向に延びる複数の突出部を有する形状であり、 前記複数の突出部の横断面形状における先端が、前記ピンの横断面中心から0.5mm以下の距離にある請求項1又は2に記載の押出し麺用ダイピース。 【請求項7】 請求項1から6のいずれかに記載の押出し麺用ダイピースの製造方法であって、 一つの金属塊からマシニングセンタで前記押込み側ピースを削り出す押出し麺用ダイピースの製造方法。 【請求項8】 請求項1から6のいずれかに記載の押出し麺用ダイピースを用いて麺線の押出しを行う押出し麺の製造方法。 2 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1?8に係る特許に対して平成28年7月7日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は,次のとおりである。 (1)取消理由1 請求項1?8に係る発明は,甲第1号証に記載された発明及び甲第2?7号証に記載された事項に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)取消理由2 請求項2に係る発明は明確でないから,請求項2と,請求項2を引用する請求項3?8に係る特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 取消理由1(特許法第29条第2項)について (ア)刊行物 甲第1号証 :特開平4-11879号公報 甲第2号証 :矢崎郁夫,高田良彦,「マカロニ・スパゲティの製造」, 日本,光琳書院,1966,pp.89-92 甲第3号証 :スイス国特許公開公報第342185号明細書 甲第4号証 :特開平8-56596号公報 甲第5号証 :株式会社ポプリ,「イタリア・地中海料理百科事典5巻」, 日本,同朋舎出版,1987,pp.149-152 甲第6号証 :欧州共同体意匠登録番号001771981-0002 甲第7号証 :特開2005-34056号公報 (イ)甲第1号証に記載された発明 「この出願の発明は、内部を中空にした筒状の食品や、各種のリング状の食品を連続的に効率よく製造することのできる食品押出製造装置のダイを提供することを目的とするものである。」(2頁右上欄6?9行) 「この出願の発明に係るダイ(3)は、前記ダイ本体(5)に設けた貫通穴(10)に、前記センター軸(7c)を設けた中子(7)を嵌め込み、前記筒状の押出通路(13)を形成し、ダイ本体(5)の先端にリング状の押出穴(14)を形成したものとしている。尚、前記押出穴(14)の形状は、ダイ本体(5)に設けた貫通穴(10)や中子(7)に設けたセンター軸 (7c)の形状を色々なものに変えることにより、ダイ本体(5)の先端に形成されるリング状の押出穴(14)は、第7図(a)(b)(c)に示したもの等、各種のものとすることができる。 したがって、食品押出製造装置のシリンダ(1)内でスクリュー(2) により、混練、加圧、加熱等の処理が施された食品材料は、ダイホルダー (4)の案内通路(8)から中子(7)の案内通路(12)に送られ、筒状の押出通路(13)の前半部となる絞り通路(13a)から筒状の押出通路(13)の後半部となる小筒通路(13b)を通り、ダイ本体(5)の先端に形成したリング状の押出穴(14)から押し出され、適宜の長さに切断することにより、内部を中空にした筒状の食品や、例えば第8図に示したような、リング状の食品(15)を製造することができる。」(3頁左下欄4行?右下欄7行) 「 」(第1図) 第1図からは,中子(7)のセンター軸(7c)が,基部が先端部よりも太く形成され,中子の一部として一体成形されたものであることが読み取れる。 以上によれば,甲第1号証には, 「ダイホルダー(4)に取り付けられて食品材料を筒状の食品に押出し成形するために用いられ,内部を中空にした筒状の食品を製造するための,押出し食品用ダイ本体(5)及び中子(7)であって, ダイ本体には,食品が押出し形成される押出穴(14)を有し, 中子には,食品材料が押込まれる案内通路(12)と,ダイ本体の押出穴に先端部が挿通するセンター軸(7c)とを有し, センター軸は,押し出された食品に中空を形成するもので,基部が先端部よりも太く形成され,中子の一部として一体成形されたものである,押出し食品用ダイ本体及び中子」 の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (ウ)対比・判断 甲1発明の「ダイ本体(5)及び中子(7)」は,ダイ本体(押出し側ピース)と中子(押込み側ピース)とから構成されたものである点で,本件発明1の「ダイピース」と共通するものといえる。 しかし,本件発明1は,少なくとも「ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられ」る「押出し麺用ダイピース」である点(以下「相違点1」という。)において,甲1発明と相違する。 甲第2?7号証に記載されているように,マカロニ等の長手方向に貫通孔を有する麺線は周知であり,甲第2?4,7号証に記載されているように,そのような麺線を製造するための押出し麺用ダイスも周知である。しかし,これに加えて「ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられ」る「押出し麺用ダイピース」が周知であったとしても,甲1発明の「ダイ本体(5)及び中子(7)」は,ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられることを想定したものとはいえないから,甲1発明をそのような「押出し麺用ダイピース」とすることは,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 よって,本件発明1は甲1発明及び甲第2?7号証に示される周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件発明3?8も同様に,甲1発明及び甲第2?7号証に示される周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 取消理由2(特許法第36条第6項第2号)について 本件訂正により,請求項2は削除されたから,記載の不備は解消した。 ウ 特許異議申立人の意見について 特許異議申立人井上光弘は,平成28年10月18日付けの意見書において,甲第13号証並びに本件特許明細書【0003】及び【図5】を参照して,「複数の孔を有するダイピースを多数セットしたダイスを用いて麺生地を麺線に押出し成形すること、及びダイピースの種類を取り換えることで、様々な種類の貫通孔を有する麺線を押出し成形することは、当該分野で周知の技術である」と主張するが,そうであっても,上記ア(ウ)で検討したように,甲1発明の「ダイ本体(5)及び中子(7)」をそのような「ダイピース」とすることは,当業者が容易に想到し得たとはいえない。特許異議申立人の意見は採用できない。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア 特許異議申立人井上光弘は,上記甲第1?7号証のほか,以下に示す甲第8?13号証を提出し,本件発明1,3,4は甲1発明又は甲第2号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当すること,本件発明1?8は甲第2号証に記載された発明及び甲第1,3?13号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないこと,請求項1の記載は発明が明確でないため特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないこと,本件発明1?5は発明の詳細な説明に記載されたものでないから,第36条第6項第1号の要件を満たさないことを主張している。 甲第8号証 :特願2011-062823号についての平成27年4月 27日付け意見書,写し 甲第9号証 :笠原洪平,化学装置製図研究会(編),「実用 化学装置製 図(改訂版)」,工学図書株式会社,昭和51年3月15日 発行,第22?23頁,写し 甲第10号証:「マカロニ類品質表示基準」,[online],最終改正 平成23年9月30日消費者庁告示第10号,[平成28年 4月6日検索],インターネット 甲第11号証:特開昭63-248366号公報 甲第12号証:特開平5-244886号公報 甲第13号証:James E. Krugerら,「Pasta and Noodle Technology」,ア メリカ合衆国,American Association of Cereal Chemists, 1996,pp.41-44 イ 特許法第29条第1項第3号について 上記(1)ア(ウ)で述べたように,本件発明1は,甲1発明と相違するから,甲1発明と同一ではない。本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件発明3,4も同様に,甲1発明と同一ではない。 また,甲第2号証に記載された押出し側の部材である「(ダイス)本体」は,「ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられ」る「押出し麺用ダイピース」ではなく,押込み側ピースである「ピン(3本の脚で本体にセットされている)」も「押込み孔」を有しないから,本件発明1は,甲第2号証に記載された発明と同一ではない。本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件発明3,4も同様に,甲第2号証に記載された発明と同一ではない。 ウ 特許法第29条第2項について 本件発明1と甲第2号証に記載された発明とは,少なくとも上記相違点1において相違するから,上記(1)ア(ウ)で述べたと同様の理由により,本件発明1,3?8は,甲第2号証に記載された発明及び甲第1,3?13号証に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 特許法第36条第6項第1号について 特許異議申立人井上光弘は,本件発明1は製造する麺線の貫通孔のサイズ及びピンのサイズを特定しておらず,したがって太いピンを使用する場合を包含しており,そもそも解決すべき課題である「ピンの抜け、曲がり、折れの解消」を有しないものを含んでいるから,発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであると主張する。しかし,本件特許明細書【0006】及び【0007】の記載を見れば分かるように,本件発明1は,「直径3mm以下」「の細い麺線に貫通孔を形成しようと」した場合に,【図5】に示される従来例「のような嵌合構造」を採用すると,「ピン503が抜ける、あるいは曲がる、あるいは折れる等の問題が生じやすい」ことを指摘した上で,特にサイズを限定せずに,このような問題を回避できる一体成形の構造を採用することで,課題を解決しようとしたものであるから,当該主張には理由がない。 オ 特許法第36条第6項第2号について 特許異議申立人井上光弘は,平成28年10月18日付けの意見書において,本件訂正により本件発明1に明確性(特許法第36条第6項第2号)違反の取消理由が生じた旨主張している。すなわち,「ダイスに多数セットされて」の「多数」が「具体的な数を表していない」点,及び本件発明1が個別の「ダイピース」の発明か「多数の押出し麺用ダイピースがセットされたダイス」の発明であるのか不明な点を指摘している。 しかし,「多数」が例えば「一つ」を含まないことは明確であり,「ダイスに多数セットされて」とはダイピースがダイスに対して一つだけセットされるものではないことを特定する程度のものであって,具体的にいくつからが「多数」であるのかその境界を特定しようとするものではない。そして,請求項1の記載に照らし,本件発明1が個別の「ダイピース」の発明であることは明確である。 また,本件発明1の「ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられ」るとの限定事項について,特許異議申立人は,個別のダイピースそれ自体の構造や性質を特定するものではなく,不明確であると主張している。しかし,上記限定事項は,そのような用法に適した形状,大きさ等を有することを特定しており,「ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられ」る「押出し麺用ダイピース」は周知のものであったことを踏まえれば,不明確なものではない。 したがって,特許異議申立人が指摘するような不備はなく,本件発明1は明確である。 (4)むすび 以上のとおり,取消理由通知に記載した取消理由1,2及び取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によっては,請求項1,3?8に係る特許を取り消すことはできない。さらに,他に請求項1,3?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また,請求項2に係る特許は,本件訂正により削除されたため,特許異議申立人井上光弘の請求項2に係る特許についての特許異議の申立は,対象となる請求項が存在しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ダイスに多数セットされて麺生地を麺線に押出し成形するために用いられ、長手方向に貫通孔を有する麺線を製造するための、押出し麺用ダイピースであって、 前記ダイピースが、押出し側ピースと押込み側ピースとから構成されたものであり、 前記押出し側ピースには、麺線が押出し形成される押出し孔を有し、 前記押込み側ピースには、麺生地が押込まれる押込み孔と、前記押出し側ピースの押出し孔に先端部が挿通するピンとを有し、 前記ピンは、押し出された麺線に前記貫通孔を形成するもので、基部が先端部よりも太く形成され、前記押込み側ピースの一部として一体成形されたものである、押出し麺用ダイピース。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記押出し側ピースに形成された押出し孔が、直径1mm乃至3mmの横断面円形の貫通孔である請求項1又は2に記載の押出し麺用ダイピース。 【請求項4】 前記ピンのうち先端部の横断面形状が、前記横断面の中心から径外方向に延びる複数の突出部を有する形状である請求項1から3のいずれかに記載の押出し麺用ダイピース。 【請求項5】 前記複数の突出部が、前記ピンの横断面中心を基準とする3回対称乃至8回対称の回転対称に形成され、 前記ピンが、前記複数の突出部のうち隣り合う突出部同士の間に、前記横断面中心に向かって入り込んだ陥入部を有する請求項4に記載の押出し麺用ダイピース。 【請求項6】 前記押出し側ピースに形成された押出し孔が、直径1.5mm乃至2mmの横断面円形の貫通孔であり、 前記ピンのうち先端部の横断面形状が、前記横断面の中心から径外方向に延びる複数の突出部を有する形状であり、 前記複数の突出部の横断面形状における先端が、前記ピンの横断面中心から0.5mm以下の距離にある請求項1又は2に記載の押出し麺用ダイピース。 【請求項7】 請求項1から6のいずれかに記載の押出し麺用ダイピースの製造方法であって、 一つの金属塊からマシニングセンタで前記押込み側ピースを削り出す押出し麺用ダイピースの製造方法。 【請求項8】 請求項1から6のいずれかに記載の押出し麺用ダイピースを用いて麺線の押出しを行う押出し麺の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-11-09 |
出願番号 | 特願2011-62823(P2011-62823) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L) P 1 651・ 537- YAA (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 戸来 幸男 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 結城 健太郎 |
登録日 | 2015-09-11 |
登録番号 | 特許第5805967号(P5805967) |
権利者 | 日清食品ホールディングス株式会社 |
発明の名称 | 押出し麺用ダイピース及び該ダイピースの製造方法、並びに押出し麺の製造方法 |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 中谷 寛昭 |
代理人 | 北田 明 |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 北田 明 |
代理人 | 大川 博之 |
代理人 | 中谷 寛昭 |
代理人 | 大川 博之 |