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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1323484
異議申立番号 異議2016-700256  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-29 
確定日 2016-10-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5788128号発明「殺菌作用を備えた表面を有する合成高分子膜、合成高分子膜を有する積層体、合成高分子膜の表面を用いた殺菌方法および合成高分子膜の表面の再活性化方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5788128号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔46ないし48及び50ないし60〕について訂正することを認める。 特許第5788128号の請求項1、5、8、12、13、46、47、53及び56に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5788128号の請求項1ないし60に係る特許についての出願(以下、「本件出願」という。)は、2015年3月5日(優先権主張 平成26年4月22日、平成26年6月13日、平成26年12月24日)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年8月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年3月29日に特許異議申立人 小松 一枝により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1、5、8、12、13、46、47、53及び56)がされ、同年5月6日に特許異議申立書を補正する手続補正書が提出され、当審において同年6月7日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年7月19日付け(受理日:同年7月21日)で意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年7月26日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対し何らの応答がされなかったものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成28年7月19日付け(受理日:同年7月21日)でされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項46に、
「複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、
前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、
前記表面が殺菌効果を有し、
潤滑剤をさらに含む、合成高分子膜。」とあるのを、
「複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、
前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、
前記表面が殺菌効果を有し、
潤滑剤をさらに含み、
油で表面が処理されている、合成高分子膜。」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項46を引用する請求項47及び50ないし60についても、請求項46を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項48を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項50ないし57及び60について、引用する請求項から請求項48を削除する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明に、「油で表面が処理されている」という発明特定事項を追加して、さらに特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1による訂正後の請求項46と訂正前の請求項48が重複しないように、訂正前の請求項48を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2による請求項48の削除に伴い、訂正前の請求項50ないし57及び60において引用していた請求項48を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

そして、訂正前の請求項46ないし48及び50ないし60は一群の請求項であり、本件訂正の請求は、それらについてされたものであるから、訂正事項1ないし3は、一群の請求項毎にされたものである。

3 独立特許要件
請求項47及び50ないし60は、請求項46を引用するものであるから、訂正事項1により請求項46が特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がされたことに併せて、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がされたものである。
そして、請求項50ないし52、54、55及び57ないし60は、特許異議の申立てがされていない請求項であるから、訂正後の請求項50ないし52、54、55及び57ないし60に係る発明(以下、順に「訂正発明50」のようにいう。)について、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件を満たすかどうかを、以下に検討する。

平成28年7月19日付け(受理日:同年7月21日)で提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲(以下、「訂正特許請求の範囲」という。)の記載によると、訂正後の請求項50ないし52、54、55及び57ないし60は、訂正後の請求項46を引用するものであるから、まず、訂正後の請求項46に係る発明(以下、「訂正発明46」という。)について検討する。

(1)訂正発明46についての独立特許要件
ア 訂正発明46
訂正発明46は、訂正特許請求の範囲の請求項46に記載された次のとおりのものである。

「複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、
前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、
前記表面が殺菌効果を有し、
潤滑剤をさらに含み、
油で表面が処理されている、合成高分子膜。」

イ 甲1ないし5の記載等
(ア)甲1の記載等
a 甲1の記載
取消理由で引用した甲第1号証(特開2013-33287号公報、以下、「甲1」という。)には、「微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法」に関して、図面とともに次の記載(以下、総称して「甲1の記載」という。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。)がある。

・「【0001】
本発明は、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法に関する。
本願は、2011年5月26日に、日本に出願された特願2011-118087号および2011年5月26日に、日本に出願された特願2011-118088号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する物品は、反射防止効果、ロータス効果等を発現することが知られている。特に、略円錐形状の凸部を並べたモスアイ構造と呼ばれる凹凸構造は、空気の屈折率から物品の材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。」(段落【0001】及び【0002】)

・「【0073】
(疎水性材料)
硬化樹脂層の微細凹凸構造の表面の水接触角を90°以上にするためには、疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
【0074】
フッ素含有化合物:
フッ素含有化合物としては、含フッ素モノマー、含フッ素シラン化合物、含フッ素界面活性剤、含フッ素ポリマー等が挙げられる。」(段落【0073】及び【0074】)

・「【0096】
(物品)
図3は、微細凹凸構造を表面に有する物品40の一例を示す断面図である。
フィルム42は、光透過性フィルムである。フィルムの材料としては、ポリカーボネート、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。
【0097】
硬化樹脂層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
陽極酸化アルミナのモールドを用いた場合の物品40の表面の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の凸部46を有する。
【0098】
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0099】
凸部間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。陽極酸化アルミナのモールドを用いて凸部を形成した場合、凸部間の平均間隔は100から200nm程度となることから、250nm以下が特に好ましい。
【0100】
凸部間の平均間隔は、凸部の形成のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。」(段落【0096】ないし【0100】)

・「【0141】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品の効率的な量産にとって有用である。」(段落【0141】)

・甲1には、図3として、次の図面が記載されている。

b 甲1発明
甲1の記載及び図面を整理すると、甲1には、次の発明が記載されていると認める。

「表面に凹凸構造を有するモスアイ構造を備える硬化樹脂層であって、
凸部間の平均間隔が、20nm以上250nm以下であり、
疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物を含む、硬化樹脂層。」(以下、「甲1発明」という。)

(イ)甲2の記載
取消理由で引用した甲第2号証(特開2008-197217号公報、以下、「甲2」という。)には、「成形体とその製造方法」に関して、図面とともに次の記載(以下、総称して「甲2の記載」という。)がある。

・「【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[成形体]
図1は、表面に周期的な微細凹凸構造を有する本発明の成形体の一例であって、この成形体10は、シート状の透明基材11と、その片面に形成された樹脂層12とからなり、樹脂層12の表面に、微細凹凸構造が形成されている。そして、この微細凹凸構造を構成する凸部13は、略柱状の基端部13aと、この基端部13aに連続して形成された略錘状の先端部13bとの2つの部分から構成されている。具体的には、この例の基端部13aは、直径Rの略円柱状であり、先端部13bは、基端部13aの直径Rの上底を底部とした略円錐状となっている。
【0011】
このような凸部13において、基端部13aの高さH_(1)は20?250nmが好ましい。基端部13aの高さH_(1)が20nm以上であると、凸部13の耐擦傷性がより優れる傾向にあり、一方、基端部13aの高さH_(1)が250nm以下であると、微細凹凸構造は反射率の入射角依存性が低いものとなり、成形体10が反射防止膜などの反射防止物品である場合には特に好適である。また、先端部13bの高さH_(2)は50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。50nm以上であれば、微細凹凸構造は充分な反射防止機能を発揮するとともに、反射率の入射角依存性も低くなり、成形体10が反射防止膜などの反射防止物品である場合には特に好適である。また、基端部13aの高さH_(1)と先端部13bの高さH_(2)との比(H_(1)/H_(2))は2.0以下が好ましい。
【0012】
凸部13の周期pは、20?500nmの範囲であることが好ましく、周期pがこのような範囲内であると、例えばこの成形体10の微細凹凸構造を後述の陽極酸化ポーラスアルミナをモールドとして用い、転写法で形成しようとする場合、詳しくは後述するが、モールドの製造が比較的容易となる。また、凸部13の周期pが可視光の波長以下の周期、すなわち400nm以下の周期であると、この成形体10は特に反射防止膜などの反射防止物品として有用である。
なお、本明細書において微細凹凸構造の「周期」とは、微細凹凸構造の凸部の中心からこれに隣接する凸部の中心までの距離である。
【0013】
また、凸部13は、基端部13aの形状がこの例のように略円柱状であって、その底部が略円形である場合には、直径Rが可視光の波長以下、すなわち400nm以下であることが好ましく、より好ましくは30?300nmである。このような範囲であると、この成形体10は反射防止膜などの反射防止物品として有用であるとともに、凸部13の形成も比較的容易に行える。
なお、基端部が角柱状などの場合には、底部の最大長さが可視光の波長以下であることが好ましい。
また、凸部13のアスペクト比(=凸部全体の高さH/周期p)は0.5以上10未満が好ましく、1以上8未満がさらに好ましい。0.5以上であると、反射率が低い転写面を形成でき、その入射角依存性も充分に小さくなるため、成形体10が反射防止膜などの反射防止物品である場合には特に好適である。また、10未満であると、凸部13の耐擦傷性がより優れる傾向にある。
【0014】
このような成形体10の微細凹凸構造の凸部13は、以上説明したように、略柱状の基端部13aと該基端部13aに連続して形成された略錘状の先端部13bとからなるため、例えば略円錐状の部分のみからなるような従来の凸部と比べた場合、耐擦傷性が向上する傾向にあることを本発明者らは見出したが、これに加えて、樹脂層12を形成する組成物として、成形後のJIS K5600による鉛筆硬度がH以上となる樹脂組成物を選択し、凸部13をこのような樹脂組成物から形成することにより、さらに優れた耐擦傷性を有する凸部を形成することができる。」(段落【0010】ないし【0014】)

・「【0049】
<実施例1>
製造例1で得られたモールドのモールド表面に、以下の組成の液状の樹脂組成物A(成形後の鉛筆硬度:H)を流し込み、その上に透明基材としてPETフィルムを被せた後、UV照射機(高圧水銀ランプ:積算光量3600mJ/cm^(2)、ピーク照度180mW/cm^(2))によりUV照射して、樹脂組成物Aを硬化した。ついで、モールドを剥離することにより、略円柱状の基端部とこれに連続した略円錐状の先端部からなる凸部を備えた微細凹凸構造を表面に有する樹脂層と、透明基材とからなる図1のような成形体を得た。
得られた成形体の耐擦傷性の評価結果と、凸部の周期p、凸部の直径R、凸部全体の高さH、凸部の基端部の高さH_(1)、凸部の先端部の高さH_(2)を表1に示す。また、この成形体の微細凹凸構造が形成された面について、反射率を測定したところ、380?780nmの範囲全てで0.8%以下であった。
・・・(略)・・・
【0057】
【表1】

」(段落【0049】ないし【0057】)

(ウ)甲3の記載
取消理由で引用した甲第3号証(特開2012-78438号公報、以下、「甲3」という。)には、「反射防止フィルム用組成物」に関して、図面とともに次の記載(以下、総称して「甲3の記載」という。)がある。

・「【請求項1】
光透過性基板と、前記光透過性基板上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムの、前記反射防止層を形成する際に用いられ、
光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有する反射防止フィルム用組成物であって、
前記潤滑剤が、HLB値が7?10の範囲内の変性シリコーンオイルであることを特徴とする反射防止フィルム用組成物。
【請求項2】
前記変性シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム用組成物。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項2】)

・「【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐擦傷性および離型性に優れた反射防止層を形成可能な反射防止フィルム用組成物、および上記反射防止フィルム用組成物を用いて製造された反射防止フィルムを提供することを主目的とする。【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムの、上記反射防止層を形成する際に用いられ、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有する反射防止フィルム用組成物であって、上記潤滑剤が、HLB値が7?10の範囲内の変性シリコーンオイルであることを特徴とする反射防止フィルム用組成物を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記HLB値が7?10の範囲内の変性シリコーンオイルを潤滑剤として含有することにより、上記反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止層の耐擦傷性を高いものとすることができる。
また、本発明によれば、上記反射防止フィルム用組成物を用いることにより、上記反射防止層の離型性を高いものとすることができることから、上記反射防止フィルムを製造する際、表面に複数の微細孔を有する金型(以下、単に金型と称して説明する場合がある。)を用い、上記反射防止フィルム用組成物からなる反射防止層に微細凹凸を賦型し、上記金型および上記反射防止層を剥離する工程において、上記金型および反射防止層を容易に剥離することができるので、上記反射防止フィルムの製造工程を容易な工程とすることができる。
【0012】
本発明においては、上記変性シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルであることがより好ましい。上記ポリエーテル変性シリコーンオイルを用いることにより、上記反射防止層の離型性および耐擦傷性をより優れたものとすることができる。」(段落【0009】ないし【0012】)

・「【0051】
1.反射防止層
本発明に用いられる反射防止層は、後述する光透過性基板上に形成されるものであり、その表面に複数の微細凹凸を有するものである。
また、上記反射防止層は、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有し、上記潤滑剤が、HLB値が7?10の範囲内の変性シリコーンオイルである反射防止フィルム用組成物を用いて形成されるものである。
【0052】
本発明における反射防止層は、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細凹凸を有するものである。ここで、上記微細凹凸としては、可視光領域の波長以下の周期で形成されたものであれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて、任意の形状を選択して用いることができる。なかでも本発明における微細凹凸は、円錐、四角錐等の錐形の構造物が周期的に形成されたものであることが好ましい。
【0053】
ここで、上記微細凹凸として錐形の構造物が周期的に形成されたものが用いられる場合、上記錐形の構造物としては、図2(a)に示すように、頂部が平坦に形成されたものであってもよく、あるいは、図2(b)に示すように、頂部が鋭角に形成されたものであってもよい。さらには、図1に示すように、頂部が円弧状に形成されたものであってもよい。
なお、図2は、本発明の反射防止フィルムの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。」(段落【0051】ないし【0053】)

(エ)甲4の記載
取消理由で引用した甲第4号証(国際公開第2013/183576号、以下、「甲4」という。)には、「型基材、型基材の製造方法、型の製造方法および型」に関して、図面とともに次の記載(以下、総称して「甲4の記載」という。)がある。

・「[0001] 本発明は、型基材、型基材の製造方法、型の製造方法および型に関し、特に、表面にポーラスアルミナ層を有する型に関する。ここでいう「型」は、種々の加工方法(スタンピングやキャスティング)に用いられる型を包含し、スタンパということもある。また、印刷(ナノプリントを含む)にも用いられ得る。
背景技術
[0002] テレビや携帯電話などに用いられる表示装置やカメラレンズなどの光学素子には、通常、表面反射を低減して光の透過量を高めるために反射防止技術が施されている。例えば、空気とガラスとの界面に光が入射する場合のように屈折率が異なる媒体の界面を光が通過する場合、フレネル反射などによって光の透過量が低減し、視認性が低下するからである。
[0003] 近年、反射防止技術として、凹凸の周期が可視光(λ=380nm?780nm)の波長以下に制御された微細な凹凸パターンを基板表面に形成する方法が注目されている(特許文献1から4を参照)。反射防止機能を発現する凹凸パターンを構成する凸部の2次元的な大きさは10nm以上500nm未満である。
[0004] この方法は、いわゆるモスアイ(Motheye、蛾の目)構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を凹凸の深さ方向に沿って入射媒体の屈折率から基板の屈折率まで連続的に変化させることによって反射防止したい波長域の光の反射を抑えている。
[0005] モスアイ構造は、広い波長域にわたって入射角依存性の小さい反射防止作用を発揮できるほか、多くの材料に適用でき、凹凸パターンを基板に直接形成できるなどの利点を有している。その結果、低コストで高性能の反射防止膜(または反射防止表面)を提供できる。」(段落[0001]ないし[0005])

・「[0111] モスアイ用型100は、反射防止膜(反射防止表面)の製造に好適に用いられる。反射防止膜の製造に用いられるポーラスアルミナ層20の微細な凹部(細孔)22の断面形状は概ね円錐状である。図14(b)に誇張して示すように、微細な凹部22は、階段状の側面を有してもよい。微細な凹部22の二次元的な大きさ(開口部径:D_(p))は10nm以上500nm未満で、深さ(D_(depth))は10nm以上1000nm(1μm)未満程度であることが好ましい。また、微細な凹部22の底部は尖っている(最底部は点になっている)ことが好ましい。さらに、微細な凹部22は密に充填されていることが好ましく、ポーラスアルミナ層20の法線方向から見たときの微細な凹部22の形状を円と仮定とすると、隣接する円は互いに重なり合い、隣接する微細な凹部22の間に鞍部が形成されることが好ましい。なお、略円錐状の微細な凹部22が鞍部を形成するように隣接しているときは、微細な凹部22の二次元的な大きさD_(p)は平均隣接間距離D_(int)と等しいとする。したがって、反射防止膜を製造するためのモスアイ用型100のポーラスアルミナ層20は、D_(p)=D_(int)が10nm以上500nm未満で、D_(depth)が10nm以上1000nm(1μm)未満程度の微細な凹部22が密に不規則に配列した構造を有していることが好ましい。なお、微細な凹部22の開口部の形状は厳密には円ではないので、D_(p)は表面のSEM像から求めることが好ましい。ポーラスアルミナ層20の厚さt_(p)は約1μm以下である。」(段落[0111])

(オ)甲5の記載
取消理由で引用した甲第5号証(特開2010-79200号公報、以下、「甲5」という。)には、「光学素子、反射防止機能付き光学部品、および原盤」に関して、図面とともに次の記載(以下、総称して「甲5の記載」という。)がある。

・「【0012】
近年では、液晶表示装置などの各種表示装置の視認性をさらに向上することが望まれており、このような要望に応えるためには、上述の光学素子の反射防止特性をさらに向上することが重要である。
【0013】
したがって、本発明の目的は、優れた反射防止特性を有する光学素子、反射防止機能付き光学部品、および原盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
基体と、
基体表面に多数配列された、凸部または凹部である構造体と
を備え、
構造体が、使用環境下の光の波長以下のピッチで配列され、
構造体の深さ方向に対する実効屈折率が、基体へ向けて徐々に増加するとともに、2つ以上の変曲点を有する光学素子である。」(段落【0012】ないし【0014】)

・「【0042】
図4は、構造体の形状の一例を示す断面図である。構造体3は、この構造体3の頂部3tから底部3bに向かって徐々に広がる曲面を有していることが好ましい。このような形状にすることにより、転写性を良好にすることができるからである。
【0043】
構造体3の頂部3tは、例えば、平面、または凸状の曲面、好ましくは、凸状の曲面である。このように凸状の曲面とすることで、光学素子1の耐久性を向上することができる。また、構造体3の頂部3tに、構造体3よりも屈折率が低い低屈折率層を形成してもよく、このような低屈折率層を形成することで、反射率を下げることが可能となる。
【0044】
構造体3の曲面は、その頂部3tから底部3bの方向に向かって、第1の変化点Paおよび第2の変化点Pbの組をこの順序で2つ以上有することが好ましい。これにより、構造体3の深さ方向(図1中、-Z軸方向)に対する実効屈折率が、2つ以上の変曲点を有することができる。ここでは、頂部3tの頂点も第1の変化点Paといい、底部3bの底点も第2の変化点Pbという。
【0045】
また、頂部3tおよび底部3bを除く構造体3の側面には、該構造体3の頂部3tから底部3bの方向に向かって、第1の変化点および第2の変化点の組みがこの順序で1つ以上形成されていることが好ましい。この場合、構造体3の頂部3tから底部3bに向かう傾きが、第1の変化点Paを境にしてより緩やかになった後、第2の変化点Pbを境にしてより急になることが好ましい。また、上述のように、第1の変化点Paおよび第2の変化点Pbの組みをこの順序で1つ以上形成する場合、構造体3の頂部3tを凸状の曲面とする、もしくは構造体3の底部3bに、徐々に減衰して広がる裾部3cを形成することが好ましい(図4参照)。」(段落【0042】ないし【0045】)

・甲5には、図4として、次の図面が記載されている。

ウ 対比・判断
(ア)対比
訂正発明46と甲1発明を対比するに、甲1発明における「表面に凹凸構造を有するモスアイ構造」は、その機能、構成または技術的意義からみて、訂正発明46における「複数の第1の凸部を有する表面」に相当し、以下、同様に「硬化樹脂層」は「合成高分子膜」に、「疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物」は「潤滑剤」に、それぞれ、相当するから、両者は、次の点で相違または一応相違し、それ以外には、相違点は認められない。

<相違点1>
訂正発明46においては、「前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内」であるのに対し、甲1発明においては、「凸部間の平均間隔が、20nm以上250nm以下」である点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
訂正発明46においては、「前記表面が殺菌効果を有し」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明においては、上記発明特定事項を有しているか不明な点(以下、「相違点2」という。)。

<相違点3>
訂正発明46においては、「油で表面が処理されている」という発明特定事項を有するのに対し、甲1発明においては、上記発明特定事項を有しているか不明な点(以下、「相違点3」という。)。

(イ)判断
そこで、まず、相違点3について判断するに、甲1ないし5いずれにも、「潤滑剤」を含んだ「複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜」の表面を油で処理することは記載されていないし、「潤滑剤」を含んだ「複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜」の表面を油で処理することによる「合成高分子膜に付着した指紋等の汚れを目立ちにくくする」(本願明細書の段落【0183】を参照。)及び「付着した指紋を拭き取りやすい」(本願明細書の段落【0185】を参照。)という効果も記載されていない。
したがって、甲1発明及び甲1ないし5の記載に基づいて、相違点3に係る訂正発明46の発明特定事項を想到することは、当業者といえども容易になし得たこととはいえない。
よって、相違点1及び2について判断するまでもなく、訂正発明46は、甲1発明及び甲1ないし5の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、訂正発明46と甲1発明の間には、少なくとも相違点3があることから、訂正発明46は、当然、甲1発明ではない。

エ まとめ
以上のとおり、訂正発明46は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1ないし5の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、他に訂正発明46が特許を受けることができないとする理由もない。
したがって、訂正発明46は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(2)訂正発明50ないし52、54、55及び57ないし60についての独立特許要件
訂正発明50ないし52、54、55及び57ないし60は、訂正発明46をさらに限定した発明であるから、訂正発明46と同様に、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1ないし5の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、他に訂正発明50ないし52、54、55及び57ないし60が特許を受けることができないとする理由もない。
したがって、訂正発明50ないし52、54、55及び57ないし60は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

4 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし3は、特許法120条の5ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし3は、一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、請求項50ないし52、54、55及び57ないし60についての訂正を含む訂正事項1は、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
さらにまた、訂正事項1ないし3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、訂正後の請求項46ないし48及び50ないし60について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項46ないし48及び50ないし60について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1、5、8、12、13、46、47、53及び56に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、5、8、12、13、46、47、53及び56に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にある合成高分子膜の前記表面に、気体または液体を接触させることによって、前記気体または液体を殺菌する方法。」

「【請求項5】
前記複数の第1の凸部の隣接間距離は20nm超1000nm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の殺菌方法。」

「【請求項8】
前記複数の第1の凸部の側面の法線は、前記合成高分子膜の法線方向に垂直な方向に対して傾斜角を有し、前記傾斜角は、前記複数の第1の凸部の先端からの前記合成高分子膜の法線方向における距離に対して連続的にまたは不連続的に変化する、請求項1から7のいずれかに記載の殺菌方法。」

「【請求項12】
前記合成高分子膜は、潤滑剤をさらに含む、請求項1から11のいずれかに記載の殺菌方法。」

「【請求項13】
前記潤滑剤のHLB値は、7未満である、請求項12に記載の殺菌方法。」

「【請求項46】
複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、
前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、
前記表面が殺菌効果を有し、
潤滑剤をさらに含み、
油で表面が処理されている、合成高分子膜。」

「【請求項47】
前記潤滑剤のHLB値は、7未満である、請求項46に記載の合成高分子膜。」

「【請求項53】
前記複数の第1の凸部の隣接間距離は20nm超1000nm以下である、請求項46、47および49から52のいずれかに記載の合成高分子膜。」

「【請求項56】
前記複数の第1の凸部の側面の法線は、前記合成高分子膜の法線方向に垂直な方向に対して傾斜角を有し、前記傾斜角は、前記複数の第1の凸部の先端からの前記合成高分子膜の法線方向における距離に対して連続的にまたは不連続的に変化する、請求項46、47および49から55のいずれかに記載の合成高分子膜。」

2 取消理由の概要
取消理由の概要は次のとおりである。
なお、本件特許発明1、5、8、12及び13については、当審において、特許異議申立ての理由では取り消すことができないと判断したので、取消理由において指摘しなかった。

「1.(新規性)本件特許の請求項46及び53に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、本件特許の請求項46及び53に係る特許は取り消すべきものである。

2.(進歩性)本件特許の請求項46、47、53及び56に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し、本件特許の請求項46、47、53及び56に係る特許は取り消すべきものである。


第1 本件特許発明
・・・(略)・・・
第2 本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献等
甲第1号証:特開2013-33287号公報
甲第2号証:特開2008-197217号公報
甲第3号証:特開2012-78438号公報
甲第4号証:国際公開第2013/183576号
甲第5号証:特開2010-79200号公報
・・・(略)・・・
第3 甲1ないし5の記載及び甲1発明
・・・(略)・・・
第4 理由1(新規性)について
・・・(略)・・・
第5 理由2(進歩性)について
・・・(略)・・・」

3 取消理由についての判断
上記第2 3(1)のとおり、訂正発明46、すなわち本件特許発明46は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1ないし5の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、本件特許発明53は、本件特許発明46をさらに限定した発明であるから、本件特許発明46と同様に、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1ないし5の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
さらに、本件特許発明47及び56は、本件特許発明46をさらに限定した発明であるから、本件特許発明46と同様に、甲1発明及び甲1ないし5の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 むすび
以上のとおりであるから、請求項46、47、53及び56に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当するものではない
また、請求項1、5、8、12及び13に係る特許については、特許異議申立ての理由では取り消すことができない。

第4 結語
上記第3のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立ての理由によっては、請求項1、5、8、12、13、46、47、53及び56に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、5、8、12、13、46、47、53及び56に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にある合成高分子膜の前記表面に、気体または液体を接触させることによって、前記気体または液体を殺菌する方法。
【請求項2】
前記表面のヘキサデカンに対する静的接触角が51°以下である、請求項1に記載の殺菌方法。
【請求項3】
前記表面のヘキサデカンに対する静的接触角が31°以下である、請求項1または2に記載の殺菌方法。
【請求項4】
前記表面の水に対する静的接触角が133°以下である、請求項1から3のいずれかに記載の殺菌方法。
【請求項5】
前記複数の第1の凸部の隣接間距離は20nm超1000nm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の殺菌方法。
【請求項6】
前記複数の第1の凸部の高さは、50nm以上500nm未満である、請求項1から5のいずれかに記載の殺菌方法。
【請求項7】
前記複数の第1の凸部は、微生物と接触したときにしなることができる、請求項1から6のいずれかに記載の殺菌方法。
【請求項8】
前記複数の第1の凸部の側面の法線は、前記合成高分子膜の法線方向に垂直な方向に対して傾斜角を有し、前記傾斜角は、前記複数の第1の凸部の先端からの前記合成高分子膜の法線方向における距離に対して連続的にまたは不連続的に変化する、請求項1から7のいずれかに記載の殺菌方法。
【請求項9】
前記合成高分子膜は、前記複数の第1の凸部に重畳して形成された複数の第2の凸部をさらに有し、
前記複数の第2の凸部の2次元的な大きさは、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさよりも小さく、かつ、100nmを超えない、請求項1から8のいずれかに記載の殺菌方法。
【請求項10】
前記複数の第2の凸部は略円錐形の部分を含む、請求項9に記載の殺菌方法。
【請求項11】
前記複数の第2の凸部の高さは、20nm超100nm以下である、請求項9または10に記載の殺菌方法。
【請求項12】
前記合成高分子膜は、潤滑剤をさらに含む、請求項1から11のいずれかに記載の殺菌方法。
【請求項13】
前記潤滑剤のHLB値は、7未満である、請求項12に記載の殺菌方法。
【請求項14】
前記合成高分子膜は、離型剤で表面が処理されている、請求項1から13のいずれかに記載の殺菌方法。
【請求項15】
前記合成高分子膜は、油で表面が処理されている、請求項1から14のいずれかに記載の殺菌方法。
【請求項16】
複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、前記表面は殺菌効果を有し、前記表面に微生物が付着した合成高分子膜を用意する工程(a)と、
前記表面を水またはアルコールを含ませた布で拭くことによって、前記微生物を除去する工程(b)と
を包含する、合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項17】
前記表面のヘキサデカンに対する静的接触角が51°以下である、請求項16に記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項18】
前記表面のヘキサデカンに対する静的接触角が31°以下である、請求項16または17に記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項19】
前記表面の水に対する静的接触角が133°以下である、請求項16から18のいずれかに記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項20】
前記複数の第1の凸部の隣接間距離は20nm超1000nm以下である、請求項16から19のいずれかに記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項21】
前記複数の第1の凸部の高さは、50nm以上500nm未満である、請求項16から20のいずれかに記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項22】
前記複数の第1の凸部は、微生物と接触したときにしなることができる、請求項16から21のいずれかに記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項23】
前記複数の第1の凸部の側面の法線は、前記合成高分子膜の法線方向に垂直な方向に対して傾斜角を有し、前記傾斜角は、前記複数の第1の凸部の先端からの前記合成高分子膜の法線方向における距離に対して連続的にまたは不連続的に変化する、請求項16から22のいずれかに記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項24】
前記合成高分子膜は、前記複数の第1の凸部に重畳して形成された複数の第2の凸部をさらに有し、
前記複数の第2の凸部の2次元的な大きさは、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさよりも小さく、かつ、100nmを超えない、請求項16から23のいずれかに記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項25】
前記複数の第2の凸部は略円錐形の部分を含む、請求項24に記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項26】
前記複数の第2の凸部の高さは、20nm超100nm以下である、請求項24または25に記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項27】
前記合成高分子膜は、潤滑剤をさらに含む、請求項16から26のいずれかに記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項28】
前記潤滑剤のHLB値は、7未満である、請求項27に記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項29】
前記合成高分子膜は、離型剤で表面が処理されている、請求項16から28のいずれかに記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項30】
前記合成高分子膜は、油で表面が処理されている、請求項16から29のいずれかに記載の合成高分子膜の表面の再活性化方法。
【請求項31】
複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、前記表面が殺菌効果を有する、合成高分子膜と、
表面に油が付与されたカバーフィルムとを有し、
前記カバーフィルムは、前記カバーフィルムの前記表面に付与された前記油が前記複数の第1の凸部に接触するように配置されている、積層体。
【請求項32】
前記表面のヘキサデカンに対する静的接触角が51°以下である、請求項31に記載の積層体。
【請求項33】
前記表面のヘキサデカンに対する静的接触角が31°以下である、請求項31または32に記載の積層体。
【請求項34】
前記表面の水に対する静的接触角が133°以下である、請求項31から33のいずれかに記載の積層体。
【請求項35】
前記複数の第1の凸部の隣接間距離は20nm超1000nm以下である、請求項31から34のいずれかに記載の積層体。
【請求項36】
前記複数の第1の凸部の高さは、50nm以上500nm未満である、請求項31から35のいずれかに記載の積層体。
【請求項37】
前記複数の第1の凸部は、微生物と接触したときにしなることができる、請求項31から36のいずれかに記載の積層体。
【請求項38】
前記複数の第1の凸部の側面の法線は、前記合成高分子膜の法線方向に垂直な方向に対して傾斜角を有し、前記傾斜角は、前記複数の第1の凸部の先端からの前記合成高分子膜の法線方向における距離に対して連続的にまたは不連続的に変化する、請求項31から37のいずれかに記載の積層体。
【請求項39】
前記合成高分子膜は、前記複数の第1の凸部に重畳して形成された複数の第2の凸部をさらに有し、
前記複数の第2の凸部の2次元的な大きさは、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさよりも小さく、かつ、100nmを超えない、請求項31から38のいずれかに記載の積層体。
【請求項40】
前記複数の第2の凸部は略円錐形の部分を含む、請求項39に記載の積層体。
【請求項41】
前記複数の第2の凸部の高さは、20nm超100nm以下である、請求項39または40に記載の積層体。
【請求項42】
前記合成高分子膜は、潤滑剤をさらに含む、請求項31から41のいずれかに記載の積層体。
【請求項43】
前記潤滑剤のHLB値は、7未満である、請求項42に記載の積層体。
【請求項44】
前記合成高分子膜は、離型剤で表面が処理されている、請求項31から43のいずれかに記載の積層体。
【請求項45】
前記合成高分子膜は、油で表面が処理されている、請求項31から44のいずれかに記載の積層体。
【請求項46】
複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、
前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、
前記表面が殺菌効果を有し、
潤滑剤をさらに含み、
油で表面が処理されている、合成高分子膜。
【請求項47】
前記潤滑剤のHLB値は、7未満である、請求項46に記載の合成高分子膜。
【請求項48】(削除)
【請求項49】
複数の第1の凸部を有する表面を備える合成高分子膜であって、
前記合成高分子膜の法線方向から見たとき、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさは20nm超500nm未満の範囲内にあり、
前記表面が殺菌効果を有し、
油で表面が処理されている、合成高分子膜。
【請求項50】
前記表面のヘキサデカンに対する静的接触角が51°以下である、請求項46、47および49のいずれかに記載の合成高分子膜。
【請求項51】
前記表面のヘキサデカンに対する静的接触角が31°以下である、請求項46、47、49および50のいずれかに記載の合成高分子膜。
【請求項52】
前記表面の水に対する静的接触角が133°以下である、請求項46、47および49から51のいずれかに記載の合成高分子膜。
【請求項53】
前記複数の第1の凸部の隣接間距離は20nm超1000nm以下である、請求項46、47および49から52のいずれかに記載の合成高分子膜。
【請求項54】
前記複数の第1の凸部の高さは、50nm以上500nm未満である、請求項46、47および49から53のいずれかに記載の合成高分子膜。
【請求項55】
前記複数の第1の凸部は、微生物と接触したときにしなることができる、請求項46、47および49から54のいずれかに記載の合成高分子膜。
【請求項56】
前記複数の第1の凸部の側面の法線は、前記合成高分子膜の法線方向に垂直な方向に対して傾斜角を有し、前記傾斜角は、前記複数の第1の凸部の先端からの前記合成高分子膜の法線方向における距離に対して連続的にまたは不連続的に変化する、請求項46、47および49から55のいずれかに記載の合成高分子膜。
【請求項57】
前記複数の第1の凸部に重畳して形成された複数の第2の凸部をさらに有し、
前記複数の第2の凸部の2次元的な大きさは、前記複数の第1の凸部の2次元的な大きさよりも小さく、かつ、100nmを超えない、請求項46、47および49から56のいずれかに記載の合成高分子膜。
【請求項58】
前記複数の第2の凸部は略円錐形の部分を含む、請求項57に記載の合成高分子膜。
【請求項59】
前記複数の第2の凸部の高さは、20nm超100nm以下である、請求項57または58に記載の合成高分子膜。
【請求項60】
離型剤で表面が処理されている、請求項46、47および49から59のいずれかに記載の合成高分子膜。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-10-19 
出願番号 特願2015-527612(P2015-527612)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 越本 秀幸  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 加藤 友也
前田 寛之
登録日 2015-08-07 
登録番号 特許第5788128号(P5788128)
権利者 シャープ株式会社
発明の名称 殺菌作用を備えた表面を有する合成高分子膜、合成高分子膜を有する積層体、合成高分子膜の表面を用いた殺菌方法および合成高分子膜の表面の再活性化方法  
代理人 三宅 章子  
代理人 三宅 章子  
代理人 岡部 英隆  
代理人 田中 悠  
代理人 山下 亮司  
代理人 喜多 修市  
代理人 喜多 修市  
代理人 田中 悠  
代理人 岡部 英隆  
代理人 奥田 誠司  
代理人 奥田 誠司  
代理人 山下 亮司  

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