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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
管理番号 1323500
異議申立番号 異議2016-700082  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-31 
確定日 2016-11-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5761542号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5761542号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第5761542号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5761542号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成23年1月11日に出願した特願2011-2935号の一部を平成26年5月29日に新たな特許出願としたものであって、平成27年6月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人武田英莉、佐藤英晃、及び、西村太一のそれぞれにより特許異議の申立てがされ、平成28年4月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年7月8日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人武田英莉、佐藤英晃、及び、西村太一のそれぞれから平成28年8月23日付け、同22日付け、及び、同24日付けで意見書が提出がされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成28年7月8日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の(1)、(2)及び(3)のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の記載を、「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体と;前記取付部の周囲に配設された点灯装置と;前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁および前記前面壁には取付部に対応する開口部が形成され、前記点灯装置を覆うように前記本体に取付けられる点灯装置カバーと;実装面が前面側に向けられて前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側であるとともに前記点灯装置カバーの外側に配設された基板と;この基板上に複数の環状配列を形成して前記基板に実装された複数の発光素子と;前記発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、前記基板の実装面を覆う拡散部材と;前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材と;を具備することを特徴とする照明器具。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の記載を、「前記拡散部材に対して所定の距離を有するように前記器具本体に着脱可能に取付けられる前記カバー部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。」に訂正する。

(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の記載を、「本発明の実施形態による照明器具は、器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体と;、前記取付部の周囲に配設された点灯装置と;前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁および前記前面壁には取付部に対応する開口部が形成され、前記点灯装置を覆うように前記本体に取付けられる点灯装置カバーと;実装面が前面側に向けられて前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側であるとともに前記点灯装置カバーの外側に配設された基板と;この基板上に複数の環状配列を形成して前記基板に実装された複数の発光素子と;前記発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、前記基板の実装面を覆う拡散部材と;前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材と;を備えている。」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1の「周囲配設された」について、「周囲に配設された」に訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものと認められる。
さらに、訂正事項1は、請求項1の「前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられたカバー部材」について、「前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材」に特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0031】には、「上記のように構成された光源部2は、図4及び図5に代表して示すように、基板21が取付部6の周囲に位置して、発光素子22の実装面が前面側、すなわち、下方の照射方向に向けられて配設されている。」との記載があり、段落【0039】には、「カバー部材7は、アクリル樹脂等の透光性を有し、乳白色を呈する拡散性を備えた材料から略円形状に形成されており、中央部には不透光性の円形状の化粧カバー71が取付けられている。」との記載がある。
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものと認められ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項2の「カバー部材」について、請求項1の「前記カバー部材」に特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0040】には、「そして、カバー部材7は、光源部2を含めた本体1の前面側を覆うように本体1の外周縁部に着脱可能に取付けられるようになっている。」との記載がある。
そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものと認められ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】に記載されていた【課題を解決するための手段】を、訂正事項1により訂正された請求項1の記載に整合するように訂正されたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的としたものといえる。
そして、訂正事項3は、訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)一群の請求項に対する請求
訂正前の請求項1の記載を請求項2は引用する関係にあるから、上記訂正事項1?3よりなる本件訂正請求は、一群の請求項(請求項1、2)に対して請求されたものである。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正(訂正事項1?3)は、特許法第120条の5第2項第1、2及び3号に規定された事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下「本件発明1及び2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体と;
前記取付部の周囲に配設された点灯装置と;
前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁および前記前面壁には取付部に対応する開口部が形成され、前記点灯装置を覆うように前記本体に取付けられる点灯装置カバーと;
実装面が前面側に向けられて前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側であるとともに前記点灯装置カバーの外側に配設された基板と;
この基板上に複数の環状配列を形成して前記基板に実装された複数の発光素子と;
前記発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、前記基板の実装面を覆う拡散部材と;
前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記拡散部材に対して所定の距離を有するように前記器具本体に着脱可能に取付けられる前記カバー部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。」

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して平成28年4月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
なお、下記の刊行物は、武田英莉(以下、「特許異議申立人1」という。)による特許異議申立書(以下、「特許異議申立書1」という。)の甲第1?7号証(以下、「甲1?7」という。)である



甲1:特開2002-270026号公報
甲2:特開2007-27072号公報
甲3:特開2001-236817号公報
甲4:特開2008-300203号公報
甲5:特開2008-98116号公報
甲6:特開2002-367406号公報
甲7:特開2009-272263号公報

請求項1及び2に係る発明は、甲1発明、甲2?7に記載された技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.甲号証の記載
(1)甲1について
ア 甲1に記載された事項
甲1には、図1?3とともに、以下の事項が記載されている。
(1a)
「【0006】図示の実施形態は、天井1に対して固定され外周に係止部2が形成された引掛ローゼット3と、中央に前記引掛ローゼット3を通す孔4が設けられるとともに、前記孔4内に弾性付勢されて突出され前記係止部2に係止される被係止部5が設けられ、さらにこの被係止部5の外側位置には光源部6が設けられ、前記引掛ローゼット3の下面に接続されるプラグ7(及びコード7a)を介して受電される本体8と、前記プラグ7の下面及び前記被係止部5を外向きに変位させるために前記本体8の下面に露出された係止解除操作部9の下面を着脱可能に覆うカバー10とを備えた照明器具である。また、光源部6には多数の白色の発光ダイオード11…を備えている。・・・」
(1b)
「【0007】さらに詳述すれば、被係止部5はばね12で孔4に向けて弾性付勢されている。カバー10は可撓性樹脂で成形されると好ましく不透明でも半透明でもよいが、光源部6の下面を覆うことはないように配備されて、下面照度の向上に寄与している。カバー10はその上端の爪13が本体8の下面の図示されない係止孔に挿入されて係止される例を示しているが、他の取付構造でももちろんよい。発光ダイオード11…を搭載した基板14には整流器や電流制限抵抗などの点灯回路部品も搭載してもよいが、そのような点灯回路部品はプラグ7内に設けてもよい。また、光源部6の下面には適切な配光をもたらすための透光レンズ15が設けられている。」
(1c)
「【0009】以上のように、カバー10は要所のみを効果的にカバーして外観を向上し、下面照度を低下させることがない。」

イ 甲1に記載された発明
甲1には、「点灯回路部品はプラグ7内に設けてもよい」と記載されているところ(上記ア(1b)参照)、図1?2を併せ見ると、「カバー10」は、プラグ7とともに当該「点灯回路部品」を覆うようになっているといえること、並びに、上記ア(1a)?(1c)及び図1?3の記載からみて、本件発明1の記載に則ると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲1発明〕
「天井に配置された引掛ローゼット3に取り付けられる被係止部5を有する本体8と;
点灯回路部品と;
前記本体8から照射方向に向かって突出した前面部が形成され、前記点灯回路部品を覆うように前記本体8に取付けられるカバー10と;
実装面が前面側に向けられて前記カバー10の前記前面部よりも天井1側であるとともに前記カバー10の外側に配設された基板14と;
この基板14上に複数の環状配列を形成して前記基板14に実装された複数の発光ダイオード11と;
前記基板14の実装面を覆う透光レンズ15と;
を具備する照明器具。」

(2)甲2について
甲2には、図1、4及び5とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0009】
金属板1および金属側板2は鉄またはアルミニウムなどからなり、その外面には放熱に支障がない程度の白色塗装を施して光反射性を高めると好ましい。LEDユニット4には、図示されない1個または複数個の高輝度・高効率のLEDチップおよび支持基板などが内蔵される。LEDユニット4の表面側には透明の合成樹脂製の外殻、または細かい凹凸形状やレンズ形状などを施して光散乱性や光指向性などを増した透明の合成樹脂製の外殻を備え、背面側には前記金属ベース部3が固定されている。」
(2b)
「【0012】
・・・金属板1および金属側板2は一体的に形成されて照明器具の本体を構成する反射板を成し、この反射板は照明器具の本体を構成する第二金属板6の下面側にビスその他の適宜手段で固定されている。前記反射板すなわち金属板1の略中央には孔7が形成される。第二金属板6は金属板1よりも大径を成し、その略中央には孔8が形成されるとともに孔8の近辺は他の部分よりも低く形成される段差状を成している。点灯制御回路5は第二金属板6側に適宜手段で固定されているのが一般的に好ましい。また、第二金属板6の外周付近には図示されないグローブ支持具などを設けており、これにより合成樹脂製などによる半透光性のグローブ9が前記グローブ支持具に対して着脱可能に支持されている。」
(2c)
「【0013】
・・・天井Cには引掛ローゼット10が固定されており、引掛ローゼット10に対して本照明器具が取り付けられている。引掛ローゼット10はその下端に鍔状の係止部11があるタイプを例示している。第二金属板6の中央付近の前記段差状部下面には被取付具12が固定され、その略逆L状の被係止部13がバネ14により中心孔方向に付勢されて、被係止部13の先端下面が係止部11の上面に係止されることにより、本照明器具が天井Cにいわゆる直付け状態で取り付けられている。」

(3)甲3について
甲3には、図1とともに、以下の事項が記載されている。
(3a)
「【0006】図1?3の実施形態は、天井1に固定された引掛ローゼット2に接続される引掛プラグ3を金属製または合成樹脂製の天板4の中央に固定し、引掛プラグ3において天板4の下面に位置する部分の外周部に高周波点灯回路などを構成する回路部品を搭載した点灯回路基板5を配置し、点灯回路基板5の下面を天板4に固定した反射板6で覆い、反射板6の下面にランプ7を設けた照明器具である。」
(3b)
「【0007】・・・天板4の下面にはグローブ11が適宜手段で取り付けられる。・・・」

(4)甲4について
甲4には、図1(a)(b)とともに、以下の事項が記載されている。
(4a)
「【0029】
器具本体10は、鉄板等の金属に白色塗装を施した一辺が約500mmの正方形をなすシャーシーとして構成され、シャーシーの略中央部には天井等の器具取付面Aに設置された引掛シーリング11に着脱可能に設置されるアダプタ12を設ける。さらに、アダプタ12の周囲の空間部に光源体20を点灯するための点灯装置13を取り付け、対向する辺の外縁部14、15に光源体20を設置するための設置部16、17を設ける。図中18は、リモコン受光部である。」
(4b)
「【0032】
反射体40は、鉄板等の金属に白色塗装を施した平板状をなし、両端部を2本のそれぞれの光源体20における各LED21に対向し、中間部分から器具本体の略中央部に向かって連続的に徐々に傾斜させた傾斜部41を形成する。反射体は、器具本体10を構成するシャーシーの略中央部に、ネジ若しくはスポット溶接等の手段で固定される。」
(4c)
「【0033】
グローブ50は、透光性を有する乳白色の半透明な合成樹脂で構成し、浅い皿状の球面状をなす発光部51と、器具本体10の外縁部14、15に対応する部分に外周部を残して上面を開口することにより形成した開口部52とを一体に形成し、器具本体の下方から被せることにより、光源体20および反射体40を覆うように器具本体の下面全体を囲むようにして取り付けられる。グローブ50は、その肉厚を器具本体10の外縁部14、15に対応するグローブの外周部から中央部にいくに従い薄くなるようにして成形し、外縁部から中央部にいくに従い透過率が高くなるように構成する。なお、グローブ50は公知の凹凸の係合手段や取付金具等の手段で器具本体の外縁部に着脱可能に取り付けられる。」

(5)甲5について
甲5には、図1及び2とともに、以下の事項が記載されている。
(5a)
「【0024】
・・・図示していないが、照明器具1は、例えば部屋などの建築物の天井面に設置され例えば商用電源などの外部電源と接続する例えば引掛ローゼットや引掛シーリングなどの配線器具に係合する例えば引掛ローゼットアダプタや引掛シーリングアダプタなどの取付アダプタと、例えば細長い金属板などで形成され放電灯2を支持するランプ支持具と、放電灯2を収納して器具本体3の上面側全体を覆い被せるようにして取り付けられるグローブとをも備える。グローブは、例えばアクリル樹脂など乳白色の透過拡散性を有する樹脂材料で形成されたものである。・・・」
(5b)
「【0027】
器具本体3は例えば金属板などで円板状に形成されたものであり、円状の底面部30と、底面部30の外縁から上方に延設された段差部31と、段差部31の外縁から外方に延設された円環部32と、円環部32の外縁から上方に延設された筒状の端部33とを一体に備えている。底面部30の中央には、建築物の配線器具(図示せず)への取付用に設けられた長円状(小判状)の取付部34が設けられている。この取付部34には、円状の開口35が中央に形成され、この開口35の周囲に1対の孔部36,36(図2参照)が形成されている。円環部32には、グローブに設けられた突出部(図示せず)と係合するための3つの係合部37,37,37(図2参照)が同一円上に等間隔で設けられている。上記それぞれの係合部37がグローブの突出部と係合することによって、グローブが器具本体3に取り付けられる。また、底面部30の上面には、放電灯2を装着するソケット38が設けられ、器具本体3はソケット38を通じて放電灯2を上面側で保持する。このソケット38は電線(図示せず)を介して点灯回路基板5の点灯回路と電気的に接続する。」
(5c)
「【0028】
反射板4は例えば金属板などで形成されたものであり、円錐台状の主要部40と、主要部40の外縁から外方に延設された円環部41とを一体に備えている。主要部40には、長円状(小判状)の開口42が中央に形成され、開口42の短手方向の外方に、保護ケース8が嵌め込まれる長方形状の開口43が形成され、さらに外縁に、ソケット38が挿入される開口44が形成されている。つまり、開口43は、器具本体3の中心とソケット38との間に形成されていることになる。」

(6)甲6について
甲6には、図1及び2とともに、以下の事項が記載されている。
(6a)
「【0021】図3は、リング状拡散板3を示す平面図、側面図および断面図である。本例のリング状拡散板3は、円筒断面の管を半割り状態にした断面形状をしている。すなわち、ほぼ半円形の断面形状をしている。この形状のリング状拡散板3は、例えば、半透明の乳白色のアクリル平板を真空成形することにより得ることができ、この場合には、約100℃の耐熱性が得られる。また、リング状拡散板3の湾曲内周面33には表面処理を施して粗面として拡散効果を高めることが望ましい。」
(6b)
「【0022】次に、図4はリング状LED基板5に実装されたLED6の配列状態を示す説明図である。この図に示すように、多数個のLED6が円周方向に向けて同心円状に一定の間隔で密な状態で3列形成されている。図において最も外側の列は回路抵抗8の列である。このようにLED6を配列することにより、リング状拡散板3のリング状内周面33の全体にLEDからの出射光を均一に照射できるので、部分的に暗部が発生することがない。」

(7)甲7について
甲7には、図1及び2とともに、以下の事項が記載されている。
(7a)
「【0014】
図1は、本発明にかかるLEDランプの一例を平面図で示しており、図2には図1のII-II線に沿う断面図を示している。図1および図2に示すLEDランプAは、環状基板10、放熱部材20、LEDモジュール30、口金40、および、拡散板50を備えている。なお、図1では、拡散板50を省略している。このLEDランプAは、たとえば蛍光灯の代替として、一般用蛍光灯照明器具に取り付けられて用いられる。」
(7b)
「【0015】
環状基板10は、4個の同形の湾曲基板11を周方向に沿って並べて組み合わせて環状としたものである。湾曲基板11は、円弧状に形成されている。湾曲基板11の周方向における一方の端部を通る直線L1と、他方の端部を通る直線L2とが成す角tは、たとえば85.8°となっている。湾曲基板11はアルミ基板であり、表面に積層された絶縁層12と、絶縁層12の上に積層された配線パターン13,14とを備えている。」
(7c)
「【0021】
拡散板50は、光拡散材料によって平面視円環状に形成されており、LEDモジュール30から出射された光を拡散させるように設置されている。本実施形態では、拡散板50の断面は半円環状となっている。」

なお、 特許異議申立人1は、平成28年8月23日付けの意見書に添付して参考資料1?8を提出している。

4.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第2項)について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「引掛ローゼット3」、「被係止部5」、「本体8」、「点灯回路部品」、「カバー10」、「前面部よりも天井1側」、「基板14」及び「発光ダイオード11」は、それぞれ、本件発明1の「配線器具」、「取付部」、「器具本体」、「点灯装置」、「点灯装置カバー」、「前面部よりも器具取付面側」、「基板」及び「発光素子」に相当する。
甲1発明の「透光レンズ15」は、「適切な配光をもたらすための透光レンズ15」であり、甲1発明の「前記基板14の実装面を覆う透光レンズ15」と、本件発明1の「前記発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、前記基板の実装面を覆う拡散部材」とは、「前記基板の実装面を覆う部材」の限りで共通する。
以上から、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体と;
点灯装置と;
前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁が形成され、前記点灯装置を覆うように前記本体に取付けられる点灯装置カバーと;
実装面が前面側に向けられて前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側であるとともに前記点灯装置カバーの外側に配設された基板と;
この基板上に複数の環状配列を形成して前記基板に実装された複数の発光素子と;
前記基板の実装面を覆う部材と;
を具備する照明器具。」
<相違点1>
「点灯装置」に関して、本件発明1では、「前記取付部の周囲に配設された点灯装置」であるのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「点灯装置カバー」の「前面壁」に関して、本件発明1では、「前記前面壁には取付部に対応する開口部が形成され」ているのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1は、「前記発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、前記基板の実装面を覆う拡散部材と;前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材と;を具備する」のに対して、甲1発明は、「前記基板14の実装面を覆う透光レンズ15」を具備する点。

イ 判断
以下、事案に鑑み、相違点3から検討する。
<相違点3について>
(ア)
「発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、基板の実装面を覆う拡散部材(以下、「技術事項A」という。)と;前記基板及び前記複数の発光素子を含めた器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材(以下、「技術事項B」という。)と;を具備する」という上記相違点3に係る本件発明1の構成は、甲2?7には記載されていないから(甲2の「透光性のグローブ9」、甲3の「グローブ11」、甲4の「レンズ体30」と「グローブ50」、甲5の「グローブ(上記3.(5)(5a)参照)」、甲6の「リング状拡散板3」、及び、甲7の「拡散板50」は、いずれも、上記相違点3に係る本件発明1の構成を備えているとはいえないから)、甲2?7に記載された技術事項を甲1発明に適用することで、甲1発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成に到ることは、当業者が容易になし得えたとはいえない。
(イ)
また、甲1において、「透光レンズ15」は、「適切な配光をもたらすための透光レンズ15」であり(段落【0007】)、「カバー10は要所のみを効果的にカバーして外観を向上し、下面照度を低下させることがない」こと(段落【0008】)から、既に適切な配光となっており外観も向上している甲1発明において、あえて配光の状態を変更し照度を低下させるように、さらに拡散性を有するカバーを設けることは、通常想定し得ないといえる。
そうすると、甲1発明において、さらに拡散性を有するカバーを設ける動機付けはないから、仮に、上記技術事項A及び上記技術事項Bの両方を満たすことが知られており(特許異議申立人1が意見書に添付して提出した参考資料6(特開2010-3683号公報)を参照)、上記技術事項A及び上記技術事項Bが、それぞれ周知技術であったとしても、これらの技術事項を甲1に発明に適用して、甲1発明において、さらに拡散性を有するカバーを設けて、上記相違点3に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2?7に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、また、本件発明1は、甲1発明、甲2?7に記載の技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 作用効果について
本件発明1が奏する作用効果(発明の詳細な説明の段落【0047】の「発光素子22から出射された光は、複数の発光素子22を連続して覆う拡散部材3によって半径方向へ拡散されるとともに、前面側へ放射される。前面側へ放射された光は、カバー部材7を透過して外方へ照射される。したがって、照射光の均斉度の向上を図ることができるとともに、各発光素子22の輝度による粒々感を抑制することが可能となる。」等の作用効果)は、甲1発明、甲2?7に記載の技術事項及び周知技術から、当業者が予測し得る範囲内のものであるとはいえず、格別のものといえる。

エ 特許異議申立人1の意見について
特許異議申立人1は、平成28年8月23日付けの意見書において、「『カバー部材が拡散性を備えた乳白色である点』・・・は、例えば、甲第4号証・・・、甲第5号証・・・、甲第6号証・・・、及び参考資料1?6、8に記載されたとおり、当該技術分野においては技術常識である。」(24頁24?27行)、「したがって、甲第2号証、甲第5号証に記載された拡散部材に関する技術常識手段を考慮すると、甲1発明に常套手段(甲2?5)、周知技術を付加することに阻害要因はない。」(27頁3?5行)及び「請求人の『本願特徴である・・・(ウ)(技術事項Aと)と(エ)(技術事項B)を組み合わせることに関する動機付けとなる開示も見当たらない』旨の主張は、・・・甲第2号証、甲第5号証及び参考資料6?8に記載されているとおり、当該技術分野においては、技術常識であるから、その主張は失当である」旨(28頁8?16行)などと主張している。
しかしながら、上記イ<相違点3について>(ア)及び(イ)のとおりであるから、当該主張は採用できない。

(2)取消理由についてのまとめ

上記(1)イ(ア)及び(ウ)並びに上記(1)ウ及びエのとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2?7に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件発明1を引用する本件発明2についてもこれと同様であるといえる。
したがって、本件発明1及び2は、甲1発明及び甲2?7に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

上記(1)イ(イ)及び(ウ)並びに上記(1)ウ及びエのとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、甲2?7に記載の技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件発明1を引用する本件発明2についてもこれと同様であるといえる。
したがって、本件発明1及び2は、甲1発明、甲2?7に記載の技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について
(3-1)
特許異議申立人佐藤英晃(以下、「特許異議申立人2」という。)の特許異議申立書(以下、「特許異議申立書2」という。)に記載した特許異議申立理由(特許法第29条第2項)について

特許異議申立人2は、特許異議申立書2に添付して、刊行物である甲第1の1?8号証(以下、「甲1Aの1?甲8A」という。)を提出し、本件特許発明1及び2は、甲1Aの1?甲8Aに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

ア 甲号証について
甲1Aの1:台湾実用新案公告第394418号公報
甲1Aの2:台湾実用新案公告第394418号公報の和訳
甲2Aの1:台湾実用新案公告第366639号公報
甲2Aの2:台湾実用新案公告第366639号公報の引用箇所の和訳
甲2Aの3:登録実用新案第3154761号公報
甲3A:特開2002-270026号公報
甲4A:特開2008-124008号公報
甲5A:特開2004-158413号公報
甲6A:特開2003-203505号公報
甲7A:特開2002-367406号公報
甲8A:登録実用新案第3160808号公報

甲1Aの1(台湾実用新案公告第394418号公報)の第一?四図などを参照し、本件発明1の記載に則ると、甲1Aの1には、次の発明(以下、「甲1A発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲1A発明〕
「灯ホルダ10と;
電源制御回路基板40と;
前記電源制御回路基板40を覆うように前記灯ホルダ10に取付けられる反射カバー50と;
実装面が前面側に向けられ、前記反射カバー50の外側に配設された基板31と;
この基板31上に複数の環状配列を形成して前記基板31に実装された複数のLED311と;
前記LED311が実装された環状配列に沿って突条部を有し、前記基板31の実装面を覆う透光材質からなるカバー32と;
灯ホルダ10の上を覆い、反射カバー50の管体52が貫設され、当該管体52に蓋部53を締め付けて固定される、灯のかさ20と;
を具備するLED照明灯。」

イ 対比
本件発明1と甲1A発明とを対比すると、甲1A発明の「灯ホルダ10」、「電源制御回路基板40」、「反射カバー50」、「基板31」、「LED311」及び「LED照明灯」は、それぞれ、本件発明1の「器具本体」「点灯装置」、「点灯装置カバー」、「基板」、「発光素子」及び「照明器具」に相当し、一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「器具本体と;
点灯装置と;
前記点灯装置を覆うように前記本体に取付けられる点灯装置カバーと;
実装面が前面側に向けられ、前記点灯装置カバーの外側に配設された基板と;
この基板上に複数の環状配列を形成して前記基板に実装された複数の発光素子と;
を具備する照明器具。」
<相違点1>
「器具本体」が、本件発明1は、「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する」のに対して、甲1A発明では、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「点灯装置」が、本件発明1は、「前記取付部の周囲に配設された」のに対して、甲1A発明では、そのように特定されていない点。
<相違点3>
「点灯装置を覆うように本体に取付けられる点灯装置カバー」が、本件発明1は、「前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁および前記前面壁には取付部に対応する開口部が形成され」ているのに対して、甲1A発明では、そのように特定されていない点。
<相違点4>
「実装面が前面側に向けられ、点灯装置カバーの外側に配設された基板」が、本件発明1は、「前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側である」のに対して、甲1A発明では、そのように特定されていない点。
<相違点5>
本件発明1は、「前記発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、前記基板の実装面を覆う拡散部材と;前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材と;を具備する」のに対して、甲1A発明は、「LED311が実装された環状配列に沿って突条部を有し、前記基板31の実装面を覆う透光材質からなるカバー32と;灯ホルダ10の上を覆い、反射カバー50の管体52が貫設され、当該管体52に蓋部53を締め付けて固定される、灯のかさ20と;を具備する」点。

ウ 判断
以下、事案に鑑み、相違点3から検討する。
(ア)
甲1Aの1の第一及び二図を参照し、甲1A発明において、光反射カバー50(点灯装置カバー)の前面壁に取付部に対応する開口部を形成しようとすると、少なくとも、灯のかさ20を固定している蓋部53を取り除く必要があると考えられるが、蓋部53を取り除くと、灯のかさ20を固定できなくなってしまうことから、光反射カバー50(点灯装置カバー)に開口部を形成することには阻害要因があるといえるし、そもそも、甲1発明Aの光反射カバー50は、側壁ないし斜壁を有しているとは認められるものの、開口部の形成の対象となる前面壁が存在しているとはいえないから、甲1発明Aにおいて、上記相違点3に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2は、甲1A発明及び甲2Aの1?8Aに記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3-2)
特許異議申立人西村太一(以下、「特許異議申立人3」という。)の特許異議申立書(以下、「特許異議申立書3」という。)に記載した特許異議申立理由(特許法第29条第2項)について

特許異議申立人3は、特許異議申立書3に添付して、刊行物である甲第1?11号証(以下、「甲1B?甲11B」という。)を提出し、本件特許発明1及び2は、甲1Bに記載された発明及び甲2B?甲11Bに記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

ア 甲号証について
甲1B:特開2009-9890号公報
甲2B:特開平6-290628号公報
甲3B:特開平8-329709号公報
甲4B:特開2004-158398号公報
甲5B:特開2002-270026号公報
甲6B:特開2010-192306号公報
甲7B:登録実用新案第3162973号公報
甲8B:特開2008-139708号公報
甲9B:特開2010-192347号公報
甲10B:登録実用新案第3088575号公報
甲11B:特開2006-221939号公報

甲1B(特開2009-9890号公報)の発明の詳細な説明及び図面(特に、段落【0022】、【0026】、【0036】、【0039】、【0045】?【0053】、【0062】、【0069】?【0071】及び【0081】並びに図1?4及び7を参照。段落【0039】、【0062】及び【0069】?【0071】の記載を参照すると、図2(b)のものにおいて、発光モジュール15をリング状に連結し、LED11の配列として図7(c)の配列を採用してもよいといえるから、LED11が基板11a上に複数の環状配列を形成して実装されている態様が記載されているといえる。)を参照して、本件発明1の記載に則ると、甲1Bには、次の発明(以下、「甲1B発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲1B発明〕
「器具取付面に設置された引掛シーリングに取り付けられるアダプタ24を有する器具本体21と;
前記アダプタ24の周囲に配設された点灯装置25と;
アダプタ24に対応する開口部が形成され、前記点灯装置25を覆うように前記器具本体21に取付けられる反射体22と;
前記反射体22の外側に配設された基板11aと;
この基板11a上に複数の環状配列を形成して前記基板11aに実装された複数のLEDと;
導光体12から出射された白色の光が導入され断面略楕円形状をなす出射面13bから平行光となって出射されるコリメータレンズ13と、
前記基板11a及び前記複数のLEDを含めた前記器具本体21の前面側を覆うように前記器具本体21に取付けられたグローブ23と;
を具備する照明器具。」

イ 対比
本件発明1と甲1B発明とを対比すると、甲1B発明の「引掛シーリング」、「アダプタ24」、「器具本体21」、「点灯装置25」、「反射体22」、「基板11a」、「LED」及び「グローブ23」は、それぞれ、本件発明1の「配線器具」、「取付部」、「器具本体」、「点灯装置」、「点灯装置カバー」、「基板」、「発光素子」及び「カバー部材」に相当し、一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体と;
前記取付部の周囲に配設された点灯装置と;
取付部に対応する開口部が形成され、前記点灯装置を覆うように前記本体に取付けられる点灯装置カバーと;
前記点灯装置カバーの外側に配設された基板と;
この基板上に複数の環状配列を形成して前記基板に実装された複数の発光素子と;
を具備することを特徴とする照明器具。」
<相違点1>
「取付部に対応する開口部が形成され、点灯装置を覆うように本体に取付けられる点灯装置カバー」が、本件発明1では、「前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁および前記前面壁には取付部に対応する開口部が形成され」ているのに対して、甲1B発明では、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「点灯装置カバーの外側に配設された基板」が、本件発明1では、「実装面が前面側に向けられて前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側であ」るのに対して、甲1B発明では、そのように特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1は、「前記発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、前記基板の実装面を覆う拡散部材と;前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材と;を具備する」のに対して、甲1B発明は、「導光体12から出射された白色の光が導入され断面略楕円形状をなす出射面13bから平行光となって出射されるコリメータレンズ13と;前記基板11a及び前記複数のLEDを含めた前記器具本体21の前面側を覆うように前記器具本体21に取付けられたグローブ23と;を具備する」点。

ウ 判断
以下、事案に鑑み、相違点3から検討する。
(ア)
甲1Bには、「コリメータレンズ13」に関して、「上記構成の照明装置10を点灯すると、各LED11が発光し、図2に示すように、各LEDから放射される光は導光体12の入射面12aから導光体内に導入され、導光体内で青色LEDチップから放射される青色の光と黄色蛍光体から放射される黄色の光が混色されて白色の光となり出射面から出射される。出射された白色の光はコリメータレンズ13の第一焦点aから導入され、第一焦点aを出た光が無収差の平行光となって断面略楕円形状をなす出射面13bから上方に出射される。」(段落【0039】)及び「上記に設置された照明器具20を点灯すると、2台の照明装置10のそれぞれのLED11が発光し、LEDから放射された光は各LED11の発光中心xがコリメータレンズ13の第一焦点aより所定の寸法cだけ片寄っているので、光が拡散せずに必要とするグローブ23側と反射体22の傾斜部22aに向かって放射され、さらに反射体で反射した光はグローブ23を内面側から照射し、部屋全体にわたり略均一な明るさで照明する。この際、2台の照明装置10が、それぞれ器具本体21の外縁部26、27に配設され、従来のように環形蛍光ランプが器具本体の中央部に存在しない。このため、ランプイメージがグローブの照射中心部に現れずに均斉度が向上する。」(段落【0052】)と記載されているところ、当該記載から、甲1B発明の「コリメータレンズ13」は、光を拡散させないように平行光を照射して、反射体22及びグローブ23と一体となって、略均一な明るさで照明し、ランプイメージがグローブの照射中心部に現れずに均斉度が向上するように機能すものであるといえるから、当該コリメータレンズ13を、光を拡散させるように構成すれば、上記のように機能しなくなり、甲1B発明は意味をなさいなものとなってしまうと解されるから、当該コリメータレンズ13を拡散部材とすることには、阻害要因が存在しているといえる。
したがって、甲1B発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成(当該構成の少なくとも拡散部材)を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)
また、上記相違点3に係る本願発明1の構成(すなわち、・・・拡散部材と、・・・拡散性を有する乳白色のカバー部材とを組み合わせたもの)は、甲1B?甲11Bのいずれにも記載されていない。
さらに、上記相違点3に係る本願発明1の構成が備える技術事項A及び技術事項Bが、甲2B?甲11Bの記載から、それぞれ周知技術であるといえるとしても(上記(1)イ<相違点3について>(イ)なども参照)、上記(ア)の阻害要因が存在するから、それら周知技術を甲1B発明に適用することで、甲1B発明において、上記相違点3に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1B発明及び甲2B?甲11Bに記載の技術事項(周知技術)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ)
なお、特許異議申立人3は、平成28年8月24日付けの意見書に添付して、参考資料1?2の2(以下、「参考資料1B?2Bの2」という。)を、それぞれ提出しているところ、参考資料1B?2Bの2のいずれにも、上記相違点3に係る本件発明1の構成は記載されていないし、仮に、参考資料1B?2Bの2から、当該構成に関する技術事項A及び技術事項Bがそれぞれ周知技術であるといえるとしても、上記(イ)のとおり、それらの周知技術の適用の際に、甲1B発明には、阻害要因があるから、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2は、甲1B発明、甲2Aの1?8Aに記載の技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3-3)
特許異議申立人1の特許異議申立書1に記載した特許異議申立理由(特許法第36条第6項第2号)について

本件発明1及び2において、「周囲配設」、「取付部」、及び、「取付部」と「点灯装置」の関連性が明確でない旨、特許異議申立人1は主張している。
しかしながら、明細書の発明の詳細な説明の段落【0031】、【0034】?【0036】及び図面(特に図2及び4)等を参照すると、本件発明1の「取付部」及び「点灯装置」に関する発明特定事項は、その文意も含め、明確であるし、第2 2.(1)で述べたように、「周囲配設」は、「周囲に配設」と訂正された。
したがって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2は、明確でないとはいえない。
よって、本件発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていないとはいえない。

(3-4)
特許異議申立人3の特許異議申立書3に記載した特許異議申立理由(特許法第36条第4項第1号、同法同条第6項第1号及び第2号、同法17条の2第3項、並びに、同法第44条第1項)について

発明の詳細な説明並びに本件発明1及び2に記載の「取付部」、「前面壁」、「突状部」及び「周囲配設」等は、当業者がその発明を実施できる程度に明確でなく、特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第2号の要件をみたしておらず、本件発明1及び2の「前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁」、「前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側前記点灯装置カバーの外側に配設された基板」及び「前記基板及び前記複数の発光素子を含めた・・・カバー部材」等は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載のない事項を包含するものであり、それらの記載から自明な事項であるともいえないから、特許法第36条第6項第1号及び第2号、同法17条の2第3項、並びに、同法第44条第1項の要件をみたしていない旨、特許異議申立人3は主張している。
しかしながら、明細書の発明の詳細な説明の段落【0015】、【0018】、【0024】、【0031】、【0034】?【0036】及び図面(特に図2、4及び7)等を参照すると、本件発明1の「取付部」、「前面壁」及び「突状部」等に関する発明特定事項は、その文意も含め、明確である。
また、明細書の発明の詳細な説明の段落【0015】の記載は、全体を通して文意は充分理解できるし、第2 2.(1)で述べたように、「周囲配設」は、「周囲に配設」と訂正された。
そして、「前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁」、「前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側前記点灯装置カバーの外側に配設された基板」及び「前記基板及び前記複数の発光素子を含めた・・・カバー部材」等は、願書に添付した明細書及び図面を参照すると、それらの記載から自明な事項であるといえる。
したがって、本件の発明の詳細な説明又は図面は、実施可能要件を満たしていないとはいえないし、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2は、明確でないとはいえない。
また、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2は、サポート要件を満たさないものではなく、本件は、新規事項を追加するものではなく、本件は、適法に分割されたものではないとはいえない。
よって、本件発明1及び2は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の要件を満たしていないとはいえないし、本件は、特許法第36条第4項第1号、同法17条の2第3項、及び、同法第44条第1項の要件を満たしていないとはいえない。

(3-5)
以上から、上記(3-1)?(3-4)の特許異議申立理由は、いずれも採用できない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
照明器具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光源としてLED等の発光素子を用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅用の照明器具においては、主光源に環状の蛍光ランプを用い、この環状の蛍光ランプの下方側を覆うようにカバー部材(セード)を設けて、外観形状を丸形に構成するものが普及している。
【0003】
一方、近時、LED等の発光素子の高出力化、高効率化及び普及化に伴い、光源として発光素子を用いて長寿命化が期待できる照明器具が開発されている。光源として発光素子を用いて、従来のように環状の蛍光ランプを用いた照明器具と同様な態様で照明器具を構成するには、例えば、天井面に設置された引掛けシーリングボディへの取付部の周囲に複数の発光素子を配置し、これら発光素子から出射される光を直下方向の所定の範囲に照射させる必要がある。
【0004】
このように光源として複数の発光素子を取付部の周囲に配置した場合には、従来の環状の蛍光ランプを用いた場合と同様な態様で構成でき、また、長寿命化や薄型化が期待できる照明器具を実現することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】シャープ/LEDシーリングライト[平成23年1月6日検索](http://www.sharp.co.jp/corporate/news/100819-a-2.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光源としてLED等の発光素子を用いると、発光素子はその出射光の指向性が強く輝度が高いため、粒々感が目立ち、輝度が均一化されにくく、照射光の均斉度が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、複数の発光素子を取付部の周囲に配置したものにおいて、照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による照明器具は、器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体と;、前記取付部の周囲に配設された点灯装置と;前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁および前記前面壁には取付部に対応する開口部が形成され、前記点灯装置を覆うように前記本体に取付けられる点灯装置カバーと;実装面が前面側に向けられて前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側であるとともに前記点灯装置カバーの外側に配設された基板と;この基板上に複数の環状配列を形成して前記基板に実装された複数の発光素子と;前記発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、前記基板の実装面を覆う拡散部材と;前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材と;を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る照明器具を示す斜視図である。
【図2】同照明器具を示す分解斜視図である。
【図3】同照明器具においてカバー部材及び点灯装置カバーを取外して下方から見て示す概略の平面図である。
【図4】同照明器具を示す断面図である。
【図5】図4中、A部を示す拡大図である。
【図6】同照明器具における1枚の基板を取り出して示す平面図である。
【図7】同照明器具における光源部と拡散部材とを組み合わせた状態で一部拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図7を参照して説明する。各図においてリード線等による配線接続関係は省略して示している場合がある。なお、同一部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
本実施形態の照明器具は、器具取付面に設置された配線器具としての引掛けシーリングボディに取付けられて使用される一般住宅用のものであり、基板に実装された複数の発光素子を有する光源部から放射される光によって室内の照明を行うものである。
【0013】
図1乃至図4において、照明器具は、本体1と、光源部2と、拡散部材3と、点灯装置4と、点灯装置カバー5と、取付部6と、カバー部材7とを備えている。また、器具取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAを備えている。このような照明器具は、丸形の円形状の外観に形成され、前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。
【0014】
図2乃至図5に示すように、本体1は、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から円形状に形成されたシャーシであり、略中央部に、後述する取付部6を配設するための円形状の開口11が形成されている。また、光源部2が取付けられる内面側の平坦部12の外周側には、背面側へ向かう段差部13が形成されて樋状の凹部14が形成されている。さらに、本体1の背面側には、弾性部材15が設けられている。
【0015】
光源部2は、図6の参照を加えて説明するように、基板21と、この基板21に実装された複数の発光素子22とを備えている(図2においては発光素子22の図示を省略している)。基板21は、所定の幅寸法を有した円弧状の4枚の基板21が繋ぎ合わされるように配設されて全体として略サークル状に形成されている。つまり、全体としル状に形成された基板21は、4枚の分割された基板21から構成されている。
【0016】
このように分割された基板21を用いることにより、基板21の分割部で熱的収縮を吸収して基板21の変形を抑制することができる。なお、複数に分割された基板21を用いることが好ましいが、略サークル状に一体的に形成された一枚の基板を用いるようにしてもよい。
【0017】
基板21は、絶縁材であるガラスエポキシ樹脂(FR-4)の平板からなり、表面側には銅箔によって配線パターンが形成されている。また、配線パターンの上、つまり、基板21の表面には反射層として作用する白色のレジスト層が施されている。なお、基板21の材料は、絶縁材とする場合には、セラミックス材料又は合成樹脂材料を適用できる。さらに、金属製とする場合は、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れたベース板の一面に絶縁層が積層された金属製のベース基板を適用できる。
【0018】
発光素子22は、LEDであり、表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って、つまり、取付部6を中心とする略円周上に複数列、本実施形態では、内周側及び外周側の2列に亘って実装されている。また、LEDパケージには、発光色が昼白色のものと電球色のものとが用いられており、これらが交互に並べられていて、各列の隣接する発光素子22は略等間隔を空けて配設されている。この昼白色と電球色のLEDパッケージに流れる電流等を調整することにより調色が可能となっている。
【0019】
なお、特定の基板21(図3中、右側)には、常夜灯用の発光素子22aが実装されている。この発光素子22aには、サークル状に実装された主光源における電球色のものと同じLEDパッケージが用いられている。これにより部材の共通化が図られている。
【0020】
なお、発光素子22は、必ずしも複数列に実装する必要はない。例えば、周方向に沿って1列に実装するようにしてもよい。所望する出力に応じて発光素子22の列数や個数を適宜設定することができる。
【0021】
LEDパッケージは、概略的にはセラミックスや合成樹脂で形成された本体に配設されたLEDチップと、このLEDチップを封止するエポキシ系樹脂やシリコーン樹脂等のモールド用の透光性樹脂とから構成されている。LEDチップは、青色光を発光する青色のLEDチップである。透光性樹脂には、昼白色や電球色の光を出射できるようにするために蛍光体が混入されている。
【0022】
なお、LEDは、LEDチップを直接基板21に実装するようにしてもよく、また、砲弾型のLEDを実装するようにしてもよく、実装方式や形式は、格別限定されるものではない。
【0023】
拡散部材3は、レンズ部材であり、図7の参照を加えて説明するように、例えば、ポリカーボネートやアクリル樹脂等の絶縁性を有する透明合成樹脂からなり、強化絶縁性能を有している。そして、前記発光素子22の配置に沿って略サークル状に一体的に形成されていて、発光素子22を含めて基板21の全面を覆うように配設されている。
【0024】
また、レンズ部材は、図5及び図7に代表して示すように、略サークル状の内周側部分と外周側部分とに発光素子22に対向して円周方向に2条の山形であって、断面形状が一定の突条部31が連続して形成されている。この突条部31の内側には、U字状の溝32が円周方向に沿って連続して形成されている。したがって、U字状の溝32は、複数の発光素子22と対向して配置されるようになっており、複数の発光素子22は、U字状の溝32内に収められて覆われている状態となっている。
【0025】
さらに、これら突条部31からは幅方向に延出する平坦部33が形成されており、これにより基板21の全面が覆われるようになっている。
【0026】
このように構成されたレンズ部材によれば、図5に示すように複数の発光素子22から出射された光は、突条部31によって、主として円周上の内周方向及び外周方向に拡散されて放射される。すなわち、発光素子22から出射された光は、発光素子22が配置されたところのサークル状の中心を原点とする半径方向へ主として拡散して放射されるようになる。
【0027】
したがって、レンズ部材によって複数の発光素子22から出射される光による照射光の均斉度を向上することが可能となる。さらに、各発光素子22の輝度による粒々感を抑制することができる。この場合、拡散による配光角度を120度?160度程度に設定するのが望ましい。
【0028】
また、拡散部材3には、平坦部33が形成されて基板21の全面を覆うようになっているので、充電部が強化絶縁性能を有する拡散部材3によって覆われ保護される。
【0029】
なお、拡散部材3は、略サークル状に一体的に形成されていなくてもよい。例えば、分割された基板21に対応して、これらの基板21ごとに分割して形成するようにしてもよい。この場合には、一つの基板21に実装された複数の発光素子22ごとに連続して拡散部材3によって覆われるようになる。
【0030】
また、拡散部材3は、レンズ部材に限らず、拡散シート等を適用するようにしてもよい。
【0031】
上記のように構成された光源部2は、図4及び図5に代表して示すように、基板21が取付部6の周囲に位置して、発光素子22の実装面が前面側、すなわち、下方の照射方向に向けられて配設されている。また、基板21の裏面側が本体1の内面側の平坦部12に密着するように面接触して取付けられている。具体的には、基板21の前面側から拡散部材3が重ね合わされ、この拡散部材3を例えば、ねじS等の固定手段によって本体1に取付けることにより、基板21は、本体1と拡散部材3との間挟み込まれて押圧固定されるようになっている。つまり、1本のねじSによって基板21と拡散部材3とが共締めされている。
【0032】
したがって、基板21は、本体1と熱的に結合され、基板21からの熱が裏面側から本体1に伝導され放熱されるようになっている。なお、基板21と本体1との面接触は、基板21の全面が本体1に接触する場合に限らない。部分的な面接触であってもよい。
【0033】
加えて、拡散部材3における平坦部33は、基板21の実装面側に密着するように面接触しているので、基板21の実装面側から熱が拡散部材3に伝わり、拡散部材3を経由して放熱することが可能となる。つまり、基板21の前面側からも放熱できるようになっている。
【0034】
点灯装置4は、図2乃至図4に示すように、回路基板41と、この回路基板41に実装された制御用IC、トランス、コンデンサ等の回路部品42とを備えている。回路基板41は、取付部6の周囲を囲むように略円弧状に形成されていて、アダプタA側が電気的に接続されて、アダプタAを介して商用交流電源に接続されている。したがって、点灯装置4は、この交流電源を受けて直流出力を生成し、リード線を介してその直流出力を発光素子22に供給し、発光素子22を点灯制御するようになっている。
【0035】
このような点灯装置4は、取付部6と光源部2、すなわち、基板21との間に配設されている。
【0036】
点灯装置カバー5は、図2及び図4に示すように、冷間圧延鋼板等の金属材料によって略短円筒状に形成され、点灯装置4を覆うように本体1に取付けられている。側壁51は、背面側に向かって拡開するように傾斜状をなしており、前面壁52には、取付部6と対応するように開口部53が形成されている。したがって、発光素子22から出射される一部の光は、側壁51によって前面側に反射され有効に利用されるようになる。また、この開口部53に周縁には背面側へ凹となる円弧状のガイド凹部54が形成されている。
【0037】
取付部6は、略円筒状に形成されたアダプタガイドであり、このアダプタガイドの中央部には、アダプタAが挿通し、係合する係合口61が設けられている。このアダプタガイドは、本体1の中央部に形成された開口11に対応して配設されている。アダプタガイドの外周部には、この外周部から突出するように基台が形成されていて、この基台には赤外線リモコン信号受信部や照度センサ等の電気的補助部品62が配設されている。
【0038】
なお、取付部6は、必ずしもアダプタガイド等と指称される部材である必要はない。例えば、本体1等に形成される開口であってもよく、要は、配線器具としての引掛けシーリングボディCbに対向し、アダプタAが係合される部材や部分を意味している。
【0039】
カバー部材7は、アクリル樹脂等の透光性を有し、乳白色を呈する拡散性を備えた材料から略円形状に形成されており、中央部には不透光性の円形状の化粧カバー71が取付けられている。また、この化粧カバー71には、前記電気的補助部品62と対向するように略三角形状の透光性を有する受光窓72が形成されている。さらに、カバー部材7の内面側の中央寄りには、内面方向に突出する突出ピン73が形成されている。
【0040】
そして、カバー部材7は、光源部2を含めた本体1の前面側を覆うように本体1の外周縁部に着脱可能に取付けられるようになっている。具体的には、カバー部材7を回動することによって、カバー部材7に設けられた図示しないカバー取付金具を本体1の外周縁部の凹部14に配設されたカバー受金具75に係合することにより取付けられる。
【0041】
このようにカバー部材7が本体1に取付けられた状態においては、主として図4に示すように、カバー部材7の内面側は、点灯装置カバー5の前面壁52に面接触するようになる。したがって、点灯装置4等から発生する熱を点灯装置カバー5へ伝導し、さらにカバー部材7へ伝導させて放熱を促進することが可能となる。
【0042】
また、拡散部材3とカバー部材7との間の距離は、20?60mm、好ましくは30?50mmに設定されている。これにより、照射光の均斉度が良好となり、基板21の実装面側から拡散部材3に伝導された熱がカバー部材7を経由して効果的に放熱されるようになる。
【0043】
ここで、カバー部材7は、回動させて本体1に取付けられるが、受光窓72の位置を電気的補助部品62と対向するように位置合わせをする必要がある。このため、本実施形態においては、詳細な説明は省略するが、カバー部材7側に形成された突出ピン73と点灯装置カバー5に形成されたガイド凹部54とによって位置規制手段が構成されている。この位置規制手段によって受光窓72が電気的補助部品62と対向して位置されるようになり、例えば、赤外線リモコン信号受信部が赤外線リモコン送信器からの制御信号を受信できるようになる。
【0044】
アダプタAは、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに、上面側に設けられた引掛刃によって電気的かつ機械的に接続されるもので略円筒状をなし、周壁の両側には一対の係止部A1が、内蔵されたスプリングによって常時外周側へ突出するように設けられている。この係止部A1は下面側に設けられたレバーを操作することにより没入するようになっている。また、このアダプタAからは、前記点灯装置4へ接続する電源コードが導出されていて、点灯装置4とコネクタを介して接続されるようになっている(図3参照)。
【0045】
次に、照明器具の天井面Cへの取付状態について図4を参照して説明する。まず、予め天井面Cに設置されている引掛けシーリングボディCbにアダプタAが電気的かつ機械的に接続されている。この状態から取付部6としてのアダプタガイドの係合口61をアダプタAに合わせながら、アダプタAの係止部A1がアダプタガイドの係合口61に確実に係合するまで器具本体を下方から手で押し上げて取付け操作を行う。そして、カバー部材7を本体1に取付ける。この取付完了状態が図4に示す状態であり、このとき、弾性部材15が天井面Cと本体1の背面側との間に密着状態で介在され、照明器具は、天井面Cに固定状態となる。
【0046】
また、照明器具を取外す場合には、カバー部材7を取外し、アダプタAに設けられているレバーを操作してアダプタAの係止部A1の係合を解くことにより取外すことができる。
【0047】
照明器具の天井面Cへの取付状態において、点灯装置4に電力が供給されると、基板21を介して発光素子22に通電され、各発光素子22が点灯する。発光素子22から出射された光は、複数の発光素子22を連続して覆う拡散部材3によって半径方向へ拡散されるとともに、前面側へ放射される。前面側へ放射された光は、カバー部材7を透過して外方へ照射される。したがって、照射光の均斉度の向上を図ることができるとともに、各発光素子22の輝度による粒々感を抑制することが可能となる。
【0048】
また、半径方向の内周側へ向かう一部の光は、点灯装置カバー5における傾斜状の側壁51によって前面側に反射され有効に利用されるようになる。
【0049】
一方、発光素子22から発生する熱は、基板21の裏面側が本体1に面接触しているため、本体1に効果的に伝導され、広い面積で放熱されるようになる。また、基板21の外周側近傍には、基板21の外周に沿って段差部13が形成されているため、この段差部13によって放熱面積を増大させることができ、本体1外周部での放熱効果を高めることが可能となる。加えて、この段差部13は、本体1の補強効果を奏することができるものとなっている。
【0050】
また、点灯装置4は、取付部6と基板21との間に配設されているため、点灯装置4は、基板21から熱的影響を受けるのを軽減される。これは、基板21の熱は、本体1の外周方向に向かって伝導し、放熱される傾向にあることに起因するものである。
【0051】
さらに、カバー部材7は、点灯装置カバー5に面接触するようになっているので、点灯装置4から発生する熱を点灯装置カバー5へ伝導し、さらにカバー部材7へ伝導させて放熱をさせることができる。
【0052】
加えて、拡散部材3における平坦部33は、基板21の実装面側に面接触しているので、基板21の実装面側から拡散部材3を経由して前面側からも放熱することが可能となる。また、この場合、拡散部材3は、基板21の全面を覆うようになっているので充電部が保護されるようになる。
【0053】
以上のように本実施形態によれば、発光素子22を連続して覆う拡散部材3を設けることによって照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、発光素子は、LEDや有機EL等の固体発光素子が適用でき、この場合、発光素子の個数は特段限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1・・・本体、2・・・光源部、3・・・拡散部材(レンズ部材)、4・・・点灯装置、5・・・点灯装置カバー、6・・・取付部(アダプタガイド)、7・・・カバー部材、13・・・段差部、21・・・基板、22・・・発光素子(LED)、31・・・突条部、33・・・平坦部、A・・・アダプタ、C・・・器具取付面(天井面)、Cb・・・配線器具(引掛けシーリングボディ)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる取付部を有する器具本体と;
前記取付部の周囲に配設された点灯装置と;
前記器具本体から照射方向に向かって突出した前面壁および前記前面壁には取付部に対応する開口部が形成され、前記点灯装置を覆うように前記本体に取付けられる点灯装置カバーと;
実装面が前面側に向けられて前記点灯装置カバーの前記前面壁よりも器具取付面側であるとともに前記点灯装置カバーの外側に配設された基板と;
この基板上に複数の環状配列を形成して前記基板に実装された複数の発光素子と;
前記発光素子が実装された環状配列に沿って連続する突条部を有し、前記基板の実装面を覆う拡散部材と;
前記基板及び前記複数の発光素子を含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に取付けられた拡散性を有する乳白色のカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記拡散部材に対して所定の距離を有するように前記器具本体に着脱可能に取付けられる前記カバー部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-11-15 
出願番号 特願2014-110943(P2014-110943)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (F21S)
P 1 651・ 121- YAA (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 尾崎 和寛
出口 昌哉
登録日 2015-06-19 
登録番号 特許第5761542号(P5761542)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 照明器具  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 熊谷 昌俊  
代理人 熊谷 昌俊  

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