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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D02G
審判 全部申し立て 2項進歩性  D02G
管理番号 1323508
異議申立番号 異議2016-700466  
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-23 
確定日 2016-12-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5822289号発明「詰め物体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5822289号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第5822289号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5822289号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成23年4月13日に特許出願(優先権主張平成22年8月23日)され、平成27年10月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1?6に係る特許について、特許異議申立人東レ株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年8月9日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成28年10月7日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、申立人より、平成28年11月16日付けで本件訂正請求について意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求めるものである。そうすると、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書のものとそれぞれ対比すると、本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)?(3)のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「花糸及び芯糸がエアー交絡されて一体化し」とあるのを、
「花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し」に訂正する(下線は、訂正箇所。以下、同じ。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成しており」とあるのを、
「前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成しており、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲であり」に訂正する。

(3)訂正事項3
本件特許の明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0008】において、
「本発明の詰め物体は、側地内に詰め物を充填した詰め物体であって、前記詰め物は、花糸及び芯糸がエアー交絡されて一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成しており、前記長繊維詰め綿は少なくとも一方向に多数本引き揃えられ、両端が側地とともに縫製されて側地に一体化していることを特徴とする。」とあるのを、
「本発明の詰め物体は、側地内に詰め物を充填した詰め物体であって、前記詰め物は、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成しており、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲であり、前記長繊維詰め綿は少なくとも一方向に多数本引き揃えられ、両端が側地とともに縫製されて側地に一体化していることを特徴とする。」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、「花糸及び芯糸がエアー交絡されて一体化し」という製造に関する技術的な特徴や条件が付された記載を訂正して、「花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し」という物の構造により特定することにより、プロダクト・バイ・プロセスクレームを解消しようとするものであるから、訂正事項1の訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1に関連する記載として、特許明細書の段落【0010】に「本発明の詰め物体は、花糸を芯糸で一体化した長繊維詰め綿であり、前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成しており、前記長繊維詰め綿は少なくとも一方向に多数本引き揃えられ、両端が側地とともに縫製されて側地に一体化していることにより、嵩が高く、耐洗濯性に優れた詰め物体を提供できる。すなわち、長繊維詰め綿は両端が側地に固定されており、両固定箇所の間で長繊維詰め綿を構成する芯糸の長さは変化することはなく、かつ花糸と芯糸は一体化しているので、洗濯を繰り返しても長繊維詰め綿の動きは制限され、詰め綿の片寄りが少なく、嵩も高い詰め物製品を提供できる。」と記載され、段落【0012】に「本発明で使用する長繊維詰め綿は、花糸を芯糸で一体化した長繊維詰め綿であり、前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成している。これにより、嵩高い詰め物が得られる。本発明において、「花糸を芯糸で一体化した」とは、花糸及び芯糸の構成単繊維を互いに絡めることをいい、構成単繊維が必ずしも互いに融着固定されている必要はない。もちろん、融着固定されていてもよい。また、「花糸は開繊されてループ状繊維を形成している」とは、エアー交絡のように、エアー交絡時に同時に開繊されてもよいし、独立した開繊工程によって開繊されてもよいことを意味する。・・・」と記載され、段落【0034】に「長繊維詰め綿としてエアー交絡糸を用いる場合は、エアー交絡糸は、例えば、芯糸及び花糸をエアー交絡装置の2個のフィードローラに、それぞれ1本供給し、芯糸の供給速度を10?200m/min、花糸の供給速度を20?10000m/min、巻き取り速度10?200m/minとして、空気圧力0.01?1.0MPaの交絡ノズルで混繊交絡処理を施した後、デリベリローラ通過後の複合糸をリング撚糸機構付のボビンで巻き取ることで得ることができる。そして、上記で得られたループヤーン(エアー交絡糸)はボビンから解舒し、必要に応じて図5に示す揉み・開繊工程で開繊処理する。・・・得られた長繊維詰め綿40では、図10に示しているように、芯糸42と花糸41の構成繊維が互いに絡まっており、花糸41が解繊されて部分的にループ状繊維を形成する。・・・」と記載されていることからみて、「詰め物体」の「詰め物」は、長繊維をエアー交絡させることにより、「花糸と芯糸が一体化している」状態、すなわち「花糸と芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化している」状態にあるものと理解できる。
よって、訂正事項1の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

そして、訂正事項1の訂正は、「詰め物体」の発明において、「花糸及び芯糸がエアー交絡されて一体化し」という製造に関する技術的な特徴や条件が付された記載を、課題解決手段として実質的変更のない「芯糸と花糸がエアー交絡糸であることにより一体化し」という「詰め物体」の状態を示すことにより構造又は特性を特定するように訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1は、花糸と芯糸の重量比について特定されていなかったものを、訂正事項2は、「前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲であること」と花糸と芯糸の重量比について特定するものであるから、訂正事項2の訂正は、特許請求の範囲を減縮を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2に関連する記載として、特許明細書の段落【0021】に「ループ状繊維(花糸)と芯糸の重量比は、ループ状繊維(花糸)と芯糸を母数にしたとき、ループ状繊維(花糸)の割合は51?99質量%(wt%)の範囲が好ましい。更に好ましくは80?98wt%の範囲、・・・である。前記範囲であれば、芯糸による固定一体化はしっかりしたものとなり、かつ風合いも良好となる。」と記載されており、訂正事項2の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。

そして、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項1及び2の訂正に伴い、記載を整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(4)一群の請求項について
そして、本件訂正は、請求項1と、請求項1を直接あるいは間接に引用する全ての請求項である請求項2?6を対象とするものであるから、上記訂正事項1?3に係る各訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.請求項1?6に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?6に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
側地内に詰め物を充填した詰め物体であって、
前記詰め物は、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、
前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成しており、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲であり、
前記長繊維詰め綿は少なくとも一方向に多数本引き揃えられ、両端が側地とともに縫製されて側地に一体化していることを特徴とする詰め物体。
【請求項2】
前記長繊維詰め綿は、両端部がリボン状細幅布と一体縫製され、長繊維詰め綿シートに成形されている請求項1に記載の詰め物体。
【請求項3】
前記長繊維詰め綿は、両端以外の部分でも側地とともに縫製されて一体化している請求項1又は2に記載の詰め物体。
【請求項4】
前記長繊維詰め綿の単位長さ当たりの重量は0.05?1.5g/mの範囲である請求項1?3のいずれか1項に記載の詰め物体。
【請求項5】
前記花糸及び芯糸は非融着繊維で構成されている請求項1?4のいずれか1項に記載の詰め物体。
【請求項6】
前記詰め物体は、布団、毛布、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、パンツ、ベスト、コート、防寒服及びネックウォーマーから選ばれる少なくとも一つである請求項1?5のいずれか1項に記載の詰め物体。」

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1?6に係る特許に対して、特許権者に通知した平成28年8月9日付けの取消理由の概要は以下のとおりである。 以下の取消理由は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由を全て含むものである。

理由1)本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

[理由1]
甲第1号証:特開昭63-230190号公報
甲第2号証:実用新案登録第2537342号公報
甲第3号証:特開昭55-2440号公報
甲第4号証:特開2004-270124号公報

本件特許の請求項1?6に係る発明は、甲1発明、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項、甲第4号証に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[理由2]
本件特許の請求項1ないし6は、それぞれ、「詰め物体」に係る物の発明であるが、請求項1の「花糸及び芯糸がエアー交絡されて一体化し、」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当する。
請求項1、及び請求項1を引用する請求項2ないし6には、その物の製造方法が記載されているといえる。
ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物を製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(
受)第2658号)。
しかしながら、本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
したがって、請求項1ないし6に係る発明は明確でない。

3.判断
(1)理由2(記載要件)について
まず、最初に理由2について検討する。請求項1の記載は、本件訂正請求の訂正により、「詰め物体」について、上記第2の2.(1)に示したとおり、その「詰め物」の状態を示すことによって構造又は特性を特定するように訂正されて、明確となった。
したがって、本件訂正後の請求項1及び請求項1を直接あるいは間接に引用する請求項2?6の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合する。

(2)理由1(進歩性)について
ア 甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「長繊維綿を中綿として用いた寝装品において、長繊維綿の両端部を綴じ布で止着した状態で端部仕上げし、各長繊維綿の綴じ布を表裏基布の端部に止着し、表基布と裏基布の少なくとも何れか一方に複数の環状体を形成し、所定寸法に形成した中綿としての長繊維綿を環状体によって保持するようにした、蒲団、シュラーフ、クッション等の寝装品。」

イ 本件訂正発明1と甲1発明を対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
本件訂正発明1では、「詰め物が、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲である」のに対して、甲1発明では、中綿が長繊維綿であるものの、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化したものではない点(以下、「相違点」という。)で相違する。

ウ 上記相違点について検討する。
甲第2号証には、中綿として使用されるフィラメントよりなるふとんわたとしては、複数のトウを集合したもの或いはトウを適宜嵩高処理し、屈曲を与えたものなどが用いられることは記載されているが(段落【0020】)、「詰め物が、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲である」点については何ら記載も示唆もない。
甲第3号証には、ふとん綿に用いるフィラメントは、多数本から構成されるものでもよく、これを開繊して嵩高にしたものでもよく、インターレースしあっていてもよいことは記載されているが(第1頁右欄20行?第2頁左上欄11行)、「詰め物が、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲である」点については何ら記載も示唆もない。
甲第4号証は、詰め綿(詰め物)に関するものではなく、織編物に用いる、装飾用の糸であるファンシーヤーンに関するものであり、「高次加工して、衣服などに使用する際、従来の技術では得られなかった染色性、染色堅牢度、ソフトな風合い、耐久性、耐塩素性、耐光性に優れ、生地が薄くフラット感があり、シャリミのある触感を有し、ピーチスキン調のストレッチ布帛を得ることができるファンシーヤーンおよびその製造方法を提供する」ことを課題としており(段落【0004】)、該課題を解決するため、「構成成分の少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートで構成されるサイドバイサイド型または偏芯シース・コア型であるポリエステル系複合繊維糸と他のフィラメント糸を合流せしめ、流体乱流処理を施し、かつ流体乱流処理の際、ポリエステル系複合繊維糸に0.03cN/dtex以上、0.60cN/dtex以下の張力を掛けること」でファンシーヤーンを製造しており(段落【0006】)、長繊維に嵩高性を具備させるために交絡処理を施すものでない。そうすると、甲第4号証は、甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証とは技術分野及び課題が異なり、甲1発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に、甲第4号証を組み合わせる動機付けはない。
また、申立人が周知技術として挙げる文献(特開昭63-24929号公報等)にも、「詰め物が、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲である」点は記載も示唆もない。
また、甲1発明は、「本発明は、・・・その目的とするところは、製造が簡単でかつ安価な寝装品を提供することにある。」(甲第1号証第2頁左上欄)を発明の解決しようとする課題とするものであるのに対し、本件訂正発明1は、嵩高で耐洗濯性に優れた詰め物体を提供することを課題とする(特許明細書段落【0007】)ものである。甲1発明の寝装品は耐洗濯性に何ら配慮されているものでないから、甲1発明の寝装品において、詰め物(ふとんの綿)を、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿とし、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲であるように構成しようとする動機付けが見いだせない。
そして、「詰め物が、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲である」ことにより、本件訂正発明1は、「嵩が高く、耐洗濯性に優れた詰め物体を提供できる」という格別の効果を奏するものである。
なお、申立人は、意見書において、ノズルの気流の流し方等の交絡の程度を支配する要素が何ら記載されていない本件特許明細書(本件特許掲載公報記載)では、図10に示した「エア交絡糸」を実現することはできない旨主張するが、本件特許明細書の段落【0034】に「長繊維詰め綿としてエアー交絡糸を用いる場合は、エアー交絡糸は、例えば、芯糸及び花糸をエアー交絡装置の2個のフィードローラに、それぞれ1本供給し、芯糸の供給速度を10?200m/min、花糸の供給速度を20?10000m/min、巻き取り速度10?200m/minとして、空気圧力0.01?1.0MPaの交絡ノズルで混繊交絡処理を施した後、デリベリローラ通過後の複合糸をリング撚糸機構付のボビンで巻き取ることで得ることができる。そして、上記で得られたループヤーン(エアー交絡糸)はボビンから解舒し、必要に応じて図5に示す揉み・開繊工程で開繊処理する。・・・得られた長繊維詰め綿40では、図10に示しているように、芯糸42と花糸41の構成繊維が互いに絡まっており、花糸41が解繊されて部分的にループ状繊維を形成する。・・・」とあるように、図10に示した「エア交絡糸」を形成するための交絡ノズルの空気圧力等の要素・条件は本件特許明細書に記載されているので、申立人の主張は理由がない。
また、申立人は、意見書において、発明の詳細な説明において、花糸の割合について、その定義あるいはその具体的算出法が何ら記載されていない旨主張するが、本件特許明細書の段落【0021】に「ループ状繊維(花糸)と芯糸の重量比は、ループ状繊維(花糸)と芯糸を母数にしたとき、ループ状繊維(花糸)の割合は51?99質量%(wt%)の範囲が好ましい。更に好ましくは80?98wt%の範囲、・・・である。前記範囲であれば、芯糸による固定一体化はしっかりしたものとなり、かつ風合いも良好となる。」とあるように、花糸の割合について、その定義は、本件特許明細書に明確に記載されており、花糸と芯糸の重量はそれぞれ当業者が容易に求められ、それらに基づいて花糸の割合を算出できるから、申立人の主張は理由がない。

したがって、本件訂正発明1は、甲1発明、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項、甲第4号証に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件訂正発明2?6について検討する。
本件訂正発明2?6は、本件訂正発明1の全ての発明特定事項を有しているから、本件訂正発明2?6は、甲1発明、甲第2号証に記載された事項、甲第3号証に記載された事項、甲第4号証に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由を全て含む、上記取消理由によっては、本件訂正請求により訂正された請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正請求により訂正された請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
詰め物体
【技術分野】
【0001】
本発明は、花糸を芯糸で一体化した長繊維を少なくとも一方向に多数本引き揃えた長繊維詰め綿を使用した詰め物体に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛布団、羽毛ジャケットなどの羽毛製品に充填される羽毛は、一般的には水鳥の羽毛が使用されている。水鳥としてはグース(ガチョウ)、ダック(アヒル)、北極圏の海岸線に生息するアイダー(野生の鴨)などである。羽毛には、胸毛にあたるダウンと、羽根と呼ばれるフェザーがあり、ともに羽毛製品に使われている。羽毛の産地はポーランド、ハンガリーなどの中欧、スカンジナビア半島を含む北欧、中国などである。羽毛は、嵩高性に優れ、暖かく、掛け布団や羽毛ジャケットの羽毛製品として高級素材の地位を占めている。
【0003】
しかし、天然の羽毛は水鳥に依存しており、その供給量には限度がある上、自然条件や厄病(例えば鳥ウィルス)の影響によって供給量も変動するという問題がある。あるいは自然保護の観点から、野生の鳥を捕捉することには限度がある。その上、天然の羽毛は、洗いが不充分であると悪臭の原因となるため、事前に悪臭の原因となる汚物を除去し、羽毛の洗浄の程度を見る清浄度と酸素計数を一定のレベルに保つ管理が必要である。加えて、羽毛布団、羽毛ジャケットなどの羽毛製品の洗濯は容易ではないという問題がある。
【0004】
そこで、従来から詰め綿については多くの提案がある。特許文献1には短繊維をループ状に屈曲させ、集中点を固着することが提案されている。特許文献2にはエアーノズルを用いて芯繊維とループ繊維とを空気交絡させた後に融着することが提案されている。特許文献3にはポリエステル繊維を加熱処理により収縮させて捲縮を発現させ、嵩高と弾力性を持たせることが提案されている。特許文献4には無撚の短繊維を低融点繊維で結束し、融着させることが提案されている。本出願人らは特許文献5において芯糸と花糸から構成され、芯糸を融着させる詰め綿を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55-158366号公報
【特許文献2】特開昭58-146385号公報
【特許文献3】特開平6-93513号公報
【特許文献4】WO2006/104010A1
【特許文献5】特開2009-52183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1,4のように短繊維を花糸に使用した例では、洗濯により詰め物の片寄りが生じ、嵩はへたり易く、嵩の耐久性に問題があり、特許文献2のように、単に空気交絡をさせ融着する方法では十分な嵩高性が得られず、特許文献3のように繊維自体の捲縮だけで嵩高性を発現させた例でも、やはり洗濯により詰め物の片寄りが生じ、へたり易く、嵩の耐久性に問題があり、そのため、現在に至るまで実用化されているのはカード開繊綿であるという問題があり、特許文献5に提案の詰め綿は柔らかいが、耐洗濯性に問題があること、すなわち洗濯により詰め綿が片寄ってしまうことを見出した。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するため、嵩高で耐洗濯性に優れた詰め物体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の詰め物体は、側地内に詰め物を充填した詰め物体であって、前記詰め物は、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成しており、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲であり、前記長繊維詰め綿は少なくとも一方向に多数本引き揃えられ、両端が側地とともに縫製されて側地に一体化していることを特徴とする。
【0009】
本発明の詰め物体は、布団、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、パンツ、ベスト、コート、防寒服、ネックウォーマー、肩パッド等のパッド材、ライナーなどである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の詰め物体は、花糸を芯糸で一体化した長繊維詰め綿であり、前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成しており、前記長繊維詰め綿は少なくとも一方向に多数本引き揃えられ、両端が側地とともに縫製されて側地に一体化していることにより、嵩が高く、耐洗濯性に優れた詰め物体を提供できる。すなわち、長繊維詰め綿は両端が側地に固定されており、両固定箇所の間で長繊維詰め綿を構成する芯糸の長さは変化することはなく、かつ花糸と芯糸は一体化しているので、洗濯を繰り返しても長繊維詰め綿の動きは制限され、詰め綿の片寄りが少なく、嵩も高い詰め物製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の一実施例における掛け布団の斜視図である。
【図2】図2は図1のI-I線断面図である。
【図3】図3は本発明の一実施例における枕の断面図である。
【図4】図4は本発明の一実施例における長繊維詰め綿の両端を固定し、シートに成形した状態を示す断面の説明図である。
【図5】図5は本発明の一実施例における長繊維詰め綿の製造工程を示す説明図である。
【図6】図6は本発明の一実施例における撚糸工程の概略説明図である。
【図7】図7は同、撚糸工程におけるループヤーンの拡大側面図である。
【図8】図8は同、揉み・開繊工程でループ状繊維が開繊された状態の長繊維詰め綿の概略側面図である。
【図9】図9は同、得られた長繊維詰め綿の概略断面図である。
【図10】図10は、本発明の一実施例におけるループヤーン(エアー交絡糸)の拡大側面図である。
【図11】図11は本発明の参考例1と比較例1の詰め物体の洗濯試験後の比較写真である。
【図12】図12は本発明の参考例2と比較例2の詰め物体の洗濯試験後の比較写真である。
【図13】図13は本発明の参考例3と比較例3の詰め物体の洗濯試験後の比較写真である。
【図14】図14は本発明の参考例4と比較例4の詰め物体の洗濯試験後の比較写真である。
【図15】図15は本発明の参考例5と比較例5の詰め物体の洗濯試験後の比較写真である。
【図16】図16は本発明の実施例1と比較例6の詰め物体の洗濯試験後の比較写真である。
【0012】
本発明で使用する長繊維詰め綿は、花糸を芯糸で一体化した長繊維詰め綿であり、前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成している。これにより、嵩高い詰め物が得られる。本発明において、「花糸を芯糸で一体化した」とは、花糸及び芯糸の構成単繊維を互いに絡めることをいい、構成単繊維が必ずしも互いに融着固定されている必要はない。もちろん、融着固定されていてもよい。また、「花糸は開繊されてループ状繊維を形成している」とは、エアー交絡のように、エアー交絡時に同時に開繊されてもよいし、独立した開繊工程によって開繊されてもよいことを意味する。なお、花糸と芯糸の一体化は、花糸と芯糸をまとめて撚りをかけることや花糸と芯糸を交絡させることなどで実現できる。ループ状繊維は長繊維であるマルチフィラメント繊維で構成され、開繊され、ループ状繊維同士を融着させてもよい。ループ状繊維同士が融着されることにより、嵩高性の向上と耐洗濯性を向上できる。すなわち、開繊させたループ状繊維同士を融着させることにより、固定点が多くなるため、へたりにくくなる。融着以外に交絡させてもよい。交絡はエアーノズルを使用して、長繊維の構成単繊維を互いに絡めることにより実現できる。加えて、長繊維詰め綿は少なくとも一方向に多数本引き揃えられ、両端が側地とともに縫製されて側地に一体化しているので、洗濯を繰り返しても中綿の片寄りはない。
【0013】
長繊維詰め綿は、両端部がリボン状細幅布と一体縫製され、長繊維詰め綿シートに成形されていることが好ましい。シートの状態であれば側地内に充填するのに便利であり、側地と縫製する際の取り扱い性が良好になる。長繊維詰め綿は、両端以外の部分でも側地とともに縫製されて一体化してもよい。例えば布団の場合、主面の中央部分に単数又は複数のキルト(縫製)を入れて長繊維詰め綿と側地を一体化してもよい。このようにするとさらに耐洗濯性が向上する。
【0014】
花糸及び/又は芯糸が融着繊維を含む場合、花糸及び芯糸の融着繊維は、融点が異なる2以上のポリマーで構成される複合繊維とするのが好ましい。この複合繊維としては、高融点ポリマーが芯、低融点ポリマーが鞘である芯鞘構造の繊維が好ましい。低融点ポリマーを融着させるためである。このような芯鞘構造の複合繊維は、例えばKBセーレン社製“ベルカップル”、ユニチカ社製“メルセット”、ウンジンケミカル社製“EZBON”などがある。これらの複合繊維は、芯がポリエチレンテレフタレート(PET)であり、鞘が低融点ポリエステル共重合体で構成されている。花糸及び芯糸の融着繊維は、ポリエステルマルチフィラメント融着繊維であることが好ましい。ポリエステルはへたりにくいからである。また、融着繊維の融着温度が160?200℃であることが好ましい。この範囲であれば、加工しやすい。
【0015】
花糸及び/又は芯糸はさらに非融着繊維を含んでもよい。非融着繊維としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の合成繊維が好ましい。前記芯糸の融着繊維と非融着繊維の割合は、前記芯糸を100重量%としたとき融着繊維が10?100重量%、非融着繊維が0?90重量%であることが好ましい。
【0016】
ループ状繊維のループの平均長さは1?200mmの範囲が好ましく、5?50mmの範囲がより好ましく、10?40mmの範囲がさらに好ましい。ループ状繊維のループの平均長さが前記の範囲であれば、風合いと嵩高性と嵩耐久性を更に高めることができる。
【0017】
ループ状繊維(花糸)の単繊維繊度が0.1?300dtex、かつトータル繊度が10?600dtex(dtexはdeci texを示す。)の範囲が好ましい。更に好ましくは単繊維繊度が1.0?50dtex、かつトータル繊度が20?250dtexの範囲であり、特に好ましくは単繊維繊度が2.0?25dtex、かつトータル繊度が30?100dtexの範囲である。繊度が前記の範囲であれば、へたりにくく、かつ風合いも良好である。
【0018】
芯糸は、融点が異なる2以上のポリマーで構成される複合繊維を含む構成でもよい。融点が異なる2以上のポリマーで構成される複合繊維としては、融点の異なるポリマーを芯鞘状などに複合したコンジュゲート繊維などが例示され、具体的には、高融点ポリマーがポリプロピレンポリマーであり、低融点ポリマーがポリエチレンポリマーまたは低融点ポリプロピレンポリマーからなる芯鞘繊維等が挙げられる。融点が異なる2以上のポリマーで構成される複合繊維は、単独で芯糸を構成してもよく、また他の芯糸と組み合わせて、芯糸を構成してもよい。ループ状繊維をより確実に一体化する観点から、芯鞘繊維を低融点熱接着繊維糸と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0019】
前記融点が異なる少なくとも2種類の芯糸又は融点が異なる2以上のポリマーの融点差は、10?200℃あることが好ましい。
【0020】
また、長繊維詰め綿としてエアー交絡糸を用いる場合は、花糸と芯糸は非融着繊維であってもよい。非融着繊維としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等の合成繊維が好ましい。
【0021】
ループ状繊維(花糸)と芯糸の重量比は、ループ状繊維(花糸)と芯糸を母数にしたとき、ループ状繊維(花糸)の割合は51?99質量%(wt%)の範囲が好ましい。更に好ましくは80?98wt%の範囲、特に好ましくは85?97wt%の範囲である。前記範囲であれば、芯糸による固定一体化はしっかりしたものとなり、かつ風合いも良好となる。
【0022】
本発明の詰め綿には、さらにシリコーン処理剤が熱固定されていることが好ましい。シリコーン処理剤の好ましい付着量は、ループ状繊維(花糸)と芯糸の合計量に対して0.1?10wt%の範囲である。さらに、硬さ調整のためアクリル樹脂、ウレタン樹脂等を固定しても良い。
【0023】
本発明の詰め綿は長繊維である。基本的に数十センチメートル?数十万メートルあるいはそれ以上の長さでも可能である。側地と一体化する際には、側地の1辺の長さに折りたたんでもよいし、所定の長さにカットしてもよい。長繊維詰め綿の引き揃え方向は、人体の身長方向と垂直方向が好ましい。例えば掛け布団であれば幅方向(横方向)、枕であれば長さ方向(縦方向)である。長繊維詰め綿の単位長さ当たりの重量は0.01?3g/mの範囲が好ましく、さらに好ましい重量は0.05?1.5g/mの範囲である。前記の範囲であれば製造が可能で取り扱い性も良好である。
【0024】
以下図面を用いて説明する。各図面において、同一符号は同一部分を示す。まず、本発明の一実施例における掛け布団を図1?図2により説明する。図1はこの掛け布団の斜視図であり、掛け布団1は側地2と、側地の2つの長辺に形成された縫製線4,5と、布団1の主面(側地)の長さ方向に沿ってほぼ中央に形成された縫製(キルト)線6と、縫製線6に直行する縫製(キルト)線7a?7cで構成されている。図2は図1のI-I線断面図であり、長繊維詰め綿8が縫製線4,5,6で側地2a,2bと固定されている状態を示している。図1?図2において、縫製(キルト)線6、7a?7cは必ずしも必要ではなく、省略することもできる。
【0025】
図3は本発明の一実施例における枕の断面図である。この枕3は、長繊維詰め綿8が縫製線4,5で側地2a,2bと固定されている状態を示している。中央部のキルト線がない例である。
【0026】
図4は本発明の一実施例における長繊維詰め綿の両端固定を示す説明図である。長繊維詰め綿8の両端は、リボン状細幅布10a,10bに予め縫製により固定して長繊維詰め綿シート9に成形しておく。こうしておくと、長繊維詰め綿8はまとまりよく一体化して取り扱うことができる。布団の場合、図4の状態で側地内に充填するには、側地の短辺の一つを残して予め縫製し、裏返しにしておき、側地の両端と長繊維詰め綿シート9のリボン状細幅布10a,10bとを縫製し、その後側地をひっくり返し、開けてあった一つの短辺を縫製する。別の方法として、同じく布団の場合、短辺の一つを残して予め縫製しておいた側地に図4の長繊維詰め綿シート9を充填し、側地の両端部において側地とリボン状細幅布とを縫製して固定し、その後に開けてあった一つの短辺を縫製して布団にする。別の方法として、長繊維詰め綿8を多数本引き揃え、前記長繊維詰め綿の両端部を側地の端と直接合わせ、縫製により固定することもできる。
【0027】
図1?図4の例において、長繊維詰め綿8は所定の長さにカットして揃えてもよいし、綛(かせ)のように所定長さのループ状にし、これを両端で折りたたんでもよい。縫製された布団1又は枕3は、側地内で長繊維詰め綿の両端が側地に固定されており、両固定箇所の間で長繊維詰め綿を構成する芯糸の長さは変化することはなく、かつ花糸と芯糸は一体化しているので、洗濯を繰り返しても長繊維詰め綿の動きは制限され、詰め綿の片寄りが少なく、嵩も高い詰め物製品となる。
【0028】
図5は、本発明の一例の長繊維詰め綿の製造工程を示す説明図である。図5に示すように、花糸31と芯糸32をウエストゲージ33に供給し、撚糸工程34で撚糸する。次に、揉み・開繊工程35で花糸のループ状繊維を開繊した後、第一熱処理工程36で加熱して花糸の少なくとも一部のループ状繊維同士を融着し、かつ芯糸の融着繊維を熱融着させてループ状繊維を一体化する。次に、シリコーン樹脂散布工程37で柔軟剤かつ平滑剤であるシリコーン樹脂を散布し、第二熱処理工程38でキュアリングして本発明の長繊維詰め綿8を得る。
【0029】
図6は本発明の一例の撚糸工程の概略説明図である。図6に示すように、花糸11をウエストゲージ13に回転又は糸振りさせて供給し、一種類の花糸又は少なくとも2種類の芯糸12a,12bは、花糸11の少なくとも一部を挟み込むようにウエストゲージ13に供給する。ここでウエストゲージとは、漏斗状の器具であり、上部が大きく開放され、ここに糸を落とすことができ、下部出口は狭くなっていて、糸を一時的に貯めることができる器具をいう。次いで、花糸11と芯糸12a,12bをまとめて撚りを掛け、ループヤーン14を形成する。ループヤーン14は撚糸機20によって実撚りを掛けて形成される。すなわち、モーター15、ベルト16を介してボビン17が回転され、この周りのリング18にトラベラー19が組み込まれ、ボビン17の回転より遅れて回転することにより、トラベラー19を通過するループヤーン14には実撚りが掛けられる。好ましい撚り数は150?350回/mである。得られたループヤーン14の拡大図を図7に示す。花糸11はループを形成し、芯糸12a,12bは撚り掛けされて、全体をまとめている。
【0030】
得られたループヤーン14は、図5に示す揉み・開繊工程35で開繊処理される。この工程では、ゴム、織物、不織布、樹脂シート等を2枚擦り合わせることにより、間に入れたループヤーンは揉まれ、図8に示すループ状繊維23のように開繊される。このような開繊処理を行うことで、好ましい嵩高性、例えば40mm以上の嵩高性を得ることができる。また、花糸として前記中空状や高強力ポリエステル繊維を選択し開繊処理を組合せたり、30dtex以下のポリエステルモノフィラメント繊維をマルチフィラメント繊維に加え開繊処理を組合せることにより、50mm以上150mm程度の嵩高性を発現させることが可能となる。開繊するには揉み手段のほか、叩いたり、ブラッシング処理等を採用することもできる。機械的揉み機の揉み部材としては、ゴム(ネオプレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等)発泡体(ウレタンフォーム、シリコーンゴムフォーム、エチレン-ビニルアルコール(EVA)系発泡体、セルロース系発泡体等)、不織布、人工皮革等がある。また、ブラシの場合は、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン、塩化ビニル、アクリル、アラミド、フッ素樹脂等の合成繊維;羊毛、馬毛、鹿毛、豚毛等の獣毛繊維、金属線等のブラシがある。
【0031】
揉み・開繊工程で開繊処理されたループヤーンは、ボビンから解舒し、図5に示す第一熱処理工程36で熱処理する。熱処理温度は、ループヤーンの融着ポリマーが融着する例えば70?220℃、特に140?210℃、熱処理時間は1秒?20分程度が好ましい。さらに、1kg/cm^(2)以上の圧力を加えるとより好ましい。この第一熱処理により、開繊されたループ状繊維同士の接触部は融着される。芯の部分にもループ状繊維は集中するので融着される。得られた長繊維詰め綿8の概略断面図を図8に示す。22は芯糸、23は開繊されたループ状繊維である。
【0032】
次にシリコーン樹脂散布工程において、シリコーン樹脂が散布される。シリコーン樹脂としては、分子末端がハイドロジェン基(-OH)、ビニル基(-CH=CH_(2))等を有する反応性シリコーン処理剤を使用するのが好ましい。例えば、松本油脂製薬社製“TERON E 530”バルキーシリコン、“TERON E 731”、“TERON E 722”等のソフトシリコンを使用できる。散布量は、乾燥重量で詰め綿に対し0.1?10wt%散布するのが好ましい。
【0033】
次に第二熱処理工程において、例えば120?200℃で1秒?20分程度熱処理し、シリコーン樹脂をキュアリングする。得られた長繊維詰め綿8は、図9に示すように開繊されたループ状繊維23と芯糸が熱融着している芯部25とからなる。24はループ状繊維23同士の融着部である。
【0034】
長繊維詰め綿としてエアー交絡糸を用いる場合は、エアー交絡糸は、例えば、芯糸及び花糸をエアー交絡装置の2個のフィードローラに、それぞれ1本供給し、芯糸の供給速度を10?200m/min、花糸の供給速度を20?10000m/min、巻き取り速度10?200m/minとして、空気圧力0.01?1.0MPaの交絡ノズルで混繊交絡処理を施した後、デリベリローラ通過後の複合糸をリング撚糸機構付のボビンで巻き取ることで得ることができる。そして、上記で得られたループヤーン(エアー交絡糸)はボビンから解舒し、必要に応じて図5に示す揉み・開繊工程で開繊処理する。揉み・開繊工程では、ゴム、織物、不織布、樹脂シート等を2枚擦り合わせることにより、間に入れたループヤーンは揉まれ、開繊される。次にシリコーン樹脂散布工程において、シリコーン樹脂が散布される。シリコーン樹脂としては、分子末端がハイドロジェン基(-OH)、ビニル基(-CH=CH_(2))等を有する反応性シリコーン処理剤を使用するのが好ましい。例えば、松本油脂製薬社製“TERON E 530”バルキーシリコン、“TERON E 731”、“TERON E 722”等のソフトシリコンを使用できる。散布量は、乾燥重量で詰め綿に対し0.1?10wt%散布するのが好ましい。次に熱処理工程において、140?190℃で1?10分間熱処理し、シリコーン樹脂をキュアリングする。得られた長繊維詰め綿40では、図10に示しているように、芯糸42と花糸41の構成繊維が互いに絡まっており、花糸41が解繊されて部分的にループ状繊維を形成する。なお、芯糸及び/又は花糸が融着繊維を含む場合は、キュアリング共に芯糸及び花糸を融着固定することもできる。この場合は、解繊されて部分的にループ状繊維を形成した花糸41及び/又は芯糸42は融着された部分を有することになる。
【0035】
本発明の詰め綿は、布団、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、パンツ、ベスト、コート、防寒服、ネックウォーマーなどに好適である。
【実施例】
【0036】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(参考例1)
1.芯糸
(1)ポリエステル融着糸:ウンジンケミカル社製商品名“EZBON”(芯がPET、鞘がポリエステル共重合体からなる複合マルチフィラメント繊維、トータル繊度33dtex,フィラメント数24本、ストレート糸)を2本使用した。
(2)PET非融着糸:トータル繊度78dtex,フィラメント数48本、ストレート糸を2本使用した。
【0038】
上記芯糸及び花糸を、それぞれ芯糸12a,12b及び花糸11として使用し、ウェストケージ13に供給した。このとき、芯糸12a,12bにより、花糸11のループを挟み込むように供給した。ついで、花糸11と芯糸12a,12bをまとめて撚りを掛け、ループヤーン14を形成した。ループヤーン14は撚糸機20によって実撚りを掛けた。撚り数は250回/mであった。得られたループヤーン14は図7に示す。
【0039】
得られたループヤーン14はボビン17から解舒し、図5に示す揉み・開繊工程35で開繊処理した。揉み・開繊工程では、ゴム、織物、不織布、樹脂シート等を2枚擦り合わせることにより、間に入れたループヤーンは揉まれ、図8に示すループ状繊維23のように開繊された。
【0040】
次に図5に示す第一熱処理工程36で熱処理した。熱処理温度は、140?200℃、熱処理時間は0.5?10分とした。この第一熱処理により、花糸11及び芯糸12a,12bの鞘部分のポリマーが融着され、ループ状繊維の接触点は融着された。また芯の部分も融着された。
【0041】
次にシリコーン樹脂散布工程37において、シリコーン樹脂を散布した。シリコーン樹脂としては、松本油脂製薬社製“TERON E 530”のバルキーシリコン、“TERON E 731”、“TERON E 722”のソフトシリコンを3種混合水溶液として使用した。散布量は、乾燥重量で詰め綿に対し3.0wt%散布した。次に第二熱処理工程38において、140?190℃で1?10分間熱処理し、シリコーン樹脂をキュアリングした。
【0042】
得られた長繊維詰め綿8は、図9に示すように開繊されたループ状繊維23同士が融着部24のように融着された部分を含み、芯部25も融着されていた。この長繊維詰め綿の1mあたりの重量は0.25gであった。
【0043】
得られた長繊維詰め綿をループ状にして一方向に引き揃え、長繊維詰め綿シートをタテ30cm、ヨコ30cm角の側地に40g充填して詰め物体(枕)とした。10回家庭洗濯後の枕を観察したところ四隅まで詰め綿が均一に充填されており、詰め綿の片寄りはなかった。
【0044】
(比較例1)
この比較例は、参考例1における縫製による固定がない例である。参考例1のように側地と長繊維詰め綿とを一体縫製せずに、側地内に単に長繊維詰め綿を充填した詰め物体について、10回家庭洗濯後の枕を観察したところ詰め綿の片寄りが認められ、四隅には詰め綿がない状態であった。
【0045】
(参考例2)
本参考例は、花糸が融着糸でない例-その1である。図6に示す花糸11として、PETマルチフィラメント繊維(トータル繊度40dtex、フィラメント数12本、帝人社製商品名“エアロカプセル”)1本とPETマルチフィラメント繊維(トータル繊度33dtex、フィラメント数18本、ユニチカ社製商品名“シルミー”)2本とをウェストケージ13に回転又は糸振りさせて供給した。一例として、糸振りの場合は往復距離が約40mm、回転の場合はループの中央部で摘み上げたときの片側のループが約20mmとなるようにした。
【0046】
芯糸12aとして、ポリエステル融着糸:ウンジンケミカル社製商品名“EZBON”(芯がPET、鞘がポリエステル共重合体からなる複合マルチフィラメント繊維、トータル繊度78dtex,フィラメント数24本、ストレート糸)2本と、芯糸12bとして、PET非融着糸(トータル繊度33dtex、フィラメント数12本)を2本とを、ウェストケージ13に供給した。このとき、芯糸12a、12bにより、花糸11のループを挟み込むように供給した。ついで、花糸11と芯糸12a、12bをまとめて撚りを掛け、ループヤーン14を形成した。ループヤーン14は撚糸機20によって実撚りを掛けた。撚り数は250回/mであった。得られたループヤーン14は図7に示す。
【0047】
次に、ループヤーン14をボビン17から解舒し、第一熱処理工程36で熱処理した。熱処理温度は、“EZBON”糸が融着する170℃、熱処理時間は約5秒とした。この第一熱処理により、“EZBON”糸が融着され、ループ状繊維は芯糸と融着された。
【0048】
得られたループヤーン14は、揉み・開繊工程35で開繊処理した。揉み・開繊工程では、ゴム、織物、不織布、樹脂シート等を2枚擦り合わせることにより、間に入れたループヤーン14は揉まれ、図8に示すループ状繊維23のように開繊された。
【0049】
次に、融着処理後のループヤーンに対してシリコーン樹脂散布工程37において、シリコーン樹脂を散布した。シリコーン樹脂としては、例えば、松本油脂製薬社製“TERON E 530”のバルキーシリコン、“TERON E 731”、“TERON E 722”等のソフトシリコンを使用した。散布量は、乾燥重量で人工羽毛に対し0.5wt%散布した。
【0050】
次に第二熱処理工程38において、160℃で10分間熱処理し、シリコーン処理剤を詰め綿に熱固定した。得られた長繊維詰め綿8は、開繊されたループ状繊維23と芯糸22が熱融着しており、熱収縮はさせていない。この長繊維詰め綿の1mあたりの重量は0.13gであった。
【0051】
得られた長繊維詰め綿をループ状にして一方向に引き揃え、長繊維詰め綿シートをタテ30cm、ヨコ30cm角の側地に40g充填して詰め物体(枕)とした。10回家庭洗濯後の枕を観察したところ四隅まで詰め綿が均一に充填されており、詰め綿の片寄りはなかった。
【0052】
(比較例2)
この比較例は、参考例2の縫製による固定がない例である。参考例2のように側地と長繊維詰め綿とを一体縫製せずに、側地内に単に長繊維詰め綿を充填した詰め物体について、10回家庭洗濯後の枕を観察したところ詰め綿の片寄りが認められ、四隅には詰め綿がない状態であった。
【0053】
(参考例3)
本参考例は、花糸が融着糸でない例-その2である。花糸11として、PETマルチフィラメント繊維(トータル繊度40dtex、フィラメント数12本、帝人社製商品名“エアロカプセル”)1本とPETマルチフィラメント繊維(トータル繊度22dtex、フィラメント数12本、)1本とを使用し、芯糸12aとして、ポリエステル融着糸:ウンジンケミカル社製商品名“EZBON”(芯がPET、鞘がポリエステル共重合体からなる複合マルチフィラメント繊維、トータル繊度78 dtex,フィラメント数24本、ストレート糸)2本と、芯糸12bとして、PET非融着糸(トータル繊度78dtex、フィラメント数24本)2本を用いた以外は、参考例2と同様な方法にて長繊維詰め綿を得た。この長繊維詰め綿の1mあたりの重量は0.21gであった。
【0054】
得られた長繊維詰め綿をループ状にして一方向に引き揃え、長繊維詰め綿シートをタテ30cm、ヨコ30cm角の側地に40g充填して詰め物体(枕)とした。10回家庭洗濯後の枕を観察したところ四隅まで詰め綿が均一に充填されており、詰め綿の片寄りはなかった。
【0055】
(比較例3)
この比較例は、参考例3において縫製による固定がない例である。参考例3のように側地と長繊維詰め綿とを一体縫製せずに、側地内に単に長繊維詰め綿を充填した詰め物体について、10回家庭洗濯後の枕を観察したところ詰め綿の片寄りが認められ、四隅には詰め綿がない状態であった。
【0056】
(参考例4)
本参考例は、花糸が融着糸でない例-その3である。花糸11として、PET非融着糸(トータル繊度280dtex、フィラメント数24本)1本とPETマルチフィラメント繊維(トータル繊度22dtex、フィラメント数12本、)1本とを使用し、芯糸12a及び芯糸12bとして、ポリエステル融着糸:ユニチカ社製商品名“メルセット”(芯がPET、鞘がポリエステル共重合体からなる複合マルチフィラメント繊維、トータル繊度167dtex,フィラメント数48本、ストレート糸)をそれぞれ2本(合計4本)用いた以外は、参考例2と同様な方法にて長繊維詰め綿を得た。この長繊維詰め綿の1mあたりの重量は0.96gであった。
【0057】
得られた長繊維詰め綿をループ状にして一方向に引き揃え、長繊維詰め綿シートをタテ30cm、ヨコ30cm角の側地に40g充填して詰め物体(枕)とした。10回家庭洗濯後の枕を観察したところ四隅まで詰め綿が均一に充填されており、詰め綿の片寄りはなかった。
【0058】
(比較例4)
この比較例は、参考例4の縫製による固定がない例である。参考例4ように側地と長繊維詰め綿とを一体縫製せずに、側地内に単に長繊維詰め綿を充填した詰め物体について、10回家庭洗濯後の枕を観察したところ詰め綿の片寄りが認められ、四隅には詰め綿がない状態であった。
【0059】
(参考例5)
本実施例は、長繊維詰め物がエアー交絡糸の例-その1である。芯糸及び花糸共にウンジンケミカル社製商品名“EZBON”(芯がPET、鞘がポリエステル共重合体からなる複合マルチフィラメント繊維、トータル繊度78dtex、フィラメント数24本、ストレート糸)を用い、エアー交絡装置の2個のフィードローラに、それぞれ2本供給し、芯糸の供給速度を50m/min、花糸の供給速度を800m/min、巻き取り速度55m/minとして、空気圧力0.4MPaの交絡ノズルで混繊交絡処理を施した後、デリベリローラ通過後の複合糸にリング撚糸機構付のボビンで巻き取り、エアー交絡糸を得た。
【0060】
得られたループヤーン(エアー交絡糸)はボビンから解舒し、図5に示す揉み・開繊工程で開繊処理した。揉み・開繊工程では、ゴム、織物、不織布、樹脂シート等を2枚擦り合わせることにより、間に入れたループヤーンは揉まれ、開繊された。
【0061】
次にシリコーン樹脂散布工程において、シリコーン樹脂を散布した。シリコーン樹脂としては、松本油脂製薬社製“TERON E 530”のバルキーシリコン、“TERON E 731”、“TERON E 722”のソフトシリコンを3種混合水溶液として使用した。散布量は、乾燥重量で詰め綿に対し3.0wt%散布した。次に熱処理工程において、140?190℃で1?10分間熱処理し、シリコーン樹脂をキュアリングすると共に芯糸及び花糸を融着固定した。
【0062】
得られた長繊維詰め綿では、芯糸42と花糸41の構成繊維が互いに絡まっており、花糸41が解繊されて部分的にループ状繊維を形成しており、解繊されて部分的にループ状繊維を形成している花糸41同士が融着された部分を含み、芯糸41も融着されていた。この長繊維詰め綿の1mあたりの重量は0.18gであった。
【0063】
得られた長繊維詰め綿をループ状にして一方向に引き揃え、長繊維詰め綿シートをタテ30cm、ヨコ30cm角の側地に40g充填して詰め物体(枕)とした。10回家庭洗濯後の枕を観察したところ四隅まで詰め綿が均一に充填されており、詰め綿の片寄りはなかった。
【0064】
(比較例5)
この比較例は、参考例5の縫製による固定がない例である。参考例5のように側地と長繊維詰め綿とを一体縫製せずに、側地内に単に長繊維詰め綿を充填した詰め物体について、10回家庭洗濯後の枕を観察したところ詰め綿の片寄りが認められ、四隅には詰め綿がない状態であった。
【0065】
(実施例1)
本実施例は、長繊維詰め物がエアー交絡糸の例-その2である。芯糸にPETマルチフィラメント繊維(トータル繊度33dtex、フィラメント数18本、ユニチカ社製商品名“シルミー”)を、花糸にPETマルチフィラメント繊維(トータル繊度40dtex、フィラメント数12本、帝人社製商品名“エアロカプセル”)を用い、エアー交絡装置の2個のフィードローラに、それぞれ1本供給し、芯糸の供給速度を50m/min、花糸の供給速度を800m/min、巻き取り速度55m/minとして、空気圧力0.4MPaの交絡ノズルで混繊交絡処理を施した後、デリベリローラ通過後の複合糸にリング撚糸機構付のボビンで巻き取り、エアー交絡糸を得た。
【0066】
得られたループヤーン(エアー交絡糸)は、エアー交絡時に同時に開繊されおり、実使用上問題ない開繊状態であった。
【0067】
次にシリコーン樹脂散布工程において、シリコーン樹脂を散布した。シリコーン樹脂としては、松本油脂製薬社製“TERON E 530”のバルキーシリコン、“TERON E 731”、“TERON E 722”のソフトシリコンを3種混合水溶液として使用した。散布量は、乾燥重量で詰め綿に対し3.0wt%散布した。次に熱処理工程において、140?190℃で1?10分間熱処理し、シリコーン樹脂をキュアリングした。
【0068】
得られた長繊維詰め綿では、芯糸42と花糸41の構成繊維が互いに絡まることにより一体化されており、花糸41が解繊されて部分的にループ状繊維を形成していた。なお、融着は認められなかった。また、得られた長繊維詰め綿の1mあたりの重量は0.01gであった。
【0069】
得られた長繊維詰め綿をループ状にして一方向に引き揃え、長繊維詰め綿シートをタテ30cm、ヨコ30cm角の側地に40g充填して詰め物体(枕)とした。10回家庭洗濯後の枕を観察したところ四隅まで詰め綿が均一に充填されており、詰め綿の片寄りはなかった。
【0070】
(比較例6)
この比較例は、実施例1の縫製による固定がない例である。実施例1のように側地と長繊維詰め綿とを一体縫製せずに、側地内に単に長繊維詰め綿を充填した詰め物体について、10回家庭洗濯後の枕を観察したところ詰め綿の片寄りが認められ、四隅には詰め綿がない状態であった。
【0071】
以上の実施例1、参考例1?5及び比較例1?6の結果を下記表1及び図11?16にまとめて示した。
【0072】
【表1】

【0073】
以上のとおり、実施例1は10回家庭洗濯の後においても、長繊維詰め綿が側地の四隅まで詰め綿が均一に充填し、片寄りは見られなかった。これに対して比較例1?6は長繊維詰め綿が側地の中央に移動し中央が膨れ上がり、側地の四隅には詰め綿が無くなってつぶれてしまっていた。
【0074】
(参考例6)
本参考例は、掛け布団の例である。参考例1で得られた長繊維詰め綿をループ状にして一方向に引き揃え、図4に示すように幅1cmの細幅リボンを使用して両端を縫製により固定してシート状にした。この長繊維詰め綿シート1.6kgを、長さ210cm,幅150cmの側地内の幅方向に充填し、図1A-Bに示すように縫製線を入れて掛け布団とした。5回リネン洗濯後の布団を観察したところ四隅まで詰め綿が均一に充填し、片寄りは見られなかった。
【0075】
以上から本発明の実施例品は、従来の詰め物体に比較して、嵩高性の維持と耐洗濯性の向上が確認できた。すなわち、長繊維詰め綿は両端が側地に固定されており、両固定箇所の間で長繊維詰め綿を構成する芯糸の長さは変化することはなく、かつ花糸と芯糸は一体化しているので、洗濯を繰り返しても長繊維詰め綿の動きは制限され、詰め綿の片寄りが少なく、嵩も高い詰め物製品であることが確認できた。
【符号の説明】
【0076】
1 掛け布団
2a,2b 側地
3 枕
4,5,6,7a?7c 縫製線
8,40 長繊維詰め綿
9 長繊維詰め綿シート
10a,10b リボン状細幅布
11,31,41 花糸
12a,12b,22,32,42 芯糸
13,33 ウエストゲージ
14 ループヤーン
15 モーター
16 ベルト
17 ボビン
18 リング
19 トラベラー
20 撚糸機
23 ループ状繊維
24 融着部
25 芯部
34 撚糸工程
35 揉み・開繊工程
36 第一熱処理工程
37 シリコーン樹脂散布工程
38 第二熱処理工程
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側地内に詰め物を充填した詰め物体であって、
前記詰め物は、花糸及び芯糸がエアー交絡糸であることにより一体化し、前記花糸及び芯糸は融着されていない長繊維詰め綿であり、
前記花糸は開繊されてループ状繊維を形成しており、前記花糸と前記芯糸の重量比は、前記花糸と前記芯糸を母数にしたとき、前記花糸の割合は80?98重量%の範囲であり、
前記長繊維詰め綿は少なくとも一方向に多数本引き揃えられ、両端が側地とともに縫製されて側地に一体化していることを特徴とする詰め物体。
【請求項2】
前記長繊維詰め綿は、両端部がリボン状細幅布と一体縫製され、長繊維詰め綿シートに成形されている請求項1に記載の詰め物体。
【請求項3】
前記長繊維詰め綿は、両端以外の部分でも側地とともに縫製されて一体化している請求項1又は2に記載の詰め物体。
【請求項4】
前記長繊維詰め綿の単位長さ当たりの重量は0.05?1.5g/mの範囲である請求項1?3のいずれか1項に記載の詰め物体。
【請求項5】
前記花糸及び芯糸は非融着繊維で構成されている請求項1?4のいずれか1項に記載の詰め物体。
【請求項6】
前記詰め物体は、布団、毛布、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、パンツ、ベスト、コート、防寒服及びネックウォーマーから選ばれる少なくとも一つである請求項1?5のいずれか1項に記載の詰め物体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-11-30 
出願番号 特願2011-89361(P2011-89361)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (D02G)
P 1 651・ 537- YAA (D02G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松岡 美和  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 山田 由希子
蓮井 雅之
登録日 2015-10-16 
登録番号 特許第5822289号(P5822289)
権利者 倉敷紡績株式会社 イシケン株式会社
発明の名称 詰め物体  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
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