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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H01M
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する H01M
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する H01M
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する H01M
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01M
管理番号 1323801
審判番号 訂正2016-390144  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2016-11-01 
確定日 2016-12-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5936709号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5936709号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5936709号(以下「本件特許」という。)は、2013年1月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年1月25日 ドイツ(DE))を国際出願日として出願された特願2014-553666号の請求項1?7に係る発明について、平成28年5月20日に特許権の設定登録がなされ、その後、同年11月1日に本件訂正審判の請求がされたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正事項
1 請求の趣旨
本件訂正審判請求の趣旨は、「特許第5936709号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。

2 訂正事項
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1?3のとおりである。(当審注:下線は審判請求人が訂正箇所を示したものである。)
(1) 訂正事項1
願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の【0013】に記載された「酸化性物質」とあるのを、「被酸化性物質」に訂正する。

(2) 訂正事項2
本件特許明細書の【0014】に記載された「有孔性物質」を、「多孔性物質」に訂正する。

(3) 訂正事項3
本件特許明細書の【0014】に記載された「酸化性物質」を、「被酸化性物質」に訂正する。

第3 当審の判断
1 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
まず、本件特許に係る外国語でされた国際出願(PCT/EP2013/050443)の国際出願日における明細書を、以下、「基準明細書」という。
本件特許明細書の【0013】に記載された「酸化性物質」に対応する基準明細書(国際公開第2013/110506号の明細書本文5頁15?16行)には、「oxidierbares Material」と記載されているところ、「oxidieren(oxydieren)」は、「酸化させる」及び「酸化する」の両方の意味を有するものであり(審判請求人が提出した「訂正の理由1及び3の説明に必要な資料」参照。)、また、接尾辞「-bar」は、「…され得る,…可能な」との意味を有するものである(「小学館 独和大辞典〔第2版〕コンパクト版」、2000年1月1日、p.283)から、上記「oxidierbares Material」は、「酸化性物質」及び「被酸化性物質」の両方の意味を有するものと解される。
ここで、上記本件特許明細書【0013】の「酸化性物質」の直後の記載である「特に金属、例えば、鉄」との記載によれば、金属(鉄)は、酸化する物質ではなく、酸化され得る物質、すなわち、被酸化性物質であるから、上記「oxidierbares Material」は、「被酸化性物質」と翻訳するのが妥当である。
したがって、本件特許明細書の【0013】に記載された「酸化性物質」は、「被酸化性物質」との誤訳であると認められる。
よって、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2) 訂正事項2について
本件特許明細書の【0014】に記載された「有孔性」に対応する基準明細書(国際公開第2013/110506号の明細書本文5頁24行)には、「poroesen」(当審注:ドイツ語の「o」のウムラウトは「oe」で代替表記した。)と記載されており、当該記載は本来、「多孔性」と翻訳されることから(審判請求人が提出した「訂正の理由2の説明に必要な資料」参照。)、上記「有孔性物質」との記載は、「多孔性物質」との誤訳であると認められる。
したがって、訂正事項2に係る本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3) 訂正事項3について
本件特許明細書の【0014】に記載された「酸化性物質」に対応する基準明細書(国際公開第2013/110506号の明細書本文5頁25行)には、「oxidierbaren Material」と記載されているところ、前記(1)で検討したのと同様の理由により、上記「oxidierbaren Material」は、「酸化性物質」及び「被酸化性物質」の両方の意味を有するものと解される。
ここで、上記本件特許明細書【0014】の「酸化性物質」の直後の記載である「すなわち金属」との記載によれば、金属は、酸化され得る物質、すなわち、被酸化性物質であるから、上記「oxidierbaren Material」は、「被酸化性物質」と翻訳するのが妥当である。
したがって、本件特許明細書の【0014】に記載された「酸化性物質」は、「被酸化性物質」との誤訳であると認められる。
よって、訂正事項3に係る本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

2 訂正後の発明の独立特許要件について
訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由は見いだせないから、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項?第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電気エネルギ蓄積器用スタック
【背景技術】
【0001】
例えば、再利用可能電源による発電において、もしくは、最適効率領域で運転されていて電源系統には一時的に負荷がない発電所において、発生する余剰電力を蓄積するために、様々な技術的手段が使用されている。その一つが、再充電可能な酸化物電池(Rechargeable Oxide Battery、以下ROBと略記)である。ROBは、通常は600℃から800℃の温度範囲で運転され、電気セルの空気電極に供給される酸素が酸素イオンに変換され、固体電解質を通って輸送され、対向している蓄電電極に移される。そこで酸化還元反応が行われるが、充電プロセスか放電プロセスかに応じて、電流の受け取りか発生かが行われる。この反応のために必要な温度は高いので、使用されるセル材料の材料選択、セル部品の構成、蓄電媒体の配置が、非常に複雑になる。特に、これらの個々の要素は、酸化還元サイクルが上述した運転温度で以て幾度か運転された後に損耗する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
そこで本発明の課題は、従来技術に対してコスト的に有利に、且つ、組立て技術的に簡単に構成され、スタックもしくは蓄電セルの温度耐性を確実なものとした、ROBに基づく電気エネルギ蓄積器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題は、請求項1のブリアンブル部に記載された電気エネルギ蓄積器に関して解決される。
【0004】
請求項1に記載された電気エネルギ蓄積器用スタックは、少なくとも1つの蓄電セルを有し、そのセルは、1つの蓄電電極(陰極)と1つの空気電極(陽極)とを有する。ここに、空気電極は、空気供給装置に接続されており、その空気供給装置は、1つの空気分配プレートを含む。本発明によるスタックが優れているのは、当該スタックが蓄電電極と接触している水蒸気供給装置をさらに有しているということ、および、空気分配プレートが水供給装置の少なくとも1つの要素をさらに含んでいるということにある。
【0005】
本発明の利点は、1つの空気分配プレートが、同時に1つの水蒸気供給装置を含んでいるということにある。すなわち、空気分配と水蒸気分配とが、1つの構造部品の中に組み合わされ、統合されている。これにより、当該スタックの組立てが著しく簡単になる。その結果、その組み立てコストを大幅に低減できる。さらには、必要な構造空間も大幅に小さくできる。これにより、必要な構造空間の単位容積当りの蓄積エネルギを、より大きくすることが可能となる。従って、この電気エネルギ蓄積器は、より低廉なコストで製造することが可能であり、また省スペースである。
【0006】
本発明の有利な一実施形態では、空気分配プレートが、互いに分離された少なくとも2つの凹部を有し、それらは各々、作動媒体供給用または作動媒体排出用の1つの孔を備えている。これらの分離された凹部は、空気供給のため、または、水蒸気供給のために使用される。すなわち、これらは空気供給装置または水蒸気供給装置の一部である。ここで、作動媒体としては、ごく一般的には、必要な空気あるいは必要な水蒸気の供給物を挙げることができるが、窒素または窒素と水蒸気との混合気のような洗浄ガスでもよく、プロセス状態に応じて様々な作動媒体がこれらの孔を通って空気供給装置または水蒸気供給装置に導かれる。ここで、空気供給装置も水蒸気供給装置も、この空気分配プレート内にそれぞれが複数の孔付の2つの凹部を有していることが目的に適っており、それらの凹部のうちの1つが作動媒体の供給に使用され、他の1つが作動媒体の排出に使用される。
【0007】
このスタックの他の有利な実施形態は、さらに1つの床プレートと少なくとも1つのいわゆる中間接続プレート(複合部品)とを有する。ここに、床プレートも中間接続プレートすなわち複合部品も、それぞれ垂直に貫通する少なくとも2つの切欠きを有しており、その切欠きは、それら複数のプレートが積層されてスタックとして組み立てられたときに、それぞれが少なくとも1つの空気チャネルおよび少なくとも1つの水蒸気チャネルを形成する。
【0008】
この場合、空気供給プレートの1つの凹部が空気チャネルに接続され、かつ空気供給プレートの第2の凹部が水蒸気チャネルに接続される。
【0009】
少なくとも2つの水蒸気チャネルが設けられ、それらがそれぞれ空気分配プレートの1つの凹部に接続されていることが、基本的に目的に適っている。この場合、1つは水蒸気供給用の水蒸気チャネルであり、1つは水蒸気排出用の水蒸気チャネルである。
【0010】
1つの空気電極に接続された1つのトッププレートが設けられていると、さらに有利である。そのトッププレートは、スタックの終端プレートであり、これが空気チャネルと接続した複数の凹部を有していると有利であり、それらの凹部の少なくとも1つの孔が、空気電極と直接に接続されている1つのチャネルに通じていると有利である。この配置によれば、トッププレートすなわちスタックの終端プレートによって空気供給用チャネルが空気電極を経由して導かれ、方向転換されて再び空気分配プレートへ戻り、もう1つのチャネルに導かれる。
【0011】
本発明の他の実施形態および構成を、以下、図に基づいて、さらに詳細に説明する。ここに、異なった実施形態においても、同一の名称の構成要素には、同一の符号を付してある。これらは単に説明のための実施形態であって、保護範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ROBの機能を示す模式図である。
【図2】ROBのスタック構造の分解組立図である。
【図3】図2を反対方向から見た分解組立図である。
【図4】蓄電セルの層構造を示す詳細図である。
【図5】複合部品の空気供給側を見た図である。
【図6】複合部品の蓄電側を見た図である。
【図7】複合部品の断面図である。
【図8】空気供給装置と水供給装置とを備えた基盤プレートの上面図である。
【図9】図8に示す基盤プレートの代替実施形態である。
【図10】トッププレートを示す図である。
【図11】?
【図16】空気供給の異なる流れ方向を示す図である。
【0013】
図1に基づいて、ROBの動作の仕方を、以下の明細書に必要な範囲に限って模式的に説明する。一般的なROBの構成では、陽極を通ってプロセスガス、特に空気が、ガス供給管28を介して取り入れられ、空気から酸素が取り出される。このことから、この陽極を、以降では空気電極と呼ぶ。酸素は、酸素イオン(O^(2-))の形で、陽極に取り付けられた固体電解質36を通って陰極38に達する。陰極には多孔性物質形態の蓄電媒体が配置されている。この多孔性物質は、運転状態(充電/放電)に応じて元素または酸化物の状態で存在し、機能的に作用する被酸化性物質、特に金属、例えば鉄、を含んでいる。このことから、陰極は蓄電電極とも呼ばれ、以降ではこの用語を使用するものとする。
【0014】
電池が運転状態にあるときには、ガス状の酸化還元対、例えばH2/H2Oによって、固体電解質を通って輸送された酸素イオンが、蓄電媒体として使用される多孔性物質の複数の孔ルートを通り、被酸化性物質すなわち金属に輸送される、もしくはそこから取り出される。そのとき充電プロセスが行われているのか放電プロセスが行われているのかによって、金属酸化か酸化物還元かのいずれかが行われることとなり、それに必要な酸素がガス状の酸化還元対であるH_(2)-H_(2)Oによって配送されるか固体電解質に戻されるかのいずれかが行われることとなる(このメカニズムは、シャトルメカニズムと呼ばれる)。
【0015】
図2および図3に、1つのスタックの構成が示されている。このスタックは、電気エネルギ蓄積器全体の一部であり、通常は多数のスタックが組み合わされている。図2の分解図は、各電気エネルギ蓄積セル4の空気供給側18を見るように構成されており、蓄電側20は隠れている。これとは逆に、図3は、図2を単純に180°回転した方向から見た図である。図3においては、下から上へと製造技術的に有利な組み立て順序で示されている。それらの個々の要素を、図2における下から上の順に、以下に説明する。先ず、複数の空気供給用チャネル24が取り付けられているトッププレート42が設置される。この基盤プレート42を基準にして、蓄電セル4の見える側を、空気供給側18と名づける。基盤プレート42は、1つの平坦な面50を有し、この上に1つのシール46が載置されている。このシール46は、例えばガラス箔を有していて、これに対応する600℃から800℃までの温度において要求されるシール特性を具備している。このシール46の上に、1つの電極構造体22が載置されており、ここでは陽極34が下方のチャネル24を向いている。この電極構造体の作動の仕方について、図4に基づき詳細に説明する。
【0016】
電極構造体22の上に、1つの複合部品16(中間接続プレートとも呼ばれ、以降ではこの用語を使用する)が載置され、蓄電媒体14のための受容部12が、複数の凹部13の形状で、電極構造体22の方向を向くように取り付けられている。その方向は、中間接続プレート16の蓄電側20であり、同様に逆向きの分解図である図3に示されている。
【0017】
中間接続プレート16は、裏面に空気供給側18を有し、これは基盤となっているプレート42の空気供給面18と同様に構成されている。この空気供給側18も、1つの平坦な面50を有し、その上にシール46が取り付けられている。そして、もう1つの電極構造体22と床プレート44が続き、この床プレートも蓄電媒体14のための凹部13状の受容部12を有する。
【0018】
床プレート44の上に、1つの空気分配プレート48が取り付けられ、この空気分配プレートは、プロセスガスすなわち空気をスタック2に取り入れるために使用される。
【0019】
ここに、空気分配プレート48は、プロセスガスとして使用される空気の取り入れ(56)もしくは排出(56’)のための、複数の凹部56および56’を有する。空気分配プレート48は、さらに、複数の凹部58および58’を有し、それらの凹部を介して水蒸気がスタック2に導かれ、それらの凹部を介して水蒸気がスタック内で分配される。凹部56および56’ならびに凹部58および58’は、作動媒体供給用の複数の孔60および60’を有する。特に、それらの空気、水蒸気、または洗浄ガスが作動媒体として使用される。図3に示されているとおり、空気分配プレート48の上に床プレート44が続いて取り付けられ、好ましくは接合技術によって、特に高温半田法によって、は空気分配プレートに材料結合されている。従って、組み立てられたスタック6においては、空気分配プレート48と床プレート44とが一体に接合された1つの部品を形成している。床プレート44は、複数の切欠き64と65とを有し、これらの切欠きは、図3の分解図から分かるように、それぞれ空気供給用の凹部56および水供給用の凹部60、60’の上方にある。
【0020】
従って、凹部56を通ってスタックに取り入れられる空気は、床プレート44の縁部の切欠き64を通って、上方に流れる。空気供給用の切欠き64は、複数の孔26を有し、これらの孔は、図2の斜視図に示されており、より詳細には、図5、図7に示されている。前記の孔26は、空気電極34に接続されている複数のチャネル24へ空気を導入するために使われる。斯くして、空気は、複数の切欠き64から複数の孔26に分岐され、対応する空気電極34に供給される。
【0021】
ここに記載された空気の流れ方向は、単に1つの説明例に過ぎない。基本的に、空気を反対方向に導くようにすることも可能である。さらに、ここに記載した空気分配プレートによって、熱的な理由から必要となった場合には、高度な技術的設備なしに、また、組み立てが比較的簡単なスタック構成の基本的な利点を維持したままで、他の空気分配系統を形成するようにすることも可能である。
【0022】
セル内で生じる化学反応によって、プロセスガスすなわち空気も、全体の流れ分布においてかなり大きな温度勾配を有するという不利な場合が生じる。この温度勾配によって、個々の要素、例えば中間接続プレート16における熱応力が生じることがある。この熱応力を解消する、または軽減するために、空気の流れパターンがこれに応じて適合される。幾つのセル4が、またどのような幾何学的な配置で、個々の積層体54、54’に配置されているかに応じて、熱的に目的に適う様々な空気の流路が存在することとなる。それは基本的には、ここに記載されている実施例においては空気チャネル24の方向と蓄電媒体用凹部13の方向(図11?図16の鎖線矢印)とが90°を成しているという意味で、交差流である。この交差流は、例えば図11から図13に示されているように流れることとなる。これとは異なり、凹部13とチャネル24とが、図14に示されている如く空気分配プレート上で平行に走っている場合には、これを同一方向流と呼ぶ。図15、16には、空気流の蛇行パターンが示されており、これは同一方向の流れまたは逆方向の流れとして導くことができる。異なる流れパターンは、当然ながら、水蒸気供給装置と空気供給装置28の諸要素を相応に適合させることを前提としているが、それは図11?16には明確には示されていない。
【0023】
床プレート44の上に、中間接続プレート16(複合部品16)が取り付けられるが、これも同様に切欠き64、64’を有し、それらの切欠きは、床プレート44の切欠き64と共に空気チャネルを形成している。図2および図3の空気チャネルは、複数の切欠き64を重ね合わせて形成されるが、全体としては見えないので、符合もつけられていない。この空気チャネルは、さらに中間接続プレート16を貫通し、かつ同様にシール46を貫通している。このシール46は、床プレート44および中間接続プレート16と同様に、それらと全く一致した複数の切欠き47を有しており、それらの切欠きを通って空気ないし水蒸気が流入することができ、また同様に空気チャネルの一部分を成している。
【0024】
スタック2は、その形態によっては、多数の中間接続プレート16を接続することが可能であるが、図2および図3では1つの中間接続プレート16だけが形成されており、その上に1つのいわゆるトッププレート42が接続されている。トッププレート42は、空気供給装置用の複数の凹部66を有する。トッププレート42のこれらの凹部66は、同様に複数の孔26を有し、それらの孔は複数のチャネル24に通じており、それらのチャネルは、電気エネルギ蓄積セル4、4’の空気電極に接続されている。すなわち、スタック2の空気チャネルは、空気が個々の蓄電セル4を通り抜けて流れ、複数の孔26を通って個々のセル4のそれぞれの空気電極34に分流されるように構成されている。空気は、トッププレート42で相応に方向転換され、複数の凹部64’を通って、再び空気分配プレート48へと戻される。本実施形態では、それらの凹部64’は、それぞれのプレート、すなわち、床プレート44、トッププレート42または中間接続プレート16の中央に配置され、1つの空気チャネルを形成している。ここに、それらの凹部およびチャネルは、空気分配プレートの凹部56’に接続されており、空気は孔60’を通ってスタックから再び排出される。
【0025】
こうして凹部56は、スタックに取り込まれる空気を、個々の空気チャネルへと、そしてさらに個々の蓄電セルへと、分配するのに使われる。これらの蓄電セルは、スタックの1面に複数個存在するように設けることができる(図3および4の例では、1面当り4つの蓄電セルが存在している)。
【0026】
全体的な空気供給用系統は、孔60、60’、凹部56、56’、チャネル24への孔26、切欠き64、64’、凹部66、66’を含み、これらが一緒になって、符号が付けられていない複数の空気チャネルを形成する。この全体的な系統が、空気供給装置28と呼ばれる。マニフォールドという技術用語もよく使われる。
【0027】
次に、水蒸気供給装置70についても、上述した空気供給装置28と同様に詳しく説明する。これに関しては、特に図3を参照されたい。ここでも出発点は空気分配プレート48であり、これは同様に複数の凹部60を有し、それらによって、水蒸気あるいは洗浄ガスを、孔62、62’を介してスタック2へと導入することができる。その水蒸気は、凹部60を介して床プレート44または中間接続プレート16の複数の切欠き65に導かれる。これらの切欠き65は、水蒸気導入用の図示されていない1つのチャネル、すなわち水蒸気チャネルを形成する。この場合、水蒸気は、空気のように空気チャネルへ流れるのではなく、周囲圧力に対して例えば20mbミリバールの圧力で静止していることが望ましい。この水蒸気チャネルあるいは水蒸気供給装置70の役割は、特に、水蒸気圧を蓄電媒体14に対して可能な限り一定に保つことにある。水蒸気圧が低下した場合には、その水蒸気供給装置によって外部から再調整することができる。これらの水蒸気チャネルは、特に、中間接続プレート16の蓄電側20の凹部13および蓄電媒体14に直接的に接続される。
【0028】
スタック中の水蒸気雰囲気については、個々の蓄電セル4に水蒸気を供給するスタックの複数の水蒸気チャネルに分配するために、空気分配プレート48の凹部58、58’が同様に使用される。この空気分配プレート48の特徴は、その内部に空気分配とともに水蒸気分配も組み込まれていることにあり、このことによって、スタックの全体構成がより単純になり、その組立てが簡単になる。
【0029】
空気分配プレート48は、基本的には、空気供給装置28ないし水蒸気供給装置70のための凹部を、必ずしも2個ないし3個の有する必要はない。スタック2からの空気の排出は、空気分配プレート48の反対側にある、ここには示されていないもう1つのプレートを介しても、行うことができる。しかし、ここで記載された構成は、極めて目的に適うものであり、省スペースで、部品点数が少なく、そして組み立てに関するコストが極めて低い。
【0030】
図8および図9には、この空気分配プレート48が再度別々に拡大して示されているが、これらは同じ作用・効果を有する空気分配プレート48の2つの代替の形態である。図10は、トッププレート42の拡大図である。
【0031】
この場合、水蒸気供給装置70は特に、床プレート44ないし中間接続プレート16の複数の切欠き65で構成されている、符号の付されていない複数の水蒸気チャネルと、空気分配プレート48の複数の凹部58、58’と、空気分配プレート48の複数の孔62とを含む。
【0032】
次に、スタック2の組み立てについて簡単に説明する。上述したように、先ず空気分配プレート48が、床プレート44にロウ付けされる。これらの両プレートは、斯くして材料結合された1つの部品を形成する。続いて、蓄電側20が上を向いているこの部品の上に、複数の電極構造体22と、その平坦な面50の上の複数のシール46とが載置される。そして、中間接続プレート16が続くが、その際、空気側は下を向き、電極側は上を向いている。さらに電極構造体22、22’とシール46とが続く。場合によっては、さらなる中間接続プレート16、電極構造体22とシール46からなる積層体54を、さらに複数個積重ねた後、最後にトッププレート42が載置される。このように組み立てられたスタック2は、続いて、好ましくは800℃超の温度で以て熱処理される。そのプロセスにおいて、例えばガラスフリットからなるシール46が少なくとも部分的に溶融し、その結果、個々の要素、すなわち中間接続プレート16およびトッププレート42と床プレート44を互いに接着し、これらをシールする。その際、シール46が、いわゆるガラスセラミックと呼ばれるようなアモルファスコンポーネントと結晶コンポーネントとが同時に形成されるようにすることが望ましい。この組立て方法によって、一般的にスタックのねじ結合を省略することができる。
【0033】
斯くして中間接続プレート16は、1つのセル4の、および第2のセル4’の、それぞれのハウジングを効果的な形で構成する。このプレートは、それぞれの側に複数の平坦な面50を有し、それらは全体的に統合された部品乃至それによって取り囲まれた複数のセル4を簡単且つ効果的な方法で以てシールするのに適している。ここで、スタック2の各層が複数のセル4を含むことができることに留意すべきである。これらの例では、それぞれ、床プレート42または中間接続プレート16およびトッププレート44の上に、それぞれ4個の蓄電セル4用の複数の構造体が設置されている。その結果、床プレート42、シール46、電極構造体22および中間接続プレート16からなるそれぞれの積層体54は、4個の個別の蓄電セル4、4’を構成する。
【0034】
図2および図3では、分かり易くするために、それぞれ、1つの中間接続プレート16を用いた1つの展開のみが図示されている。原則として、スタック2は、有利な形態として、多数の中間接続プレート16を用いて複数のセル4、4’からなる多数の積層体54、54’を含むようにすることができることは勿論である。空気分配のプロセス技術的な複雑さを考慮すると、1積層体54当りに2個から8個のセル4、4’を有する積層体54の積み重ねを10層とするのが適切である。
【0035】
図4には、スタック2の組立てられた状態における1断面の断面図が示されており、ここでは電極構造体22の個々の層が、より詳細に示されている。しかし、これは高度に模式化された図示であり、決して寸法に忠実であると看做してはならない。図4の層構造を横切って複数の鎖線52が示されているが、これらには外側で符号4、4’を付された中括弧状の括りが付けられている。これらの鎖線52、52’は、1つのセル4あるいは1つの積層体54の終端を示している。ここで、複数の鎖線50が中間接続プレート16を横切っているが、これは上述したように、それぞれ、相前後して繋がっている2個のセル4、4’の一部である。まず、鎖線52から説明するが、この鎖線は、平坦な面50と平行に中間接続プレート16を通って延びる1つの面を示す。鎖線52の上方に、複数のチャネル24が延びており、これらのチャネルは、複数の孔26を介して、図4には示されていない空気供給装置28に接続されている。これらのチャネル24を通って流れる空気は、空気電極34と直接に接しており、そこで酸素原子が酸素イオンにイオン化され、それらの酸素イオンO^(2-)は固体電解質36を通って蓄電電極38へと移動する。例えばニッケルから成りイットリウムで強化された酸化ジルコニウムと混合された蓄電電極38が、サブストレート構造体40の上に載置されており、このサブストレート構造体は、蓄電電極38とほぼ同じ化学組成を有するが、蓄電電極38とはその多孔性の点でも微細構造の点でも異なっている。サブストレート構造体40の役割は、電極34、38と数μmという非常に薄い寸法を有する固体電解質36を支えることにある。このサブストレート構造体40は、基本的には空気電極側にも取り付けることができる。
【0036】
酸素イオンは、多孔性の陰極38にて分子状の水素と結合し、酸化されて、水を生成する。この水は、サブストレート構造体40の複数の孔を通って拡散し、蓄電媒体14用の受容部12に達する。蓄電媒体14用の受容部12は、図6に詳細に示されているように、複数のチャネル状の凹部13となっている。これらの凹部13の深さは、特に2mmを超え、好ましくは約6?10mmである。これらの凹部13の中に、鉄または酸化鉄製のプレスされた複数のピンが挿入されている。これらの鉄または酸化鉄製のピンが(充電または放電の運転状態に応じて、酸化または還元状態が生じる)、蓄電媒体14として使用される。これらのプレスされたピンは、多孔性に作られているので、水蒸気を蓄電媒体14の全ての孔に、そしてその結果全ての表面に、到達せしめることを可能とする。斯くして、それらの凹部13においては水蒸気雰囲気が支配的となる。
【0037】
図5?7には、中間接続プレート16の詳細図が示されている。図5は、中間接続プレート16の空気供給側18の概観であり、この実施形態では中間接続プレート16の1つのプレート上に、それぞれ4個の個別蓄電セル用の空気供給系が取り付けられている。中間接続プレート16の空気供給側18は、個別の複数のチャネル24を有し、これらのチャネル24が、複数の孔26を介して、スタック2の全体の空気供給装置28に接続されていることが分かる。この実施形態では、その個別のチャネル24は直線的に延びているチャネルであり、それらのチャネルはそれぞれ、入口に1つの孔と、その概形が示されている空気供給装置28への空気排出用のもう1つの孔とを有する。
【0038】
図6には、中間接続プレート16の蓄電側20が示されているが、この蓄電側は、図4の空気供給側18の裏面に配置されている。この蓄電側は、同様にチャネル状の複数の凹部13を有し、それがここでは示されていない蓄電媒体14の受容部12として使用される。図5においても図6においても、複数の平坦なシール面50が見られるが、これらのシール面に複数のシール46が載せられ、その結果、それぞれの側、すなわち空気供給側18も蓄電側20も、周囲に対してシールされる。斯くして、複数の凹部13における高度のシールを達成し、蓄電媒体における一定の水蒸気含有量を保証することが可能となる。
【0039】
図7には、中間接続プレート16のもう1つの断面図が示されており、図4と5に関して記述された特徴を確認できる。
【0040】
この統合された部品の熱膨張係数は、サブストレート構造体40の熱膨張係数に近いことが望ましい。この熱膨張係数は、12×10^(-6)K^(-1)から14×10^(-6)K^(-1)の間にあることが好適であり、特に、13×10^(-6)K^(-1)とするのが好適である。従って、この統合された部品の材料としては、クロム含有量が15重量%から30重量%のフェライト鋼が適している。
【符号の説明】
【0041】
2 スタック
4、4’ 蓄電セル
12 受容部
13 凹部
16 中間接続プレート
18 空気供給側
20 蓄電側
22 電極構造体
24 チャネル
28 空気供給装置
34 空気電極
36 固体電解質
38 蓄電電極
42 トッププレート
44 床プレート
46 シール
48 空気分配プレート
54 積層体
56 凹部
60 孔
70 水蒸気供給装置
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-11-29 
結審通知日 2016-12-01 
審決日 2016-12-13 
出願番号 特願2014-553666(P2014-553666)
審決分類 P 1 41・ 855- Y (H01M)
P 1 41・ 841- Y (H01M)
P 1 41・ 854- Y (H01M)
P 1 41・ 852- Y (H01M)
P 1 41・ 856- Y (H01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 守安 太郎  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 河本 充雄
土屋 知久
登録日 2016-05-20 
登録番号 特許第5936709号(P5936709)
発明の名称 電気エネルギ蓄積器用スタック  
代理人 山口 巖  
代理人 山口 巖  

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