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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04J
管理番号 1323871
審判番号 不服2015-20790  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-24 
確定日 2017-02-02 
事件の表示 特願2013-557744「断片化されたワイヤレス・スペクトルの仮想集約」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月29日国際公開,WO2012/161784,平成26年 5月22日国内公表,特表2014-512735,請求項の数(8)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年2月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年3月4日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年10月21日付けで拒絶理由が通知され,平成27年4月23日付けで手続補正がされ,同年7月17日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年11月24日に拒絶査定不服審判が請求され,その後,当審において平成28年8月23日付けで拒絶理由が通知され,同年11月25日付けで手続補正がされたものである。



第2 本願発明
本願の請求項1-8に係る発明は,平成28年11月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「入来するある特定のユーザのデータ・ストリームを複数の出力されるサブストリームに分割するステップであって,該出力されるサブストリームのそれぞれは,複数のスペクトル・フラグメントのそれぞれのスペクトル・フラグメントに割り当てられ,且つ該それぞれのスペクトル・フラグメントの帯域幅と比例するデータ転送速度を有し,前記複数のスペクトル・フラグメントの内の少なくとも1つのスペクトル・フラグメントは,既に他のユーザに割り当てられ,前記出力されるサブストリームを割り当てられないスペクトル・フラグメントによって前記複数のスペクトル・フラグメントの他のいずれのスペクトル・フラグメントからも分離される不連続スペクトル・ブロックである,ステップ(420)と,
前記それぞれのスペクトル・フラグメントを介しての伝送に適合されている変調された信号を提供するために,前記出力されるサブストリームのそれぞれを変調するステップ(430)と,
前記変調された信号を少なくとも1つのキャリア信号のそれぞれのスペクトル・フラグメントへとアップコンバートするステップ(440)と,
を含み,
前記アップコンバートされた変調済みの信号内に含まれるサブストリームは,前記データ・ストリームを回復するために,受信機で復調および組み合わせられるように適合されている,
方法。」



第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由は,請求項1-10に係る発明は,引用文献1-3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2010-232857号公報
2.特開2009-290899号公報(周知技術を示す文献)
3.欧州特許出願公開第2093957号明細書(周知技術を示す文献)

([当審注]:平成28年11月25日付けの手続補正により,上記「請求項1-10」のうち,請求項2,8は削除された。)


2 原査定の理由の判断
(1)引用文献に記載された事項
[引用発明]
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-232857号公報)には,以下の事項が記載されている。

ア 「【0027】
図1は,この発明の実施の形態による通信システムの概略図である。図1を参照して,この発明の実施の形態による通信システム10は,送信機1と,受信機2とを備える。送信機1および受信機2は,無線通信空間に配置される。なお,図1においては,図示されていないが,各種の無線システムによって無線通信を行なう他の通信装置が存在している。
【0028】
送信機1は,後述する方法によって,他の通信装置がデータの送信に用いていない無線通信空間における空き通信帯域に送信データを分割して受信機2へ送信する。
【0029】
受信機2は,送信機1から送信データを受信し,その受信した送信データを後述する方法によって処理する。
【0030】
図2は,図1に示す送信機1の構成を示す概略図である。図2を参照して,送信機1は,変調器11と,直列/並列変換器12と,フーリエ変換器13と,マッピング器14と,検出手段15と,逆フーリエ変換器16と,畳み込みフィルタ17と,並列/直列変換器18と,送信手段19と,アンテナ20とを含む。
【0031】
変調器11は,デジタル信号からなる送信データを受け,その受けた送信データを所定の方式に従って周波数変調する。そして,変調器11は,その周波数変調した送信スペクトラムを直列/並列変換器12へ出力する。
【0032】
直列/並列変換器12は,変調器11から送信スペクトラムを受け,その受けた送信スペクトラムをN(Nは2以上の整数)個のシンボル毎にブロック化してM(奇数からなる整数)個のブロックを生成し,その生成したM個のブロックを直列配列から並列配列に変換し,並列配列からなるM個のブロックをフーリエ変換器13へ出力する。
【0033】
フーリエ変換器13は,並列配列されたM個のブロックを直列/並列変換器12から受け,その受けたM個のブロックの各々に含まれるN個のシンボルを高速フーリエ変換する処理をM個のブロックに対して並列に行なう。そして,フーリエ変換器13は,M個のブロックに対する高速フーリエ変換処理の結果である信号Dをマッピング器14へ出力する。この信号Dは,M個の分割送信スペクトラムブロックからなり,M個の分割送信スペクトラムブロックの各々は,N個の周波数成分からなる。
【0034】
マッピング器14は,フーリエ変換器13からM個の分割送信スペクトラムブロックを受け,無線通信空間における複数の空き通信帯域を検出手段15から受ける。そして,マッピング器14は,複数の空き通信帯域に基づいて,M個の分割送信スペクトラムブロックの各々に含まれるN個の周波数成分を複数の空き通信帯域のうちのできる限り少ない個数からなる空き通信帯域に分割するためのマッピング行列<P>を生成する。
【0035】
なお,この明細書においては,表記<A>は,行列Aを表すものとする。
【0036】
マッピング器14は,マッピング行列<P>を生成すると,その生成したマッピング行列<P>を用いてM個の分割送信スペクトラムブロックの各々に含まれるN個の周波数成分を複数の空き通信帯域のうちのできる限り少ない個数からなる空き通信帯域に分割する。そして,マッピング器14は,その分割結果である信号Sを逆フーリエ変換器16へ出力する。この信号Sは,M個のマッピングブロックからなり,M個のマッピングブロックの各々は,LN(Lは2以上の2のべき乗からなる整数)個の周波数成分からなる。
【0037】
検出手段15は,常時,または所定の時間間隔により定期的に,アンテナ20を介してキャリアセンスし,無線通信空間における複数の空き通信帯域を検出する。そして,検出手段15は,その検出した複数の空き通信帯域をマッピング器14へ出力する。
【0038】
逆フーリエ変換器16は,マッピング器14から信号Sを受け,その受けた信号Sを構成するM個のマッピングブロックの各々に含まれるLN個の周波数成分を逆高速フーリエ変換して時間軸データに変換し,その変換結果である信号sを畳み込みフィルタ17へ出力する。
【0039】
畳み込みフィルタ17は,逆フーリエ変換器16から受けた信号sに対して後述する方法によって畳み込み演算を行ない,その演算結果を並列/直列変換器18へ出力する。
【0040】
並列/直列変換器18は,畳み込みフィルタ17から受けた演算結果を並列配列から直列配列に変換し,直列配列からなるベースバンド信号を送信手段19へ出力する。
【0041】
送信手段19は,並列/直列変換器18から受けたベースバンド信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し,アナログ信号からなるベースバンド信号を所定の周波数帯に周波数変換し,アンテナ20を介して受信機2へ送信する。
【0042】
図3は,図1に示す受信機2の構成を示す概略図である。図3を参照して,受信機2は,アンテナ21と,AD変換器22と,直列/並列変換器23と,畳み込みフィルタ24と,フーリエ変換器25と,検出手段26と,デマッピング器27と,逆フーリエ変換器28と,シンボル判定器29とを含む。
【0043】
アンテナ21は,送信機1からベースバンド信号を受け,その受けたベースバンド信号をAD変換器22へ出力する。
【0044】
AD変換器22は,アンテナ21からベースバンド信号を受け,その受けたベースバンド信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し,その変換したデジタル信号からなるベースバンド信号を直列/並列変換器23へ出力する。
【0045】
直列/並列変換器23は,AD変換器22から受けたベースバンド信号を直列配列からLN個の並列配列に変換し,その変換したLN個の並列配列からなるベースバンド信号を畳み込みフィルタ24へ出力する。
【0046】
畳み込みフィルタ24は,直列/並列変換器23から受けたLN個の並列配列からなるベースバンド信号に対して畳み込み演算を行ない,その演算結果をフーリエ変換器25へ出力する。
【0047】
フーリエ変換器25は,畳み込みフィルタ24による演算結果に対して高速フーリエ変換を行ない,周波数成分からなるベースバンド信号をデマッピング器27へ出力する。
【0048】
検出手段26は,常時,アンテナ21を介してキャリアセンスし,無線通信空間における複数の空き通信帯域を検出する。そして,検出手段26は,その検出した複数の空き通信帯域をデマッピング器27へ出力する。
【0049】
デマッピング器27は,検出手段26から受けた複数の空き通信帯域に基づいてマッピング器14と同じ方法によってマッピング行列<P>を生成し,その生成したマッピング行列<P>の転置行列であるデマッピング行列<P>Tを演算する。そして,デマッピング器27は,フーリエ変換器25から受けたベースバンド信号に対して,後述する方法によって周波数選択性伝搬路に対する等化を周波数軸で行なうとともに,その等化後の信号にデマッピング行列<P>Tを乗算してLN個の周波数成分からなる信号をN個の周波数成分からなる信号に変換する。その後,デマッピング器27は,L個の周波数成分からなる信号を逆フーリエ変換器27へ出力する。
【0050】
逆フーリエ変換器28は,デマッピング器27から受けた信号に対して逆高速フーリエ変換を行ない,その変換後の信号をシンボル判定器29へ出力する。
【0051】
シンボル判定器29は,逆フーリエ変換器28からの信号を判定して受信データを取得する。
【0052】
図4は,運用周波数帯の概念図である。図4を参照して,運用周波数帯は,2.4GHz帯等の周波数帯からなる。そして,運用周波数帯に含まれる通信帯域B1?B4は,それぞれ,異なる無線システムによって使用されており,通信帯域B1?B4の隙間には,空き通信帯域EB1?EB5が存在する。
【0053】
送信データの帯域幅をWとすると,空き通信帯域EB1?EB5は,それぞれ,帯域幅Wよりも狭い帯域幅W1?W5を有する。従って,空き通信帯域EB1?EB5のうちの1つの空き通信帯域(空き通信帯域EB1?EB5のいずれか)を用いて帯域幅Wの送信データを送信できない。
【0054】
しかし,空き通信帯域EB1?EB5の帯域幅W1?W5の合計は,帯域幅Wよりも大きい。従って,空き通信帯域EB1?EB5の帯域幅W1?W5のうち,帯域幅の合計が帯域幅W以上になる空き通信帯域(空き通信帯域EB1?EB5の少なくとも2個以上の空き通信帯域)を用いれば,帯域幅Wの送信データを送信できる。
【0055】
そこで,この発明の実施の形態においては,送信機1は,空き通信帯域EB1?EB5から選択したできる限り少ない個数からなる空き通信帯域に送信データを分割して受信機2へ送信する。
(中略)
【0061】
図6は,マッピングおよび畳み込みの概念図である。また,図7は,図2に示す逆フーリエ変換器16,畳み込みフィルタ17および並列/直列変換器18における動作を説明するための概念図である。
【0062】
図6を参照して,マッピング器14は,マッピング行列<P>を用いて各ブロックBLK_1_f?BLK_M_fのN個の周波数成分FSSを周波数成分FSSMにマッピングする。
(中略)
【0074】
マッピング器14は,検出手段15から受けた複数の空き通信帯域および上記の制限(a)?(c)に基づいて,式(1)に示すマッピング行列<P>を生成し,その生成したマッピング行列<P>をフーリエ変換器13から受けた各ブロックBLK_m_f(mは1≦m≦Mを満たす整数)の周波数成分FSSに乗算することにより,周波数成分FSS1?FSS4を周波数成分FSSM1?FSSM4へマッピングする。
【0075】
即ち,マッピング器14は,送信スペクトラムの離散的な複数の周波数成分の順序を維持し,かつ,複数の周波数成分ができる限り連続するように送信スペクトラムを複数の空き通信帯域に含まれる空き通信帯域に分割することにより送信スペクトラムを4個の空き通信帯域に分割する。この場合,4個の空き通信帯域は,複数の空き通信帯域から帯域幅が広い順に選択された空き通信帯域からなる。」(6?9ページ,10?11ページ)

イ 「【0123】
図9は,図1に示す送信機1の概念図である。また,図10は,送信信号の概念図である。図9を参照して,送信機1は,概念的には,バンドパスフィルタBPF1?BPF4と,乗算器MP1?MP4と,加算器SUM1とを備える。
【0124】
バンドパスフィルタBPF1?BPF4の各々は,隣接チャネル(隣接する周波数帯域)へのサイドローブが低いバンドパスフィルタからなる。そして,バンドパスフィルタBPF1?BPF4は,無線通信空間における複数の空き通信帯域のうちのできる限り少ない個数の空き通信帯域に送信スペクトラムを分割するバンドパスフィルタである。
【0125】
より具体的には,バンドパスフィルタBPF1は,変調シンボルa_(n)を用いて表される送信信号Σδ(t-nTs)a_(n)を受け,その受けた送信信号Σδ(t-nTs)a_(n)を伝達関数H_(1)(ω)によって帯域分割し,その帯域分割した分割送信スペクトラムDVS1を乗算器MP1へ出力する。
【0126】
また,バンドパスフィルタBPF2は,送信信号Σδ(t-nTs)a_(n)を受け,その受けた送信信号Σδ(t-nTs)a_(n)を伝達関数H_(2)(ω)によって帯域分割し,その帯域分割した分割送信スペクトラムDVS2を乗算器MP2へ出力する。
【0127】
更に,バンドパスフィルタBPF3は,送信信号Σδ(t-nTs)a_(n)を受け,その受けた送信信号Σδ(t-nTs)a_(n)を伝達関数H_(3)(ω)によって帯域分割し,その帯域分割した分割送信スペクトラムDVS3を乗算器MP3へ出力する。
【0128】
更に,バンドパスフィルタBPF4は,送信信号Σδ(t-nTs)a_(n)を受け,その受けた送信信号Σδ(t-nTs)a_(n)を伝達関数H_(4)(ω)によって帯域分割し,その帯域分割した分割送信スペクトラムDVS4を乗算器MP4へ出力する。
【0129】
この場合,バンドパスフィルタBPF1?BPF4は,上述した畳み込み演算によってそれぞれ分割送信スペクトラムDVS1?DVS4の帯域を制限する。
【0130】
乗算器MP1は,バンドパスフィルタBPF1から受けた分割送信スペクトラムDVS1にe^(jω1t)を乗算し,その乗算結果である分割送信スペクトラムDVS1’(図10参照)を加算器SUM1へ出力する。
【0131】
また,乗算器MP2は,バンドパスフィルタBPF2から受けた分割送信スペクトラムDVS2にe^(jω2t)を乗算し,その乗算結果である分割送信スペクトラムDVS2’(図10参照)を加算器SUM1へ出力する。
【0132】
更に,乗算器MP3は,バンドパスフィルタBPF3から受けた分割送信スペクトラムDVS3にe^(jω3t)を乗算し,その乗算結果である分割送信スペクトラムDVS3’(図10参照)を加算器SUM1へ出力する。
【0133】
更に,乗算器MP4は,バンドパスフィルタBPF4から受けた分割送信スペクトラムDVS4にe^(jω4t)を乗算し,その乗算結果である分割送信スペクトラムDVS4’(図10参照)を加算器SUM1へ出力する。
【0134】
このように,乗算器MP1?MP4は,それぞれ,分割送信スペクトラムDVS1?DVS4の周波数を周波数ω_(1)/(2π)?ω_(4)/(2π)だけ変換して分割送信スペクトラムDVS1’?DVS4’(図10参照)を加算器SUM1へ出力する。
【0135】
乗算器MP1?MP4によって分割送信スペクトラムDVS1?DVS4の周波数を変換するのは,分割送信スペクトラムDVS1?DVS4が隣接する分割送信スペクトラムとの間でオーバーラップしないようにするためである。
【0136】
加算器SUM1は,乗算器MP1?MP4から4個の分割送信スペクトラムDVS1’?DVS4’を受け,その受けた4個の分割送信スペクトラムDVS1’?DVS4’を直列に配列してベースバンド信号を生成する。
【0137】
この場合,伝達関数H_(1)(ω)?H_(4)(ω)の通過帯域の合計は,シンボル周期Tsに対する通常の連続スペクトラムのシングルキャリア変調の帯域幅Wに等しく,次式を満たす。そして,伝達関数H_(1)(ω)?H_(4)(ω)の各々は,ルートコサインロールオフ特性を有する。
【0138】

【0139】
図11は,図1に示す受信機2の概念図である。また,図12は,整合フィルタの出力信号の概念図である。図11を参照して,受信機2は,概念的には,整合フィルタMTHF1?MTHF4と,乗算器MP5?MP6と,加算器SUM2とを備える。
【0140】
整合フィルタMTHF1?MTHF4の各々は,上述した方法によるオーバーラップ周波数領域等化を行う整合フィルタからなる。
【0141】
そして,整合フィルタMTHF1は,受信信号を受け,その受けた受信信号のうち,分割受信スペクトラムDVS1”(図12の(a)参照)だけを乗算器MP5へ通過させる。
【0142】
また,整合フィルタMTHF2は,受信信号を受け,その受けた受信信号のうち,分割受信スペクトラムDVS2”(図12の(a)参照)だけを乗算器MP6へ通過させる。
【0143】
更に,整合フィルタMTHF3は,受信信号を受け,その受けた受信信号のうち,分割受信スペクトラムDVS3”(図12の(a)参照)だけを乗算器MP7へ通過させる。
【0144】
更に,整合フィルタMTHF4は,受信信号を受け,その受けた受信信号のうち,分割受信スペクトラムDVS4”(図12の(a)参照)だけを乗算器MP8へ通過させる。
【0145】
この場合,整合フィルタMTHF1?MTHF4は,上述したオーバーラップ周波数領域等化によって周波数軸で等化を行う。
【0146】
乗算器MP5は,整合フィルタMTHF1から受けた分割受信スペクトラムDVS1”にe^(-jω1t)を乗算し,その乗算結果である分割受信スペクトラムDVS1’’’(図12の(b)参照)を加算器SUM2へ出力する。
【0147】
また,乗算器MP6は,整合フィルタMTHF2から受けた分割受信スペクトラムDVS2”にe^(-jω2t)を乗算し,その乗算結果である分割受信スペクトラムDVS2’’’(図12の(b)参照)を加算器SUM2へ出力する。
【0148】
更に,乗算器MP7は,整合フィルタMTHF3から受けた分割受信スペクトラムDVS3”にe^(-jω3t)を乗算し,その乗算結果である分割受信スペクトラムDVS3’’’(図12の(b)参照)を加算器SUM2へ出力する。
【0149】
更に,乗算器MP8は,整合フィルタMTHF4から受けた分割受信スペクトラムDVS4”にe^(-jω4t)を乗算し,その乗算結果である分割受信スペクトラムDVS4’’’(図12の(b)参照)を加算器SUM2へ出力する。
【0150】
このように,乗算器MP5?MP8は,それぞれ,分割受信スペクトラムDVS1”?DVS4”の周波数を周波数-ω_(1)?-ω_(4)だけ変換して分割受信スペクトラムDVS1’’’?DVS4’’’(図12の(b)参照)を加算器SUM2へ出力する。
【0151】
乗算器MP5?MP8によって分割受信スペクトラムDVS1”?DVS4”の周波数を変換するのは,送信機1においてオーバーラップしないように変換された周波数を元に戻すためである。
【0152】
加算器SUM2は,乗算器MP5?MP8から4個の分割受信スペクトラムDVS1’’’?DVS4’’’を受け,その受けた4個の分割受信スペクトラムDVS1’’’?DVS4’’’を直列に配列して受信ベースバンド信号を得る。
【0153】
なお,図9に示す送信機1においては,4個のバンドパスフィルタBPF1?BPF4が示されているが,これは,送信スペクトラムを4個の空き通信帯域へ分割するからであり,送信スペクトラムを4個以外の空き通信帯域へ分割する場合,送信機1は,送信スペクトラムの分割数に応じたバンドパスフィルタおよび乗算器を備える。
【0154】
また,同様の理由により,図11に示す受信機2も,送信スペクトラムの分割数に応じた整合フィルタおよび乗算器を備える。」(17?19ページ)


上記ア,イの記載及び図面並びに当該技術分野の技術常識を考慮すると,引用文献1には
「送信データを変調し,フーリエ変換し,複数に分割して複数の不連続な空き通信帯域にマッピングし,逆フーリエ変換し,所定の周波数帯に周波数変換し,アンテナを介して受信機に送信する送信機。」
の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。


[周知事項]
同じく原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2009-290899号公報)には,以下の事項が記載されている。

ウ 「【0005】
図7は送信側に用いられるOFDM変調装置の構成を示すブロック図である。OFDM変調装置には,送信データが入力される。この送信データは,シリアル/パラレル変換部201に供給されて,低速な複数の伝送シンボルからなるデータに変換される。つまり,伝送情報を分割して,複数の低速なデジタル信号を生成する。このパラレルデータは,逆高速フーリエ変換(IFFT)部202に供給される。
【0006】
パラレルデータは,OFDMを構成する各サブキャリアに割り当てられ,周波数領域においてマッピングされる。ここで,各サブキャリアに対してBPSK,QPSK,16QAM,64QAM等の変調が施される。マッピングデータは,IFFT演算を施すことによって,周波数領域の送信データから時間領域の送信データに変換される。これにより,互いに直交する関係にある複数のサブキャリアがそれぞれ独立に変調されたマルチキャリア変調信号が生成される。IFFT部202の出力は,ガードインターバル付加部203に供給される。」(3ページ)

同じく原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(欧州特許出願公開第2093957号明細書)には,以下の事項が記載されている。

エ 「[0037] Figure 2 shows the process of concealing errors during transmission of compressed video data on an OFDM channel in an embodiment of the present invention. The process includes the following steps:
[0038] Step 201: Compressed video data is received.
[0039] Step 202: The received compressed video data is split into slice structures.
[0040] The method of splitting a slice structure is defined in the existing video compression standards. In this step, the slice structure of the compressed video data may be split according to the video compression standards.
[0041] Step 203: It is determined whether the conditions of updating the slice allocation rule are currently satisfied. If satisfied, the process proceeds to 204; otherwise, step 205 is performed.
[0042] Step 204: Adjacent slice structures are allocated to non-adjacent OFDM sub-channels or sub-channel groups according to the slice allocation rule which is preset and different from the rule applied to the previous video frame. The process proceeds to step 206.
[0043] Step 205: Adjacent slice structures are allocated to non-adjacent OFDM sub-channels or sub-channel groups according to the slice allocation rule which is the same as the rule applied to the previous video frame.
[0044] Generally, the total number of OFDM sub-channels (M) is greater than the total number of slice structures (N). Suppose that K=[M / N]([当審注]:表記上の理由で,床関数の記号を「[ ]」で表す。), namely, K is a result of rounding down the quotient of M divided by N, then K is the quantity of OFDM sub-channels contained in each OFDM sub-channel group, and each OFDM sub-channel group corresponds to a slice structure; if P=M%N and P is not 0, then the control data (such as frequency domain interleaving and time domain interleaving control data) is transmitted on the remaining P OFDM sub-channels. If P=0, the control data together with a slice structure is allocated to an OFDM sub-channel.
[0045] Step 206: Channel encoding, space domain interleaving and QAM mapping are performed for the slice structure allocated to each OFDM sub-channel or sub-channel group.
[0046] Step 207: A pilot signal is inserted onto the OFDM sub-channel; IFFT and guard interval insertion are performed for the data obtained from mapping of QAM and the inserted pilot signal to obtain OFDM signals, and the OFDM signals are sent to the receiving end.
[0047] The spatial domain interleaving method used in this step is the same as the spatial domain interleaving method in the prior art.
[0048] Step 208: After receiving the OFDM signal, the receiving end removes the guard interval, performs Fast Fourier Transform (FFT), performs channel correction and channel decoding according to the inserted pilot signal, and obtains the original slice structure on each OFDM sub-channel or sub-channel group.
[0049] Step 209: The receiving end decompresses the compressed video data composed of slice structures, and detects errors; if any error is detected on a slice structure, the receiving end conceals the error of the slice structure according to the successfully received slice structure which is chronologically or spatially related to the erroneous slice structure.」(2?3葉目)
([当審仮訳]:
[0037] 図2は,本発明の一実施形態における,OFDMチャネル上の圧縮ビデオデータの送信中にエラーを隠蔽するプロセスを示す。プロセスには次のステップが含まれる。
[0038] ステップ201:圧縮されたビデオデータが受信される。
[0039] ステップ202:受信した圧縮ビデオデータをスライス構造に分割する。
[0040] スライス構造を分割する方法は,既存のビデオ圧縮規格で定義されている。このステップでは,圧縮ビデオデータのスライス構造をビデオ圧縮規格に従って分割することができる。
[0041] ステップ203:スライス割当ルールを更新する条件が現在満たされているかどうかを判定する。満たされている場合,プロセスは204に進む。そうでなければ,ステップ205が実行される。
[0042] ステップ204:前のビデオフレームに適用されたルールとは異なる事前設定されたスライス割り当てルールに従って,隣接するスライス構造が隣接しないOFDMサブチャネル又はサブチャネルグループに割り当てられる。プロセスはステップ206に進む。
[0043] ステップ205:隣接するスライス構造は,隣接するOFDMサブチャネル又はサブチャネルグループに,前のビデオフレームに適用された規則と同じスライス割り当て規則に従って割り当てられる。
[0044] 一般に,OFDMサブチャネルの総数(M)は,スライス構造の総数(N)より大きい。 K=[M/N]であると仮定すると,KはMをNで割った商を切り捨てた結果であり,Kは各OFDMサブチャネルグループに含まれるOFDMサブチャネルの量であり,各OFDMサブチャネルグループはスライス構造に対応する。P=M%NかつPが0でない場合,残りのP個のOFDMサブチャネル上で制御データ(周波数領域インターリーブ及び時間領域インターリーブ制御データ等)が送信される。P=0の場合,制御データはスライス構造とともにOFDMサブチャネルに割り当てられる。
[0045] ステップ206:各OFDMサブチャネル又はサブチャネルグループに割り当てられたスライス構造に対して,チャネル符号化,空間ドメインインターリーブ及びQAMマッピングが実行される。
[0046] ステップ207:パイロット信号がOFDMサブチャネルに挿入される。OFDM信号を得るために,QAMと挿入されたパイロット信号とのマッピングから得られたデータに対して,IFFT及びガードインターバル挿入を行い,OFDM信号を受信側に送る。
[0047] このステップで使用される空間ドメインインターリービング方法は,従来技術における空間ドメインインターリービング方法と同じである。
[0048] ステップ208:OFDM信号を受信した受信側は,ガードインターバルを除去し,高速フーリエ変換(FFT)を行い,挿入されたパイロット信号に基づいてチャネル訂正及びチャネル復号を行い,各OFDMサブチャネル又はサブチャネルグループ上で元のスライス構造を取得する 。
[0049] ステップ209:受信側は,スライス構造からなる圧縮ビデオデータを解凍し,エラーを検出する。スライス構造上に何らかのエラーが検出された場合,受信端は,誤ったスライス構造に時系列又は空間的に関係する正常に受信されたスライス構造に従ってスライス構造のエラーを隠蔽する。)

上記ウ,エの記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると,
「OFDMを用いた送信において,送信信号を分割した後に,変調する。」ことは周知であると認められる。

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると,
ア 引用発明は,送信データを受信機に送信する送信機であるから,当該「送信データ」は,「入来するある特定のユーザ」の送信データといえる。そして,本願発明の「複数の出力されるサブストリーム」と,引用発明の「複数に分割された」ものは,分割されたデータである点で共通しており,これを「サブデータ」と称することができる。

イ 引用発明の「複数の」「通信帯域」は「複数のスペクトル・フラグメント」といえる。そして,引用発明の「マッピング」は,キャリアセンスに基づくものであることに鑑みれば,既に他のユーザに割り当てられた通信帯域にはマッピング,すなわち,通信帯域の割り当てがなされないことは明らかである。したがって,本願発明の「・・・複数の出力されるサブストリームに分割するステップであって,該出力されるサブストリームのそれぞれは,複数のスペクトル・フラグメントのそれぞれのスペクトル・フラグメントに割り当てられ,且つ該それぞれのスペクトル・フラグメントの帯域幅と比例するデータ転送速度を有し,前記複数のスペクトル・フラグメントの内の少なくとも1つのスペクトル・フラグメントは,既に他のユーザに割り当てられ,前記出力されるサブストリームを割り当てられないスペクトル・フラグメントによって前記複数のスペクトル・フラグメントの他のいずれのスペクトル・フラグメントからも分離される不連続スペクトル・ブロックである,ステップ(420)」と,引用発明の「・・・複数に分割して複数の不連続な空き通信帯域にマッピング」することとは,下記の相違点1?3は別として,「入来するある特定のユーザのデータを複数の出力されるサブデータに分割するステップであって,該サブデータのそれぞれは,複数のスペクトル・フラグメントのそれぞれのスペクトル・フラグメントに割り当てられ,前記複数のスペクトル・フラグメントの内の少なくとも1つのスペクトル・フラグメントは,既に他のユーザに割り当てられ,前記出力されるサブデータを割り当てられないスペクトル・フラグメントによって前記複数のスペクトル・フラグメントの他のいずれのスペクトル・フラグメントからも分離される不連続スペクトル・ブロックである,ステップ」の点で共通する。

ウ 両者は,「変調するステップ」,「キャリア信号のスペクトル・フラグメントへと周波数コンバートするステップ」を備える点で共通している。

エ 両者は,「周波数コンバートされた信号は,前記データを回復するために,受信機で復調および組み合わせられるように適合されている」といえる点で共通している。

したがって,本願発明と引用発明とは,
「入来するある特定のユーザのデータを複数の出力されるサブデータに分割するステップであって,該サブデータのそれぞれは,複数のスペクトル・フラグメントのそれぞれのスペクトル・フラグメントに割り当てられ,前記複数のスペクトル・フラグメントの内の少なくとも1つのスペクトル・フラグメントは,既に他のユーザに割り当てられ,前記出力されるサブデータを割り当てられないスペクトル・フラグメントによって前記複数のスペクトル・フラグメントの他のいずれのスペクトル・フラグメントからも分離される不連続スペクトル・ブロックである,ステップと,
変調するステップと,
キャリア信号のスペクトル・フラグメントへと周波数コンバートするステップと,
を含み,
前記周波数コンバートされた信号は,前記データを回復するために,受信機で復調および組み合わせられるように適合されている,
方法。」
の点で一致している。

他方,本願発明と引用発明とは,以下の点で相違する。
(相違点1)
一致点の「データ」,「サブデータ」に関し,本願発明は,変調前の「データ・ストリーム」,「サブストリーム」であるのに対し,引用発明は,変調後のデータであり,ストリームであることが明らかにされていない点。

(相違点2)
一致点の「分割するステップ」に関し,本願発明は,「該出力されるサブストリームのそれぞれ」は「且つ該それぞれのスペクトル・フラグメントの帯域幅と比例するデータ転送速度を有」するとの構成を有するのに対し,引用発明は当該構成を有していない点。

(相違点3)
一致点の「変調するステップ」に関し,本願発明は,分割後に「前記それぞれのスペクトル・フラグメントを介しての伝送に適合されている変調された信号を提供するために,前記出力されるサブストリームのそれぞれを変調するステップ(430)」であるのに対し,引用発明は,分割前に「送信データを変調」する点。

(相違点4)
一致点の「キャリア信号のスペクトル・フラグメントへと周波数コンバートするステップ」に関し,本願発明は「前記変調された信号を少なくとも1つのキャリア信号のそれぞれのスペクトル・フラグメントへとアップコンバートするステップ(440)」であるのに対し,引用発明は「逆フーリエ変換し」たものを「所定の周波数帯に周波数変換」する点。

(相違点5)
上記相違点1?4に起因して,一致点の「前記周波数コンバートされた信号は,前記データを回復するために,受信機で復調および組み合わせられるように適合されている」に関し,本願発明は「前記アップコンバートされた変調済みの信号内に含まれるサブストリームは,前記データ・ストリームを回復するために,受信機で復調および組み合わせられるように適合されている」のに対し,引用発明はそのようなものではない点。

(3)判断
まず,相違点3について検討する。
本願発明は,「前記それぞれのスペクトル・フラグメントを介しての伝送に適合されている変調された信号を提供するために,前記出力されるサブストリームのそれぞれを変調する」ものであるから,「変調するステップ」は,必ず,「分割するステップ」にて,サブストリームに分割され,それぞれのスペクトル・フラグメントに割り当てられた後に,なされるものであり,各サブストリームの変調方式は異なり得るものである。
一方,引用発明は,送信信号を分割前に変調するものであるから,「前記それぞれのスペクトル・フラグメントを介しての伝送に適合されている変調された信号を提供する」ことは想定しておらず,分割された各データの変調方式は共通であって異なるものとすることは不可能である。
ここで,「OFDMを用いた送信において,送信信号を分割した後に,変調する。」ことは周知事項ではあるが,引用文献2,3をみても,BPSK,QPSK,QAM等のうちのいずれかの変調方式が分割された各データに共通に適用されているものと解され,「前記それぞれのスペクトル・フラグメントを介しての伝送に適合されている変調された信号を提供する」ものではなく,そのようにする動機付けも一切見出せない。
したがって,上記周知事項を考慮しても,相違点3を容易になし得たとすることはできない。
よって,その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明は,当業者が引用発明に基づいて周知技術を参酌して容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)小括
以上のとおり,本願発明は,当業者が引用発明に基づいて周知技術を参酌して容易に発明をすることができたとはいえない。
また,本願の請求項5,8に係る発明は,本願発明を別のカテゴリーで表現するものであり,同様に,当業者が引用発明に基づいて周知技術を参酌して容易に発明をすることができたとはいえない。
また,請求項2?4に係る発明,請求項6,7に係る発明は,それぞれ本願発明,請求項5に係る発明を更に限定したものであるので,同様に,当業者が引用発明に基づいて周知技術を参酌して容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。



第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は,以下のとおりである。

理由1 (サポート要件及び明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2 (実施可能要件)この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

[理由1について]
(1)「入来するデータ・ストリーム」の記載では,当該データ・ストリームが1人のユーザに係るデータ・ストリームなのか否か不明確であるため,「複数のスペクトル・フラグメントのそれぞれのスペクトル・フラグメントに関連」する「出力されるサブストリーム」が1人のユーザに係るデータ・ストリームなのか否か不明確であり,必ずしも図2の態様が示されていないことから,発明の技術的範囲が不明確であるとともに,発明の裏付けも不明確になっている。
(2)「それぞれのスペクトル・フラグメントの帯域幅と互換性をもつデータ転送速度を有し」(請求項1,6,10)について,発明の詳細な説明を参酌しても,何をもって「スペクトル・フラグメントの帯域幅と互換性をもつデータ転送速度」と言い得るのか不明確であるため,これらの請求項に係る発明及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明の技術的範囲が不明確である。また,発明の詳細な説明の裏付けも不明確である。請求項2の同様の記載についても同様である。
(3)各請求項の記載では,前提となるスペクトル・フラグメントの構成及びスペクトル・フラグメントの割り当て動作が不明確であり,「前記複数のスペクトル・フラグメントには含まれない割り当てられたスペクトル・フラグメント」は,何に対して「割り当てられた」ものか不明確である共に,「複数のスペクトル・フラグメント」との関係も不明確である。
(4)請求項2の記載は,日本語としても技術的にも意味不明であり,また,発明の詳細な説明に記載されたものでもない。
(5)請求項8は,請求項7を介して請求項6を引用しているが,ランダムなルーティング・アルゴリズム及びラウンド・ロビン・ルーティング・アルゴリズムでは,請求項6に補正により限定された「前記複数のスペクトル・フラグメントの内の少なくとも1つのスペクトル・フラグメントは,前記複数のスペクトル・フラグメントには含まれない割り当てられたスペクトル・フラグメントによって前記複数のスペクトル・フラグメントの他のいずれのスペクトル・フラグメントからも分離される不連続スペクトル・ブロックである」となることは保証されないから,技術的に矛盾している。
(6)請求項9の「それぞれの重み」は,「それぞれ」が何か不明確であり,また,「重みと関連している」「各サブストリーム」とは,マスター・スケジューラが出力する(ルーティングする)サブストリームなのか,マスター・スケジューラがエンカプスレータから入力するサブストリームなのか不明確であるため,「各サブストリームは,それぞれの重みと関連している」の記載は,日本語としても技術的にも意味不明である。
[理由2について]
上記[理由1について](4),(5)のとおりであり,発明の詳細な説明を見ても,請求項2及び請求項8に係る発明を実施し得る程度に開示がなされていない。


2 当審拒絶理由の判断
(1)平成28年11月25日付けの手続補正によって,請求項1,6,10の「入来するデータ・ストリーム」が,補正後の請求項1,5,8の「入来するある特定のユーザのデータ・ストリーム」に補正された。このことにより,「複数のスペクトル・フラグメントのそれぞれのスペクトル・フラグメントに割り当てられる」「出力されるサブストリーム」が,1人のユーザに係るデータであることが明確となり,図2の態様とも整合することとなった。
よって,理由1(1)は解消した。

(2)平成28年11月25日付けの手続補正によって,請求項1,6,10の「該それぞれのスペクトル・フラグメントの帯域幅と互換性をもつデータ転送速度を有し」が,補正後の請求項1,5,8の「該それぞれのスペクトル・フラグメントの帯域幅と比例するデータ転送速度を有し」に補正された。このことにより,記載内容が明確となり,また,発明の詳細な説明の記載とも整合することとなった。
よって,理由1(2)は解消した。

(3)平成28年11月25日付けの手続補正によって,請求項1,6,10の「複数のスペクトル・フラグメントのそれぞれのスペクトル・フラグメントに関連し,且つ該それぞれのスペクトル・フラグメントの帯域幅と互換性をもつデータ転送速度を有し,前記複数のスペクトル・フラグメントの内の少なくとも1つのスペクトル・フラグメントは,前記複数のスペクトル・フラグメントには含まれない割り当てられたスペクトル・フラグメントによって前記複数のスペクトル・フラグメントの他のいずれのスペクトル・フラグメントからも分離される不連続スペクトル・ブロックである」が,補正後の請求項1,5,8の「該出力されるサブストリームのそれぞれは,複数のスペクトル・フラグメントのそれぞれのスペクトル・フラグメントに割り当てられ,且つ該それぞれのスペクトル・フラグメントの帯域幅と比例するデータ転送速度を有し,前記複数のスペクトル・フラグメントの内の少なくとも1つのスペクトル・フラグメントは,既に他のユーザに割り当てられ,前記出力されるサブストリームを割り当てられないスペクトル・フラグメントによって前記複数のスペクトル・フラグメントの他のいずれのスペクトル・フラグメントからも分離される不連続スペクトル・ブロックである」に補正された。このことにより,記載内容が明確となり,また,発明の詳細な説明の記載とも整合することとなった。
よって,理由1(3)は解消した。

(4)平成28年11月25日付けの手続補正によって,請求項2,8が削除された。このことにより,理由1(4),(5)及び理由2の対象が存在しないこととなった。
よって,理由1(4),(5)及び理由2は解消した。

(5)平成28年11月25日付けの手続補正によって,請求項9の「それぞれの重みと関連している」が,補正後の請求項7「それぞれ対応する各スレーブ・スケジューラの重みと関連している」に補正された。このことにより,記載内容が明確となった。
よって,理由1(6)は解消した。



第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2013-557744(P2013-557744)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H04J)
P 1 8・ 537- WY (H04J)
P 1 8・ 121- WY (H04J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 速水 雄太長谷川 篤男  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 菅原 道晴
林 毅
発明の名称 断片化されたワイヤレス・スペクトルの仮想集約  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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