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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F16L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 F16L
管理番号 1323872
審判番号 不服2015-16361  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-04 
確定日 2017-02-06 
事件の表示 特願2013-504194号「高い温度安定性を有するフレキシブル管」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月20日国際公開、WO2011/128201、平成25年 6月17日国内公表、特表2013-524132号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は2011年(平成23年)3月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年(平成22年)4月13日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年11月18日付け:拒絶理由通知
平成27年2月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年4月21日付け :拒絶査定
平成27年9月4日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年6月15日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)通知
平成28年9月16日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1-3に係る発明は、平成28年9月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「次の層:
a)材料が、
- ポリアリーレンエーテルケトン、
- ポリフェニルスルホン、
- ポリフェニレンスルフィド、
- ポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィドブレンド及び
- ジカルボン酸成分は5?100モル%が8?22個のC原子を有する芳香族ジカルボン酸に由来し、かつ第2昇温時にISO 11357により測定して、少なくとも260℃の結晶融点T_(m)を有する部分芳香族ポリアミドの群から選択されるポリマーを基礎とする成形材料からなる少なくとも1つの層;
b)材料がフッ素ポリマー成形材料からなる少なくとも1つの層
を有する、内側ライニングを有する結合していない層を備えた多層構造のフレキシブル管であって、
前記内側ライニングが、層順序a/b/aの三層であり、
前記内側ライニングの全層厚が、4?50mmであり、
a)の層の厚さが、0.1?8mmであり、
a)の層は、フレキシブル管のフレキシビリティーを維持し、b)の層の膨潤、クリープを防ぐものである、フレキシブル管。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
平成27年4月21日付け拒絶査定の理由の概要は以下のとおりである。
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された国際公開第2005/028198号(以下、「引用文献」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
または、上記発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
より具体的には、
引用文献には、ポリマー層としてpolysulphones、polysulfides、polyetherketoneketoneが例示され、フィルム層としてfluorous polymersが例示されている(特にclaim1?5参照。)。更に、引用文献のclaim30には、「film layer is sandwiched between two polymer layers」と記載されていることから、polysulphones、polysulfides、polyetherketoneketone等からなるポリマー層の間にfluorous polymersからなるフィルム層が挟まれる構成が記載されており、本願発明でいうところのa/b/aの層配列を有する三層が記載されていると認められる、というものである。

2.原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項
引用文献には、次の記載がある(当審訳、下線は当審で付した。)。
ア「請求項1.少なくとも1つのポリマー層及び1つのフィルム層を備え、前記ポリマー層が前記フィルム層に接合されていることを特徴とする、非接合型フレキシブルパイプ。」

イ「請求項2.前記ポリマー層が、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン等;ポリアミド、例えばポリアミドイミド、ポリアミド-11(PA-11)及びポリアミド-12(PA-12)等;ポリイミド(PI);ポリウレタン;ポリウレア;ポリエステル;ポリアセタール;ポリエーテル、例えばポリエーテルサルホン(PES)等;ポリオキシド;ポリサルファイド、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)等;ポリサルホン、例えばポリアリルサルホン(PAS)等;ポリアクリレート;ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリビニル;ポリアクリロニトリル;ポリエーテルケトンケトン(PEKK);上記のコポリマー;フルオラスポリマー、例えばポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライドのホモポリマー又はコポリマー(「VF2」)、トリフルオロエチレンのホモポリマー又はコポリマー(「VF3」)、VF2・VF3・クロロトリフルオロエチレン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロペン及びヘキサフルオロエチレンからなるグループから選択された2つ以上の異なる物質を含むコポリマー又はターポリマー、等;からなるグループから選択された1つ以上のポリマーを、50重量%以上、例えば70重量%以上、例えば85重量%以上備えたことを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルパイプ。」

ウ「請求項4.前記フィルム層が、ポリマー、金属、金属含有組成物及びそれらの組み合わせからなる材料グループから選択されることを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のフレキシブルパイプ。」

エ「請求項5. 前記フィルム層が、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン等;ポリアミド、例えばポリアミドイミド、ポリアミド-11(PA-11)及びポリアミド-12(PA-12及びポリアミド-6(PA-6))等;ポリイミド(PI);ポリウレタン;ポリウレア;ポリエステル;ポリアセタール;ポリエーテル、例えばポリエーテルサルホン(PES)等;ポリオキシド;ポリサルファイド、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)等;ポリサルホン、例えばポリアイルサルホン(PAS)等;ポリアクリレート;ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリビニル;ポリアクリロニトリル;ポリエーテルケトンケトン(PEKK);上記のコポリマー;フルオラスポリマー、例えばポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライドのホモポリマー又はコポリマー(「VF2」)、トリフルオロエチレンのホモポリマー又はコポリマー(「VF3」)、VF2・VF3・クロロトリフルオロエチレン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロペン及びヘキサフルオロエチレンからなるグループから選択された2つ以上の異なる物質を含むコポリマー又はターポリマー、等;からなるグループから選択された1つ以上のポリマー材料を備えたポリマーフィルムであることを特徴とする、請求項4に記載のフレキシブルパイプ。」

オ「請求項19.前記ポリマー層が4mm以上、例えば6mm以上、例えば8mm以上、例えば10mm以上、例えば12mm以上の厚さを有し、好ましくは、前記ポリマー層が4?20mm、例えば8?15mmの厚さを有することを特徴とする、上記の請求項のいずれか一つに記載のフレキシブルパイプ。」

カ「請求項20.前記ポリマー層が前記フィルム層より厚く、例えば前記フィルム層の4倍以上、例えば10倍以上、例えば50倍以上、例えば100倍以下の厚さを有することを特徴とする、上記の請求項のいずれか一つに記載のフレキシブルパイプ。」

キ「請求項30.前記フィルム層が2つのポリマー層の間に挟まれ、好ましくは前記ポリマー層の少なくとも1つが、前記ポリマー層の内部結合よりも強固な結合によって前記フィルム層に接合されていることを特徴とする、上記の請求項のいずれか一つに記載のフレキシブルパイプ。」

ク「技術分野
本発明は、非接合型フレキシブルパイプ及びその製造方法に関するものである。この非接合型フレキシブルパイプは、パイプ内の流体からのガス拡散に対する耐久力があるため、特に腐食性環境において有用である。」(明細書第1ページ第3-8行)

ケ「技術背景
非接合型フレキシブルパイプそれ自体は、当技術分野においてよく知られている。そのようなパイプは、当該パイプを通じて輸送される流体の流出を防ぐバリアを形成する内側ライナー、及び、当該内側ライナーの外側にある1つ以上の防護層(外側防護層)を含んでいる。当該フレキシブルパイプには、例えば1つ以上の内側防護層などの、内側ライナーの崩壊を防ぐための付加的な層を含んでいてもよい。そのような内側防護層は通常カーカスと呼ばれる。パイプの周囲物から防護層への流体の侵入を防ぐバリアを形成するために外側シースを備えてもよい。」(明細書第1ページ第10-20行)

コ「”非接合型”の語は、この文章中においては、防護層及びポリマー層を含む少なくとも2つの層が互いに接合していないことを意味する。実際には、当該パイプは、直接的にも当該パイプ沿いの他の層を介して間接的にも互いに接合していない、少なくとも2つの防護層を含んでいる。そのため、当該パイプは、運搬のために巻き取ることができる程度に十分に可曲かつフレキシブルになる。」(明細書第1ページ第25-30行)

サ「本発明の非接合型フレキシブルパイプは、当該パイプを通じて輸送される流体の流出を防ぐバリアを形成する内側ライナー、及び、当該内側ライナーの外側にある1つ以上の防護層(外側防護層)を含んでいる。当該フレキシブルパイプには、例えば1つ以上の内側防護層などの、内側ライナーの崩壊を防ぐための付加的な層を含んでいてもよい。そのような内側防護層は通常カーカスと呼ばれる。パイプの周囲物から防護層の被覆層及び1つ以上の中間層への流体の侵入を防ぐバリアを形成するために、外側シースを備えてもよい。これらの内側ライナー、中間層、及び外側シースのうち少なくとも1つは、上述したポリマー/フィルム層結合物の形式である。」(明細書第12ページ第24-34行)

以上の記載内容から、引用文献には、
「非接合型フレキシブルパイプであって、内側ライナーを含み、
前記内側ライナーは、2つのポリマー層とその間に挟まれた1つのフィルム層を備え、
前記ポリマー層が、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を、50重量%以上備え、
前記フィルム層がフルオラスポリマーからなるグループから選択された1つ以上のポリマー材料を備えたポリマーフィルムであり、
前記ポリマー層が4?20mmの厚さを有し、
前記ポリマー層が前記フィルム層より厚く、例えば前記フィルム層の4倍以上100倍以下の厚さを有する、
非接合型フレキシブルパイプ。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「フレキシブルパイプ」、および、「内側ライナー」は、技術的にみて本願発明の「フレキシブル管」、および、「内側ライニング」に相当する。また、引用発明の「非接合型フレキシブルパイプ」における「非接合型」とは、防護層及びポリマー層を含む少なくとも2つの層が互いに接合していないことを意味するから(上記摘記コ)、本願発明の「結合していない層を備えた」に相当し、引用発明の「内側ライナー」は「2つのポリマー層とその間に挟まれた1つのフィルム層備え」ているから、多層構造である。よって、引用発明の「非接合型フレキシブルパイプであって、内側ライナーを含み」は、本願発明の「内側ライニングを有する結合していない層を備えた多層構造のフレキシブル管であって」に相当する。
引用発明の「内側ライナー」が「2つのポリマー層とその間に挟まれた1つのフィルム層備え」ていることは、本願発明の「前記内側ライニングが、層順序a/b/aの三層であり」にも相当する。
引用発明の「ポリフェニレンサルファイド(PPS)」が、本願発明の「ポリフェニレンスルフィド」に相当することは明らかである。また、引用発明の「前記ポリマー層が、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を、50重量%以上備え」ることは、引用発明の「ポリマー層」が「ポリフェニレンサルファイド(PPS)」を基礎とする成形材料からなるといえる。よって、引用発明の「前記ポリマー層が、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を、50重量%以上備え」ることは、本願発明の「次の層:
a)材料が、
- ポリアリーレンエーテルケトン、
- ポリフェニルスルホン、
- ポリフェニレンスルフィド、
- ポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィドブレンド及び
- ジカルボン酸成分は5?100モル%が8?22個のC原子を有する芳香族ジカルボン酸に由来し、かつ第2昇温時にISO 11357により測定して、少なくとも260℃の結晶融点T_(m)を有する部分芳香族ポリアミドの群から選択されるポリマーを基礎とする成形材料からなる少なくとも1つの層」「を有する」ことに相当する。
引用発明の「フルオラスポリマー」は、フッ素ポリマーといえるから、引用発明の「前記フィルム層がフルオラスポリマーからなるグループから選択された1つ以上のポリマー材料を備えたポリマーフィルムであり」は、本願発明の「次の層:
b)材料がフッ素ポリマー成形材料からなる少なくとも1つの層」「を有する」ことに相当する。

以上の点より、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「次の層:
a)材料が、
- ポリアリーレンエーテルケトン、
- ポリフェニルスルホン、
- ポリフェニレンスルフィド、
- ポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィドブレンド及び
- ジカルボン酸成分は5?100モル%が8?22個のC原子を有する芳香族ジカルボン酸に由来し、かつ第2昇温時にISO 11357により測定して、少なくとも260℃の結晶融点T_(m)を有する部分芳香族ポリアミドの群から選択されるポリマーを基礎とする成形材料からなる少なくとも1つの層;
b)材料がフッ素ポリマー成形材料からなる少なくとも1つの層
を有する、内側ライニングを有する結合していない層を備えた多層構造のフレキシブル管であって、
前記内側ライニングが、層順序a/b/aの三層である、
フレキシブル管。」
【相違点】
本願発明においては、「前記内側ライニングの全層厚が、4?50mmであり、a)の層の厚さが、0.1?8mmであり、a)の層は、フレキシブル管のフレキシビリティーを維持し、b)の層の膨潤、クリープを防ぐものである」のに対し、引用発明では、「前記ポリマー層が4?20mmの厚さを有し、前記ポリマー層が前記フィルム層より厚く、例えば前記フィルム層の4倍以上100倍以下の厚さを有」する点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
本願発明においては、「a)の層は、フレキシブル管のフレキシビリティーを維持し、b)の層の膨潤、クリープを防ぐものである」と特定されているところ、本願明細書には、「この種のアンボンドフレキシブルパイプは、好ましくは130℃を超え、200℃の範囲内まで及び場合によりそれ以上の使用温度で作業することができる。a)の層の使用により、内側ライニングの材料は、カーカス又は外側に向かって続く補強層の柔軟な領域の間の空間内へのクリープを引き起こす危険性を最小にする。従って、この管のフレキシビリティーは維持され、内側ライニングの破壊を引き起こしかねない変形領域中での応力亀裂の形成は生じない。」(段落【0040】)と記載され、また、本願発明におけるa)の層の材料である、「- ポリアリーレンエーテルケトン、- ポリフェニルスルホン、- ポリフェニレンスルフィド、- ポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィドブレンド及び- ジカルボン酸成分は5?100モル%が8?22個のC原子を有する芳香族ジカルボン酸に由来し、かつ第2昇温時にISO 11357により測定して、少なくとも260℃の結晶融点T_(m)を有する部分芳香族ポリアミドの群から選択されるポリマー」は、高温特性が優れているものの比較的剛性の高い材料として知られ、これに対し、b)の層の材料である、「フッ素ポリマー成形材料」は、比較的耐薬品性、耐酸化性に優れているものの機械的特性(クリープ特性)に劣る材料として知られている。
よって、本願発明における「a)の層は、フレキシブル管のフレキシビリティーを維持し、b)の層の膨潤、クリープを防ぐものである」は、高温特性が優れているものの比較的剛性の高いa)の層でb)の層の膨潤、クリープを防ぎつつ、フレキシブル管のフレキシビリティーを維持しているものであるといえ、a)の層とb)の層の厚さの対比において、b)の層が、フレキシブル管の使用時における膨潤、クリープが問題になる程度の厚みを有し、このb)の層の膨潤、クリープを防ぐa)の層が、フレキシブル管のフレキシビリティーを維持できる程度の厚さに留まることを規定しているものといえる。
しかしながら、引用文献には、引用発明のポリマー層及びフィルム層の材料の他に、選択可能な材料として、ポリマー層及びフィルム層について、ほぼ同様の材料が記載されていることからすれば、引用発明のポリマー層及びフィルム層の材料の選択について、それぞれの層に要求される特性に着目して特定の材料を選択したものとはいえないし、ポリマー層の厚さ及びポリマー層とフィルム層の厚さの比については、フィルム層の膨潤、クリープ、及び、ポリマー層のフレキシビリティーを問題として設定されたものではない。また、引用文献には、上記のポリマー層及びフィルム層の材料の選択、及び、ポリマー層の厚さ及びポリマー層とフィルム層の厚さの比について示唆する記載もない。
そして、本願発明は、「a)の層は、フレキシブル管のフレキシビリティーを維持し、b)の層の膨潤、クリープを防ぐものである」との構成を備えることにより、明細書段落【0018】、段落【0040】に記載の格別な作用効果を奏するものである。

(4)小括
よって、本願発明は引用発明とはいえないし、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
また、請求項2-3に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、引用発明とはいえないし、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



この出願の明細書に記載された記載事項、特に、段落【0010】、段落【0017】-【0018】、及び、段落【0040】の記載内容からすれば、本願請求項1-3に係る発明は、膨潤、クリープの可能性のあるフッ素ポリマー成形材料からなるb層の両側に、
- ポリアリーレンエーテルケトン、
- ポリフェニルスルホン、
- ポリフェニレンスルフィド、
- ポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィドブレンド及び
- ジカルボン酸成分は5?100モル%が8?22個のC原子を有する芳香族ジカルボン酸に由来し、かつ第2昇温時にISO 11357により測定して、少なくとも260℃の結晶融点T_(m)を有する部分芳香族ポリアミドの群から選択されるポリマーを基礎とする成形材料からなる少なくとも1つのa層を配置することによって、高い作業温度、例えば130℃を上回る作業温度で耐性であり、かつ更に管のフレキシビリティーを過度に低下させない内側ライニングを得るものである。
ここで、請求項1-3に記載された発明特定事項、特に、「前記内側ライニングが、層順序a/b/aの三層であり、前記内側ライニングの全層厚が、4?50mmであり、a)の層の厚さが、0.1?8mmである」という記載からすれば、請求項1-3に記載された発明特定事項からは、例えば、a層の厚さ8mm、b層の厚さ0.1mm(内側ライニングの全層厚さが16.1mm)のような、膨潤、クリープの可能性を考慮する必要がおよそ無いにもかかわらず、フレキシビリティの無いもの(本願段落【0018】に記載の本願目的を達成し得ない発明)も請求項1-3に係る発明として包含しうる。
以上の点で、請求項1-3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2.当審拒絶理由の判断
(1)平成28年9月16日付け手続補正書によって、本願の請求項1は、以下のとおり補正された(下線(当審で付した)は補正箇所である。)。
「次の層:
a)材料が、
- ポリアリーレンエーテルケトン、
- ポリフェニルスルホン、
- ポリフェニレンスルフィド、
- ポリアリーレンエーテルケトン/ポリフェニレンスルフィドブレンド及び
- ジカルボン酸成分は5?100モル%が8?22個のC原子を有する芳香族ジカルボン酸に由来し、かつ第2昇温時にISO 11357により測定して、少なくとも260℃の結晶融点Tmを有する部分芳香族ポリアミドの群から選択されるポリマーを基礎とする成形材料からなる少なくとも1つの層;
b)材料がフッ素ポリマー成形材料からなる少なくとも1つの層
を有する、内側ライニングを有する結合していない層を備えた多層構造のフレキシブル管であって、
前記内側ライニングが、層順序a/b/aの三層であり、
前記内側ライニングの全層厚が、4?50mmであり、
a)の層の厚さが、0.1?8mmであり、
a)の層は、フレキシブル管のフレキシビリティーを維持し、b)の層の膨潤、クリープを防ぐものである、フレキシブル管。」

上記補正により、請求項1に係る発明は、高い作業温度、例えば130℃を上回る作業温度で耐性であり、かつ更に管のフレキシビリティーを過度に低下させない内側ライニングを得るものとなるから、課題を解決するものとして、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-24 
出願番号 特願2013-504194(P2013-504194)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (F16L)
P 1 8・ 121- WY (F16L)
P 1 8・ 537- WY (F16L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 麻乃  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 島田 信一
尾崎 和寛
発明の名称 高い温度安定性を有するフレキシブル管  
代理人 太田 顕学  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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