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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12C
管理番号 1323895
審判番号 不服2016-1387  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-29 
確定日 2017-01-11 
事件の表示 特願2011-121407号「イソα酸を含有する発泡性飲料」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-244971号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年5月31日の出願であって、平成27年10月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年1月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年1月29日の手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、補正前の請求項1に、
「イソα酸及びネオテームを含有する発泡性飲料。」
とあるのを、
「イソα酸及びネオテームを含有するビールテイスト飲料であって、
ネオテームの含有量が50ppb以上800ppb以下である、ビールテイスト飲料。」
とする補正を含むものである(当審注:下線は、補正箇所を示す。)。

2 補正の目的
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「発泡性飲料」及び「ネオテーム」について、それぞれ「ビールテイスト飲料」及び「ネオテームの含有量が50ppb以上800ppb以下である」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 独立特許要件
3-1 本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、平成28年1月29日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正後の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

3-2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開昭61-257177号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(1a)「6 水、麦芽、ホップ及びイーストから作成される醗酵生成物からなりアスパラタームを含み、さらに水処理塩やイーストフードなどの非主要構成要素を含むか又は含まない麦芽飲料。
7 水、麦芽、ホップ、穀類付加物及びイーストから作成される醗酵生成物からなりアスパラタームを含み、さらに水処理塩やイーストフードなどの非主要構成要素を含むか又は含まない麦芽飲料。
8 水、麦芽、ホップ、穀類付加物、果実香料及びイーストから作成される醗酵生成物からなりアスパラタームを含み、さらに水処理塩やイーストフードなどを含むか又は含まない麦芽飲料。
9 アスパラタームの濃度は最終製品中で4から450ppm(重量/容積)の間にある、特許請求の範囲第6項、第7項または第8項記載の麦芽飲料。
10 アスパラタームの濃度は最終製品中で4から20ppm(重量/容積)の間にある、特許請求の範囲第6項、第7項または第8項記載の麦芽飲料。」(特許請求の範囲)

(1b)「〔発明の目的〕
そこで本発明の基本的な目的は、カロリーを付加したりコストの上昇を伴ったりせずに、且つ安全で信頼できる方法により、麦芽飲料の芳醇さ及び風味を改良することである。
本発明のさらなる目的は、通常の醗酵されたビールよりも低いか又は高い醗酵度を有する種類の麦芽飲料、例えば低カロリー、低アルコール製品、非アルコール麦芽飲料、果実風味の麦芽飲料等の風味を改良することである。
本発明のさらに特定の目的は、麦芽飲料の口当りを改良することである。通常の貯蔵(ラガー)ビールよりも高いアルコール抽出率(例えば醗酵度の高さ)、または年数、或いはこれらの組み合わせといった要因により、麦芽飲料はこの口当りという特性において不十分だからである。」(公報第2ページ右上欄11行?左下欄7行)

(1c)「〔目的を達成するための手段〕
少量のアスパラターム(Aspartame)即ちL-ベータ-アスパラチル-L-フェニルアラニンメチルエステルを麦芽飲料に添加することは、予期される閾値水準を超えて甘味を増加することが見出された。そのような添加はまた意外にも、甘味に必要な閾値水準以下においてさえも、ある種の麦芽飲料の芳醇さと風味のバランスを改善する。そのような麦芽飲料の例としては、カロリーの低い種類のビール(いわゆる「ライト・ビール」)及びアルコールの低い種類のビール、即ちレギュラービール又はエールよりも高いか又は低い醗酵度を有する麦芽飲料がある。」(公報2ページ左下欄10行?右下欄2行)

(1d)「アスパラタームは、甘味が殆ど或いは全く検出されない10ppm以下の濃度、即ち甘味が検出の閾値付近にある濃度において、アルコール対炭水化物(「抽出分」)率がラガービールやエールよりも通常高い低カロリー(「ライト」)ビールの、酸っぱいような味覚すなわち収斂味の要素を減らすことができる。」(公報2ページ右下欄18行?3ページ左上欄5行)

(1e)「実施例1
一次比重7.0プラトー(7.0°Plato)でアルコール度1.89%W/Wの、第1表の#1のビールと同様の低アルコールのビールが、10ppmのアスパラタームで処理された。22人の試飲者からなる訓練された審査員団は、18対4の割合で処理されたビールを好んだ。風味のプロフィールについての意見は、二つに枝別れした二項式の表を用いて全解答数について分析された。その結果示されたことは、処理されたビールはより甘いとして知覚された(90%の信頼水準)だけでなく、同一の信頼水準をもって、口当りが良くまた後苦さが少ないと知覚され、さらに95%の信頼水準をもって、より収斂味がないと知覚された。」(公報3ページ左下欄15行?右下欄8行)


(1f)「実施例7
一次比重が12.0プラトーでアルコール含有量4%W/Wであり且つ100g中47.0カロリー(160cal./12oz.)の、第1表の#4のビールと同様の総てが麦芽のラガービールが20ppmのアスパラタームで処理され、訓練された13人の審査員団によって、アスパラタームを含まない同じビールと比較された。処理されたビールはより甘く(5:3)また口当りが良く(5:1)、後苦さが少ない(1:6)と判断された。嗜好は均等に分かれたが、これは伝統的なラガービールにおいて、甘さが受容できる最大限にあったことを示す。次の表には、処理されたビールが処理されていないビールと比べて、甘味等がより強いか弱いか等を判断した試飲者の数が示されている。」(公報4ページ右下欄7行?5ページ左上欄1行)

(1g)「

」(5ページ左上欄)

上記記載事項(1a)?(1g)及び実施例7のビールに着目すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「アスパラターム(Aspartame)の濃度が20ppmである、麦芽のラガービール。」

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である国際公開第2009/113514号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(2a)「また、ネオテームは、アスパルテームを構成するアスパラギン酸の窒素原子上に3,3-ジメチルブチル基を導入した誘導体で砂糖の約8000倍の甘味度を有することが知られている(非特許文献1)。ネオテームは、同様にペプチド結合を有する点がアスパルテームと一致するものの、pH3.0から5.5の水溶液中においてアスパルテームよりも安定であることが知られている。・・・」([0003])

(2b)「『高甘味度甘味料』とは、アスパルチルジペプチドエステル誘導体を意味する。アスパルチルジペプチドエステル誘導体の具体例としてはアスパルテーム(L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン メチルエステル);ネオテーム(N-[N-(3,3-ジメチルブチル)-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン メチルエステル);・・・」([0028])

(2c)「『アスパルチルジペプチドエステル誘導体』としては、アスパルテーム、ネオテーム、または特許第3959964号に記載のいずれか一つのアスパルチルジペプチドエステル誘導体が好ましく、アスパルテームまたはネオテームがより一層好ましく、ネオテームが特に好ましい。」([0029])

(2d)「『飲料』としては、例えば、緑茶、ウーロン茶、または紅茶等の茶飲料;リンゴジュース、グレープフルーツジュース、またはオレンジジュース等のジュース類等の果汁配合飲料;野菜汁配合飲料;コーヒー飲料;ココア飲料;牛乳、またはドリンクヨーグルト等の乳飲料;コーラ、またはサイダー等の炭酸飲料;スポーツ飲料;アミノ酸飲料;豆乳;ミネラルウォーター;ニアウォーター飲料;ダイエットサポート飲料;栄養補給飲料;またはビール、発泡酒、雑酒、ワイン、または日本酒等のアルコール飲料等が挙げられる。」([0038])

(2e)「高甘味度甘味料に特有のフレーバー増強効果、不快な風味のマスキング効果については、どのような作用機序で呈味改善作用をしめすのか明らかではないが、これら高甘味度甘味料は他の甘味料と比較して甘味の立ち上がりが遅く、甘味が長く続くという特徴を持っている。この特長により、甘味の立ち上がりが遅いことから、甘味がフレーバーを覆い隠すことなく、フレーバーが際立つ効果、すなわちフレーバー増強効果が見られ、また、甘味が長く続くことにより、甘味で不快な風味が覆い隠される効果、すなわちマスキング効果が得られると考えられる。」([0046])

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である「ビール酒造組合、ビールの基本技術、2004年7月20日、p. 123-124」(以下「引用例3という。)には、次の事項が記載されている。

(3a)「苦味はビールにおいてはとりわけ重要な味の要素である。ビールの苦味はホップ毬花中に存在するα酸が麦汁煮沸中にイソ化してできるイソα酸によってもたらされる。」(123ページ右欄21?24行)

3-3 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「麦芽のラガービール」は、前者の「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、後者の「麦芽のラガービール」は、麦汁にホップを加え煮沸して得られるものであるから、イソα酸を含んでいることは明らかであり(上記記載事項(3a))、前者の「イソα酸」「を含有する」ものといえる。
さらに、後者の「アスパラターム(Aspartame)の濃度が20ppmである」ことと、前者の「ネオテームを含有」して、「ネオテームの含有量が50ppb以上800ppb以下である」こととは、「甘味料を含有する」という限りで共通する。

したがって、本願補正発明は、引用発明と次の点で一致する。

(一致点)
「イソα酸及び甘味料を含有するビールテイスト飲料。」

そして、本願補正発明は、引用発明と、次の点で相違する。

(相違点)
甘味料が、本願補正発明は、「ネオテーム」であり、その「含有量が50ppb以上800ppb以下である」と特定されているのに対して、引用発明は、「アスパラターム(Aspartame)」であり、その「濃度が20ppmである」と特定されている点。

そこで、上記相違点について検討する。

引用発明に係る引用例1には、麦芽のラガービールにアスパラターム(Aspartame)を濃度20ppmとして添加することにより、「アスパラタームを含まない同じビールと比較された。処理されたビールはより甘く(5:3)また口当りが良く(5:1)、後苦さが少ない(1:6)と判断された。嗜好は均等に分かれたが、これは伝統的なラガービールにおいて、甘さが受容できる最大限にあったことを示す。」(上記記載事項(1f))とされていて、ラガービールは甘さを呈しながら、後苦さが少なくされたことが記載されている。そうすると、引用発明は、ラガービールを飲んだ際に後苦さを、甘味料のアスパラターム(Aspartame)を添加することにより少なくするものであること、すなわち後苦さをマスクしているものである。
また、引用例2には、甘味料のネオテームについて、「ネオテームは、同様にペプチド結合を有する点がアスパルテームと一致するものの、pH3.0から5.5の水溶液中においてアスパルテームよりも安定であることが知られている。」(上記記載事項(2a))と記載され、ネオテームがアスパルテームより水溶液中で安定したものであることが示唆されている。
さらに、引用例2には、ネオテーム等の甘味料について「これら高甘味度甘味料は他の甘味料と比較して甘味の立ち上がりが遅く、甘味が長く続くという特徴を持っている。この特長により、甘味の立ち上がりが遅いことから、甘味がフレーバーを覆い隠すことなく、フレーバーが際立つ効果、すなわちフレーバー増強効果が見られ、また、甘味が長く続くことにより、甘味で不快な風味が覆い隠される効果、すなわちマスキング効果が得られる」(上記記載事項(2e))との記載がなされ、甘味の立ち上がりが遅いことから、ネオテームを含有する食品を食した際には、甘味は遅く感覚されるものと認められる。
そうすると、ネオテームは、他の甘味料と比較して甘味の立ち上がりが遅く、甘味が長く続くという特徴を有すること、甘味で不快な風味が覆い隠される効果、すなわちマスキング効果が得られるものであること、及びアスパルテームより安定したものであることを踏まえると、引用発明のラガービールを飲用した際の後苦さをマスクする、より安定した甘味料として、ネオテームを用いることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、引用発明において、アスパラターム(Aspartame)の濃度が20ppmとしているが、甘味料を用いる際には、その甘味度を考慮して濃度を調整するものであり、ネオテームの甘味度がアスパルテームの甘味度の約50倍程度であるという技術常識(特開2010-259433号公報【0002】、特開2001-103925号公報【0002】、特表2002-524569号公報【0002】等参照。)を踏まえると、含有量を50ppb以上800ppb以下とすることは、当業者が適宜なし得た事項である。

よって、相違点に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、相違点に係る本願補正発明の構成を採用することによる格別な効果も認められない。

なお、請求人は、平成28年6月15日付け上申書において、「引用文献1に記載の発明においては、アスパラタームは、甘味が検出されない10ppm以下の濃度において、麦芽飲料の芳醇さと風味のバランスを改善しており、引用文献1に記載の発明におけるアスパラタームの効果は、引用文献2に記載される、高甘味度甘味料のフレーバー増強効果(甘みの立ち上がりが遅いことから、甘味がフレーバーを覆い隠すことなく、フレーバーが際立つ効果)やマスキング効果(甘味が長く続くことにより、甘みで不快な風味が覆い隠される効果)とは関係がないものです。
したがって、たとえ審査官殿の引用文献2の記載についての上記認定が正しいとしても、引用文献2には、甘味が検出されない濃度におけるアスパラタームの効果は何ら記載されていないので、『引用文献1に記載された発明においてアスパルテームに替えて同じ効果を有するネオテームを配合することは、当業者であれば容易に想到しえたことである』との結論は誤りである」と主張しているが、上述のとおり、引用発明は、アスパラターム(Aspartame)の濃度が20ppmであり、引用例1には、「処理されたビールはより甘く(5:3)また口当りが良く(5:1)、後苦さが少ない(1:6)と判断された。嗜好は均等に分かれたが、これは伝統的なラガービールにおいて、甘さが受容できる最大限にあった」(上記記載事項(1f))とされ甘味を呈するものであるので、請求人の上記主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3-4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年1月29日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正前の請求項1参照。)により特定されるとおりのものと認める。

2 引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「第2 3 3-2 引用例の記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、(発泡性)飲料が「ビールテイスト飲料」であること及び「ネオテームの含有量が50ppb以上800ppb以下である」ことの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3 3-3 対比・判断」に記載したとおり、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-08 
結審通知日 2016-11-14 
審決日 2016-11-25 
出願番号 特願2011-121407(P2011-121407)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C12C)
P 1 8・ 121- Z (C12C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 晋也田中 耕一郎  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 山崎 勝司
結城 健太郎
発明の名称 イソα酸を含有する発泡性飲料  
代理人 箱田 篤  
代理人 西島 孝喜  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 山崎 一夫  
代理人 浅井 賢治  
代理人 市川 さつき  
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