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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1323905
審判番号 不服2015-6116  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-04-02 
確定日 2017-01-12 
事件の表示 特願2013- 74001「PDNゲートウェイ装置及び移動通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月23日出願公開,特開2014-199980〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年3月29日の出願であって,平成26年4月28日付けで拒絶理由が通知され,同年7月7日付けで手続補正がされ,同年12月16日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成27年4月2日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。


第2 補正の却下の決定
[結論]
平成27年4月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の概要
平成27年4月2日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成26年7月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
移動局宛ての下りデータをソースサービングゲートウェイ装置またはターゲットサービングゲートウェイ装置に向けて転送するPDNゲートウェイ装置であって,
前記移動局のソース無線基地局からターゲット無線基地局への遷移に伴って,前記ターゲットサービングゲートウェイ装置及び前記ターゲット無線基地局を経由する下りデータ転送パスを,前記ターゲットサービングゲートウェイ装置と設定するパス設定部と,
前記遷移に伴って,前記ソース無線基地局を管理する前記ソースサービングゲートウェイ装置から前記ターゲット無線基地局を管理する前記ターゲットサービングゲートウェイ装置にサービングゲートウェイ装置が切り替わる場合,前記ソース無線基地局を経由した前記下りデータの転送終了を意味するエンドマーカを,前記パス設定部による前記下りデータ転送パスが設定された場合に,前記ソースサービングゲートウェイ装置に送信するエンドマーカ送信部と
を備えるPDNゲートウェイ装置。」
という発明(以下,「本願発明」という。)を,
「【請求項1】
移動局宛ての下りデータをソースサービングゲートウェイ装置またはターゲットサービングゲートウェイ装置に向けて転送するPDNゲートウェイ装置であって,
前記移動局のソース無線基地局からターゲット無線基地局への遷移に伴って,前記ターゲットサービングゲートウェイ装置及び前記ターゲット無線基地局を経由する下りデータ転送パスを,前記ターゲットサービングゲートウェイ装置と設定するパス設定部と,
前記遷移に伴って,前記ソース無線基地局を管理する前記ソースサービングゲートウェイ装置から前記ターゲット無線基地局を管理する前記ターゲットサービングゲートウェイ装置にサービングゲートウェイ装置が切り替わる場合,前記ソース無線基地局を経由した前記下りデータの転送終了を意味するエンドマーカを,前記パス設定部による前記下りデータ転送パスが設定された場合,前記下りデータ転送パスの切替前に,前記ソースサービングゲートウェイ装置に送信するエンドマーカ送信部と
を備えるPDNゲートウェイ装置。」([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)
という発明に変更することを含むものである。


2 補正の適否
まず,新規事項の有無について検討する。
請求項1についての上記補正は,PDNゲートウェイ装置のエンドマーカ送信部がエンドマーカをソースサービングゲートウェイ装置に送信する時期を,「前記下りデータ転送パスの切替前」に限定するものである。
しかしながら,下りデータ転送パスの切替前にPDNゲートウェイ装置がエンドマーカをソースサービングゲートウェイ装置に送信することは,出願当初の明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載されていない。

請求人は,審判請求書において,「本審判請求書と同時に提出した手続補正書における請求項の補正は,本願明細書の[0032],[0039],[0040]段落及び図5,6を根拠としています。」と釈明しているところ,当初明細書等には以下の記載がある。

「【0005】
また,S-GW(サービングゲートウェイ装置)とTarget eNBとの下りデータ転送パスが確立されると,UE宛ての下りデータ(Fresh Data)は,Target eNBに到達する(図中の(2)。具体的には,S-GWは,下りデータ転送パスの接続先をSource eNBからTarget eNBに切り替えた後,Source eNBに対してエンドマーカを送信する。エンドマーカを受信したSource eNBは,Target eNBにエンドマーカを転送する。」,
「【0027】
(2.1)P-GW60
図3に示すように,P-GW60は,パス設定部61及びエンドマーカ送信部63を備える。
【0028】
パス設定部61は,eNB30及びS-GW50を経由して,UE20とP-GW60との間に設定されるデータ転送用のパスを設定する。具体的には,パス設定部61は,UE20とP-GW60との間において,上り方向及び下り方向のデータを転送可能なパスを設定する。
【0029】
特に,本実施形態では,パス設定部61は,UE20のSource eNBからTarget eNBへの遷移に伴って,Target S-GW及びTarget eNBを経由する下り下りデータ転送パスを,Target S-GWと設定する。
【0030】
エンドマーカ送信部63は,UE20が他の無線基地局にハンドオーバした場合,Source eNBに対してエンドマーカを送信する。エンドマーカは,UE20がハンドオーバした場合に,Source eNBを経由した下りデータの転送終了を意味する。
【0031】
特に,本実施形態では,エンドマーカ送信部63は,UE20のハンドオーバなどの遷移に伴って,Source eNBを管理するSource S-GWからTarget eNBを管理するTarget S-GWにS-GW50が切り替わる場合,エンドマーカをSource eNBに送信する。具体的には,エンドマーカ送信部63は,パス設定部61による下りデータ転送パスの設定に応じて,エンドマーカをSource S-GWに送信する。
【0032】
なお,後述するように,エンドマーカ送信部63は,パス設定部61によってTarget S-GWと下りデータ転送パスが設定された場合,遅滞なくエンドマーカをSource S-GWに送信する。また,UE20のハンドオーバなどの遷移に伴って,Source eNBを管理するSource S-GWからTarget eNBを管理するTarget S-GWにS-GW50が切り替わる場合とは,例えば,UE20が,Source S-GWが管理するエリア(例えば,東日本)の境界付近に位置する接続中のeNB30(Source eNB)から,他のS-GW50が管理するエリア(例えば,北日本)の境界付近に位置するeNB30(Target eNB)にハンドオーバした場合が典型的である。」,
「【0039】
図5及び図6に示すように,動作例1では,下りデータ転送パスの切り替えを認識できるP-GW60がエンドマーカを送信する。具体的には,P-GW60は,Target S-GWからModify Bearer Requestを受信する(ステップ3a)と,受信したModify Bearer Requestに応じて,Modify Bearer ResponseをTarget S-GWに送信する(ステップ3b)。このような処理によって,P-GW60,Target S-GW及びTarget eNBを経由した下りデータ転送パスが設定され,P-G
W60は,Target S-GWに向けて下りデータ(図6のデータ#4,5)を開始する。
【0040】
また,P-GW60は,Source S-GWに対してエンドマーカを送信する。具体的には,P-GW60は,Source S-GW,つまり,Source eNBを経由した下りデータ(図6のデータ#1,2,3)の転送を終了後,Source S-GWに対してエンドマーカ(図6の「E」)を送信する(ステップ5X)。」







上記【0027】?【0032】の記載をみても,エンドマーカ送信部63は,パス設定部61によってTarget S-GWと下りデータ転送パスが設定された場合,遅滞なくエンドマーカをSource S-GWに送信することが読み取れるのみである。そして,「下りデータ転送パスの切替」については,【0039】等に「下りデータ転送パスの切り替えを認識できるP-GW60がエンドマーカを送信する。」との記載があるにすぎず,当初明細書等では「パス設定部61によって下りデータ転送パスが設定されること」と「下りデータ転送パスの切替」との区別はされていないから,両者がその具体的内容及びタイミングにおいて異なるものであることは記載されていない。
そして,【0039】の「このような処理によって,P-GW60,Target S-GW及びTarget eNBを経由した下りデータ転送パスが設定され,P-GW60は,Target S-GWに向けて下りデータ(図6のデータ#4,5)を開始する。」の記載は,下りデータ転送パスが設定されることは下りデータ転送パスの切替を意味しているとも解され得るものである。
また,【0040】の「具体的には,P-GW60は,Source S-GW,つまり,Source eNBを経由した下りデータ(図6のデータ#1,2,3)の転送を終了後,Source S-GWに対してエンドマーカ(図6の「E」)を送信する(ステップ5X)。」の,「Source eNBを経由した下りデータ(図6のデータ#1,2,3)の転送を終了後」とは,下りデータ転送パスの切替後を意味しているとも解され得るものである。
更に,図1によれば,「4. Modify Bearer Response」の下に,S-GWからTarget eNBに向けた「Downlink」が記載されており,その下にS-GWからSource eNBに向けた「5. EndMarker」が記載されている。そして,【0005】の「具体的には,S-GWは,下りデータ転送パスの接続先をSource eNBからTarget eNBに切り替えた後,Source eNBに対してエンドマーカを送信する。」との記載を考慮すると,下りデータ転送パスの接続先をSource eNBからTarget eNBに切り替えてS-GWからTarget eNBに向けた「Downlink」が送信された後にSource eNBに対してエンドマーカを送信することが見てとれるから,図1中の各処理は上から下に時間が経過していることは明らかである。このため,図5においても同様に,図5中の各処理は上から下に時間が経過していると解されるところ,図5では,「4. Create Session Response」の下に,Target S-GWからTarget eNBに向けた「Downlink」が記載されており,その下にP-GWからSource S-GWに向けた「5. EndMarker」が記載されている。そして,Target S-GWからTarget eNBに向けた「Downlink」は,Target eNBに向けられていることからみて,下りデータ転送パスの切替後に為されていることは明らかである。そうすると,Target S-GWからTarget eNBに向けた「Downlink」の下に描かれたP-GWからSource S-GWに向けた「5. EndMarker」,すなわち「エンドマーカを送信」は,下りデータ転送パスの切替前ではなく,切替後であると解するのが自然である。
したがって,エンドマーカ送信部が「前記ソース無線基地局を経由した前記下りデータの転送終了を意味するエンドマーカを,前記パス設定部による前記下りデータ転送パスが設定された場合,前記下りデータ転送パスの切替前に,前記ソースサービングゲートウェイ装置に送信する」ことは,当初明細書等には記載されておらず,また,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
よって,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

3 結語
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成27年4月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正却下の決定」の項中の「1 補正の概要」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用されたCATT,End marker during Handover procedure with Serving GW change([当審仮訳]:サービングGWの変更を伴うハンドオーバ手続の間のエンドマーカ),3GPP TSG-SA WG2 #67 S2-085423,(利用可能日は2008年8月19日)(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「Reason for change
(中略)
It is proposed to make each PDN GW serves the UE be responsible for sending the end marker packet upon receiving the Update Bearer Request from the Serving GW during path switch.」(1葉)
([当審仮訳]:
変更の理由
(中略)
UEをサーブする各PDN GWが,パス切り替えの間にサービングGWからベアラ更新要求を受信すると,エンドマーカパケットを送信する責任を持つようにすることが提案される。)

(2)「5.5.1.1.3 Inter eNodeB handover without MME relocation, with Serving GW relocation
This procedure is used to hand over a UE from a source eNodeB to a target eNodeB when the MME is unchanged and the MME decides that the Serving GW is to be relocated. The presence of IP connectivity between the source Serving GW and the source eNodeB, between the source Serving GW and the target eNodeB, and between the target Serving GW and target eNodeB is assumed. 」(3葉)
([当審仮訳]:
5.5.1.1.3 MMEの再配置なしにサービングGWの再配置を伴うeNodeB間ハンドオーバ
この手順は,MMEが変更されず,MMEがサービングGWが再配置されることを決定した場合に,UEをソースeNodeBからターゲットeNodeBにハンドオーバするために使用される。ソースサービングGWとソースeNodeBとの間,ソースサービングGWとターゲットeNodeBとの間,ターゲットサービングGWとターゲットeNodeBとの間の,IP接続の存在が仮定される。)

(3)「5. In order to assist the reordering function in the target eNB, the PDN GW(s) shall send one or more "end marker" packets to the old Serving GW immediately after switching the path for each EPS bearer of the UE. The old Serving GW shall send the "end marker" packets received from the PDN GW(s) to the old eNodeB, which forward the packets as defined in TS 36.300 [5], clause 10.1.2.2. .」(4葉)
([当審仮訳]:
5. ターゲットeNBにおける並び替え機能を支援するために,PDN GW(s)は,UEの各EPSベアラのパスを切り替えた後直ちに,1つ又は複数の「エンドマーカ」パケットを古いサービングGWへ送信する。古いサービングGWはPDN GW(s)から受信した「エンドマーカ」パケットを古いeNodeBに送信する。これはTS36.300[5]の10.1.2.2節で定義されているようにパケットを転送する。)



上記(1)?(3)の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると,
a 上記図5.5.1.1.3-1の上部の「Downlink and Uplink data」の両矢印付き点線,及び中段の「Downlink data」の矢印付き点線によれば,PDN GWは,UE宛のダウンリンクデータをソースサービングGW又はターゲットサービングGWに向けて転送することが見てとれる。
したがって,引用例には,「UE宛のダウンリンクデータをソースサービングGW又はターゲットサービングGWに向けて転送するPDN GW」が記載されていると認められる。

b 上記図5.5.1.1.3-1に上半部によると,「Handover preparation」,「Handover execution」に続く「1. Path Switch Request」?「4. Create Bearer Response」の手続の後,PDN GWからターゲットサービングGW及びターゲットeNodeBを経由するUE宛のダウンリンクデータが転送されるのであるから,UEのソースeNodeBからターゲットeNodeBへのハンドオーバに伴って,ターゲットサービングGW及びターゲットeNodeBを経由するダウンリンクのパスを,ターゲットサービングGWと設定していることが見てとれる。そして,PDN GWがそのようなパスを設定をするための手段を備えていることは明らかである。
したがって,引用例には,「前記UEのソースeNodeBからターゲットeNodeBへのハンドオーバに伴って,前記ターゲットサービングGW及び前記ターゲットeNodeBを経由するダウンリンクのパスを,前記ターゲットサービングGWと設定する手段」が記載されていると認められる。

c 上記(2)の記載及び上記図5.5.1.1.3-1並びにこの分野の技術常識を考慮すると,ソースサービングGWはソースeNodeBを管理し,ターゲットサービングGWはターゲットeNodeBを管理し,UEのソースeNodeBからターゲットeNodeBへのハンドオーバに伴って,ソースサービングGWからターゲットサービングGWにサービングGWが切り替わることは明らかである。
そして,上記(1),(3)の記載及び上記図5.5.1.1.3-1の中段によれば,PDN GWは,「3a. Update Bearer Request 」に対して「3b. Update Bearer Response」を応答し,PDN GWからターゲットサービングGW及びターゲットeNodeBを経由するUE宛のダウンリンクデータが転送され,PDN GWから「5. End Marker」にてエンドマーカが転送されることが見てとれる。ここで,エンドマーカはソースeNodeBを経由したダウンリンクデータの転送終了を意味することは当業者における技術常識である。また,PDN GWが「3b. Update Bearer Response」を応答することにより,ターゲットサービングGW及びターゲットeNodeBを経由するUE宛のダウンリンクのパスが設定されることは明らかであるから,エンドマーカはダウンリンクのパスが設定された場合に送信されるといえる。そして,PDN GWがエンドマーカを送信するための手段を備えていることは明らかである。
したがって,引用例には,「前記ハンドオーバに伴って,前記ソースeNodeBを管理する前記ソースサービングGWから前記ターゲットeNodeBを管理する前記ターゲットサービングGWにサービングGWが切り替わる場合,前記ソースeNodeBを経由した前記ダウンリンクデータの転送終了を意味するエンドマーカを,前記設定する手段による前記ダウンリンクのパスが設定された場合に,前記ソースサービングGWに送信する手段」が記載されていると認められる。

以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「UE宛のダウンリンクデータをソースサービングGW又はターゲットサービングGWに向けて転送するPDN GWであって,
前記UEのソースeNodeBからターゲットeNodeBへのハンドオーバに伴って,前記ターゲットサービングGW及び前記ターゲットeNodeBを経由するダウンリンクのパスを,前記ターゲットサービングGWと設定する手段と,
前記ハンドオーバに伴って,前記ソースeNodeBを管理する前記ソースサービングGWから前記ターゲットeNodeBを管理する前記ターゲットサービングGWにサービングGWが切り替わる場合,前記ソースeNodeBを経由した前記ダウンリンクデータの転送終了を意味するエンドマーカを,前記設定する手段による前記ダウンリンクのパスが設定された場合に,前記ソースサービングGWに送信する手段と
を備えるPDN GW。」


3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,
(1)本願発明の「移動局」,「ソース無線基地局」,「ソースサービングゲートウェイ装置」,「ターゲット無線基地局」,「ターゲットサービングゲートウェイ装置」,「PDNゲートウェイ装置」,「下りデータ」,「下りデータ転送パス」,「遷移」と,引用発明の「UE」,「ソースeNodeB」,「ソースサービングGW」,「ターゲットeNodeB」,「ターゲットサービングGW」,「PDN GW」,「ダウンリンクデータ」,「ダウンリンクのパス」,「ハンドオーバ」は,それぞれ表記が異なるのみであって差異は無い。

(2)上記(1)のとおりであり,本願発明に対応する本願の図5と引用例の図5.5.1.1.3-1とは全く同一であるから,
(i) 引用発明の「前記UEのソースeNodeBからターゲットeNodeBへのハンドオーバに伴って,前記ターゲットサービングGW及び前記ターゲットeNodeBを経由するダウンリンクのパスを,前記ターゲットサービングGWと設定する手段」は,本願発明の「前記移動局のソース無線基地局からターゲット無線基地局への遷移に伴って,前記ターゲットサービングゲートウェイ装置及び前記ターゲット無線基地局を経由する下りデータ転送パスを,前記ターゲットサービングゲートウェイ装置と設定するパス設定部」に相当し,
(ii) 引用発明の「前記ハンドオーバに伴って,前記ソースeNodeBを管理する前記ソースサービングGWから前記ターゲットeNodeBを管理する前記ターゲットサービングGWにサービングGWが切り替わる場合,前記ソースeNodeBを経由した前記ダウンリンクデータの転送終了を意味するエンドマーカを,前記設定する手段による前記ダウンリンクのパスが設定された場合に,前記ソースサービングGWに送信する手段」は,本願発明の「前記遷移に伴って,前記ソース無線基地局を管理する前記ソースサービングゲートウェイ装置から前記ターゲット無線基地局を管理する前記ターゲットサービングゲートウェイ装置にサービングゲートウェイ装置が切り替わる場合,前記ソース無線基地局を経由した前記下りデータの転送終了を意味するエンドマーカを,前記パス設定部による前記下りデータ転送パスが設定された場合に,前記ソースサービングゲートウェイ装置に送信するエンドマーカ送信部」に相当することは,明らかである。

したがって,本願発明と引用発明とは,
「移動局宛ての下りデータをソースサービングゲートウェイ装置またはターゲットサービングゲートウェイ装置に向けて転送するPDNゲートウェイ装置であって,
前記移動局のソース無線基地局からターゲット無線基地局への遷移に伴って,前記ターゲットサービングゲートウェイ装置及び前記ターゲット無線基地局を経由する下りデータ転送パスを,前記ターゲットサービングゲートウェイ装置と設定するパス設定部と,
前記遷移に伴って,前記ソース無線基地局を管理する前記ソースサービングゲートウェイ装置から前記ターゲット無線基地局を管理する前記ターゲットサービングゲートウェイ装置にサービングゲートウェイ装置が切り替わる場合,前記ソース無線基地局を経由した前記下りデータの転送終了を意味するエンドマーカを,前記パス設定部による前記下りデータ転送パスが設定された場合に,前記ソースサービングゲートウェイ装置に送信するエンドマーカ送信部と
を備えるPDNゲートウェイ装置。」
との点で一致しており,相違する点はない。

本願発明の作用効果についても,引用発明との差異は認められない。

よって,本願発明は引用発明との間に差異は無く,同一である。
また,引用発明に基づいて,引用発明と同一である本願発明を発明することは,当業者にとって容易である。


4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明と同一であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により,特許を受けることができない。また,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-02 
結審通知日 2016-11-08 
審決日 2016-11-28 
出願番号 特願2013-74001(P2013-74001)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 561- Z (H04W)
P 1 8・ 113- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 健  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
菅原 道晴
発明の名称 PDNゲートウェイ装置及び移動通信方法  
代理人 三好 秀和  

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