ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03B |
---|---|
管理番号 | 1323916 |
審判番号 | 不服2015-20917 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-25 |
確定日 | 2017-01-12 |
事件の表示 | 特願2011-120753「海水の浸透取水ろ過方法及び砂層表面の目詰まり防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日出願公開、特開2012-246711〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成23年 5月30日 出願 平成26年12月 1日 拒絶理由通知(同年12月9日発送) 平成27年 2月 5日 意見書・手続補正書 平成27年 3月27日 拒絶理由通知(同年3月31日発送) 平成27年 5月28日 意見書 平成27年 8月21日 拒絶査定(同年8月25日送達) 平成27年11月25日 審判請求書 第2 本願発明 1 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成27年2月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。 「海底の砂層内に取水配管を埋め込み、海中から砂層内を自然浸透してきた海水を取水配管内に導入して海水を取水する海水の浸透取水ろ過方法であって、 海水浸透速度を25m/日以上、400m/日以下の速度とし、 砂層を潮流や波浪の水粒子速度がない静穏海域に設置して、砂層の表層に取り込まれた生物、金属または懸濁物質を人為的に取り除いて目詰まりを防止することを特徴とする海水の浸透取水ろ過方法。」 2 刊行物 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2000-186351号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに次の記載がある(審決にて下線を付した。以下同様。)。 ア 「【請求項1】 海、湖、河等の水を水中で砂、濁質分等を濾過して取水する浸透式取水方法に於て、水底内に水を遮断する遮水面を形成し、且つ、該遮水面上に周囲を粗礫、細礫、粗砂等の濾過材を順次堆積してなる濾過層に埋設される取水塔を立設し、さらに該取水塔の下端部は該濾過層からの浸透水を取水する開口部を設け、上端部は該取水塔と陸上に設置される井戸とを接続する導水管を設けると共に該井戸は前記水底より深く構築し、該水底上の水面と該井戸の水面との水頭差を利用して取水することを特徴とする浸透式取水方法。」 イ 「【0009】該取水塔10の外周面は、該遮水面4上から順次砕石からなる粗礫層5、中間的な粒径の砂礫からなる細礫層6及び粗砂層7を該遮水面4と逆の円錐台状に堆積してなる濾過層Aと、該砂地盤3を掘削した際生じた砂を埋め戻した埋戻砂8とで該水底2まで埋設される。該埋戻砂8の厚さは濾過層A及び該取水塔10が波及び漂砂等により破損しない厚さとする。」 ウ 「【0010】該粗礫層5内の該細礫層6側近傍には、水中の濁質分が砂礫表面に付着して目詰りを起す可能性があるので所定間隔に有孔管9,9…を配設して、該有孔管9,9…内から水又は空気を必要に応じて噴出させて各濾過材表面を洗浄する。この洗浄作業は、一時該取水塔10からの取水を中止して行うため、洗浄排水の多くは浸透水と逆方向に進み、濁質分と共に直接水中へ拡散して放出される。」 エ 「【0011】尚、浸透水の浸透速度は前記埋戻砂8等の細砂粒子による目詰りを抑制するため掃流限界速度以下になるようにし、その流入速度は略1?5cm/sec 以下を可とする。」 オ 「【0023】又、前記取水塔10は筒体であるが四角柱体、六角柱体等他の形状でもよい。更に、粗礫層5、細礫層6等の濾過層Aの構成、各層の厚さ、粒径等は取水する場所の水の濁度及び取水量によって適宜決定される。」 上記アないしオの事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。 「海の水を水中で砂、濁質分等を濾過して取水する浸透式取水方法において、水底内に水を遮断する遮水面を形成し、且つ、該遮水面上に周囲を粗礫、細礫、粗砂等の濾過材を順次堆積してなる濾過層Aと、砂地盤3を掘削した際生じた砂を埋め戻した埋戻砂8とで埋設される取水塔10を立設し、該取水塔の下端部は該濾過層からの浸透水を取水する開口部を設け、上端部は該取水塔と陸上に設置される井戸とを接続する導水管を設けると共に、該粗礫層5内の該細礫層6側近傍には、水中の濁質分が砂礫表面に付着して目詰りを起す可能性があるので所定間隔に有孔管9,9…を配設して、該有孔管9,9…内から水又は空気を必要に応じて噴出させて各濾過材表面を洗浄し、浸透水の浸透速度は前記埋戻砂8等の細砂粒子による目詰りを抑制するため掃流限界速度以下になるようにし、その流入速度は略1?5cm/sec以下とし、井戸は前記水底より深く構築し、該水底上の水面と該井戸の水面との水頭差を利用して取水する浸透式取水方法。」 3 対比 本願発明と刊行物1発明とを対比する。 (1)刊行物1発明の「海の水を(水中で砂、濁質分等を)濾過して取水する浸透式取水方法」は、本願発明の「海水を取水する海水の浸透取水ろ過方法」に相当し、同様に、「浸透水の浸透速度」は、「海水浸透速度」に相当する。 (2)刊行物1発明の「取水塔10」は、本願発明の「取水配管」に相当し、同様に、「粗礫、細礫、粗砂等の濾過材を順次堆積してなる濾過層A」及び「埋戻砂8」は、「砂層」に相当する。 (3)上記(2)を踏まえると、 刊行物1発明の「水底内に水を遮断する遮水面を形成し、且つ、該遮水面上に周囲を粗礫、細礫、粗砂等の濾過材を順次堆積してなる濾過層Aと、砂地盤3を掘削した際生じた砂を埋め戻した埋戻砂8とで埋設される取水塔10を立設し」は、本願発明の「海底の砂層内に取水配管を埋め込み」に相当し、 刊行物1発明の「取水塔の下端部は該濾過層からの浸透水を取水する開口部を設け(上端部は該取水塔と陸上に設置される井戸とを接続する導水管を設けると共に)」「水底上の水面と該井戸の水面との水頭差を利用して取水する」は、本願発明の「海中から砂層内を自然浸透してきた海水を取水配管内に導入して海水を取水する」に相当する。 (3)刊行物1発明の「浸透水の浸透速度(海水浸透速度)は前記埋戻砂8等の細砂粒子による目詰りを抑制するため掃流限界速度以下になるようにし、その流入速度は略1?5cm/sec 以下とし」と、本願発明の「海水浸透速度を25m/日以上、400m/日以下の速度とし」とは、「海水浸透速度を適宜の速度とし」で共通する。 (4)刊行物1発明の「砂礫」と、本願発明の「砂層」とは、いずれも「浸透部」であり、刊行物1発明の「付着し」た「水中の濁質分」は、本願発明の「取り込まれた生物、金属または懸濁物質」に相当するから、 刊行物1発明の「粗礫層5内の該細礫層6側近傍には、水中の濁質分が砂礫表面に付着して目詰りを起す可能性があるので所定間隔に有孔管9,9…を配設して、該有孔管9,9…内から水又は空気を必要に応じて噴出させて各濾過材表面を洗浄し」と、本願発明の「砂層の表層に取り込まれた生物、金属または懸濁物質を人為的に取り除いて目詰まりを防止する」とは、「浸透部に取り込まれた生物、金属または懸濁物質を人為的に取り除いて目詰まりを防止する」で共通する。 (5)上記(1)ないし(4)から、本願発明と刊行物1発明とは、 「海底の砂層内に取水配管を埋め込み、海中から砂層内を自然浸透してきた海水を取水配管内に導入して海水を取水する海水の浸透取水ろ過方法であって、 海水浸透速度を適宜の速度とし 浸透部に取り込まれた生物、金属または懸濁物質を人為的に取り除いて目詰まりを防止する海水の浸透取水ろ過方法。」で一致し、 下記の3点で相違する。 (相違点1) 「砂層」に関して、 本願発明は、砂層を潮流や波浪の水粒子速度がない静穏海域に設置しているのに対し、 刊行物1発明は、砂層(濾過層A及び埋戻砂8)をどこに設置しているか不明である点。 (相違点2) 「海水浸透速度」の「速度」に関して、 本願発明は、25m/日以上、400m/日以下の速度としているのに対し、 刊行物1発明は、掃流限界速度以下になるようにし、その流入速度は略1?5cm/sec 以下としている点。 (相違点3) 「生物、金属または懸濁物質を人為的に取り除いて目詰まりを防止する」対象に関して、 本願発明は、砂層の表層であるに対し、 刊行物1発明は、粗礫層5内の該細礫層6側近傍である点。 4 判断 (1)相違点1について 海水の浸透取水ろ過方法を実施する場所の選定は、当業者が様々な条件を考慮した上で適宜決定できる事項であって、潮流や波浪が激しい海域を避けることは当然想定できることである。 また、刊行物1発明において、目詰まりを防止するための洗浄を行うのであるから、水が滞留して目詰まりが生じる可能性がある静穏海域にも適用できることは明らかである。 したがって、刊行物1発明において、砂層(濾過層A及び埋戻砂8)を潮流や波浪の水粒子速度がない静穏海域に設置することは、当業者が適宜なし得たことである。 (2)相違点2について ア 刊行物1発明の「流入速度」に関して (ア)請求人の主張 請求人は、平成27年11月25日付けの審判請求書において、「因みに、「掃流限界速度」とは、例えば特開2009-228351号公報の段落[0006]に記載されているように、水流により砂が動き始める限界の水流速度をいいます。そして、引用文献1の段落[0011]に記載されている「流入速度」とは、埋戻砂8等の細砂粒子による目詰りを抑制するため、浸透水の浸透速度が掃流限界速度以下になるような流入速度、すなわち、埋戻砂8等への海水の流入速度であります。」と、刊行物1発明の「流入速度」は、「浸透速度」ではなく、「埋戻砂8等への海水の流入速度」である旨、主張する。 (イ)請求人が提示した文献の記載 しかし、請求人が提示した特開2009-228351号公報をみると、下記のように記載されている。 「【0005】 同指針に基づいて、図7に例示されるように、集水管周囲に砂利層(石粒層)を形成すれば、集水管の通水部分の目詰まりを長期にわたり抑制することができることは一般に認められているところである。 【0006】 また、同指針の第97頁の「2.10.2 位置及び構造」の第3項には、「集水開口部からの水流入速度は、砂の掃流限界速度(すなわち水流により砂が動き始める限界の水流速度)以下を標準とする」と記載されているとともに、第99頁の参考表2.10.1に「土の分類と掃流限界速度」が記載されている。従って、このことからすると、一般的に言えば、集水管の集水開口部(図8の集水管で言えば通水スリットws)の目詰まりを起こしやすい細砂等の砂の掃流限界速度より低速で集水開口部へ水が流入するように集水管周囲の石粒層を設けるとよいと言える。このことは「サンドコントロール」などと称されている目詰まり抑制手法である。」 つまり、周囲に砂利層(石粒層)(刊行物1発明の「濾過層」に相当。)を形成した集水管(刊行物1発明の「取水塔」に相当。)の集水開口部(刊行物1発明の「濾過層からの浸透水を取水する開口部」に相当。)からの水流入速度は、掃流限界速度以下を標準とすると解される。 (ウ)本願明細書における「浸透速度」等の記載 本件発明の「海水浸透速度」に関して、「海中から砂層内を自然浸透してきた海水を取水配管内に導入して海水を取水する」との特定事項がある。 また、本願明細書には以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】本発明は、海底の砂層内を浸透してくる海水を取水する際のろ過方法、及びこのろ過方法を実施するために、砂層表面に取り込まれた生物、金属または懸濁物質を取り除いて目詰まりを防止する装置に関するものである。」 「【0006】そこで、このような浸透取水法において、海水を取水する海底の砂ろ過層の目詰まりを可及的に低減でき、また砂ろ過層の表面に堆積した懸濁物等を、手間をかけずに取り除くことができ、安定した取水を確保し得る方法が特許文献1で提案されている。 【0007】この特許文献1で提案された浸透取水法は、海底の砂ろ過層内に発現される海水浸透流速を1?8m/日とし、前記砂ろ過層の水深は、当該砂ろ過層の表層部分の砂が50cm以上移動する完全移動限界水深よりも深く、かつ1cm以上移動する表層移動限界水深よりも浅くすることを特徴としている。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0010】本発明が解決しようとする問題点は、従来の浸透取水法は、海水の浸透取水速度が非常に緩速なろ過速度であるため、短期間で大量の海水を取水するには広大な面積を必要とするという点である。加えて、最適な海水流動が促進される海域への設置が必要であり、海水淡水化プラントから遠くの位置での取水となるという点である。」 「【0021】図1に示したフローの実験装置の取水ポンプで取水した海水を、カラム装置のろ過層を通過させたろ過水の濁度及びシルト濃度指数SDIを測定した。この測定に使用したろ過層は上方から、φ0.45mmの砂層(厚さ900mm)、φ2?4mmの砂利層(厚さ75mm)、φ4?8mmの砂利(厚さ75mm)、φ6?12mmの砂利(厚さ150mm)である。 【0022】測定結果を図2に示す。ここで、濁度のデータを得た原水には、図2(a)の浸透取水速度が0m/日で示した濁度となるような量のシルトを予め添加している。図2の結果より、浸透取水速度を50?400m/日としても、濁度やシルト濃度指数SDIは浸透取水速度を従来の1?8m/日とした場合と変わらず、同等の処理性能を示すことが確認された。 【0023】ところで、前記特許文献1の発明では、海底の砂ろ過層内に発現される海水浸透流速を1?8m/日とし、砂ろ過層の水深は、当該砂ろ過層の表層部分の砂が50cm以上移動する完全移動限界水深よりも深く、かつ1cm以上移動する表層移動限界水深よりも浅くすることとしている。」 以上の事項を踏まえると、本願明細書の記載において、「海水浸透速度」と、「海水の浸透取水速度」及び「海水浸透流速」とは同義といえるから、「浸透」と「浸透取水」とに区別はない。 また、「海中から砂層内を自然浸透してきた海水」との発明特定事項に加えて、「海底の砂ろ過層内に発現される海水浸透流速」(段落【0007】)「海底の砂層内を浸透してくる海水を取水する際のろ過方法」(段落【0001】)との記載を参酌すると、「海水浸透流速」は、「砂層(砂ろ過層)内」を「浸透」する「海水」の「流速(速度)」であって、「砂層(砂ろ過層)」のどの箇所(例えば、砂層の表面、砂ろ過層の取水部、等)における流速かは何ら特定されていないというべきである。 以上のとおり、本願明細書の記載において、「浸透」と「浸透取水」とが区別されておらず、かつ、本願発明の「海水浸透速度」が「砂層(砂ろ過層)」のどの箇所における流速(速度)かは不明であるから、刊行物1発明の「流入速度」は「浸透速度」とは異なる旨の請求人の主張は採用できない。 (エ)「流入速度」についての判断 刊行物1発明の「浸透水の浸透速度は前記埋戻砂8等の細砂粒子による目詰りを抑制するため掃流限界速度以下になるようにし、その流入速度は略1?5cm/sec以下とし」の「その流入速度」については、「浸透水の浸透速度」は「掃流限界速度以下」になるようにされ、「掃流限界速度以下」とは、すなわち「(浸透水の流入速度が)略1?5cm/sec以下」と解釈でき、「掃流限界速度以下」と「略1?5cm/sec以下」とが異なるとの解釈は不合理であるから、「浸透水の浸透速度」と「浸透水の流入速度」とは同義と考えるのが妥当である。 また、上記(ウ)のとおり、請求人が提示した文献には、「集水開口部(「濾過層からの浸透水を取水する開口部」)からの水流入速度は、掃流限界速度以下を標準とする」ことが記載されているように、「水流入速度」と「浸透速度」(浸透水を取水する速度)とは同義と理解できる。 そうすると、刊行物1発明の「流入速度」とは、濾過層からの浸透水を取水する開口部からの水流入速度であり、本願発明の「浸透速度」に相当するといえる。 イ 相違点2についての判断 上記アで検討したとおり、刊行物1発明の「流入速度」は「浸透速度」と同義と考えるのが妥当である。 そうすると、刊行物1発明の流入速度(浸透速度)1?5cm/sec以下は、換算すると、浸透速度864?4320m/日以下となるから、刊行物1発明の流入速度(浸透速度)には、「25m/日以上、400m/日以下の速度」が含まれる。 また、刊行物1には、「粗礫層5、細礫層6等の濾過層Aの構成、各層の厚さ、粒径等は取水する場所の水の濁度及び取水量によって適宜決定される。」(記載事項オ参照。)と、濾過層の厚さ、粒径等(濾過層の構成)と取水量が関係することが示唆されているように、濾過層の厚さ、粒径が変わり、他の条件が同じであれば、取水量(浸透速度×濾過層表面の面積)が変化するから、濾過層の構成に応じて浸透速度も同様に適宜決定されることは明らかである。 一方、本願発明において、ろ過材の条件に係る特定事項はなく、実験で使用したろ過層のみに基づいて浸透速度を限定しており、本願明細書には、「図3に示すように、シルト粒子の吸着によって空隙孔が時間をかけて狭くなる。これは、空隙の保持閾値まで緩やかに圧力損失が生じるために、シルトを除去し続けた場合でも長時間の浸透が可能であることを意味する。この経過時間は、ろ過材の条件や海水条件(シルト濃度)によっても異なり、この時間が強制洗浄の間隔となる重要な要素となる。」(段落【0036】)と記載されているとおり、ろ過材の条件や海水条件(シルト濃度)が重要な要素であるから、浸透速度が、ろ過材の条件(砂層の厚さ、粒径等)及び濁度(シルト濃度)に大きく影響を受けることは明らかである。 そうすると、本願発明において、上記ろ過材の条件及び濁度の特定がない、「25m/日以上、400m/日以下の速度」との発明特定事項には格別の技術的意義はないというべきである。 したがって、刊行物1発明において、浸透速度を25m/日以上、400m/日以下の速度とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 (3)相違点3について 刊行物1発明において、目詰まりが生じる箇所に対して洗浄を行っていることは明らかであって、目詰まりを防止するために必要な箇所に対して洗浄を行うことは当然なすべき事項である。 したがって、砂層の表層を洗浄するか、それとも、粗礫層5内の該細礫層6側近傍を洗浄するかは、それぞれの状況に応じて適宜選択すべき事項であるから、この点は単なる設計変更というべきである。 (4)本願発明が奏する効果について 本願発明が奏する効果も、当業者が刊行物1の記載から予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (5)小括 よって、本願発明は、当業者が刊行物1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受け ることができない。 5 むすび 以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は特許を受けることができないものであるから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-11-10 |
結審通知日 | 2016-11-15 |
審決日 | 2016-11-28 |
出願番号 | 特願2011-120753(P2011-120753) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E03B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 越柴 洋哉 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
赤木 啓二 前川 慎喜 |
発明の名称 | 海水の浸透取水ろ過方法及び砂層表面の目詰まり防止装置 |
代理人 | 山本 進 |
代理人 | 山本 進 |
代理人 | 溝上 哲也 |
代理人 | 溝上 哲也 |