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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1323924
審判番号 不服2016-3717  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-10 
確定日 2017-01-12 
事件の表示 特願2011-184475「液体噴射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 4日出願公開、特開2013- 43423〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成23年8月26日の出願であって、平成27年5月20日付けで拒絶理由が通知され、同年7月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月9日付けで拒絶の査定がなされ(謄本送達日同月15日)、これに対し、平成28年3月10日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成27年7月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「搬送方向に搬送される記録媒体に向かって液体を噴射する液体噴射ヘッドを有し、前記搬送方向と交わる移動方向に往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジ側に突出して前記搬送方向に伸び、前記記録媒体を支持する記録媒体支持部と、
浮遊物の付着状態が検知される被検知部と、
前記記録媒体支持部と前記被検知部とが形成された面部と、
前記被検知部と対向しうる位置に設けられた、光を照射する発光部と前記光の反射光を光電流に変換し出力電圧として出力する受光部と、
前記記録媒体支持部側に対して前記発光部から照射し、前記受光部によって出力された第1の出力電圧を閾値と比較し、前記記録媒体の端部を検出する端部検出処理部と、
前記発光部と前記受光部とを前記被検知部に対向させ、前記発光部から前記被検知部に照射し、前記被検知部によって反射された反射光を前記受光部によって受光し、前記受光部から出力された第2の出力電圧に基づいて、前記受光部の感度を設定する感度設定部と、
を備え、
前記被検知部は、前記移動方向において、前記記録媒体が搬送される搬送領域の最小範囲に位置し、
前記面部から前記被検知部の端部までの距離は、前記面部から前記媒体支持部の端部までの距離よりも短いこと、を特徴とする液体噴射装置。」

第3 刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-351898号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

1 「【請求項14】
請求項1?13のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記液体吐出装置は、前記センサの検出結果と閾値とに基づいて、前記媒体の有無を検出するものであり、
前記センサの調整は、前記媒体が無い状態における前記センサの出力する信号に基づいて
、前記閾値を設定することにより行われることを特徴とする液体吐出装置。」

2 「【0028】
===プリンタの構成===
<インクジェットプリンタの構成について>
図4は、本実施形態のプリンタの全体構成のブロック図である。また、図5は、本実施形態のプリンタの全体構成の概略図である。また、図6は、本実施形態のプリンタの全体構成の横断面図である。以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。なお、本実施形態のインクジェットプリンタは、液体を媒体に吐出するので、液体吐出装置の一種でもある。」

3 「【0030】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を印刷可能な位置に送り込み、印刷時に所定の方向(以下、搬送方向という)に所定の搬送量で紙を搬送させるためのものである。すなわち、搬送ユニット20は、紙を搬送する搬送機構(搬送手段)として機能する。搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。ただし、搬送ユニット20が搬送機構として機能するためには、必ずしもこれらの構成要素を全て必要とするわけではない。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンタ内に自動的に給紙するためのローラである。給紙ローラ21は、D形の断面形状をしており、円周部分の長さは搬送ローラ23までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて紙を搬送ローラ23まで搬送できる。搬送モータ22は、紙を搬送方向に搬送するためのモータであり、DCモータにより構成される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙Sを支持する支持部材である。排紙ローラ25は、印刷が終了した紙Sをプリンタの外部に排出するローラである。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
【0031】
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、走査方向という)に移動(走査移動)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモータ32(CRモータとも言う)とを有する。キャリッジ31は、走査方向に往復移動可能である。(これにより、ヘッドが走査方向に沿って移動する。)また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。キャリッジモータ32は、キャリッジ31を走査方向に移動させるためのモータであり、DCモータにより構成される。
【0032】
ヘッドユニット40は、紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、ヘッド41を有する。ヘッド41は、インク吐出部であるノズルを複数有し、各ノズルから断続的にインクを吐出する。このヘッド41は、キャリッジ31に設けられている。そのため、キャリッジ31が走査方向に移動すると、ヘッド41も走査方向に移動する。そして、ヘッド41が走査方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、走査方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0033】
センサ50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、および光学センサ54等が含まれる。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の走査方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出センサ53は、印刷される紙の先端の位置を検出するためのものである。この紙検出センサ53は、給紙ローラ21が搬送ローラ23に向かって紙を給紙する途中で、紙の先端の位置を検出できる位置に設けられている。なお、紙検出センサ53は、機械的な機構によって紙の先端を検出するメカニカルセンサである。詳しく言うと、紙検出センサ53は搬送方向に回転可能なレバーを有し、このレバーは紙の搬送経路内に突出するように配置されている。そのため、紙の先端がレバーに接触し、レバーが回転させられるので、紙検出センサ53は、このレバーの動きを検出することによって、紙の先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられている。光学センサ54は、発光部から紙に照射された光の反射光を受光部が検出することにより、紙の有無を検出する。そして、光学センサ54は、キャリッジ41によって移動しながら紙の端部の位置を検出する。光学センサ54は、光学的に紙の端部を検出するため、機械的な紙検出センサ53よりも、検出精度が高い。」

4 「【0049】
<突起・溝部について>
図12Aは、縁なし印刷時のインクの吐出の説明図である。図12Bは、縁なし印刷時のインクの着弾の説明図である。既に説明された構成要素については同じ符号を付しているので、説明を省略する。
ヘッド41のノズルからインク滴Ipが吐出され、吐出されたIpが紙Sに着弾し、紙Sに印刷されるべき画像を構成するドットDが形成される。縁なし印刷の場合、前述の通り、印刷データは紙の大きさよりも大きい範囲に対応している。そのため、この印刷データに基づいてノズルからインクを吐出すれば、吐出されたインクの一部は、紙Sに着弾せずに、プラテン14に着弾する。プラテン14に着弾したインクが紙の裏側に付着すると、紙が汚れてしまうため望ましくない。そこで、紙の裏側の汚れを防ぐため、縁なし印刷を行うプリンタのプラテン24は、突起242(凸部やリブともいう)と、溝部244(凹部ともいう)と、吸収部材246とを備えている。
【0050】
突起242は、プラテン24が紙Sを支持する際に、紙と接触する部材である。この突起242は、紙が溝部244に接しないように、構成される。また、この突起242は、縁なし印刷時にインク滴が着弾しないような位置に、設けられている。なぜなら、突起242がインクによって汚れると、紙の裏面を汚すからである。そのため、例えば、突起242は、図中の紙の右側端から出るような位置には設けられていない。仮に、突起242の中央部分が紙の右端を支持したり、突起242がインクの打ち漏らし領域に設けられていたりすると、縁なし印刷時に、突起242がインクによって汚れるおそれがある。ところで、紙の右側端は固定ガイド82によって案内されているため、印刷時の紙の右側端の走査方向の位置(図中の紙Sの右側端の位置)は、どのような幅の紙であっても、同様に決まっている。このため、突起242の位置は、固定ガイド82の位置を基準に定まっている。また、印刷する紙の幅(紙の走査方向の長さ)は、規定のサイズに決まっている。例えば、A4サイズの紙ならば紙の幅は210mmであり、ハガキならば、紙の幅は100mmである。そのため、紙の左側端の方のインクの打ち漏らし領域も想定することが可能である。そこで、突起242は、どのような規定サイズの紙であっても、縁なし印刷時のインクの打ち漏らし領域に位置しないように、設けられている。
【0051】
図中に示された紙Sは、搬送ユニットが搬送する紙(プリンタ1が印刷可能な紙)の中で最も幅の小さい紙であるハガキである。そして、搬送ユニットは、このハガキよりも大きい幅の紙も搬送する(プリンタは、ハガキよりも大きい幅の紙を搬送する)。そのため、図中の紙Sを支持する突起242よりも左側に、この紙Sよりも大きい紙を支持するための突起242も存在している。
【0052】
溝部244は、プラテン14に設けられた窪みである。溝部244は、突起244に対して凹んでいるため、仮に溝部244がインクによって汚れても、紙の裏面を汚さないように構成されている。このため、紙に着弾しなかった縁なし印刷時のインクが溝部244に着弾するように、溝部244が構成されている。すなわち、縁なし印刷時のインクを打ち漏らす領域(打ち漏らし領域)は、溝部244に位置するようになっている。なお、後述するように、この溝部は、平らな面を有している。」

5 「【0055】
===光学センサ===
<光学センサの構成について>
図13は、光学センサ54の構成の説明図である。光学センサ54は、発光部541と受光部542とを有する反射型光学センサである。発光部541は、例えば発光ダイオードを有し、光を紙に照射する。受光部542は、例えばフォトトランジスタを有し、発光部から紙に照射された光の反射光を検出する。つまり、光学センサ54は、光学センサ54と対向する部材(例えば紙やプラテン)に光を照射し、その反射光を検出する。発光部541が光を照射する領域に紙Sがない場合、受光部542が受光する反射光の光量が少なくなる。発光部541が光を照射する領域に紙Sがある場合、受光部542が受光する反射光の光量が多くなる。受光部542は、受光した反射光の光量に応じて、信号を出力する。なお、本実施形態の光学センサ54は、受光部542が受光した光量が少ないときに大きい電圧を出力し、受光部542が受光した光量が多いときに小さい電圧を出力する。」

6 「【0057】
状態A(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの外側にあり、検出スポットに紙Sがない状態)では、光学センサ54の発光部からの光は、紙Sに照射されない。そのため、光学センサ54の受光部は反射光を検出することができない。このときの光学センサの出力電圧はVaになる。状態B(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの内側にあり、検出スポットの一部に紙Sが入っている状態)では、光学センサ54の発光部からの光の一部は、紙Sに照射される。このときの光学センサ54の出力電圧はVbになる。状態C(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの内側にあり、検出スポットのほとんどの領域に紙Sが入っている状態)では、光学センサ54の発光部からの光のほとんどが紙Sに照射される。このときの光学センサ54の出力電圧はVcになる。状態D(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの外側にあり、検出スポットの全てに紙Sがある状態)では、光学センサ54の発光部からの光は、全て紙Sに照射される。このときの光学センサの出力電圧はVdになる。同図から分かる通り、光学センサ54の検出スポット(図中の丸い印)において、紙Sの占める領域が大きいほど、受光部542が受光する光量が多くなるので、光学センサ54の出力信号は小さくなる。
【0058】
出力電圧Vtを閾値とした場合、コントローラは、状態Aと状態Bを「紙なし状態」と判断する。コントローラが「紙なし状態」と判断した場合、プリンタは、光学センサの位置に紙がないものとして各種の動作を行う。また、出力電圧Vtを閾値とした場合、コントローラは、状態Cと状態Dを「紙あり状態」と判断する。コントローラが「紙あり状態」と判断した場合、光学センサの位置に紙があるものとして各種の動作を行う。図中の出力電圧Vtは、検出スポットの半分を紙Sが占める場合の光学センサ54の出力電圧に等しい。
【0059】
なお、光学センサ54は、紙の有無を検出するためのセンサである。一方、コントローラ60が光学センサ54の出力に基づいて紙の有無を判断しているので、コントローラ60及び光学センサ54が、「紙の有無の判断をするための判断部」を構成しているとも言うこともできる。」

7 「【0061】
光学センサ54は、発光部541が経時的に発光量が減少することによって、劣化する。発光部541の発光量が減少すると、受光部542が受光する反射光の光量が減少する。一方、光学センサ54は、受光部542が受光した光量が少ないほど、出力電圧が高い(前述)。このため、光学センサ54が劣化すると、図に示されるように、紙と光学センサ54との位置関係が同じであっても、出力電圧が変化する。」

8 「【0065】
次に、コントローラ60は、光学センサ54をON状態にする(S102)。このとき、光学センサ54の発光部541から光が照射される。光学センサの調整処理時にはプラテン24上には紙がないため、発光部541から照射された光は、プラテン上に照射される。つまり、このときの光学センサ54の検出スポットは、プラテン上である。そして、光学センサ54の受光部542は、プラテン上で反射された反射光を受光し、受光した光量に応じた信号を出力する。
次に、コントローラ60は、光学センサ54の出力信号を取得する(S103)。光学センサ54の検出スポットには紙がない状態なので、前述の状態Aに相当する信号が光学センサ54から出力されている。前述の通り、この状態Aに相当する信号は、光学センサ54の劣化に応じて変換する信号である。
本実施形態では、複数の位置(例えば、3カ所)で光学センサの出力を取得するため、コントローラは、S101?S103の処理を複数回繰り返す(S104でYES)。」

9 「【0074】
以上の説明の通り、ハガキを支持する突起の間の溝部244にはインクが着弾しないので、縁なし印刷が可能なプリンタであっても、その位置の溝部244は汚れにくい。本実施形態では、ハガキが搬送されていればハガキの下に位置する溝部244(ハガキを支持する突起の間の溝部244)上に光を照射し、その反射光を受光しているので、光学センサの調整時(閾値の決定時)の光学センサの出力信号に、光学センサ54の劣化以外の要因が入りにくい。そのため、本実施形態によれば、光学センサ54の劣化に応じた閾値を設定することができる。」

10 「【0081】
<光学センサの調整について>
前述の実施形態によれば、光学センサの劣化に応じて閾値を変えることにより、光学センサを調整していた。しかし、光学センサの調整方法は、閾値を変えることに限られるものではない。例えば、光学センサの調整は、光学センサの出力結果を調整することによって行われてもよい。
【0082】
図19は、光学センサの回路図である。既に説明された構成要素については同じ符号を付しているので説明を省略する。発光部541は、入力する電気信号を光信号に変換する。受光部542は、紙からの光信号を受光して電気信号に変換して出力する。光学センサ54は、受光部542が受光した光量に応じて、出力信号Voutを変化させる。この光学センサ54は、調整手段として可変抵抗器544を有している。この可変抵抗器544の抵抗値は、コントローラ60によって、制御される。そして、コントローラ60が可変抵抗器544の抵抗値を調節することによって、受光部542に対する負荷抵抗が調整されるので、光学センサ54の出力信号が調整される。例えば、コントローラ60が可変抵抗器544の抵抗値を大きく調節すると、受光部542が同じ光量を受光しても、出力信号Voutが大きくなる。つまり、コントローラ60が可変抵抗器544の抵抗値を大きくすると、光学センサ54の感度が高くなる。光学センサ54が劣化したとき、コントローラ60は受光部542の感度が高くなるように調整する。すなわち、コントローラ60が、光学センサ54の劣化に応じて、可変抵抗器544の負荷抵抗を調整する。このように光学センサの出力結果を調整しても、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、光学センサの出力結果を調整するため、光学センサの出力に対するゲインを、光学センサ54の劣化に応じて調整しても良い。このようにしても、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。」

11 【図5】より、「搬送方向」と「走査方向」とが交わっていることが見て取れる。

12 【図12】より、「突起242」は「溝部244」が形成されている面に形成され、「キャリッジ31」側に突出していることが見て取れる。

13 【図14】より、Va、VbはVtよりも大きく、Vc、VdはVtよりも小さいことが見て取れる。

14 【図18】より、「突起242」は「搬送方向」に伸びていることが見て取れる。

上記1ないし14を総合すると、引用文献には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「液体吐出装置は、センサの検出結果と閾値とに基づいて、前記媒体の有無を検出し、
インクジェットプリンタは、液体を媒体に吐出するので、液体吐出装置の一種でもあり、
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を印刷時に所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させ、
キャリッジ31は、走査方向に往復移動可能であり、
ヘッド41は、キャリッジ31に設けられており、
ヘッド41が走査方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、走査方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成され、
光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられ、
光学センサ54は、紙の端部の位置を検出し、
プラテン24は、突起242と、溝部244とを備えており、
突起242は、プラテン24が紙Sを支持する際に、紙と接触する部材であり、
搬送ユニットが搬送する紙(プリンタ1が印刷可能な紙)の中で最も幅の小さい紙はハガキであり、
溝部244は、プラテン14に設けられた窪みであり、溝部244は、突起244に対して凹んでおり、
光学センサ54は、発光部541と受光部542とを有し、
受光部542は、例えばフォトトランジスタを有し、
光学センサ54は、光学センサ54と対向する部材(例えば紙やプラテン)に光を照射し、その反射光を検出し、
受光部542が受光した光量が少ないときに大きい電圧を出力し、受光部542が受光した光量が多いときに小さい電圧を出力し、
状態A(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの外側にあり、検出スポットに紙Sがない状態)のときの光学センサの出力電圧はVaになり、状態B(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの内側にあり、検出スポットの一部に紙Sが入っている状態)のときの光学センサ54の出力電圧はVbになり、状態C(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの内側にあり、検出スポットのほとんどの領域に紙Sが入っている状態)のときの光学センサ54の出力電圧はVcになり、状態D(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの外側にあり、検出スポットの全てに紙Sがある状態)のときの光学センサの出力電圧はVdになり、
出力電圧Vtを閾値とした場合、コントローラは、状態Aと状態Bを「紙なし状態」と判断し、コントローラは、状態Cと状態Dを「紙あり状態」と判断し、出力電圧Vtは、検出スポットの半分を紙Sが占める場合の光学センサ54の出力電圧に等しく、
コントローラ60及び光学センサ54が、「紙の有無の判断をするための判断部」を構成し、
光学センサ54は、発光部541が経時的に発光量が減少することによって、劣化し、
状態Aに相当する信号は、光学センサ54の劣化に応じて変換する信号であり、
ハガキが搬送されていればハガキの下に位置する溝部244上に光を照射し、その反射光を受光し、
コントローラ60が可変抵抗器544の抵抗値を大きくすると、光学センサ54の感度が高くなり、光学センサ54が劣化したとき、コントローラ60は受光部542の感度が高くなるように調整し、すなわち、コントローラ60が、光学センサ54の劣化に応じて、可変抵抗器544の負荷抵抗を調整し、
搬送方向と走査方向とが交わっており、
突起242は溝部244が形成されている面に形成され、キャリッジ31側に突出しており、
Va、VbはVtよりも大きく、Vc、VdはVtよりも小さく、
突起242は搬送方向に伸びている、液体吐出装置。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「印刷時に所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させ」る「媒体(例えば、紙Sなど)」は、本願発明の「搬送方向に搬送される記録媒体」に相当する。
引用発明の「ヘッド41」は、「走査方向に移動中にインクを断続的に吐出する」ものであって、それによって「走査方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成」されるから、本願発明の「記録媒体に向かって液体を噴射する液体噴射ヘッド」に相当する。
引用発明の「キャリッジ31」は、「走査方向に往復移動可能」であり、「ヘッド41は、キャリッジ31に設けられて」おり、「搬送方向と走査方向とが交わって」いるから、本願発明の「液体噴射ヘッドを有し、前記搬送方向と交わる移動方向に往復移動するキャリッジ」に相当する。
引用発明の「突起242」は、「プラテン24が紙Sを支持する際に、紙と接触する部材」であり、「キャリッジ31側に突出しており」、「搬送方向に伸びている」から、本願発明の「キャリッジ側に突出して搬送方向に伸び、記録媒体を支持する記録媒体支持部」に相当する。
引用発明の「ハガキが搬送されていればハガキの下に位置する溝部244」は、「溝部244上に光を照射し、その反射光を受光」するものであるから、本願発明の「被検知部」に相当する。
引用発明において、「突起242は溝部244が形成されている面に形成され」ているから、引用発明の「溝部244が形成されている面」は、本願発明の「録媒体支持部と被検知部とが形成された面部」に相当する。
引用発明の「発光部541」は、「ハガキが搬送されていればハガキの下に位置する溝部244上に光を照射」するから、本願発明の「被検知部と対向しうる位置に設けられた、光を照射する発光部」に相当する。また、引用発明の「受光部542」は「反射光を受光」し、「受光した光量が少ないときに大きい電圧を出力し、受光部542が受光した光量が多いときに小さい電圧を出力」するから、本願発明の「光の反射光を光電流に変換し出力電圧として出力する受光部」に相当する。
引用発明は、「光学センサ54は、光学センサ54と対向する部材(例えば紙やプラテン)に光を照射し、その反射光を検出し、
受光部542が受光した光量が少ないときに大きい電圧を出力し、受光部542が受光した光量が多いときに小さい電圧を出力し、
状態A(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの外側にあり、検出スポットに紙Sがない状態)のときの光学センサの出力電圧はVaになり、状態B(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの内側にあり、検出スポットの一部に紙Sが入っている状態)のときの光学センサ54の出力電圧はVbになり、状態C(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの内側にあり、検出スポットのほとんどの領域に紙Sが入っている状態)のときの光学センサ54の出力電圧はVcになり、状態D(紙Sの端部が光学センサの検出スポットの外側にあり、検出スポットの全てに紙Sがある状態)のときの光学センサの出力電圧はVdにな」るものであるから、「Va」、「Vb」、「Vc」、「Vd]は、本願発明の「記録媒体支持部側に対して前記発光部から照射し、前記受光部によって出力された第1の出力電圧」に相当する。
引用発明の「光学センサ54は、紙の端部の位置を検出」するものであって、「コントローラ60及び光学センサ54が、「紙の有無の判断をするための判断部」を構成」し、「コントローラ」は、「検出スポットの半分を紙Sが占める場合の光学センサ54の出力電圧に等し」い「出力電圧Vtを閾値」とし、「Va、VbはVtよりも大きく、Vc、VdはVtよりも小」いときに、「状態Aと状態Bを「紙なし状態」と判断し、コントローラは、状態Cと状態Dを「紙あり状態」と判断」するから、引用発明の「コントローラ」は、本願発明の「第1の出力電圧を閾値と比較し、前記記録媒体の端部を検出する端部検出処理部」に相当する。
引用発明の、「状態Aに相当する信号」は、「光学センサ54の劣化に応じて変換する信号」であり、「紙Sの端部が光学センサの検出スポットの外側にあり、検出スポットに紙Sがない状態」のときの「光学センサの出力電圧」であって、すなわち、「ハガキが搬送されていればハガキの下に位置する溝部244上に光を照射し、その反射光を受光」したときの「光学センサの出力電圧」であるから、本願発明の「発光部と前記受光部とを被検知部に対向させ、前記発光部から前記被検知部に照射し、前記被検知部によって反射された反射光を前記受光部によって受光し、前記受光部から出力された第2の出力電圧」に相当する。
引用発明の「コントローラ60」は、「光学センサ54が劣化したとき、コントローラ60は受光部542の感度が高くなるように調整し、すなわち、コントローラ60が、光学センサ54の劣化に応じて、可変抵抗器544の負荷抵抗を調整」するものであるから、本願発明の「受光部から出力された第2の出力電圧に基づいて、前記受光部の感度を設定する感度設定部」に相当する。
引用発明において、「搬送ユニットが搬送する紙(プリンタ1が印刷可能な紙)の中で最も幅の小さい紙はハガキ」であるから、引用発明1の「ハガキが搬送されていればハガキの下」となる「位置」は、本願発明の「移動方向において、前記記録媒体が搬送される搬送領域の最小範囲」の「位置」に相当する。そして、引用発明の「ハガキが搬送されていればハガキの下に位置する溝部244」は本願発明の「移動方向において、前記記録媒体が搬送される搬送領域の最小範囲に位置」する「被検知部」に相当する。
引用発明において、「溝部244が形成されている面」と「溝部244」との距離はゼロであり、また、「溝部244が形成されている面」と「突起242」の先端との距離はゼロではないことは自明であるから、引用発明は、本願発明の「面部から被検知部の端部までの距離は、前記面部から媒体支持部の端部までの距離よりも短いこと」を備えている。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「搬送方向に搬送される記録媒体に向かって液体を噴射する液体噴射ヘッドを有し、前記搬送方向と交わる移動方向に往復移動するキャリッジと、
前記キャリッジ側に突出して前記搬送方向に伸び、前記記録媒体を支持する記録媒体支持部と、
被検知部と、
前記記録媒体支持部と前記被検知部とが形成された面部と、
前記被検知部と対向しうる位置に設けられた、光を照射する発光部と前記光の反射光を光電流に変換し出力電圧として出力する受光部と、
前記記録媒体支持部側に対して前記発光部から照射し、前記受光部によって出力された第1の出力電圧を閾値と比較し、前記記録媒体の端部を検出する端部検出処理部と、
前記発光部と前記受光部とを前記被検知部に対向させ、前記発光部から前記被検知部に照射し、前記被検知部によって反射された反射光を前記受光部によって受光し、前記受光部から出力された第2の出力電圧に基づいて、前記受光部の感度を設定する感度設定部と、
を備え、
前記被検知部は、前記移動方向において、前記記録媒体が搬送される搬送領域の最小範囲に位置し、
前記面部から前記被検知部の端部までの距離は、前記面部から前記媒体支持部の端部までの距離よりも短い、液体噴射装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明は、被検知部が「浮遊物の付着状態が検知される」ものであるのに対し、引用発明は、被検知部が「発光部541が経時的に発光量が減少すること」による、「光学センサの劣化」が検知されるものである点。

第5 判断
上記相違点について検討する。「インクジェットプリンタにおいて、浮遊物の付着により光センサが劣化すること」(以下「周知事項」という。)は、当業者に周知の事項である。

周知事項が記載されている刊行物の例として、特開2005-329556号公報には、以下の記載がある。
「【0005】
しかし、インクジェット記録ヘッドから吐出されたインクがミストとなり、このミストが用紙検出器の発光部或いは受光部に付着すると、エッジ位置の検出感度が鈍くなり、印刷用紙のエッジを正確に検出できなくなるといった問題が発生する。特に、用紙の側端から外れた領域にインクを打ち捨てる縁なし印刷の場合には、インクミストが発生し易い為この様な問題が発生し易い。また、発光器としてLEDを用いた場合には、時間の経過とともに発光量が減少し、これによってもエッジ位置の検出感度が鈍くなる。」

周知事項が記載されている刊行物の別な例として、特開2007-276888号公報には、以下の1および2の記載がある。
1 「【0002】
印刷用紙等の所定の印刷対象物へ印刷を行うインクジェットプリンタとして、印刷用紙等へインク滴を吐出する印刷ヘッドと、印刷ヘッドが搭載されるキャリッジとを備えるインクジェットプリンタが知られている。この種のインクジェットプリンタでは、発光素子と受光素子とを有する光学式の検出装置が広く使用されている。たとえば、インクジェットプリンタでは、内部に取り込まれた印刷用紙等の端部の検出を行うための検出装置として、光学式の検出装置が使用されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された光学式の検出装置はキャリッジの底面側に固定されている。」

2 「【0005】
インクジェットプリンタでは、印刷ヘッドからインク滴が吐出される際、インク滴が印刷用紙等の印刷面に到達するまでの間、あるいは、インク滴が印刷面に到達した際に、インク滴の一部が霧状になって空気中を浮遊するインクミストが発生し、発生したインクミストはプリンタ内部の各構成に付着することが知られている。たとえば、インクミストは、検出装置を構成する発光素子の発光面や受光素子の受光面に付着する。また、一般的に、発光素子の発光量は経時的に劣化することが知られている。」

上記周知事項から、引用発明において、「発光部541が経時的に発光量が減少すること」に加え、「浮遊物の付着」も「光センサの劣化」の一因であり、引用発明の「光学センサ54の劣化に応じて変換する信号」には「浮遊物の付着」によるものも含まれることは自明である。したがって、「ハガキが搬送されていればハガキの下に位置する溝部244」は、「浮遊物の付着状態が検知される」ものであるということができる。
よって、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。効果について検討しても、本願発明及び周知事項から予想可能なものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-09 
結審通知日 2016-11-15 
審決日 2016-11-28 
出願番号 特願2011-184475(P2011-184475)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 賢  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 植田 高盛
森次 顕
発明の名称 液体噴射装置  
代理人 仲井 智至  
代理人 西田 圭介  
代理人 渡辺 和昭  

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