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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01L
管理番号 1323941
審判番号 不服2016-3438  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-04 
確定日 2017-02-06 
事件の表示 特願2012- 19355「トルク変換器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月15日出願公開、特開2013-156230、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)1月31日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年10月 8日付け:拒絶理由の通知
平成27年11月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 1月 4日付け:拒絶査定
平成28年 3月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年10月 6日付け:当審拒絶理由の通知
平成28年10月20日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成28年10月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】
被測定対象である駆動部のトルクを測定するトルク変換器において、
抵抗体を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、該変換した検出信号を外部に取り出すことにより前記回転軸で伝達されるトルクを測定するトルク変換器であって、
検出対象として特定された回転軸のトルクを測定するために、該トルク変換器への電力の供給を行う電力供給部と、前記回転軸の長手方向に沿って前記電力供給部と所定間隔隔てて配置された信号伝送部を有しており、かつブリッジ回路を構成したひずみ測定用の前記抵抗体が、前記電力供給部と前記信号伝送部との間に位置するように前記回転軸上に配置されたトルク変換器であり、
前記トルク変換器の前記電力供給部と前記信号伝送部は、
前記回転軸と一体的に回転するように取り付けられたロータ側電力供給構成部及びロータ側信号伝送構成部と、
前記ロータ側電力供給構成部と前記ロータ側信号伝送構成部のそれぞれと所定の空隙を介して前記回転軸の回転に追従することなく前記トルク変換器に固定配置されているステータ側電力供給構成部及びステータ側信号伝送構成部とをそれぞれ有し、
前記ロータ側信号伝送構成部から前記ステータ側信号伝送構成部への電気信号の伝達が、前記ロータ側信号伝送構成部に設けられているコイルの電圧を周波数に変換して該周波数を介することより行われ、かつ
前記トルク変換器は、前記回転軸をハウジングに回転可能に軸支する一対の軸受を有し、
前記電力供給部と前記信号伝送部は、前記一対の軸受にそれぞれ隣接し、かつ前記回転軸の長手方向においてそれぞれが隣接する前記各軸受よりも前記ブリッジ回路側に配置され、
前記ロータ側電力供給構成部及び前記ロータ側信号伝送構成部は磁気シールド部材を備えることなく、かつ
前記ステータ側電力供給構成部は、ステータ側ボビンが珪素快削鋼を用いたステータ側ボビンケースで囲われていることを特徴とするトルク変換器。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:実願昭62-168936号(実開平1-74070号)のマ
イクロフィルム
刊行物2:特開昭61-5399号公報
刊行物3:特開平6-162383号公報
刊行物4:実願昭63-165762号(実開平2-88140号)のマ
イクロフィルム
刊行物5:特開昭60-102534号公報
刊行物6:特開昭51-131676号公報
刊行物7:特開平3-42537号公報
刊行物8:特開昭60-17329号公報
刊行物9:実願平2-99087号(実開平4-55530号)のマイク
ロフィルム

刊行物1に記載された「歪ゲージ14」、「出力軸10」、「入力側ロータリトランス28」、「出力側ロータリトランス29」、「ブリッジ回路13」、「トルク検出装置12」は、請求項1に係る発明の「抵抗体」、「回転軸」、「電力供給部」、「信号伝送部」、「ブリッジ回路」、「トルク変換器」にそれぞれ相当する(特に、明細書第7ページ-第10ページ、第2図、第4図を参照)。
また、刊行物1に記載された「回転側コイル22」、「回転側コイル23」、「固定側コイル26」、「固定側コイル27」が、請求項2に係る発明の「ロータ側電力供給構成部」、「ロータ側信号伝送構成部」、「ステータ側電力供給構成部」、「ステータ側信号伝送構成部」にそれぞれ相当する。

刊行物2に記載された「歪ゲージトランスジユーサー17」、「シヤフト13」、「変圧器18」、「変圧器19」、「ブリツジ回路」、「トルク感知装置」は、請求項1に係る発明の「抵抗体」、「回転軸」、「電力供給部」、「信号伝送部」、「ブリッジ回路」、「トルク変換器」にそれぞれ相当する(特に、第2ページ左下欄、第3ページ左上欄-第4ページ左上欄、第5図、第6図を参照)。
また、刊行物2に記載された「巻線18a」、「巻線19a」、「巻線18b」、「巻線19b」が、請求項2に係る発明の「ロータ側電力供給構成部」、「ロータ側信号伝送構成部」、「ステータ側電力供給構成部」、「ステータ側信号伝送構成部」にそれぞれ相当する。

そして、非接触で信号伝送を行うトルクセンサにおいて、検出された電圧信号をV-F変換し、周波数を介して受信部へ伝送することは周知技術である(たとえば、刊行物3の【0009】、図1、刊行物4の明細書第9ページ、第4図を参照)。

回転軸に生ずるねじれを検出するトルク検出装置で、駆動部のトルクを測定することは、たとえば
刊行物5に、伝達軸1に発生するねじりひずみから「モータ」の回転トルクを検出することが記載され(特に、(従来技術)欄、第1図等を参照)、
刊行物6に、回転軸のねじれによる歪み変化量から「船舶推進軸」や「モータ駆動軸」のトルクを測定することが記載されている(特に、第1ページ左下欄-右下欄等を参照)
ように、本願出願時における周知技術であるといえるから、刊行物1や2に記載されたトルク検出装置で駆動部のトルクを測定することも、当業者が容易になし得たことである。

また、トルク検出を行う回転軸に対して非接触で電力供給、信号伝達を行うトルク検出装置において、当該回転軸をハウジングに対して回転可能に軸支する一対の軸受を設けるとともに、前記一対の軸受にそれぞれ隣接して、各軸受よりもトルク検出部側に電力供給部と信号伝達部とを配置することも、たとえば
刊行物7に、検出軸3、4をハウジング1に転がり軸受2、2で支承するとともに、これら軸受2、2にそれぞれ隣接して、各軸受2、2よりも検出部材11側にロータリトランス8と静電容量結合部9とが配置されるものが記載され(特に、第2ページ右上欄-第3ページ右上欄、第1図等を参照)、
刊行物8に、トルク管20をケーシング19にベアリング18a、18bで支承するとともに、これらベアリング18a、18bにそれぞれ隣接して、各ベアリング18a、18bよりも磁化コイル14側に電磁カップリング16aと16bとが配置されるものが記載され(特に、第2ページ左上欄-右上欄、第2図等を参照)、
刊行物9に、トーションバー7で結合された駆動軸2および被駆動軸3をハウジング1にベアリング4、5で支承するとともに、これらベアリング4、5にそれぞれ隣接して、各ベアリング4、5よりも励磁コイル22および検出コイル42側に第1の回転トランス10と第2の回転トランス30とが配置されるものが記載されている(特に、明細書第8ページ-第13ページ、第1図、第3図等を参照)
ように、本願出願時に広く採用されている配置態様であるといえるから、刊行物1や2に記載されたトルク検出装置にこのような配置態様を採用することも、当業者が容易になし得たことである。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア 刊行物1(実願昭62-168936号(実開平1-74070号)のマイクロフィルム)の記載事項
刊行物1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。刊行物1の「ブリッジ回路15」、「インナーカラー17」および「シルド部材」との記載は、それぞれ、「ブリッジ回路13」、「インナーカラー16」および「シールド部材」の誤記と認める。)。

(a)「(産業上の利用分野)
本考案は、ナットランナーの出力軸の締付けトルクを検出するトルク検出装置に関し、特に、該出力軸を低トルク高速回転と高トルク低速回転とにソレノイドを用いて切換えるナットランナーにおけるトルク検出装置に関する。」(明細書第1頁第20行?第2頁第4行)

(b)「トルク検出装置12はアウターケース1の内側で出力軸10の先端部に設けられ、出力軸10の歪量を検出すべく出力軸10の段部10aの円周4箇所に均等に貼着されてブリッジ回路13を構成する歪ゲージ14と、出力軸10の外周に段部10aを被包しベアリング15を介して出力軸10と一体に回動自在なインナーカラー16と、インナーカラー16とベアリング15を介して対向しアウターケース1の内周側に固着して中央部に突条部であるスペーサー17aを有するアウターカラー17と、インナーカラー16とアウターカラー17との前部と後部に添設されたサイドカラー18a,18b及び19と、インナーカラー16に固着されベアリング15とスペーサー17aを挟んで設けられた前後部のインナーコア20,21の外周に配線し各々ブリッジ回路13に接続する回転側コイル22,23及び回転側コイル22,23の外周側対向位置に配置してアウターカラー17に固着される前後部のアウターコア24,25の内周に配線した固定側コイル26,27の各々対向するコイル22と26,23と27からなる入力側,出力側ロータリトランス28,29とアウターケース1のシールドカバー1a内に絶縁シート30を介して出力側ロータリトランス29と接続して設けられた増幅器31とからなる。
そして、前記インナーカラー16、アウターカラー17、サイドカラー18a,18b,19は,ロータリトランス28,29を被包するシールド部材を構成する。また、図示するように、前記歪ゲージ14、ロータリトランス28,29及びロータリトランス28,29のシールド部材を構成するインナーカラー16、アウターカラー17、サイドカラー18a,18b,19は、同心上に近接して配設され、更に前記増幅器31は、該ロータリトランス28,29に近接して配設される。
つぎに、該ナットランナーにおいてボルトまたはナットを締付けるときのトルク検出装置12の作動について説明する。
まず、ソレノイド11の磁気吸着力で切換えクラッチ5を高速クラッチ32側に接続保持してモータ2を回転する。モータ2の回転は第1遊星歯車機構7によって減速され第1回転体3と高速クラッチ32と接続する切換えクラッチ5を介してスラストシャフト6に伝達される。さらに第2回転体4に伝達され第3遊星歯車機構9によって減速されて出力軸10の先端に取り付けたソケット(図示せず)によりボルトまたはナットを低トルク高回転でボルトの頭またはナットの着座位置近傍まで締付ける。
このとき、トルクが発生して出力軸10が捩れこれに貼着された歪ゲージ14に発生トルクに伴う歪が発生する。あらかじめ歪ゲージ14によって構成されるブリッジ回路13にはコントローラ(図示せず)から供給され入力側ロータリトランス28の固定側コイル26を介して回転側コイル22に非接触で伝搬される搬送波電圧が入力されており、出力軸10に生ずる歪により歪ゲージの抵抗値は変化し、それによりブリッジ回路13内の電圧は変化しトルクが大きくなるとこの電圧(以下トルク値電圧という)がこの歪量と比例して高くなる。トルク値電圧は出力側ロータリトランス29の回転側コイル23から固定側コイル27に非接触で伝搬され、増幅器31を介して増幅されてコントローラに検出値として出力される。」(明細書第7頁第2行?第10頁第6行)

(c)「従って、歪ゲージ14を出力軸10の外周に直接貼着するので正確な出力軸トルクを検出でき、ロータリトランス28,29を用いているので摺動部分がなく保守が容易であり、ロータリトランス28,29はシールド部材16,17,18a,18b,19によってまた、増幅器31はシールドカバー1aによって被包されてソレノイド11等からのノイズの混入を防止でき出力軸トルクを正確に把握できるのでボルトまたはナットの締付作業を高速化できると共に、正確な締付けを行うことができる。」(明細書第11頁第6行?第16行)

(d)第2図および第3図から、「回転側コイル22および回転側コイル23と、固定側コイル26および固定側コイル27とが、それぞれ、空隙を介して対向する」ことが見てとれる。

(e)第2図から、「入力側ロータリトランス28と出力側ロータリトランス29とが、出力軸10の長手方向に沿って所定間隔隔てて配置され、歪みゲージ14が、入力側ロータリトランス28と出力側ロータリトランス29との間に配置される」ことが見てとれる。

(ア)上記(a)より、刊行物1には、「トルク検出装置」が記載されている。

(イ)上記(b)より、刊行物1には、「出力軸10の歪量を検出すべく出力軸10の段部10aの円周4箇所に均等に貼着されてブリッジ回路13を構成する歪ゲージ14」が記載されている。

(ウ)刊行物1の「出力軸10の外周に段部10aを被包しベアリング15を介して出力軸10と一体に回動自在なインナーカラー16と、・・・(略)・・・インナーカラー16に固着されベアリング15とスペーサー17aを挟んで設けられた前後部のインナーコア20,21の外周に配線し各々ブリッジ回路13に接続する回転側コイル22,23」(明細書第7頁第6行?第18行)との記載について、回転側コイル22および回転側コイル23は、出力軸10と一体に回動自在なインナーカラー16に固着されるインナーコア20およびインナーコア21の外周に配線されるものであるから、回転側コイル22および回転側コイル23もインナーカラー16と同様に出力軸10と一体に回動自在であるといえ、刊行物1には、「出力軸10と一体に回動自在であり、各々ブリッジ回路13に接続する回転側コイル22および回転側コイル23」が記載されているといえる。

(エ)刊行物1の「インナーカラー16とベアリング15を介して対向しアウターケース1の内周側に固着して中央部に突条部であるスペーサー17aを有するアウターカラー17と、・・・(略)・・・回転側コイル22,23の外周側対向位置に配置してアウターカラー17に固着される前後部のアウターコア24,25の内周に配線した固定側コイル26,27」(明細書第7頁第9行?第8頁第2行)との記載について、固定側コイル26および固定側コイル27は、アウターケース1に固着されるアウターカラー17に固着されるアウターコア24およびアウターコア25の内周に配線されるものであるから、固定側コイル26および固定側コイル27もアウターカラー17と同様にアウターケースに固着されるといえ、上記(d)も踏まえれば、刊行物1には、「アウターケース1に固着され、回転側コイル22および回転側コイル23と、それぞれ、空隙を介して対向する固定側コイル26および固定側コイル27」が記載されているといえる。

(オ)刊行物1の「各々対向するコイル22と26,23と27からなる入力側,出力側ロータリトランス28,29」(明細書第8頁第2行?第4行)との記載より、刊行物1には、「対向する回転側コイル22と固定側コイル26からなる入力側ロータリトランス28と、対向する回転側コイル23と固定側コイル27からなる出力側ロータリトランス29」が記載されているといえる。

(カ)刊行物1の「出力軸10の外周に段部10aを被包しベアリング15を介して出力軸10と一体に回動自在なインナーカラー16と、インナーカラー16とベアリング15を介して対向しアウターケース1の内周側に固着して中央部に突条部であるスペーサー17aを有するアウターカラー17」(明細書第7頁第6行?第12行)との記載と、一般的に、ベアリングが軸を回転可能、すなわち、回動自在に支持するためのものであることを踏まえれば、刊行物1には、「出力軸10をアウターケース1に回動自在に支持するベアリング15」が記載されているといえる。

(キ)刊行物1の「・・・(略)・・・インナーカラー16と、・・・(略)・・・アウターカラー17と、・・・(略)・・・サイドカラー18a,18b及び19」(明細書第7頁第6行?第14行)、「前記インナーカラー16、アウターカラー17、サイドカラー18a,18b,19は,ロータリトランス28,29を被包するシールド部材を構成する」(明細書第8頁第8行?第11行)との記載および上記(オ)(「入力側ロータリトランス28」および「出力側ロータリトランス29」)より、刊行物1には、「入力側ロータリトランス28および出力側ロータリトランス29を被包するシールド部材を構成する、インナーカラー16、アウターカラー17、サイドカラー18a、サイドカラー18bおよびサイドカラー19」が記載されているといえる。

(ク)上記(e)より、刊行物1には、「入力側ロータリトランス28と出力側ロータリトランス29とが、出力軸10の長手方向に沿って所定間隔隔てて配置され、歪みゲージ14が、入力側ロータリトランス28と出力側ロータリトランス29との間に配置される」ことが記載されているといえる。

(ケ)刊行物1の「あらかじめ歪ゲージ14によって構成されるブリッジ回路13にはコントローラ(図示せず)から供給され入力側ロータリトランス28の固定側コイル26を介して回転側コイル22に非接触で伝搬される搬送波電圧が入力されており、出力軸10に生ずる歪により歪ゲージの抵抗値は変化し、それによりブリッジ回路13内の電圧は変化しトルクが大きくなるとこの電圧(以下トルク値電圧という)がこの歪量と比例して高くなる。トルク値電圧は出力側ロータリトランス29の回転側コイル23から固定側コイル27に非接触で伝搬され、・・・(略)・・・検出値として出力される」(明細書第9頁第14行?第10頁第6行)との記載より、刊行物1には、「あらかじめ歪ゲージ14によって構成されるブリッジ回路13には、入力側ロータリトランス28の固定側コイル26を介して回転側コイル22に非接触で伝搬される搬送波電圧が入力され、出力軸10に生ずる歪により歪ゲージの抵抗値は変化し、歪量と比例して高くなるトルク値電圧が、出力側ロータリトランス29の回転側コイル23から固定側コイル27に非接触で伝搬され、検出値として出力される」ことが記載されているといえる。

したがって、上記(ア)ないし(ケ)を総合すると、刊行物1には以下の発明が記載されている(以下、「引用発明1」という。)。

「出力軸10の歪量を検出すべく出力軸10の段部10aの円周4箇所に均等に貼着されてブリッジ回路13を構成する歪ゲージ14と、
出力軸10と一体に回動自在であり、各々ブリッジ回路13に接続する回転側コイル22および回転側コイル23と、
アウターケース1に固着され、回転側コイル22および回転側コイル23と、それぞれ、空隙を介して対向する固定側コイル26および固定側コイル27と、
対向する回転側コイル22と固定側コイル26からなる入力側ロータリトランス28と、
対向する回転側コイル23と固定側コイル27からなる出力側ロータリトランス29と、
出力軸10をアウターケース1に回動自在に支持するベアリング15と、
入力側ロータリトランス28および出力側ロータリトランス29を被包するシールド部材を構成する、インナーカラー16、アウターカラー17、サイドカラー18a、サイドカラー18bおよびサイドカラー19と、
からなるトルク検出装置であって、
入力側ロータリトランス28と出力側ロータリトランス29とが、出力軸10の長手方向に沿って所定間隔隔てて配置され、歪みゲージ14が、入力側ロータリトランス28と出力側ロータリトランス29との間に配置され、
あらかじめ歪ゲージ14によって構成されるブリッジ回路13には、入力側ロータリトランス28の固定側コイル26を介して回転側コイル22に非接触で伝搬される搬送波電圧が入力され、出力軸10に生ずる歪により歪ゲージの抵抗値は変化し、歪量と比例して高くなるトルク値電圧が、出力側ロータリトランス29の回転側コイル23から固定側コイル27に非接触で伝搬され、検出値として出力される、
トルク検出装置。」

イ 刊行物2(特開昭61-5399号公報)の記載事項
刊行物2には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。刊行物2の「対象的」との記載は「対称的」の誤記と認める。)。

(a)「本発明はトルク感知装置にかかわる。」(第2頁左上欄第13行)

(b)「連続的に回転しているシヤフトのトルクの測定は困難である。」(第2頁右上欄第4行?第5行)

(c)「変圧器は特に歪感知装置の反対の側に軸方向に間隔を有して設けられる。」(第2頁左下欄第17行?第18行)

(d)「取り付けの問題に対する可能な解決法が第3図に示されており、同図に於てシヤフト8は共軸円筒9によつて被覆されており同円筒は端環10を有し、同環は溶接、鑞付又は圧着によってシヤフトに固定されている。」(第3頁右上欄第3行?第8行)

(e)「シヤフトの全てのねじれ歪に対して、大部分のねじれ歪は約L/1のフアクターでトランスジユーサー11aによつて検知される。」(第3頁左下欄第10行?第12行)

(f)「第5図は提案された解決法を示している。
シヤフト13が定置ケーシング14を通つて延びており第4図に類似の切断された円筒15が取り付けられている。ここに於ては頸部に16の記号が付されており、同頸部の中央に歪トランスジユーサー17が取り付けられている。円筒部の端には変圧器18及び19があり同変圧器の1つの巻線18a、19aは円筒15の上にあり、他の巻線18b、19bはケーシング14の上にある。巻線は単にシヤフトに共軸の複数の巻線で環状の溝を有するヨーク20a、20b、21a、21bの中に収容されている。溝は相互に開放しており、フエライトのような高導磁率を有し、有効な変圧器結合を提供する。それ等の位置決め及び巻線作業には高い精度は必要でない。
トランスジユーサー17は第6図に示されているように巻線18a、19aに接続されており、1つの巻線は変圧器18の2次巻線で他は変圧器19の1次巻線である。発振器22が変圧器18の1次巻線18bを励起するとトランスジユーサーの出力が変圧器19の2次巻線19bから得られ、この際この出力は高利得増幅器23を介して位相感知デイテクター24に導かれ、同デイテクターも直接発振器から出力を受ける。この発振器及び低域漏波器25より直流電圧が発生し同電圧は大きさ及び規模に於てトルクに比例する。」(第3頁左下欄第17行?第4頁左上欄第5行)

(g) 第5図より、「シヤフト13を被覆し、シヤフト13に取り付けられている円筒15」が見てとれる。

(h)第5図より、「円筒15の中央に取り付けられているトランスジユーサー17」が見てとれる。

(i)第6図より、「抵抗R1、R2、R3、R4がブリツジ回路に接続されているトランスジユーサー17」が見てとれる。

(j)第5図から、「巻線18aおよび巻線19aと、巻線18bおよび巻線19bとが、それぞれ、空隙を介して対向する」ことが見てとれる。

(ア)上記(a)より、刊行物2には、「トルク感知装置」が記載されている。

(イ)刊行物2の「シヤフト13が定置ケーシング14を通つて延びており第4図に類似の切断された円筒15が取り付けられている」(第3頁左下欄第19行?右下欄第1行)との記載について、「シヤフト8は共軸円筒9によつて被覆されており同円筒は端環10を有し、同環は溶接、鑞付又は圧着によってシヤフトに固定されている」(第3頁右上欄第5行?第8行)との記載および上記(g)を踏まえれば、シヤフト13に取り付けられる円筒15は、シヤフト13を被覆し、シヤフト13に固定されているといえるから、刊行物2には、「シヤフト13を被覆し、シヤフト13に固定される円筒15」が記載されているといえる。

(ウ)
a 上記(h)より、刊行物2には、「円筒15の中央に取り付けられているトランスジユーサー17」が記載されているといえる。

b 上記(i)より、刊行物2には、「抵抗R1、R2、R3、R4がブリツジ回路に接続されているトランスジユーサー17」が記載されているといえる。

c 刊行物2の「シヤフトの全てのねじれ歪に対して、大部分のねじれ歪は・・・(略)・・・トランスジユーサー11aによつて検知される」(第3頁左下欄第10行?第12行)との記載について、当該記載は「シヤフト13」(第3頁左下欄第19行)および「トランスジユーサー17」(第3頁右下欄第14行)にも該当するものといえるから、刊行物2には、「シヤフト13のねじれ歪を検知するトランスジユーサー17」が記載されているといえる。

d 上記aないしcを総合すれば、刊行物2には、「抵抗R1、R2、R3、R4がブリツジ回路に接続され、シヤフト13のねじれ歪を検知するトランスジユーサー17であって、円筒15の中央に取り付けられているトランスジユーサー17」が記載されているといえる。

(エ)
a 刊行物2の「円筒部の端には変圧器18及び19があり同変圧器の1つの巻線18a、19aは円筒15の上にあり、他の巻線18b、19bはケーシング14の上にある」(第3頁右下欄第4行?第7行)の記載について、当該記載の「ケーシング14」とは「定置ケーシング14」(第3頁左下欄第19行)に対応すること、および、上記(j)を踏まえれば、刊行物2には、「円筒15の端かつ上にある巻線18aおよび巻線19aと、巻線18aおよび巻線19aのそれぞれと空隙を介して対向し、定置ケーシング14の上にある巻線18bおよび巻線19b」が記載されているといえる。

b 「連続的に回転しているシヤフト」(第2頁右上欄第4行)との記載や、巻線18aおよび巻線19aは円筒15の端かつ上にあるものであり(上記a)、円筒15はシヤフト13に固定されるものである(上記(イ))ことを踏まえれば、「巻線18aおよび巻線19aは、シヤフト13と共に回転するものである」といえる。

c 「トランスジユーサー17は第6図に示されているように巻線18a、19aに接続されており」(第3頁右下欄第14行および第15行)との記載により、「巻線18aおよび巻線19aは、トランスジユーサー17に接続されているものである」といえる。

d 上記aないしcを総合すれば、刊行物2には、「円筒15の端かつ上にあってシヤフト13と共に回転し、トランスジユーサー17に接続された巻線18aおよび巻線19aと、巻線18aおよび巻線19aのそれぞれと空隙を介して対向し、定置ケーシング14の上にある巻線18bおよび巻線19b」が記載されているといえる。

(オ)刊行物2の「トランスジユーサー17は第6図に示されているように巻線18a、19aに接続されており、1つの巻線は変圧器18の2次巻線で他は変圧器19の1次巻線である」(第3頁右下欄第14行?第17行)、「変圧器18の1次巻線18b」(第3頁右下欄第17行および第18行)、「変圧器19の2次巻線19b」(第3頁右下欄第19行)との記載、第5図および第6図より、刊行物2には、「1次巻線である巻線18bと2次巻線である巻線18aからなる変圧器18と、1次巻線である巻線19aと2次巻線である巻線19bからなる変圧器19」が記載されているといえる。

(カ)刊行物2の「巻線18a、19a」(3頁右下欄第5行)、「巻線18b、19b」(3頁右下欄第6行)、「巻線は・・・(略)・・・環状の溝を有するヨーク20a、20b、21a、21bの中に収容されている」(3頁右下欄第7行?第9行)との記載より、刊行物2には、「巻線18a、巻線18b、巻線19a、巻線19bのそれぞれを中に収容する、環状の溝を有するヨーク20a、ヨーク20b、ヨーク21a、ヨーク21b」が記載されているといえる。

(キ)上記(c)と「円筒部の端には変圧器18及び19があり」(第3頁第4行)との記載より、刊行物2には、「変圧器18および変圧器19は、トランスジユーサー17のそれぞれ反対の側に軸方向に間隔を有して設けられる」ことが記載されているといえる。

(ク)刊行物2の「発振器22が変圧器18の1次巻線18bを励起するとトランスジユーサーの出力が変圧器19の2次巻線19bから得られ、この際この出力は高利得増幅器23を介して位相感知デイテクター24に導かれ、同デイテクターも直接発振器から出力を受ける。この発振器及び低域漏波器25より直流電圧が発生し同電圧は大きさ及び規模に於てトルクに比例する」(第3頁右下欄第17行?第4頁左上欄第5行)との記載について、当該記載の「トランスジユーサー」とは「トランスジユーサー17」(第3頁右下欄第14行)に対応し、当該記載の「トルク」とは「シヤフトのトルク」(第2頁右上欄第4行)であって、この場合の「シヤフト」とは「シヤフト13」(第3頁左下欄第19行)であるといえ、当該記載の「トランスジユーサーの出力が変圧器19の2次巻線19bから得られ、この際この出力は高利得増幅器23を介して位相感知デイテクター24に導かれ、同デイテクターも直接発振器から出力を受ける。この発振器及び低域漏波器25より直流電圧が発生」するということは、「2次巻線19bから得られるトランスジユーサー17の出力に基づいて直流電圧を発生」するということといえるから、刊行物2には、「変圧器18の1次巻線18bを励起するとトランスジユーサー17の出力が変圧器19の2次巻線19bから得られ、この出力に基づいてシヤフト13のトルクに比例する直流電圧が発生する」ことが記載されているといえる。

したがって、上記(ア)ないし(ク)を総合すると、刊行物2には以下の発明が記載されている(以下、「引用発明2」という。)。

「シヤフト13を被覆し、シヤフト13に固定される円筒15と、
抵抗R1、R2、R3、R4がブリツジ回路に接続され、シヤフト13のねじれ歪を検知するトランスジユーサー17であって、円筒15の中央に取り付けられているトランスジユーサー17と、
円筒15の端かつ上にあってシヤフト13と共に回転し、トランスジユーサー17に接続された巻線18aおよび巻線19aと、
巻線18aおよび巻線19aのそれぞれと空隙を介して対向し、定置ケーシング14の上にある巻線18bおよび巻線19bと、
1次巻線である巻線18bと2次巻線である巻線18aからなる変圧器18と、
1次巻線である巻線19aと2次巻線である巻線19bからなる変圧器19と、
巻線18a、巻線18b、巻線19a、巻線19bのそれぞれを中に収容する、環状の溝を有するヨーク20a、ヨーク20b、ヨーク21a、ヨーク21bと、
が設けられるトルク感知装置であって、
変圧器18および変圧器19は、トランスジユーサー17のそれぞれ反対の側に軸方向に間隔を有して設けられ、
変圧器18の1次巻線18bを励起するとトランスジユーサー17の出力が変圧器19の2次巻線19bから得られ、この出力に基づいてシヤフト13のトルクに比例する直流電圧が発生する、
トルク感知装置。」

ウ 刊行物3(特開平6-162383号公報)の記載事項
刊行物3には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「【0009】この回転トルクセンサ100には第1のロータリートランス110と第2のロータリートランス120が備えられており、これら第1および第2のロータリートランス110,120の各ステータ112,122は固定体に固定され、各ロータ114,124は回転体に固定されている。またこの回転トルクセンサ100の回転体には、この回転体に作用するトルクを検出するための圧電センサ130が備えられている。この圧電センサ130は、回転体に作用するトルクの変化に応じた量の電荷を発生するものである。この圧電センサ130で発生された電荷は、チャージアンプ140の入力側に蓄積されその電荷量が電圧に変換されてこのチャージアンプ140から出力される。このチャージアンプ140はデコーダからのリセット信号により、電荷を完全放電して初期状態に復帰し、ゲイン切換信号によりそのゲインが切換わり、また時定数切換信号により蓄積された電荷を少しずつ制御された状態で放電する際の放電の時定数が切換わる。チャージアンプ140から出力された、トルクを担持する電圧信号は、V/F変換回路160により、周波数が中心周波数f_(0) に対し入力電圧に応じて±△f_(1) 変調されたFM信号に変換され、第2のロータリートランス120のロータ124に入力される。このロータ124に入力されたFM信号はステータ122に伝送されてステータ122から出力され、F/V変換回路210に入力される。このF/V変換回路210では入力されたFM信号がその周波数に応じた電圧信号に変換される。この電圧信号は出力アンプ220を経由して回転体のトルクを表わす信号として外部に出力される。

(b)「【0011】このパルス列変換回路250から出力されたパルス列信号もAM変調回路240に入力される。AM変調回路240では、パルス列変換回路250から入力されたパルス列信号に基づいて発振回路230から入力された電源信号を振幅変調することにより変調電源信号(図2(d))を生成する。この変調電源信号はパワーアンプ260によりパワー増幅されて第1のロータリートランス110のステータ112に入力される。このステータ112に入力された変調電源信号はロータ114に伝送される。ロータ114から出力された、パワー増幅された変調電源信号(図2(e))は、定電圧電源回路170に入力される。この定電圧電源回路170では入力された変調電圧信号を整流して所定の定電圧に変換し、回転体に備えられた各回路を作動させるための電力として各回路に供給する。またロータ114から出力された変調電源信号はAM復調回路180に入力され、変調電源信号からパルス列信号(図2(f))が抽出される。この抽出されたパルス列信号はデコーダ150に入力され、デコーダ150では入力されたパルス列信号を読み取って、チャージアンプ140に対し、パルス列信号の論理配列に応じた所定の制御信号、例えば図2(g)に示すリセット信号を出力する。チャージアンプ140では、前述したように、デコーダ回路150から出力された制御信号を受け、その制御信号に応じた動作、即ち、リセット、ゲイン切換え、時定数切換えの各動作を行なう。」

(ア)
a 刊行物3の「回転トルクセンサ100には第1のロータリートランス110と第2のロータリートランス120が備えられており・・・(略)・・・またこの回転トルクセンサ100の回転体には、この回転体に作用するトルクを検出するための圧電センサ130が備えられている」(【0009】)との記載より、刊行物3には、「回転体に作用するトルクを検出するため、回転体に備えられている圧電センサ130と、第1のロータリートランス110と、第2のロータリートランス120と、を備える回転トルクセンサ100」が記載されているといえる。

b 刊行物3の「第1および第2のロータリートランス110,120の各ステータ112,122は固定体に固定され、各ロータ114,124は回転体に固定されている」(【0009】)との記載および図1より、刊行物3には、「第1のロータリートランスは、固定体に固定されているステータ112と回転体に固定されているロータ114とからなり、第2のロータリートランスは、固定体に固定されているステータ122と回転体に固定されているロータ124とからなる」ことが記載されているといえる。

c 上記aおよびbを総合すれば、刊行物3には、「回転体に作用するトルクを検出するため、回転体に備えられている圧電センサ130と、固定体に固定されているステータ112と回転体に固定されているロータ114とからなる第1のロータリートランス110と、固定体に固定されているステータ122と回転体に固定されているロータ124とからなる第2のロータリートランス120と、を備える回転トルクセンサ」が記載されているといえる。

(イ)刊行物3の「ステータ112に入力された変調電源信号はロータ114に伝送される。・・・(略)・・・変調電圧信号を整流して所定の定電圧に変換し、回転体に備えられた各回路を作動させるための電力として各回路に供給する」(【0011】)との記載より、刊行物3には、「ステータ112からロータ114に伝送された変調電圧信号を所定の定電圧に変換し、回転体に備えられた各回路を作動させるための電力として各回路に供給する」ことが記載されているといえる。

(ウ)刊行物3の「圧電センサ130で発生された電荷は、チャージアンプ140の入力側に蓄積されその電荷量が電圧に変換されてこのチャージアンプ140から出力される。・・・(略)・・・チャージアンプ140から出力された、トルクを担持する電圧信号は、V/F変換回路160により、周波数が中心周波数f_(0) に対し入力電圧に応じて±△f_(1) 変調されたFM信号に変換され、第2のロータリートランス120のロータ124に入力される。このロータ124に入力されたFM信号はステータ122に伝送されて」(【0009】)との記載より、刊行物3には、「圧電センサ130で発生し、蓄積された電荷を電圧に変換して出力し、出力されたトルクを担持する電圧信号をFM信号に変換し、FM信号を第2のロータリートランス120のロータ124に入力し、ステータ122に伝送する」ことが記載されているといえる。

したがって、上記(ア)ないし(ウ)を総合すると、刊行物3には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物3に記載の技術」という。)。

「回転体に作用するトルクを検出するため、回転体に備えられている圧電センサ130と、
固定体に固定されているステータ112と回転体に固定されているロータ114とからなる第1のロータリートランス110と、
固定体に固定されているステータ122と回転体に固定されているロータ124とからなる第2のロータリートランス120と、
を備える回転トルクセンサであって、
ステータ112からロータ114に伝送された変調電圧信号を所定の定電圧に変換し、回転体に備えられた各回路を作動させるための電力として各回路に供給し、
圧電センサ130で発生し、蓄積された電荷を電圧に変換して出力し、出力されたトルクを担持する電圧信号をFM信号に変換し、FM信号を第2のロータリートランス120のロータ124に入力し、ステータ122に伝送する、
回転トルクセンサ。」

エ 刊行物4(実願昭63-165762号(実開平2-88140号)のマイクロフィルム)の記載事項
刊行物4には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「本考案は、駆動側と従動側の間を連結するカップリングにトルクを検出する機能をもたせ、回転中のトルク測定を可能としたトルクメータに関するものである。」(明細書第2頁第8行?第11行)

(b)「(1)は磁性体からなるセンターチューブ(2)と、該センターチューブ(2)の軸方向両端に内周端が固着された金属ダイアフラム(3)(4)とを有するカップリング(フレキシブルユニット)である。
カップリング(1)にはトルクの検出装置(5)が一体に設けられており、この検出装置(5)は、センターチューブ(2)の内周面に貼着されたストレンゲージ(6)と、センターチューブ(2)の内周空間に、支持体(7)(8)を介して同芯的に固定された送信器(9)とを備えている。送信器(9)は、V-F変換回路(10)、送信回路(11)および電源回路(13)を有する。(14)は送信回路(11)から導出された送信アンテナで、磁性体からなるセンターチューブ(2)の外周面に巻装されている。」(明細書第6頁第12行?第7頁第11行)

(c)「また、(15)はカップリング(1)の外部に設置された再生装置で、チューナ(17)、F-V変換回路(18)および計数表示回路(19)を備えている。」(明細書第8頁第2行?第4行)

(d)「検出装置(5)の電源回路(13)には、非回転である一次コイル(12a)への交流の印加によって、カップリング(1)と一体に回転する二次コイル(12b)に誘導起電力が発生する誘導電源(12)を介して給電されている。この電源回路(13)を介して定電圧が供給されるV-F変換回路(10)は、ストレンゲージ(6)からの出力電圧(歪出力)を周波数変調して変調波を送信回路(11)を介して送信アンテナ(14)へ出力し、これにより送信アンテナ(14)からFM電波が発信される。 一方、再生装置(15)は、前記FM電波を受信アンテナ兼用の一次コイル(12a)で受信し、」(明細書第8頁第15行?第9頁第12行)

(ア)上記(a)より、刊行物4には、「トルクメータ」が記載されている。

(イ)刊行物4の「(1)は磁性体からなるセンターチューブ(2)と、・・・(略)・・・を有するカップリング・・・(略)・・・である」(明細書第6頁第12行?第7頁第1行)、「検出装置(5)は、センターチューブ(2)の内周面に貼着されたストレンゲージ(6)と、・・・(略)・・・送信器(9)とを備えている。送信器(9)は、V-F変換回路(10)、送信回路(11)および電源回路(13)を有する。(14)は送信回路(11)から導出された送信アンテナで、・・・(略)・・・センターチューブ(2)の外周面に巻装されている」(明細書第7頁第2行?第11行)との記載より、刊行物4には、「カップリング(1)が有するセンターチューブ(2)の内周面に貼着されたストレンゲージ(6)と、V-F変換回路(10)、送信回路(11)および電源回路(13)を有する送信器(9)と、センターチューブ(2)の外周面に巻装されている送信アンテナ(14)とを有する、検出装置(5)」が記載されているといえる。

(ウ)刊行物4の「電源回路(13)には、非回転である一次コイル(12a)への交流の印加によって、カップリング(1)と一体に回転する二次コイル(12b)に誘導起電力が発生する誘導電源(12)を介して給電されている」(明細書第9頁第1行?第5行)、「電源回路(13)を介して定電圧が供給されるV-F変換回路(10)は、ストレンゲージ(6)からの出力電圧(歪出力)を周波数変調して変調波を送信回路(11)を介して送信アンテナ(14)へ出力し、これにより送信アンテナ(14)からFM電波が発信される」(明細書第9頁第5行?第10行)との記載、および、検出装置(5)が「V-F変換回路(10)、送信回路(11)および電源回路(13)を有する送信器(9)と、送信アンテナ(14)と、を有する」(上記(イ))ことより、刊行物4には、「検出装置(5)において、電源回路(13)は、一次コイル(12a)への交流の印加によって、カップリング(1)と一体に回転する二次コイル(12b)に誘導起電力が発生する誘導電源(12)を介して給電され、V-F変換回路(10)は、電源回路(13)を介して定電圧が供給され、ストレンゲージ(6)からの歪出力を周波数変調して変調波を送信回路(11)を介して送信アンテナ(14)へ出力し、送信アンテナ(14)は、FM電波を発信する」ことが記載されているといえる。

(エ)刊行物4の「再生装置(15)は、前記FM電波を受信アンテナ兼用の一次コイル(12a)で受信し」(明細書第9頁第10行?第12行)との記載より、刊行物4には、「FM電波を受信する再生装置(15)」が記載されているといえる。

したがって、上記(ア)ないし(エ)を総合すると、刊行物4には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物4に記載の技術」という。)。

「カップリング(1)が有するセンターチューブ(2)の内周面に貼着されたストレンゲージ(6)と、
V-F変換回路(10)、送信回路(11)および電源回路(13)を有する送信器(9)と、
センターチューブ(2)の外周面に巻装されている送信アンテナ(14)とを有し、
電源回路(13)は、一次コイル(12a)への交流の印加によって、カップリング(1)と一体に回転する二次コイル(12b)に誘導起電力が発生する誘導電源(12)を介して給電され、
V-F変換回路(10)は、電源回路(13)を介して定電圧が供給され、ストレンゲージ(6)からの歪出力を周波数変調して変調波を送信回路(11)を介して送信アンテナ(14)へ出力し、
送信アンテナ(14)は、FM電波を発信する、
検出装置(5)と、
FM電波を受信する再生装置(15)と、
を有する、
トルクメータ。」

オ 刊行物5(特開昭60-102534号公報)の記載事項
刊行物5には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「モータの回転トルクにより伝達軸1がねじられると、この伝達軸1にねじりひずみが発生する。このねじりひずみはひずみゲージ4により検出され、トルクに比例した出力としてブリッジ回路で測定される。これにより、モータの回転トルクを検出している。」(第1頁右下欄第13行?第18行)

上記記載より、刊行物5には、「伝達軸1に発生するねじりひずみをひずみゲージ4により検出し、トルクに比例した出力としてブリッジ回路で測定することにより、モータの回転トルクを検出する技術。」が記載されているといえる(以下、「刊行物5に記載の技術」という。)。

カ 刊行物6(特開昭51-131676号公報)の記載事項
刊行物6には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「本発明はストレインゲージと無線テレメータを用いて回転軸の歪み量を測定する軸トルク計の構造に関するものである。
従来、船舶推進軸やモータ駆動軸のトルクは、軸自体にストレインゲージを直接貼って測定されており、その際回転軸のねじれによる歪み変化量を取り出すには接触型のスリップリングまたは無接触型の無線トランスミッタが使われている」(第1頁左下欄第15行?右下欄第2行)

上記記載について、回転軸のねじれによる歪み変化量を取り出して軸のトルクを測定しているといえるから、刊行物6には、「回転軸のねじれによる歪み変化量を取り出して、船舶推進軸やモータ駆動軸のトルクを測定する技術。」が記載されているといえる(以下、「刊行物6に記載の技術」という。)。

キ 刊行物7(特開平3-42537号公報)の記載事項
刊行物7には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「この発明は、回転軸に加わる瞬間的変動トルクや衝撃トルクの様な動的なトルクを非接触で計測するトルク計に関する。」(第1頁左下欄第16行?第18行)

(b)「第1図に示すトルク計本体においては、共軸縁関係で対向係合されて円筒形のハウジング1内に回転自在に転がり軸受2,2により支承され、検出軸部3,4の外端面には、夫々フランジ部5,6が固着されている。
検出軸部3,4の外周面とハウジング1の内周面との間には、適宜の間隙7が形成され、間隙7において、検出軸部3,4の外周面とハウジング1の内周面との夫々には、互に対向して対となった一次巻線8a・二次巻線8b及び一対の静電容量極9a,9bが取付けられ、ロータリトランス8及び静電容量結合部9を構成している。」(第2頁右上欄第10行?左下欄第1行)

(c)「検出軸部3(又は検出軸部4)の全傾斜面10,10・・・・の夫々には、第3図に示すようなピエゾ素子110を両面から金属電極片111,112で挾んで構成された検出部材llが次のように取付られている。」(第2頁左下欄第11行?第14行)

(d)「全検出部材11は、ロータリトランス8及び静電容量結合部9と共に第5図に示すような回路に結線されている。」(第2頁右下欄第4行?第6行)

(e)「全ピエゾ素子110,110・・・より発生した電荷は、チャージアンプ12により電圧に変換され、更にV/F変換器13により電圧に比例した周波数信号に変換される。前記の電圧信号は、周波数信号という形となって静電容量結合部9を介して回転側から固定側へ伝達され、更にF/V変換器14により周波数信号に比例した元の電圧信号に再び変換され、出力端子に出力される。
なお、回転側にあるチャージアンプ12及びV/F変換器13の電源機構18に対する電力は、固定側の外部電源16からの発振器17及びロータリトランス8を介して誘導的に供給される。」(第3頁右上欄第3行?第14行)

(f)第1図より、「検出軸部3および検出軸部4が、一対の転がり軸受2,2により支承されている」ことが見てとれる。

(g)第1図より、「ロータリトランス8および静電容量結合部9が、一対の転がり軸受2,2にそれぞれ隣接し、かつ検出軸部3および検出軸部4の長手方向においてそれぞれが隣接する転がり軸受2,2よりも検出部材11側に配置される」ことが見てとれる。

(ア)上記(a)より、刊行物7には、「トルク計」が記載されている。

(イ)刊行物7の「検出軸部3(又は検出軸部4)の全傾斜面10,10・・・・の夫々には、第3図に示すようなピエゾ素子110を両面から金属電極片111,112で挾んで構成された検出部材llが次のように取付られている」(第2頁左下欄第11行?第14行)との記載より、刊行物7には、「検出軸部3または検出軸部4に取り付けられたピエゾ素子110から構成された検出部材11」が記載されているといえる。

(ウ)刊行物7の「検出軸部3,4の外周面とハウジング1の内周面との間には、適宜の間隙7が形成され、間隙7において、検出軸部3,4の外周面とハウジング1の内周面との夫々には、互に対向して対となった一次巻線8a・二次巻線8b及び一対の静電容量極9a,9bが取付けられ、ロータリトランス8及び静電容量結合部9を構成している」(第2頁右上欄第15行?左下欄第1行)との記載より、刊行物7には、「検出軸部3および検出軸部4の外周面とハウジング1の内周面との夫々に取付けられ、間隙を介して互に対向する一次巻線8aおよび二次巻線8bにより構成されるロータリトランス8と、検出軸部3および検出軸部4の外周面とハウジング1の内周面との夫々に取付けられ、間隙を介して互に対向する静電容量極9aおよび静電容量極9bにより構成される静電容量結合部9」が記載されているといえる。

(エ)上記(d)より、刊行物7には、「検出部材11は、ロータリトランス8および静電容量結合部9と共に回路に結線されている」ことが記載されている。

(オ)刊行物7の「第1図に示すトルク計本体においては、共軸縁関係で対向係合されて円筒形のハウジング1内に回転自在に転がり軸受2,2により支承され」(第2頁右上欄第10行?第12行)との記載、上記(f)および(g)より、刊行物7には、「検出軸部3および検出軸部4は、円筒形のハウジング1内に回転自在に一対の転がり軸受2,2により支承され、ロータリトランス8および静電容量結合部9が、一対の転がり軸受2,2にそれぞれ隣接し、かつ検出軸部3および検出軸部4の長手方向においてそれぞれが隣接する転がり軸受2,2よりも検出部材11側に配置される」ことが記載されているといえる。

(カ)刊行物7の「回転側にあるチャージアンプ12及びV/F変換器13の電源機構18に対する電力は、・・・(略)・・・ロータリトランス8を介して誘導的に供給される」(第3頁右上欄第11行?第14行)との記載より、刊行物7には、「回転側にあるチャージアンプ12およびV/F変換器13の電源機構18に対する電力は、ロータリトランス8を介して誘導的に供給される」ことが記載されているといえる。

(キ)刊行物7の「全ピエゾ素子110,110・・・より発生した電荷は、チャージアンプ12により電圧に変換され、更にV/F変換器13により電圧に比例した周波数信号に変換される。前記の電圧信号は、周波数信号という形となって静電容量結合部9を介して回転側から固定側へ伝達され」(第3頁右上欄第3行?第8行)との記載より、刊行物7には、「ピエゾ素子110より発生した電荷は電圧に変換され、更に電圧に比例した周波数信号に変換され、周波数信号という形となって静電容量結合部9を介して回転側から固定側へ伝達される」ことが記載されているといえる。

したがって、上記(ア)ないし(キ)を総合すると、刊行物7には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物7に記載の技術」という。)。

「検出軸部3または検出軸部4に取り付けられたピエゾ素子110から構成された検出部材11と、
検出軸部3および検出軸部4の外周面とハウジング1の内周面との夫々に取付けられ、間隙を介して互に対向する一次巻線8aおよび二次巻線8bにより構成されるロータリトランス8と、
検出軸部3および検出軸部4の外周面とハウジング1の内周面との夫々に取付けられ、間隙を介して互に対向する静電容量極9aおよび静電容量極9bにより構成される静電容量結合部9と、
からなるトルク計であって、
検出部材11は、ロータリトランス8および静電容量結合部9と共に回路に結線され、
検出軸部3および検出軸部4は、円筒形のハウジング1内に回転自在に一対の転がり軸受2,2により支承され、ロータリトランス8および静電容量結合部9が、一対の転がり軸受2,2にそれぞれ隣接し、かつ検出軸部3および検出軸部4の長手方向においてそれぞれが隣接する転がり軸受2,2よりも検出部材11側に配置され、
回転側にあるチャージアンプ12およびV/F変換器13の電源機構18に対する電力は、ロータリトランス8を介して誘導的に供給され、
ピエゾ素子110より発生した電荷は電圧に変換され、更に電圧に比例した周波数信号に変換され、周波数信号という形となって静電容量結合部9を介して回転側から固定側へ伝達される、
トルク計。」

キ 刊行物8(特開昭60-17329号公報)の記載事項
刊行物8には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。刊行物8の「磁速」との記載は「磁束」の誤記と認める。)。

(a)「又、磁わい式トルク計は第2図に示す如き構造でWertheimとして知られるねじり磁わい効果をトルク検出部に用いている。つまり、縦軸方向に磁化された磁わい管13をねじることにより、円周方向に磁束を生じる現象を利用している。故に縦方向に磁化を行なうには上記磁わい管13の外径にそつて磁化コイル14を巻きつけ、高周波電流を流すことにより励磁される。この状態で上記磁わい管にねじりを与えると円周方向に磁束を生じるので上記磁わい管13の長さ方向に沿つて検出コイル15を巻きつけておき、その磁束を検出する。磁化及び磁束を検出するには、第2図の如く電磁カツプリング16a、16bを使用するか、スリツプリングを使用する。電磁カツプリング16a、16bからはコネクター17a、17bを通つて図示しない外部の指示増巾計に接続される。18a、18bはベアリングで、ケーシング19を固定し、トルク管20が回転する。以上の如く磁わい式トルク計はケーシング内をトルク管がベアリンクに支持されて回転する構造なので故障し易く、さらに磁わい管は断面積が小さいので破損し易いという欠点があった。」(第2頁左上欄第2行?右上欄第3行)

(b)第2図より、「電磁カツプリング16aおよび電磁カツプリング16bが、ベアリング18aおよびベアリング18bにそれぞれ隣接し、かつ磁わい管13の長手方向においてそれぞれが隣接するベアリング18aおよびベアリング18bよりも磁化コイル14および検出コイル15側に配置される」ことが見てとれる。

(ア)上記(a)より、刊行物8には、「磁わい式トルク計」が記載されている。

(イ)刊行物8の「縦方向に磁化を行なうには上記磁わい管13の外径にそつて磁化コイル14を巻きつけ、高周波電流を流すことにより励磁される」(第2頁左上欄第6行?第9行)との記載より、刊行物8には、「縦方向に磁化を行なうため、磁わい管13の外径にそつて巻きつけられ、高周波電流を流すことにより励磁される、磁化コイル14」が記載されているといえる。

(ウ)刊行物8の「上記磁わい管にねじりを与えると円周方向に磁束を生じるので上記磁わい管13の長さ方向に沿つて検出コイル15を巻きつけておき、その磁束を検出する」(第2頁左上欄第9行?第13行)との記載より、刊行物8には、「磁わい管13の長さ方向に沿つて巻き付けられ、磁わい管13にねじりを与えると円周方向に生じる磁束を検出する検出コイル15」が記載されているといえる。

(エ)刊行物8の「磁化及び磁束を検出するには、第2図の如く電磁カツプリング16a、16bを使用する」(第2頁左上欄第13行および第14行)との記載より、刊行物8には、「磁化及び磁束を検出するために使用される電磁カツプリング16aおよび電磁カツプリング16b」が記載されているといえる。

(オ)刊行物8の「18a、18bはベアリングで、ケーシング19を固定し、トルク管20が回転する。以上の如く磁わい式トルク計はケーシング内をトルク管がベアリンクに支持されて回転する構造」(第2頁左上欄第18行?右上欄第2行)との記載より、刊行物8には、「ケーシング19を固定し、トルク管20が回転するように支持するベアリング18aおよびベアリング18b」が記載されているといえる。

(カ)上記(b)より、刊行物8には、「電磁カツプリング16aおよび電磁カツプリング16bが、ベアリング18aおよびベアリング18bにそれぞれ隣接し、かつ磁わい管13の長手方向においてそれぞれが隣接するベアリング18aおよびベアリング18bよりも磁化コイル14および検出コイル15側に配置される」ことが記載されているといえる。

したがって、上記(ア)ないし(カ)を総合すると、刊行物8には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物8に記載の技術」という。)。

「縦方向に磁化を行なうため、磁わい管13の外径にそつて巻きつけられ、高周波電流を流すことにより励磁される、磁化コイル14と、
磁わい管13の長さ方向に沿つて巻き付けられ、磁わい管13にねじりを与えると円周方向に生じる磁束を検出する検出コイル15と、
磁化及び磁束を検出するために使用される電磁カツプリング16aおよび電磁カツプリング16bと、
ケーシング19を固定し、トルク管20が回転するように支持するベアリング18aおよびベアリング18bと、
からなる磁わい式トルク計であって、
電磁カツプリング16aおよび電磁カツプリング16bが、ベアリング18aおよびベアリング18bにそれぞれ隣接し、かつ磁わい管13の長手方向においてそれぞれが隣接するベアリング18aおよびベアリング18bよりも磁化コイル14および検出コイル15側に配置される、
磁わい式トルク計。」

キ 刊行物9(実願平2-99087号(実開平4-55530号)のマイクロフィルム)の記載事項
刊行物9には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

(a)「本考案はトルクセンサに関し、特に、自動車の動力舵取装置に適用するのに好適なトルクセンサに関する。」(明細書第2頁第14行?第16行)

(b)「第1図は、動力舵取り装置に適用されたトルクセンサを示す縦断面図である。略円筒形をした非磁性体で形成されたハウジング1に駆動軸2と被駆動軸3がそれぞれベアリング4、5により回転自在に支承されている。」(明細書第8頁第5行?第9行)

(c)「駆動軸2と被駆動軸3とはトーションバー7により弾性的に結合されている。
駆動軸2の中程には円周方向にコイル(2次巻線)12が巻回され、静止したハウジング1上の環状コイル(1次巻線)11との間で電磁的に結合し第1の回転トランス10を構成している。」(明細書第8頁第12行?第17行)

(d)「このコア部材21は励磁コイル22のコアとなる部材であり、隣接したコア部材21では互いに巻回方向が逆になるようにコイル22が巻回されている。4つの励磁コイル22は直列に接続され、第1の回転トランス10の2次巻線12に接続されている。」(明細書第9頁第6行?第11行)

(e)「同様に、被駆動軸3の中程には円周方向にコイル(2次巻線)32が巻回され、静止したハウジング1上の環状コイル(1次巻線)31との間で電磁的に結合し第2の回転トランス30を構成している。」(明細書第9頁第14行?第18行)

(f)「このコア部材41は検出コイル42のコアとなる部材であり、隣接したコア部材41では互いに巻回方向が逆になるようにコイル42が巻回されている。4つの検出コイル42は直列に接続され、第2の回転トランス30の2次巻線32に接続されている。」(明細書第10頁第6行?第11行)

(g)「第1の回転トランス10の1次巻線11に交流電圧Vinを印加する」(明細書第11頁第19行?第20行)

(h)「第2の回転トランス30の出力Voutはトルクの方向によって位相が反転し、トルクの大きさに従って出力電圧が変化する交流電圧信号になる。」(明細書第14頁第6行?第9行)

(i)第1図より、「第1の回転トランス10および第2の回転トランス30が、ベアリング4およびベアリング5にそれぞれ隣接し、かつトーションバー7により結合されている駆動軸2および被駆動軸3の長手方向においてそれぞれが隣接するベアリング4およびベアリング5よりも励磁コイル22および検出コイル42側に配置される」ことが見てとれる。

(ア)上記(a)より、刊行物9には、「トルクセンサ」が記載されている。

(イ)刊行物9の「駆動軸2と被駆動軸3とはトーションバー7により弾性的に結合されている」(明細書第8頁第12行および第13行)との記載より、刊行物9には、「トーションバー7により弾性的に結合されている駆動軸2および被駆動軸3」が記載されているといえる。

(ウ)刊行物9の「駆動軸2の中程には円周方向にコイル(2次巻線)12が巻回され、静止したハウジング1上の環状コイル(1次巻線)11との間で電磁的に結合し第1の回転トランス10を構成している」(明細書第8頁第14行?第17行)との記載より、刊行物9には、「駆動軸2の中程に円周方向に巻回された2次巻線12と静止したハウジング1上の1次巻線11との間で電磁的に結合し構成している第1の回転トランス10」が記載されているといえる。

(エ)刊行物9の「被駆動軸3の中程には円周方向にコイル(2次巻線)32が巻回され、静止したハウジング1上の環状コイル(1次巻線)31との間で電磁的に結合し第2の回転トランス30を構成している」(明細書第9頁第14行?第18行)との記載より、刊行物9には、「被駆動軸3の中程に円周方向に巻回された2次巻線32と静止したハウジング1上の1次巻線31との間で電磁的に結合し構成している第2の回転トランス30」が記載されているといえる。

(オ)刊行物9の「コア部材21は励磁コイル22のコアとなる部材であり、隣接したコア部材21では互いに巻回方向が逆になるようにコイル22が巻回されている。4つの励磁コイル22は直列に接続され、第1の回転トランス10の2次巻線12に接続されている」(明細書第9頁第6行?第11行)との記載より、刊行物9には、「コア部材21に巻回され、第1の回転トランス10の2次巻線12に接続されている励磁コイル22」が記載されているといえる。

(カ)刊行物9の「コア部材41は検出コイル42のコアとなる部材であり、隣接したコア部材41では互いに巻回方向が逆になるようにコイル42が巻回されている。4つの検出コイル42は直列に接続され、第2の回転トランス30の2次巻線32に接続されている」(明細書第10頁第6行?第11行)との記載より、刊行物9には、「コア部材41に巻回され、第2の回転トランス30の2次巻線32に接続されている検出コイル42」が記載されているといえる。

(キ)刊行物9の「略円筒形をした非磁性体で形成されたハウジング1に駆動軸2と被駆動軸3がそれぞれベアリング4、5により回転自在に支承されている」(明細書第8頁第6行?第9行)との記載より、刊行物9には、「ハウジング1に駆動軸2および被駆動軸3をそれぞれ回転自在に支承するベアリング4およびベアリング5」が記載されているといえる。

(ク)上記(g)より、刊行物9には、「第1の回転トランス10の1次巻線11に交流電圧Vinを印加する」ことが記載されている。

(ケ)上記(h)より、刊行物9には、「第2の回転トランス30の出力Voutはトルクの方向によって位相が反転し、トルクの大きさに従って出力電圧が変化する交流電圧信号になる」ことが記載されている。

(コ)上記(i)より、刊行物9には、「第1の回転トランス10および第2の回転トランス30が、ベアリング4およびベアリング5にそれぞれ隣接し、かつトーションバー7により結合されている駆動軸2および被駆動軸3の長手方向においてそれぞれが隣接するベアリング4およびベアリング5よりも励磁コイル22および検出コイル42側に配置される」ことが記載されている。

したがって、上記(ア)ないし(コ)を総合すると、刊行物9には以下の技術が記載されている(以下、「刊行物9に記載の技術」という。)。

「トーションバー7により弾性的に結合されている駆動軸2および被駆動軸3と、
駆動軸2の中程に円周方向に巻回された2次巻線12と静止したハウジング1上の1次巻線11との間で電磁的に結合し構成している第1の回転トランス10と、
被駆動軸3の中程に円周方向に巻回された2次巻線32と静止したハウジング1上の1次巻線31との間で電磁的に結合し構成している第2の回転トランス30と、
コア部材21に巻回され、第1の回転トランス10の2次巻線12に接続されている励磁コイル22と、
コア部材41に巻回され、第2の回転トランス30の2次巻線32に接続されている検出コイル42と、
ハウジング1に駆動軸2および被駆動軸3をそれぞれ回転自在に支承するベアリング4およびベアリング5と、
からなるトルクセンサであって、
第1の回転トランス10の1次巻線11に交流電圧Vinを印加し、
第2の回転トランス30の出力Voutはトルクの方向によって位相が反転し、トルクの大きさに従って出力電圧が変化する交流電圧信号になり、
第1の回転トランス10および第2の回転トランス30が、ベアリング4およびベアリング5にそれぞれ隣接し、かつトーションバー7により結合されている駆動軸2および被駆動軸3の長手方向においてそれぞれが隣接するベアリング4およびベアリング5よりも励磁コイル22および検出コイル42側に配置される、
トルクセンサ。」

(2)対比
ア 刊行物1を主引例とした場合
本願発明と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「出力軸10」、「ブリッジ回路13」、「歪ゲージ14」、「入力側ロータリトランス28」、「回転側コイル22」、「固定側コイル26」、「出力側ロータリトランス29」、「回転側コイル23」および「固定側コイル27」は、それぞれ、本願発明の「回転軸」、「ブリッジ回路」、「抵抗体」、「電力供給部」、「ロータ側電力供給構成部」、「ステータ側電力供給構成部」、「信号伝送部」、「ロータ側信号伝送構成部」および「ステータ側信号伝送構成部」に対応する。

(イ)引用発明1は、「出力軸10に生ずる歪により歪ゲージの抵抗値は変化し、歪量と比例して高くなるトルク値電圧が・・・(略)・・・検出値として出力される、トルク検出装置」であって、歪量と比例して高くなるトルク値電圧を検出値として出力するということは、トルクに応じた歪量をトルク値電圧に変換してトルクを測定することといえるから、「被測定対象である駆動部のトルクを測定するトルク変換器において、抵抗体を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、該変換した検出信号を外部に取り出すことにより前記回転軸で伝達されるトルクを測定する」本願発明と、「トルクを測定するトルク変換器において、抵抗体を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、該変換した検出信号を外部に取り出すことにより前記回転軸で伝達されるトルクを測定する」点で共通する。

(ウ)引用発明1の「出力軸10の歪量を検出すべく出力軸10の段部10aの円周4箇所に均等に貼着されてブリッジ回路13を構成する歪ゲージ14と」、「対向する回転側コイル22と固定側コイル26からなる入力側ロータリトランス28と、対向する回転側コイル23と固定側コイル27からなる出力側ロータリトランス29と」からなり、「あらかじめ歪ゲージ14によって構成されるブリッジ回路13には、入力側ロータリトランス28の固定側コイル26を介して回転側コイル22に非接触で伝搬される搬送波電圧が入力され」、「入力側ロータリトランス28と出力側ロータリトランス29とが、出力軸10の長手方向に沿って所定間隔隔てて配置され、歪みゲージ14が、入力側ロータリトランス28と出力側ロータリトランス29との間に配置され」る構成は、本願発明の「検出対象として特定された回転軸のトルクを測定するために、該トルク変換器への電力の供給を行う電力供給部と、前記回転軸の長手方向に沿って前記電力供給部と所定間隔隔てて配置された信号伝送部を有しており、かつブリッジ回路を構成したひずみ測定用の前記抵抗体が、前記電力供給部と前記信号伝送部との間に位置するように前記回転軸上に配置された」構成に相当する。

(エ)引用発明1の「出力軸10と一体に回動自在であり、各々ブリッジ回路13に接続する回転側コイル22および回転側コイル23と、アウターケース1に固着され、回転側コイル22および回転側コイル23と、それぞれ、空隙を介して対向する固定側コイル26および固定側コイル27と、対向する回転側コイル22と固定側コイル26からなる入力側ロータリトランス28と、対向する回転側コイル23と固定側コイル27からなる出力側ロータリトランス29と」からなる構成は、本願発明の「前記電力供給部と前記信号伝送部は、前記回転軸と一体的に回転するように取り付けられたロータ側電力供給構成部及びロータ側信号伝送構成部と、前記ロータ側電力供給構成部と前記ロータ側信号伝送構成部のそれぞれと所定の空隙を介して前記回転軸の回転に追従することなく前記トルク変換器に固定配置されているステータ側電力供給構成部及びステータ側信号伝送構成部とをそれぞれ有」する構成に相当する。

(オ)引用発明1の「アウターケース1」は、本願発明の「ハウジング」に相当し、引用発明1の「ベアリング15」と、本願発明の「軸受」とは、「前記回転軸をハウジングに回転可能に軸支する」点で共通する。

(カ)すると、本願発明と引用発明1とは、次の一致点および相違点を有する。

<一致点>
「トルクを測定するトルク変換器において、
抵抗体を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、該変換した検出信号を外部に取り出すことにより前記回転軸で伝達されるトルクを測定するトルク変換器であって、
検出対象として特定された回転軸のトルクを測定するために、該トルク変換器への電力の供給を行う電力供給部と、前記回転軸の長手方向に沿って前記電力供給部と所定間隔隔てて配置された信号伝送部を有しており、かつブリッジ回路を構成したひずみ測定用の前記抵抗体が、前記電力供給部と前記信号伝送部との間に位置するように前記回転軸上に配置されたトルク変換器であり、
前記トルク変換器の前記電力供給部と前記信号伝送部は、
前記回転軸と一体的に回転するように取り付けられたロータ側電力供給構成部及びロータ側信号伝送構成部と、
前記ロータ側電力供給構成部と前記ロータ側信号伝送構成部のそれぞれと所定の空隙を介して前記回転軸の回転に追従することなく前記トルク変換器に固定配置されているステータ側電力供給構成部及びステータ側信号伝送構成部とをそれぞれ有し、
前記トルク変換器は、前記回転軸をハウジングに回転可能に軸支する軸受を有する、
トルク変換器。」

<相違点>
【相違点1-1】
本願発明は、「被測定対象である駆動部の」トルクを測定するものであるのに対し、引用発明1にはそのような特定がない点。

【相違点1-2】
本願発明は、前記ロータ側信号伝送構成部から前記ステータ側信号伝送構成部への電気信号の伝達が、「前記ロータ側信号伝送構成部に設けられているコイルの電圧を周波数に変換して該周波数を介することより行われ」るのに対し、引用発明1にはそのような特定がない点。

【相違点1-3】
本願発明は、「一対の」軸受を有し、「前記電力供給部と前記信号伝送部は、前記一対の軸受にそれぞれ隣接し、かつ前記回転軸の長手方向においてそれぞれが隣接する前記各軸受よりも前記ブリッジ回路側に配置され」るのに対し、引用発明1にはそのような特定がない点。

【相違点1-4】
本願発明は、「前記ロータ側電力供給構成部及び前記ロータ側信号伝送構成部は磁気シールド部材を備えることなく」、かつ「前記ステータ側電力供給構成部は、ステータ側ボビンが珪素快削鋼を用いたステータ側ボビンケースで囲われている」のに対して、引用発明1は、「シールド部材」が「入力側ロータリトランス28および出力側ロータリトランス29を被包する」点。

イ 刊行物2を主引例とした場合
本願発明と引用発明2とを対比する。

(ア)引用発明2の「ブリツジ回路」、「トランスジユーサー17」、「変圧器18」、「巻線18a」、「巻線18b」、「変圧器19」、「巻線19a」および「巻線19b」は、それぞれ、本願発明の「ブリッジ回路」、「抵抗体」、「電力供給部」、「ロータ側電力供給構成部」、「ステータ側電力供給構成部」、「信号伝送部」、「ロータ側信号伝送構成部」および「ステータ側信号伝送構成部」に対応する。また、引用発明2の「シヤフト13」と、シヤフト13を被覆し、シヤフト13に固定される「円筒15」とを併せた構成は、本願発明の「回転軸」に対応する。

(イ)引用発明2は、「シヤフト13のねじれ歪を検知するトランスジユーサー17」が設けられ、「トランスジユーサー17の出力が変圧器19の2次巻線19bから得られ、この出力に基づいてシヤフト13のトルクに比例する直流電圧が発生する、トルク感知装置」であって、ねじれ歪を検知した出力に基づいてトルクに比例する直流電圧を発生することとは、トルクに応じたねじれ歪を直流電圧に変換してトルクを測定することといえるから、「被測定対象である駆動部のトルクを測定するトルク変換器において、抵抗体を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、該変換した検出信号を外部に取り出すことにより前記回転軸で伝達されるトルクを測定する」本願発明と、「トルクを測定するトルク変換器において、抵抗体を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、該変換した検出信号を外部に取り出すことにより前記回転軸で伝達されるトルクを測定する」点で共通する。

(ウ)引用発明2の「抵抗R1、R2、R3、R4がブリツジ回路に接続され、シヤフト13のねじれ歪を検知するトランスジユーサー17であって、円筒15の中央に取り付けられているトランスジユーサー17と」、「1次巻線である巻線18bと2次巻線である巻線18aからなる変圧器18と、1次巻線である巻線19aと2次巻線である巻線19bからなる変圧器19と」からなり、「変圧器18の1次巻線18bを励起するとトランスジユーサー17の出力が変圧器19の2次巻線19bから得られ」、「変圧器18および変圧器19は、トランスジユーサー17のそれぞれ反対の側に軸方向に間隔を有して設けられ」る構成は、本願発明の「検出対象として特定された回転軸のトルクを測定するために、該トルク変換器への電力の供給を行う電力供給部と、前記回転軸の長手方向に沿って前記電力供給部と所定間隔隔てて配置された信号伝送部を有しており、かつブリッジ回路を構成したひずみ測定用の前記抵抗体が、前記電力供給部と前記信号伝送部との間に位置するように前記回転軸上に配置された」構成に相当する。

(エ)引用発明2の「円筒15の端かつ上にあってシヤフト13と共に回転し、トランスジユーサー17に接続された巻線18aおよび巻線19aと、巻線18aおよび巻線19aのそれぞれと空隙を介して対向し、定置ケーシング14の上にある巻線18bおよび巻線19bと、1次巻線である巻線18bと2次巻線である巻線18aからなる変圧器18と、1次巻線である巻線19aと2次巻線である巻線19bからなる変圧器19と」からなる構成は、本願発明の「前記電力供給部と前記信号伝送部は、前記回転軸と一体的に回転するように取り付けられたロータ側電力供給構成部及びロータ側信号伝送構成部と、前記ロータ側電力供給構成部と前記ロータ側信号伝送構成部のそれぞれと所定の空隙を介して前記回転軸の回転に追従することなく前記トルク変換器に固定配置されているステータ側電力供給構成部及びステータ側信号伝送構成部とをそれぞれ有」する構成に相当する。

(オ)すると、本願発明と引用発明2とは、次の一致点および相違点を有する。

<一致点>
「トルクを測定するトルク変換器において、
抵抗体を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、該変換した検出信号を外部に取り出すことにより前記回転軸で伝達されるトルクを測定するトルク変換器であって、
検出対象として特定された回転軸のトルクを測定するために、該トルク変換器への電力の供給を行う電力供給部と、前記回転軸の長手方向に沿って前記電力供給部と所定間隔隔てて配置された信号伝送部を有しており、かつブリッジ回路を構成したひずみ測定用の前記抵抗体が、前記電力供給部と前記信号伝送部との間に位置するように前記回転軸上に配置されたトルク変換器であり、
前記トルク変換器の前記電力供給部と前記信号伝送部は、
前記回転軸と一体的に回転するように取り付けられたロータ側電力供給構成部及びロータ側信号伝送構成部と、
前記ロータ側電力供給構成部と前記ロータ側信号伝送構成部のそれぞれと所定の空隙を介して前記回転軸の回転に追従することなく前記トルク変換器に固定配置されているステータ側電力供給構成部及びステータ側信号伝送構成部とをそれぞれ有する、
トルク変換器。」

<相違点>
【相違点2-1】
本願発明は、「被測定対象である駆動部の」トルクを測定するものであるのに対し、引用発明2にはそのような特定がない点。

【相違点2-2】
本願発明は、前記ロータ側信号伝送構成部から前記ステータ側信号伝送構成部への電気信号の伝達が、「前記ロータ側信号伝送構成部に設けられているコイルの電圧を周波数に変換して該周波数を介することより行われ」るのに対し、引用発明2にはそのような特定がない点。

【相違点2-3】
本願発明は、「前記回転軸をハウジングに回転可能に軸支する一対の軸受を有し」、「前記電力供給部と前記信号伝送部は、前記一対の軸受にそれぞれ隣接し、かつ前記回転軸の長手方向においてそれぞれが隣接する前記各軸受よりも前記ブリッジ回路側に配置され」るのに対し、引用発明2にはそのような特定がない点。

【相違点2-4】
本願発明は、「前記ロータ側電力供給構成部及び前記ロータ側信号伝送構成部は磁気シールド部材を備えることなく」、かつ「前記ステータ側電力供給構成部は、ステータ側ボビンが珪素快削鋼を用いたステータ側ボビンケースで囲われている」のに対し、引用発明2は、「環状の溝を有するヨーク20a、ヨーク20b、ヨーク21a、ヨーク21b」が「巻線18a、巻線18b、巻線19a、巻線19bのそれぞれを中に収容する」点。

(3)判断
ア 刊行物1を主引例とした場合
(ア)相違点1-4について検討する。

(イ)引用発明1は、シールド部材が入力側ロータリトランス28および出力側ロータリトランス29を被包するものであり、また、引用発明1の当該構成は、「ロータリトランス28,29はシールド部材16,17,18a,18b,19によって・・・(略)・・・被包されてソレノイド11等からのノイズの混入を防止でき」(明細書第11頁第9行?第13行)るとの効果を奏するものとして開示されている。
そして、刊行物1には、本願発明の「前記ロータ側電力供給構成部及び前記ロータ側信号伝送構成部は磁気シールド部材を備えることなく」との構成に対応する、回転側コイル22および回転側コイル23にシールド部材を備えないことの示唆はなく、上記の効果に関する記載によれば、磁気シールド部材を備えないとすることに関して阻害要因があるといえる。
また、引用発明2、刊行物3ないし9に記載の技術は、いずれも、相違点1-4に係る本願発明の構成を開示するものではなく、当該構成は周知技術であるともいえない。

(ウ)上記(イ)より、相違点1-4に係る本願発明の構成は、当業者が引用発明1、引用発明2、刊行物3ないし9に記載された事項および周知技術から、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(エ)したがって、相違点1-1ないし1-3について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明1、引用発明2、刊行物3ないし9に記載された事項および周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

イ 刊行物2を主引例とした場合
(ア)相違点2-4について検討する。

(イ)本願の明細書には、本願発明について、「ステータ側ボビンケース213には珪素快削鋼が用いられているので、磁気シールド部材を構成する部分の大きさが小さくて済む。これによって、この磁気シールド部材の部分を、珪素鋼板を積層させて構成する代わりに珪素快削鋼で構成することができ、磁気シールドに関するコスト低減化を図り、ひいてはトルク変換器のコスト低減に貢献する」(【0045】)と、珪素快削鋼を用いたステータ側ボビンケース213が磁気シールド部材の一部を構成することが示唆されているのに対し、引用発明2は、ヨーク20a、ヨーク20b、ヨーク21a、ヨーク21bが、巻線18a、巻線18b、巻線19a、巻線19bを、それぞれ、中に収容するものであり、また、引用発明2の当該構成は、「溝は相互に開放しており、フエライトのような高導磁率を有し、有効な変圧器結合を提供する」(第3頁右下欄第9行?第11行)との効果を奏するものとして開示されていることや、磁気シールドの材料として高透磁率(高導磁率)の材料を用いることが一般的であることを踏まえれば、引用発明2の「ヨーク20a、ヨーク20b、ヨーク21a、ヨーク21b」もまた磁気シールドを構成すると考えられるものの、刊行物2には、本願発明の「前記ロータ側電力供給構成部及び前記ロータ側信号伝送構成部は磁気シールド部材を備えることなく」との構成に対応する、巻線18aおよび巻線19aがヨークを備えないことの示唆はなく、上記の効果に関する記載によれば、磁気シールド部材を備えないとすることに関して阻害要因があるといえる。
また、引用発明1、刊行物3ないし9に記載の技術は、いずれも、相違点2-4に係る本願発明の構成を開示するものではなく、当該構成は周知技術であるともいえない。

(ウ)上記(イ)より、相違点2-4に係る本願発明の構成は、当業者が引用発明2、引用発明1、刊行物3ないし9に記載された事項および周知技術から、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(エ)したがって、相違点2-1ないし2-3について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明2、引用発明1、刊行物3ないし9に記載された事項および周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(4)小括
上記「(3)判断」において示したとおり、本願発明は、当業者が引用発明1、引用発明2、刊行物3ないし9に記載された事項および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 平成28年10月6日付け当審拒絶理由について
1 平成28年10月6日付け当審拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



本願の明細書には、本願発明の上記課題を解決するための手段として、「ロータ側電力供給構成部およびロータ側信号伝送構成部が磁気シールド部材を備えないこと」が記載されているといえる。そして、本願発明の形態として、ロータ側に磁気シールド部材を備えたものに関する記載はなく、また自明でもない。
一方、平成28年3月4日付けの手続補正書によって補正された本願の請求項1には、磁気シールド部材と関連して、「前記ステータ側電力供給構成部は、ステータ側ボビンが珪素快削鋼を用いたステータ側ボビンケースで囲われている」と記載されているものの、「ロータ側電力供給構成部およびロータ側信号伝送構成部が磁気シールド部材を備えないこと」(すなわち、発明の課題を解決するための手段)は明示されておらず、本願の請求項1に係る発明には、本願発明の上記課題に反してロータ側電力供給構成部またはロータ側信号伝送構成部が磁気シールド部材を備えるものも含まれると解することができる。

したがって、請求項1には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2 平成28年10月6日付け当審拒絶理由の判断
平成28年10月20日付けの手続補正により、請求項1には、発明の詳細な説明に記載された「前記ロータ側電力供給構成部及び前記ロータ側信号伝送構成部は磁気シールド部材を備えることなく」との事項、すなわち、発明の課題を解決するための手段が反映された。
よって、平成28年10月6日付け当審拒絶理由は解消した。
そうすると、もはや、平成28年10月6日付け当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由および当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-25 
出願番号 特願2012-19355(P2012-19355)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01L)
P 1 8・ 121- WY (G01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 公文代 康祐  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 高橋 克
中塚 直樹
発明の名称 トルク変換器  
代理人 宮川 宏一  

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