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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1323972
審判番号 不服2016-7481  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-23 
確定日 2017-02-07 
事件の表示 特願2011-193972「サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開、特開2013- 54811、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成23年9月6日の出願であって,平成27年4月15日付けで拒絶理由が通知され,同年6月15日付けで意見書とともに手続補正書が提出され,平成28年2月24日付けで拒絶査定され,同年5月23日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1から18に係る発明は,平成27年6月15日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1から18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(請求人が附した下線は省略した。)

なお,以下において,請求項に係る発明を,請求項の番号に従って,「本願第1発明」などといい,「本願第1発明」から「本願第18発明」を併せて「本願発明」という。

【請求項1】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、
前記配線層が、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、
前記カバー層が、前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有し、
前記第一配線層および前記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分に、前記カバー層切れ込み部が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分の配線間距離をD2とした場合、D2の値は、130μm?400μmの範囲内であることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、絶縁層切れ込み部を有することを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
前記金属支持基板が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
前記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、前記第二配線層がその他方であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項5】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、前記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、前記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、前記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板であって、
前記下部配線層および前記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有し、
前記カバー層が、前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有し、
前記第一配線層および前記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分に、前記カバー層切れ込み部が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分の配線間距離をD2とした場合、D2の値は、130μm?400μmの範囲内であることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項6】
前記ミドル絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有することを特徴とする請求項5に記載のサスペンション用基板。
【請求項7】
前記ベース絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ベース絶縁層切れ込み部を有することを特徴とする請求項6に記載のサスペンション用基板。
【請求項8】
前記ミドル絶縁層切れ込み部および前記ベース絶縁層切れ込み部において、前記ミドル絶縁層および前記ベース絶縁層の端面が一致していることを特徴とする請求項7に記載のサスペンション用基板。
【請求項9】
前記金属支持基板が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、金属支持基板切れ込み部を有することを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項10】
前記第一配線層が、前記下部配線層および前記上部配線層の両方、前記下部配線層のみ、または、前記上部配線層のみから構成されていることを特徴とする請求項5から請求項9までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項11】
前記第二配線層が、前記下部配線層および前記上部配線層の両方、前記下部配線層のみ、または、前記上部配線層のみから構成されていることを特徴とする請求項5から請求項10までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項12】
前記第一配線層が書込用配線層および読取用配線層の一方であり、前記第二配線層がその他方であることを特徴とする請求項5から請求項11までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれかの請求項に記載のサスペンション用基板と、
前記サスペンション用基板の前記金属支持基板側の表面に設けられたロードビームと、
を有することを特徴とするサスペンション。
【請求項14】
請求項13に記載のサスペンションと、前記サスペンションに実装された素子と、を有することを特徴とする素子付サスペンション。
【請求項15】
請求項14に記載の素子付サスペンションを有することを特徴とするハードディスクドライブ。
【請求項16】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された配線層と、前記配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、
前記配線層が隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、前記配線層を形成する配線層形成工程と、
前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する前記カバー層を形成するカバー層形成工程と、
を有し、
前記第一配線層および前記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分に、前記カバー層切れ込み部が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分の配線間距離をD2とした場合、D2の値は、130μm?400μmの範囲内であることを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項17】
金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成されたベース絶縁層と、前記ベース絶縁層上に形成された下部配線層と、前記下部配線層上に形成されたミドル絶縁層と、前記ミドル絶縁層上に形成された上部配線層と、前記上部配線層を覆うように形成されたカバー層とを有するサスペンション用基板の製造方法であって、
前記下部配線層および前記上部配線層の少なくとも一方が、平面視上、隣り合う第一配線層および第二配線層を有するように、前記下部配線層および前記上部配線層を形成する配線層形成工程と、
前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有する前記カバー層形成するカバー層形成工程と、
を有し、
前記第一配線層および前記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分に、前記カバー層切れ込み部が形成され、
前記局所的に配線間距離が広い部分の配線間距離をD2とした場合、D2の値は、130μm?400μmの範囲内であることを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項18】
前記ミドル絶縁層が、前記カバー層切れ込み部に対応した位置に、ミドル絶縁層切れ込み部を有し、
前記ミドル絶縁層切れ込み部から露出する前記ベース絶縁層をエッチングすることにより、ベース絶縁層切れ込み部を有する前記ベース絶縁層を形成するベース絶縁層形成工程を有することを特徴とする請求項17に記載のサスペンション用基板の製造方法。


第3 原査定の理由の概要

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1に対して,引用文献等:1.,4.
・請求項2,3,4に対して,引用文献等:1.,3.,4.
・請求項5に対して,引用文献等:1.,2.,3.,4.
・請求項6から12に対して,引用文献等:1.,2.,3.,4.
・請求項13から15に対して,引用文献等:(引用する請求項に従う)
・請求項16に対して,引用文献等:1.,4.
・請求項17に対して,引用文献等:1.,2.,3.,4.
・請求項18に対して,引用文献等:(引用する請求項に従う)

〈引用文献等一覧〉
1.特開2006-260733号公報
2.特開平9-22570号公報
3.特開2002-237013号公報
4.特開昭61-131585号公報


第4 当審の判断

1.引用文献1及び記載事項
原査定の理由で「引用文献1」として引用された特開2006-260733号公報(平成18年9月28日公開)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1) 記載事項
[絶縁層]
図2は、配線パターンを有したフレキシャの平面図、図3は、図2のIII部拡大平面図、図4は、図3のIV-IV線矢視断面図である。
【0019】
図2?図4のように、前記配線パターン19は、書き込み用の配線(Write1,Write2)29及び読み取り用の配線(Read1,Read2)31からなっている。書き込み用の配線29及び読み取り用の配線31は、フレキシャ7の基材18上に可撓性樹脂のベース絶縁層35を介して配設されている。
【0020】
前記ベース絶縁層35は、可撓性樹脂としてポリイミドが用いられ、厚さ10μm程度に形成されている。ベース絶縁層35の表面抵抗率は、1014Ω/□程度であり、高い抵抗値で絶縁性能を備えている。ベース絶縁層35には、適所に孔部37が設けられ、フレキシャ7の表面39が孔部37から露出している。
【0021】
前記書き込み用の配線29及び読み取り用の配線31は、一部を除き、前記ベース絶縁層35に対してカバー絶縁層41,43で覆われている。カバー絶縁層41,43は、微導電可撓性樹脂で形成され、ベース絶縁層35に対する積層方向での厚みが、20μm程度に形成されている。カバー絶縁層41は、書き込み用の配線29の表面をカバーし、カバー絶縁層43は、読み取り用の配線31の表面をカバーし、配線29,31をそれぞれ外力などから保護している。カバー絶縁層41,43の表面抵抗率は、104?1011Ω/□に設定されて回路動作上は影響を受け難い高い抵抗であり、静電気に対しては十分な導電性を持っている。
【0022】
前記カバー絶縁層41,43には、前記孔部37側において延設部45,47が設けられ、フレキシャ7の基材18の表面39に接地されている。

(2) 図面記載事項
図2として次の記載がある。

図3として次の記載がある。

図4として次の記載がある。

2.対比及び検討
(1) 引用文献1【0019】には「配線パターン19は、書き込み用の配線(Write1,Write2)29及び読み取り用の配線(Read1,Read2)31からなっている」との記載があり,更に引用文献1【0021】には「前記書き込み用の配線29及び読み取り用の配線31は、一部を除き、前記ベース絶縁層35に対してカバー絶縁層41,43で覆われている」及び「カバー絶縁層41は、書き込み用の配線29の表面をカバーし、カバー絶縁層43は、読み取り用の配線31の表面をカバーし」との記載がある。
これらの記載及び引用文献1の図4の記載をみると,引用文献1に記載された「カバー層41」及び「カーバ-層43」それぞれが,本願第1発明における「カバー層」に相当するというべきである。
そうすると,引用文献1においては,「カバー層41」がカバーする「書き込み用の配線29」の「Write1」及び「Write2」が,それぞれ本願第1発明における「第一配線層」及び「第二配線層」に相当するということができる。また,同様に,「カバー層43」がカバーする「読み取り用の配線31」の「Read1」及び「Read2」が,それぞれ本願第1発明における「第一配線層」及び「第二配線層」に相当するということもできる。

(2) 上記(1)に述べたことを踏まえると,引用文献1記載の「書き込み用の配線29」の「Write1」及び「Write2」の間に「局所的に配線間距離が広い部分が形成される」ことも,「カバー層41」に「切れ込み部が形成される」ことも記載がない。
一方,引用文献1記載の「読み取り用の配線31」の「Read1」及び「Read2」の間についても,「カバー層43」についても同様である。

(3) 以上のことから,引用文献1には,本願第1発明を特定する事項である「前記カバー層が、前記第一配線層および前記第二配線層の間に長手方向に沿って形成されたカバー層切れ込み部を有し」との事項についても,「前記第一配線層および前記第二配線層の間には、局所的に配線間距離が広い部分が形成され」との事項についても,「前記局所的に配線間距離が広い部分に、前記カバー層切れ込み部が形成され」との事項についても記載も示唆もないといわざるを得ない。

したがって,引用文献1における記載事項から導き得る発明(以下「引用文献1記載発明」という。)に基づいて,本願第1発明を,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

また,本願第1発明のように構成したことによる効果について,引用文献1記載発明から予測し得るということはできない。

(4) 「本願第2発明」から「本願第4発明」については,「本願第1発明」を直接的若しくは間接的に引用するものであるから,引用文献1記載発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

また,本願第5発明,本願第16発明及び本願第17発明についても,上記(1)から(3)に述べたのと同様に,引用文献1記載発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

そして,本願第6発明から本願第15発明は,本願第5発明を直接的若しくは間接的に引用するものであり,本願第18発明は,本願第17発明を引用する発明であるから,本願第6発明から本願第15発明,本願第18発明を,引用文献1記載発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

3.まとめ
したがって,本願発明が,引用文献1記載発明を基に,特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるということはできない。


第5 むすび

以上のとおりであるから,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
また,ほかに本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2011-193972(P2011-193972)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 近藤 聡
水野 恵雄
発明の名称 サスペンション用基板、サスペンション、素子付サスペンション、ハードディスクドライブ、およびサスペンション用基板の製造方法  
代理人 山下 昭彦  

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