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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1323996 |
審判番号 | 不服2016-3559 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-08 |
確定日 | 2017-01-19 |
事件の表示 | 特願2014-131002「シート搬送装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月12日出願公開、特開2015- 27916〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年6月26日(優先権主張平成25年6月28日)の出願であって、原審において平成26年9月30日付け、平成27年10月19日付けで手続補正がなされ、同年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年3月8日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、上記平成27年10月19日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】 シートを支持する支持部と、 前記支持部に支持されているシートの端部に当接する当接部を有し、所定方向に移動することによって前記当接部に当接しているシートを搬送するシート搬送部と、 シートの厚さ方向において移動自在に前記シート搬送部に設けられ、前記当接部がシートの端部と当接してシートを搬送する際に、前記支持部へシートを押す押し部とを具備し、 前記押し部は、前記所定方向の上流にいく程、前記支持部に近づくように傾いた傾斜部と、前記当接部に接したシートの面を前記当接部から離れた位置で前記支持部へ押すように付勢された接触部とを有し、 前記接触部は、シートとの間の摩擦係数が前記傾斜部よりも高い ことを特徴とするシート搬送装置。」 第3 引用刊行物 原査定の拒絶理由で引用された、本願の優先日前である平成18年6月15日に頒布された刊行物である特開2006-151519号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は審決で付した。以下同じ。) 1 「【請求項1】 滑落した用紙を収容可能なシート収容部と、該シート収容部内を通過可能に設けられ、通過する際には該シート収容部に位置する複数のシートの端縁を載置した状態で掬い上げることにより該シート収容部から他の位置に向けてシートを移送可能な移送手段を備えたシート処理装置において、 前記移送手段は、載置したシート群をその厚さ方向で一方側に纏めた状態を維持しながらシートを移送する構成であることを特徴とするシート処理装置。 … 【請求項8】 請求項1乃至7のうちの一つに記載のシート処理装置において、 前記移送手段には、前記シートと対向して当接可能な可撓性部材が設けられていることを特徴とするシート処理装置。 … 【請求項10】 請求項8または9記載のシート処理装置において、 前記可撓性部材は、シートの厚みに応じて弾性変形することによりシートの導入を可能にすることを特徴とするシート処理装置。 【請求項11】 請求項8乃至10のうちの一つに記載のシート処理装置において、 前記可撓性部材の基端は前記移送手段におけるシートと対向する壁面に設けられたガイド部に一体化されていることを特徴とするシート処理装置。」 2 「【0002】 複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体に担持されているトナー像などの可視像を記録用紙などの記録媒体(以下、便宜上、記録シートと表現する)に転写することで画像出力が得られるようになっている。」 3 「【0052】 スティプル処理トレイFでは、ジョブの切れ目、すなわち、シート束の最終紙から次のシート束先頭紙までの間で、図15に示す制御手段350からのスティプル信号により端面綴じスティプラS1が駆動され、綴じ処理が行われる。 綴じ処理が行われたシート束は、ただちにシートの載置面を備えた放出爪52aを有してシートの移送手段に相当する放出ベルト52によりシフト排紙ローラ6へ送られ、受取り位置にセットされているシフトトレイ202に排出される。 【0053】 図6に示すように、放出爪52aは、放出ベルトホームポジション(HP)センサ311によりそのホームポジションを検知されるようになっており、この放出ベルトHPセンサ311は放出ベルト52に設けられた放出爪52aによりオン・オフする。 放出ベルト52の外周上には、対向する位置に2つの放出爪52aが配置されており、スティプル処理トレイFに収容されたシート束を交互に移動搬送する。また必要に応じて放出ベルト52を逆回転し、これからシート束を移動するように待機している放出爪52aと対向側の放出爪(便宜上、図1において符号52a’で示す)の背面で、スティプル処理トレイFに収容されたシート束の搬送方向先端を揃えても良い。」 4 「【0103】 以上のような排出モードを実行するシート後処理装置において、本実施例の特徴を図23乃至25を用いて説明する。 本実施例の特徴部は、移送手段に相当する放出ベルト52とこれに設けてある放出爪52aとの構成にあり、放出爪52aは、シート束を厚さ方向で纏めることにより端縁が不揃いとなるのを防止するようになっている。 【0104】 図23(A)において、放出ベルト52に設けられている放出爪52aは、シートを載置する載置面52a1と、載置面52a1からシートの厚さ方向一端で放出ベルト52側に位置する係止片52a2と、シートとほぼ平行する対向面52a3と、対向面52a3の一部に設けられた屈曲部P(図23(C)参照)を介して先端部に向けて拡開するガイド部52a4とが設けられて構成されている。 【0105】 放出爪52aにおける各部は、シートの厚さ方向の寸法が後端フェンス51に対して、次の関係とされている。 載置面52a1における対向面52a3の基部が固定されている位置までで実際のシートが載置される範囲でのシートの厚さ方向の寸法をH1とし、後端フェンス51でのシート載置面でのシートの厚さ方向の寸法をH2としたとき、 H1<H2 とされている。 【0106】 一方、図23(A)および図24に示すように、ガイド部先端までのシートの厚さ方向での寸法をH3として加えた場合には、 H1<H2<H3 とされている。上述した寸法H1は、スティプル処理トレイFにおいて収容可能なシートの厚みに1?2mm程度余裕を持たせた寸法とされている。 【0107】 このような構成においては、放出爪52aが放出ベルト52に連動して後端フェンス51に収容されているシート束を掬い上げる際、ガイド部52a4により載置面52a1に向けて集約されることになり、後端フェンス51内で端部がばらけていたシート群は係止片52a2側に向けてシートの厚さ方向で一方向に纏められることになる。 【0108】 係止片52a2側に纏められるシート群は、放出爪52aの載置面52a1に端部が受け止められると、載置面52a1がシートの厚さ方向で後端フェンス51の寸法よりも狭くされ、さらにその寸法の位置にシートと平行する対向面52a3が設けてあるので、厚さ方向に押さえられて端部が纏められた状態を維持することになる。つまり、シート群は端部がガイド部52a4を滑動して対向面52a3との間に収容されることになるので、図24(B)に示すように、ガイド部52a0のみを備えた放出爪(便宜上、符号52Pで示す)と違って、ガイド部52a0を滑動した端部が滑動し終わった位置でばらけることがない。 【0109】 図23(C)に示す構成は、対向面52a3をシートに平行する面とするものの、載置面52a1に向けてシートの端部を導入しやすいように多少の傾斜角を設定した場合を示している。なお、図23(C)において符号52bは、放出爪52aが下降した際にシートの上端を揃えるための誘導片を示している。 【0110】 このような構成によれば、後端フェンス51内で端部がばらけて不揃いとなっている状態にあっても、放出爪52によりシート群が掬い上げられるとシートの端部が厚さ方向で一方向に纏められるとともにその方向に押し付けられて纏められた状態を維持しながら移送されることになる。これにより、端部がばらけるのを防止して、中折り製本が行われた際の端部の不揃いが顕著となるのを防止することができる。特に、ガイド部52a4により載置面に向けて集約されるシートの端部は、掬い上げられることにより載置面に載置された時点で厚さ方向に纏められるので、放出ベルト52の移動のみで自動的に端部揃えが行われ、特別な揃え機構などを要しないで済む。 【0111】 次に、本実施例での他の特徴について図25を用いて説明する。 他の特徴は、シートの厚さ方向での纏め処理をより確実かつ効率的に行わせる構成にある。 図25において、放出爪52aには、シートに対向して当接可能な可撓性部材100が設けられている。 可撓性部材100は、ポリエステルシートなどの低摩擦係数で、かつ弾性復元力が得られる部材が用いられ、基部がガイド部52a4に取り付けられてシートが導入位置に向け進入した状態を維持できるように先端部が載置面52a1近傍に張り出している。 【0112】 可撓性部材100は、ガイド部52a4に一体化されている部分から載置面52a1側に張り出す先端までの長さが、枚数に応じて弾性変形量が異なるように次の条件に設定されている。 通常、少数枚のシートを対象とする場合には、図25(A)において符号Lで示すように、対向するシートに当接して対向面52a3側へのシート端部の変位を防止する寸法とされている。つまり、載置面52a1の寸法H1よりも厚さが薄くなる枚数である場合にはシートに当接してこれを押圧することにより端部がばらけるのを防止し、このときの先端部と載置面52a1との間の隙間がS0となる長さに設定されて先端部が載置面52a1側で対向面52a3から張り出している。 【0113】 また、上述した可撓性部材100の長さは、次の条件も満たすようになっている。 載置面52a1に収容されたシートが載置面52a1の寸法H1に近い厚さ(図25(B)において符号L+βで示す厚さ)である場合には、可撓性部材100が撓み変形し、その変形時の揺動半径として、先端を載置面52a1に干渉させずにシートの導入を妨げない寸法(図25(B)中、符号S0-αで示す隙間ができる状態)にしている。これにより、挿入されるシートは、ガイド部52a4と平行している可撓性部材100の表面を滑動して端部が載置面52a1に収容され、厚さに関係なく撓み変形あるいは初期状態であってもシートに対する押圧力を付与することができるので、載置面52a1に収容されたシートを厚さ方向で係止片52a2側に纏めることができ、シート端部がばらけるのを防止することになる。」 5 上記4【0103】より、移送手段は放出ベルトとこれに設けてある放出爪から構成されているといえる。 6 上記4及び【図25】より、放出爪は、載置面、係止片、壁面である対向面、壁面に設けられたガイド部、及び可撓性部材から構成されていることが看取できる。 上記1乃至6の記載から、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「滑落した用紙を収容可能なシート収容部と、該シート収容部内を通過可能に設けられ、通過する際には該シート収容部に位置する複数のシートの端縁を載置した状態で掬い上げることにより該シート収容部から他の位置に向けてシートを移送可能な移送手段を備えたシート処理装置において、 前記移送手段は、載置したシート群をその厚さ方向で一方側に纏めた状態を維持しながらシートを移送する構成であり、 前記移送手段には、前記シートと対向して当接可能な可撓性部材が設けられ、 前記可撓性部材は、シートの厚みに応じて弾性変形することによりシートの導入を可能にし、 前記可撓性部材の基端は前記移送手段におけるシートと対向する壁面に設けられたガイド部に一体化され、 移送手段は、放出ベルトとこれに設けてある放出爪から構成され、 放出爪は、載置面、放出ベルト側に位置する係止片、壁面である対向面、壁面に設けられたガイド部、及び可撓性部材から構成され、 係止片側に纏められるシート群は、放出爪の載置面に端部が受け止められ、 放出爪には、シートに対向して当接可能な可撓性部材が設けられ、 可撓性部材は、ポリエステルシートなどの低摩擦係数で、かつ弾性復元力が得られる部材が用いられ、基部がガイド部に取り付けられてシートが導入位置に向け進入した状態を維持できるように先端部が載置面近傍に張り出し、 可撓性部材は、ガイド部に一体化されている部分から載置面側に張り出す先端までの長さが、枚数に応じて弾性変形量が異なるように次の条件に設定され、 載置面の寸法よりも厚さが薄くなる枚数である場合にはシートに当接してこれを押圧することにより端部がばらけるのを防止し、このときの先端部と載置面との間の隙間がS0となる長さに設定されて先端部が載置面側で対向面から張り出しているシート処理装置。」 第4 対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 1 後者の「用紙」、及び「シート」は、前者の「シート」に相当する。 2 後者の「係止片」は、放出爪の構成要素であって、シート群が「係止片」側に纏められるものであるから、前者のシートを支持する「支持部」に相当する。 3 後者の「載置面」は、放出ベルト側に位置する係止片側に纏められるシート群を、その端部で受け止めるものであるから、前者の「支持部に支持されているシートの端部に当接する当接部」に相当する。 4 後者の「放出爪」は、載置面を構成要素とし、放出ベルトに設けられ、シートを移送する移送手段を構成するから、所定の方向に移動することは明らかであって、前者の「所定の方向に移動することによって当接部に当接しているシートを搬送するシート搬送部」に相当する。 5 後者の「可撓性部材」は、シートと対向して当接可能であるから、前者の「支持部へシートを押す押し部」に相当し、移送手段に設けられるものであるから、当接部がシートの端部と当接してシートを搬送する際に、支持部へシートを押すといえる。また、後者の「可撓性部材」は、シートの厚みに応じて弾性変形し、載置面側に張り出す先端までの長さが、枚数に応じて弾性変形量が異なるものであるから、「シートの厚さ方向において移動自在」といえ、また、後者の「可撓性部材」は、シートの厚みに応じて弾性変形することによりシートの導入を可能にし、基部がガイド部に取り付けられてシートが導入位置に向け進入した状態を維持できるように先端部が載置面近傍に張り出し、ガイド部に一体化されている部分から載置面側に張り出す先端までの長さが、枚数に応じて弾性変形量が異なるように次の条件に設定され、載置面の寸法よりも厚さが薄くなる枚数である場合にはシートに当接してこれを押圧することにより端部がばらけるのを防止し、このときの先端部と載置面との間の隙間がS0となる長さに設定されて先端部が載置面側で対向面から張り出しているものであるから、シートの厚さ方向において移動自在にシート搬送部に設けられ、所定方向の上流にいく程、支持部に近づくように傾いた傾斜部と、当接部に接したシートの面を当接部から離れた位置で支持部へ押すように付勢された接触部とを有するといえる。 したがって、両者は、 「シートを支持する支持部と、 前記支持部に支持されているシートの端部に当接する当接部を有し、所定方向に移動することによって前記当接部に当接しているシートを搬送するシート搬送部と、 シートの厚さ方向において移動自在に前記シート搬送部に設けられ、前記当接部がシートの端部と当接してシートを搬送する際に、前記支持部へシートを押す押し部とを具備し、 前記押し部は、前記所定方向の上流にいく程、前記支持部に近づくように傾いた傾斜部と、前記当接部に接したシートの面を前記当接部から離れた位置で前記支持部へ押すように付勢された接触部とを有するシート搬送装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本願発明の「接触部」が、「シートとの間の摩擦係数が傾斜部よりも高い」のに対し、引用発明は、その点が不明である点。 第5 判断 上記相違点について以下検討する。 本願明細書の【0072】には、 「このように先端レバー517の先端部に摩擦係数の高いゴム部材518を設けることで、積載トレイ114付近で排出爪113が減速、停止した際にシート自身の慣性力による飛び出しを防ぐことができる。なお、先端レバー517の傾斜部の摩擦係数は、ゴム部材518の摩擦係数よりも小さくなっている。」と記載され、また、【0093】には、 「このように先端レバー530の先端部530bの摩擦係数を高くすることにより、『積載トレイ114付近で排出爪113が減速、停止した際にシート自身の慣性力による飛び出しを防ぐことができる。』」 と記載されているように、先端部530b、すなわち、接触部の摩擦係数を高くすることの効果が記載されいている。 しかしながら、シートと接触している接触部を、「積載トレイ114付近で排出爪113が減速、停止した際にシート自身の慣性力による飛び出しを防ぐことができる。」とすることは、当然であるし、また、接触部がシートとの間の摩擦係数が傾斜部よりも高いとすることが上記の効果を必ずしも奏するものではない。 以上を踏まえると、引用発明において、接触部のシートとの間の摩擦係数を傾斜部よりも高く設定し、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明から、当業者が予測しうる範囲内のものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容 易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-11-16 |
結審通知日 | 2016-11-22 |
審決日 | 2016-12-06 |
出願番号 | 特願2014-131002(P2014-131002) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤井 眞吾 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 藤本 義仁 |
発明の名称 | シート搬送装置及び画像形成装置 |
代理人 | 特許業務法人中川国際特許事務所 |