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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1324070
審判番号 不服2016-1528  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-02 
確定日 2017-02-07 
事件の表示 特願2013-121318「ゲーム制御装置、ゲームシステム、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月18日出願公開、特開2014-236879、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成25年6月7日の出願であって、平成27年2月18日付けで拒絶理由が通知され、同年4月27日に意見書及び補正書が提出され、同年6月25日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年8月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月27日付けで同年8月27日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに、拒絶の査定がなされた。これに対し、平成28年2月2日に拒絶査定不服審判請求がさされると同時に、同日付けで手続補正書が提出され、同年9月29日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は、平成28年12月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものであって、以下のとおりのものである。

【請求項1】
ユーザの操作に従ってユーザキャラクタが動作するゲームを実行するゲーム制御装置において、
方向指示操作が前記ユーザによって行われた場合に、前記方向指示操作によって指示された方向の、前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向を取得する方向取得手段と、
前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向の類型と、複数種類のフェイント動作データと、を関連付けて記憶する手段に記憶されるフェイント動作データのうちから、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを選択する動作選択手段と、
前記動作選択手段によって選択されたフェイント動作データに応じたフェイント動作を前記ユーザキャラクタに行わせるユーザキャラクタ制御手段と、
を含み、
前記ゲームは、移動体を用いて行われるゲームであり、
前記動作選択手段は、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを、前記移動体の位置に基づいて選択する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のゲーム制御装置において、
前記動作選択手段は、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを、前記移動体と前記ユーザキャラクタとの位置関係に基づいて選択する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のゲーム制御装置において、
前記動作選択手段は、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを、前記移動体と、前記ユーザキャラクタに対立するゲームキャラクタである敵キャラクタと、の位置関係に基づいて選択する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のゲーム制御装置において、
前記ユーザキャラクタ制御手段は、前記動作選択手段によって選択されたフェイント動作データを再生することによって、前記ユーザキャラクタに前記フェイント動作を行わせ、
前記ユーザキャラクタ制御手段は、前記動作選択手段によって選択されたフェイント動作データの再生速度を、前記ユーザキャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶される前記ユーザキャラクタの状態に関する状態パラメータ又は前記ユーザキャラクタの前記能力パラメータに基づいて設定する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項5】
ユーザの操作に従ってユーザキャラクタが動作するゲームを実行するゲーム制御装置において、
方向指示操作が前記ユーザによって行われた場合に、前記方向指示操作によって指示された方向の、前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向を取得する方向取得手段と、
前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向の類型と、複数種類の動作データと、を関連付けて記憶する手段に記憶される動作データのうちから、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられた動作データのいずれかを選択する動作選択手段と、
前記動作選択手段によって選択された動作データに応じた動作を前記ユーザキャラクタに行わせるユーザキャラクタ制御手段と、
を含み、
前記動作選択手段は、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられた動作データのいずれかを、前記ユーザキャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶される前記ユーザキャラクタの能力に関する能力パラメータに基づいて選択する手段を含み、
前記ユーザキャラクタ制御手段は、前記動作選択手段によって選択された動作データを再生することによって、前記ユーザキャラクタに前記動作を行わせ、
前記ユーザキャラクタ制御手段は、前記動作選択手段によって選択された動作データの再生速度を、前記ユーザキャラクタと対立するゲームキャラクタである敵キャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶される前記敵キャラクタの状態に関する状態パラメータ又は前記敵キャラクタの能力に関する能力パラメータに基づいて設定する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載のゲーム制御装置において、
前記ユーザキャラクタによって前記フェイント動作が行われる場合に、前記ユーザキャラクタの前記フェイント動作に反応する動作である反応動作を、前記ユーザキャラクタと対立するゲームキャラクタである敵キャラクタに行わせるか否かを所定の情報に基づいて決定する決定手段と、
前記決定手段の決定結果に応じて、前記敵キャラクタに前記反応動作を行わせる敵キャラクタ制御手段と、を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載のゲーム制御装置において、
前記決定手段は、前記ユーザキャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶される前記ユーザキャラクタの状態に関する状態パラメータ又は前記ユーザの前記能力パラメータと、前記敵キャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶される前記敵キャラクタの状態に関する状態パラメータ又は前記敵キャラクタの能力に関する能力パラメータと、の少なくとも一方に基づいて、前記敵キャラクタに前記反応動作を行わせるか否かを決定する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のゲーム制御装置において、
前記決定手段は、前記ユーザキャラクタの前記状態パラメータ又は前記能力パラメータと、前記敵キャラクタの前記状態パラメータ又は前記能力パラメータと、の比較結果に基づいて、前記敵キャラクタに前記反応動作を行わせるか否かを決定する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項9】
請求項6に記載のゲーム制御装置において、
前記所定の情報は、前記ゲームの現在状況を示す情報であり、
前記決定手段は、前記ゲームの現在状況に基づいて、前記敵キャラクタに前記反応動作を行わせるか否かを決定する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載のゲーム制御装置において、
前記ゲームの現在状況を示す情報は、前記ユーザキャラクタと前記敵キャラクタとの少なくとも一方の移動速度であり、
前記決定手段は、前記ユーザキャラクタと前記敵キャラクタとの少なくとも一方の移動速度に基づいて、前記敵キャラクタに前記反応動作を行わせるか否かを決定する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項11】
請求項9に記載のゲーム制御装置において、
前記ゲームの現在状況を示す情報は、前記ユーザキャラクタと前記敵キャラクタとの少なくとも一方の位置であり、
前記決定手段は、前記ユーザキャラクタと前記敵キャラクタとの少なくとも一方の位置に基づいて、前記敵キャラクタに前記反応動作を行わせるか否かを決定する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至4,6乃至11のいずれかに記載のゲーム制御装置において、
第2の方向指示操作が行われた場合に、前記第2の方向指示操作によって指示された方向への移動動作を前記ユーザキャラクタに行わせる手段を含み、
前記方向取得手段は、前記方向指示操作である第1の方向指示操作が前記ユーザによって行われた場合に、前記第1の方向指示操作によって指示された方向の、前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向を取得し、
前記動作選択手段は、前記複数種類のフェイント動作データのうちから、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを選択し、
前記ユーザキャラクタ制御手段は、前記動作選択手段によって選択されたフェイント動作データに応じたフェイント動作を前記ユーザキャラクタに行わせる手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項13】
ユーザの操作に従ってユーザキャラクタが動作するゲームを実行するゲームシステムにおいて、
方向指示操作が前記ユーザによって行われた場合に、前記方向指示操作によって指示された方向の、前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向を取得する方向取得手段と、
前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向の類型と、複数種類のフェイント動作データと、を関連付けて記憶する手段に記憶されるフェイント動作データのうちから、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを選択する動作選択手段と、
前記動作選択手段によって選択されたフェイント動作データに応じたフェイント動作を前記ユーザキャラクタに行わせるユーザキャラクタ制御手段と、
を含み、
前記ゲームは、移動体を用いて行われるゲームであり、
前記動作選択手段は、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを、前記移動体の位置に基づいて選択する手段を含む、
ことを特徴とするゲームシステム。
【請求項14】
ユーザの操作に従ってユーザキャラクタが動作するゲームを実行するゲーム制御装置において、
方向指示操作が前記ユーザによって行われた場合に、前記方向指示操作によって指示された方向の、前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向を取得する方向取得手段と、
前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向の類型と、複数種類の動作データと、を関連付けて記憶する手段に記憶される動作データのうちから、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられた動作データのいずれかを選択する動作選択手段と、
前記動作選択手段によって選択された動作データに応じた動作を前記ユーザキャラクタに行わせるユーザキャラクタ制御手段と、
を含み、
前記動作選択手段は、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられた動作データのいずれかを、前記ユーザキャラクタと対立するゲームキャラクタである敵キャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶される前記敵キャラクタの能力に関する能力パラメータに基づいて選択する手段を含む、
ことを特徴とするゲーム制御装置。
【請求項15】
ユーザの操作に従ってユーザキャラクタが動作するゲームを実行するゲームシステムにおいて、
方向指示操作が前記ユーザによって行われた場合に、前記方向指示操作によって指示された方向の、前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向を取得する方向取得手段と、
前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向の類型と、複数種類の動作データと、を関連付けて記憶する手段に記憶される動作データのうちから、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられた動作データのいずれかを選択する動作選択手段と、
前記動作選択手段によって選択された動作データに応じた動作を前記ユーザキャラクタに行わせるユーザキャラクタ制御手段と、
を含み、
前記動作選択手段は、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられた動作データのいずれかを、前記ユーザキャラクタと対立するゲームキャラクタである敵キャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶される前記敵キャラクタの能力に関する能力パラメータに基づいて選択する手段を含む、
ことを特徴とするゲームシステム。
【請求項16】
請求項1乃至12,14のいずれかに記載のゲーム制御装置、又は、請求項13又は15に記載のゲームシステムとしてコンピュータを機能させるためのプログラム。

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
請求項1、3-5、16-18、21に係る発明は、引用文献1、2に記載の発明及び「ユーザキャラクタの進行方向と正面方向とを一致させること」という周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
請求項6-7に係る発明は、引用文献1に記載の発明、引用文献3に示される「敵キャラクタとの位置関係に基づいて、ユーザキャラクタの動作を行うこと」という周知技術、及び引用文献2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
請求項8に係る発明は、引用文献1と2及び4に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
請求項10-15に係る発明は、引用文献1に記載の発明、引用文献5に示される「フェイントに対して反応したり(引っかかったり)、しなかったりすること」という周知技術、及び引用文献2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
請求項2、9、19-20に係る発明については、拒絶の理由を発見しない。

<引用文献等一覧>
引用文献1.特開2007-160006号公報
引用文献2.特開2001-87543号公報
引用文献3.特開平10-113471号公報
引用文献4.特開2001-353360号公報
引用文献5.特開2005-204757号公報

2 原査定の理由についての判断
(1)刊行物の記載事項
ア 刊行物1
原査定の拒絶の理由で引用された特開2007-160006号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【発明の名称】プログラム、情報記録媒体及びゲーム装置」

(イ)「【0001】
本発明は、コンピュータに、移動指示操作に従って自キャラクタの移動制御を行わせてゲームを進行させるためのプログラム等に関する。」

(ウ)「【0035】
右アナログスティック1208Rには特殊動作発動操作が割り当てられており、この特殊動作発動操作によって、特殊動作発動の機能が実現される(レコードL12)。特殊動作の詳細については後述するが、特殊動作発動操作時の自キャラクタの状況に応じてその入力方向に対応する方向への特殊動作(特殊モーション)が発動されるようになっている。尚、本実施形態では、右アナログスティック1208Rの上方向が自キャラクタの前方、下方向が自キャラクタの後方、右方向が自キャラクタの進行方向に向かって右方、左方向が自キャラクタの進行方向に向かって左方と対応付けられる。」

(エ)「【0052】
記憶部600には、処理部200にゲーム装置1を統合的に制御させるためのシステムプログラムや、ゲームを実行させるために必要なプログラム及びデータが格納される。この記憶部600の機能は、例えばICメモリやハードディスク、メモリカード等により実現されるものであり、図1(a)では、情報記憶媒体1212、メモリカード1214、ICカード1216本体装置1210に具備されるICメモリ等がこれに該当する。」

(オ)「【0054】
データとしては、選手キャラクタ情報620と、自キャラクタ情報630と、ボールキープキャラクタ情報640と、ボールデータ650と、特殊動作一覧テーブル660と、特殊動作モーション情報670とを含む。また、図示しないが、その他のデータとして、ピッチを表示するためのオブジェクトデータ、得点や競技時間等のサッカー競技の実行に必要な各種のデータが適宜格納される。」

(カ)「【0059】
特殊動作一覧テーブル660は、特殊動作の発動に係る情報を記憶する。図6は、特殊動作一覧テーブル660のデータ構成例を示す図である。図6に示すように、特殊動作一覧テーブル660は、右アナログスティック1208Rに対する操作内容661と対応付けて、状況条件663と、単発動作としての特殊動作の内容(特殊動作内容)665とを定義したものである。」

(キ)「【0061】
状況条件663には、例えば「ボールキープ時」や「ボール受け時」といった自キャラクタの現在の状況が設定される。状況条件663に「ボールキープ時」が設定されている場合には、自キャラクタがボールキープキャラクタである必要がある。また、「ボール受け時」が設定されている場合には、自キャラクタがパス先キャラクタであって、且つ例えば、自キャラクタからボールまでの距離が5m以内である必要がある。このように、「ボール受け時」が設定されている場合には、自キャラクタとボールとの位置関係が所定の条件を満足するか否かに応じて現在の自キャラクタの状況が判定される。
【0062】
特殊動作内容665には、対応する操作内容661の特殊動作発動操作がなされて状況条件663を満足した場合に発動される特殊動作の内容が設定される。
具体的には、状況条件663が「ボールキープ時」である特殊動作には、その特殊動作発動操作として設定された右アナログスティック1208Rの入力方向へのフェイント動作が設定される。これにより、ボールキープ中という状況に適応する特殊動作として、フェイント動作が発動される。
また、状況条件663が「ボール受け時」である特殊動作には、その特殊動作発動操作として設定された右アナログスティック1208Rの入力方向へ、パスされたボールを一旦繰り出してボールを受けるトラップ動作が設定される。これにより、パスを受ける状況に適応する特殊動作として、トラップ動作が実現される。」

(ク)「【0080】
続いて特殊動作制御部221aが、ステップa30で入力されたゲーム操作が特殊動作発動操作か否か、具体的には右アナログスティック1208Rに対して入力された操作か否かを判定する。そして、特殊動作発動操作ならば(ステップa40:YES)、特殊動作制御部221aは、特殊動作一覧テーブル660を参照してその操作内容661に対応する状況条件663を判定する(ステップa50)。現在の自キャラクタの状況と合致する状況条件663が有るならば(ステップa60:YES)、特殊動作制御部221aは、特殊動作モーション情報670を参照して対応する特殊動作内容665のモーション情報を読み出し、自キャラクタを制御して当該特殊動作を発動させる(ステップa70)。」

(ケ)「【0097】
尚、上記した実施形態では、現在の自キャラクタの状況として、「ボールキープ時」と「ボール受け時」とを例に挙げて説明したが、以下のようにしてもよい。すなわち、特殊動作一覧テーブル660において、「ボールキープ時」における特殊動作発動動作の内容を、ドリブルの速度が速い場合と遅い場合とにさらに場合分けして設定しておくこととしてもよい。そして、自キャラクタがボールをキープしているかに加えて、ドリブルの速度が速いのか遅いのかをさらに判定し、現在の自キャラクタの状況を判定することとしてもよい。」

(コ)上記(ク)の記載において、「右アナログスティックに対して入力された操作か否かを判定」し、「特殊動作一覧テーブル660を参照してその操作内容661に対応する状況条件663を判定する」という記載から、「右アナログスティック」の「操作内容」を取得する手段があることは自明である。

(サ)上記(ケ)の「「ボールキープ時」における特殊動作発動動作の内容を、ドリブルの速度が速い場合と遅い場合とにさらに場合分けして設定しておくこと」の記載について、「ボールキープ時」の特殊動作は上記(キ)の【0062】によれば「フェイント動作」であるから、「「ボールキープ時」におけるフェイント動作の内容を、ドリブルの速度が速い場合と遅い場合とにさらに場合分けして設定しておく」ことは自明である。

上記(ア)ないし(サ)を総合すると、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「コンピュータに、移動指示操作に従って自キャラクタの移動制御を行わせてゲームを進行させるゲーム装置であって、
右アナログスティック1208Rの上方向が自キャラクタの前方、下方向が自キャラクタの後方、右方向が自キャラクタの進行方向に向かって右方、左方向が自キャラクタの進行方向に向かって左方と対応付けられ、
記憶部600には、データが格納されて、データとしては、特殊動作一覧テーブル660と、特殊動作モーション情報670とを含み、
特殊動作一覧テーブル660は、特殊動作の発動に係る情報を記憶し、右アナログスティック1208Rに対する操作内容661と対応付けて、状況条件663と、単発動作としての特殊動作の内容(特殊動作内容)665とを定義したものであり、
状況条件663に「ボールキープ時」が設定されている場合には、自キャラクタがボールキープキャラクタである必要があり、また、「ボール受け時」が設定されている場合には、自キャラクタがパス先キャラクタであって、且つ例えば、自キャラクタからボールまでの距離が5m以内である必要があり、
状況条件663が「ボールキープ時」である特殊動作には、右アナログスティック1208Rの入力方向へのフェイント動作が設定され、
状況条件663が「ボール受け時」である特殊動作には、右アナログスティック1208Rの入力方向へ、トラップ動作が設定され、
特殊動作制御部は、入力されたゲーム操作が特殊動作発動操作か否か、具体的には右アナログスティック1208Rに対して入力された操作か否かを判定し、特殊動作発動操作ならば、特殊動作一覧テーブル660を参照してその操作内容661に対応する状況条件663を判定し、現在の自キャラクタの状況と合致する状況条件663が有るならば、特殊動作モーション情報670を参照して対応する特殊動作内容665のモーション情報を読み出し、自キャラクタを制御して当該特殊動作を発動させ、
右アナログスティックの操作内容を取得する手段を備え、
「ボールキープ時」におけるフェイント動作の内容を、ドリブルの速度が速い場合と遅い場合とにさらに場合分けして設定し、自キャラクタがボールをキープしているかに加えて、ドリブルの速度が速いのか遅いのかをさらに判定し、現在の自キャラクタの状況を判定する、
ゲーム装置。」

イ 刊行物2
原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-87543号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゲーム画面に表示されたキャラクタと呼ばれる仮想物のモーションを表す画像の表示を制御するためのプログラムが記録された記録媒体、モーション再生制御方法およびゲーム装置に関する。」

(イ)「【0080】本実施の形態では、後に詳しく説明するようにキャラクタのモーションを再生しているときに、そのキャラクタが他のキャラクタから武器による攻撃を受けダメージを受けた場合、そのキャラクタに対応付けられたストレス値ST(91e)の値に依存して複数のモーション再生手順の一つが決定される。決定されたモーション再生手順に基づいて新たなモーションが再生中のモーションから移行して継続的に再生され、キャラクタの一連の流れが画面に表示される。」

(ウ)「【0185】また、本発明は、ストレス値STという特殊なパラメータの使用に限定されない。本発明では、パラメータとして切り替え後のモーションの決定に関連するキャラクタに対応付けられたパラメータを広く使用できる。本発明が使用するパラメータは、本発明によるモーション再生手順の選択または切り替え後のモーションの選択のための専用のパラメータでなくてもよく、他の目的に使用されるパラメータを使用してもよい。ダメージ累積パラメータについても同じである。」

(エ)「【0187】また、キャラクタいろいろの状態を表すパラメータを使用できる。キャラクタの肉体的な状態を表すパラメータを使用する場合でも、肉体的な丈夫さ、筋肉の強さ、反射神経の善し悪し、運動神経の善し悪し等を表すパラメータを使用することもできる。あるいは、キャラクタの走る速度等の運動能力等のいろいろの能力を表すパラメータを使用することもできる。あるいはキャラクタの心理的あるいは精神的な状態を表すパラメータを使用することもできる。場合によっては、記憶力、知力等の知的能力を表すパラメータを用いることもできる。」

上記(ア)ないし(エ)を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されている。
「ゲーム画面に表示されたキャラクタと呼ばれる仮想物のモーションを表す画像の表示を制御するためのプログラムが記録された記録媒体、モーション再生制御方法およびゲーム装置に関し、
キャラクタが他のキャラクタから武器による攻撃を受けダメージを受けた場合、そのキャラクタに対応付けられたストレス値ST(91e)の値に依存して複数のモーション再生手順の一つが決定され、決定されたモーション再生手順に基づいて新たなモーションが再生中のモーションから移行して継続的に再生され、キャラクタの一連の流れが画面に表示され、
ストレス値STという特殊なパラメータの使用に限定されず、
肉体的な丈夫さ、筋肉の強さ、反射神経の善し悪し、運動神経の善し悪し等を表すパラメータを使用することもでき、あるいは、キャラクタの走る速度等の運動能力等のいろいろの能力を表すパラメータを使用することもできる、
ゲーム装置。」

ウ 刊行物3
原査定の拒絶の理由で引用された特開平10-113471号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオゲーム機及びビデオゲームプログラムを記録した媒体に関し、特に、サッカーやバスケットボール等の球技のビデオゲームを行うためのビデオゲーム機及びビデオゲームプログラムを記録した媒体に関する。」

(イ)「【0061】敵キャラクタ位置判定部41(相対位置検出手段に相当)は、タックル位置判定部40からの通知を受けて起動し、自キャラクタMと敵キャラクタとの相対的な位置関係を判定する。この相対位置判定は、以下のようにして行われる。すなわち、図3に示されるように、敵キャラクタEの中心からその背面方向へ向けて延出する仮想の軸線L1を基準とした各45゜の角度範囲であって敵キャラクタEの中心からボールBの直径の3倍の距離範囲内に自キャラクタMが存している場合には、自キャラクタMが敵キャラクタEの後方に存していると判定される。また、軸線L1を基準とした各45゜?120゜の角度範囲であって敵キャラクタEの中心からボールBの直径の3倍の距離範囲内に自キャラクタMが存している場合には、自キャラクタMが敵キャラクタEの側方に存していると判定される。さらに、軸線L1を基準とした120゜?180゜の角度範囲であって敵キャラクタEの中心からボールBの直径の9倍の距離範囲内に自キャラクタMが存している場合には、自キャラクタMが敵キャラクタEの前方に存していると判定される。そして、敵キャラクタ位置判定部41は、上述した判定結果をタックル動作処理部42に対して通知する。
【0062】タックル動作処理部42(動作制御手段に相当)は、敵キャラクタ位置判定部41による判定結果を受け取って起動し、その判定結果に応じて自キャラクタMを敵キャラクタに対して前方,側方又は後方からタックルさせる場合の動作処理や画像処理等を行う。すなわち、自キャラクタMが敵キャラクタEに対して近づきタックルする画像処理命令をGPU62に与える等の処理を行う。」

上記(ア)及び(イ)を総合すると、刊行物3には、次の発明(以下「刊行物3発明」という。)が記載されている。
「自キャラクタMと敵キャラクタとの相対的な位置関係を判定し、その判定結果に応じて自キャラクタMを敵キャラクタに対して前方,側方又は後方からタックルさせる場合の動作処理や画像処理等を行う、
サッカーやバスケットボール等の球技のビデオゲームを行うためのビデオゲーム機。」

エ 刊行物4
原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-353360号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。

「【0110】また、上記実施の形態においては、サッカーゲームを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、バスケットボール、野球、テニス、ホッケー、ラグビー等の各種球技などのスポーツゲームに適用可能である。
【0111】また、上記実施の形態においては、予めキャラクタ毎に設定されたモーションの再生速度(即ちキャラクタの動きの素早さ)を情報記憶媒体に格納している、あるいは、プレイ前の編集画面において設定することとしたが、例えば、プレーヤが操作するキャラクタまたは当該キャラクタが属するチームのキャラクタのモーションの再生速度を、試合に勝ち進むに伴い、変更していくこととしても良い。また、例えば、試合中、キャラクタの疲労度(現在までの運動量や、接触回数等)や、ファール数等に応じてモーションの再生速度を変更することとしても良い。
【0112】また、上記実施の形態においては、移動速度は、キャラクタや再生速度によらず、一定であることとしたが、例えば、移動速度をキャラクタ毎に設定することとしても良い。その場合には、例えば、足の短いキャラクタ等に対しては、動きは素早い(動作速度は早い)が実際の走るスピード(移動速度)は、遅い場合もあるため、移動速度を遅く設定したり、逆に足の長い(ストライドが大きい)キャラクタ等に対しては、動作はあまり素早くはないが、移動速度を速く設定したりしても良い。」

以上より、刊行物4には、次の発明(以下「刊行物4発明」という。)が記載されている。
「試合中、キャラクタの疲労度(現在までの運動量や、接触回数等)や、ファール数等に応じてモーションの再生速度を変更し、
足の短いキャラクタ等に対しては、動きは素早い(動作速度は早い)が実際の走るスピード(移動速度)は、遅い場合もあるため、移動速度を遅く設定したり、逆に足の長い(ストライドが大きい)キャラクタ等に対しては、動作はあまり素早くはないが、移動速度を速く設定する、
サッカーゲーム。」

オ 刊行物5
原査定の拒絶の理由で引用された特開2005-204757号公報(以下「刊行物5」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーム装置およびゲームプログラムに関し、より特定的には、プレイヤがタッチパネルを使用してプレイヤオブジェクトの動作を制御するゲーム装置およびゲームプログラムに関する。」

(イ)「【0037】
ところで、図4において、「フェイント」に対応するボタンスイッチ画像58の内部には、それぞれ「またぎ」,「キック」と書かれた2つの領域58a,58bが設けられている。「またぎ」と書かれた領域58aをプレイヤが押せば、選択キャラクタ50は「またぎフェイント」を行う。また、「キック」と書かれた領域58bをプレイヤが押せば、選択キャラクタ50は「キックフェイント」を行う。なお、その他の領域58cをプレイヤが押せば、選択キャラクタ50は「通常フェイント」を行う。すなわち、ある動作(フェイント動作)をさせるためのボタンスイッチ画像の内部に、その動作と同じ動作(フェイント動作)であって、より概念の小さい動作(またぎフェイント動作、キックフェイント動作)をさせるためのボタンスイッチ画像が表示されている。領域58a,58bは、領域58cに比べて狭いため、ゲーム中にプレイヤがそれらの領域58a,58bに正確に触れることは難しい。しかしながら、「またぎフェイント」や「キックフェイント」は、「通常フェイント」に比べてフェイントの効果が高くなるように設定されている。すなわち、相手チームのプレイヤがフェイントに引っかかる確率が高くなるため、プレイヤは敢えて領域58a,58bに触れようと試みることになり、指示入力が単調になり過ぎてしまうことがなくなる。」

上記(ア)及び(イ)を総合すると、刊行物5には次の発明(以下「刊行物5発明」という。)が記載されている。
「「またぎフェイント」や「キックフェイント」は、「通常フェイント」に比べてフェイントの効果が高くなるように設定され、すなわち、相手チームのプレイヤがフェイントに引っかかる確率が高いゲーム装置。」

(2)対比
本願発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「自キャラクタ」は本願発明1の「ユーザキャラクタ」に相当する。
刊行物1発明の「コンピュータに、移動指示操作に従って自キャラクタの移動制御を行わせてゲームを進行させるゲーム装置」は、本願発明1の「ユーザの操作に従ってユーザキャラクタが動作するゲーム制御装置」に相当する。
刊行物1発明の「右アナログスティック1208Rの上方向が自キャラクタの前方、下方向が自キャラクタの後方、右方向が自キャラクタの進行方向に向かって右方、左方向が自キャラクタの進行方向に向かって左方と対応付けられ」ている「右アナログスティックの操作内容を取得する手段」は、本願発明の「方向指示操作が前記ユーザによって行われた場合に、前記方向指示操作によって指示された方向の、前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向を取得する方向取得手段」に相当する。
刊行物1発明の「特殊動作の発動に係る情報を記憶し、右アナログスティック1208Rに対する操作内容661と対応付けて、状況条件663と、単発動作としての特殊動作の内容(特殊動作内容)665とを定義したものであ」って、「「ボールキープ時」におけるフェイント動作の内容を、ドリブルの速度が速い場合と遅い場合とにさらに場合分けして設定」されている「特殊動作一覧テーブル660」と、「特殊動作モーション情報670」を「格納」する「記憶部」は、本願発明1の「ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向の類型と、複数種類のフェイント動作データと、を関連付けて記憶する手段」に相当する。
刊行物1発明の、「入力されたゲーム操作が特殊動作発動操作か否か、具体的には右アナログスティック1208Rに対して入力された操作か否かを判定し、特殊動作発動操作ならば、特殊動作一覧テーブル660を参照してその操作内容661に対応する状況条件663を判定し、現在の自キャラクタの状況と合致する状況条件663が有るならば、特殊動作モーション情報670を参照して対応する特殊動作内容665のモーション情報を読み出し、自キャラクタを制御して当該特殊動作を発動させる」ものであって、「自キャラクタがボールをキープしているかに加えて、ドリブルの速度が速いのか遅いのかをさらに判定し、現在の自キャラクタの状況を判定」する「特殊動作制御部」は、本願発明1の「記憶する手段に記憶されるフェイント動作データのうちから、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを選択する動作選択手段と、前記動作選択手段によって選択されたフェイント動作データに応じたフェイント動作を前記ユーザキャラクタに行わせるユーザキャラクタ制御手段」に相当する。
刊行物1発明の「ボール」は本願発明1の「移動体」に相当し、刊行物1発明の「ゲーム」は「移動体を用いて行われるゲーム」に相当する。
刊行物1発明において、自キャラクタがボールキープキャラクタであるときに、「状況条件」は「ボールキープ時」が設定され、「特殊動作」には、右アナログスティック1208Rの入力方向へのフェイント動作が設定され、「自キャラクタがパス先キャラクタであって、且つ例えば、自キャラクタからボールまでの距離が5m以内である」ときに、「状況条件」は「ボール受け時」が設定され、特殊動作には、右アナログスティック1208Rの入力方向へ、トラップ動作が設定され」るものであって、「特殊動作制御部」は「状況条件」に「対応する特殊動作内容665のモーション情報を読み出」すものであるから、「特殊動作制御部」は、本願発明1の「前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データ」を、「前記移動体の位置に基づいて選択する手段」に相当する。

以上より、本願発明1と刊行物1発明とは、
「ユーザの操作に従ってユーザキャラクタが動作するゲームを実行するゲーム制御装置において、
方向指示操作が前記ユーザによって行われた場合に、前記方向指示操作によって指示された方向の、前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向を取得する方向取得手段と、
前記ユーザキャラクタの正面方向に対する相対的方向の類型と、複数種類のフェイント動作データと、を関連付けて記憶する手段に記憶されるフェイント動作データのうちから、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを選択する動作選択手段と、
前記動作選択手段によって選択されたフェイント動作データに応じたフェイント動作を前記ユーザキャラクタに行わせるユーザキャラクタ制御手段と、
を含み、
前記ゲームは、移動体を用いて行われるゲームであり、
前記動作選択手段は、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データを、前記移動体の位置に基づいて選択する手段を含む、
制御装置。」
である点で共通し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明1では、フェイント動作データの「いずれか」を「移動体の位置」に基づいて選択するのに対し、刊行物1発明では、ドリブルの速度に基づいて選択する点。

(3)判断
上記相違点について検討すると、刊行物2発明ないし刊行物5発明は、いずれも上記相違点に係る、フェイント動作データの「いずれか」を「移動体の位置」に基づいて選択する、という本願発明1の発明特定事項を備えていない。
また、当該発明特定事項が、設計的事項であるとする根拠もない。
したがって、刊行物2発明ないし刊行物5発明に基づいて、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を、当業者が容易に想到し得たとは言えない。
よって、本願発明1は、当業者が刊行物1発明ないし刊行物5発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)本願発明2ないし16について
本願発明2ないし4、6ないし12は、本願発明1を引用してさらに限定したものであるから、当業者が刊行物1発明ないし刊行物5発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明13は、本願発明1の「ゲーム制御装置」を「ゲームシステム」としたものであって、上記相違点に係る発明特定事項と同じ発明特定事項を備えているから、当業者が刊行物1発明ないし刊行物5発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明16は、本願発明1ないし15を引用してさらに限定したものであるら、当業者が刊行物1発明ないし刊行物5発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明5、14、15は、原査定において、拒絶の理由を発見しないとされたものである。

(5)原査定の理由についてのまとめ
以上のとおり、本願発明1ないし4、6ないし13、16は、当業者が刊行物1ないし5に係る発明に基づいて、容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明5、14、15は、原査定において拒絶の理由を発見しないとされたものである。
したがって、本願は原査定の理由によっては、拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の内容
本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(請求項1、15について)
(1)「前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを選択する動作選択手段」の記載と、「前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に複数種類のフェイント動作データが関連付けられている場合に、当該複数種類のフェイント動作データのうちのいずれかを前記移動体の位置に基づいて選択する手段」の記載について、これらの記載は同じことを意味しているのか否か、明確に理解できない。
(2)「方向取得手段によって取得された相対的方向が属する類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを、ユーザキャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶されるユーザキャラクタの能力に関する能力パラメータに基づいて選択する手段と、
前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられたフェイント動作データのいずれかを、移動体の位置に基づいて選択する手段であって、前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に複数種類のフェイント動作データが関連付けられている場合に、当該複数種類のフェイント動作データのうちのいずれかを前記移動体の位置に基づいて選択する手段と、を含む」の記載について、「フェイント動作データ」を「ユーザキャラクタの能力に関する能力パラメータ」に基づいて選択するのか、「移動体の位置」に基づいて選択するのか不明であるから、上記記載の2つの「選択する手段」の相互の関係を明確に理解できない。

(請求項2ないし5について)
(3)上記(2)と同様に、請求項2ないし5記載の各「選択する手段」と、請求項2ないし5が引用する請求項に記載の「選択する手段」との相互の関係を明確に理解できない。

(請求項11ないし13について)
(4)「決定手段」が、「ゲームの現在状況」、「ユーザキャラクタと前記敵キャラクタとの少なくとも一方の移動速度」、「ユーザキャラクタと敵キャラクタとの少なくとも一方の位置」、あるいは請求項9、10に記載されている事項、のいずれに基づいて決定するのか、明確に理解できない。

(請求項14について)
(5)「第1の方向指示操作」と、請求項14が引用する各請求項の「方向指示操作」との関係が不明確である。
(6)請求項14に記載の「方向取得手段」、「動作選択手段」、「ユーザキャラクタ制御手段」と、請求項14が引用する各請求項の「方向取得手段」、「動作選択手段」、「ユーザキャラクタ制御手段」との関係を明確に理解できない。
したがって、請求項1ないし6、8ないし15、19は不明確である。

2 当審拒絶理由についての判断
上記1(1)について検討すると、平成28年12月5日に提出された手続補正書による補正(以下単に「補正」という。)により、請求項1、13の「前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に複数種類のフェイント動作データが関連付けられている場合に、当該複数種類のフェイント動作データのうちのいずれかを前記移動体の位置に基づいて選択する手段」の記載が削除されたことにより、記載が明確となった。

上記1(2)について検討すると、補正により、請求項1、13の「前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられた動作データのいずれかを、前記ユーザキャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶される前記ユーザキャラクタの能力に関する能力パラメータに基づいて選択する手段」の記載が削除されたことにより、記載が明確となった。

上記1(3)について検討すると、補正により、請求項1の「前記方向取得手段によって取得された相対的方向が属する前記類型に関連付けられた動作データのいずれかを、前記ユーザキャラクタに関するパラメータを記憶する手段に記憶される前記ユーザキャラクタの能力に関する能力パラメータに基づいて選択する手段」の記載が削除されたとともに、請求項2、5は削除されたため、記載が明確となった。

上記1(4)について検討すると、補正により、「決定手段」が、請求項9では「ゲームの現在状況を示す情報」、請求項10では「ユーザキャラクタと敵キャラクタとの少なくとも一方の移動速度」、請求項11では「ユーザキャラクタと敵キャラクタとの少なくとも一方の位置」に基づいて決定していることが明確となった。

上記1(5)について検討すると、補正により、請求項12の「第1の方向指示操作」は、請求項1ないし4、6ないし11の「方向指示操作」であることが明確となった。

上記1(6)について検討すると、補正により、請求項12に記載の「方向取得手段」、「動作選択手段」、「ユーザキャラクタ制御手段」と、請求項1ないし4、6ないし11の「方向取得手段」、「動作選択手段」、「ユーザキャラクタ制御手段」との関係は明確となった。

よって、当審拒絶理由で通知した理由により、本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-24 
出願番号 特願2013-121318(P2013-121318)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 植田 高盛
吉村 尚
発明の名称 ゲーム制御装置、ゲームシステム、及びプログラム  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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