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審決分類 審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1324096
審判番号 不服2015-14468  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-31 
確定日 2017-02-07 
事件の表示 特願2014- 645「無線通信チャネルをブランクすること(blanking)」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-112878、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許出願は、平成20年10月16日(パリ条約に基づく優先権主張 平成19年11月15日 米国、平成20年6月27日 米国)を国際出願日とする特願2010-534081号の一部を平成26年1月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 2月 5日 :手続補正書、上申書の提出
平成26年10月23日付け:拒絶理由の通知
平成27年 1月28日 :意見書の提出
平成27年 3月24日付け:拒絶査定
平成27年 7月31日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成27年 9月 7日 :前置報告
平成28年 1月13日 :上申書
平成28年 7月13日付け:当審による拒絶理由の通知
平成28年11月21日 :意見書、手続補正書の提出


第2 本件発明

本件特許出願の請求項1-15に係る発明は、平成28年11月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
無線ネットワーク通信における支配的な干渉を緩和する方法であって、
複数の通信デバイスによって利用される1または複数の制御チャネルにおける支配的な干渉を判定することと、
前記干渉を低減するためにブランクすべき、前記1または複数の制御チャネルのうちの少なくとも1つの、少なくとも部分を選択することと、
前記複数の通信デバイスのうち、前記干渉を受けた通信デバイスからプリアンブルを受信することと、
前記プリアンブルに少なくとも部分的に基づいて、パス・ロスを推定することと、
ブランクされる部分から電力が取り除かれる程度を示すブランク係数を、前記パス・ロスに少なくとも部分的に基づいて決定することと、
前記1または複数の制御チャネルの前記選択された部分における電力を、前記ブランク係数に基づいてブランクすることと
を備える方法。

【請求項2】
干渉レベルのインジケーションを受信することをさらに備え、
前記ブランクされた電力の少なくとも一部が、前記干渉レベルに関連している、請求項1に記載の方法。

【請求項3】
前記複数の通信デバイスによって利用される前記1または複数の制御チャネルで引き起こされた干渉のインジケーションを受信することをさらに備える、請求項1に記載の方法。

【請求項4】
前記複数の通信デバイスのうちの少なくとも1つによって干渉を受ける帯域幅の部分に関する情報を、その通信デバイスによって前記帯域幅の部分をブランクすることを要求するために、その通信デバイスに送信することをさらに備える、請求項3に記載の方法。

【請求項5】
前記干渉のインジケーションが、前記プリアンブルに少なくとも部分的に基づいて前記デバイスのパス・ロスを推定することに関連する推論から得られる、請求項3に記載の方法。

【請求項6】
前記干渉のインジケーションが、前記複数の通信デバイスのうちの1または複数から受信される、請求項3に記載の方法。

【請求項7】
ブランクすることが望まれる、前記1または複数の制御チャネルのサブセットに関する情報を、前記複数の通信デバイスのうちの少なくとも1つから受信することをさらに備える、請求項1に記載の方法。

【請求項8】
前記ブランクすることを補償するために、帯域幅の別の部分においてより高い電力で送信することをさらに備える、請求項1に記載の方法。

【請求項9】
無線通信装置であって、
干渉を受けたデバイスから受信したプリアンブルに少なくとも部分的に基づいてパス・ロスを推定し、
1または複数の制御チャネルにおいてその分だけブランクすべきであるブランク係数を、前記推定されたパス・ロスに少なくとも部分的に基づいて決定し、
支配的な干渉を緩和するために、前記干渉に関して受信された情報にしたがって、多元接続無線ネットワークにおける別の通信リンクの1または複数の制御チャネルをブランクする
ように構成された少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサに結合されたメモリと
を備える無線通信装置。

【請求項10】
前記情報は、前記ブランクすることを要求する、前記別の通信に支配的に干渉を受けたデバイスから受信される、請求項9に記載の無線通信装置。

【請求項11】
前記少なくとも1つのプロセッサはさらに、前記支配的に干渉を受けたデバイスにチャネルをブランクすることを相互に要求するように構成された、請求項10に記載の無線通信装置。

【請求項12】
前記ブランクすることは、フレームのセット内の前記別の通信の前記制御チャネルのサブセットにわたって実行され、
おのおののフレームは、複数のOFDMシンボルを備える、請求項9に記載の無線通信装置。

【請求項13】
前記少なくとも1つのプロセッサはさらに、前記チャネルをブランクすることによって生じたロスを補償するために、ブランクされていないチャネルにおいてより高い電力で送信するように構成された、請求項9に記載の無線通信装置。

【請求項14】
コンピュータ・プログラムであって、
少なくとも1つのコンピュータに、複数の通信デバイスによって利用される1または複数の制御チャネルにおける支配的な干渉を判定させるためのコードと、
前記少なくとも1つのコンピュータに、前記干渉を低減するためにブランクすべき、前記1または複数の制御チャネルのうちの少なくとも1つの、少なくとも部分を選択させるためのコードと、
前記少なくとも1つのコンピュータに、前記複数の通信デバイスのうち、前記干渉を受けた通信デバイスからプリアンブルを受信させるためのコードと、
前記少なくとも1つのコンピュータに、前記プリアンブルに少なくとも部分的に基づいて、パス・ロスを推定させるためのコードと、
前記少なくとも1つのコンピュータに、ブランクされる部分から電力が取り除かれる程度を示すブランク係数を、前記パス・ロスに少なくとも部分的に基づいて決定させるためのコードと、
前記少なくとも1つのコンピュータに、前記1または複数の制御チャネルのうちの選択における電力を、前記ブランク係数に基づいてブランクさせるためのコードと
を備えるコンピュータ・プログラム。

【請求項15】
前記少なくとも1つのコンピュータに、干渉レベルのインジケーションを受信させるためのコードをさらに備え、
前記ブランクされた電力の一部は、前記干渉レベルに関連する、請求項14に記載のコンピュータ・プログラム。 」


第3 原査定の理由について

1.原査定の理由の概要

「この出願については、平成26年10月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由(進歩性)によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

●理由(特許法第29条第2項)ついて
・請求項1-35
・引用文献等番号1-3
・備考
引用文献1には、無線通信システムにおいて送信エンティティ(端末または現在通信中の基地局)により生じた干渉を制御する際に、送信エンティティからの低減された干渉が求められる送信スパンを示すブランキングパターンを得ることと、前記ブランキングパターン内の前記送信スパン上に送信された送信のための送信電力をオフ(高い干渉を生じる可能性が高いとみなされるとき)にするかまたは低減(高い干渉を生じる可能性が低いとみなされるとき)することが記載されている。また、フォワードリンク、リバースリンクの干渉を制御しており、さらに、過度の干渉を生じているとみなされるユーザー毎に干渉が低減されるために、ブランキング/減衰の実行することが記載されているから、チャネルをブランクすることを相互に要求している。(特に、claims1,7,13,17-19 及び[0067]-[0068]又は日本語パテントファミリー特表2007-538462号公報の【請求項1】,【請求項7】、【請求項13】、【請求項17】-【請求項19】,【0063】-【0064】参照)
本願の請求項1-7,9-12,14-35に係る発明と引用文献1に記載された発明とを比較すると、ブランクされる部分から電力が取り除かれる程度を求めるために、本願発明では、干渉を受けた通信デバイスからプリアンブルを受信し、受信したプリアンブルから、パス・ロスを推定し、推定したパス・ロスを得ているのに対し、引用文献1には、たとえば、隣接セクターの高受信パイロット電力を測定している点で相違する。
しかしながら、干渉を測定するために、何を(制御信号か、データ信号か、制御信号・データ信号の一部分か、又は、干渉測定専用の参照信号か等)どのように測定する(強度を測定するか、誤り率を計算するか、又は直接測定した値から推定するか)かは、無線通信システムの技術分野においては、改めて文献を示すまでもなく、当業者に広く知られた周知の構成であり、また、干渉する隣接セルがある場合に、干渉量及びパスロスを測定して、干渉が十分低減される程度(本願の電力が取り除かれる程度を求めることに相当)に送信パワーを低減することも引用文献2(特に、Fig1及びこれに関する説明参照)に例示されるように周知のものであるから、引用文献1に記載された発明において、ブランクされる部分から電力が取り除かれる程度を求めるために、周知技術のいずれかの構成を採用するかは当業者が適宜選択すべき設計事項に過ぎない。

したがって、本願の請求項1-7,9-12,14-35に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。

本願の請求項8,13に係る発明と引用文献1に記載された発明とを比較すると、本願発明では、ブランクすることを補償するために、帯域幅の別の部分においてより高い電力で送信しているのに対し、引用文献1にはその旨記載されていない点で相違する。
しかしながら、引用文献3(特に、【請求項3】参照)には、干渉があるタイムスロットでの電力を低減し、干渉のないタイムスロットでの電力を増加することが記載されている。
したがって、本願の請求項8,13に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.国際公開第2005/117283号
2.米国特許出願公開第2007/0082619号明細書
3.特表2007-529915号公報 」


2.原査定の理由の判断

(1)引用文献

(1-1)引用文献1の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である国際公開第2005/117283号には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与し、日本語訳は対応する国内出願の公表公報である特表2007-538462号公報を用いた。)

(ア)「The present invention relates generally to communication, and more specifically to techniques for controlling interference in a wireless communication system.」([0001])

(日本語訳:この発明は一般に通信に関し、特に無線通信システムにおいて干渉を制御するための技術に関する。)(【0001】)

(イ)「The techniques described herein can control inter-sector interference for target users due to interfering users in other sectors. In general, a target user is one for which reduced inter-sector interference is sought. An interfering user is one deemed to be interfering with a target user. The target and interfering users are in different sectors with the frequency hopping described above. The target and interfering users as well as interfering sectors may be identified as described below. Inter-sector interference may be controlled in various manners.」([0026])

(日本語訳:ここに記載された技術は、他のセクター内のユーザーを干渉することによりターゲットユーザーのためのセクター間干渉を制御することができる。一般に、ターゲットユーザーは低減されたセクター間干渉が求められるユーザーである。干渉ユーザーはターゲットユーザーと干渉するとみなされるユーザーである。ターゲットユーザーと干渉ユーザーは上述した周波数ホッピングを備えた異なるセクター内にある。ターゲットユーザーおよび干渉ユーザー並びに干渉セクターは、以下に記載するように識別されてもよい。セクター間干渉は種々の方法で制御されてもよい。)(【0018】)

(ウ)「FIG. 5A shows a flow diagram of a process 500 for determining subbands on which to reduce inter-sector interference. Process 500 may be performed by each base station in the role of a serving base station. Initially, users being served by the base station and for which reduced inter-sector interference is sought (i.e., target users) are identified (block 512). The target users may be users with multiple sectors in their active set or may be identified in some other manners, as described above. Interfering base stations or interfering users for each target user are then identified (block 514). The interfering base stations for each target user may be the non-serving sectors in the active set of the target user or may be identified in some other manners, as also described above. Interference information for each interfering base station is then determined based on information (e.g., the active sets and the FH sequences) for the target users (block 516). The interference information for each interfering base station indicates the specific transmission spans (or the specific subbands and hop periods) for which reduced interference from that base station is sought. The interference information for each interfering base station may comprise, for example, the FH sequences for all target users having this base station as a non-serving sector in their active sets. The interference information is typically different for different interfering base stations. The interference information for each interfering base station is then sent to that base station (block 518).

FIG. 5B shows a flow diagram of a process 550 for performing selective blanking/attenuation to control inter-sector interference. Process 550 may be performed by each base station in the role of an interfering base station. Initially, interference information is received from each neighboring base station (block 552). A blanking pattern is then formed based on the interference information received from all neighboring base stations (block 554). The blanking pattern may simply include all subbands for all FH sequences for target users in neighboring sectors. The blanking pattern may also exclude subbands that are in an overlap pattern formed as described above. Thereafter, transmissions on subbands in the blanking pattern are blanked attenuated (block 556). For example, blanking may be performed for all transmissions that collide with the blanking pattern. As another example, blanking may be performed for the transmissions of some users (e.g., those with neighboring sectors in their active set) and attenuation may be performed for other users (e.g., those with no neighboring sectors in their active set).」([0056]?[0057])

(日本語訳:図5Aはセクター間干渉を低減するサブバンドを決定するプロセス500のフロー図を示す。プロセス500は、サービング基地局の役割内の各基地局により実行されてもよい。最初に、基地局によりサービスされている、そして低減されたセクター間干渉が求められるユーザー(すなわち、ターゲットユーザー)が識別される(ブロック512)。上述するように、ターゲットユーザーはアクティブセット内に複数のセクターを備えたユーザーであってもよいし、または上述したようにいくつかの他の方法で識別してもよい。次に、各ターゲットユーザーのための干渉基地局または干渉ユーザーが識別される(ブロック514)。また、上述したように、各ターゲットユーザーのための干渉基地局は、ターゲットユーザーのアクティブセット内の非サービングセクターであってもよいし、またはいくつかの他の方法で識別されてもよい。次に、各干渉基地局のための干渉情報はターゲットユーザーのための情報(例えば、アクティブセットおよびFHシーケンス)に基づいて決定される(ブロック516)。各干渉基地局のための干渉情報は、基地局からの低減された干渉が求められる特定の送信スパン(または特定のサブバンドおよびホップ期間)を示す。各干渉基地局のための干渉情報は、例えば、アクティブセットに非サービングセクターとしてこの基地局を有するすべてのターゲットユーザーのためのFHシーケンスを含んでいてもよい。干渉情報は、典型的に異なる干渉基地局に対して異なる。次に、各干渉基地局のための干渉情報がその基地局に送信される(ブロック518)。
図5Bは、セクター間干渉を制御するために選択的ブランキング/減衰を実行するためのプロセス550のフロー図を示す。プロセス550は、干渉基地局の役割内の各基地局により実行されてもよい。最初に、干渉情報は各隣接基地局から受信される(ブロック552)。次に、ブランキングパターンが、すべての隣接基地局から受信した干渉情報に基づいて形成される(ブロック554)。ブランキングパターンは単に隣接セクター内のターゲットユーザーのためのすべてのFHシーケンスのためのすべてのサブバンドを含んでいてもよい。また、ブランキングパターンは上述したように形成されたオーバーラップパターン内にあるサブバンドを除外してもよい。その後、ブランキングパターン内のサブバンド上の送信はブランキング/減衰される(ブロック556)。例えば、ブランキングは、ブランキングパターンと衝突するすべての送信に対して実行されてもよい。他の例として、ブランキングは何人かのユーザー(例えば、アクティブセットに隣接セクターを備えたユーザー)の送信のために実行されてもよく、減衰は、他のユーザー(例えば、アクティブセットに隣接セクターを備えていないユーザー)に対して実行されてもよい。)(【0052】?【0053】)

上記(ア)?(ウ)の記載から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「無線通信システムにおいて干渉を制御するための方法であって、
ターゲットユーザーは低減されたセクター間干渉が求められるユーザーであって、干渉ユーザーはターゲットユーザーと干渉するとみなされるユーザーであって、
セクター間干渉を低減するサブバンドを決定するプロセスは、サービング基地局の役割内の各基地局により実行され、
最初に、基地局によりサービスされている、そして低減されたセクター間干渉が求められるユーザー(すなわち、ターゲットユーザー)が識別され、次に、各ターゲットユーザーのための干渉基地局または干渉ユーザーが識別され、各ターゲットユーザーのための干渉基地局は、ターゲットユーザーのアクティブセット内の非サービングセクターであってもよく、またはいくつかの他の方法で識別されてもよく、
各干渉基地局のための干渉情報がその基地局に送信され、
セクター間干渉を制御するために選択的ブランキング/減衰を実行するためのプロセスは、干渉基地局の役割内の各基地局により実行され、最初に、干渉情報は各隣接基地局から受信され、次に、ブランキングパターンが、すべての隣接基地局から受信した干渉情報に基づいて形成され、その後、ブランキングパターン内のサブバンド上の送信はブランキング/減衰される、方法。」(以下、「引用文献1発明」という。)

(1-2)引用文献2の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2である米国特許出願公開第2007/0082619号明細書には、以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(エ)「The present invention is related to a wireless communication system including a base station and at least one wireless transmit/receive unit (WTRU). More particularly, the present invention is related to downlink transmission power control for evolved universal terrestrial radio access (UTRA), which may be applicable to a single carrier frequency division multiple access (SC-FDMA) based system or an orthogonal frequency division multiple access (OFDMA) based system.」([0002])

(日本語訳:この発明は、基地局と少なくともひとつの無線送受信機(WTRU)を含む無線通信システムに関する。特に、SC-FDMAベースのシステムまたはOFDMAベースのシステムに適用される拡張されたUTRAのためのダウンリンクの送信パワー制御に関する。)

(オ)「In step 115, the WTRU 110 receives downlink pilot/reference signals from the serving base station 105 and neighbor interfering cells. In step 120, the WTRU 110 measures the downlink pilot strength, (corresponding to the path loss), for each neighbor interfering cell. ・・・以下省略・・・」([0015])

(日本語訳:ステップ115において、WTRU110はサービング基地局105および隣接する干渉セルからダウンリンクパイロット/レファレンス信号を受信する。ステップ120において、WTRU110は隣接する干渉セル各々のダウンリンクパイロット信号強度(パスロスに相当)を測定する。 ・・・以下省略・・・)

(カ)「In step 125, the WTRU 110 measures the downlink CQI based on the received downlink pilot signals. Then, in step 130, the WTRU 110 reports CQI via the uplink shared control channel to the base station 105.
・・・途中省略・・・
In step 130, the WTRU 110 may further report the cell identities (IDs) of the strong interfering neighbor cells having the N best path losses to the base station 105, together with the reported CQI, if the WTRU measured downlink CQI is below a predefined threshold.
・・・以下省略・・・」([0016])

(日本語訳:ステップ125において、WTRU110は受信したダウンリンクパイロット信号を基にダウンリンクCQIを測定する。その後、ステップ130において、WTRU110は基地局105にアップリンク共用制御チャネル経由でCQIをレポートする。
・・・途中省略・・・
その後、ステップ130において、WTRUが測定したダウンリンクCQIが予め定められたしきい値より低い場合、WTRU110は基地局105へN個の最良パスロスを有するその強い隣接する干渉セルのセルIDをレポートしたCQIと共に報告する。
・・・以下省略・・・ )

(キ)「In step 135, the base station 105 sends an interference indicator to the cell(s) corresponding to the cells ID(s) reported by the WTRU 110 if the base station 105 receives the reported CQI with cell ID(s) of strong neighbor interfering cell(s). The purpose of the interference indicator is to ask the strong neighbor interfering cell(s) to reduce transmission power appropriately and balance the load between cells. ・・・以下省略・・・ 」([0017])

(日本語訳:ステップ135において、基地局105が強い隣接する干渉セルのセルIDと共に報告されたCQIを受信する場合、WTRU110によって報告されたIDに相当するセルへ、基地局105は干渉インジケータを送信する。干渉インジケータの目的は、強い隣接する干渉セルに送信パワーを適正に減少させることとセル間の負荷バランスをとることを要求するためである。・・・以下省略・・・)

(ク)「In step 145, the base station 105 determines the transmission power of both the downlink shared control channel and the downlink shared data channel based on the CQI reported by the WTRU 110 and an interference indicator sent by other cells/base stations, if any. ・・・以下省略・・・」([0020])

(日本語訳:ステップ145において、WTRU110によって報告されたCQIと他のセル/基地局により送信された干渉インジケータに基づき、基地局105はダウンリンク共用制御チャネルとダウンリンク共用データチャネルの両方の送信パワーを決定する。 ・・・以下省略・・・)

上記(エ)?(ク)の記載から、引用文献2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「拡張されたUTRAのためのダウンリンクの送信パワー制御に関する方法であって、
WTRU110はサービング基地局105および隣接する干渉セルからダウンリンクパイロット/レファレンス信号を受信し、WTRU110は隣接する干渉セル各々のダウンリンクパイロット信号強度(パスロスに相当)を測定し、
WTRU110は受信したダウンリンクパイロット信号を基にダウンリンクCQIを測定し、その後、WTRUが測定したダウンリンクCQIが予め定められたしきい値より低い場合、WTRU110は基地局105へN個の最良パスロスを有するその強い隣接する干渉セルのセルIDをレポートしたCQIと共に報告し、
基地局105が強い隣接する干渉セルのセルIDと共に報告されたCQIを受信する場合、WTRU110によって報告されたIDに相当するセルへ、基地局105は干渉インジケータを送信し、
WTRU110によって報告されたCQIと他のセル/基地局により送信された干渉インジケータに基づき、基地局105はダウンリンク共用制御チャネルとダウンリンク共用データチャネルの両方の送信パワーを決定する、方法。」(以下、「引用文献2発明」という。)


(2)対比

本件特許出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用文献1発明とを対比する。

(2-1)引用文献1発明は、「無線通信システムにおいて干渉を制御するための方法」であるから、本願発明でいうところの『無線ネットワーク通信における支配的な干渉を緩和する方法』といえることは明らかである。

(2-2)引用文献1発明は、「セクター間干渉を制御するために選択的ブランキング/減衰を実行するためのプロセスは、干渉基地局の役割内の各基地局により実行され、最初に、干渉情報は各隣接基地局から受信され、次に、ブランキングパターンが、すべての隣接基地局から受信した干渉情報に基づいて形成され、その後、ブランキングパターン内のサブバンド上の送信はブランキング/減衰される」のであるから、本願発明でいうところの『干渉を低減するためにブランクすべき、前記1または複数のチャネルのうちの少なくとも1つの、少なくとも部分を選択すること』、『ブランクされる部分から電力が取り除かれる程度を決定すること』、『チャネルの選択された部分における電力をブランクすること』を備えているといえる。

したがって、本願発明と引用文献1発明とは、

「無線ネットワーク通信における支配的な干渉を緩和する方法であって、

前記干渉を低減するためにブランクすべき、1または複数のチャネルのうちの少なくとも1つの、少なくとも部分を選択することと、
ブランクされる部分から電力が取り除かれる程度を決定することと、
前記1または複数のチャネルの前記選択された部分における電力をブランクすることと
を備える方法。」

で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明においては、『複数の通信デバイスによって利用される1または複数の制御チャネルにおける支配的な干渉を判定すること』との発明特定事項で示されている様に支配的な干渉であるか否かを判定する主体は、干渉元となっている基地局自身であるのに対し、引用文献1発明においては干渉基地局または干渉ユーザを識別する主体は、サービング基地局である点。

[相違点2]
本願発明においては、『前記複数の通信デバイスのうち、前記干渉を受けた通信デバイスからプリアンブルを受信すること』との事項が特定されているのに対し、引用文献1発明にはその旨特定されていない点。

[相違点3]
本願発明においては、『前記プリアンブルに少なくとも部分的に基づいて、パス・ロスを推定すること』との事項が特定されているのに対し、引用文献1発明にはその旨特定されていない点。

[相違点4]
本願発明においては、『ブランクされる部分から電力が取り除かれる程度を示すブランク係数を、前記パス・ロスに少なくとも部分的に基づいて決定すること』および『前記1または複数の制御チャネルの前記選択された部分における電力を、前記ブランク係数に基づいてブランクすること』との事項が特定されているのに対し、引用文献1発明にはその旨特定されていない点。

(3)判断

上記相違点1?4について検討する。

上記[相違点1]?[相違点4]で言及した本願発明で特定されている事項は全て、干渉元となっている基地局自身が実行するものであり、「セクター間干渉を低減するサブバンドを決定するプロセス」を「サービング基地局」が実行する引用文献1発明とは、動作主体が異なっており、また、引用文献2発明においても上記各相違点で言及した事項を干渉元となっている基地局自身が実行することは開示されていない。
そして、引用文献1発明および引用文献2発明において、干渉を制御するためにサービング基地局が実行する事項を干渉元となっている基地局自身に実行させることは、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

(4)小括

したがって、本願発明は、当業者が引用文献1発明および引用文献2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

本願の請求項2?15に係る発明についても、上記相違点1?4に係る構成を全て有しているので、本願発明と同様に、当業者が引用文献1発明および引用文献2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。


第4 当審拒絶理由について

1.当審拒絶理由の概要

「 理 由

<理由A>
この出願は、下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。



平成27年7月31日付け手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、国際公開第2005/117283号の開示内容に照らしてみると、「前記複数の通信デバイスのうち、前記干渉を受けた通信デバイスからプリアンブルを受信することと、前記プリアンブルに少なくとも部分的に基づいて、パス・ロスを推定することと、ブランクされる部分から電力が取り除かれる程度を示すブランク係数を、前記パス・ロスに少なくとも部分的に基づいて決定することと、前記1または複数の制御チャネルの前記選択された部分における電力を、前記ブランク係数に基づいてブランクすること」との特別な技術的特徴を有している。

しかしながら、請求項14?18、請求項21、請求項22?24、請求項25?28、請求項29?32、請求項33?34、請求項35に係る発明には、上述した特別な技術的特徴を備えておらず、また、他に同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在しているとも認められない。

したがって、この出願は特許法第37条の規定に違反しているので、請求項14?18、請求項21、請求項22?24、請求項25?28、請求項29?32、請求項33?34、請求項35に係る発明については新規性進歩性等の要件についての審査を行っていない。


<理由B>
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



(B-1)
請求項2及び20に記載されている「干渉レベルのインジケーション」に関して、その内容を説明する記載が本願明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず請求項の記載としては不備である。

(B-2)
上記(B-1)と同様に、請求項3?6に記載されている「干渉のインジケーション」に関して、その内容を説明する記載が本願明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず請求項の記載としては不備である。

よって、請求項2?6、20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。


<理由C>
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(C-1)
上記<理由B>で指摘した様に、請求項2及び20に記載されている「干渉レベルのインジケーション」、及び、請求項3?6に記載されている「干渉のインジケーション」が意味する内容が不明である。

(C-2)
請求項2及び20に記載されている「干渉レベルのインジケーション」と請求項3?6に記載されている「干渉のインジケーション」とは、その意味する内容にどの様な違いがあるのか不明である。

よって、請求項2?6、20に係る発明は明確でない。 」

2.当審拒絶理由の判断

(1)<理由A>について

平成28年11月21日付け手続補正書により、特許法第37条の規定に違反しているとして指摘した請求項(即ち、補正前の請求項14-18、21-35)削除されたので、<理由A>は解消した。

(2)<理由B>および<理由C>について

平成28年11月21日付け意見書により、「干渉レベルのインジケーション」および「干渉のインジケーション」の内容について、根拠となる明細書の箇所を示すと共に説明がなされたことにより、その内容が明らかになったので<理由B>および<理由C>は解消した。

(3)小括

したがって、当審で通知した拒絶理由は解消した。


第5 むすび

以上のとおり、原査定の理由および当審拒絶理由によっては、本件特許出願を拒絶することはできない。
また、他に本件特許出願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2014-645(P2014-645)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 65- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠山 敬彦  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 佐藤 智康
吉田 隆之
発明の名称 無線通信チャネルをブランクすること(blanking)  
代理人 奥村 元宏  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  

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