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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08F
管理番号 1324147
審判番号 不服2014-14478  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-24 
確定日 2017-01-18 
事件の表示 特願2009-278622「フッ素化アイオノマー性架橋コポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成22年4月15日出願公開、特開2010-84149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成14年11月19日(パリ条約による優先権主張 2001年12月6日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日として出願された特許出願である特願2003-551173号の一部を新たな特許出願として平成21年12月8日に出願された特許出願であって、平成26年7月24日に拒絶査定不服審判が請求され、当審において平成28年1月20日付けで拒絶理由が通知され、同年7月26日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。



第2 本願発明

平成28年7月26日付け手続補正書により補正された、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、当該発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりであると認められる。

「(a)フッ素化された主鎖、
(b)アイオノマー形成モノマー由来の下式からなるペンダント基、
【化1】

(ここで、XはF、ClまたはBrもしくはそれらの混合物であり、nは0、1または2に等しい整数であり、R_(f)およびR_(f’)は独立にF、Cl、パーフルオロアルキル基、およびクロロパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれ、Yは酸基または酸基に変換できる官能基であり、aは0または0より大きい整数であり、そしてbは0より大きい整数である。)および
(c)CA_(2)=CB-O-の形態からなる少なくとも2つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルモノマー由来のペンダント基(ここで前記ビニル基は4つより多い原子によって隔てられており、Aは独立にF、ClおよびHを含む群から選ばれ、そしてBは独立にF、Cl、HおよびOR_(i)から選ばれ、ここでR_(i)は部分的にまたは完全にフッ素化もしくは塩素化されることができる分岐鎖状または直鎖状アルカンである)
を含んでなるフッ素化アイオノマー性コポリマーであって、添加されるビニルエーテルモノマーの量がフッ素化アイオノマー性コポリマーを基準として0.3重量%?5.0重量%であり、アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度が最終生成物の10モル%と45モル%との間にあり、ビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度が最終生成物中に0.05と2モル%との間にあり、該フッ素化アイオノマー性コポリマーが最小限の架橋でアイオノマー形成モノマー由来の鎖の分岐を含み、該フッ素化アイオノマー性コポリマーが600と950との間の当量重量を有し、該フッ素化アイオノマー性コポリマーから形成され、室温で水和された膜の酸型のイオン伝導度が室温で0.15S/cmより大きい、フッ素化アイオノマー性コポリマー。」



第3 当審における拒絶理由の概要

当審における平成28年1月20日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、以下のとおりのものを含むものである。

「本願発明は、その優先日前に頒布された刊行物である特開2001-185164号に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、その優先日前に頒布された刊行物である特開2001-185164号に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」



第4 本願発明に対する判断

1.本願発明
本願発明は、上記第2で認定のとおりのものである。

2.刊行物
特開2001-185164号(当審拒絶理由で引用した引用文献1。以下、「引用文献」という。)

3.引用文献の記載事項
(1) 本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献には、以下のとおりのことが記載されている(下線は当審による。)。
ア 「【請求項1】共有結合による架橋形成が可能な官能基と、スルホン酸基又はその前駆体基と、を有する含フッ素重合体からなり、かつイオン交換容量が1.0?4.0ミリ当量/g乾燥樹脂であるイオン交換体ポリマーを、溶媒に溶解した溶液であることを特徴とするイオン交換体ポリマー溶液。
【請求項2】含フッ素重合体の基本骨格が、CF_(2)=CF_(2)に基づく重合単位とCF_(2)=CF(OCF_(2)CFX)_(m)-O_(p)-(CF_(2))_(n)Aに基づく重合単位(ここでXはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、Aはスルホン酸基又はその前駆体基であり、mは0?3の整数であり、nは0?12の整数であり、pは0又は1であり、nが0のときにはpも0である。)とからなる共重合体である請求項1に記載のイオン交換体ポリマー溶液。
【請求項3】前記共重合体は、さらに、下記の(A)?(F)のいずれかの化合物をコモノマーとして共重合したものである請求項2に記載のイオン交換体ポリマー溶液。
(A)二重結合を2個有するパーフルオロ不飽和化合物。
(B)臭素原子を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(C)カルボン酸基、カルボン酸塩基又はカルボン酸エステル基を有するポリフルオロエテン若しくはポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(D)水酸基を有するポリフルオロエテン又はポリフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(E)シアノ基を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。
(F)シアナト基を有するパーフルオロエテン又はパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)。」(特許請求の範囲請求項1?3)

イ 「本発明における含フッ素重合体において、架橋形成可能な官能基は、架橋部位を有するラジカル重合性の含フッ素不飽和化合物を共重合させることにより導入される。該含フッ素不飽和化合物が共重合された重合体は、熱処理などにより架橋できる。また、必要に応じて架橋剤を混合してもよい。上記含フッ素不飽和化合物の具体例としては、以下の6種のものが例示される。
第1に、二重結合を2個有するパーフルオロ不飽和化合物が挙げられ、具体的には式8?15の化合物等が好ましく挙げられる。なかでも式13?15の化合物は、反応性の異なる二重結合を有しており、パーフルオロビニロキシ基の側が重合してももう一方の二重結合の重合反応性はそれよりも小さいため重合時には反応せずに架橋部位として容易に樹脂中に導入できる。
ただし、式中、hは2?8の整数であり、iとjはそれぞれ独立に1?5の整数であり、kは0?6の整数であり、rは0?5の整数である。また、sは1?8の整数であり、tは2?5の整数であり、uは0?5の整数である。
【化3】

【化4】

」(段落【0020】?【0024】)

ウ 「【実施例】[例1(実施例)]
[イオン交換体ポリマー溶液の作製]アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として、0.4molのテトラフルオロエチレンと0.134molのCF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(2)Fと0.02molのCF_(2)=CFO(CF_(2))_(3)COOCH_(3)とを、70℃にて、5時間共重合し、イオン交換容量1.27ミリ当量/グラム乾燥樹脂の共重合体を得た。この共重合体を、溶液全体の質量の30%のジメチルスルホキシドと溶液全体の質量の15%の水酸化カリウムを含む水溶液中で加水分解し、1mol/Lの塩酸に室温にて16時間浸漬して酸型(スルホン酸基)に変換し、水洗乾燥した。
これを、エタノールと1、3-ジクロロ-1、1、2、2、3-ペンタフルオロプロパンとの質量比で80/20の混合溶媒に溶解し、溶質濃度が溶液全体の質量の10%の、スルホン酸基及び架橋性カルボン酸基を含有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換体ポリマー溶液を得た。
[燃料電池の作製及び性能の評価]上記溶液(イオン交換容量1.27ミリ当量/グラム乾燥樹脂)を用いて、上記共重合体と白金担持カーボンの質量比が1:3となるように白金担持カーボンを混合分散させて塗工液を得た。その塗工液を、カーボン布上にダイコート法で塗工し、乾燥して厚さ10μm、白金担持量0.5mg/cm^(2)のガス拡散電極層を形成したガス拡散電極を得た。
一方、テトラフルオロエチレンとCF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(2)Fの共重合体(イオン交換容量1.1ミリ当量/グラム乾燥樹脂)を押出し製膜し、加水分解、酸型化、水洗を行って、スルホン酸基を有する、膜厚50μmのイオン交換膜を得た。上記膜を、ガス拡散電極2枚の間に挟み、平板プレス機を用いてプレスした。次いで180℃で2時間加熱して電極中のイオン交換体ポリマーを架橋し、膜-電極接合体を作製した。
この膜-電極接合体の外側にチタン製の集電体、さらにその外側にPTFE製のガス供給室、さらにその外側にヒーターを配置し、有効膜面積9cm^(2)の燃料電池を組み立てた。燃料電池の温度を80℃に保ち、酸化剤極に酸素、燃料極に水素をそれぞれ2気圧で供給した。電流密度1A/cm^(2)のときの端子電圧を測定したところ、端子電圧は0.58Vであった。また、1000時間運転後の端子電圧は0.57Vであった。
[例2(実施例)]例1の共重合体の合成の際に0.02molのCF_(2)=CFO(CF_(2))_(3)COOCH_(3)を使用するかわりに、0.01molのCF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)CF=CF_(2)を用いた以外は、例1と同様にしてイオン交換体ポリマー溶液を調製した。得られた溶液(イオン交換容量1.28ミリ当量/グラム乾燥樹脂)を用いて、例1と同様に膜-電極接合体を作製して燃料電池を組み立て、例1と同様に評価した。電流密度1A/cm^(2)のときの端子電圧を測定したところ、端子電圧は0.59Vであった。また、1000時間運転後の端子電圧は0.57Vであった。」(段落【0048】?【0053】)

4.引用文献に記載された発明
上記3.ウの例2の摘示(特に、下線部)から、引用文献には次のとおりの発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として、0.4molのテトラフルオロエチレンと0.134molのCF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(2)Fと0.01molのCF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)CF=CF_(2)とを共重合して得た共重合体を、加水分解した後、酸型(スルホン酸基)に変換して得られた、スルホン酸基及び架橋性パーフルオロビニルエーテル基を含有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換体ポリマー。」

5.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「テトラフルオロエチレン」を共重合して得られた「パーフルオロカーボン重合体」は本願発明の「(a)フッ素化された主鎖を含んでなるフッ素化アイオノマー性コポリマー」に相当し、同じく「CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(2)F」は「下式(以下、式の記載及び式の説明を省略する。)からなるペンダント基」をもたらす「アイオノマー形成モノマー」に、「CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)CF=CF_(2)」は「CA_(2)=CB-O-の形態からなる少なくとも2つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルモノマー(以下、式の説明を省略する。)」に各々相当するから、両者は、「(a)フッ素化された主鎖、
(b)アイオノマー形成モノマー由来の下式からなるペンダント基、
および
(c)CA_(2)=CB-O-の形態からなる少なくとも2つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルモノマー由来のペンダント基
を含んでなるフッ素化アイオノマー性コポリマー。」で一致しており、以下の相違点で一応相違するといえる。

<相違点1>
添加されるビニルエーテルモノマーの量について、本願発明では、「フッ素化アイオノマー性コポリマーを基準として0.3重量%?5.0重量%」と特定しているのに対し、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

<相違点2>
アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度について、本願発明では、「最終生成物の10モル%と45モル%との間」と特定しているのに対し、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

<相違点3>
ビニルエーテルモノマー由来のペンダント基の濃度について、本願発明では、「最終生成物中に0.05と2モル%との間」と特定しているのに対し、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

<相違点4>
本願発明では、「フッ素化アイオノマー性コポリマーが最小限の架橋でアイオノマー形成モノマー由来の鎖の分岐を含む」と特定しているのに対し、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

<相違点5>
フッ素化アイオノマー性コポリマーの当量重量について、本願発明では、「600と950との間」と特定しているのに対し、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

<相違点6>
フッ素化アイオノマー性コポリマーから形成され、室温で水和された膜の酸型のイオン伝導度について、本願発明では、「室温で0.15S/cmより大きい」と特定しているのに対し、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

6.判断
(1)相違点1について
相違点1について検討すると、引用発明において添加されるビニルエーテルモノマー「CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)CF=CF_(2)」の量は、仕込み量で0.01molであり、その分子量444から4.4gと計算される。
そして、他のモノマーについて計算すると、テトラフルオロエチレン(分子量100)の0.4molで40g、CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(2)Fが酸基型であるCF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(3)H(分子量444)として0.134molで59.5gであるから、これらのモノマーが全てポリマーとなったとして計算すると、ポリマーに対して4.2重量%となる。そうすると、相違点1は実質的な相違点ではない。

(2)相違点2について
相違点2について検討すると、引用発明において添加されるビニルエーテルモノマー「CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)CF=CF_(2)」の量は仕込み量で0.01molであり、テトラフルオロエチレンは0.4molで、CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(2)Fが0.134molであるから、これらのモノマーが全てポリマーとなったとして計算すると、アイオノマー形成モノマーおよびビニルエーテルモノマーの合計は、ポリマーに対して26.5モル%となる。そうすると、相違点2は実質的な相違点ではない。

(3)相違点3について
相違点3について検討すると、引用発明において添加されるビニルエーテルモノマー「CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)CF=CF_(2)」の量は仕込み量で0.01molであり、テトラフルオロエチレンは0.4molで、CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(2)Fが0.134molであるから、これらのモノマーが全てポリマーとなったとして計算すると、ビニルエーテルモノマーは、ポリマーに対して1.8モル%となる。そうすると、相違点3は実質的な相違点ではない。

(4)相違点4について
相違点4について検討すると、引用文献には、「共有結合による架橋形成が可能な官能基と、スルホン酸基又はその前駆体基と、を有する含フッ素重合体からなり、・・・であるイオン交換体ポリマー」(上記3.(1)アの摘示)と記載されているのであるから、引用発明に係るイオン交換体ポリマーは、共有結合による架橋形成が可能な官能基を有するもの、すなわち、当該共有結合による架橋形成が可能な官能基は架橋する前の段階で存在しているものであるといえる。そうすると、引用発明においても、フッ素化アイオノマー性コポリマーが最小限の架橋でアイオノマー形成モノマー由来の鎖の分岐を含むものであるといえるから、相違点4は実質的な相違点ではない。

(5)相違点5について
相違点5について検討すると、本願発明の当量重量とは、「1当量のNaOHを中和するために要求される酸型ポリマーの重量」(本願の明細書の段落【0003】)であり、これを計算により算出すると、引用発明において添加されるモノマーは、仕込み量で、テトラフルオロエチレン(分子量100)が0.4mol、CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(2)Fが酸基型であるCF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(3)H(分子量444)として0.134mol、ビニルエーテルモノマー「CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)CF=CF_(2)」(分子量444)が0.01molであるから、これらのモノマーが全てポリマーとなったとして計算すると、イオン交換体ポリマーのSO_(3)H基1モル当たりの当量、すなわち、フッ素化アイオノマー性コポリマーの当量重量は775となる。そうすると、相違点5は実質的な相違点ではない。

(6)相違点6について
相違点6について検討すると、室温で水和された膜の酸型のイオン伝導度は、アイオノマー性コポリマー中のスルホン酸基の量に大きく影響されるものと認められるところ、上記(1)で述べたとおり、引用発明においては、CF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(2)Fが酸基型であるCF_(2)=CFOCF_(2)CF(CF_(3))O(CF_(2))_(2)SO_(3)Hとして、ポリマー中に24.6モル%あるいは57.3重量%含有されるものである。そうすると、引用発明においても、室温で水和された膜の酸型のイオン伝導度が室温で0.15S/cmより大きいといえるから、この点は引用発明との対比において実質的な相違点ではない。仮にそうでないとしても、イオン交換体ポリマーにおいて、得られる膜のイオン伝導度を大きくしようとすることは基本的な課題にすぎないものであると認められることから、当該イオン伝導度を室温で0.15S/cmより大きいと特定する程度のことは、当業者であれば容易になし得ることであり、そのことによる効果も当然に予測し得ることである。
したがって、相違点6は実質的な相違点ではないか、あるいは当業者が適宜なし得ることである。

7.まとめ
上記検討のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。あるいは、本願発明は、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。



第5 むすび

以上のとおり、本願発明、すなわち、平成28年7月26日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。あるいは、本願発明は、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について更に検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-16 
結審通知日 2016-08-23 
審決日 2016-09-05 
出願番号 特願2009-278622(P2009-278622)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C08F)
P 1 8・ 113- WZ (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 車谷 治樹  
特許庁審判長 守安 智
特許庁審判官 小野寺 務
前田 寛之
発明の名称 フッ素化アイオノマー性架橋コポリマー  
代理人 高橋 正俊  
代理人 青木 篤  
代理人 出野 知  
代理人 明石 尚久  
代理人 胡田 尚則  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  

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