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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1324152
審判番号 不服2015-2261  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-05 
確定日 2017-01-18 
事件の表示 特願2012-515005「薄膜合金電極」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月16日国際公開、WO2010/144320、平成24年11月22日国内公表、特表2012-529747〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年 6月 4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年 6月 9日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成25年 4月26日付けで特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成26年 1月23日付けで拒絶理由が通知され、同年 4月28日付けで意見書と、特許請求の範囲を補正する、手続補正書とが提出され、同年 10月 3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成27年 2月 5日付けで拒絶査定不服審判の審判請求書が提出され、同年 3月 4日付けで審判請求書を補正する手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、平成26年 4月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
薄膜電極であって、
多結晶アルミニウムと、電気化学的に活性な少なくとも1つの追加の構成成分と、を含む薄箔を有し、
前記電気化学的に活性な追加の構成成分が、前記多結晶アルミニウム内で分離し、かつ析出物、粒界、又はこれらの組み合わせを形成し、
前記箔が500μm未満の厚さを有する、薄膜電極。
【請求項2】
リチウムイオン電気化学セルであって、
正極と、負極と、を備え、
前記負極が、多結晶アルミニウムと、電気化学的に活性な少なくとも1つの追加の構成成分と、を含む薄箔を有し、
前記電気化学的に活性な追加の構成成分が、前記多結晶アルミニウム内で分離し、かつ析出物、粒界、又はこれらの組み合わせを形成し、
前記箔が500μm未満の厚さを有する、リチウムイオン電気化学セル。
【請求項3】
リチウムイオン電気化学セルであって、
正極と、負極と、を備え、
前記負極が、多結晶アルミニウムと、電気化学的に活性な少なくとも1つの追加の構成成分と、を含む薄箔からなり、
前記電気化学的に活性な追加の構成成分が、前記多結晶アルミニウム内で分離し、かつ析出物、粒界、又はこれらの組み合わせを形成し、
前記箔が500μm未満の厚さを有する、リチウムイオン電気化学セル。」

そして、これらの発明のうち、本願の請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。


第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「本願発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」という理由を含んでいる。


引用文献1:特開昭61-208750号公報


第4 引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の記載がある(当審注:「…」は記載の省略を表す。)。
(1)「…加工硬化、時効硬化などの硬化処理をしたアルミニウム板やアルミニウム合金板には粒界や転位が多く存在し、この粒界や転位が多く存在することによってリチウムとアルミニウムまたはアルミニウム合金との電気化学的合金化や、リチウムのアルミニウム結晶中への拡散が速められ、合金化が多量にかつ速く進行して電池の充放電特性が向上するのである。
ここにおいて、粒界とは材料中の不純物などの集まりによって生成するものであるが、加工硬化、時効硬化などの硬化処理をすると、アルミニウムの結晶は圧縮されて扁平になり、結晶粒子間に存在する粒界は高密度になる。…これら粒界や転位が多く存在すると、電気化学的合金化はこの粒界と転位を通って起こりやすく、その後、アルミニウムの結晶中にリチウムが拡散するので、アルミニウムやアルミニウム合金を硬化処理して粒界や転位を多く存在させておくと、前述のようにリチウムとの電気化学的合金化反応やリチウムのアルミニウムの結晶中への拡散が速くなるのである。」(第2頁左上欄第9行?同頁右上欄第11行)

(2)「本発明において、加工硬化とは金属材料が常温における圧延、引抜きなどの冷間加工によって硬化することをいい、時効硬化とは急冷または冷間加工を受けた金属材料が常温もしくは高温においてその性質が変化して硬化することをいう。
上記のような硬化処理をしたアルミニウム板やアルミニウム合金板はH材の略称で市販されている。」(第2頁右上欄第12?19行)

(3)「実施例1
厚さ0.24mmのリチウム板と厚さ0.25mmの加工硬化処理をしたアルミニウム板(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)とを重ね合わせ、電池組み込みにより電解液と接触させ、電気化学的合金化を行って負極とした。このリチウム-アルミニウム合金におけるリチウムとアルミニウムとの割合は、原子比でリチウム:アルミニウムが42.5:57.5である。」(第3頁左上欄第17行?同頁右上欄第5行)

(4)「第1図において、1は負極缶で、この負極缶1はステンレス鋼製で表面にニッケルメッキが施されており、2はステンレス鋼製の集電網で、上記負極缶1の内面にスポット溶接されている。3は負極で、この負極3は前記のようにリチウム板3aと、加工硬化処理したアルミニウム板3bとを重ね合わせ、電池組込みにより電解液と接触させ、電気化学的合金化を行ったものである。なお、図面では理解を容易にするために合金化が進行する前の状態で示しているが、実際の電池では合金化が進行して図示の状態とは異なった状態になる。たとえばリチウムが約48原子%以上では合金化により一体化してリチウム-アルミニウム合金となって、図示のような境界線はなくなる。しかし、リチウムの原子比が本実施例のように約48原子%より少ない場合にはアルミニウムが一部残り、リチウム-アルミニウム合金層とアルミニウム層とになる。」(第3頁右上欄第14行?同頁左下欄第11行)

(5)

上記(3)?(4)の記載を考慮すると、第1図からは、実施例1において、電気化学的合金化が進行する前の負極は、境界線を介して、セパレータ4の側に配置された、リチウム板3aと、ステンレス鋼性の集電網2の側に配置された、硬化処理したアルミニウム板3bとの重ね合わせからなっていたことが見て取れる。


第5 当審の判断
5-1 引用文献1に記載された発明
ア. 上記第4の(3)によれば、引用文献1には、厚さ0.24mmのリチウム板と厚さ0.25mmの加工硬化処理をしたアルミニウム板(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)とを重ね合わせ、電池組み込みにより電解液と接触させ、電気化学的合金化を行った負極が記載されているところ、その負極は、厚さ0.24mmのリチウム板と厚さ0.25mmの加工硬化処理をしたアルミニウム板(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)との合計の厚さを有することから、厚さ0.49mmの負極であると認められる。

イ. ここで、上記第4の(5)によれば、電気化学的合金化が進行する前の負極は、境界線を介して、セパレータ4の側に配置された、リチウム板3aと、ステンレス鋼性の集電網2の側に配置された、硬化処理したアルミニウム板3bとの重ね合わせからなっていたと認められる。

ウ. また、上記第4の(4)によれば、リチウムが約48原子%以上では合金化により一体化してリチウム-アルミニウム合金となって、図示のような境界線はなくなるが、リチウムの原子比が約48原子%より少ない場合には、アルミニウムが一部残り、リチウム-アルミニウム合金層とアルミニウム層とになるとされている。

エ. そうすると、上記ア.に示した電気化学的合金化を行った負極においては、上記第4の(3)によれば、リチウム-アルミニウム合金におけるリチウムとアルミニウムとの割合は、原子比でリチウム:アルミニウムが42.5:57.5であるとされているから、上記第4の(4)によれば、リチウムの原子比が約48原子%より少ないため、アルミニウムが一部残り、リチウム-アルミニウム合金層とアルミニウム層とからなっている、すなわち、原子比でリチウム:アルミニウムが42.5:57.5であるリチウム-アルミニウム合金層とアルミニウム層とからなっているといえるところ、上記イ.に示したように、電気化学的合金化が進行する前の負極は、境界線を介して、セパレータ4の側に配置された、リチウム板3aと、ステンレス鋼製の集電網2の側に配置された、硬化処理したアルミニウム板3bとの重ね合わせからなっていたことを考慮すると、当該電気化学的合金化を行った負極におけるアルミニウム層とは、硬化処理したアルミニウム板3bの一部の残り、すなわち、厚さ0.25mmの加工硬化処理をしたアルミニウム板(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)の一部の残りにほかならず、厚さ0.25mm未満の加工硬化処理をしたアルミニウム板(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)といえる。

オ. 上記ア.?エ.での検討を踏まえると、引用文献1には、「原子比でリチウム:アルミニウムが42.5:57.5であるリチウム-アルミニウム合金層と、厚さ0.25mm未満の加工硬化処理をしたアルミニウム板(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)とからなっている、厚さ0.49mmの負極」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。


5-2 本願発明と引用発明との対比・検討
ア. 本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明における「厚さ0.49mmの負極」、「厚さ0.25mm未満の加工硬化処理をしたアルミニウム板(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)」は、技術常識からすると、それぞれ、本願発明における「薄膜電極」、「薄箔」であって「前記箔が500μm未満の厚さを有する」ことに相当するから、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<一致点>
薄膜電極であって、薄箔を有し、前記箔が500μm未満の厚さを有する、薄膜電極の点。

<相違点>
相違点1:薄箔が、本願発明では、「多結晶アルミニウムと、電気化学的に活性な少なくとも1つの追加の構成成分と、を含」み、「前記電気化学的に活性な追加の構成成分が、前記多結晶アルミニウム内で分離し、かつ析出物、粒界、又はこれらの組み合わせを形成し」ているのに対し、引用発明では、加工硬化処理をしたアルミニウム(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)からなるものの、多結晶アルミニウムと、電気化学的に活性な少なくとも1つの追加の構成成分と、を含み、前記電気化学的に活性な追加の構成成分が、前記多結晶アルミニウム内で分離し、かつ析出物、粒界、又はこれらの組み合わせを形成しているのか否かが明らかでない点。


イ. そこで、上記相違点1につき、以下、検討するに、上記ア.に示したように、引用発明において、薄箔は加工硬化処理をしたアルミニウム(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)からなる。

ウ. ここで、上記第4の(2)によれば、加工硬化とは金属材料が常温における圧延、引抜きなどの冷間加工によって硬化することをいうが、そのような硬化処理をしたアルミニウム板やアルミニウム合金板はH材の略称で市販されており、そして、上記第4の(1)によれば、加工硬化処理をしたアルミニウム板やアルミニウム合金板には粒界が多く存在するところ、粒界とは材料中の不純物などの集まりによって生成するものであり、加工硬化処理をすると、アルミニウムの結晶は圧縮されて扁平になり、結晶粒子間に存在する粒界は高密度になるとされている。

エ. 上記ウ.に示したことからすると、上記イ.に示した、加工硬化処理をしたアルミニウム(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)は、H材の略称で市販されている、加工硬化処理をしたアルミニウムであることから、アルミニウム中の不純物であるケイ素、鉄などの集まりによって生成する粒界が多く存在しており、加工硬化処理をしたことで、アルミニウムの結晶粒子は圧縮されて扁平になっており、前記の結晶粒子の間に存在する粒界が高密度になっているアルミニウムであるといえる。

オ. 上記イ.?エ.に示したことを考慮すると、上記イ.に示したような、薄箔は加工硬化処理をしたアルミニウム(H材)(純度、約99.5%、不純物は主にケイ素、鉄)からなるということは、前記薄箔は、不純物であるケイ素、鉄などの集まりによって生成する粒界が多く存在しており、アルミニウムの結晶粒子は圧縮されて扁平になっており、前記の結晶粒子の間に存在する粒界が高密度になっているアルミニウムでなることを意味しているところ、扁平になっている結晶粒子の間に存在する粒界が多く存在するということは、扁平になっている結晶粒子も多く存在していることになるから、前記アルミニウムは扁平になっている結晶粒子の集合体、すなわち、多結晶アルミニウムであるといえるため、引用発明における薄箔は、不純物であるケイ素、鉄などの集まりによって生成する粒界が多く存在しており、アルミニウムの結晶粒子は圧縮されて扁平になっており、前記の結晶粒子の間に存在する粒界が高密度になっている、多結晶アルミニウムからなると認められる。

カ. 上記オ.に示した認定は、金属材料などの結晶性材料は、全体が一つの結晶であることはまれで、ふつう微細な結晶粒の集合体、すなわち多結晶体であり、この微細な結晶粒の間の界面を結晶粒界(grain boundary)とよぶ(日本金属学会編「改訂5版 金属便覧」第4刷 平成5年10月10日 丸善発行,p.169「2・4・5 結晶粒界」の項参照。)との技術常識と整合する。

キ. ところで、本願発明における「電気化学的に活性な少なくとも1つの追加の構成成分」について、本願の明細書には、「薄膜アルミニウム電極は、電気化学的に活性な少なくとも1つの追加の構成成分(金属又は合金)を含む。有用な電気化学的に活性な材料としては、スズ、ケイ素、アンチモン、鉛、ゲルマニウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、ビスマス、インジウム、銀、金及びガリウムが挙げられる。」(【0018】)との記載がある。

ク. 上記キ.に示したことからすると、上記オ.に示した、アルミニウム中の不純物のうちのケイ素は、本願発明における「電気化学的に活性な追加の構成成分」であるといえる。

ケ. 上記イ.?ク.での検討を踏まえると、引用発明における薄箔は、多結晶アルミニウムと電気化学的に活性な追加の構成成分であるケイ素とを含んでいるといえるし、そのケイ素は鉄などの不純物とともに集まって多くの粒界を生成していることからして、前記電気化学的に活性な追加の構成成分が、前記多結晶アルミニウム内で分離し、かつ析出物、粒界、又はこれらの組み合わせを形成しているといえるため、引用発明は、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を備えていることになる。

コ. 以上のとおり、上記相違点1は実質的な相違点ではないから、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。


5-3 小括
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


5-4 補足
ア. 請求人の主張
請求人は、平成27年 3月 4日付けで提出された、審判請求書を補正する手続補正書(以下、「審判請求書の補正書」という。)で、「
(ア)「多結晶」とは、急速凝固により得られる、複数の異なるタイプの、異なる配向を有する結晶を有するものであり、
(イ)このことは、実際、本願の図2は、実施例1で作製された薄膜電極の多結晶アルミニウムのSEM写真であって、結晶子がランダムな配向をとっているのに対し、審判請求書の補正書に添付された参考資料は、多結晶ではないアルミニウムの破断面のTEM写真であり、結晶子が同じ配向を取っており、これらの対比からも明らかであり、
(ウ)上述の「多結晶」の意味に鑑みれば、「粒界」が存在するからといって、「多結晶」であるとはいえないし、
(エ)さらに、引用文献1における硬化処理を施す前のアルミニウムは既製品であり、制御された条件下で(例えば引用文献1の硬化処理)製造されるものであるので、「多結晶アルミニウム」ではないと考えるのが合理的である。」旨主張している。


イ. 当審の見解
しかしながら、請求人の上記ア.に示した主張は、以下の理由により、採用できない。
(ア) 多結晶体では結晶粒の方位が完全に無秩序であるとは限らず、特定の方位の結晶粒が優先していることも多く、はっきりした優先方位をもつ状態は、集合組織(texture)とよばれ、また、金属の圧延板やそれを再結晶させたものは、しばしば板の表面が特定の結晶面に平行となり、しかもその面内の一つの方向が特定の結晶方位をとるが、これらは、それぞれ圧延集合組織(rolling texture)および再結晶集合組織(recrystallization texture)とよばれる(日本金属学会編「改訂5版 金属便覧」第4刷 平成5年10月10日 丸善発行,p.287「a.集合組織の種類」の項参照。)との技術常識、および、多結晶体は、配向性をもつ多結晶体であること、すなわち集合組織をもつことが多いが、結晶が等方的に配列することもある(日本金属学会編「改訂5版 金属便覧」第4刷 平成5年10月10日 丸善発行,p.276「a.集合組織と単結晶の異方性」の項参照。)との技術常識からすると、請求人の上記ア.(ア)に示した主張は、技術常識と整合する主張とはいえず、採用できない。

(イ) 請求人が審判請求書の補正書に添付した参考資料には、次の記載がある。
Analytical electron microscopes are used to teach principles of highprecision engineering design and microcharacterization of materials.

Scanning electron microscopy (SEM) of materials.
Below are SEM micrographs of the broken ends of metal slugs of various compositions.The slugs were prepared during a lab session demonstrating mechanical properties of materials using the Instron to stretch the slugs to their breaking point. The SEM reveals that the materials have different microstructure that,in part, accounts for their different behavior under strain.


(当審訳:材料の高精度の工学デザインとミクロ特性評価の原理を教授するために、電子顕微鏡検査が用いられた。

走査型電子顕微鏡を使った材料の観察手法(SEM)
種々の組成のメタルスラグの破断端のSEM画像を以下に示す。スラグは、それらの破断点まで引っ張るインストロン型万能試験機を用いて、材料の機械的性質を実証するラボセッションにおいて用意された。材料が、応力下での異なる挙動の原因の一部をなす、異なる微細構造をもつことを、SEMは明らかにする。

真鍮(左下)、鋼(右下)
銅(左下)、アルミニウム(右下))

(ウ) 上記(イ)に示したように、審判請求人が審判請求書の補正書に添付した参考資料には、SEM画像が示されているアルミニウムについて、どのような材料であるのかについての記載はないから、前記アルミニウムは、一般的なものといえるところ、一般の金属や合金は多結晶体である(「金属術語辞典」改訂版第31刷 2000年4月10日 アグネ承風社発行,p.184「単結晶」の項)との技術常識からすると、前記アルミニウムは多結晶体であるといえるため、請求人の上記ア.(イ)に示した主張は、当を得た主張とはいえず、採用できない。

(エ) 金属材料などの結晶性材料は、全体が一つの結晶であることはまれで、ふつう微細な結晶粒の集合体、すなわち多結晶体であり、この微細な結晶粒の間の界面を結晶粒界(grain boundary)とよぶ(日本金属学会編「改訂5版 金属便覧」第4刷 平成5年10月10日 丸善発行,p.169「2・4・5 結晶粒界」の項参照。)との技術常識からすると、引用発明のように、「粒界」が多数存在するアルミニウムは、「多結晶アルミニウム」といえるため、請求人の上記ア.(ウ)?(エ)に示した主張は、技術常識と整合する主張とはいえず、採用できない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に公知となった引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるとの、原査定の拒絶の理由は妥当である。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-12 
結審通知日 2016-08-16 
審決日 2016-09-07 
出願番号 特願2012-515005(P2012-515005)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 斉▲辻▼ 弘輔  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 宮澤 尚之
小川 進
発明の名称 薄膜合金電極  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 城戸 博兒  
代理人 池田 正人  
代理人 池田 成人  
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