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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1324210
審判番号 不服2016-3907  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-14 
確定日 2017-01-26 
事件の表示 特願2012-19805「便器梱包部材」拒絶査定不服審判事件〔平成25年8月19日出願公開、特開2013-159342〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成24年2月1日の出願であって、平成25年9月2日に手続補正書が提出され、平成27年7月10日付けで拒絶理由が通知され、平成27年9月14日に意見書が提出され、平成27年12月7日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、平成28年3月14日に本件審判の請求がなされ、当審において、平成28年6月15日付けで拒絶理由を通知し、平成28年8月22日に意見書と手続補正書が提出された。

2.本願発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年8月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「便器を梱包するための便器梱包部材であって、この便器梱包部材の表面に、梱包される前記便器の図面が表示され、この図面に前記便器に備えられる排水筒の下流側端部、又は、前記便器に備えられる排水アジャスタの下流側端部、又は、前記排水筒又は前記排水アジャスタに接続される外部の排水管の上流側端部が表示され、且つ、前記排水筒の下流側端部又は前記排水アジャスタの下流側端部又は前記排水管の上流側端部の位置を特定するための寸法表示がされていることを特徴とする便器梱包部材。」

3.刊行物記載事項
(1)刊行物1
本件出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に刊行物1として引用された特開平7-165230号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、電子レンジ、冷蔵庫や暖房機のような家電機器の製品(被梱包体)を梱包する梱包容器に係り、特に、製品の設置条件を表示する梱包容器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子レンジのような家電製品の設置条件の表示手段は、その製品の取扱説明書の中に据付方法を図形や文章でなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した取扱説明書による設置条件の表示手段は、取扱説明書を読まないと設置条件が解らず、購入後、取扱説明書を取出して読むことを余儀無くされるばかりでなく、取扱説明書の据付方法の図及び文章では、設置条件が直感的に理解できないおそれもある。
【0004】本発明は、上述した問題を解決するために、製品を梱包する梱包材の表面に上記製品の設置条件を実寸大の図形等で表示し、梱包材の表面を見て製品の設置条件を理解可能な梱包容器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、製品を梱包する梱包材の表面に上記製品の設置条件を図形等で表示したものである。
【0006】
【作用】本発明は、製品の購買時及び設置時に梱包材の表面に図形等で表示した上記製品の設置条件を見て理解し、設置場所を想定しながら製品の選択をしてユーザーの便宜を図り、購買意欲を喚起するものである。」

イ.「【0007】
【実施例】以下、本発明を電子レンジに適用した図示のー実施例について説明する。
【0008】図1において、符号1は、例えば、電子レンジのような製品(被梱包体)2を梱包する段ボール箱による梱包材(梱包筐体)であって、この梱包材1の表面1aには、上記製品2の設置条件を記載した文字、記号、寸法及び図形3が表示されている。
【0009】特に、上記梱包材1の表面1aには、段ボール箱の外形寸法が製品2の実寸大の設置条件の寸法として製品2の正面左右の間隙3aと上隙間3bの大きさを表示しており、上記梱包材1の側面1bには、段ボール箱の外形が製品2の実寸大の設置条件の寸法にして形成されると共に、製品2の上記上隙間3bと後部間隙3cの大きさが表示されている。」

ウ.「【0012】したがって、本発明は、製品2の購買時及び設置時に梱包材1の表面に図形3等で表示することにより、この梱包材1の表面に記載された図形3等から上記製品2の設置条件を見て理解し、ユーザーが設置場所を想定しながら製品2の選択の便宜を図り、購買意欲を喚起できるものである。
【0013】なお、本発明は、電子レンジに適用した実施例について説明したけれども、本発明の要旨を変更しない範囲内で、例えば、冷蔵庫や暖房機のような家電機器の製品に使用するように設計変更することは自由である。」

エ.上記イ.を参照しつつ【図1】を見ると、梱包材1の表面1a及び側面1bには、図形3、矢印記号、「5cm以上」及び「10cm以上」との寸法を示す文字が表示されていると解される。

オ.上記イ.を参照しつつ【図1】を見ると、図形3には、製品2の左右側面、上面、後面を示す線が含まれていると解される。

カ.上記エ.、オ.と【図1】より、製品の左右側面を示す線、矢印記号、及び「5cm以上」との寸法を示す文字により、正面左右の間隙3aは、製品の左右側面から左右方向に5cm以上であることが表示されていると解される。

キ.上記エ.、オ.と【図1】より、製品の上面を示す線、矢印記号、及び「10cm以上」との寸法を示す文字により、上隙間3bは、製品の上面から上方向に10cm以上であることが表示されていると解される。

ク.上記エ.、オ.と【図1】より、製品の後面を示す線、矢印記号、及び「10cm以上」との寸法を示す文字により、後部間隙3cは、製品の後面から後方向に10cm以上であることが表示されていると解される。

ケ.上記イ.及びエ.ないしク.より、製品2の左右側面、上面、後面を示す線の図示と、矢印記号及び寸法を示す文字の表示により、製品2の設置条件である製品2の正面左右の間隙3a、上隙間3b、後部間隙3cが、梱包材1の表面1a及び側面1bに示されていると解される。

これらを整理すると、刊行物1には以下の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。

「電子レンジのような家電機器の製品を梱包するための梱包材であって、この梱包材の表面及び側面に、梱包される前記電子レンジのような家電機器の製品の図形、矢印記号、及び、寸法を示す文字が表示され、前記電子レンジのような家電機器の製品の設置条件である当該製品の正面左右の間隙、上隙間、後部間隙が、当該製品の左右側面、上面、後面を示す線の図示と、矢印記号及び寸法を示す文字の表示により示されている梱包材。」

(2)刊行物2
同じく刊行物2として引用された実願昭53-15988号(実開昭54-123272号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

「以下これを図面に示す実施例に従がつて説明すると、1は例えば温風暖房器の如き製品を収納する外装箱で表面に下部稜線2を底面とする製品実物大の姿図3が印刷され、さらにこの姿図3には製品据付時の壁面への配管用穴明け位置4が表示されている。」(明細書の1ページ最終行ないし2ページ5行)

(3)刊行物4
同じく刊行物4として引用された特開平8-175529号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。

「【0005】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は梱包材の半開状態の斜視構成図であり、図2はフラップを閉じた状態の斜視構成図である。図において、梱包材1は内部に便器を収容可能にダンボール製で形成されており、一対の長側面2,2と一対の短側面3,3で包囲された箱状をなし、一対の長側面2の上端部には折曲可能にそれぞれ長フラップ4,4が一体形成されており、また、前記一対の短側面3,3の上端にはそれぞれ折曲可能に短フラップ7,7が一体形成されたものとなっており、短フラップ7,7を折り曲げた状態で、その上面側に前記一対の長フラップ4,4を交差状に折り重ねることができるように構成されており、前記それぞれの長フラップ4,4の上端側の両端にはそれぞれ折曲線5,5を介し内側へ折り曲げ可能に差込片6,6が一体形成されたものとなっており、一方、前記短フラップ7,7にはそれぞれ前記差込片6,6を差し込み可能に差込用切欠8,8,8,8が形成されたものとなっている。」

(4)刊行物5
同じく刊行物5として引用された特開2009-241966号公報(以下「刊行物5」という。)には、以下の記載がある。

「【0001】
本発明は、被梱包物を搬送したり、保管したりする際の梱包資材として使用される梱包箱に関し、例えば、便器などの衛生陶器やテレビなどの家電品など比較的重量の重い易損部品の梱包に好適に使用できる梱包箱に関する。」

(5)刊行物6
同じく刊行物6として引用された特開平11-43980号公報(以下「刊行物6」という。)には、以下の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】従来より、例えば図6に示すように、便器本体1の下部の内側に便器排水口2が形成された洋式水洗便器においては、便器排水口2を便器本体1の下方に配設された床下排水管13に床フランジ14を介して直接接続するようにしているが、便器本体1を取り替える場合は、便器本体1の後端から便器排水口2までの寸法は様々であり、新たな便器本体の後端から便器排水口までの寸法が既設の便器本体1の後端から便器排水口2までの寸法と一致しない場合が多く、便器本体1の据え付け位置をずらす必要が生じる場合があり、かかる場合、トイレルーム3の寸法によっては便器本体1を据え付けることができなくなって、床下工事や床面工事等のような大掛りな工事を行う必要が生じることがあった。」

(6)刊行物7
同じく刊行物7として引用された特開2002-97706号公報(以下「刊行物7」という。)には、以下の記載がある。

「【0002】
【従来の技術】従来の便器と排水管との接続装置としては、例えば特開平7-526239号及び図4に見られるものが知られている。この種の便器と排水管との接続装置11は、図4に示されるように便器の排水口に接続される便器側接続管12と、床面または壁面に配設された排水管と接続される排水側接続管14と、便器側接続管12と排水側接続管14を連結する連結管13とからなる。一方、建物側の排水管位置(壁面から排水管までの距離,一般「ラフィン」と称される)は便器の仕様によって決定される。改築などにより便器を交換する場合、交換前に設置していたものと仕様が異なると、便器本体の排水口の位置が変わることがある。・・・。」

(7)刊行物8
同じく刊行物8として引用された特開2002-180514号公報(以下「刊行物8」という。)には、以下の記載がある。

「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術では、床上排水の大便器をキャビネット内に配管を隠蔽するタイプのトイレユニットに改修する場合は、既存の排便管の位置の変更が出来ない場合が殆どで、既存の排便管がキャビネットの奥行の範囲内に収まる場合しか設置できなかった。また仮に排便管の位置を変更する場合は、工事が大掛かりになってしまうという欠点があった。」

(8)刊行物9
同じく刊行物9として引用された特開2010-101165号公報(以下「刊行物9」という。)には、以下の記載がある。

「【0002】
トイレのリフォームを行うに際し、古い便器を新しい洋風便器に付け替える場合、既設の排水管と新しい洋風便器の排水口とがずれることが多い。・・・。」

4.本願発明と刊行物1発明との対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

ア.刊行物1発明の「電子レンジのような家電機器の製品」を梱包するための梱包材には、「前記電子レンジのような家電機器の製品の設置条件である当該製品の正面左右の間隙、上隙間、後部間隙が、当該製品の左右側面、上面、後面を示す線の図示と、矢印記号及び寸法を示す文字の表示により示されている」ことから、刊行物1発明の「電子レンジのような家電機器の製品」は、設置条件として、設置時の周囲との寸法関係が限定されるものと解される。
一方、本願発明の「便器」を梱包するための梱包材には、「前記便器に備えられる排水筒の下流側端部、又は、前記便器に備えられる排水アジャスタの下流側端部、又は、前記排水筒又は前記排水アジャスタに接続される外部の排水管の上流側端部が表示され、且つ、前記排水筒の下流側端部又は前記排水アジャスタの下流側端部又は前記排水管の上流側端部の位置を特定するための寸法表示がされている」が、これは、本願明細書の段落【0008】ないし【0017】及び段落【0044】ないし【0046】の記載によると、「便器をトイレルームに設置するには、トイレルームに設けられた排水管に便器の排水部を接続することが条件となるため、便器の排水部の位置がわからなければ、梱包されている便器が想定しているトイレルームに設置できるか、どうか、あるいは、設置できるとしても、トイレルーム内の最も好ましい位置に設置できるかということは分からない」という課題を解決するためのものであり、具体的には、「トイレルームの床面から排水部までの寸法表示」や「トイレルームの奥側の壁面から排水部までの寸法表示」がされているものであるから、梱包される便器の設置条件である排水部とトイレルームとの寸法関係を図示及び寸法表示により示すためのものであると解される。よって、本願発明の「便器」は、設置条件として、設置時の周囲との寸法関係が限定されるものと解される。

イ.上記ア.より、刊行物1発明の「電子レンジのような家電機器の製品」は、「梱包材によって梱包されて設置時の周囲との寸法関係が限定される製品」であるという限りにおいて、本願発明の「便器」と共通する。
刊行物1発明の「梱包材」は、被梱包物を梱包する「梱包部材」であるという限りにおいて、本願発明の「便器梱包部材」と共通する。
してみると、刊行物1発明の「電子レンジのような家電機器の製品を梱包するための梱包材」は、「梱包材によって梱包されて設置時の周囲との寸法関係が限定される製品を梱包するための梱包部材」であるという限りにおいて、本願発明の「便器を梱包するための便器梱包部材」と共通する。

ウ.刊行物1発明の「表面及び側面」は、いずれも、梱包材の表側の面であるから、本願発明の「表面」に相当する。

エ.本願発明の「図面」は、本願明細書の段落【0028】ないし【0031】、及び、段落【0043】ないし【0046】より、梱包される便器の平面図、側面図、便器が設置されるべきトイレルームの図、及び、寸法表示を含む。
本願発明の「寸法表示」は、本願明細書の段落【0043】ないし【0048】、【図3】ないし【図10】より、矢印記号及び寸法を示す文字を含む。
したがって、刊行物1発明の「図形、矢印記号、及び、寸法を示す文字」は、本願発明の「図面」に相当し、刊行物1発明の「矢印記号及び寸法を示す文字の表示」は、本願発明の「寸法表示」に相当する。

オ.上記ア.、ウ.、エ.より、刊行物1発明の「この梱包材の表面及び側面に、梱包される前記電子レンジのような家電機器の製品の図形、矢印記号、及び、寸法を示す文字が表示され、前記電子レンジのような家電機器の製品の設置条件である当該製品の正面左右の間隙、上隙間、後部間隙が、当該製品の左右側面、上面、後面を示す線の図示と、矢印記号及び寸法を示す文字の表示により示されている」は、「この梱包部材の表面に、梱包される前記製品の図面が表示され、この図面に前記製品の設置条件である設置時の周囲との寸法関係が図示と寸法表示により示されている」という限りにおいて、本願発明の「この便器梱包部材の表面に、梱包される前記便器の図面が表示され、この図面に前記便器に備えられる排水筒の下流側端部、又は、前記便器に備えられる排水アジャスタの下流側端部、又は、前記排水筒又は前記排水アジャスタに接続される外部の排水管の上流側端部が表示され、且つ、前記排水筒の下流側端部又は前記排水アジャスタの下流側端部又は前記排水管の上流側端部の位置を特定するための寸法表示がされている」と共通する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「梱包材によって梱包されて設置時の周囲との寸法関係が限定される製品を梱包するための梱包部材であって、この梱包部材の表面に、梱包される前記製品の図面が表示され、この図面に前記製品の設置条件である設置時の周囲との寸法関係が図示と寸法表示により示されている梱包部材。」

そして、以下の点で相違する。
相違点:本願発明では、梱包材によって梱包されて設置時の周囲との寸法関係が限定される製品を梱包するための梱包部材が「便器を梱包するための便器梱包部材」であり、梱包部材の表面に表示される製品の図面が「梱包される便器の図面」であり、この図面に製品の設置条件である設置時の周囲との寸法関係を示す図示と寸法表示として「前記便器に備えられる排水筒の下流側端部、又は、前記便器に備えられる排水アジャスタの下流側端部、又は、前記排水筒又は前記排水アジャスタに接続される外部の排水管の上流側端部が表示され、且つ、前記排水筒の下流側端部又は前記排水アジャスタの下流側端部又は前記排水管の上流側端部の位置を特定するための寸法表示がされている」のに対し、刊行物1発明では、梱包材によって梱包されて設置時の周囲との寸法関係が限定される製品を梱包するための梱包部材が「電子レンジのような家電機器の製品を梱包するための梱包部材」であり、梱包部材の表面に表示される製品の図面が「梱包される電子レンジのような家電機器の製品の図面」であり、この図面に製品の設置条件である設置時の周囲との寸法関係を示す図示と寸法表示として「電子レンジのような家電機器の製品の設置条件である当該製品の正面左右の間隙、上隙間、後部間隙が、当該製品の左右側面、上面、後面を示す線の図示と、矢印記号及び寸法を示す文字の表示により示されている」点。

5.判断
上記相違点について検討する。

刊行物1の段落【0013】に記載のとおり(上記3.(1)ウ.)、刊行物1発明において、梱包対象の製品は変更してもよいところ、刊行物4、5記載事項(上記3.(3)、(4))から周知のように、便器も梱包部材に入れて扱われるものであり、刊行物5記載事項(上記3.(4))のように、梱包部材を、家電機器の製品にも便器にも適用することは、周知技術である。
そして、便器は、刊行物6ないし9記載事項(上記3.(5)ないし(8))から周知のように、排水部の位置が異なる様々な種類があり、便器を設置する際に排水部の位置が重要であるから、便器の設置条件の一つとして排水部と周囲との寸法関係があることは、当業者に自明であり、便器の排水部の位置とは、便器に備えられる排水筒の下流側端部、又は、前記便器に備えられる排水アジャスタの下流側端部、又は、前記排水筒又は前記排水アジャスタに接続される外部の排水管の上流側端部の位置であることは、当業者に自明である。
また、刊行物2には、梱包部材の表面に、梱包される製品の図面を表示し、この図面に配管用穴明け位置を図示することが記載されており(上記3.(2))、配管用穴明け位置は排水部同様、製品の外観ではなく、製品の設置条件である配管に関するものである。したがって、刊行物2より、梱包部材の表面に表示する製品の図面に、製品の外観だけでなく、製品の設置条件である配管に関するものも図示してよいことが公知であったといえる。

したがって、刊行物1発明において、梱包対象の製品を便器とすることは、上記周知技術を適用して単に梱包対象を変更したにすぎず、その際に、刊行物1発明の梱包部材の表面に表示する内容を便器に対応したものとすることは、当然行われることであるから、便器の設置条件の一つとして、便器に備えられる排水筒の下流側端部、又は、前記便器に備えられる排水アジャスタの下流側端部、又は、前記排水筒又は前記排水アジャスタに接続される外部の排水管の上流側端部の位置と周囲との寸法関係があるという上記当業者に自明な事項、及び、梱包部材の表面に表示する製品の図面に、製品の外観だけでなく、製品の設置条件である配管に関するものも図示してよいという上記公知の事項を踏まえて、刊行物1発明の梱包部材の表面に表示する製品の図面及び設置条件である設置時の周囲との寸法関係を示す図示と寸法表示を、上記相違点に係る構成のものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願明細書の段落【0017】に記載されている「便器梱包部材の表面の図面を見ることで、想定しているトイレルームに設置するための便器の選定が容易にできる」という本願発明の効果は、刊行物1の段落【0006】に記載されている「製品の購買時及び設置時に梱包材の表面に図形等で表示した上記製品の設置条件を見て理解し、設置場所を想定しながら製品の選択をしてユーザーの便宜を図り、購買意欲を喚起するものである」という刊行物1発明の作用(上記3.(1)ア.)より、当業者が予測し得るものである。

よって、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2記載事項、周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

請求人は、本願発明は刊行物1?刊行物9に記載された発明にない差異点[A]である「この図面に前記便器に備えられる排水筒の下流側端部、又は、前記便器に備えられる排水アジャスタの下流側端部、又は、前記排水筒又は前記排水アジャスタに接続される外部の排水管の上流側端部が表示され、且つ、前記排水筒の下流側端部又は前記排水アジャスタの下流側端部又は前記排水管の上流側端部の位置を特定するための寸法表示がされている」構成を具備し、上記差異点[A]を具備することで、他の家電製品にはない、便器に特有の排水筒の下流側端部、排水アジャスタの下流側端部、排水管の上流側端部の位置が寸法表示によりわかり、梱包部材の表面を見るだけで、梱包された便器が想定しているトイレルームに設置できるか否かが判別可能となる、という本願発明独自の効果が得られるものであるのに対し、刊行物1?刊行物9には、いずれにも便器に特有の排水筒の下流側端部、排水アジャスタの下流側端部、排水管の上流側端部およびこれらの位置を特定するための寸法表示が開示されていない以上、このような刊行物1?刊行物9を考え合わせたところで当業者といえども容易に上記差異点[A]に示す本願発明独自の構成を想到し得るものではない旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、差異点[A]を具備することは、当業者が容易になし得たことであり、梱包部材の表面を見るだけで、梱包された製品である便器を設置場所である想定しているトイレルームに設置できるか否かが判別可能となるという本願発明の効果は、刊行物1発明から予測し得るものである。
よって、請求人の主張は失当である。

6.むすび
本願発明は、刊行物1発明、刊行物2記載事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-24 
結審通知日 2016-11-29 
審決日 2016-12-12 
出願番号 特願2012-19805(P2012-19805)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 家城 雅美  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 山田 由希子
千葉 成就
発明の名称 便器梱包部材  
代理人 水尻 勝久  
代理人 木村 豊  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  

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