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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G08B
管理番号 1324376
審判番号 不服2016-3101  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-01 
確定日 2017-02-14 
事件の表示 特願2011-230190「火災報知設備」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月13日出願公開、特開2013- 89091、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年10月19日の出願であって、平成27年3月6日付けで拒絶理由が通知され、同年5月13日付けで手続補正がされ、同年11月27日付け(発送日:同年12月2日)で拒絶査定がされ、これに対して平成28年3月1日に拒絶査定不服審判が請求され、この審判の請求と同時に手続補正がされ、同年9月23日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年11月28日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年11月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
建屋に設けられ、火災を検出する火災感知器と、該火災感知器からの火災信号を受信する火災受信機とを有する火災報知設備において、
前記火災受信機とインターネットを介して接続され、火災時に前記建屋における火災発生の情報を配信する火災情報配信サーバと、
前記火災情報配信サーバから配信された火災情報を受信する前記建屋内の携帯情報端末とを備え、
前記携帯情報端末は、前記建屋の入り口に設けられた入館者を非接触で検出する受付装置により入館者の所持する携帯情報端末の宛先情報が収集されて前記火災情報配信サーバの送信先データベースに登録され、前記携帯情報端末が前記火災情報を受信するとき該携帯情報端末の現在位置を検出し、その現在位置情報を前記火災情報配信サーバへ送信し、
前記火災情報配信サーバは、前記現在位置情報をもとに、前記現在位置情報、火災発報した火災感知器の設置場所および避難してはいけない方向の印を示した避難用の図面を作成して図面情報として、前記送信先データベースに登録されている前記携帯情報端末に送信し、
前記携帯情報端末は、前記火災情報配信サーバから受信した前記図面情報を表示できることを特徴とする火災報知設備。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
平成27年5月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない


刊行物1:特開2007-4452号公報
刊行物2:特開2004-126880号公報
刊行物3:特開2004-88361号公報
刊行物4:国際公開第2011/100454号(周知技術を示す文献)
刊行物5:特開2000-113357号公報(周知技術を示す文献)

(1)請求項1
刊行物1、2、4及び5
刊行物1(特に段落【0008】、【0019】ないし【0039】及び【図1】ないし【図4】参照)には、「建屋に設けられ、一酸化炭素や二酸化炭素等、火災時に発生する空気中の有害物質量や、温度を計測するセンサと、該センサからの計測情報を受信する通信端末とを有する火災情報把握端末群10と、
通信端末と携帯電話網100を介して接続され、火災時に建屋における最適な避難経路を配信するセンタ端末20と、
センタ端末20から配信された最適な避難経路を受信する建屋内のユーザ端末30とを備え、
ユーザ端末30は、火災時に、センタ端末20から受信した最短避難経路情報を画面に表示できる災害避難支援システム」が記載されている。
また、刊行物1(特に段落【0028】ないし【0036】及び【図3】ないし【図4】参照)には、ユーザ端末30は、最短避難経路情報を受信するとき、GPSにより自端末の現在位置を検出し、その現在位置情報をセンタ端末20へ送信し、センタ端末20は、ユーザ端末30の現在位置情報をもとに、最短経路問題の解を解くことによって避難経路を求め、ユーザ端末30に送信する構成が記載されている。
刊行物2(特に段落【0028】、【0042】ないし【0043】及び【図1】参照)には、建屋に設けられ、火災を検出する火災感知器Sと、該火災感知器Sからの火災信号を受信するとともに、異常情報をインターネットNWを介して顧客サービスサーバ10に送信する火災受信機REとを有する自動火災報知設備が記載されている。
刊行物1に記載された火災情報把握端末群10と刊行物2に記載された自動火災報知設備とは、両者ともセンサから火災信号を受信し、さらに火災信号をサーバに送信する点で、機能が共通している。
また、火災現場からの避難経路を表示するにあたり、端末の現在位置と火災の発生場所を端末に表示することは、例えば、刊行物4(段落[0049]、FIG.4)や、刊行物5(段落【0107】、【図28】)に記載されており周知である。
してみれば、請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明と刊行物4、5に記載された周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)請求項2
刊行物1、2、4及び5
請求項2に係る発明の「前記図面情報は、避難してはいけない方向の情報を含む」構成については、当業者が適宜なし得る設計的事項であるから、請求項2に係る発明は、刊行物1、2、4、5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。
(例えば、刊行物5(【図28】)には、端末の現在位置と火災の発生場所に加えて、延焼予想場所が表示されることが記載されている。)

(3)請求項3
刊行物1ないし5
刊行物3(特に段落【0025】、【0039】、【0043】、【0046】及び【図1】ないし【図3】参照)には、見学情報提供システム1において、携帯端末2により入場手続きする入場情報登録手段3が、見学者が所持する携帯端末2の宛先情報を取得してサーバ8に登録し、火災が発生した場合は、サーバ8が、携帯端末2による入場手続をした各見学者に最適な避難径路情報を送信する技術事項が記載されている。
刊行物1,3に記載された発明は両者とも同一技術分野に属するので、刊行物1に記載された発明に刊行物3に記載された上記技術事項を適用することで、請求項3に付加される発明特定事項をなすことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(4)請求項4
刊行物 1ないし5
刊行物3(段落【0039】、【0110】、【0112】参照)には、携帯端末2を所持する見学者が、避難に際し、見学会場を退場するときに宛先情報登録手段26で携帯端末2をセットして退場手続きを行うことで、見学提供システム1として、見学者が見学会場を無事退場したかどうかを判定できることが記載されている。
してみれば、刊行物1ないし5に記載された発明を組み合わせる際に、請求項4に付加される発明特定事項をなすことも、当業者が容易になし得たことである。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物
ア 刊行物1
原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物1には、図面(特に、【図1】ないし【図3】参照)と共に、次の事項が記載されている。

(ア)「【0021】
以下に、本実施形態の災害避難支援システムを、図面を用いて説明する。なお、本実施形態は、以下に述べるものに限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。なお、本実施形態では、発生した災害として、ビルに火災が発生した場合を想定して説明する。
図1は、本実施形態の災害避難支援システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
本実施形態の災害避難支援システムは、火災情報端末群10(10a,10b,10c,・・・)と、センタ端末20と、ユーザ端末30と、携帯電話網100とで構成される。これらの火災情報端末群10と、センタ端末20と、ユーザ端末30とは、例えばコンピュータプログラムなどで制御されて動作している。また、火災情報端末群10と、センタ端末20と、ユーザ端末30とは、携帯電話網100を介して相互に接続され、それぞれが通信可能である。
【0023】
火災情報把握端末群10は、例えば一酸化炭素や二酸化炭素等、火災時に発生する空気中の有害物質量や、温度を計測するセンサ(例えば、RFID:Radio Frequency Identification等)で計測した情報を、携帯電話のような通信端末が読み取り、読み取った情報をセンタ端末20へ転送するもの(以下、火災情報把握端末(10a,10b,10c,・・・)と称する)の集合である。そしてこの火災情報把握端末10a,10b,10c,・・・は通常時、避難可能な経路上(各経路の分岐上)にそれぞれ設置される。また、センサで計測されたデータを災害発生の有無に関わらず、一定周期でセンタ端末20に送信する機能も備えている。
【0024】
センタ端末20は、ワークステーション・サーバ等の情報処理装置であり、火災情報把握端末群10が送信した情報、及び、ユーザ端末30の位置情報を受信して、ユーザ端末30の位置から避難口(出口)までの最適な避難経路を導き出す機能を有する。また、導き出した避難経路を、ユーザ端末30に送信する機能も有している。これらの機能は一定周期で動作し、常に最新の状態をユーザ端末30に送信する機能を備えている。
【0025】
ユーザ端末30は、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)機能付き携帯電話であり、センタ端末20と通話状態である限り、現在の位置情報を一定周期でセンタ端末20に送信する機能を有する。また、一定周期でセンタ端末20から通知されてくる最適な避難経路を、ユーザ端末30の画面上に更新・表示する機能を備えている。
【0026】
次に、本実施形態の災害避難支援システムの動作について、図2及び図3を用いて説明する。
【0027】
図2は、本実施形態の災害避難支援システムを、実際にビルに設置した場合の一例を示す図である。図2に示すように、まず、通常時に、避難可能な経路の分岐上に各火災情報把握端末10a,10b,10c,・・・、をそれぞれ設置しておく。本実施形態では、通路で結ばれている2つのビルにおいて、避難可能な経路の分岐上に火災情報把握端末群10が設置される例を示している。
【0028】
図3は、本実施形態の災害避難支援システムの動作を示すフローチャートである。
まず、2つのビル内の避難可能な経路の分岐上に火災情報把握端末群10を設置して電源を入れた後、火災時に備えて各センサで計測されたデータを、一定周期で常にセンタ端末20に送信する(ステップS301)。センタ端末20は、火災情報把握端末群10が送信した情報を火災時に備えて常に受信しておく。
【0029】
ここで、火災が発生した場合、避難者(若しくは避難誘導者)は、自分の端末(ユーザ端末30)より、センタ端末20へとアクセスして避難経路情報の送信要求を行う(ステップS302)。この要求に対してセンタ端末20は、ユーザ端末30へ現在の位置情報の送信要求を行う(ステップS303)。これに応答して、ユーザ端末30は、GPS機能によりその位置情報を一定周期でセンタ端末20に送信する動作を開始する(ステップS304)。
【0030】
ユーザ端末30より位置情報を受けたセンタ端末20は、火災情報把握端末群10とユーザ端末30との位置から、避難口までの最適経路を算出する(ステップS305)。この算出方法とは、以下に示す要領により最短経路問題として算出する。」

(イ)「【0034】
(2)次に、上記(1)にて作成されたグラフ図を元にして、最短経路問題の解を解くことによって避難経路を求める。本実施形態において最短経路問題とは、重み付けしたグラフにおいて2頂点間(本実施形態の場合には、ユーザ端末30の位置と避難出口との間)を結ぶ任意の経路の中から、各経路に割り当てられた重みの和が最小となる経路を見つけ出すアルゴリズムである。
【0035】
センタ端末20は、導き出した経路をユーザ端末30へと送信する(ステップS306)。ユーザ端末30では、センタ端末20からの最短経路情報を受信して最短経路を画面上に表示する(ステップS307)。
【0036】
上述したステップS304からステップS307までの動作を、一定周期で繰り返し行うことになる。すなわち、センタ端末20は、最短経路の計算、及び、計算結果のユーザ端末30への送信を一定周期で行う。また、ユーザ端末30は、センタ端末20から避難経路に関する情報が送信されてくる度に、最短避難経路情報を画面に更新・表示する。なお、ユーザ端末30の機能は、センタ端末20と接続している限り継続される。」

上記記載事項(ア)、(イ)及び図面の図示内容を総合すると、刊行物1には、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、災害避難支援システムに関して次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「ビルに設けられ、火災を検出する火災情報把握端末群10と、該火災情報把握端末群10からの情報を受信するセンタ端末20とを有する災害避難支援システムにおいて、
前記センタ端末20と携帯電話網100を介して接続され、最短避難経路情報を受信する前記ビル内のユーザ端末30とを備え、
前記ユーザ端末30が該ユーザ端末30の現在の位置情報を検出し、その現在の位置情報をセンタ端末20へ送信し、
センタ端末20は、ユーザ端末30の現在の位置情報をもとに、避難口までの最短避難経路情報を算出し、最短避難経路情報をユーザ端末30に送信し、
前記ユーザ端末30は、最短避難経路情報を表示できる災害避難支援システム。」

イ 刊行物2
原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物2には、図面(特に【図1】参照)と共に、次の事項が記載されている。

(ア)「【0028】
自動火災報知設備の遠隔監視システム100は、顧客サービスサーバ10と、設備リストデータが格納されているHDD等の記憶装置M1と、イベントログデータが格納されている同様の記憶装置M2と、パソコン等で構成されている管理業者用端末装置D1と、インターネットNWと、建物に設置されている端末機能付火災受信機REと、回線を介して、火災受信機REに接続されている火災感知器Sとを有し、火災受信機REの機能負担を軽減し、情報の利用を便利にするシステムである。」

(イ)「【0042】
火災受信機REから正常監視信号または異常情報を顧客サービスサーバ10が受信すると、この顧客サービスサーバ10は、ポーリング結果データを、データベースとして、たとえば記憶装置M2に格納する(S4)。そして、ポーリングが必要な火災受信機の全てから、正常監視信号または異常情報を収集するように、呼出先を変えて、上記ステップS2?S4を繰り返す。つまり、サーバ10が、物件リストのポーリング要否に基づいて、複数の火災受信機に呼出・応答受信・格納を繰り返す
ここで、火災受信機REが、必ず稼動中であるとは限らず、何等かの理由で電源ダウンしていることもある。このように、火災受信機REから返信を得られず、しかも所定時間を経過しても返信を得ることができない場合、無応答であると判断し、ポーリング結果データに、無応答を格納する。
【0043】
そして、上記物件リストに、火災受信機RE毎に連絡先が予め登録され、異常情報を受信した場合または無応答と判断された場合には、上記連絡先に、異常である旨を連絡する(S5)。火災受信機REが設置されている建物の所有者をはじめ、その管理者、点検業者、施工業者等の関係業者を、上記連絡先として、必要に応じて設定し、また、本実施例では、その連絡方式として、電子メールが好ましいが、ファックス送信や自動郵便の発送等を採用するようにしてもよい。すなわち、たとえば、管理業者用端末装置D1が、インターネットNWに常時接続されていれば、当該管理業者用端末装置D1へ表示警報する連絡であってもよい。」

ウ 刊行物3
原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物3には、図面(特に、【図1】及び【図2】参照)と共に、次の事項が記載されている。
(ア)「【0025】
この実施形態の見学情報提供システム1は、入場に際し、携帯端末2により入場手続きする入場情報登録手段3と、混雑を避けた見学コースを紹介する見学コース情報送信手段4と、表示手段6とからなる。入場情報登録手段3は、見学会場に入場する際、見学者が所持する通信機能および受信情報表示画面を有する携帯端末2とサーバとが交信して電話番号、電子メールアドレスの少なくとも一方の宛先情報および要求情報を入場情報としてサーバ8に登録する手段である。」
(イ)「【0039】
中央制御装置21は、入、退場手続きに際し、携帯端末2例えば携帯電話によりサーバ8と直接有線又は無線で交信し、当該携帯電話の電話番号、電子メールアドレス等の宛先情報の少なくとも一方を携帯端末宛先情報データベース23に記憶して登録する。また、入、退場手続きは、見学者数、見学中と退場後の携帯端末2の宛先情報を理解するのに有効である。さらに、退場手続きは、例えば災害が発生したとき、見学中の見学者の人数、見学者への宛先情報、避難径路の紹介サービス情報の送信、未退場者の有無等の情報を得るのに有効である。中央制御装置21は、退場情報登録手段に、見学場所を退場する際、入場情報としてサーバ8に登録した携帯端末2から電話番号、電子メールアドレスの少なくとも一方の宛先情報を退場情報としてサーバ8に登録する。」
(ウ)「【0043】
さらに、見学中、会場において災害例えば火災が発生した場合、携帯端末2による入場手続きをした各見学者には、自動的に最適な避難径路情報がサーバ8の避難誘導処理演算装置16から送信される。災害発生情報記憶装置12の記憶装置には、想定される多数の災害に対応する避難径路情報が予め記憶されている。」
(エ)「【0046】
携帯端末2の利用者は、見学会場への入、退場に際し、携帯端末2と見学会場のサーバ8と交信をする(F-1)ことにより、中央制御装置21は、サーバ8の宛先情報登録手段26に携帯端末2の電話番号、電子メールアドレスの少なくとも一方を登録(F-2)する。この入場時、見学会場の見学者数が多数の場合、携帯端末2から特に希望する見学コース情報を要求情報として入力することができる。中央制御装置21は、要求情報を見学コース情報演算装置13に入力する(F-3)。このような入力手続きをしたのち見学者は、見学会場に入場する。このとき中央制御装置21は、見学コース情報演算装置13を制御して、各見学場所混雑情報記憶装置11から読出した現在の混雑情報および見学コースデータベース14から読出した見学コースから比較的混雑を避けた見学コースを検索する(F-4)。中央制御装置21は、検索された見学コース情報を、入場したばかりの入場者の携帯端末2に見学コース情報送信手段4から送信する(F-5)。」


エ 刊行物4
原査定に周知技術を示すために引用され、本願の出願前に頒布された刊行物4には、図面(特に、FIG.3及びFIG.4参照)と共に、次の事項が記載されている。なお、仮訳は、刊行物4に関連する特表2013-520089号公報の段落【0039】及び段落【0040】による。

段落[0048]及び段落[0049]
(仮訳)
「図3は、一実装形態による、緊急応答者に与えられ得るマップ300である。緊急事態が発生した場合、マップ300は、緊急応答者の多くの例のうちのいくつかを挙げれば、消防署技術者、警察官、または911/緊急オペレータなどの緊急応答者に与えられ得る。マップ300は、マップ200に示すフロアプランならびにいくつかの追加のアノテーションを含んでいる。図示のように、マップ300は、第1のユーザ272と、第2のユーザ274と、第3のユーザ276と、第1の火災278と、第2の火災280と、第3の火災282とのそれぞれのロケーションを示すアノテーションを含み得る。そのようなアノテーションは、特定のユーザをどのようにマップ300に対応するエリア外に案内すべきかを判断するために緊急応答者によって利用され得る。緊急応答者は、たとえば、道に障害物または他の妨害物がない限り、最も近い可能な出口にユーザを案内し得る。たとえば、第1のユーザ272は、第1の階段吹抜け205に極めて近接しており、マップ300上に示す第1のユーザ272と第1の階段吹抜け205との間に障害物がない。一方、第3のユーザ276は、第2の階段吹抜け220に最も近接している。しかしながら、第3のユーザ276と第2の階段吹抜け220との間に第1の火災278が位置している。したがって、緊急応答者は、第3のユーザを、マップ300上に示すエリアから出るために代わりに第3の階段吹抜け240にルーティングし得る。
図4は、一実装形態による、移動局の第1のユーザ272に与えられ得るマップ400である。マップ400は、マップ400が示すエリア外に第1のユーザ272を安全に案内するための命令を含んでいることがある。この例では、緊急応答者は、第1のユーザ272が第1の階段吹抜け205を経由してエリアを離れなければならないと判断し得る。したがって、第1のユーザ272を第1の階段吹抜け205に案内するための大きい矢印405が示され得る。たとえば、矢印405は、わかりやすくするためにマップ400の背景の色とは異なる色を用いて表示され得、および/またはユーザの移動局のディスプレイスクリーン上に点滅するピクセル/光を用いて示され得る。代替的に、上記で説明したように、第1のユーザ272を第1の階段吹抜け205に案内するための可聴退出命令が与えられ得る。マップ400はフロア全体のフロアプランを示しているが、いくつかの実装形態では、マップ400上にフロアまたはエリアの一部分のみが表示され得ることを諒解されたい。一実装形態では、マップ400が示すエリアを通る第1のユーザ272の移動を明らかにするために、マップ400上の第1のユーザ272のロケーションが周期的に更新され得る。マップ400は、第1の火災278と、第2の火災280と、第3の火災282とを表示するが、図3のマップ300に示す第2のユーザ274または第3のユーザ276などの他のユーザを表示しない。いくつかの実装形態では、マップ400上に他のユーザのロケーションが示され得る。」

オ 刊行物5
原査定に周知技術を示すために引用され、本願の出願前に頒布された刊行物5には、図面(特に、【図28】参照)と共に、次の事項が記載されている。

(ア)「【0107】図28は、その表示例を示す図である。ここでは、救助のための侵入経路と救助後の避難経路に加え、現在位置と、救助対象者の所在地が携帯情報端末26-1の液晶ディスプレイ26-2に表示されている。」

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ビル」は、本願発明の「建屋」に相当し、以下同様に、「火災情報把握端末群10」は「火災感知器」に、「火災情報把握端末群10からの情報」は「火災信号」に、「センタ端末20」は「火災受信機」に、「災害避難支援システム」は「火災報知設備」に、「ユーザ端末30」は「携帯情報端末」に、「現在の位置情報」は「現在位置」に、「最短避難経路情報」は「図面情報」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

[一致点]
「建屋に設けられ、火災を検出する火災感知器と、該火災感知器からの火災信号を受信する火災受信機とを有する火災報知設備において、
前記建屋内の携帯情報端末を備え、
前記携帯情報端末は、該携帯情報端末の現在位置を検出し、その現在位置情報を送信し、前記携帯情報端末は、受信した図面情報を表示できる火災報知設備。」

[相違点]
本願発明は「前記火災受信機とインターネットを介して接続され、火災時に前記建屋における火災発生の情報を配信する火災情報配信サーバ」を備え、「携帯情報端末」が「前記火災情報配信サーバから配信された火災情報を受信」し、「前記建屋の入り口に設けられた入館者を非接触で検出する受付装置により入館者の所持する携帯情報端末の宛先情報が収集されて前記火災情報配信サーバの送信先データベースに登録され」、「前記火災情報を受信するとき」現在位置を検出し、「その現在位置情報を前記火災情報配信サーバへ送信」し、「前記火災情報配信サーバは、前記現在位置情報をもとに、前記現在位置情報、火災発報した火災感知器の設置場所および避難してはいけない方向の印を示した避難用の図面を作成して図面情報として、前記送信先データベースに登録されている前記携帯情報端末に送信」するのに対し、引用発明は、このような構成を有しない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
刊行物2には、端末機能付火災受信機REとインターネットNWを介して接続される顧客サービスサーバ10が記載されている。
刊行物3には、火災時に会場における火災が発生した場合の情報を送信するサーバ8と、サーバ8から送信された最適な避難径路情報を受信する携帯端末2であって、見学会場への入場手続きに際しサーバ8と直接有線又は無線で交信し、宛先情報を携帯端末宛先情報データベース23に登録される携帯端末2が記載されている。
刊行物4には、第1のユーザ272の位置をもとに、周期的に更新される第1のユーザ272の位置、第1の火災278、第2の火災280及び第3の火災282の位置並びに矢印405を示したマップ400が第1のユーザ272に与えられることが記載されている。
刊行物5には、現在位置と、救助のための侵入経路と救助後の避難経路が携帯情報端末26-1の液晶ディスプレイ26-2に表示されることが記載されている。

しかしながら、刊行物2ないし5には、上記相違点に係る本願発明の、「携帯情報端末」が「前記火災情報を受信するとき」現在位置を検出し、「その現在位置情報を前記火災情報配信サーバへ送信」する構成について、記載も示唆もされていない。
そして、上記構成は、「建物の規模が大きい場合、火災時、避難する際に建屋内における方向がつかみにくく、どの方向へ逃げてよいかが分かりにくく避難しづらい」(本願明細書の段落【0005】)という課題を解決するためのものと認められる。
そうであれば、上記構成は、当業者が引用発明及び刊行物2ないし5に記載された事項から容易に想到したとはいえない。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び刊行物2ないし5に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1の「前記火災情報を受信するとき自端末の現在位置を検出し、」との記載は、何が「前記火災情報を受信する」のか不明であるし、「自端末」とは何かも不明確である。
よって、請求項1に係る発明は明確でない。

(2)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1には、「前記携帯情報端末は、(省略)受付装置により入館者の所持する携帯情報端末の宛先情報を取得されて」という事項が記載されている。
これに対し、明細書の発明の詳細な説明には、「入館者が受付装置70で自身が所持する携帯情報端末60の電子メールのアドレスを宛名情報として受付装置70に登録する」(段落【0022】)との記載及び「それ以外に、火災時の入館者の情報(残留者情報)を管理するためにも使用される。受付装置70は、詳細に示さないが、例えば、非接触データキャリアシステムを備えたものでもよく、(省略)非接触で入館者の検出が可能となる。」(段落【0023】)との記載はあるものの、携帯情報端末60が受付装置70により宛先情報を取得されることについては記載されているか、明らかでない。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2 当審拒絶理由の判断
平成28年11月28日付けの手続補正により、「前記携帯情報端末が前記火災情報を受信するとき該携帯情報端末の現在位置を検出し、」との記載に補正され、また、「前記携帯情報端末は、(省略)受付装置により入館者の所持する携帯情報端末の宛先情報を収集されて」との記載に補正された。 後者については、明細書の段落【0016】、【0022】及び【0023】の記載から、携帯情報端末60が受付装置70により宛先情報を収集されることが理解できる。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-01-31 
出願番号 特願2011-230190(P2011-230190)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08B)
P 1 8・ 537- WY (G08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中木 努伊藤 秀行西巻 正臣  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 火災報知設備  

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