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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G |
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管理番号 | 1324407 |
審判番号 | 不服2016-9379 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-23 |
確定日 | 2017-02-24 |
事件の表示 | 特願2012- 40117「定着装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 9日出願公開、特開2013-178291、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年2月27日(優先権主張 平成24年2月9日(以下、「優先日」という。))の出願であって、平成25年1月10日付けで手続補正がされ、平成27年11月12日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月14日付けで意見書が提出され、同年3月22日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年同月24日)、これに対し、同年6月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正がされたものである。 第2 平成28年6月23日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 (1)請求項1について 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】 回転可能な無端状の定着ベルトと、 前記定着ベルトを加熱する加熱源と、 前記定着ベルトの外周面に当接する対向回転体と、 前記定着ベルトの内側に配設され、定着ベルトを介して前記対向回転体に当接して定着ベルトと対向回転体との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、 前記定着ベルトの端部を回転可能に保持するベルト保持部材と、 前記定着ベルトの端面と前記ベルト保持部材との間に配設され、定着ベルトの端部を保護する環状の保護部材とを備えた定着装置において、 前記保護部材を、前記定着ベルトの端部と前記ベルト保持部材との間に、軸方向に2つ並べて配設し、 前記各保護部材は、前記ベルト保持部材に対して回転可能に設けられ、 前記2つの保護部材間の摩擦係数を、前記定着ベルト側の保護部材と前記定着ベルトとの間の摩擦係数よりも小さくしたことを特徴とする定着装置。」 とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる(下線は補正箇所を示す。以下、同様。)。 (2)請求項2ないし4について 本件補正は、本件補正前の請求項2、4、5、7及び8を削除するとともに、本件補正前の請求項3、6及び9をそれぞれ本件補正後の請求項2ないし4とする補正(以下、「補正事項2」という。)を含んでいる。 (3)明細書について 本件補正は、明細書の段落【0009】を、 「【0009】 上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、 回転可能な無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトを加熱する加熱源と、前記定着ベルトの外周面に当接する対向回転体と、前記定着ベルトの内側に配設され、定着ベルトを介して前記対向回転体に当接して定着ベルトと対向回転体との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、前記定着ベルトの端部を回転可能に保持するベルト保持部材と、前記定着ベルトの端面と前記ベルト保持部材との間に配設され、定着ベルトの端部を保護する環状の保護部材とを備えた定着装置において、前記保護部材を、前記定着ベルトの端部と前記ベルト保持部材との間に、軸方向に2つ並べて配設し、前記各保護部材は、前記ベルト保持部材に対して回転可能に設けられ、前記2つの保護部材間の摩擦係数を、前記定着ベルト側の保護部材と前記定着ベルトとの間の摩擦係数よりも小さくしたことを特徴とする。」 とする補正(以下、「補正事項3」という。)を含んでいる。 2.補正の適否 (1)補正事項1について 補正事項1は、請求項1について、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「保護部材」に、「前記各保護部材は、前記ベルト保持部材に対して回転可能に設けられ」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の請求項1ないし4に記載された発明(以下、それぞれ「本願補正発明1」ないし「本願補正発明4」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。 ア.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-201370号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (ア)「【0027】 (2)加熱定着装置6 本実施例の画像加熱装置である加熱定着装置6は、加熱部材として円筒状の金属ベルト(記録材上の画像をニップ部にて加熱するエンドレスベルト)を用いた、ベルト(フィルム)加熱方式、加圧部材駆動方式の装置である。」 (イ)「【0031】 加熱ユニット9は、 a:耐熱性・剛性を有する横長の断熱ステイホルダー12 b:この断熱ステイホルダー12の下面に、該部材の幅方向に沿って設けた凹溝部12a(図4)に嵌め入れて固定支持させた、通電により発熱するヒータ(加熱体)11 c:ヒータ11を固定支持させた断熱ステイホルダー12にルーズに外嵌させた、加熱部材としての可撓性を有する円筒状(エンドレス)の定着ベルト10 d:断熱ステイホルダー12の左右両端側の外方延長部12bにそれぞれ装着した、定着ベルト10の幅方向(母線方向)への寄り移動を規制する規制手段としてのフランジ部材15 等の組み立て体(アセンブリ)である。」 (ウ)「【0035】 そして、左右の固定フランジ15Bの加圧部15dと不動のバネ受け部材40との間に加圧バネ17を縮設することで加熱ユニット9を所定の加圧力をもって加圧ローラ20の上面に対して定着ベルト10の弾性と加圧ローラ20の弾性に抗して押圧させて所定幅の定着ニップ部Nを形成させている。定着ニップ部Nにおいては加熱ユニット9の加圧ローラ20に対する加圧により定着ベルト10がヒータ11を保持させた断熱ステイホルダー12の下面と弾性加圧ローラ20の上面との間に挟まれて、断熱ステイホルダー12の下面に倣って撓み、定着ベルト10の内面が断熱ステイホルダー12の下面およびヒータ11の下面の扁平面に密着した状態になる。 【0036】 Gは加圧ローラ20の芯金21の一端部に固着して配設した駆動ギアである。この駆動ギアGに駆動部Mから回転力が伝達されて、加圧ローラ20が図4において矢印の反時計方向に所定の回転速度にて回転駆動される。この加圧ローラ20の回転駆動に伴って定着ニップ部Nにおける該加圧ローラ20と加熱ユニット9側の定着ベルト10との摩擦力で定着ベルト10に回転力が作用して、該定着ベルト10がその内面がヒータ11の下面に密着して摺動しながら断熱ステイホルダー12の外回りを図4において時計方向に加圧ローラ20の回転に従動して回転状態になる(加圧ローラ駆動式)。」 (エ)「【0039】 加圧ローラ20の回転による定着ベルト10の回転がなされ、ヒータ11に対する通電がなされて該ヒータ11の温度が所定の温度に立ち上がって温調された状態において、未定着トナー像Tを担持した記録材Pが耐熱性の定着入口ガイド24に沿って定着ニップ部Nの定着ベルト10と加圧ローラ20との間に搬送される。そしてその記録材Pが定着ニップ部Nを挟持搬送されることで、未定着トナー像Tが定着ベルト10を介してヒータ11の熱で加熱されて熱定着される。定着ニップ部Nを通過した記録材Pは定着ベルト10の外面から分離して不図示の耐熱性の定着排紙ガイドに案内されて不図示の排出トレイ上に排出される。」 (オ)「【0053】 d)フランジ部材15 断熱ステイホルダー12の左右両端部側にそれぞれ装着されて、記録材上の画像をニップ部にて加熱するエンドレスベルトである定着ベルト10の幅方向への寄り移動を規制する規制手段としてのフランジ部材15は、定着ベルト10と所定距離隔てて設けられ定着ベルト10の寄りに伴い定着ベルト10の端面と突き当たることにより従動回転自在な平板状の回転体としての無端のリング形状または円盤形状である第1の規制部材(以下、従動リング(摺動フランジ)と記す)15Aと、定着ベルト10による従動リング15Aの幅方向への移動を規制する実質的に回転不可に固定された固定体である第2の規制部材(以下、固定フランジ(と記す)15Bとからなっている。」 (カ)「【0055】 a:固定フランジ15B 第2の規制部材としての固定フランジ15Bは、PPS、液晶ポリマー、フェノール樹脂等の耐熱樹脂により形成されており、その形状はキャップ形状であり、第1の規制部材としての従動リング15Aが挿入可能な内径を有した挿入部15aを内面側に有している。またこの内径は、定着ベルト10の外周形状がニップを作ることによって変形した場合でも、図4のように、定着ベルト10の外周面が挿入部15aの内周面に接触しないように十分な大きさを有している。」 (キ)「【0062】 従動リング15Aは定着ベルト10の幅方向の端部を規制すると共に、定着ベルト10が幅方向の力を受けて寄り、従動リング15Aに突き当たると同時に従動リング15Aは定着ベルト10から駆動力を受け、定着ベルト10と共に回転することで、定着ベルト10の端部が摺擦することを防止し、且つ定着ベルト10の回転形状を拘束しないため、定着ベルト10に負荷を与えず定着ベルト10の端部の破損を防止する。」 (ク)図4からは、断熱ステイホルダー12が定着ベルト10の内側に位置することが看取できる。 (ケ)図3、6及び10からは、固定フランジ15Bが定着ベルト10を保持すること、及び、従動リング15Aが、定着ベルト10の端面と固定フランジ15Bとの間に位置することが看取できる。 上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「加圧ローラ20の回転に従動して回転状態になる円筒状(エンドレス)の定着ベルト10を備え、 未定着トナー像Tが定着ベルト10を介してヒータ11の熱で加熱されて熱定着され、 定着ニップ部Nにおける該加圧ローラ20と加熱ユニット9側の定着ベルト10との摩擦力で定着ベルト10に回転力が作用し、 断熱ステイホルダー12は定着ベルト10の内側に位置し、 定着ニップ部Nにおいては加熱ユニット9の加圧ローラ20に対する加圧により定着ベルト10がヒータ11を保持させた断熱ステイホルダー12の下面と弾性加圧ローラ20の上面との間に挟まれて、断熱ステイホルダー12の下面に倣って撓み、定着ベルト10の内面が断熱ステイホルダー12の下面およびヒータ11の下面の扁平面に密着した状態になり、 実質的に回転不可に固定された固定体であり、 内径が、定着ベルト10の外周面が挿入部15aの内周面に接触しないように十分な大きさを有しており、 定着ベルト10を保持する固定フランジ15Bと、 定着ベルト10の端面と固定フランジ15Bとの間に位置し、 定着ベルト10の端面と突き当たることにより従動回転自在な平板状の回転体としての無端のリング形状または円盤形状であり、 定着ベルト10の端部が摺擦することを防止し、定着ベルト10の端部の破損を防止する従動リング15Aとを備えた加熱定着装置。」 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-48977号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (コ)「【0013】次に本発明の実施の形態の像加熱装置である定着装置を詳細に説明する。」 (サ)「【0027】28はPOM、ABS樹脂等からなる保護部材であるフィルム端部支持部材としての従動リング、27はシリコンゴム等の弾性部材からなる弾性リングであり、図2のようにフィルムの移動方向と直交する方向のフィルム端部にはめ込まれ、従動リング28はフィルムの寄りを規制する規制部材としての規制板30に当接されている。」 (シ)図1及び2からは、弾性リング27及び従動リング28がフィルムの軸方向に並べて配設された点が看取できる。 上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「弾性部材からなる弾性リング27と、 保護部材であるフィルム端部支持部材としての従動リング28とが、 フィルムの移動方向と直交する方向のフィルム端部にはめ込まれ、 従動リング28はフィルムの寄りを規制する規制部材としての規制板30に当接されており、 弾性リング27及び従動リング28がフィルムの軸方向に並べて配設された 定着装置。」 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-97298号公報(以下「引用例3という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ス)「【0037】 【課題を解決するための手段】本発明は下記の構成を有することを特徴とするフイルム寄り制御装置とフイルム式加熱定着装置および画像形成装置である。」 (セ)「【0047】駆動源から伝達された駆動力により駆動ローラ2が回転すると、エンドレスフィルム1が図1において矢印方向に走行する際、従動ローラ3は巻掛駆動され、リング6とエンドレスフィルム1は摺動する。」 上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「リング6を有するフイルム式加熱定着装置。」 イ.対比 本願補正発明1と引用発明1とを対比する。 後者の「加圧ローラ20の回転に従動して回転状態になる円筒状(エンドレス)の定着ベルト10」は、前者の「回転可能な無端状の定着ベルト」に相当する。 後者の「ヒータ11」は、その熱で「未定着トナー像Tが定着ベルト10を介して」「加熱されて熱定着される」ところ、未定着トナー像Tが加熱される以上、介在する定着ベルト10も加熱されることは明らかであるから、前者の「前記定着ベルトを加熱する加熱源」に相当する。 後者の「加圧ローラ20」は、「定着ベルト10との摩擦力で定着ベルト10に回転力が作用する」のだから、定着ベルト10の外周面が加圧ローラ20に当接することは明らかであるので、前者の「前記定着ベルトの外周面に当接する対向回転体」に相当する。 後者の「断熱ステイホルダー12」は、「定着ベルト10の内側に位置し」ており、また、定着ニップ部Nにおいては定着ベルト10は断熱ステイホルダー12の下面と弾性加圧ローラ20の上面との間に挟まれるのだから、断熱ステイホルダー12は定着ベルト10を介して加圧ローラ20に当接しているといえる。そうすると、前者の「前記定着ベルトの内側に配設され、定着ベルトを介して前記対向回転体に当接して定着ベルトと対向回転体との間にニップ部を形成するニップ形成部材」に相当する。 後者の「固定フランジ15B」は、「内径が、定着ベルト10の外周面が挿入部15aの内周面に接触しないように十分な大きさを有」するものであって、「定着ベルト10を保持」している。また、定着ベルト10は「加圧ローラ20の回転に従動して回転状態になる」ものであって、回転可能であることは明らかである。そうすると、後者の「固定フランジ15B」は、前者の「前記定着ベルトの端部を回転可能に保持するベルト保持部材」に相当する。 後者の「従動リング15A」は、「無端のリング形状または円盤形状」であるから環状であり、「定着ベルト10の端面と固定フランジ15Bとの間に位置し」ており、「定着ベルト10の端部が摺擦することを防止し、定着ベルト10の端部の破損を防止する」から、定着ベルト10の端面及び端部を保護するものであるといえる。そうすると、後者の「従動リング15A」は、前者の「前記定着ベルトの端面と前記ベルト保持部材との間に配設され、定着ベルトの端部を保護する環状の保護部材」に相当する。 後者の「従動リング15A」は「定着ベルト10の端面と突き当たることにより従動回転自在な平板状の回転体」であり、「固定フランジ15B」は「実質的に回転不可に固定された固定体」であるから、後者の「従動リング15A」が「固定フランジ15B」に対して回転可能であることは明らかであって、この点は、前者の「保護部材は、前記ベルト保持部材に対して回転可能に設けられ」た点に相当する。 後者の「加熱定着装置」は、前者の「定着装置」に相当する。 したがって、両者は、 「回転可能な無端状の定着ベルトと、 前記定着ベルトを加熱する加熱源と、 前記定着ベルトの外周面に当接する対向回転体と、 前記定着ベルトの内側に配設され、定着ベルトを介して前記対向回転体に当接して定着ベルトと対向回転体との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、 前記定着ベルトの端部を回転可能に保持するベルト保持部材と、 前記定着ベルトの端面と前記ベルト保持部材との間に配設され、定着ベルトの端部を保護する環状の保護部材とを備えた定着装置において、 前記保護部材は、前記ベルト保持部材に対して回転可能に設けられた 定着装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 前者が、「保護部材を、定着ベルトの端部とベルト保持部材との間に、軸方向に2つ並べて配設し」、「前記2つの保護部材間の摩擦係数を、定着ベルト側の保護部材と定着ベルトとの間の摩擦係数よりも小さくした」のに対して、後者は保護部材を2つ配設したものではない点。 ウ.判断 上記相違点について検討する。 引用発明2の弾性リング27及び従動リング28は、フィルムの軸方向に並べて配設されている。また、弾性リング27及び従動リング28は、フィルムの移動方向と直交する方向のフィルム端部にはめ込まれるとともに、従動リング28はフィルムの寄りを規制する規制部材としての規制板30に当接されているから、フィルム端部と規制板30との間に配設されたものである。 そうすると、引用発明2は、弾性リング27及び従動リング28を、フィルム端部と規制板30との間に、並べて配設したものであって、この点は、本願補正発明1の保護部材を、定着ベルトの端部とベルト保持部材との間に、軸方向に2つ並べて配設した点に相当する。 しかしながら、引用例2には、弾性リング27と従動リング28の間の摩擦係数については、開示も示唆もされていない。 そうすると、引用発明1において、引用発明2を参酌したとしても、上記相違点に係る本願補正発明1の「2つの保護部材間の摩擦係数を、定着ベルト側の保護部材と定着ベルトとの間の摩擦係数よりも小さく」するとの発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。 そして、引用発明1は、「2つの保護部材間の摩擦係数を、定着ベルト側の保護部材と定着ベルトとの間の摩擦係数よりも小さく」との発明特定事項を備えることによって、本願明細書に記載の「たとえ第2スリップリング42が変形し回転しにくくなったとしても、低摩擦性の第2スリップリング42が第1スリップリング41とベルト保持部材40との間に介在していることで、第1スリップリング41は回転しやすくなる。このため、駆動時に定着ベルト21に軸方向の寄りが生じ、定着ベルト21が第1スリップリング41に当接しても、第1スリップリング41は定着ベルト21と円滑に連れ回りすることができ、定着ベルト21の端部にかかる負荷を低減することができるようになる。」(段落【0063】)及び「両スリップリング41,42間の摩擦係数が、第1スリップリング41と定着ベルト21との間の摩擦係数よりも小さくなり、第1スリップリング41が連れ回りしやすくなる。」(段落【0066】)という作用効果を奏するものである。 また、引用例3にはリング6を有するフイルム式加熱定着装置が記載されているものの、リング6は2つ配設されるものではない。 したがって、本願補正発明1は、当業者が引用発明1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願補正発明2ないし4は、本願補正発明1をさらに限定したものである。すると、本補正願発明2ないし4は、本補正願発明1と同様に、当業者が引用発明1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (2)補正事項2について 補正事項2は、本件補正前の請求項2、4、5、7及び8を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 (3)補正事項3について 補正事項3は、補正事項1に伴って特許請求の範囲の記載との整合を図るため、明細書の段落【0009】を補正するものである。 したがって、補正事項3は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 3.まとめ 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、請求項1ないし4に係る発明は上記第2の2.(1)のとおり、当業者が引用発明1ないし3に基づいて容易に発明することができたものではない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-02-14 |
出願番号 | 特願2012-40117(P2012-40117) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G03G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中澤 俊彦 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 森次 顕 |
発明の名称 | 定着装置及び画像形成装置 |
代理人 | 城村 邦彦 |