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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1324430
審判番号 不服2016-3886  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-14 
確定日 2017-02-21 
事件の表示 特願2014- 64387「サスペンション用基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日出願公開、特開2014-146410、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成22年3月30日に出願した特願2010-77203号の一部を新たに特許出願したものであって、手続の概要は以下のとおりであ
る。

平成26年 3月26日 特許出願
平成27年 3月20日 拒絶理由通知
平成27年 5月21日 意見書、手続補正書
平成27年12月17日 拒絶査定
平成28年 3月14日 審判請求

第2.本願発明
本願の請求項1-3に係る発明は、平成27年5月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定され
る、以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
接続端子領域を形成する位置に、金属支持部材と、前記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材上に形成された配線層とを有する積層体を準備する積層体準備工程と、
前記配線層において、接続端子を構成する配線層突出部となる部分をレジストとして用いて、前記絶縁部材および前記配線層突出部となる部分が前記金属支持部材に支持されている状態において、前記絶縁部材をウェットエッチングし、前記金属支持部材側の端部が前記配線層側の端部よりも突出したテーパー形状であり、前記配線層突出部を支持する絶縁層突出部を有する絶縁層を形成する絶縁部材エッチング工程と、
前記絶縁部材エッチング工程の後に、前記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成し、前記配線層突出部および前記絶縁層突出部を前記金属支持基板の端部よりも突出させる金属支持部材エッチング工程と、
を有することを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁部材エッチング工程において、前記絶縁層突出部と、前記絶縁層突出部の根元を支持する絶縁層支持部との交点に、曲線形状が形成されるように、レジストパターンを形成し、前記絶縁部材をウェットエッチングすることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属支持部材エッチング工程において、前記絶縁層突出部の根元を支持する絶縁層支持部が、前記金属支持基板の端部よりも突出するように、前記金属支持部材をエッチングすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサスペンション用基板の製造方法。」

以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。

第3.原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

文献1 特開2006-120288号公報
周知例1 特開平1-256152号公報
周知例2 特開平2-026020号公報
周知例3 特開2003-179321号公報

第4.当審の判断
1.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された上記文献1(以下、「引用例」とい
う。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板上に、磁気ヘッドを搭載するための領域が設けられ、かつ該領域外には、導体層が、金属基板との間に絶縁層を介在させて回路パターンとして設けられ、
前記回路パターンには、磁気ヘッドの端子と接続するための接続用端子となるパターン終端部が形成され、
該パターン終端部の端面が、その直下の絶縁層の端面と揃っているか、または該絶縁層の端面よりも先端方向へ張り出していることを特徴とする、回路付サスペンション基板。
……
【請求項3】
パターン終端部の終端側において、金属基板には該基板を貫通する開口部が設けられ、該開口部の内壁面が、絶縁層の終端面よりも絶縁層の下側へ引き込んだ位置にある、請求項1記載の回路付サスペンション基板。」

(2)「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1(a)、(b)は、本発明による回路付サスペンション基板の先端部を拡大して示した概略図である。当該回路付サスペンション基板の全体としての基本的な構造、作用などは、従来技術の説明で述べたものと略同様である。
例えば、(イ)弾性金属が基板1の材料として用いられ、全体として帯状を呈する一種の板バネである点、(ロ)該金属基板1上に磁気ヘッドH1を搭載するための領域5が設けられ、その周囲を貫通開口6が一部を除いて取り巻くように形成され、これによって領域5が先端側だけで片持ち状に支持された構造となっている点、(ハ)領域5のさらに外側には、導体層(プリント回路パターン)3が絶縁層2を介して設けられ、基端側と先端側とを連絡している点、(ニ)回路パターン3の先端側には、磁気ヘッドの端子と接続するための接続用端子となるパターン終端部4が形成されている点、
(ホ)配置された状態の磁気ヘッドの端子と、パターン終端部4とが、半田ボールによって接合可能なように、直角コーナーをなすように配置されている点などは、従来技術を参照してもよい。また図1では、導体層をさらに覆う保護膜などは図示を省略している。
パターン終端部の先端方向とは、パターン終端部の根元部分から終端面に向う方向である。図1(a)に示す例では、パターン終端部の先端方向は、当該回路付サスペンション基板全体としての先端方向とは逆の方向を向いている。
【0012】
当該回路付サスペンション基板の構成上の基本的な特徴は、上記発明の効果で述べたとおり、図1に示すように、パターン終端部4の端面4aが、絶縁層2の端面2aよりも先端方向へ張り出しているか、または、図3(a)に示すように、絶縁層2の端面2aと揃っている点にある。
この構成によって、図1(b)に示すように、レーザー光が半田ボールから逸脱して周囲に照射されても、絶縁層2の端部に照射されることが抑制される。」

(3)「【0019】
図1(a)、(b)に示す態様では、金属基板1に設けられた貫通開口部6bの端面1aは、パターン終端部の端面よりも張り出してもよいが、導体層と金属基板との短絡を抑制するという点からは、図1に示すように、その内壁面1aが、絶縁層2の終端面2aと揃った位置にあるか、または、図3(a)、(b)に示すように、該開口部の内壁面1aが、絶縁層2の終端面2aよりもさらに絶縁層2の下側へ引き込んだ位置にある態様が好ましい。
絶縁層2の終端面2aに対する、開口部の内壁面1aの引き込み量は、0μm?200μm程度が好ましく、特に10μm?100μmが好まし
い。」

(4)「【0020】
導体層を任意の回路パターンとして金属基板上に絶縁層を介して形成する方法、金属基板に貫通開口を形成する方法は、従来公知の技術を利用してよい。
図2は、図1(b)に示したパターン終端部を得るまでの工程の一例を概略的に示した図である。同図の加工例では、図2(a)に示すように、金属基板1上に絶縁層2が積層され、次に、図2(b)に示すように、絶縁層2が所定のパターンへと加工される。絶縁層2のパターン加工は、レジスト
(図示せず)を用いたエッチングや、感光性樹脂の場合には現像によるパ
ターニングなどである。さらに、図2(c)に示すように、メッキ用のレジストR1が表裏に付与され、図2(d)に示すように、レジストR1の無い露出部分にメッキによって導体層4が形成され、図2(e)に示すように、該レジストR1が全て除去される。さらに、図2(f)に示すように、金属基板1の裏面側から開口部6b1が形成され(該開口部をエッチング除去するためのレジスト付与のプロセスなどは、図示を省略している)、図2
(g)に示すように、上面側全体を絶縁層用のレジストR2で覆い、開口部6b1の側から絶縁層2をエッチング除去し、図2(h)に示すように、レジストR2を除去して、目的のパターン終端部を得る。
上記工程中において、例えば、めっき法によって絶縁層上に導体層を形成するために、該絶縁層上にスパッタリングなどによってCr層を下層としCu層を上層とする2層の下地層を成膜するなど、種々の改善を加えてもよ
い。」

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

金属基板上に、導体層が、金属基板との間に絶縁層を介在させて回路パ
ターンとして設けられ、
前記回路パターンには、接続用端子となるパターン終端部が形成され、
該パターン終端部の端面が、その直下の絶縁層の端面と揃っており、パ
ターン終端部の終端側において、金属基板には該基板を貫通する開口部が設けられ、該開口部の内壁面が、絶縁層の終端面よりも絶縁層の下側へ引き込んだ位置にある、回路付サスペンション基板を形成する方法において、
金属基板上に絶縁層が積層され(a)、
次に、絶縁層が所定のパターンへと加工され(b)、
さらに、メッキ用のレジストが表裏に付与され(c)、
レジストの無い露出部分にメッキによって導体層が形成され(d)、
該レジストが全て除去され(e)、
さらに、金属基板の裏面側から、該開口部をエッチング除去して、開口部が形成され(f)、
上面側全体を絶縁層用のレジストで覆い、開口部の側から絶縁層をエッチング除去し(g)、
絶縁層用のレジストを除去して、目的のパターン終端部を得る(h)、
回路付サスペンション基板を形成する方法。

2.対比
引用発明の「金属基板」は本願発明の「金属支持部材」に対応し、開口部が形成された「金属基板」は本願発明の「金属支持基板」に対応する。
引用発明の「絶縁層」は本願発明の「絶縁部材」に対応する。
引用発明の「導体層」は本願発明の「配線層」に対応する。
引用発明の接続用端子となる「パターン終端部」は本願発明の接続端子を構成する「配線層突出部」に対応する。
引用発明は「該パターン終端部の端面が、その直下の絶縁層の端面と揃っており、パターン終端部の終端側において、金属基板には該基板を貫通する開口部が設けられ、該開口部の内壁面が、絶縁層の終端面よりも絶縁層の下側へ引き込んだ位置にある」とするために、「上面側全体を絶縁層用のレジストで覆い、開口部の側から絶縁層をエッチング除去し(g)」とするものであるから、本願発明の「絶縁部材エッチング工程」とは、配線層突出部を支持する絶縁層突出部を有する絶縁層を形成する点で共通する。
引用発明は「該パターン終端部の端面が、その直下の絶縁層の端面と揃っており、パターン終端部の終端側において、金属基板には該基板を貫通する開口部が設けられ、該開口部の内壁面が、絶縁層の終端面よりも絶縁層の下側へ引き込んだ位置にある」とするために、「金属基板の裏面側から、該開口部をエッチング除去して、開口部が形成され(f)」とするものであるから、本願発明の「金属支持部材エッチング工程」とは、金属支持部材をエッチングし金属支持基板を形成する点で共通する。
引用発明は「金属基板上に絶縁層が積層され(a)、
次に、絶縁層が所定のパターンへと加工され(b)、
さらに、メッキ用のレジストが表裏に付与され(c)、
レジストの無い露出部分にメッキによって導体層が形成され(d)、
該レジストが全て除去され(e)」とすることで、「金属基板」、「絶縁層」、及び「導体層」からなる積層体が得られ、そこに接続用端子となる
「パターン終端部」を形成するために、該積層体を得た後に、金属基板の
エッチング(f)及び絶縁層のエッチング(g)がされるので、引用発明の上記工程(a-e)は、本願発明の「積層体準備工程」に対応する。

したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、また相違する。

(1)一致点
接続端子領域を形成する位置に、金属支持部材と、前記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材上に形成された配線層とを有する積層体を準備する積層体準備工程と、
前記配線層突出部を支持する絶縁層突出部を有する絶縁層を形成する絶縁部材エッチング工程と、
前記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持部材エッチング工程と、を有し、
前記配線層突出部および前記絶縁層突出部を前記金属支持基板の端部よりも突出させることを特徴とするサスペンション用基板の製造方法。

(2)相違点1
本願発明は「絶縁部材エッチング工程」において、「前記配線層におい
て、接続端子を構成する配線層突出部となる部分をレジストとして用いて、前記絶縁部材および前記配線層突出部となる部分が前記金属支持部材に支持されている状態において、前記絶縁部材をウェットエッチングし、前記金属支持部材側の端部が前記配線層側の端部よりも突出したテーパー形状であ
り」とするのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。

(3)相違点2
本願発明は「金属支持部材エッチング工程」が「絶縁部材エッチング工
程」の後になされ、そのエッチングにより「前記配線層突出部および前記絶縁層突出部を前記金属支持基板の端部よりも突出させる」とするのに対し
て、引用発明ではそのような特定がない点。

3.判断
上記相違点1について検討する。
原査定では、テーパー形状に関して、前記「第3.原査定の理由の概要」で示した周知例を採用した結果であるとしている。
しかし、周知例1及び周知例2は、半導体装置のコンタクトホールの、周知例3は、回路基板の表裏を電気的に接続するための貫通配線が形成される貫通孔の形成に関するものである。
引用発明や本願発明は、突出部を形成するものであるから、周知例1-3のような穴形状のものを形成するための技術を適用することは、当業者が容易にできることとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本願の請求項2及び3は請求項1を引用するものであるから、それらの請求項に係る発明についても同様である。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1-3に係る発明は、刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-07 
出願番号 特願2014-64387(P2014-64387)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 水野 恵雄
加藤 恵一
発明の名称 サスペンション用基板の製造方法  
代理人 山下 昭彦  

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