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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1324500
審判番号 不服2015-23012  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-28 
確定日 2017-02-01 
事件の表示 特願2013-181575「集積III-V族電力段」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日出願公開、特開2014- 54173〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年9月2日の出願(優先権主張、2013年8月26日、米国、2012年9月7日、米国、2012年10月8日、米国)であって、平成26年9月1日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月5日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成27年9月1日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同月8日)、これに対して平成27年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年3月5日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「第2のIII-V族トランジスタを含む同期スイッチに結合された第1のIII-V族トランジスタを含む制御スイッチと、
ドライバ段と、
を備える電力段であって、
前記電力段の前記ドライバ段、前記制御スイッチ及び前記同期スイッチが単一の半導体パッケージ内に設置され、
前記電力段が175V以上の電圧の変換に使用される高電圧電力段として構成される、
ことを特徴とする電力段。」


3.引用例、引用発明について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に公開された、特開2010-207068号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審において付与。以下同様。)。

ア 段落【0001】-【0002】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、DC-DCコンバータ(直流電圧変換器)などの電源装置および電源装置を搭載した電子機器に関し、特に、小型化可能な電源装置および電子機器に関する。
【0002】
携帯電話、ディジタルカメラ、ゲーム機器その他の携帯用電子機器の電源にバッテリーが用いられる。例えば、リチウムイオン、リチウムポリマー等のバッテリーは、コンパクト、長寿命であるため広く利用されている。また、電子機器内の各部を動作させる駆動電圧は多様化しており、このため、バッテリーなどから供給される電圧を昇圧または降圧し、要求される駆動電圧を生成する必要がある。」

イ 段落【0007】-【0008】
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のチョッパ回路等で構成されるDC-DCコンバータでは、回路部品としてのインダクタやコンデンサのサイズが大きく、電源装置の小型化の障害になっていた。特に、スイッチングトランジスタは、シリコン基板を利用したFETから構成されるため、そのスイッチング周波数が制限されることも一因であった。そのため、そのような電源装置を搭載する必要のある携帯用電話機やその他の電子機器などの小型化、省スペース化を図ることが困難であった。
【0008】
本発明は、小型化をすることが可能な電源装置およびそのような電源装置を搭載した電子機器を提供するとことを目的とする。」

ウ 段落【0015】-【0017】
「【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の電源装置よりスイッチング素子を制御信号の周波数を大きくすることができ、スイッチング素子を高速に駆動できるので、インダクタの巻線を減らしかつフェライトコアを小さくすることで、インダクタンス(インダクタンス=AL値×巻線の2乗)を小さくすることができ、インダクタ自身の小型化を図ることができる。さらに、リップルも小さくなるので、コンデンサの容量を小さくすることができ、コンデンサのモジュール化も可能になる。従って、電源装置を従来の電源装置よりも小型化、軽量化することができ、それを搭載した電子機器も小型化することができる。
【0016】
上記のようなインダクタおよびコンデンサのサイズの小型化により、これらを含む回路部品のモジュール化が容易になり、モジュール化されたパッケージを回路基板に容易に実装することができる。特に、表面実装用のパッケージにモジュール化することで、パッケージをマウンタによって自動的に回路基板へ実装することができる。また、電源装置のモジュール化により、少なくとも入力端子、出力端子および基準電位端子(グランド)を外部端子として形成すればよいので、パッケージの小型化も可能になる。さらに、放熱板を付加することで放熱を促進することができる。
【0017】
放熱面に接触させる放熱部材として、基板に取り付けられた放熱部品、電子機器の筐体の凸部や一部、蓋の凸部などを利用することにより、特別な放熱部材が不要となり、電子機器のより一層の小型化も可能となる。」

エ 段落【0020】-【0028】
「【実施例】
【0020】
図2及び図3は、本発明の実施例に係るDC-DCコンバータとしての電源装置の構成を示す回路図である。図2(a)、(b)、図3は、それぞれ、昇圧チョッパ回路、降圧チョッパ回路、昇降圧チョッパ回路で、DC-DCコンバータとしての電源装置を実現する場合の回路図である。
【0021】
図2(a)に示すように、昇圧チョッパ回路による電源装置10は、入力端子Vinに一端が接続されるインダクタL1、このインダクタL1の他端と基準電位G間に接続されたスイッチング素子Q1、インダクタL1の他端に直列に接続されたスイッチング素子Q2、および出力端子Voutと基準電位Gの間に接続されるコンデンサC1と、スイッチング素子Q1、Q2のスイッチングを制御する制御回路40を含んで構成される。
【0022】
バッテリまたは前段の電源などの機器から供給される入力電圧Einが、主電流側の入力端子Vinと基準電位端子G(GND)との間に供給され、主電流側の出力端子Voutと基準電位端子G間には、負荷が接続される。なお、入力側にコンデンサを接続することも可能である。
【0023】
スイッチング素子Q1、Q2は、GaN系化合物で形成されたトランジスタであり、本実施例では、n型の電界効果トランジスタ(FET)の例を示す。このスイッチング素子Q1の一端としてのドレインは、インダクタL1に接続され、スイッチング素子Q1の他端としてのソースは、基準電位Gに接続される。スイッチング素子Q1の制御端子としてのトランジスタのゲートには、後述する制御回路40からの制御信号としてのパルス幅変調信号(PWM信号)が入力され、このPWM信号によりスイッチング素子Q1としてのトランジスタがスイッチング、すなわちオンオフ制御される。同様に、スイッチング素子Q2のドレインは、インダクタL1に接続され、ソースは出力端子Voutに接続され、ゲートは、制御回路40からの制御信号としてのパルス幅変調信号(PWM信号)が入力される。なお、スイッチング素子Q2は、図1に示したダイオードと同様の働きを行うが、FETを用いているためダイオードのときよりも電流損失を小さくすることができる。

・・・(中略)・・・

【0027】
本実施例では、スイッチング素子Q1およびQ2として、GaN系化合物で形成されたトランジスタを採用することで、前記三角波の周波数、すなわちPWM信号の周波数を高くすることができる。例えば、シリコン基板を利用したトランジスタのスイッチング周波数が数十KHz乃至百KHz程度であるのに対し、GaN系トランジスタのスイッチング周波数は、1MHz以上が可能であり、例えば、数十MHz程度まで高くすることができる。
【0028】
このように構成された昇圧チョッパ回路による電源装置10では、出力端子Vout-G間に出力される出力電圧Eoutは、入力端子Vin-G間の入力電圧Ein、PWM信号のデューティDとすると、Eout=Ein/(1-D)である。」

オ 段落【0036】-【0046】
「【0036】
このように本実施例における電源装置10、20、30では、1MHz以上の高い周波数のPWM信号で駆動しているので、インダクタの巻線を減らしかつそこに用いるフェライトコアのサイズを小さくすることができるので、インダクタ自体を小さくすることができる。さらに、リップルも小さくなるので、コンデンサも従来に比較してその容量を小さくできる。この結果、これまでの比較的大きな回路部品の小型化を図ることができる。これにより、インダクタ及びコンデンサも内蔵化した1つの半導体装置または1つの半導体モジュールを構成することができる。
【0037】
図6(a)、(b)に、本実施例の電源装置60を電子機器70へ適用した実装例を示す。携帯電話機またはその他の電子機器70は、マイクロチップとして一体化された電源装置60をボールグリッドアレイ(BGA)などのパッケージを含んで構成され、パッケージの裏面に形成された複数のボールは、半田等を用いて基板61上に実装される。電源装置60の第1面(表面)および第2面(裏面)のうち、少なくとも一方側に、トランジスタなどのスイッチング素子などの発熱部品面が配置されている。同図(a)に示すように、電源装置60の放熱面としての第2面(実装面)側に、基板61上に設けられた放熱部材62が接するように固定されている。放熱部材62は、基板61に取り付けられた放熱部品(例えば、ブラケットやプレート)に接することができる。また、同図(b)に示すように、電源装置60の放熱面としての第1面(表面)側に、電子機器70の金属製の蓋63の一部を放熱面64として接触させるようにしてもよい。放熱部材は、例えば、熱伝伝導率の高いアルミニウムまたは銅などの金属から構成される。なお、電子機器70の筐体の一部が平面的な場合には、電源装置60を凸形状にして接触させ、熱伝導を良好にしてもよい。さらに図6(a)および(b)に示す例は、放熱面がパッケージの片面に形成されているが、パッケージの両面に放熱面を形成してもよい。
【0038】
このようにモジュール化された電源装置60は、制御回路40等を内蔵化しているので、その外部接続端子は、入力端子Vin、出力端子Voutおよび基準電位端子G(GND)の3端子とすることができ、より小型化が可能となる。
【0039】
図7は、他の電源装置60の構成例を示している。電源装置60Aは、図7(a)、(b)に示すように、樹脂パッケージ本体70と、本体70の両側からガルウイング状に延
在する外部リード72を有する、表面実装用のパッケージにモジュール化される。パッケージは、TSOP、SOP、QFP等の種々の形態であってもよい。好ましくは、パッケージは、表面実装用のマウンタによって回路基板へ自動実装することができる程度の大きさである。また、外部リードの代わりに電極またはランドを有するパッケージであってもよい。図7(b)に示すパッケージ70は、スイッチング素子Q1、Q2、制御回路およびインダクタをモジュール化している。パッケージ70の両側から3本の外部リード72が延在している。その内の3本は、内部接続されていないリード(NC)である。
【0040】
また、電源装置60Bは、図7(c)に示すように、パッケージ本体74と、パッケージ本体74の下部から突出する3本の外部リード76と、ヒートシンク78とを有するディスクリートタイプのパッケージから構成することも可能である。上記した外部リード76は、パッケージ本体内でボンディングワイヤ等によってDC-DCコンバータに電気的に接続される。
【0041】
図7に示す例は、3端子の外部リードの例を示したが、電源装置は、4端子または5端子の構成であってもよい。図8(a)に示すように、電源装置60Cは、外部端子76Aを含む4端子で構成される。例えば、外部端子76Aは、制御回路40のオン/オフを切替えるための外部制御信号を制御回路40へ供給することができる。さらに電源装置60Dは、図8(b)に示すように、外部端子76A、76Bを含む5端子から構成される。この場合、外部端子76Bは、出力電圧Voutの電圧調整用として用いることができ、出力電圧Voutを制御回路40へ供給するための外部端子として機能する。この電圧調整機能は、必ずしも5端子の電源装置において実行を要するものではなく、図8(a)に示すように、4端子の電源装置において実行されるようにしてもよい。また、図8(a)、(b)に示す4端子または5端子の外部リードを有するパッケージは、図6または図7に示すような表面実装用のパッケージであってもよい。
【0042】
図9は、電源装置の種々のモジュール例を示す図である。図9(a)に示す電源装置は、インダクタ、スイッチング素子FETおよび制御回路をモジュール化し、図9(b)に示す電源装置は、さらに出力コンデンサをモジュール化する例である。DC-DCコンバータの入力段に入力コンデンサを含む構成の場合には、電源装置は、図9(c)に示すように、入力コンデンサを含めてモジュール化することができる例を示している。モジュール化されるコンデンサは、容量およびサイズが小さなセラミックコンデンサを用いることができる。
【0043】
従来の電源装置において、シリコン基板を用いたFETのスイッチング周波数を高くすることで小型化を図ることも可能であるが、周波数が高くなると、スイッチングによる電力損失が大きく、実用的ではなかった。これに対して、本実施例のようなGaN系FETでは、シリコンFETに比較して、オン抵抗が小さいばかりでなく、ゲートの入力容量(Ciss)およびソースドレイン間の出力容量(Coss)が著しく小さくなるため、シリコンFETよりも電力損失が小さくなり、スイッチング周波数をMHzまで高くすることが可能となる。さらに、GaN系FETのスイッチング周波数を10MHz程度にまで高くすることができれば、スイッチングによる電力損失は、ほぼ無視できる程度にまで小さくすることが可能となる。また、インダクタの巻線を減らしかつフェライトコアを小さくすることができるので、インダクタンス(インダクタンス=AL値×巻線の2乗)が小さくなり、インダクタ自身の小型化を図ることができ、その結果、モジュール化した表面実装用の電源装置を得ることができる。この場合、リップルも小さくなるので、コンデンサの容量も小さくすることができ、コンデンサ、制御回路およびインダクタをモジュール化した電源装置を得ることも可能になる。表面実装用のパッケージに電源装置をモジュール化することで、マウンタにより電源装置を回路基板へ自動実装することが可能となる。このため、電源装置を含む電子装置の生産性が向上し、かつ電子装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0044】
上記実施例では、スイッチングトランジスタをGaN系FETで構成する例を示したが、これ以外にも、SiC(シリコンカーバイド、炭化珪素)製のMOSFETから構成することも可能である。SiCは、Siに比べて、バンドギャップが広く、絶縁破壊電圧が高く、熱伝導度が優れている。このため、SiC製のパワーMOSFETは、シリコンMOSFETに比べて変換効率が高く、損失を約半減することができる。図11に示すように、SiC製MOSFET100は、例えば、n型のSiC基板102上に、エピタキシャル成長によりn型のSiCドリフト層104を形成し、ドリフト層104内に一対のp型のベース領域106を形成し、ベース領域106内にn型のソース領域108を形成し、SiC基板表面にSiO2等のゲート酸化膜110を形成し、次いで、ゲート電極112およびソース電極114を形成する。
【0045】
また、スイッチングトランジスタは、シリコン基板上にMoO3(酸化モリブデン)を形成したMOSトランジスタを用いることも可能である。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、請求項の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。」

よって、引用例には、特に図2(a)に関連して、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「昇圧チョッパ回路による電源装置10は、
入力端子Vinに一端が接続されるインダクタL1、
このインダクタL1の他端と基準電位G間に接続されたスイッチング素子Q1、
インダクタL1の他端に直列に接続されたスイッチング素子Q2、および
出力端子Voutと基準電位Gの間に接続されるコンデンサC1と、
スイッチング素子Q1、Q2のスイッチングを制御する制御回路40を含んで構成され、
バッテリまたは前段の電源などの機器から供給される入力電圧Einが、主電流側の入力端子Vinと基準電位端子G(GND)との間に供給され、
主電流側の出力端子Voutと基準電位端子G間には、負荷が接続され、
スイッチング素子Q1、Q2は、GaN系化合物で形成されたトランジスタであり、
このスイッチング素子Q1の一端としてのドレインは、インダクタL1に接続され、
スイッチング素子Q1の他端としてのソースは、基準電位Gに接続され、
スイッチング素子Q1の制御端子としてのトランジスタのゲートには、制御回路40からの制御信号としてのパルス幅変調信号(PWM信号)が入力され、このPWM信号によりスイッチング素子Q1としてのトランジスタがスイッチング、すなわちオンオフ制御され、
同様に、スイッチング素子Q2のドレインは、インダクタL1に接続され、ソースは出力端子Voutに接続され、ゲートは、制御回路40からの制御信号としてのパルス幅変調信号(PWM信号)が入力され、
なお、スイッチング素子Q2は、ダイオードと同様の働きを行うが、FETを用いているためダイオードのときよりも電流損失を小さくすることができ、
このように構成された昇圧チョッパ回路による電源装置10では、出力端子Vout-G間に出力される出力電圧Eoutは、入力端子Vin-G間の入力電圧Ein、PWM信号のデューティDとすると、Eout=Ein/(1-D)であり、
インダクタ及びコンデンサも内蔵化した1つの半導体装置または1つの半導体モジュールを構成することができる、
昇圧チョッパ回路による電源装置10。」


4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1) 引用発明の「スイッチング素子Q1、Q2」は、いずれも「GaN系化合物で形成されたトランジスタ」であって、ここで、GaとNは、それぞれIII族とV族の元素であるから、本願発明の「第1のIII-V族トランジスタ」、「第2のIII-V族トランジスタ」に相当する。
また、引用発明の「スイッチング素子Q2」は、「ダイオードと同様の働きを行う」素子であって、ここで、スイッチング方式の電源回路における、整流ダイオードと同様の機能を持つスイッチ素子を、「同期」スイッチ素子と呼ぶことは、極めて普通のことであるから(必要ならば、例えば、先の<引用文献3:特開2008-187167号公報>、段落【0026】「図3に示す、本発明によるパワー管理装置は、負荷ステージ16への電力供給を制御するためのパワースイッチを含むパワーステージ10を備えている。本発明によれば、パワーステージ10は、ハーフブリッジ接続され、DC-DCバックコンバータにおいて動作するべく好適にそれぞれが選択される、2つのIII族窒化物のパワースイッチ18及び20を備えている。従って、高圧側V+とハーフブリッジの出力接点Vsの間に直列接続されているIII族窒化物のパワースイッチ18は制御スイッチであり、出力接点VsとグラウンドGの間に直列接続されているIII族窒化物のパワースイッチ20は同期スイッチである。」の記載を参照。)、本願発明の「第2のIII-V族トランジスタを含む同期スイッチ」に相当するといえる。
引用発明の「スイッチング素子Q1」は、インダクタL1の他端で、「スイッチング素子Q2」と、ドレイン同士が接続されるから、引用発明の「スイッチング素子Q1」は、「スイッチング素子Q2」に「結合され」ているといえる。
したがって、引用発明における「オンオフ制御され」る「スイッチング素子Q1」は、本願発明の「第2のIII-V族トランジスタを含む同期スイッチに結合された第1のIII-V族トランジスタを含む制御スイッチ」に相当する。

(2) 引用発明の「制御回路40」は、スイッチング素子Q1、Q2のゲートに制御信号を与えるから、本願発明の「ドライバ段」に相当する。

(3) 引用発明の「スイッチング素子Q1、Q2」と「制御回路40」とを合わせた部分は、入力電圧Einを出力電圧Eoutに変換するように電力を制御する、「昇圧チョッパ回路による電源装置10」を構成する部分であるから、本願発明の「電力段」に相当する。

(4) 引用発明の「スイッチング素子Q1、Q2」と「制御回路40」が、「インダクタ及びコンデンサも内蔵化した1つの半導体装置または1つの半導体モジュールを構成する」ことは、通常、「1つの半導体モジュール」は「単一の半導体パッケージ」に格納されることを考慮すれば、本願発明の「前記電力段の前記ドライバ段、前記制御スイッチ及び前記同期スイッチが単一の半導体パッケージ内に設置され」ることに相当するといえる。

したがって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は次のとおりである。

<一致点>
「第2のIII-V族トランジスタを含む同期スイッチに結合された第1のIII-V族トランジスタを含む制御スイッチと、
ドライバ段と、
を備える電力段であって、
前記電力段の前記ドライバ段、前記制御スイッチ及び前記同期スイッチが単一の半導体パッケージ内に設置される、
ことを特徴とする電力段。」である点。

<相違点>
本願発明の「電力段」は、さらに、「前記電力段が175V以上の電圧の変換に使用される高電圧電力段として構成される」のに対して、引用発明の「出力電圧Eout」は、「入力電圧Ein、PWM信号のデューティDとすると、Eout=Ein/(1-D)」の一般式で与えられるものであって、具体的にどのような電圧値の「電圧の変換に使用される」かは、特定がなされておらず、また、「高電圧電力段」として構成されることは、特定がなされていない点。


5.当審の判断
<相違点>について
一般に、電源装置は汎用性を備えており多様な電圧で使用されるから、電源装置を具体的にどのような電圧値の電圧の変換に使用するかは、負荷として何を接続するかあるいは入力電圧や素子耐圧などの諸条件を考慮して、当業者が適宜選択すべき設計的事項であるといえる。
一般に、昇圧チョッパ回路などのスイッチング方式の電源装置を、175V以上の電圧の変換に使用することは、周知技術である(拒絶査定で周知技術を示す文献として引用された、<引用文献6:特開2011-211769号公報>、<引用文献7:特開2001-69748号公報>の下記記載を参照。)。

<引用文献6:特開2011-211769号公報>
(図25-図26、段落【0140】-【0144】
「【0140】
太陽電池10から得られる電圧はDC70V?300Vの範囲で変化するが、入力電圧EdがDC70V?300Vの範囲で変化しても出力電圧Eoを400Vに保つ縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11が用いられる。バッテリー13から得られるのはDC48Vの直流電力であるので、入力電圧EdがDC48Vで出力電圧Eoが400Vとなる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路12が用いられる。また、図25には図示しないが、DC400Vのバスラインとバッテリー13との間にバッテリー13を充電するための降圧型スイッチング電源回路も併用される。また、通信機器17はDC48Vで動作するので、DC400Vのバスラインと通信機器17との間に降圧型スイッチング電源回路16が用いられる。
【0141】
(縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11について)

・・・(中略)・・・

【0144】
例えば、(太陽電池10からの電圧の値)が300Vであり、電圧検出回路112が、段数nの値として1を選択する場合には、スイッチ素子制御回路111はスイッチ素子S1のみがスイッチング動作(周期内のオン・オフ動作)をするようにして、スイッチ素子S2?スイッチ素子S4は常時オフとする制御をおこなう。この場合には、スイッチ素子S2?スイッチ素子S4のスイッチング損失、ダイオードD2?ダイオードD4のスイッチング損失は発生しないので、2段目、3段目、4段目の昇圧型スイッチング電源回路における損失は非常に小さなものとなる。よって、等価的には、1段目の昇圧型スイッチング電源回路のみが昇圧に寄与するので、数式(3)に示すようにして出力電圧Eoとして400Vを得ることができる。このときの効率は、略、数式(2)で示すものとなる。」)

<引用文献7:特開2001-69748号公報>
(図9,段落【0002】-【0011】
「【0002】
【従来の技術】図9にアクティブフィルタ方式の従来回路例を示す。図9において、EMIフィルタ1には例えば100?240Vの交流電圧が入力する。ダイオードブリッジ2(D1)はその交流電圧を整流する。
【0003】整流された電気信号はブーストインダクタ3(L1)、スイッチング素子4(SW1)のスイッチング時間に応じて昇圧され、フライホイールダイオード5(D2)及び平滑コンデンサ6(C1)により平滑されて、設定電圧(例えば400V)に昇圧されて後段に接続された負荷DC/DCコンバータ7に入力する。

・・・(中略)・・・

【0010】
【発明が解決しようとする課題】このような力率改善回路の入力電圧は100?240V程度と広範囲にわたるが、例えば昇圧設定電圧を400V(R2,R3とフィードバック回路で設定)程度としている場合、100Vに近い低入力の場合はブーストインダクタ3(L1)にエネルギーを蓄積するためにスイッチング素子4(SW1)のオン時間を長くしなければならない。その結果、ブーストインダクタ3(L1)に流れる電流が大きくなり損失が増え、効率低下を招き、部品を大きくしなければならず、ノイズも大きくなるという問題があった。
【0011】ところで,上述の回路ではDC/DCコンバータ7に入力する電圧を例えば400Vに昇圧しているがDC/DCコンバータによっては必ずしもこの入力電圧を一定にする必要はなく、入力電圧が多少変動しても出力には影響を及ぼさないものがある。本発明は入力電圧が多少変動しても出力には影響を及ぼさないDC/DCコンバータを用いた力率改善回路を前提として、ブーストインダクタ3(L1)に流れる電流を小さくして他の部分を含めて不具合が生じることのない力率改善回路を提供することを目的とする。」)

したがって、出力電圧Eoutが「Eout=Ein/(1-D)」という一般式で与えられる引用発明の電源装置において、負荷として何を接続するかあるいは入力電圧や素子耐圧などの諸条件を考慮した上で、昇圧チョッパ回路などのスイッチング方式の電源装置を175V以上の電圧の変換に使用する周知技術を採用して「175V以上」を選択することによって、『「電力段」は、さらに、「前記電力段が175V以上の電圧の変換に使用される高電圧電力段として構成される」』上記相違点に係る構成とすることは、引用例に接した当業者であれば、容易に想到し得たものである。

なお、念のため、本願発明は、スイッチング素子として、GaNやSiCなどが含まれる「III-V族トランジスタ」を採用するものであるが、各種の「III-V族トランジスタ」が、高電圧の電圧の変換に使用できることは、技術常識であったから(必要ならば、例えば、<国際公開第2012/9410号>、Fig.3、段落[0056]、なお、訳文は、パテントファミリである、特表2013-532934号公報、段落【0043】「両方のトランジスタJ1及びJ2が共にGaN HEMTである図3のブーストDC-DC電力変換回路300を、・・・(中略)・・・従って、本発明の主題の幾つかの実施形態によると、比較的低容量のスイッチング及び整流コンポーネントを用いて、約600Vまでの比較的高電圧で動作することができる電力変換回路を提供することができる。・・・」の記載を参照。<国際公開第2008/155917号>、段落[0002]「…前記のような自動車のモータに供給される電圧は、従前では200?300V程度であった。しかし、近年では、自動車の加速力の向上を目指して、供給電圧は高電圧に移行しており、今後は500V?1000V程度の非常に高い供給電圧が主流となると思われる。」の記載、段落[0017]「しかしながら、従来のスイッチング素子駆動回路を用いる場合には、駆動されるスイッチング素子を備える電圧変換装置等の小型化やコスト削減が困難であるという問題点を有していた。すなわち、例えばスイッチング素子を駆動する駆動信号の周波数を高くすれば、昇圧チョッパ回路を構成するリアクトルLやコンデンサCを小型化することができるが、一方、スイッチング素子のスイッチング損失が増大するため、スイッチング素子を冷却する冷却器等の大型化を引き起こすことになり、必ずしも電圧変換装置等を小型化することができない。」の記載、段落[0130]「また、インバータ及びコンバータなどの電力変換器において、SiC及びGaNを含むスイッチング素子を用いる場合には、従来のSi系のスイッチング素子よりも高耐圧且つ高破壊耐量なスイッチング素子となるので、更に高速なスイッチング動作を実現できる。」の記載を参照。)、このような本願優先日前の技術常識を考慮しても、上記相違点に係る構成とする点を、格別のものとすることはできない。

さらに、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。


6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-24 
結審通知日 2016-08-30 
審決日 2016-09-20 
出願番号 特願2013-181575(P2013-181575)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 千葉 輝久
稲葉 和生
発明の名称 集積III-V族電力段  
代理人 杉村 憲司  
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