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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B64F |
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管理番号 | 1324517 |
審判番号 | 不服2015-6465 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-04-06 |
確定日 | 2017-02-03 |
事件の表示 | 特願2011- 75987号「アクチュエータ監視システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月25日出願公開、特開2012-206696号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯及び本願発明 本願は、平成23年3月30日の出願であって、平成26年12月26日付けで拒絶査定がされ、平成27年4月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、当審において平成28年2月5日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、当審において同年6月8日付けで二回目の拒絶理由が通知され、同年8月3日に意見書が提出されたものである。 そして、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成28年4月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「航空機の複数の可動部の各々に対して設けられた電動モータを備える電動アクチュエータと、 記憶装置を有し、前記電動モータの動作を制御する制御コマンドを前記電動モータに出力するように前記電動アクチュエータから離れて別体に前記航空機内に設けられた制御装置と を備え、 前記制御装置は、前記電動モータに出力された前記制御コマンドに基づいて前記電動アクチュエータの総使用時間を算出して前記記憶装置に格納し、 前記電動モータは、自身に流れる電流値を示すフィードバック信号を前記制御装置にフィードバックし、 前記制御装置は、前記フィードバック信号に基づいて前記電動モータのトルクを算出して負荷履歴データを前記記憶装置に格納し、前記記憶装置に格納された総使用時間及び負荷履歴データに基づいて前記電動アクチュエータの寿命を推定する アクチュエータ監視システム。」 第2.引用文献の記載事項及び引用発明 1.当審の平成28年6月8日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-247602号公報(以下「引用文献1」という。)には、アクチュエータ監視システムに関し、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。以下同様。 1a.「【0001】 本発明は、航空機に用いるアクチュエータを監視する監視回路、アクチュエータの動作を制御する制御装置、および、アクチュエータユニットに関する。」 1b.「【0008】 本発明の目的は、航空機の飛行中でもアクチュエータの交換時期などを知ることができるアクチュエータ監視回路、制御装置、およびアクチュエータユニットを提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0009】 第1の発明に係るアクチュエータ監視回路は、航空機に搭載され、出力部(油圧式のリニアまたはロータリー型アクチュエータ、若しくは電動モータ駆動によるメカニカルアクチュエータ(EMA)のシリンダ内のピストン等)を有するアクチュエータを監視するためのアクチュエータ監視回路であって、前記出力部の移動距離を算出し、当該移動距離が、所定の閾値を超えた場合に、その旨を通知するための通知信号を出力するように構成されている。」 1c.「【0028】 (アクチュエータユニット) アクチュエータユニット3は、図1に示すように、航空機10の動翼11(図2参照)や着陸装置(図示なし)を駆動するために複数用いる。 動翼11(図2参照)としては、機首の上げ下げを行うための昇降舵11e、機首を左右に向けるための方向舵11r、飛行機を左右に傾けるための補助翼11a、主翼によって発生する揚力を減殺するためのスポイラー11s、揚力係数を増加させるためのフラップ11fなどがある。一つの動翼11(図2参照)には複数のアクチュエータユニット3が取り付けられる。 着陸装置(図示なし)としては、前脚や主脚などがある。前脚にはアクチュエータユニット3n、主脚にはアクチュエータユニット3mが取り付けられる。」 1d.「【0043】 アクチュエータユニット3は、図3に示すように、アクチュエータ制御システム50で制御する。このアクチュエータ制御システム50は、PFC51、およびデータバス52を有する。また、アクチュエータユニット3は制御装置2を有する。 【0044】 PFC51は、飛行制御電子機器(Primary Flight Computers)であり、航空機の各機器を制御するため設ける。このPFC51は、各種装置との間で各種信号を入出力する。出力信号には、アクチュエータユニット3の動作に対する指示信号51sが含まれる。指示信号51sは、PFC51からデータバス52を介して、制御装置2へ出力される。また、このPFC51は、モニタ部65のモニタ信号65m、接近通知信号78s、経過通知信号79s、およびNVメモリ76mのアクチュエータ情報など、各種信号を入力する。 【0045】 データバス52は、PFC51と複数のアクチュエータユニット3の制御装置2とを電気的に接続するために設ける。 【0046】 (制御装置) 制御装置2は、図2に示すように、主にアクチュエータ30の動作を制御するため設ける。この制御装置2は、アクチュエータユニット3の台座21に設ける(図2における上面に設ける)。すなわち、制御装置2はアクチュエータ30と別個に設けているのではなく、(台座21を介して)アクチュエータ30に取り付けている。 この制御装置2の動作の概略は次の通りである。PFC51(図3参照)から指示信号51sが入力される。この指示信号51sに基づいて制御信号63sをサーボ弁41に出力し、サーボ弁41を動作させる。また、位置センサ43から位置信号43sが入力される。この位置信号43sに基づいて算出したアクチュエータ30の総移動距離が所定の閾値を超えると接近通知信号78sおよび経過通知信号79sを出力する。」 1e.「【0052】 アンプ64は、信号を増幅するため設ける。このアンプ64は、次のように動作する。通常時制御部63またはバックアップ用制御部68から、リレー67を介して制御信号63sまたはバックアップ制御信号68sを入力し、これらの制御信号を増幅する。サーボ弁41へ増幅された制御信号64sを出力し、サーボ弁41を動作させる。」 1f.「【0066】 総移動距離算出部76は、アクチュエータ30交換後から現在までのピストン36の総移動距離(以下「現在までの総移動距離」)を算出するため設ける。この総移動距離算出部76は次のように動作する。距離加算部75からフライトごとの加算距離信号75sを入力する。また、NVメモリ76mを有し、このNVメモリ76mはフライト前までのピストン36(図2参照)の総移動距離(以下「フライト前までの総移動距離」)を保持している。そして、この「フライト前までの総移動距離」に、入力に係る「フライトごとの加算距離」を加え、「現在までの総移動距離」を算出する。そして、現在までの総移動距離信号76sを生成し、通知信号送信部78および通知信号送信部79に出力する。また、現在までの総移動距離信号76sをPFC51に出力し、アクチュエータ30の実作動状況の監視に利用する。またフライト後には「現在までの総移動距離」を新たな「フライト前までの総移動距離」としてNVメモリ76mに保持する。」 1g.「【0069】 通知信号送信部78および通知信号送信部79は、ピストン36(図2参照)の現在までの総移動距離に応じて経過通知信号79sや接近通知信号78sをPFC51へ送信するため設ける。これらの通知信号は、次のように出力される。 経過通知信号79s(通知信号)は次のように出力される。ピストン36(図2参照)の現在までの総移動距離距離がアクチュエータ30を交換すべき距離(油漏れが規定量を超えると予想される距離。例えば20km)を超える。すると、通知信号送信部79はPFC51へ経過通知信号79sを出力する。これによりアクチュエータ30の交換時期を過ぎたことを警告する。 接近通知信号78s(通知信号)は次のように出力される。ピストン36(図2参照)の現在までの総移動距離距離がアクチュエータ30を交換すべき距離に近い距離(例えば20km未満の所定の距離)を超える。すると、通知信号送信部78はPFC51へ接近-通知信号78s(通知信号)を出力する。これによりアクチュエータ30の交換時期が近づいていることを報告する。」 1h.「【0079】 例えば、前記実施形態では、同翼を動作させるためのアクチュエータを示したが、着陸装置に用いるアクチュエータにも本発明を適用できる。また、前記実施形態では、油圧アクチュエータを示したが、電導モータ駆動によるメカニカルアクチュエータ(EMA)にも本発明を適用できる。また、前記実施形態では、リニア型のアクチュエータを示したが、ロータリー型のアクチュエータにも本発明を適用できる。また、前記実施形態では、ピストンの移動距離を位置センサにより算出したが、指示信号に応じて移動する出力部であれば、ピストン以外の移動距離を算出しても本発明を適用できる。」 1i.「【0080】 前記実施形態では制御装置をアクチュエータに取り付けた(すなわち、制御装置はREU(Remote Electronics Unit)と称されるものである)。しかし、制御装置は機体中央部(図1における位置10A)など、アクチュエータと別個に配置する場合(すなわち制御装置がACE(Actuator Control Electronics)と称されるものである場合)でも、本発明を適用できる。」 1j.上記記載事項1c.の「アクチュエータユニット3は、図1に示すように、航空機10の動翼11(図2参照)や着陸装置(図示なし)を駆動するために複数用いる。動翼11(図2参照)としては、機首の上げ下げを行うための昇降舵11e、機首を左右に向けるための方向舵11r、飛行機を左右に傾けるための補助翼11a、主翼によって発生する揚力を減殺するためのスポイラー11s、揚力係数を増加させるためのフラップ11fなどがある。」との記載、及び記載事項1b.(段落【0009】)の「第1の発明に係るアクチュエータ監視回路は、航空機に搭載され、出力部(油圧式のリニアまたはロータリー型アクチュエータ、若しくは電動モータ駆動によるメカニカルアクチュエータ(EMA)のシリンダ内のピストン等)を有するアクチュエータを監視するためのアクチュエータ監視回路であって」との記載から、アクチュエータ監視システムは、航空機10の昇降舵11e、方向舵11r、補助翼11a、スポイラー11s、フラップ11fの各々に対して設けられた電動モータ駆動による出力部を有するアクチュエータを備えていることが開示されているといえる。 さらに、上記記載事項1e.の「サーボ弁41へ増幅された制御信号64sを出力し、サーボ弁41を動作させる。」との記載、及び【図3】を参酌すると、制御信号64sを電動モータに出力していることが理解できる。 1k.上記記載事項1i.の記載内容から、制御装置は、アクチュエータと別個に航空機の機体中央部に設けられている態様も開示されている。 上記各記載事項、各認定事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「航空機10の昇降舵11e、方向舵11r、補助翼11a、スポイラー11s、フラップ11fの各々に対して設けられて電動モータ駆動による出力部を有するアクチュエータと、 NVメモリ76mを有し、前記電動モータの動作を制御する制御信号64sを前記電動モータに出力するように前記アクチュエータと別個に前記航空機の機体中央部に設けられた制御装置と を備え、 前記制御装置は、前記電動モータ駆動による出力部の総移動距離を算出して前記NVメモリ76mに保持し、 前記NVメモリ76mに保持された総移動距離距離がアクチュエータを交換すべき距離を超えた場合、または交換すべき距離に近い距離になった場合に、経過通知信号79s、または接近通知信号78sを出力する アクチュエータ監視システム。」 2.当審拒絶理由で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-131085号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 2a.「【0004】サーボアンプ2は、通信手段11と接続され位置決め装置1とのシリアル通信を行うための通信手段21、モータ回転速度計算手段22、予めサーボモータ3の許容回転速度を設定したモータ許容回転速度記憶メモリ23、サーボモータ3の過速度監視手段24、サーボモータ3の回転にともない位置検出器4内部のモータ回転パルス発生器41が発生するパルスPをパラレル入力し、カウントアップするモータ回転位置検出手段25、モータ使用累積時間記憶メモリ26から構成される。 【0005】次に動作について説明する。まず、サーボモータ3の寿命を見る際の動作について説明する。機械を駆動するモータにおいて、サーボモータ3の寿命時間は、モータが一定の速度で回転するという前提のもとに推定される。そのため、従来におけるモータの寿命(一般に、モータの軸の回転を円滑にするために取り付けられている軸受(ベアリング)の寿命と言い替える事ができる)の判定は、モータの使用条件(速度)を一定として予め計算された寿命時間と、実際にモータが駆動している時間を累積記憶する累積時間とを比較することにより、モータの寿命を判定する方法がある。通常、サーボアンプ2は、サーボモータ3の制御のために一定周期で処理される。そのため、サーボアンプ2の一定周期ごとにカウントアップしたカウンタ値にサーボアンプ2の処理周期の時間を乗ずることにより、サーボモータ3の通電時間が検出され、この値をモータ使用累積時間記憶メモリ26にサーボモータ3の使用累積時間として加算記憶する。オペレータがモータ使用累積時間記憶メモリ26の値をモニタしながら、予めサーボモータ3の使用条件を一定と仮定して算出した予想寿命時間と、比較しながら判断していた。」 2b.「【0009】 【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の検出装置では、サーボモータ3すなわちベアリングの寿命は、一定条件の下でのサーボモータ3への通電時間のみにより判断していた。しかしながら、サーボモータ3の寿命に影響を与える要因は、通電時間のみならず、モータ軸の回転数、温度ならびに負荷による部分も多い。従って、モータ通電中であってもモータ軸が回転していない場合や高速回転している場合、さらに負荷が変化するなど様々な状態があることを考慮すると、モータへの通電時間のみによりサーボモータ3の寿命を判断する際に、正確に寿命を判断できず、誤差が大きいという問題点があった。」 第3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、 ・後者の「航空機10の昇降舵11e、方向舵11r、補助翼11a、スポイラー11s、フラップ11f」は前者の「航空機の複数の可動部」に相当し、後者の「電動モータ駆動による出力部を有するアクチュエータ」は前者の「電動モータを備える電動アクチュエータ」に相当するから、後者の「航空機10の昇降舵11e、方向舵11r、補助翼11a、スポイラー11s、フラップ11fの各々に対して設けられて電動モータ駆動による出力部を有するアクチュエータ」は前者の「航空機の複数の可動部の各々に対して設けられた電動モータを備える電動アクチュエータ」に相当する。 ・後者の「NVメモリ76m」及び「制御信号64s」は前者の「記憶装置」及び「制御コマンド」に相当し、後者の「前記アクチュエータと別個に前記航空機の機体中央部に設けられた」は前者の「前記電動アクチュエータから離れて別体に前記航空機内に設けられた」に相当するから、後者の「NVメモリ76mを有し、前記電動モータの動作を制御する制御信号64sを前記電動モータに出力するように前記アクチュエータと別個に前記航空機の機体中央部に設けられた制御装置」は前者の「記憶装置を有し、前記電動アクチュエータの動作を制御する制御コマンドを前記電動モータに出力するように前記電動アクチュエータから離れて別体に前記航空機内に設けられた制御装置」に相当する。 ・後者の「前記電動モータ駆動による出力部の総移動距離」と、前者の「前記電動モータに出力された前記制御コマンドに基づいて算出」された「電動アクチュエータの使用時間」及び「前記電動モータは、自身に流れる電流値を示すフィードバック信号を前記制御装置にフィードバックし、前記制御装置は、前記フィードバック信号に基づいて前記電動モータのトルクを算出」した「負荷履歴データ」とは、「前記電動アクチュエータの使用データ」という限りにおいて共通する。 ・後者の「前記NVメモリ76mに保持された総移動距離距離がアクチュエータを交換すべき距離を超えた場合、または近い距離になった場合に、経過通知信号79sまたは接近通知信号78sを出力する」と前者の「前記記憶装置に格納された使用時間及び負荷履歴データに基づいて前記電動アクチュエータの寿命を推定する」とは、「前記記憶装置に格納された使用データに基づいて前記電動アクチュエータの寿命を推定する」という限りにおいて共通する。 そうすると、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。 [一致点] 「航空機の複数の可動部の各々に対して設けられた電動モータを備える電動アクチュエータと、 記憶装置を有し、前記電動モータの動作を制御する制御コマンドを前記電動モータに出力するように前記電動アクチュエータから離れて別体に前記航空機内に設けられた制御装置と を備え、 前記制御装置は、前記電動アクチュエータの使用データを算出して前記記憶装置に格納し、 前記記憶装置に格納された使用データに基づいて前記電動アクチュエータの寿命を推定する アクチュエータ監視システム。」 そして、両者は次の点で相違する。 [相違点] 電動アクチュエータの寿命を推定するための「使用データ」に関し、 本願発明は、「前記電動モータに出力された前記制御コマンドに基づいて」算出された「前記電動アクチュエータの総使用時間」及び「電動モータは、自身に流れる電流値を示すフィードバック信号を制御装置にフィードバックし、前記制御装置は、前記フィードバック信号に基づいて前記電動モータのトルクを算出」した「負荷履歴データ」であるのに対し、 引用発明は、「電動モータ駆動による出力部の総移動距離」である点。 第4.判断 [相違点]について検討する。 ・引用文献2には、上記記載事項2a.の記載内容から「サーボアンプの一定周期ごとにカウントアップしたカウンタ値にサーボアンプの処理周期の時間を乗ずることにより、サーボモータ3の通電時間が検出され、この値をモータ使用累積時間記憶メモリ26にサーボモータ3の使用累積時間として加算記憶し、該サーボモータ3の使用累積時間(実際にモータが駆動している時間を累積記憶する累積時間)に基づいてサーボモータ3の寿命を判断」することが記載されているといえるとともに、記載事項2b.の記載内容から「負荷が変化するなど様々な状態があることを考慮すると、サーボモータ3への通電時間(サーボモータ3の使用累積時間)のみによりモータの寿命を判断する際に、正確に寿命を判断できず、誤差が大きいという問題点があった。」ということが記載されているといえる。(以下、「引用文献2に記載されている技術的事項」という。) ここで、サーボモータ3を駆動する際に、サーボアンプ2の一定周期ごとにサーボモータ3へ電流値等の指令値を出力することは技術常識であるから、引用文献2に記載されている技術的事項の「サーボモータ3の使用累積時間(実際にモータが駆動している時間を累積記憶する累積時間)」は本願発明の「電動モータに出力された前記制御コマンドに基づいて」算出した「前記電動アクチュエータの総使用時間」に相当し、引用文献2に記載されている技術的事項の「サーボモータ3」は通電することから、本願発明の「電動モータ」に相当する。 そうすると、電動アクチュエータの寿命を推定するための「使用データ」として、引用文献2には、上記相違点に係る本願発明の、「前記電動モータに出力された前記制御コマンドに基づいて」算出された「前記電動アクチュエータの総使用時間」を用いることが記載されていると同時に、負荷が変化する場合等には電動モータの使用累積時間(本願発明の「電動アクチュエータの総使用時間」に相当。)のみでは、正確に寿命を判断できないという課題が示唆されているといえる。 ・ また、負荷の変化を考慮して、電動モータの寿命を推定する手段として、電動モータからの電流値を示すフィードバック信号に基づいて該電動モータの負荷を算出した積算値を用いることは、例えば、特開2003-127880号公報(請求項2及び段落【0017】?段落【0018】を参照。)に記載されるように従来周知の技術である。 ・そうすると、引用発明において、引用文献2に記載されている技術的事項を参考にして、使用データとしての「電動モータ駆動による出力部の総移動距離」を「電動モータの使用累積時間」に変更するとともに、負荷が変化する場合等には電動モータの使用累積時間のみでは、正確に寿命を判断できないという課題の示唆から、「電動モータの使用累積時間」だけでなく、電動モータの負荷も「使用データ」として加えることは当業者であれば容易に想到し得たことである。 また、電動モータの負荷を使用データとして加える際に、上記従来周知を適用して、当該電動モータの負荷を、電動モータからの電流値を示すフィードバック信号に基づいて該電動モータの負荷を算出した積算値(本願発明の「負荷履歴データ」に相当。)とすることに困難性はない。 〔作用効果について〕 本願発明は、明細書段落【0027】に記載されているように「制御装置20は、使用時間データUTで示される使用時間だけでなく、負荷履歴データLDで示される推定負荷の履歴も考慮に入れることによって、電動アクチュエータ10の実寿命を推定する。従って、第1の実施の形態と比較して、電動アクチュエータ10の寿命の推定精度が更に向上する。」との作用効果を有するものである。 他方、引用文献2に記載されている技術的事項の「負荷が変化するなど様々な状態があることを考慮すると、モータ使用累積時間のみによりモータの寿命を判断する際に、正確に寿命を判断できず、誤差が大きいという問題点があった。」との課題に対して、電動モータの使用累積時間だけでなく、電動モータの負荷、すなわち上記周知技術である電動モータの負荷を算出した積算値を使用データとして加えることで上記課題が解決するのであるから、引用発明において、引用文献2に記載されている技術的事項を参考にして、周知技術を適用したアクチュエータ監視システムは、本願発明と同様の作用効果が得られるものといえる。 よって、本願発明の作用効果をみても、引用発明、引用文献2に記載されている技術的事項及び周知技術から予測し得る範囲内のものであって、格別でない。 よって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載されている技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明し得たものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載されている技術的事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-11-25 |
結審通知日 | 2016-11-30 |
審決日 | 2016-12-13 |
出願番号 | 特願2011-75987(P2011-75987) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B64F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 菊池 康博、森藤 淳志 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
氏原 康宏 島田 信一 |
発明の名称 | アクチュエータ監視システム |
代理人 | 工藤 実 |