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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1324529
審判番号 不服2015-17439  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-25 
確定日 2017-01-31 
事件の表示 特願2014-529870「装置の境界エリアの減少」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月14日国際公開、WO2013/036675、平成26年10月30日国内公表、特表2014-529140〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成24年9月6日(優先権主張2011年9月9日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年5月20日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年9月25日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正され、当審において平成28年3月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知されたところ、同年8月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであり、その請求項1に係る発明は、平成28年8月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】
電子装置の回路パネルであって、
タッチセンサ回路を有するタッチ基板と、
基板を有するディスプレイパネルであって、前記基板は、
前記ディスプレイパネルのアクティブなエリアにおける実質的にフラットな表面と、
前記実質的にフラットな表面に隣接し且つそこから延びる曲がった境界エリアであって、前記アクティブなエリアにおける基板の前記フラットな表面の後ろに少なくとも部分的に延びる曲った境界エリアと、
を備える、ディスプレイパネルと、
前記アクティブなエリアに結合され且つ前記曲がった境界エリアにおいて引き回しされる前記基板上の複数のトレースと、
前記実質的にフラットな表面と前記曲がった境界エリアとの間に延びる前記基板の湾曲部におけるパターン化された複数の孔であって、当該基板の湾曲部における応力を減少させる複数の孔と、
を備え、
前記トレースの少なくとも1つは前記孔のうちの一つと前記基板の最外部縁との間に配置され、前記基板の最外部縁と平行に延び、電子装置の回路パネル。」

2.引用文献・引用発明
(1)当審拒絶理由に引用された特開2010-60866号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図とともに次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学パネル、電気光学装置及び電子機器に係り、特に、小型の電子機器に搭載する場合に好適な電気光学装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話機等の電子機器に搭載される電気光学装置、例えば液晶表示装置としては、液晶表示パネルと照明ユニット(いわゆるバックライト)とを合成樹脂等よりなる枠体(フレーム)に保持してなる構造を有するものが知られている。このような電気光学装置において、液晶表示パネルには、画素が配列されてなる表示領域と、この表示領域の外側に設けられ、各画素へ接続される配線や遮光膜などが形成されてなる周辺領域とが設けられる。電気光学装置では、この電気光学パネルの周辺領域のさらに外側に枠体があるので、表示領域によって形成される画面の周囲には或る程度の幅を有する額縁状の部分が必ず存在することになる。
【0003】
しかしながら、近年、携帯電話機等の小型の電子機器では、表示画面を大きく確保しつつ、その周囲の額縁状の領域幅を縮小することで、電子機器の小型化やデザイン性の向上などを図る傾向があり、そのために電気光学装置においても周辺領域や枠体の小型化が要求されるようになってきている。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1に記載された構造では、液晶表示パネルを保持するホルダーをフレームに収容する際の係合余裕を不要とすることで、ホルダーとフレームからなる枠体の幅を小さくするようにしているので、枠体そのものの幅を大幅に低減することは難しく、製品外形の充分な小型化を望むことができないという問題点がある。
【0006】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、パネル構造を変更することで、製品外形を小さくすることのできる電気光学パネル及び電気光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み、本発明の電気光学パネルは、表示領域と、該表示領域の外側に形成される周辺領域と、を有する基板を備え、前記周辺領域は前記表示領域に対して厚み方向に折り曲げられた状態とされていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、電気光学パネルの基板の周辺領域が表示領域に対して厚み方向に折り曲げられていることにより、電気光学パネルにおいて表示領域の外側の周辺領域の張り出し量を低減することができるので、製品外形を小さく構成することができる。」

「【0021】
[第1実施形態]
図1(a)は本発明に係る電気光学装置の第1実施形態の平面図、図1(b)は第1実施形態の概略縦断面図、図1(c)は折り曲げた周辺領域部分間の接続構造を示す拡大部分斜視図である。本実施形態の電気光学装置は、液晶表示パネル等で構成される電気光学パネル10と、この電気光学パネル10を保持する枠体20とを具備している。
【0022】
図1(a)及び(b)に示すように、電気光学パネル10は、プラスチック製その他の合成樹脂フィルム等よりなる基板11と12が貼り合わされ、これらの基板11と12間に電気光学物質(図示せず)が配置された可撓性の表示パネルである。このような表示パネルとしては、液晶表示体のほか、電気泳動表示体(EPD)、有機EL表示体(OLED)などでも構成できる。本実施形態に係る電気光学パネル10は基本的に自発光タイプ或いは反射型タイプで、バックライト等の照明ユニットを設けずに表示画像を形成できるものとされる。
【0023】
電気光学パネル10には、画素が縦横に配列されてなる表示領域10Aと、この表示領域10Aの周囲に設けられた周辺領域10Bとを有する。周辺領域10Bは表示領域10A内の電極に接続される配線や遮光膜が形成される領域であり、表示には直接寄与しないが、表示領域10Aに所望の表示を行うために必須の領域である。図示例では周辺領域10Bは表示領域10Aを取り囲むように周囲に形成される。なお、図1(a)において、表示領域10Aと周辺領域10Bとの境界は図示一点鎖線で描いてあり、また、周辺領域10Bについては実際には後述するように背面側に折り曲げられているので、図1(a)に二点鎖線で展開図を描いてある。
【0024】
電気光学パネル10の周辺領域10Bは、表示領域10Aに対して背面側(視認側とは反対側)に折り曲げられた状態とされる。図示例の場合、周辺領域10Bは表示領域10Aの表示面(配置平面)に対して背面側へ略直交する方向に延在している。このような電気光学パネル10は、可撓性のパネルを形成した後に周辺領域10Bを表示領域10Aに対し折り曲げ、この折り曲げ状態を維持するために枠体20その他の部材で固定してもよく、或いは、電気光学パネル10が自身で上記折り曲げ状態を維持できるように、折り曲げ部分を加熱する等により、折り曲げ状態が解消されないように加工してもよい。
【0025】
ここで、電気光学パネル10は全体として矩形状に構成されており、表示領域10Aも矩形状である。そして、周辺領域10Bは表示領域10Aの四つの各辺の外側に設けられ、いずれも背面側へ折り曲げられた状態とされている。また、このように各辺にそれぞれ設けられた周辺領域部分を共に折り曲げを可能とするために、各辺の周辺領域部分の間には切り欠き部10aが設けられ、この切り欠き部10aによってそれぞれの周辺領域部分が独立して折り曲げ可能となるように構成される。ただし、後述するように、例えば対向する二辺の周辺領域部分のみを背面側へ折り曲げる場合にはこのような切り欠き部10aは不要である。」

「【0042】
[第3実施形態]
次に、図3を参照して本発明に係る第3実施形態について説明する。図3(a)は本発明に係る電気光学装置の第3実施形態の平面図、図3(b)は第3実施形態の概略縦断面図である。なお、本実施形態において、先の実施形態で説明した部分と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0043】
上記の第1実施形態において、表示領域10Aに対して周辺領域10Bが背面側へ折り曲げられ、当該周辺領域10Bが表示領域10Aの表示面とは直交する方向へ延在するように構成されていたのに対し、この実施形態では、周辺領域10Bの背面側へ折り曲げられた基部側範囲10B1より先の部分(外縁部)である末端側範囲10B2がさらに内側へ折り曲げられている点で異なる。ここで、周辺領域10Bの末端側範囲10B2は表示領域10Aの表示面と平行に延在している。
【0044】
本実施形態では、周辺領域10Bが表示領域10Aに対し背面側に折り曲げられているだけでなく、その先でさらに内側へ折り曲げられることにより、第1実施形態と同様に表示画面の周囲への張り出し量を低減しつつ、厚み方向についてもコンパクト化できるという効果を奏する。なお、図示例では、周辺領域10Bは一旦背面側へ伸び(基部側範囲10B1)、その後に内側へさらに折り曲げられた構造(末端側範囲10B2)を有するが、電気光学パネル10が高い可撓性を有する場合には周辺領域10Bをその途中で背面側へ折り返すことによって折り畳み状態とすることも可能であり、この場合にはさらに厚みを低減することができる。
【0045】
なお、本実施形態において、上記のように内側へ折り曲げる部分を周辺領域10B全体とする必要はなく、他の部分よりも張り出し量の多い周辺領域部分のみとすることもできる。図示例では表示領域10Aの隣接する三辺に配置される三つの周辺領域部分(図示左右及び下の周辺領域部分)の張り出し量が大きく、残りの一つの周辺領域部分(図示上の周辺領域部分)の張り出し量が小さいので、張り出し量の大きい周辺領域部分は内側へ折り曲げるように構成し、残りの張り出し量の小さい周辺領域部分は単に背面側へ折り曲げるだけとすることができる。」

上記記載によれば、第3実施形態について次のことがいえる。
(a)【0002】?【0003】の記載によれば、携帯電話機等の電子機器に搭載される電気光学装置(液晶表示装置)は、電気光学パネル10(液晶表示パネル)を具備している。
(b)【0022】の記載によれば、電気光学パネル10は、プラスチック製その他の合成樹脂フィルム等よりなる基板11と12が貼り合わされており、【0023】の記載によれば、画素が縦横に配列されてなる表示領域10Aと、この表示領域10Aの周囲に設けられた周辺領域10Bとを有し、周辺領域10Bは表示領域10A内の電極に接続される配線が形成される領域である。
(c)【0043】の記載によれば、第1実施形態において、表示領域10Aに対して周辺領域10Bが背面側へ折り曲げられ、当該周辺領域10Bが表示領域10Aの表示面とは直交する方向へ延在するように構成されていたのに対し、第3実施形態では、周辺領域10Bの背面側へ折り曲げられた基部側範囲10B1より先の部分(外縁部)である末端側範囲10B2がさらに内側へ折り曲げられ、周辺領域10Bの末端側範囲10B2は表示領域10Aの表示面と平行に延在している。

上記(a)?(c)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「携帯電話機等の電子機器に搭載される電気光学装置(液晶表示装置)の電気光学パネル10(液晶表示パネル)であって、
プラスチック製その他の合成樹脂フィルム等よりなる基板11と12が貼り合わされており、画素が縦横に配列されてなる表示領域10Aと、この表示領域10Aの周囲に設けられた周辺領域10Bとを有し、
周辺領域10Bは表示領域10A内の電極に接続される配線が形成される領域であり、表示領域10Aに対して背面側(視認側とは反対側)に折り曲げられた状態とされ、周辺領域10Bの背面側へ折り曲げられた基部側範囲10B1より先の部分(外縁部)である末端側範囲10B2がさらに内側へ折り曲げられ、周辺領域10Bの末端側範囲10B2は表示領域10Aの表示面と平行に延在する、電気光学パネル10(液晶表示パネル)。」

(2)当審拒絶理由に引用された特開2009-216810号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図とともに次の記載がある。
「【0004】
そして、上記液晶パネルには、可撓性を備えた、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)から構成される配線基板が接続される。この配線基板には、例えば液晶パネルを駆動するために必要となる駆動回路及び入力用端子が形成されていて、この入力用端子に外部電源や種々の外部機器が接続されることにより、配線基板を介して液晶パネルに駆動信号や電力を供給できるようになっている。・・・中略・・・
【0005】
このような配線基板は、一般に液晶表示装置の小型化や設計自由度を高めるといった理由から、液晶パネル(表示パネル)から直線的に引き出された後に曲げられた構成となっており、配線基板に曲げ応力が生じた状態で使用される。また、液晶パネルは、バックライトに遮光性を備えた接着テープによって貼着されることで上記フレームに収容されているのであるが、液晶パネルの遮光領域の縮小に伴い、遮光領域として利用される接着テープの表面積も小さくなってきている。」

「【0050】
本実施形態に係る液晶表示装置1では、接続部21と電子部品実装部22との境界部分の両端に切り欠き部26a,26bが形成されているため、FPC基板20の曲げ応力(配線基板が元に戻ろうとする反力)を抑えることができる。すなわち、本発明の液晶表示装置1は、電子部品実装部22が液晶パネル10の裏面側に回り込んで固定されているため、FPC基板20の曲がる部分に応力が集中するが、切り欠き部26a,26bにより、幅の広い電子部品実装部22が接続部21とともに曲がってしまわないようにすることができ、これにより、電子部品実装部22の反力がパネルに作用しないようにすることができる。したがって、FPC基板20の曲がる部分に加わる応力を緩和することができるため、液晶パネル10がフレーム40から浮き上がることを防止することができる。・・・中略・・・、本発明では、従来のようにFPC基板20の反力を抑える固定部をフレームに設ける必要がないため、装置全体の小型化が可能であるとともに、低コスト化を図ることができる。」

「【0060】
FPC基板70には、図12に示すように、FPC基板20の電子部品実装部22の接続部21側に隣接する領域、すなわち、2つの切り欠き部26a,26bを結んだ線上に3つの貫通孔71が形成されている。なお、図12では、3つの貫通孔71が形成されたものを例に挙げたが、貫通孔71の数はこれに限るものではなく、4つ以上形成されていても、1つのみ形成されていても良い。
この構成では、FPC基板70には、2つの切り欠き部を26a,26b結んだ線上に貫通孔71が形成されている。これにより、例えば、大型液晶パネル用の大型のFPC基板であっても、FPC基板の曲がる部分に加わる応力は、切り欠き部26a,26bに加えて貫通孔71によっても低減される。」

上記記載及び図12によれば、引用文献2には、「FPC基板を折り曲げる際、FPC基板の曲がる部分に形成した切り欠き部26a,26b及び複数の貫通孔71により、FPC基板の曲げ応力(配線基板が元に戻ろうとする反力)を抑えることができる」こと(「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されている。

(3)当審において、新たに引用する特開2000-82868号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図とともに次の記載がある。
「【0030】図4は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板の一実施形態の模式断面図である。同図に示されるように、本発明に係るフレキシブルプリント配線板10は、回路パターン3が設けられたベースフィルム2の、半導体素子を含む電子部品が搭載される予定の領域5’の外周の外側に、複数個の緩和孔4が設けられて構成される。
【0031】したがって、折り曲げなどにより発生する応力を緩和孔4により吸収、緩和できて信頼性の高いフレキシブルプリント回路板を、このフレキシブルプリント配線板10を用いて容易に製造することができる。」

上記記載によれば、引用文献3には、「フレキシブルプリント配線板に複数個の緩和孔4が設けられ、折り曲げなどにより発生する応力を緩和孔4により吸収、緩和できる」こと(「引用文献3記載の技術事項」という。)が記載されている。

(4)当審において、新たに引用する特開2000-196205号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図とともに次の記載がある。
「【0005】 従来、フレキシブルプリント基板の上記の問題を解決し、屈曲性を高める方法としては、例えば図4、図5、に示す様に、屈曲部に各種のスリットを形成する方法が用いられている。
・・・中略・・・
【0008】図5は、上記図4と同様で異なる配線パターンで構成されるフレキシブルプリント基板500において、屈曲部に部分的に貫通孔351の列によりスリットを設ける方法の説明図であり、(a)は、その平面図を示し、(b)は同平面図中の貫通孔部を含むA-A部の断面図を示す。
【0009】図において、同一符号は図1のそれと同じものであり、351は金属導体パターン部を避ける様に、屈曲中心線上に形成された貫通孔であり、その連なりで屈曲用のスリット部とする。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図4の方法の場合、他の箇所に比べ屈曲部の基板厚が薄くなっており、折り曲げ時の曲げ応力により、特にその部分にさらに過大な外部応力や電気的負荷等がかかった場合に破断しやすいという短所を有する。図5の方法に関しては、金属導体パターン部を避けてスリットを形成する必要があり、形成可能部分が小面積の場合には有効な効果を得る事ができない。また基本的に、屈曲部の機械的強度が劣化しており、外部応力に弱い。」

上記記載によれば、引用文献4には、「フレキシブルプリント基板500において、屈曲部に金属導体パターン部を避ける様に、屈曲中心線上に形成された貫通孔の列によりスリットを設け、屈曲性を高める」こと(「引用文献4記載の技術事項」という。)が記載されている。

(5)当審において、新たに引用する特開2010-61761号公報(以下、「引用文献5」という。)には、図とともに次の記載がある。
「【0076】
湾曲部26は、FPC9が受光部8や光学ベース6等の形状に沿うように曲げられている部分である。FPC9が図4のように曲げられることにより、湾曲部26には応力が発生する。湾曲部26に発生する応力によりFPC9は、曲げられる前の元の形状に戻ろうとする。・・・中略・・・
【0078】
<スリット>
湾曲部26には、スリット28が形成されているほうが好ましい。湾曲部26がスリット28を有することにより、FPC9の折り曲げ応力を低減することができるので、FPC9の応力を低減することができる。
・・・中略・・・
【0081】
スリット28の短手方向の幅やスリット28の数は、FPCの大きさや、配線間の幅などに応じて適宜設定される。・・・中略・・・実施の形態において、スリット28の形状は、FPC29の長手方向に向かって長く形成されているが、このような形状に限られるものではない。要するに、スリット28の形状は、FPCの応力を低減できる形状であればよい。」

上記記載及び図4によれば、引用文献5には、「フレキシブルプリント基板の湾曲部に複数個のスリットを設けることにより、フレキシブルプリント基板の折り曲げ応力を低減する」こと(「引用文献5記載の技術事項」という。)が記載されている。

(6)当審拒絶理由に引用された特開2007-47961号公報(以下、「引用文献6」という。)には、図とともに次の記載がある。
「【0008】
斯かる実情に鑑み、本発明の電気光学装置は、電気光学パネルと、該電気光学パネルと積層して配置されるとともに前記電気光学パネルの表示領域内における位置を検出するタブレットとを有する電気光学装置において、前記タブレットは、少なくとも前記電気光学パネルの前記表示領域の一部と平面的に重なる領域を有した位置検出領域と、該位置検出領域の端部に設けられるとともに前記位置検出領域から導出された配線を含んだ配線領域とを有したフレキシブル基板で構成されてなり、前記配線領域の少なくとも一部が前記位置検出領域に対して折り曲げられていることを特徴とする。」

「【0020】
配線領域11Bには、上記位置検出領域11A内に形成された電極11aに導電接続される複数の配線11bが設けられている。これらの配線11bは、配線領域11B内を伸び、端子部11cに配列された図示しない複数の端子にそれぞれ導電接続されている。」

上記記載及び図1、図6によれば、引用文献6には、「電気光学パネルの基板には、位置検出領域と、この位置検出領域の端部に設けられる配線領域が設けられ、配線領域において引き回しされる配線は前記基板の最外部縁と平行に延びている」こと(以下、「引用文献6記載の技術事項」という。)が記載されている。

(7)当審において、新たに引用する特開2010-122567号公報(以下、「引用文献7」という。)には、図とともに次の記載がある。
「【0030】
液晶表示パネル11は、図2に示すように、中央に広い表示領域16を有し、表示領域16の上方に光センサ領域17が、表示領域16の下方に信号線配線領域18が、表示領域16の左右及び下方の左右に走査線配線領域19が、左右上下方向に共通配線領域20が、それぞれ形成されている。液晶表示パネル11の下方に駆動用のドライバIC21及び外部接続端子22が形成されている。
【0031】
表示領域16は、例えばR(赤)・G(緑)・B(青)の3つのサブ画素で1画素を構成しており、それぞれ複数の画素が行方向(走査線方向)及び列方向(信号線方向)に形成されている。図4に示すように、液晶表示パネル11は液晶層LCがアレイ基板ARとカラーフィルタ基板CFで挟持される構成となっている。」

上記記載及び図2から、引用文献7には、「液晶表示パネルの基板には、画素が配列されてなる表示領域と、この表示領域の外側に設けられ、各画素へ接続される配線が形成されてなる走査線配線領域19が設けられ、走査線配線領域19において引き回しされる走査線配線は前記基板の最外部縁と平行に延びている」こと(以下、「引用文献7記載の技術事項」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「電気光学装置(液晶表示装置)の電気光学パネル10(液晶表示パネル)」は、「プラスチック製その他の合成樹脂フィルム等よりなる基板11と12が貼り合わされて」いるから、本願発明の「基板を有するディスプレイパネル」に相当する。
(イ)引用発明の「画素が縦横に配列されてなる表示領域10A」は、本願発明の「前記ディスプレイパネルのアクティブなエリアにおける実質的にフラットな表面」に相当する。
(ウ)引用発明の「表示領域10Aの周囲に設けられた周辺領域10B」は、「表示領域10Aに対して背面側(視認側とは反対側)に折り曲げられた状態とされ、周辺領域10Bの背面側へ折り曲げられた基部側範囲10B1より先の部分(外縁部)である末端側範囲10B2がさらに内側へ折り曲げられ、周辺領域10Bの末端側範囲10B2は表示領域10Aの表示面と平行に延在する」から、本願発明の「前記実質的にフラットな表面に隣接し且つそこから延びる曲がった境界エリアであって、前記アクティブなエリアにおける基板の前記フラットな表面の後ろに少なくとも部分的に延びる曲った境界エリア」に相当するといえる。
(エ)引用発明の「周辺領域10B」に形成されている「表示領域10A内の電極に接続される配線」は、本願発明の「前記アクティブなエリアに結合され且つ前記曲がった境界エリアにおいて引き回しされる前記基板上の複数のトレース」と「前記アクティブなエリアに結合され且つ前記曲がった境界エリアにおいて配置される前記基板上の複数のトレース」である点では共通するといえる。
(オ)引用発明の「電気光学装置(液晶表示装置)の電気光学パネル10(液晶表示パネル)」と「周辺領域10B」に形成されている「表示領域10A内の電極に接続される配線」を備えるものは、本願発明と同様に「電子装置の回路パネル」といい得るものである。

したがって、本願発明と引用発明は、
「電子装置の回路パネルであって、
基板を有するディスプレイパネルであって、前記基板は、
前記ディスプレイパネルのアクティブなエリアにおける実質的にフラットな表面と、
前記実質的にフラットな表面に隣接し且つそこから延びる曲がった境界エリアであって、前記アクティブなエリアにおける基板の前記フラットな表面の後ろに少なくとも部分的に延びる曲った境界エリアと、
を備える、ディスプレイパネルと、
前記アクティブなエリアに結合され且つ前記曲がった境界エリアにおいて配置される前記基板上の複数のトレースと、
を備える、電子装置の回路パネル」
で一致するものであり、次の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、「タッチセンサ回路を有するタッチ基板」を備えるのに対し、引用発明は、そのような構成は特定されていない点。

<相違点2>
本願発明では、基板の「前記実質的にフラットな表面と前記曲がった境界エリアとの間に延びる前記基板の湾曲部におけるパターン化された複数の孔であって、当該基板の湾曲部における応力を減少させる複数の孔」を備えるのに対し、引用発明は、基板に上記のような複数の孔を備えていない点。

<相違点3>
本願発明では、「複数のトレース」は、「境界エリアにおいて引き回しされ」ており、「前記トレースの少なくとも1つは前記孔のうちの一つと前記基板の最外部縁との間に配置され、前記基板の最外部縁と平行に延び」るものであるのに対し、引用発明では、そのような配線の配置は特定されていない点。

4.判断
・相違点1について
液晶表示パネル等の電気光学パネルを備えた電子機器においては、電気光学パネルの上に位置検出用のタッチパネル(本願発明の「タッチセンサ回路を有するタッチ基板」に相当する。)を備えるように構成することは、本願優先日前に周知の技術である。
したがって、引用発明において、「タッチセンサ回路を有するタッチ基板を備える」ようにすることは当業者が容易になし得ることである。

・相違点2について
前記引用文献2?5記載の技術によれば、フレキシブルプリント基板の曲げ部分に複数の孔を設けることにより、当該基板の曲げ応力を減少させることは、本願優先日前に周知技術であるといえる。
引用発明は、周辺領域10Bは、表示領域10Aに対して背面側(視認側とは反対側)に折り曲げられた状態とされるから、当該折り曲げられた部分(表示領域10Aと前記曲がった周辺領域10Bとの間)には、本願発明と同様の湾曲部といえる部分が存在することは明らかであり、また、引用文献1の【0024】には、「電気光学パネル10が自身で上記折り曲げ状態を維持できるように、折り曲げ部分を加熱する等により、折り曲げ状態が解消されないように加工してもよい。」と記載されており、引用発明は、基板自身で基板の折り曲げ状態を維持できる(すなわち、基板の曲げ応力を減少する)ようにすることが示唆されている。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用し、表示領域10Aと前記曲がった周辺領域10Bとの間に延びる基板の湾曲部においてパターン化された複数の孔を備え、当該基板の湾曲部における応力を減少させるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

・相違点3について
前記引用文献6、7記載の技術によれば、ディスプレイパネルやタッチパネル等の電気光学パネルの基板には、アクティブなエリアと、アクティブなエリアに隣接する配線エリアとが設けられ、配線エリアにおいて配線は、引き回しされ、基板の最外部縁と平行に延びるようにすることは、本願優先日前に周知技術であり、引用発明においても、複数の配線は、配線領域において引き回しされ、基板の最外部縁と平行に延びるように配置するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、上記相違点2で検討したように、引用発明において、基板の湾曲部にパターン化された複数の孔を備えようにする際に、複数の配線は複数の孔を避けて配置されることは明らか(例えば、引用文献4の「金属導体パターン部を避けてスリットを形成する必要があり」の記載参照。)であるから、引用発明において、配線の少なくとも1つは複数の孔のうちの一つと基板の最外部縁との間に配置されるようにすることは、当業者が容易になし得る設計事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-01 
結審通知日 2016-09-05 
審決日 2016-09-21 
出願番号 特願2014-529870(P2014-529870)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 匡  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 稲葉 和生
和田 志郎
発明の名称 装置の境界エリアの減少  
代理人 那須 威夫  
代理人 西島 孝喜  
代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
代理人 田中 伸一郎  

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