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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1324530
審判番号 不服2015-17896  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-01 
確定日 2017-01-31 
事件の表示 特願2013-202509「結像光学系」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日出願公開、特開2014- 6553〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
本願は,平成20年1月16日(パリ条約による優先権主張 平成19年1月17日 独国)にされた特願2008-6616号の一部を平成25年9月27日に新たな特許出願として出願した特願2013-202509号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成25年10月28日:手続補正書
平成26年 6月19日:拒絶理由通知(同年同月23日発送)
平成26年12月24日:意見書
平成26年12月24日:手続補正書
平成27年 5月28日:拒絶査定(同年6月1日送達) (以下「原査定」という。)
平成27年10月 1日:審判請求
平成27年10月 1日:手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
平成28年 1月19日:前置報告書
平成28年 5月31日:上申書

2 本件補正について
(1) 本件補正の内容
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである。

「像平面(8,57)内にある像視野(7)に,物体平面(4,58)内にある物体視野を結像させる,複数の鏡(M1からM6,59から62)を備え,前記鏡(M6,62)のうちの少なくとも1つは結像光(3)が通過するためのスルーホール(23)を備え,少なくとも1つの鏡(M1からM6,59から62)の反射面が,回転対称関数では記述できない自由曲面(27)であって,該自由曲面(27)に最も良く適合する回転対称面とは異なる,自由曲面(27)の形態である結像光学系(6,35,42,49,56,63,64,65,66)であって,該結像光学系の縮小倍率係数は4以上であることを特徴とする結像光学系。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである。(下線は,当審が付した。以下同様。)

「像平面(8,57)内にある像視野(7)に,物体平面(4,58)内にある物体視野を結像させる,複数の鏡(M1からM6,59から62)を備え,前記鏡のうちの少なくとも1つは結像光(3)が通過するためのスルーホール(23)を備え,少なくとも1つの鏡(M1からM6,59から62)の反射面が,回転対称関数では記述できない自由曲面(27)であって,該自由曲面(27)に最も良く適合する回転対称面とは異なる,自由曲面(27)の形態である結像光学系(6,35,42,49,56,63,64,65,66)であって,該結像光学系の縮小倍率係数は4以上であることを特徴とする結像光学系。」

(2) 補正について
本件補正は,特許請求の範囲についての補正を含むものであるところ,本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)は,本件補正前の請求項1に係る発明の「前記鏡(M6,62)のうち」の記載から,「(M6,62)」の記載を削除し,「前記鏡のうち」との記載に補正するものである。この補正は,原査定において,補足として「不明な記載である。」とされた指摘に応答するものである。
したがって,本件補正は,特許法17条の2第5項4号に掲げる,明りょうでない記載の釈明を目的とする補正である。よって,請求項1に係る本件補正は適法になされたものである。

3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由のうち,理由2は,概略,本件補正後発明は,本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1または2に記載された発明及び周知技術に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:特開2001-185480号公報
引用文献2:国際公開2006/069725号

第2 当審判体の判断

1 引用例の記載及び引用発明

(1) 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-185480号公報(以下,「引用例1」という)には,以下の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,例えば半導体素子や液晶表示素子等をフォトリソグラフィ工程で製造する際に使用される投影露光装置に好適な投影光学系及び該光学系を備えた投影露光装置に関し,特に,走査型投影露光装置に適し,かつ紫外線領域で0.1μm以下の解像度を有する投影光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体素子等を製造するためのフォトリソグラフィ工程において,フォトマスク又はレチクル(以下,総称して「レチクル」という)上に形成されたパターン像を投影光学系を介して,フォトレジスト等が塗布されたウエハ又はガラスプレート上などに投影露光する投影露光装置が使用されている。そして,半導体素子等の集積度が向上するにつれて,投影露光装置に使用されている投影光学系に要求される解像度は益々高まっている。この要求を満足するためには,照明光(露光光)の波長を短くすること,投影光学系の開口数(以下「NA」という)を大きくすること,又はその両者を行うことが必要となる。例えば,照明光の波長が180nm以下の場合は,0.1μm以下の高解像度を達成できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】照明光の波長が短くなると,光の吸収によって実用に耐える硝材の種類は限られてしまい,特に波長が180nm以下になると実用上使える硝材は蛍石だけに限定される。さらに,波長が100nm以下となると屈折レンズとして使用できる硝材は存在しなくなってしまう。従って,屈折レンズを全く使用しない光学系,又は,極少数の屈折レンズを使用する光学系の開発が必要となる。
【0004】このような屈折レンズを全く使用しない反射型光学系,又は,極少数の屈折レンズを使用する反射型光学系により投影光学系を構成する種々の技術が幾つか提案されてきている。例えば,像側のNAが0.2を越えるような大きな開口を有する光学系が,米国特許第5,815,310号公報や同5,686,728号公報等に開示されている。
【0005】しかしながら,これらの公報に開示された光学系は,像側開口数が0.3を越える場合で,かつ例えば波長が100nm以下の軟X線領域の放射光を使用する場合には,十分に収差補正がなされていない。従って,上記光学系を例えば解像度が30nm以下の投影光学系として使用すると十分な光学的性能を得ることはできない。
【0006】本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり,200nm以下の波長,特に100nm以下の軟X線波長域で,大きな開口数を有し,50nmを大幅に下回る解像度を有する投影光学系及び該光学系を備える投影露光装置を提供することを目的とする。」

イ 「【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために,本発明は,第1面の像を第2面に投影する投影光学系において,光軸を含まない領域に円弧形状の視野領域を有し,かつ瞳面に遮蔽領域を有することを特徴とする投影光学系を提供する。
【0008】また,本発明では,前記投影光学系は,前記第1面の中間像を形成するための第1結像光学系と,前記中間像からの放射光に基づいて前記第1面の最終像を前記第2面上に形成する第2結像光学系とを有し,前記第1結像光学系は,少なくとも2つの反射面を有し,前記第2結像光学系は,光通過部を持つ少なくとも1つの反射面を有することが望ましい。ここで,放射光とは1nm程度の硬X線領域から10μm程度の赤外領域までの放射を含むものである。また,請求項2記載の構成において,前記第1結像光学系は,前記第1面の中間像を形成する第1副結像光学系と,該第1面の中間像を再結像させる第2副結像光学系とを有し,前記第2結像光学系は,前記第2副結像光学系による像からの放射光に基づいて前記第1面の最終像を前記第2面上に形成することが好ましい。
【0009】また,本発明では,前記遮蔽領域はリング状(輪帯状,ドーナツ状)の形状であることが望ましい。
【0010】また,本発明では,第1面の像を第2面に投影する投影光学系において,前記第1面の中間像を形成するための第1結像光学系と,前記中間像からの放射光に基づいて前記第1面の最終像を前記第2面上に形成する第2結像光学系とを有し,前記第1結像光学系は,少なくとも2つの反射面を有し,前記第2結像光学系は,光通過部を持つ少なくとも1つの反射面を有することが望ましい。
【0011】また,本発明では,前記投影光学系は,前記第1面の中間像を形成するための第1結像光学系と,前記中間像からの放射光に基づいて前記第1面の最終像を前記第2面上に形成する第2結像光学系とを有し,前記第1結像光学系は,少なくとも1つの正パワーの反射面と,少なくとも1つの負パワーの反射面とを有し,前記第2結像光学系は,前記中間像近傍に設けられた主鏡と,該主鏡よりも前記第2面側に設けられた副鏡とを有し,前記主鏡は,第1光通過部と,正パワー(凹面形状)の第1反射面とを有し,前記副鏡は,第2光通過部と,第2反射面とを有し,前記中間像からの放射光は,前記主鏡の前記第1光通過部を介して前記副鏡の前記第2反射面で反射され,前記副鏡の前記第2反射面で反射された放射光は前記主鏡の前記第1反射面で反射され,前記主鏡の前記第1反射面で反射された放射光は前記副鏡の前記第2光通過部を介して前記第2面上に前記最終像を形成することが望ましい。なお,反射面のパワーとは,当該反射面の焦点距離の逆数である。
【0012】また,本発明では,前記投影光学系を構成する光学素子は全て反射面であることが望ましい。
【0013】また,本発明では,前記投影光学系は,前記第1面の中間像を形成するための第1結像光学系と,前記中間像からの放射光に基づいて前記第1面の最終像を前記第2面上に形成するための第2結像光学系とを有し,前記第1結像光学系は,少なくとも1つの屈折レンズ成分を有し,前記投影光学系は前記第1面側及び前記第2面側にテレセントリックな光学系であることが望ましい。
【0014】また,本発明では,前記投影光学系を構成する全ての光学素子の光軸は同一直線上に位置することが望ましい。
【0015】また,本発明では,前記投影光学系は,前記第1面の中間像を形成するための第1結像光学系と,前記中間像からの放射光に基づいて前記第1面の最終像を前記第2面上に形成する第2結像光学系とを有し,かつ前記第2面側にテレセントリックな光学系であり,前記第1結像光学系中の瞳面近傍には,前記遮蔽領域を形成するための遮蔽部材が配置されることが望ましい。
【0016】また,本発明では,前記投影光学系は,前記第1面の中間像を形成するための第1結像光学系と,前記中間像からの放射光に基づいて前記第1面の最終像を前記第2面上に形成する第2結像光学系とを有し,前記第1結像光学系は,瞳面近傍に配置された反射鏡を有し,該反射鏡の反射面は,所定の反射率を有する反射領域と,該反射領域の前記反射率よりも低い反射率を有する低反射率領域とを有することが望ましい。ここで,低反射率領域は,放射光を反射しない領域(無反射領域)も含むものである。これにより,瞳面上での遮蔽領域の形状は,視野領域の何れの位置からの放射光に対応する瞳面の間でほぼ同一形状となる。
【0017】また,本発明は,所定のパターンが形成されたマスクの像を感光性基板上へ投影転写する投影露光装置において,所定波長の放射光を供給する放射源と,請求項1乃至10の何れか一項記載の投影光学系と,前記マスクを前記第1面へ位置決めする第1ステージと,前記感光性基板を前記第2面へ位置決めする第2ステージと,を備えることを特徴とする投影露光装置を提供する。
【0018】なお,請求項1?10にかかる本発明においては,以下の(1)?(5)の何れかの構成とすることが好ましい。
(1)前記投影光学系は少なくとも2つの非球面形状の反射面を有することが好ましい。
(2)前記中間像近傍には視野絞りが設けられていることが好ましい。
(3)前記投影光学系は反射面を有することが好ましく,前記反射面が形成されている基板の線膨張係数は3ppm/°C以下であることが好ましい。
(4)前記投影光学系は,第1光通過部及び第1反射面を有する主鏡と,第2光通過部及び第2反射面を有する副鏡とを含むことが好ましく,前記主鏡と前記副鏡との間には開口絞りが設けられることが好ましく,前記主鏡の前記第1光通過部を介した放射光は,前記副鏡の第2反射面で反射され,前記副鏡の前記第2反射面で反射された放射光は前記主鏡の第1反射面で反射され,前記主鏡の前記第1反射面で反射された放射光は前記副鏡の前記第2光通過部を介して前記第2面上に前記最終像を形成することが好ましい。
(5)第1光通過部及び第1反射面を有する主鏡と,第2光通過部及び第2反射面を有する副鏡とを含むことが好ましく,前記主鏡と前記副鏡との間には遮蔽部材が配置されることが好ましい。
【0019】また,請求項5にかかる発明においては,前記第1光通過部は前記第1反射面の領域に囲まれた領域に形成され,前記第2光通過部は前記第2反射面の領域に囲まれた領域に形成されることが好ましい。
【0020】また,本発明の別の局面によれば,第1面の像を第2面へ投影する投影光学系であって,第1光通過部と該第1光通過部を囲む領域に形成された第1反射面とを有する主鏡と,第2光通過部と該第2光通過部を囲む領域に形成された第2反射面とを有する副鏡とを備え,前記第1及び第2反射面は,前記第1及び第2反射面の間に少なくとも3つの光路を形成し,前記第1及び第2光通過部は,前記第1及び第2反射面が形成する光軸を含まない位置に形成されることを特徴とする投影光学系である。
【0021】また,本発明のさらに別の局面によれば,第1面の像を第2面へ投影する投影光学系であって,第1光通過部と該第1光通過部を囲む領城に形成された第1反射面とを有する主鏡と,第2光通過部と該第2光通過部を囲む領域に形成された第2反射面とを有する副鏡とを備え,前記第1及び第2反射面は,前記第1及び第2反射面が形成する光軸を含む位置に形成され,前記第1及び第2光通過部は,前記光軸を含まない位置に形成されることを特徴とする投影光学系である。
【0022】上記構成の何れかにおいて,前記光軸を含まない位置に反射面を持つ反射鏡をさらに備えることが好ましい。そして,この場合,該反射鏡は,前記主鏡及び副鏡の前記第1面側に配置されることが好ましい。
【0023】また,上記構成の何れかにおいて,前記第1及び前記第2反射面を経由せずに前記第1及び第2光通過部を通過する放射光を遮光するための遮蔽部材を備えることが好ましい。」

ウ 「【0024】また,本発明は,所定のパターンが形成されたマスクの像を感光性基板上へ投影転写する投影露光装置であって,所定波長の放射光を供給する放射源と,請求項1乃至10の何れか一項,又は上記構成の何れかに記載の投影光学系と,前記マスクを前記第1面へ位置決めする第1ステージと,前記感光性基板を前記第2面へ位置決めする第2ステージと,を備えることを特徴とする投影露光装置である。
【0025】また,上記投影露光装置においては,以下の(6)?(10)の何れかの構成とすることが好ましい。
(6)前記マスクは,選択的に前記放射光を反射する反射型マスクであることが好ましい。
(7)請求項11又は上記(6)の構成において,前記放射源は,200nm以下の放射光を供給することが好ましい。
(8)上記(7)の構成において,前記放射源は,160nm以下の放射光を供給することが好ましい。
(9)上記(8)の構成において,前記放射源は,100nm以下の放射光を供給することが好ましい。
(10)請求項11又は上記(6)?(9)の何れかにおいて,前記第1ステージは,前記円弧形状の視野の長手方向を横切る方向へ移動可能に設けられ,前記第2ステージは,前記円弧形状の視野の最終像の長手方向を横切る方向へ移動可能に設けられることが好ましい。
【0026】また,本発明は,所定のパターンが形成されたマスクの像を感光性基板上へ投影転写する投影露光方法であって,請求項1乃至10の何れか一項,又は上記構成の何れかに記載の投影光学系を準備し,前記マスクを前記投影光学系の前記第1面に配置し,前記感光性基板を前記投影光学系の前記第2面に配置し,前記第1面に配置された前記マスクに所定波長の放射光を供給し,前記第2面に配置された前記感光性基板上に前記マスクの像を形成することを特徴とする投影露光方法である。
【0027】上記投影露光方法においては,以下の(11)?(16)の何れかの構成とすることが好ましい。
(11)前記放射光を前記マスクで反射させて前記投影光学系へ導くことが好ましい。
(12)前記マスクに波長200nm以下の放射光を供給することが好ましい。
(13)上記(12)において,前記マスクに波長160nm以下の放射光を供給することが好ましい。
(14)上記(13)において,前記マスクに波長100nm以下の放射光を供給することが好ましい。
(15)上記の何れかにおいて,前記感光性基板と前記投影光学系との相対的な位置を変化させつつ投影露光を行うことが好ましい。
(16)上記(15)において,前記位置を変化させる方向は,前記投影光学系の前記円弧形状の視野の長手方向を横切る方向であることが好ましい。」

エ 「【0029】(第1実施例)本発明の第1実施例にかかる投影光学系の概略構成を図1に基づいて説明する。投影光学系TLは,後述する走査型投影露光装置に好適な投影光学系であり,第1面であるマスクMのパターンの中間像I1を形成するための第1結像光学系K1と,中間像I1からの放射光に基づいてマスクMのパターンの最終像I2を縮小倍率で感光性基板であるウエハW上に形成する第2結像光学系K2とから構成されている。そして,本投影光学系はウエハ側にテレセントリックな光学系である。
【0030】第1結像光学系K1は,正パワー(凹面形状)の反射鏡M1,負パワー(凸面形状)の反射鏡M2,負パワーの凸反射鏡M3,正パワーの凹反射鏡M4を有している。マスクMからの放射光は,これら4つの反射鏡M1?M4を介して順次反射され,マスクMのパターンの中間像I1が形成される。また,第2結像光学系K2は,中間像I2近傍に設けられた正パワーの主鏡MSと,この主鏡MSよりもウエハW側に設けられた副鏡MFとから構成されている。主鏡MSは,第1開口部AP1と正のパワー(凹面形状)の反射面とを有している。また,副鏡MFは第2開口部AP2を有している。
【0031】中間像I1からの放射光は,主鏡MSの第1開口部AP1を介して副鏡MFの反射面で反射され,副鏡MFの反射面で反射された放射光は主鏡MSの第1反射面で反射され,主鏡MSの第1反射面で反射された放射光は副鏡MFの第2開口部AP2を介してウエハW上に最終像I2を形成する。
【0032】第1結像光学系K1は中間像I1を形成するため,少なくとも1枚の凹面鏡M4を有することが必要となる。そして,少なくとも1枚の凸面鏡M3を有することで光学系全体のペッツバール和が0となるように調整することができる。
【0033】また,露光領域は光軸AXを中心とした半径15.0?15.6mmの円弧状エリアであり,図1中の矢印SCで示すスキャン方向において幅16mmのフィールドサイズを使用することができる。」

オ 「【図1】



カ 「【0034】本実施例にかかる投影光学系は反射型光学系であるので,往路と復路との光路を分離する必要がある。そこで,まず,往復光路の分離について説明する。本投影光学系のマスクM上における露光領域は,図2(a)に示すような光軸AXを含まない軸外の円弧形状の領域EAである。そして,第1結像光学系K1では,この軸外の露光領域を利用して,いわゆるOFF・AXIS型の往復光路分離を行っている。また,第2結像光学系K2の主鏡MSと副鏡MFとはそれぞれ上述のように第1開口部AP1と第2開口部AP2とを有している。そして,第2結像光学系K2ではこれら開口部を利用して,いわゆる中心遮蔽型の往復光路分離を行っている。また,第1,第2開口部AP1,AP2から直接ウエハWに至る不要な放射光を取り除くために,瞳面である反射鏡M3に図2(b)に示すリング状の遮蔽領域SAが設けられている。
【0035】遮蔽領域SAの面積が大きいと結像性能の劣化を招くため,できる限り遮蔽領域は小さくすることが望ましい。このため,放射光の光束の開口が小さくなる像共役の位置において前記開口部を通過し,光束の開口が大きい位置において主鏡MS及び副鏡MFの反射面で反射されるように光学系を配置する。また,像共役の位置に開口部を配置すると,開口部の有効領域は円弧状になる。このため,図2(b)に示したように瞳内の遮蔽領域SAをリング状にすることにより,遮蔽面積を小さくすることができる。さらに,遮蔽領域SAをリング状にすることにより瞳面の中心付近を通る放射光を利用することができるため,マスクMで生じる回折光が遮蔽される割合が減り,0次回折光と±1次回折光との干渉の割合が増すため最終像I2のコントラストの劣化を防ぐことができる。」

キ 「【図2】



ク 「【0036】上記構成により,瞳内の遮蔽領域SAの面積を小さく保ちながら,30nm以下の解像度を得ることができる。また,本投影光学系はウエハW側にテレセントリックな光学系であるので,ウエハのたわみ等に起因する光軸方向のずれによる像歪みを軽減することができる。
【0037】また,第1結像光学系K1中の瞳面近傍の凸面鏡M3の遮蔽領域SAは,遮蔽部材を配置することで放射光を遮蔽することが望ましい。かかる構成により,遮蔽領域SAの位置と大きさとを画面全域からの放射光に対してほぼ同一とすることができる。従って,結像性能を画面内でほぼ同一とすることができる。なお,凸面鏡M3の反射面に,所定の反射率を有する反射領域と,この反射領域の反射率よりも低い反射率を有する低反射領域とを形成することでかかる遮蔽領域SAを形成できる。さらに好ましくは,この低反射領域の反射率はほぼゼロ又は極めて低いことが望ましい。
【0038】また,本投影光学系は,6つの非球面(後述するレンズデータ中のASP1等)を有している。非球面を導入することで解像度を向上することができる。さらに,第1結像光学系K1が形成する中間像I1近傍に視野絞りS1を有している。視野絞りS1によりマスクM側で生じる迷光がウエハWに到達することを防止できる。加えて,本投影光学系を構成する光学素子は全て反射面である。これにより,例えば100nm以下の波長を有する軟X線等を露光光として,マスクM上に形成された,より微細なパターン像をウエハWに投影転写することができる。また,主鏡MSと副鏡MFとの間の光軸AX近傍に遮蔽部材を設けても良い。
【0039】また,反射面が形成されている基板の線膨張係数は3ppm/°C以下である。これにより,投影露光中に反射鏡の形状が変化し,結像性能が劣化することを防止できる。さらに,本投影光学系を構成する全ての光学素子の光軸AXは同一直線上に位置している。これにより投影光学系の組立て又は調整を容易に行うことができ,十分な結像性能を得ることができる。加えて,第2結像光学系K2中の,主鏡MSと副鏡MFとの間の往復光路中に開口絞りS2を配置することで,投影光学系の開口数を可変とすることができる。
【0040】第1実施例にかかる投影光学系の諸元値を表1に掲げる。表1において,左端の番号はマスクM(第1面)側からの反射面(レンズ面)の順序,rは該当反射面(レンズ面)の曲率半径,dは該当反射面(レンズ面)から次の反射面(レンズ面)までの光軸上の間隔,βは投影光学系全体の倍率,NAはウエハ側(第2面側)の開口数,λは基準波長をそれぞれ示している。なお,曲率半径rの符号は該当反射面(レンズ面)の曲率中心が該当反射面(レンズ面)よりも第2面側に位置する場合には正とし,該当反射面(レンズ面)の曲率中心が該当反射面(レンズ面)よりも第1面側に位置する場合には負とする。また,面間隔dの符号は反射面で放射が反射される毎にその正負が逆転するものとする。
【0041】さらに,レンズデータ中のASPは非球面を示している。各実施例において,非球面は,光軸に垂直な方向の高さをy,非球面の頂点における接平面から高さyにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をZ,曲率(=1/曲率半径)をc,円錐係数をK,n次の非球面係数をA?Gとそれぞれしたとき,以下の数式で表される。
【0042】
【数1】Z=(c.y^(2))/[1+{1-(1+K)・c^(2)y^(2)}^(1/2)]+A・y^(4)+B・y^(6)+C・y^(8)+D・y^(10)+E・y^(12)+F・y^(14)+G・y^(16)
【0043】なお,以下全ての実施例の諸元値において,本実施例と同様の符号を用いる。ここで,各実施例の諸元値における曲率半径r,光軸上間隔dの単位の一例としてmmを用いることができる。」

ケ 「【0044】
【表1】

図3は本実施例にかかる投影光学系の子午方向(タンジェンシャル方向)及び球欠方向(サジタル方向)における横収差(コマ収差)を示している。図において,yは像高を示している。なお,以下全ての実施例の諸収差図において本実施例と同様の符号を用いる。収差図より明らかなように,本実施例の投影光学系は露光領域の全てにおいて収差がバランス良く補正されていることがわかる。また,露光波長はあらゆる波長で使用できるが,13nm程度の軟X線においても十分な解像度を得られる。
【0045】一般に投影光学系の解像度Wは次式で表される。
【0046】W=k・λ/NA
上記係数kは,現在の技術レベルでは0.5以下が達成されている。このため,本実施例では20nm以下の解像度を得ることができる。」

(2) 引用発明
上記(1)からみて,引用例1の第1実施例には,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。なお,段落番号は,引用発明の認定に活用した引用例1の記載箇所を示すために併記したものである。

「【0026】マスクを投影光学系の第1面に配置し,感光性基板を前記投影光学系の第2面に配置し,前記第1面に配置された前記マスクに所定波長の放射光を供給し,前記第2面に配置された前記感光性基板上に前記マスクの像を形成する投影露光方法における投影光学系TLであって,
【0029】投影光学系TLは,第1面であるマスクMのパターンの中間像I1を形成するための第1結像光学系K1と,中間像I1からの放射光に基づいてマスクMのパターンの最終像I2を縮小倍率で感光性基板であるウエハW上に形成する第2結像光学系K2とから構成され,
【0030】第1結像光学系K1は,正パワー(凹面形状)の反射鏡M1,負パワー(凸面形状)の反射鏡M2,負パワーの凸反射鏡M3,正パワーの凹反射鏡M4を有し,マスクMからの放射光は,4つの反射鏡M1?M4を介して順次反射され,マスクMのパターンの中間像I1が形成され,
第2結像光学系K2は,中間像I2近傍に設けられた正パワーの主鏡MSと,この主鏡MSよりもウエハW側に設けられた副鏡MFとから構成され,
主鏡MSは,第1開口部AP1と正のパワー(凹面形状)の反射面とを有し,副鏡MFは第2開口部AP2を有し,
【0031】中間像I1からの放射光は,主鏡MSの第1開口部AP1を介して副鏡MFの反射面で反射され,副鏡MFの反射面で反射された放射光は主鏡MSの第1反射面で反射され,主鏡MSの第1反射面で反射された放射光は副鏡MFの第2開口部AP2を介してウエハW上に最終像I2を形成し,
【0034】マスクM上における露光領域は,光軸AXを含まない軸外の円弧形状の領域EAであり,
【0033】露光領域は光軸AXを中心とした半径15.0?15.6mmの円弧状エリアであり,
【0040】投影光学系全体の倍率βは【表1】|β|=1/6である
【0029】投影光学系TL。」

2 対比
本件補正後発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。なお,便宜上,本件補正後発明の括弧内の番号は除いて記載する。

(1) 像平面内,像視野,物体平面内,物体視野
引用発明の「投影光学系TL」は,「マスクを投影光学系の第1面に配置し,感光性基板を前記投影光学系の第2面に配置し,前記第1面に配置された前記マスクに所定波長の放射光を供給し,前記第2面に配置された前記感光性基板上に前記マスクの像を形成」している。そして,引用発明の「マスクM上における露光領域」は,「光軸AXを含まない軸外の円弧形状の領域EAであり」,「露光領域」は「光軸AXを中心とした半径15.0?15.6mmの円弧状エリアであ」る。
したがって,引用発明の「第1面」及び「第2面」は,それぞれ,本件補正後発明の「物体平面」及び「像平面」に相当する。
ここで,投影光学系を用いた像形成においては,「マスクM上における露光領域」に対応する「感光性基板であるウエハ」上における「露光領域」が存在することは技術常識であるから,引用発明における「露光領域」は,「マスクM上における露光領域」とは異なる感光性基板上の「露光領域」である。そして,「マスク」は「投影光学系の第1面に配置」されるのであるから,引用発明の「マスクM上における露光領域」は,「第1面」内にある。また,「感光性基板」は「投影光学系の」「第2面に配置」されるのであるから,「露光領域」は,「第2面」内にある。
したがって,引用発明の「マスクM上における露光領域」及び「露光領域」は,それぞれ,本件補正後発明の「物体視野」及び「像視野」に相当するとともに,それぞれ,本件補正後発明の「物体平面内にある」及び「像平面内にある」との要件を満たす。

(2) 複数の鏡
引用発明の「投影光学系TL」は,「第1面であるマスクMのパターンの中間像I1を形成するための第1結像光学系K1と,中間像I1からの放射光に基づいてマスクMのパターンの最終像I2を縮小倍率で感光性基板であるウエハW上に形成する第2結像光学系K2とから構成され」る。そして,引用発明の「第1結像光学系K1は,正パワー(凹面形状)の反射鏡M1,負パワー(凸面形状)の反射鏡M2,負パワーの凸反射鏡M3,正パワーの凹反射鏡M4を有し」,「第2結像光学系K2は,中間像I2近傍に設けられた正パワーの主鏡MSと,この主鏡MSよりもウエハW側に設けられた副鏡MFとから構成され」る。
ここで,投影光学系を用いた像形成において,「マスクM上における露光領域」のパターンを感光性基板上の「露光領域」に像形成することは技術常識である。
したがって,引用発明の「4つの反射鏡M1?M4」,「主鏡MS」及び「副鏡MF」は,本願補正後発明の「複数の鏡」に相当するとともに,「像平面内にある像視野に,物体平面内にある物体視野を結像させる」との要件を満たす。
そして,引用発明の「主鏡MS」と「副鏡MF」は,開口部を有し,「放射光は,主鏡MSの第1開口部AP1を介して副鏡MFの反射面で反射され,副鏡MFの反射面で反射された放射光は主鏡MSの第1反射面で反射され,主鏡MSの第1反射面で反射された放射光は副鏡MFの第2開口部AP2を介してウエハW上に最終像I2を形成」する。したがって,引用発明の「放射光」は,本願補正後発明の「結像光」に相当するとともに,引用発明の「開口部」は,「放射光」を透過させており,本願補正後発明の「スルーホール」に相当する(図1からも見て取れる事項である。)。したがって,引用発明の「主鏡MS」及び「副鏡MF」は,本願補正後発明の「鏡のうちの少なくとも1つ」は,「結像光が通過するためのスルーホールを備え」るとの要件を満たす。

(3) 縮小倍率係数
引用発明において,「βは投影光学系全体の倍率」であって,「|β|=1/6」と記載されている。したがって,引用発明における「投影光学系」の「縮小倍率係数」は6であり,「縮小倍率係数は4以上である」といえる。

(4) 結像光学系
したがって,上記(1)?(3)のとおり,引用発明の「投影光学系」は,本願発明の「結像光学系」に相当するとともに,本件補正後発明の「像平面内にある像視野に,物体平面内にある物体視野を結像させ」,「物体平面内にある物体視野を結像させる,複数の鏡を備え,前記鏡のうちの少なくとも1つは結像光が通過するためのスルーホールを備え」,「縮小倍率係数は4以上である」との要件を満たす。

3 一致点
したがって,本件補正後発明と引用発明は,以下の構成において一致する。
「像平面内にある像視野に,物体平面内にある物体視野を結像させる,複数の鏡を備え,前記鏡のうちの少なくとも1つは結像光が通過するためのスルーホールを備え,結像光学系の縮小倍率係数は4以上である結像光学系。」

4 相違点
本件補正後発明と引用発明は,以下の点で相違する。

本件補正後発明の「結像光学系」は,「少なくとも1つの鏡の反射面が,回転対称関数では記述できない自由曲面であって,該自由曲面に最も良く適合する回転対称面とは異なる,自由曲面の形態である」のに対して,引用発明の「投影光学系TL」は,「少なくとも1つの鏡の反射面が,回転対称関数では記述できない自由曲面であって,該自由曲面に最も良く適合する回転対称面とは異なる,自由曲面の形態である結像光学系」であるとはいえない点。

5 判断
上記相違点について,判断する。

引用発明のような鏡を用いる「投影光学系」の技術分野において,「少なくとも1つの鏡の反射面」を,「回転対称関数では記述できない」,「最も良く適合する回転対称面とは異なる」「自由曲面」とすることは,本願の優先日前において一般的に行われている事項である(以下「周知慣用技術」という。)。例えば,原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-29625号公報(以下「引例3」という。)には,「なお,上記第1実施例及び第2実施例では,各反射鏡(M1?M6)の反射面を光軸AXに関して回転対称な高次非球面形状としているため,各反射鏡(M1?M6)にて発生する高次収差を補正して良好な結像性能を達成している。ここで,各反射鏡の反射面の面形状誤差や投影光学系の製造時における組み立て誤差等に起因する回転非対称な収差成分を補正するために,回転対称非球面を回転非対称な非球面としてもよい。」(段落【0089】)と記載されている。ここで,「回転非対称な非球面」は,「各反射鏡(M1?M6)の反射面を光軸AXに関して回転対称な高次非球面形状としている」第1実施例及び第2実施例において,「各反射鏡の反射面の面形状誤差や投影光学系の製造時における組み立て誤差等に起因する回転非対称な収差成分を補正するため」に,「回転対称非球面」を「回転非対称な非球面としてもよい」というものであるから,「回転対称関数では記述できない」,「最も良く適合する回転対称面とは異なる」「自由曲面」といえる。原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-15979号公報にも,同様の技術事項が記載されている(段落【0055】)。さらに,特開2005-166778号公報には,「投影系を構成するミラーの加工誤差,成膜誤差,さらに,ミラーの保持変形などによって,組立後は」「理想状態からずれている事がふつうである」ため,ミラーに「2次元的に計算で求められた任意の自由曲面を形成する事により」,「全露光領域の歪曲成分を」「補正する事が可能となる」ことが記載されている(段落【0024】等)。
引用発明は,鏡を用いた投影光学系において,不十分な収差補正を課題としている(段落【0005】)。そして,各反射鏡の反射面の面形状誤差や投影光学系の製造時における組み立て誤差等に起因する回転非対称な収差についても,上記の文献などにも示されるように周知の課題であり,引用発明を実施する上で,当業者が当然考慮する課題である。
したがって,引用発明において,各反射鏡の反射面の面形状誤差や投影光学系の製造時における組み立て誤差等に起因する回転非対称な収差を補正するために,「周知慣用技術」を採用して,「少なくとも1つの鏡の反射面」を,「回転対称関数では記述できない」,「最も良く適合する回転対称面とは異なる」「自由曲面」とすることは,当業者が容易に想到できたことである。

6 効果について
本願発明の効果に関して,本願の発明の詳細な説明には,明示的な記載が存在しないが,段落【0005】には,「スルーホールを備える従来の結像光学系では,このタイプの自由曲面を使用することで,結像誤差レベルの低いコンパクトな結像光学系を実現することができ,特に,高光処理能力が得られる。」と記載されている。
しかしながら,上記で述べたとおり引用発明は,鏡を用いた投影光学系において,不十分な収差補正を課題として,本願補正後発明と同様の投影光学系の構成としている。そして,回転非対称な収差を補正するために,鏡の曲面を自由曲面とすることは,上記の通り周知慣用技術といえる。
そうしてみると,本件補正後発明が奏する効果は,引用発明が奏する効果であるか,あるいは,引用発明に周知慣用技術を採用した当業者が期待する効果の範囲内のものである。

7 請求人の主張について
請求人は,上申書において「特に,本発明は,
・鏡のうちの少なくとも1つは結像光が通過するためのスルーホールを備えること;
・少なくとも1つの鏡の反射面が自由曲面であること;及び
・結像光学系の縮小倍率係数は4以上であること
を特徴として採用するものです。」及び「前置報告書の内容から見ても,引例1(特開2001-185480号公報)及び引例2(国際公開2006/069725号公報)のいずれも,反射面が自由曲面である鏡を用いることについて,何ら開示も示唆もしていないことは明らかであるものと思料いたします。そのような開示ないし示唆が無い限り,これらの引例に記載されている発明に反射面が自由曲面である鏡を用いる技術を適用して結像光学系の結像条件を向上させることは,当業者といえども容易になし得るものではありません。」と主張する。
しかしながら,請求人の主張の点については,上記5のとおりである。

そして,請求人は,上申書において「引例3(特開2004-29625号公報)」について,「回転非対称非球面に比べて回転対称非球面の方が製造が容易であることに鑑みれば,引例3のこの記載は,当業者が回転非対称非球面を採用しようと考える動機づけにはならないものと思料いたします。」と主張する。また,「引例5(特開2002-15979号公報)」及び「引例8(特開2005-166778号公報)」についても,適用の理由がないと主張する。
しかしながら,引例3には,請求人も認めるとおり回転非対称非球面を採用してもよいことが記載されており,その利点も明記されている(段落【0089】等)以上,当業者が回転非対称非球面を採用しようと考える動機づけとして十分である。

したがって,請求人の主張は採用できない。

第3 まとめ
以上のとおり,本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,他の請求項に係る発明について審究するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-29 
結審通知日 2016-09-05 
審決日 2016-09-20 
出願番号 特願2013-202509(P2013-202509)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀井 康司  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 多田 達也
西村 仁志
発明の名称 結像光学系  
代理人 上杉 浩  
代理人 弟子丸 健  
代理人 近藤 直樹  
代理人 大塚 文昭  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 西島 孝喜  
代理人 須田 洋之  

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