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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1324536
審判番号 不服2015-97  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-01-05 
確定日 2017-02-27 
事件の表示 特願2010-524163「遠隔測定インプラントと交信するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日国際公開、WO2009/032969、平成22年12月 9日国内公表、特表2010-537785、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成20年9月5日(パリ条約による優先権主張 平成19年9月6日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年9月12日付けで拒絶理由が通知され、平成26年3月14日付けで意見書が提出され、平成26年8月15日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、平成27年1月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において同年10月13日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、平成28年4月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらに、当審において平成28年5月12日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年11月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成28年11月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものと認められる。
そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、分説してA)からF)の符号を付けると、以下の事項により特定される発明である。

【請求項1】
A) 遠隔測定インプラントと、
B) 前記遠隔測定インプラントからの信号を読み取るリーダユニットと、
C) 前記リーダユニットに接続するように形成され、前記遠隔測定インプラントからの信号を受信するようになされたアンテナであって、該アンテナは、第1のコイルと、第2のコイルと、コネクタとを有し、前記第1のコイルが前記第2のコイルに電気的に接続され、前記コネクタが、前記第1のコイルと第2のコイルの間の角度を変化させるために、前記第1および第2のコイルが互いに対して動くことを可能にするアンテナと、を含み、
D) 前記アンテナが少なくとも1つのフェライト構成部品をさらに含み、
E) 前記第1および第2のコイルによって生じる磁界を成形し、および/または前記アンテナをほ乳類の組織の表面に整合させる、
F) 遠隔測定システム。

第3 原査定の理由について

1 原査定の理由の概要

本願発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・引用例1:特表2005-532123号公報
・引用例2:特開平8-330838号公報
・引用例3:特開2001-356089号公報
・引用例4:特開2004-64153号公報
要すれば、本願発明は、上記引用例1に記載された発明に、上記引用例2に記載された技術を採用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 原査定の理由の判断

(1)各引用例の記載事項

ア 引用例1

(ア) 引用例1の記載事項
上記引用例1には、以下の記載がある(下線は当審において付加したものである。以下、同様。)。

(引1-ア)
「【請求項1】
素子のひずみを測定し遠隔的にモニタするためのシステムであって、
前記素子のひずみを表す電気信号を生成してひずみを測定するためのセンサと、
ひずみを表す信号を符号化して送信する、前記センサに電気的に結合される遠隔測定回路と、
前記センサ及び前記遠隔測定回路から遠隔的に配置され、ひずみを表す前記信号を受信するための読取り器モジュールとを備えること
を特徴とするシステム。
【請求項2】
前記センサ及び前記遠隔測定回路を封入するための筐体をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の素子のひずみを測定し遠隔的にモニタするためのシステム。
【請求項3】
前記筐体は、生きている生体に埋め込み可能な生体適合性材料からなることを特徴とする、請求項2に記載の素子のひずみを測定し遠隔的にモニタするためのシステム。」

(引1-イ)
「【0017】
再び図1を参照すると、受動遠隔測定回路40が備え付けられており(バッテリを必要としない)、この回路は、簡単なタンク回路を形成するインダクタLRとコンデンサCRとを備えている。読取り器モジュール60は、無線タグ装置(RFID)回路系で一般的にみられるように、例えば125kHzの所定の周波数で送信を行うアンテナコイル62を利用する。アンテナ62から誘導的に送られた電力は、遠隔測定回路40に結合し、これにより、インダクタンス及び静電容量の値に応じた特定の周波数で回路を共振させる。」

(引1-ウ) 図1




(引1-エ)
上記(引1-ア)には、「前記センサ及び前記遠隔測定回路を封入するための筐体」を備え、「前記筐体は、生きている生体に埋め込み可能な生体適合性材料からなる」ことが記載されていることから、「前記センサ」と「前記遠隔測定回路」は、「生きている生体」に埋め込まれるものである点が理解できる。

(引1-オ)
上記(引1-ア)、(引1-ウ)、(引1-カ)の記載より、「読取り器モジュール60」は、「アンテナコイル62」を有することが理解できる。

(イ) 引用例1に記載された発明
上記(引1-ア)ないし(引1-オ)の記載事項を整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 素子のひずみを測定し遠隔的にモニタするためのシステムであって、
前記素子のひずみを表す電気信号を生成してひずみを測定するためのセンサと、
ひずみを表す信号を符号化して送信する、前記センサに電気的に結合される遠隔測定回路と、
前記センサ及び前記遠隔測定回路から遠隔的に配置され、ひずみを表す前記信号を受信するための読取り器モジュールとを備えるシステムであり、
前記センサと前記遠隔測定回路は、生きている生体に埋め込まれるものであり、
読取り器モジュールはアンテナコイルを有する、
システム。」

イ 引用例2

(ア) 引用例2の記載事項
上記引用例2には、以下の記載がある。

(引2-ア)
「【請求項1】 カードリーダライタと非接触情報カードとの間で情報信号を電磁誘導により送信又は送受信するようにした前記カードリーダライタ側の近距離通信用アンテナにおいて、
該近距離通信用アンテナがループアンテナで構成され、前記ループアンテナはアンテナ導体を交差するように折り返し、隣接するループコイルに逆向きの電流が流れるようにして成ることを特徴とする近距離通信用アンテナ。」

(引2-イ)
「【0040】図4及び図5は、本発明に係る近距離通信用アンテナの他の実施例を示す。本例の近距離通信用アンテナ51は、平面的にみて図1と同様にアンテナ導体42を8の字状に巻回し、隣接する2つのループコイル43A及び43Bを形成すると共に、特にループコイル43A及び43Bをその両ループコイル43A及び43Bのなす角θを180°より小さくなるように折曲して構成する。
【0041】この様に、2つのループコイル43A及び43Bを折曲して構成したときには、指向性を有するので非接触情報カード33の動作エリアの狭小化を図ることができ、さらにアンテナの設置スペースを小さくすることができる。」

(引2-ウ) 図4




(引2-エ) 図5




(イ) 引用例2記載技術
上記(引2-ア)ないし(引2-エ)より、上記引用例2には、以下の技術(以下、「引用例2記載技術」という。)が記載されている。

「カードリーダライタと非接触情報カードとの間で情報信号を電磁誘導により送信又は送受信するようにした前記カードリーダライタ側の近距離通信用アンテナにおいて、隣接する2つのループコイル43Aと43Bを、その両ループコイル43A及び43Bのなす角θを180°より小さくなるように折曲して構成し、指向性を有するようにした技術。」

ウ 引用例3の記載事項

上記引用例3には、以下の記載がある。

(引3-ア)
「 【請求項1】 直線偏光光波を出力する偏光光源手段と、電気光学的な位相変調素子と、電気光学的な旋光角度変調素子と、光強度検出手段とを備え、検体中の旋光性物質による旋光角度と該検体を通過する光強度の測定値から、該検体中の特定旋光性物質の濃度を推定することを特徴とする濃度測定装置。」

(引3-イ)
「【0016】図8は、本発明の糖度検出装置を体に装着する場合のシステム構成例を示す。図8においては、体内埋め込み型の血液糖分濃度検出装置の構成例である。802は検体、808は検出装置、806はセンサ素子、804は内蔵時計、822は2次電池、824は充電用コイル、850は埋め込み人体を示す。832は充電器兼情報交換装置で、人体外部に設置する。834は10khz以下の低周波磁波発生装置で、体内埋め込みセンサ装置に電気エネルギーを送り込む。836は充電装置のエネルギー源で、電池もしくは商用電源から採取する。838はデータ分析収集装置で、時計を内蔵し、埋め込み装置の時計と同期を取っておく。828は送受信器であり、弱い電磁波を用いて埋め込み装置に情報を伝達したり、同装置から情報を採取する。814は同近距離通信路である。・・・」

上記引用例3の請求項1の記載より、上記引用例3には、検体中の旋光性物質による旋光角度と該検体を通過する光強度の測定値から、該検体中の特定旋光性物質の濃度を推定する技術が記載されており、段落【0016】には、人体に埋め込まれたセンサから情報を採取するにあたって、近距離通信を用いる点が記載されている。

エ 引用例4の記載事項

上記引用例4には、以下の記載がある。

(引4-ア)
「【請求項1】
ループアンテナを介して所定の変調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受をICカードとの間で非接触にて行う非接触ICカード用リーダライタにおいて、
前記ループアンテナの回路パターンを形成した複数の基板と、該複数の基板を回動自在に連結する機構的連結手段と、前記各基板上の回路パターン間を電気的に接続してループアンテナ回路を形成する電気的連結手段と、を備え、
前記機構的連結手段を介して前記複数の基板を所定の角度に折り曲げて設置することを特徴とするリーダライタ用ループアンテナ。」

上記引用例4の請求項1の記載を参照すると、非接触ICカード用リーダライタにおいて、ループアンテナの回路パターンを形成した複数の基板と、該複数の基板を回動自在に連結する機構的連結手段と、前記各基板上の回路パターン間を電気的に接続してループアンテナ回路を形成する電気的連結手段と、を備え、前記機構的連結手段を介して前記複数の基板を所定の角度に折り曲げて設置する点が記載されている。

(2)対比

本願発明と引用発明を対比する。

ア 本願発明のF)の特定事項について
引用発明の「遠隔的にモニタするためのシステム」は、本願発明の「遠隔測定システム」に相当する。

イ 本願発明のA)の特定事項について
引用発明の「センサ」と「遠隔測定回路」は、生きている生体に埋め込まれるものである。一方、本願発明の「遠隔測定インプラント」は、「ほ乳類の組織」の内部に設けられるものであることは明らかである。よって、引用発明の「センサ」と「遠隔測定回路」を合わせたものは、本願発明の「遠隔測定インプラント」に相当する。

ウ 本願発明のB)の特定事項について
引用発明の「読取り機モジュール」は、「遠隔測定回路」が「送信する」、「ひずみを表す」「信号を受信するため」のものであるから、本願発明の「遠隔測定インプラントからの信号を読み取るリーダユニット」に相当する。

エ 本願発明のC)の特定事項について
引用発明の「読取り機モジュール」は「アンテナコイルを有する」ものであり、「アンテナコイル」を介して「ひずみを表す前記信号を受信」するものであることは、当業者にとって明らかである。
一方、本願発明の「アンテナ」は、「リーダユニット」に接続されるものであり、「遠隔測定インプラントからの信号を受信するようになされた」ものである。
よって、引用発明の「アンテナコイル」は、本願発明の「アンテナ」に相当し、両者は、「リーダユニットに接続するように形成され」た「遠隔測定インプラントからの信号を受信するようになされたアンテナ」である点で共通する。

オ 本願発明のD)及びE)の特定事項について
引用発明は、本願発明のD)及びE)の特定事項を具備していない。

よって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。

「遠隔測定インプラントと、
前記遠隔測定インプラントからの信号を読み取るリーダユニットと、
前記リーダユニットに接続するように形成され、前記遠隔測定インプラントからの信号を受信するようになされたアンテナと、を含む
遠隔測定システム。」

そして、両者は以下の点で相違する。

<相違点1>
アンテナが、本願発明は、「第1のコイルと、第2のコイルと、コネクタとを有し、前記第1のコイルが前記第2のコイルに電気的に接続され、前記コネクタが、前記第1のコイルと第2のコイルの間の角度を変化させるために、前記第1および第2のコイルが互いに対して動くことを可能にする」ものであるのに対して、引用発明は、そのような構成とはなっていない点。

<相違点2>
アンテナが、本願発明は、「少なくとも1つのフェライト構成部品をさらに含」むのに対して、引用発明は、その点が不明である点。

<相違点3>
遠隔測定システムに関して、本願発明は、「第1および第2のコイルによって生じる磁界を成形し、および/またはアンテナをほ乳類の組織の表面に整合させる」ものであるのに対して、引用発明は、その点が不明である点。

(3)原査定の理由についての判断

上記した各相違点のうち、相違点1について、以下に検討する。

上記引用例2には、上記「(1)各引用例の記載事項」「イ 引用例2」「(イ) 引用例2記載技術」に示した技術が記載されている。
しかしながら、引用例2記載技術は、カードリーダライタと非接触情報カードとの間で情報信号を電磁誘導により送信又は送受信するための技術であり、「生体」への適用については全く想定されていない。また、隣接する2つのループコイル43Aとループコイル43Bを、折曲して構成するものであるが、カードリーダライタのループコイルであるがゆえに、カードリーダライタの作成後は固定されるものであり、「生体」への適用を前提とした上で、2つのコイルが互いに対して動くことを可能にしたものとはいえない。

また、原査定において、周知技術として提示された引用例3及び4についても、上記引用例3には、上記「(1)各引用例の記載事項」「ウ 引用例3の記載事項」のとおり、人体に埋め込まれたセンサから情報を採取するにあたって、近距離通信を用いる点は記載されているものの、近距離通信に用いられるコイルの具体的な構成は何ら記載されておらず、また、上記引用例4には、上記「(1)各引用例の記載事項」「エ 引用例4の記載事項」のとおり、非接触ICカード用リーダライタに関するものであって、「生体」への適用については全く想定されていないとともに、複数の基板を回動自在に連結する機構的連結手段を有することによって、前記複数の基板を所定の角度に折り曲げて作成することを可能とするものではあるが、上記引用例2記載技術と同様に、作成後は固定されるものであり、「生体」への適用を前提とした上で、2つのコイルが互いに対して動くことを可能にしたものとはいえない。

してみると、引用例2ないし引用例4には、上記相違点1に係る構成が記載も示唆もされていない。また、上記相違点に係る構成が、本願出願前周知の事項であることを示す証拠もない。

したがって、引用例1ないし4に接した当業者といえども、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を想起することができない。

よって、本願発明のその余の相違点に係る構成について検討するまでもなく、本願発明は、引用例1ないし4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

また、請求項2ないし7に係る発明は、本願発明の発明特定事項をすべて含み、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、引用例1ないし4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

以上のことから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審による拒絶理由について

1 当審による拒絶理由の概要

(1)当審拒絶理由通知1の概要
(理由1)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1に係る発明は、「前記コネクタが、前記第1および第2のコイルが互いに対して動くことを可能にする」とのみ記載されていることから、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものを含んでおり、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
請求項1の記載を引用する請求項2ないし10に係る発明についても同様である。

(理由2)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

ア 請求項4において、「斜角から前記遠隔測定インプラントを給電し読み取る」の記載が明確でなく、請求項4に係る発明は明確でない。
請求項4の記載を引用する請求項5ないし10に係る発明についても同様である。
イ 請求項8において、「少なくとも1つの追加のアンテナコイルをさらに含んでいる」との記載があるが、この「追加のアンテナコイル」がどのように設けられるのか不明であり、請求項8に係る発明は明確でない。
請求項8の記載を引用する請求項9及び請求項10に係る発明についても同様である。

(2) 当審拒絶理由2の概要

(理由1)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1において、「前記第1および第2のコイルによって生じる磁界を成形し、および/または前記アンテナをほ乳類の組織の表面に整合させる」とあるが、「および/または」という記載が用いられており、 「または」が用いられる場合に、互いに異なる技術的事項が択一的に選択されることになり、請求項1に係る発明の技術的意義が不明であり、また、発明の詳細な説明に記載された作用効果を十分に奏することができない場合も含まれてしまうことから、請求項1に係る発明が明確に把握できない。
請求項1の記載を引用する請求項2?10に係る発明についても同様である。

(理由2)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項8に係る発明は、「少なくとも1つの追加のアンテナコイルをさらに含んでいる、請求項1から7のいずれか一項に記載の遠隔測定システム。」との記載によって特定される発明であるが、発明の詳細な説明の記載を参照しても、そのような発明についての具体的な態様は何ら記載されていない。
したがって、請求項8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。
請求項8の記載を引用する請求項9及び請求項10に係る発明についても同様である。

2 当審による拒絶理由の判断

(1) 当審拒絶理由1の(理由1)について

平成28年11月16日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)により、補正後の請求項1において、「前記第1および第2のコイルが互いに対して動くこと」が、「前記第1のコイルと第2のコイルの間の角度を変化させるため」である点が限定された。
その結果、補正後の請求項1ないし7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものを含むものではなくなり、当審拒絶理由1の(理由1)は解消した。

(2) 当審拒絶理由1の(理由2)アについて

平成28年11月16日付け意見書により、請求項4における「斜角」は、「斜位、すなわち平行から直角までの位置」である旨が主張された。
その結果、請求項4の記載は、当業者が理解できるものであって、明確でないとまではいえなくなったことから、当審拒絶理由1の(理由2)アは解消した。

(3) 当審拒絶理由1の(理由2)イについて

本件補正により、補正前の請求項8の記載は削除された。
よって、当審拒絶理由1の(理由1)イは解消した。

(4) 当審拒絶理由2の(理由1)について

本件補正により、補正後の請求項1は、「前記第1のコイルと第2のコイルの間の角度を変化させるために、前記第1および第2のコイルが互いに対して動くことを可能にするアンテナ」を有する点が特定され、発明の前提となる構成が明確になり、互いに異なる技術的事項が択一的に選択された場合であっても、発明の詳細な説明に記載された課題を解決可能であることが明らかになった。
よって、当審拒絶理由2の(理由1)は解消した。

(5) 当審拒絶理由2の(理由2)について

本件補正により、補正前の請求項8の記載は削除された。
よって、当審拒絶理由2の(理由2)は解消した。

(6) 当審による拒絶理由についてのまとめ

以上のことから、当審拒絶理由1の(理由1)、(理由2)、当審拒絶理由2の(理由1)、(理由2)は、いずれも解消した。

第5 むすび

以上のとおり、原査定の拒絶理由、及び、当審による拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-10 
出願番号 特願2010-524163(P2010-524163)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 多田 達也冨永 昌彦  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 小川 亮
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遠隔測定インプラントと交信するシステムおよび方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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