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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1324610
審判番号 不服2015-3488  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-02-24 
確定日 2017-02-06 
事件の表示 特願2012- 6625「軟質塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 1日出願公開、特開2013-147519〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月17日にされた特許出願であって、平成26年8月8日付けで拒絶理由が通知され、同年10月17日に意見書が提出されたが、同年11月19日付けで拒絶査定がされたところ、平成27年2月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正されたので、特許法第162条所定の審査がされた結果、同年4月3日付けで同法第164条第3項の規定による報告がされ、平成28年9月5日付けで審尋をしたところ、審判請求人から回答書が提出されなかった。

第2 本願発明
平成27年2月24日に提出された手続補正書による補正は、特許請求の範囲について、請求項の削除を目的とするものであって適法なものであるので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年2月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。

「【請求項1】
金属導体線の外周に絶縁被覆を有する絶縁電線であって、
前記絶縁被覆が、塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加させてなる軟質塩化ビニル樹脂組成物であって、前記可塑剤は、フタル酸エステルまたはトリメリット酸エステルからなる第1可塑剤と、シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる第2可塑剤との混合物であり、前記第1可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基と前記第2可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基とは、全て同じ炭素数のアルキル基であり、前記複数のアルキル基は、直鎖構造の第1アルキル基および/または側鎖を有する構造の第2アルキル基からなり、前記第1可塑剤における前記第1アルキル基と前記第2アルキル基との存在比率が、前記第2可塑剤におけるそれと同じである軟質塩化ビニル樹脂組成物からなることを特徴とする絶縁電線。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、要するに、「本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、下記引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献1:国際公開第2003/029339号」
というものを含むものである。

第4 刊行物及び刊行物の記載事項
刊行物:国際公開第2003/029339号(以下、「引用文献」という。)
引用文献には、以下の事項が記載されている。
1「PLASTICISED POLYVINYL CHLORIDE
The present invention relates to improved polyvinyl chloride compositions.・・・Examples of the major uses of plasticised polyvinyl chloride compositions include wire and cable coating,・・・」(1頁1?9行)
(当審訳:可塑化ポリ塩化ビニル
この発明は、ポリ塩化ビニル組成物の改良に関するものである。・・・可塑化ポリ塩化ビニル組成物の主な用途例に、ワイヤやケーブルの被覆・・・がある。)
2「The present invention is illustrated by the following examples in which the C_(7), C_(8), C_(9) and C_(10) esters of bis-1.2-cyclohexanedicarboxylic anhydride were prepared using the commercial C_(7) alcohol available from ExxonMobil Chemical Exxal 7 to produce the C_(7) ester (DIHCH), 2 ethyl hexanol to produce the C_(8) ester (DEHCH), the commercial C_(8) alcohol available as Exxal 8 from ExxonMobil Chemical to produce C_(8) ester (DIOCH), the commercial C_(9) alcohol available from ExxonMobil Chemical as Exxal 9 to produce the C_(9) ester (DINCH) and the commercial C_(10) alcohol available from ExxonMobil Chemical as Exxal 10 to produce the C_(10) ester (DIDCH).」(24頁23?30行)
(当審訳:この発明は、後述の実施例を用いて説明されるものである。実施例では、炭素数7のエステル(DIHCH)を得るためにエクソンモービル・ケミカル社から入手できる市販の炭素数7のアルコール Exxal 7 を用いて、炭素数8のエステル(DEHCH)を得るために2-エチルヘキサノールを用いて、炭素数8のエステル(DIOCH)を得るためにエクソンモービル・ケミカル社から入手できる市販の炭素数8のアルコール Exxal 8 を用いて、炭素数9のエステル(DINCH)を得るためにエクソンモービル・ケミカル社から入手できる市販の炭素数9のアルコール Exxal 9 を用いて、炭素数10のエステル(DIDCH)を得るためにエクソンモービル・ケミカル社から入手できる市販の炭素数10のアルコール Exxal 10 を用いて、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物の炭素数7?10のエステルが調整された。(なお、24頁24行目の「bis-1.2-cyclohexanedicarboxylic anhydride」は「cis-1,2-cyclohexanedicarboxylic anhydride」の誤記であると認める。))
3「The viscosity depressing effect of diisoheptyl cyclohexanoate was determined in formulations containing diisoheptyl phthalate (Jayflex 77) and also dodecyl benzene (DDB), the results are set out in Table 11.

」(34頁1?3行、表11)
(当審訳:ジイソヘプチルフタレート(Jayflex 77)やドデシルベンゼン(DDB)を含む材料におけるシクロヘキサンジカルボン酸ジイソヘプチルの粘度降下効果を測定し、その結果を表11に示す。)

第5 引用文献に記載された発明
上記第4 1及び3より、引用文献には「被覆を有するワイヤであって、前記被覆が、ポリ塩化ビニル(PVC)、ジイソヘプチルフタレート(Jayflex 77)、シクロヘキサンジカルボン酸ジイソヘプチル(DIHCH)を含む材料からなるワイヤ。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

第6 本願発明と引用発明との対比、判断
1 引用発明の「ワイヤ」は、本願発明の「金属導体線」に相当し、引用発明の「被覆」は、その組成からみて本願発明の「絶縁被覆」に相当し、引用発明の「被覆されたワイヤ」は、本願発明の「絶縁電線」に相当すると認められる。
2 引用発明の「ポリ塩化ビニル(PVC)」は、本願発明の「塩化ビニル樹脂」に相当すると認められる。
また、引用発明の「ジイソヘプチルフタレート(Jayflex 77)」はフタル酸エステルであるから、本願発明の「フタル酸エステルからなる第1可塑剤」に相当すると認められる。
さらに、引用発明の「シクロヘキサンジカルボン酸ジイソヘプチル(DIHCH)」はシクロヘキサンジカルボン酸エステルであるから、本願発明の「シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる第2可塑剤」に相当すると認められる。
そうしてみると、引用発明の「材料」は、「ポリ塩化ビニル(PVC)」、「ジイソヘプチルフタレート(Jayflex 77)」及び「シクロヘキサンジカルボン酸ジイソヘプチル(DIHCH)」を含むものであるから、本願発明の「塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加させてなる軟質塩化ビニル樹脂組成物」に相当すると認められる。
3 引用発明の「ジイソヘプチルフタレート(Jayflex 77)」の構造式は、その名称からみて、

のとおりであり、その「エステル結合している複数のアルキル基」の炭素数は「7」であると認められる。
一方、引用発明の「シクロヘキサンジカルボン酸ジイソヘプチル(DIHCH)」の構造式は、その名称及び第4 2の記載からみて、

のとおりであり、その「エステル結合している複数のアルキル基」の炭素数は同じく「7」であると認められる。
4 本願の明細書の段落【0007】には、本願発明における「直鎖構造」及び「側鎖」の定義として「本発明において、「直鎖構造」とは炭素原子同士が枝分かれせずに連なっている化学構造と定義する。また、「側鎖」とは炭素原子同士の最も長い連鎖から枝分かれしている部分(水素原子を除く)と定義する。」と記載されているところ、この定義に基づいて、引用発明の「ジイソヘプチルフタレート(Jayflex 77)」及び「シクロヘキサンジカルボン酸ジイソヘプチル(DIHCH)」の「直鎖構造の第1アルキル基と側鎖を有する構造の第2アルキル基との存在比率」(以下、「存在比率」という。)について検討する。
引用発明の「ジイソヘプチルフタレート(Jayflex 77)」は、その構造式からみて(上記3参照)、直鎖構造の第1アルキル基を有しておらず、側鎖を有する構造の第2アルキル基のみを有している。よって、その存在比率は「0/100」であると認められる。
一方、引用発明の「シクロヘキサンジカルボン酸ジイソヘプチル(DIHCH)」は、その構造式からみて(上記3参照)、直鎖構造の第1アルキル基を有しておらず、側鎖を有する構造の第2アルキル基のみを有している。よって、その存在比率は同じく「0/100」であると認められる。
5 上記3及び4を踏まえると、引用発明の「ジイソヘプチルフタレート(Jayflex 77)」及び「シクロヘキサンジカルボン酸ジイソヘプチル(DIHCH)」の両者は、エステル結合している複数のアルキル基は全て同じ炭素数のアルキル基であり、且つ、存在比率は同じであると認められる。
6 以上を総合すると、本願発明と引用発明は、
「 金属導体線の外周に絶縁被覆を有する絶縁電線であって、
前記絶縁被覆が、塩化ビニル樹脂に可塑剤を添加させてなる軟質塩化ビニル樹脂組成物であって、前記可塑剤は、フタル酸エステルからなる第1可塑剤と、シクロヘキサンジカルボン酸エステルからなる第2可塑剤との混合物であり、前記第1可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基と前記第2可塑剤にエステル結合している複数のアルキル基とは、全て同じ炭素数のアルキル基であり、前記複数のアルキル基は、直鎖構造の第1アルキル基および/または側鎖を有する構造の第2アルキル基からなり、前記第1可塑剤における前記第1アルキル基と前記第2アルキル基との存在比率が、前記第2可塑剤におけるそれと同じである軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる絶縁電線。」の点で一致し、両者の間に構成上の差異は見当たらない。
よって、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
仮にそうでないとしても、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第7 平成27年2月24日に提出された審判請求書(以下、単に「審判請求書」という。)における審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書において、引用文献に記載されているJayflex77であるdiisoheptyl phthalateのアルキル基の炭素数は7であるが、引用文献に記載されているDIHCHのアルキル基の炭素数は9であり、両者の炭素数が異なる旨主張している。
上記第4 2のように、引用文献には、アルキル基の炭素数が9であるエステルとしてDINCHが記載されているものの、引用発明に含まれるのはDINCHではなくDIHCHであって、当該DIHCHのアルキル基の炭素数は、上記第6 3のようにその構造式からみて7である。
また、引用発明の 「ジイソヘプチルフタレート(Jayflex 77)」及び「シクロヘキサンジカルボン酸ジイソヘプチル(DIHCH)」は、共に「ジイソヘプチル」と表記されることからみても、両者のアルキル基の炭素数は同じであるというほかない。
したがって、審判請求人の主張は失当である。

第8 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
仮にそうでないとしても、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-08 
結審通知日 2016-12-09 
審決日 2016-12-20 
出願番号 特願2012-6625(P2012-6625)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08L)
P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 周史  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 前田 寛之
守安 智
発明の名称 軟質塩化ビニル樹脂組成物およびそれを用いた絶縁電線  
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