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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B66B
管理番号 1324655
審判番号 不服2015-12650  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-03 
確定日 2017-02-08 
事件の表示 特願2013-532118「エレベータ設備」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月12日国際公開、WO2012/045606、平成25年11月21日国内公表、特表2013-542152〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年9月26日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2010年10月7日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成25年4月4日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成25年5月31日に特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、図面及び要約書の日本語による翻訳文が提出されるとともに同日付けで手続補正書が提出され、平成26年5月23日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成26年9月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年3月9日付けで拒絶査定がされ、平成27年7月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成27年10月16日に上申書が提出され、その後、当審において平成28年3月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年7月20日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし17に係る発明は、平成25年5月31日に提出された手続補正書により補正された明細書、平成27年7月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲及び平成25年5月31日に翻訳文が提出された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 【請求項1】
リニアモータにより上下方向へ垂直に移動可能である少なくとも1つのかごを有するエレベータ設備であって、
前記リニアモータが、不動の一次部品と、前記かごに固定される二次部品とを有する、エレベータ設備において、
前記エレベータ設備(10;100;110;120)が、少なくとも1つの一次部品(24)が各々に装着される多数の支持セグメント(22)を有し、
前記支持セグメント(22)の各々が、該支持セグメント上に装着された前記少なくとも1つの一次部品(24)と組み合わさって、独立して扱うように適合されている予め組み立てられたドライブモジュール(20)を形成し、
前記ドライブモジュール(20)が、上下に積み重ね可能であり、かつ、前記少なくとも1つのかご(16)が移動可能である進行路を形成し、
前記ドライブモジュール(20)が、データ及び/又は動力伝達要素(46、48)を有し、
前記ドライブモジュール(20)が、互いに当接するドライブモジュールの前記データ及び/又は動力伝達要素(46、48)を接続するための電気的及び/又は光学的接続要素(74、76)を有し、
前記電気的及び/又は光学的接続要素(74、76)が、差し込み式のやり方で互いに接続可能であること、
を特徴とするエレベータ設備。」

第3 引用文献
1 引用文献の記載
当審拒絶理由で引用され、本願の優先日前に国内において頒布された刊行物である特開平5-70061号公報(以下、「引用文献」という。)には、「リニアモータ式エレベータのガイド装置」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。なお、下線は、理解の一助のため当審で付した。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はリニアモータ式エレベータのガイド装置に関するものであり、特に、ガイドレールに二次導体を固定したリニアモータ式エレーベータのガイド装置に関するものである。」(段落【0001】)

イ 「【0002】
【従来の技術】従来のこの種のリニアモータ式エレベータのガイド装置として、特開平1-271381号公報に掲載の技術を挙げることができる。
【0003】図4はリニアモータ式エレベータの概略構成を示す平面の断面図、図5はリニアモータ式エレベータの概略構成を示す側面の断面図である。また、図6は従来のリニアモータ式エレベータのガイド装置を示す側面の断面図、図7は従来のリニアモータ式エレベータのガイド装置を示す部分斜視図である。
【0004】近年、エレベータの駆動手段としてリニアモータを採用したリニアモータ式エレベータが提案されており、例えば、図4及び図5に示すリニアモータ式エレベータは、駆動モータとしてリニア誘導モータを使用し、その二次導体をガイドレールとして兼用している。即ち、図4及び図5において、1は昇降路壁、2は昇降路、3は前記昇降路2内を昇降されるかご、4は前記かご3の左右両側面に固定されたガイドシュー、5は前記ガイドシュー4を介して前記かご3の昇降を案内するガイドレールである。また、6は前記かご3と対をなして昇降路2内を昇降する釣合おもり、7は前記釣合おもり6の内面に複数対が対向して搭載されたリニア誘導モータの一次巻線、8は前記釣合おもり6の左右両側に設けられたガイドシューである。そして、9は前記昇降路壁1の上下方向に沿って釣合おもり6の左右両側に配設される複数のガイド装置であって、9aは前記ガイドシュー8を介して釣合おもり6の昇降を案内する左右各一対のガイドレール、9bは前記各対のガイドレール9a間に挾持されるとともに前記一次巻線7間に配置される二次導体である。なお、10は前記釣合おもり6に固着されたブレーキ、11は昇降路2の上部に配設された返し車、12は前記返し車11を介してかご3及び釣合おもり6をつるべ状に吊下するロープである。
【0005】前記ガイド装置9について、従来のものを図6及び図7に従って詳述すると、9cは締結部材であって、一対のガイドレール9a間に二次導体9bを挾持し、前記締結部材9cにより両者を締結して一体とすることによりガイド装置9が構成される。また、9dはジョイント、9eは締結具であって、前記ジョイント9dを介して締結具9eにより、昇降行程に応じた所望数のガイド装置9が、ガイドレール9a同志及び二次導体9b同志の接続端面を互いに密着させた状態で、昇降路2の上下方向に締結して連結される。そして、13はガイドレール9aを介してガイド装置9を昇降路壁1に固定するブラケットである。なお、前記ガイドレール9aは、強度を大きくして地震時にも破壊されないよう、一般に鉄鋼にて形成される一方、前記二次導体9bは、高い導電率を得るため、一般にアルミニウムにて形成される。
【0006】次に、上記のように構成された従来のリニアモータ式エレベータのガイド装置の動作を説明する。
【0007】エレベータの運転状態において、釣合おもり6に搭載された一次巻線7を励磁すると、前記一次巻線7とガイド装置9の二次導体9bとの間で相対的な推力が発生し、釣合おもり6が昇降駆動される。すると、釣合おもり6の昇降が返し車11に巻き掛けられたロープ12を介してかご3に伝達され、かご3がガイドシュー5を介してガイドレール4に案内されて昇降路2内を昇降駆動される。このとき、ガイド装置9は、そのガイドレール9aにより、ガイドシュー8を介して釣合おもり6を案内してその昇降を円滑化する。」(段落【0002】ないし【0007】)

ウ 「【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来のリニアモータ式エレベータのガイド装置は、上記のように構成されているから、昇降路2内の温度変化に伴ないガイドレール9a及び二次導体9bが熱膨張する。このとき、前記昇降路壁1は、一般に鉄骨または鉄筋コンクリートで形成されており、鉄製の前記ガイドレール9aと、その線膨張係数は略同一であるため、熱膨張による昇降路壁1の伸び量とガイドレール9aの伸び量とは略同一となる。したがって、温度変化に伴ない、昇降路壁1にブラケット13を介して固定されたガイドレール9は、昇降路壁1に対し相対的に位置変化することはなく、ガイドレール9aが熱膨張により変形することはない。
(中略)
【0010】そこで、本発明は、温度変化により二次導体が変形することのないリニアモータ式エレベータのガイド装置の提供を課題とするものである。」(段落【0008】ないし【0010】)

エ 「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明にかかるリニアモータ式エレベータのガイド装置は、昇降路壁に沿って各々が所定長さを有する複数のガイドレールを立設して、リニアモータの一次巻線が搭載されるかごまたは釣合おもりを上下方向に案内するとともに、前記ガイドレールに二次導体を固定し、かつ、個々の二次導体の長さを対応する個々の前記ガイドレールの長さより短くして、二次導体間に上下方向に隙間を形成したものである。」(段落【0011】)

オ 「【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0014】図1は本発明の第一実施例のリニアモータ式エレベータのガイド装置の部分斜視図、図2は第一実施例のリニアモータ式エレベータのガイド装置の部分側面図である。
【0015】なお、図中、従来例と同一符号及び同一記号は、従来例の構成部分と同一または相当部分を示すものであるから、ここでは、重複する説明を省略する。
【0016】図において、19は、従来例と同様にして、前記昇降路壁1の上下方向に沿って釣合おもり6の左右両側に配設される第一実施例のガイド装置であって、19aは個々が所定長さに形成されたガイドレール、19bは個々が対応する各ガイドレール19aより短い長さに形成された二次導体である。また、19xは各ガイドレール19aの両端の接続端面、19yは各二次導体19bの両端の接続端面であって、前記二次導体19bは、その両端の接続端面19yを、いずれも、ガイドレール19aの両端の接続端面19xより内側に配置された状態で、締結部材9cによりガイドレール19a間に挾持固定されて第一実施例のガイド装置19を構成する。そして、複数のガイド装置19が、そのガイドレール19aの対向する接続端面19xを互いに密着させた状態で、昇降路壁1の上下方向に沿ってジョイント9d及び締結具9eにより互いに締結されて連結されるとともに、前記ガイドレール19aを介して前記ブラケット13により昇降路壁1に固定される。これにより、図2に示すように、隣接するガイド装置19のガイドレール19aの接続端面19xは密着する一方、二次導体19bの対向する接続端面19y間には所定の隙間Cが形成される。ここで、前記隙間Cは、熱膨張によるガイドレール19aの伸び量と二次導体19bの伸び量との差よりも大きな値に設定される。
【0017】次に、上記のように構成された第一実施例のリニアモータ式エレベータのガイド装置の動作を説明する。
【0018】従来例と同様、エレベータの運転状態において、釣合おもり6に搭載された一次巻線7を励磁すると、前記一次巻線7とガイド装置19の二次導体19bとの間で相対的な推力が発生し、釣合おもり6が昇降駆動され、釣合おもり6の昇降がロープ12を介してかご3に伝達され、かご3がガイドシュー5を介してガイドレール4に案内されて昇降路2内を昇降駆動される。このとき、ガイド装置19は、そのガイドレール19aにより、ガイドシュー8を介して釣合おもり6を案内してその昇降を円滑化する。」(段落【0013】ないし【0018】)

カ 「【0023】図3は第二実施例のリニアモータ式エレベータのガイド装置の部分斜視図である。
【0024】第二実施例は二次導体の構成において第一実施例と異なるものである。即ち、図において、29は第二実施例のガイド装置であって、29bはガイドレール19aより短い長さに形成された二次導体、29yは各二次導体29bの両端の接続端面である。また、30aは前記二次導体29bの一方の接続端面29yに一体形成された突条、30bは二次導体29bの他方の接続端面29yに形成され、前記突条30aと嵌合する凹部である。前記二次導体29bは、一方の接続端面29yをガイドレール19aの一方の接続端面19xより内側に配置されるとともに、他方の接続端面29yをガイドレール19aの接続端面19xと略面一に配置された状態で、締結部材9cによりガイドレール19a間に挾持固定されて第二実施例のガイド装置29を構成する。なお、好ましくは、前記二次導体29bの突条30aの突出高さと凹部30bの深さとは略同一とされる。また、二次導体29bは、前記突条30aを前記ガイドレール19aの接続端面19xから若干突出させるよう、ガイドレール19a間に挾持固定される。
【0025】そして、複数のガイド装置29が、昇降路壁1の上下方向に沿って複数配置され、隣接するガイド装置29のガイドレール19aの接続端面19xを密着させるとともに、二次導体29bの対向する接続端面29y間で前記凹部30b内に前記突条30aの一部を嵌合させる。これにより、隣接する二次導体29bの対向する接続端面29y間には、第一実施例と同様、熱膨張によるガイドレール19a及び二次導体29bの伸び量の差より大きい所定の隙間Cが形成されるとともに、突条30aの先端面と凹部30bの底面との間にも同様の隙間が形成される。
【0026】上記のように構成された第二実施例のリニアモータ式エレベータのガイド装置では、第一実施例と同様、個々の二次導体29bは、熱膨張によるガイドレール19aとの伸び量の差を考慮して、対応する個々のガイドレール19aより短く形成されて、上下方向に連結されるガイド装置29の二次導体29bの接続端面29y間には所定の隙間Cが形成されるとともに、嵌合関係となる突条30aと凹部30bとの間にも同様の隙間が形成されるため、温度変化により二次導体29bがガイドレール19aより大きく熱膨張した場合でも、ガイドレール19a及び二次導体29bの伸び量の差は前記隙間Cに吸収され、二次導体29bの変形を防止することができる。加えて、第二実施例のガイド装置29は、二次導体29bの一方の接続端面29yの突条30aが、隣接する二次導体29bの他方の接続端面29yの凹部30b内に嵌合されるため、連結される二次導体29b同志がその厚さ方向の位置ずれを防止され、ガイド装置29を昇降路壁1の上下方向に固定する際の据付作業が容易になる。
【0027】このように、上記第二実施例のリニアモータ式エレベータのガイド装置は、第一実施例のガイド装置19の構成に加えて、二次導体29bの一方の接続端面29yに突条30aを、他方の接続端面29yに突条30aと嵌合する凹部30bを形成し、上下方向に連結される二次導体29bの対向する接続端面29y間で、突条30a及び凹部30bを嵌合させたものである。
【0028】したがって、上記第二実施例は、温度変化に伴ない二次導体29bが熱膨張した場合でも、二次導体29bが変形することはなく、二次導体29bが一次巻線7と接触してかご3の振動の原因となり、その乗心地を悪化したり、二次導体29bが一次巻線7を損傷してエレベータを運転不能とする事態を解消することができるのに加えて、連結される二次導体29b同志が、その厚さ方向の位置ずれを防止されるため、ガイド装置29を昇降路壁1の上下方向に固定する際の据付作業が容易になる。
【0029】ところで、上記第一実施例では、二次導体19aの両端の接続端面19yは、いずれも、ガイドレール19aの両端の接続端面19xより内側に配置されているが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、隣接する二次導体19bの対向する接続端面19y間に、ガイドレール19a及び二次導体19bの伸び量の差より大きい隙間Cを形成するものであればよく、例えば、第二実施例のように、一方の接続端面19yをガイドレール19aの一方の接続端面19xと略面一に配置することも可能である。同様に、上記第二実施例においても、二次導体29bの突条30a側の接続端面29yをガイドレール19aの接続端面19xと略面一に配置して、凹部30b側の接続端面29yをガイドレール19aの接続端面19xより内側に配置したり、両接続端面29yをいずれもガイドレール19aの接続端面19xより内側に配置することも可能である。また、突条30a及び凹部30bの形状も、図3に示すもの以外にも、互いに嵌合可能な形状であれば、段差突状と段差凹状の組合わせとする等他の形状としてもよい。」(段落【0023】ないし【0029】)

2 引用文献の記載から分かること
上記1及び図面の記載から、引用文献には、次の事項が記載されていることが分かる。

サ 上記1 アないしカ及び図面の記載から、引用文献には、リニアモータによって上下方向へ移動可能である少なくとも1つのかご3を有するリニアモータ式エレベータが記載されていることが分かる。

シ 上記1 アないしカ(特にイ及びオ)及び図面の記載から、引用文献に記載されたリニアモータ式エレベータは、ガイドレール19aが所定の長さに形成され、ジョイント9dを介して締結部材9eにより、昇降行程に応じた所望数のガイド装置19が、ガイドレール19a同志及び二次導体19b同志の接続端面を互いに密着させた状態で、昇降路2の上下方向に締結して連結されることが分かる。

3 引用発明
上記1及び2から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「リニアモータにより上下方向へ垂直に移動可能である少なくとも1つのかご3を有するリニアモータ式エレベータであって、
前記リニアモータが、不動の二次導体9b,19b,29bと、前記かご3に固定される一次巻線7とを有する、
リニアモータ式エレベータにおいて、
前記リニアモータ式エレベータが、少なくとも1つの二次導体9b,19b,29bが各々に装着される多数のガイドレール9a,19a,29aを有し、
前記ガイドレール9a,19a,29aの各々が、該ガイドレール9a,19a,29aに装着された前記少なくとも1つの二次導体9b,19b,29bと組み合わさって、独立して扱うように適合されている予め組み立てられたガイド装置9,19,29を形成し、
前記ガイド装置9,19,29が、上下に積み重ね可能であり、かつ、前記少なくとも1つのかご3が移動可能である進行路を形成する、
リニアモータ式エレベータ。」

第4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「かご3」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「かご」に相当し、以下、同様に、「リニアモータ式エレベータ」は「エレベータ設備」に、「ガイドレール9a,19a,29a」は「支持セグメント」に、それぞれ、相当する。
また、引用発明における「二次導体9b,19b,29b」は、「リニアモータの部品」という限りにおいて、本願発明における「一次部品」に相当し、同様に、引用発明における「一次巻線7」は、「リニアモータの部品」という限りにおいて、本願発明における「二次部品」に相当する。
また、引用発明における「ガイド装置9,19,29」は、リニアモータ駆動のための部品である二次導体9b,19b,29bを含むモジュールであるから、「駆動要素を含むモジュール」という限りにおいて、本願発明における「ドライブモジュール」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「リニアモータにより上下方向へ垂直に移動可能である少なくとも1つのかごを有するエレベータ設備であって、
前記リニアモータが、不動のリニアモータの部品と、前記かごに固定されるリニアモータの部品とを有する、
エレベータ設備において、
前記エレベータ設備が、少なくとも1つのリニアモータの部品が各々に装着される多数の支持セグメントを有し、
前記支持セグメントの各々が、該支持セグメントに装着された前記少なくとも1つのリニアモータの部品と組み合わさって、独立して扱うように適合されている予め組み立てられた駆動要素を含むモジュールを形成し、
前記駆動要素を含むモジュールが、上下に積み重ね可能であり、かつ、前記少なくとも1つのかごが移動可能である進行路を形成する、
エレベータ設備。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点>
(1)「リニアモータの部品」に関して、本願発明においては、「リニアモータが、不動の一次部品とかごに固定される二次部品とを有する」ものであり、「少なくとも1つの一次部品が各々に装着される多数の支持セグメントを有し」、「支持セグメントの各々が、支持セグメント上に装着された少なくとも1つの一次部品と組み合わさって」いるのに対し、引用発明においては、「リニアモータが、不動の二次導体9b,19b,29bと、かご3に固定される一次巻線7とを有する」ものであり、「少なくとも1つの二次導体9b,19b,29bが各々に装着される多数のガイドレール9a,19a,29aを有し」、「前記ガイドレール9a,19a,29aの各々が、該ガイドレール9a,19a,29aに装着された前記少なくとも1つの二次導体9b,19b,29bと組み合わさって」いる点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明においては、「ドライブモジュールが、データ及び/又は動力伝達要素を有し、ドライブモジュールが、互いに当接するドライブモジュールのデータ及び/又は動力伝達要素を接続するための電気的及び/又は光学的接続要素を有し、電気的及び/又は光学的接続要素が、差し込み式のやり方で互いに接続可能である」のに対し、引用発明においては、「ガイド装置9,19,29」がそのようなものであるか否か明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。

第5 相違点に対する判断
相違点について、以下に検討する。
(1)本願発明の技術的意義について
本願発明は、「今まで、エレベータ設備内でリニアモータを使用するための、技術的かつ経済的に満足のいく解決策を実施するための努力は成功していない。シャフト壁に及びかごに、電源及び制御用の必要な組立体を含むリニアモータの機能部品を配置すること、ならびに、一次部品と二次部品との間に最小限の空隙を維持するためにかごを正確に案内することは、エレベータ設備の製造及び建設に対しての要求が非常に高いことを意味する。リニアモータの動的力及び寄生力が一次部品と二次部品との間に広がることに起因する困難も生じる。このような要求及び困難により、結局、シャフトの高さ部分全体にわたる建設作業が複雑になる。」(段落【0004】)ということを課題とし、本願発明の発明特定事項を有することにより、「本発明による前記エレベータ設備では、例えば製造工場において予め組み立てることのできるドライブモジュールが使用される。前記ドライブモジュールは、独立して扱うことができ、前記エレベータ設備の建設中に上下に積み重ねられる。前記ドライブモジュールは、全体として、前記かご用の進行路を形成する。各ドライブモジュールは、前記リニアモータの少なくとも1つの一次部品が装着される支持セグメントを含む。従って、独立して扱うことのできる予め組み立てられたドライブモジュールに、前記リニアモータの不動の前記したモータ部品の全てのコンポーネント及び組立体が一体化される。このことにより、組立て、調節、及び品質保証手段を、前記エレベータ設備の製造エリアに、かなりの程度移すことができる。その場合、建設現場では、前記かご用の前記進行路を形成するために、個々の前記ドライブモジュールを上下に積み重ねさえすればよい。前記かごに固定される前記二次部品と協働するドライブ機能、案内機能、制動機能、及び保持機能を実施するのに必要な全てのコンポーネント及び機能表面を、前記ドライブモジュールに一体化することができる。このモジュール化により、有効な高品質の製造、ならびに、前記建設の相当の簡素化、及び、前記エレベータ設備の現場での始動が可能になる。」(段落【0009】)という作用効果を奏するものである。
これに対し、引用発明は、「従来の技術」においてすでにガイド装置9がモジュール化されており、リニアモータ式エレベータのガイド装置の組み立てに際して、「9dはジョイント、9eは締結具であって、前記ジョイント9dを介して締結具9eにより、昇降行程に応じた所望数のガイド装置9が、ガイドレール9a同志及び二次導体9b同志の接続端面を互いに密着させた状態で、昇降路2の上下方向に締結して連結される。」(段落【0005】)という作用効果を奏するものである。
つまり、両者は、共に、リニアモータ式エレベータにおけるリニアモータを含む部品をモジュール化し、設置現場において各モジュールを連結してリニアモータ式エレベータを組み立てるという技術思想を具現化するものである。

(2)相違点1について
リニアモータの駆動部が一次部品と二次部品とからなり、一次部品と二次部品の位置は互いに交換可能であることは技術常識であるから、一次部品と二次部品をどちらの位置に配置するかは、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計事項にすぎない。
したがって、引用発明において、一次部品(一次巻線)の位置(かごの位置)と二次部品(二次導体)の位置(不動の位置)とを交換するように設計変更することにより、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点2について
(a)ドライブモジュールの電気的接続要素を差し込み式のやり方で互いに接続することは周知技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開平5-304759号公報の段落【0002】ないし【0004】並びに図11及び12等、特開2004-357353号公報の段落【0040】及び【0041】並びに図5等を参照。)である。
そして、引用発明において、周知技術を採用することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(b)また、引用発明において、支持セグメント(ガイド装置)に、二次部品(二次導体)の代わりに一次部品(一次巻線)を配置するように設計変更した場合に、一次部品(一次巻線)に電力を供給することが必要なことは技術常識であるから、該電力を供給するために、周知技術を適用し、ドライブモジュールの電気的接続要素を差し込み式のやり方で互いに接続することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、本願発明が、引用発明及び周知技術からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-05 
結審通知日 2016-09-06 
審決日 2016-09-26 
出願番号 特願2013-532118(P2013-532118)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 筑波 茂樹  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 槙原 進
金澤 俊郎
発明の名称 エレベータ設備  
代理人 特許業務法人京都国際特許事務所  
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