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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1324751
審判番号 不服2015-22055  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-14 
確定日 2017-02-09 
事件の表示 特願2015- 48285「偏光板及び液晶パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 66047〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月11日(優先権主張 平成26年3月25日、平成26年9月25日)の出願であって、平成27年6月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年9月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月14日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成27年12月14日になされた手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成27年12月14日になされた手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成27年12月14日になされた手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「偏光子と、偏光子の一方面に積層される第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムと、偏光子の他方面に積層される第2(メタ)アクリル系樹脂フィルム(ただし、グルタルイミド構造を主鎖に有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルム、及び芳香族ビニル構造を有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルムを除く。)と、第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムの外面に積層され、偏光板を液晶セルに貼合するための粘着剤層とを含み、
前記第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有し、かつ190?380nmの波長全域での透過率が20%以下であり、
前記第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線吸収剤の含有量が1重量%以下であり、
前記第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、溶融押出法によって得られたものであるか、又は溶融押出法によって作製される未延伸フィルムに延伸処理を施して得られたものであり、
前記第1及び第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線硬化性接着剤から形成される接着剤層を介して前記偏光子に積層されており、
前記第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、メタクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を50重量%以上と、アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を0.1重量%以上とを含む(メタ)アクリル系樹脂からなる単層構造のフィルムである、偏光板。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成27年8月10日になされた手続補正によって補正された請求項1及び請求項4の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
偏光子と、偏光子の一方面に積層される第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムと、偏光子の他方面に積層される第2(メタ)アクリル系樹脂フィルム(ただし、グルタルイミド構造を主鎖に有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルム、及び芳香族ビニル構造を有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルムを除く。)とを含み、
前記第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有し、かつ190?380nmの波長全域での透過率が20%以下であり、
前記第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線吸収剤の含有量が1重量%以下であり、
前記第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、溶融押出法によって得られたものであるか、又は溶融押出法によって作製される未延伸フィルムに延伸処理を施して得られたものであり、
前記第1及び第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線硬化性接着剤から形成される接着剤層を介して前記偏光子に積層されている、偏光板。

【請求項4】
前記第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムの外面に積層される粘着剤層をさらに含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の偏光板。」

(3)本件補正のうち請求項1についての補正は、以下の補正事項からなる。
ア 補正事項1
本件補正前の請求項1に「偏光子と、偏光子の一方面に積層される第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムと、偏光子の他方面に積層される第2(メタ)アクリル系樹脂フィルム(ただし、グルタルイミド構造を主鎖に有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルム、及び芳香族ビニル構造を有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルムを除く。)とを含み」とあるのを、「偏光子と、偏光子の一方面に積層される第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムと、偏光子の他方面に積層される第2(メタ)アクリル系樹脂フィルム(ただし、グルタルイミド構造を主鎖に有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルム、及び芳香族ビニル構造を有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルムを除く。)と、第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムの外面に積層され、偏光板を液晶セルに貼合するための粘着剤層とを含み」と補正する。

イ 補正事項2
本件補正前の請求項1に「前記第1及び第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線硬化性接着剤から形成される接着剤層を介して前記偏光子に積層されている、偏光板」とあるのを、「前記第1及び第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線硬化性接着剤から形成される接着剤層を介して前記偏光子に積層されており、前記第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、メタクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を50重量%以上と、アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を0.1重量%以上とを含む(メタ)アクリル系樹脂からなる単層構造のフィルムである、偏光板」と補正する。

2 本件補正の適否
(1)上記1(3)の「ア 補正事項1」は、本件補正前の請求項1の記載を引用する請求項4を、当該請求項1の記載を引用しない独立形式として本件補正後の請求項1とするとともに、願書に最初に添付された明細書の段落【0122】の記載に基づいて、「粘着剤層」を「偏光板を液晶セルに貼合するため」に限定するものである。
(2)上記1(3)の「イ 補正事項2」は、本件補正前の請求項1において記載されていた「第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム」を、願書に最初に添付した明細書の段落【0031】、【0035】及び【0132】の記載に基づいて、「第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム」を「メタクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を50重量%以上と、アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を0.1重量%以上とを含む(メタ)アクリル系樹脂からなる単層構造のフィルム」に限定するものである。
(3)上記(1)及び(2)からみて、本件補正後の請求項1は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
(4)本件補正のうち、上記(1)で示した補正は、本件補正前の請求項1を削除して、当該請求項1の記載を引用する請求項4を独立形式の請求項1とするとともに、発明を特定するために必要な事項を限定する補正である。(5)本件補正のうち、上記(2)で示した補正は、本件補正前の請求項4に係る発明を特定するために必要な事項を限定する補正である。
(6)そして、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が、本件補正の前後において同一であるから、上記(1)ないし(5)を踏まえると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に揚げる本件補正前の請求項の削除、及び特許法第17条の2第5項第2号に揚げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(7)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(8)引用例の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用文献5として引用された特開2011-76067号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に用いられる偏光板及び該偏光板形成用の光硬化性接着剤に関する。

・・・略・・・

【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板により前記目標達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、 ポリビニルアルコール系偏光子と、光硬化性接着剤を硬化してなる接着層と、保護フィルムとを含み、前記偏光子の両面が前記接着層を介して保護フィルムでそれぞれ被覆されてなる偏光板であって、
前記光硬化性接着剤は、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物からなる主剤と、光ラジカル重合開始剤と、光カチオン重合開始剤とを含み、
前記ラジカル重合性化合物として、ガラス転移温度が-80℃?0℃のホモポリマーを形成するラジカル重合性化合物(a)を前記主剤中に60?99.8質量%含み、
前記カチオン重合性化合物として、(メタ)アクリロイル基を有しないカチオン重合性化合物(c)を前記主剤中に0.02?40質量%含み、
前記主剤100質量部に対して、前記光ラジカル重合開始剤を1?10質量部、前記光カチオン重合開始剤を0.5?5質量部の範囲でそれぞれ含むことを特徴とする偏光板に関する。」

(イ)「【0040】
[保護フィルム]
本発明の偏光板に用いられる保護フィルム(図1、2において符号1,5)について説明する。
保護フィルムは特に限定されず、具体的には、現在偏光板の保護フィルムとして最も広く用いられているトリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂フィルムや、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂フィルムを用いることができる。
トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。

・・・略・・・

【0043】
アクリル系樹脂は、ポリメチルメタクリレートをはじめ、メチルメタクリレートやブチルメタクリレート等のアルキルエステル類の(メタ)アクリレートを主成分とする樹脂(=共重合体)である。場合によっては、他の樹脂とブレンドされて、フィルム化される。アクリル系フィルムは、特開2002-361712号公報等に記載された公知の方法により得ることができる。
アクリル系フィルムは、種々の製品が市販されている。具体例としては、三菱レイヨン社製の商品名「アクリプレン」や、カネカ社製の商品名「サンデュレン」が挙げられる。
【0044】
本発明の偏光板に使用される保護フィルムは、(1)、(5)の両面とも同一組成であっても異なっていても良い。例えば、(1)にシクロオレフィン系樹脂フィルムを使用し、(5)に、アクリル系樹脂フィルムを使用しても何ら差し支えは無い。
【0045】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1?500μm程度である。特に1?300μmが好ましく、5?200μmがより好ましい。保護フィルム(1)と(5)の厚みは、同一であっても異なっていてもよい。
なお、偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。たとえば、偏光子の両面にアクリル系フィルムを使用する場合でも、アクリル系ポリマーの種類が互いに異なっていてもよいし、配合する添加剤が互いに異なっていてもよく、何ら限定はされない。
【0046】
本発明の偏光板は、以下のようにして得ることができる。
即ち、第1の保護フィルム(1)の一方の面に、第1の光硬化性接着剤を塗工し、第1の硬化性接着剤層(2’)を形成し、
第2の保護フィルム(5)の一方の面に、第2の光硬化性接着剤を塗工し、第2の硬化性接着剤層(4’)を形成し、
次いで、ポリビニルアルコール系偏光子(3)の各面に、第1の硬化性接着剤層(2’)及び第2の硬化性接着剤層(4’)を、同時に/または順番に重ね合わせ、
第2の保護フィルム(5)の側から活性エネルギー線を照射し、第1の硬化性接着剤層(2’)及び第2の硬化性接着剤層(4’)を硬化することによって製造することが好ましい。
【0047】
上記硬化性接着剤層(2’)および(4’)、保護フィルム(1)および(5)は、それぞれ、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、硬化性接着剤層(2’)と硬化性接着剤層(4’)(換言すると第1の光硬化性接着剤と第2の光硬化性接着剤)は、同一組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。形成される接着剤層(2)および(4)の厚みは、互いに同一でも異なっていてもよく、特に限定されないが、一般に、0.1μm?50μmであることが好ましく、より好ましくは0.5μm?20μmである。」

(ウ)「【0048】
以下、図2に基づいて、工程ごとに説明する。
[工程(a)]
工程(a)は、図2の(a)に示されるように、保護フィルム(1)および(5)のそれぞれ片面に、接着剤層形成用の光硬化性接着剤を塗布し、必要に応じて乾燥等を行って、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を具備する積層体(1’)、(5’)を得る工程である。
光硬化性接着剤の塗布方法としては、特に限定されないが、例えばダイコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法などが挙げられる。
【0049】
[工程(b)]
工程(b)は、図2の(b)に示されるように、ポリビニルアルコール系偏光子(3)の一方の面(図では上面)に、保護フィルム(1)と硬化性接着剤層(2’)とを具備する積層体(1’)を、
ポリビニルアルコール系偏光子(3)の他方の面(図では下面)に、保護フィルム(5)と硬化性接着剤層(4’)とを具備する積層体(5’)を、それぞれ重ね合わせる工程である。
【0050】
[工程(c)]
工程(c)は、図2の(c)に示されるように、活性エネルギー線(6)を照射することにより、保護フィルム(1)、(5)とポリビニルアルコール系偏光子(3)とに挟まれた硬化性接着剤層(2’)、(4’)を硬化させ、接着剤層(2),(4)を形成させる工程である。
図では、保護フィルム(5)の側から活性エネルギー線(6)を照射する場合を示すが、保護フィルム(1)の側から活性エネルギー線(6)を照射してもよいし、両側から同時に、または両側から順次、活性エネルギー線(6)を照射してもよい。
【0051】
活性エネルギー線の照射量は、特に限定されるものではないが、波長200?450nm、照度1?500mW/cm^(2)の光を、照射量が10?5000mJ/cm^(2)となるように照射して露光することが好ましい。照射量が10mJ/cm^(2)より低い場合、紫外線硬化性組成物の硬化が促進せず、欲する性能が発揮できないことがあり、照射量が5000mJ/cm^(2)より高い場合は、照射時間が非常に長くなり、生産性に問題がある。照射する活性エネルギー線の種類としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線
等が挙げられるが、特に紫外線が好ましい。光の照射装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ等を用いることが好ましい。
活性エネルギー線(6)照射後、室温で1週間程度エージングすることもできる。
工程(c)を経ることにより、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を硬化させて接着剤層(2),(4)とし、偏光子(3)と保護フィルム(1)および(5)とが接着剤層(2),(4)を介して接着されてなる偏光板が完成する(図1、図2中の(d)参照)。
【0052】
また、本発明の偏光板は、ポリビニルアルコール系偏光子(3)の一方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第1の硬化性接着剤層(2’)を形成し、形成された第1の硬化性接着剤層(2’)の表面を第1の保護フィルム(1)で覆い、次いでポリビニルアルコール系偏光子(3)の他方の面に、光硬化性接着剤を塗工し、第2の硬化性接着剤層(4’)を形成し、形成された第2の硬化性接着剤層(4’)の表面を第2の保護フィルム(5)で覆い、それから、第2の保護フィルム(5)の側から活性エネルギー線を照射し、第1の硬化性接着剤層(2’)及び第2の硬化性接着剤層(4’)を硬化することによって製造することもできる。
【0053】
偏光板は、上記のように、偏光子と接着層と保護フィルムとを必須の構成として含むものであるが、その他の任意の構成を含んでいてもよい。たとえば、任意の位置に必要に応じて反射層、反射防止層、ハードコート層、防汚層、防曇層、スティッキング防止層等を含むことができる。


(エ)「【実施例】
【0054】
[ポリビニルアルコール系偏光子]の製造例
ホウ酸20質量部、ヨウ素0.2質量部、ヨウ化カリウム0.5質量部を水480質量部に溶解させて染色液を調整した。この染色液にPVAフィルム(ビニロンフィルム#40、アイセロ社製)を、30秒浸漬した後、フィルムを一方向に2倍に延伸し、乾燥させて、膜厚30μmのPVA偏光子を得た。
【0055】
[実施例1]
保護フィルム(1)として、三菱レイヨン(株)製の紫外線吸収剤を含有するアクリルフィルム:HBD-002(50μm)を用い、保護フィルム(5)として、日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF-14」(100μm)を使用し、それぞれその表面に300W・min/m^(2)の放電量でコロナ処理を行った。表面処理後1時間以内に、保護フィルム(1)と(5)のそれぞれに、表1に示す光重合組成物をワイヤーバーコーター#3を用いて塗工し、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を形成し、その硬化性接着剤層(2’)と(4’)との間に上記のPVA偏光子を挟み、保護フィルム(1)/硬化性接着剤層(2’)/PVA系偏光子(3)/硬化性接着剤層(4’)/保護フィルム(5)からなる積層体を得た。
保護フィルム(1)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。
UV照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度500mW/cm^(2)、積算光量800mJ/cm^(2)の紫外線を保護フィルム(5)側から照射して、偏光板を作製した。形成された各接着剤層の厚みは、3?4μmであった。
【0056】
[実施例2?8、比較例1?7]
光硬化性重合組成物を表1および表2のように変えた以外は実施例1と同様にして偏光板を作製し、後述する方法に従って、その性能を評価した。」

(オ)「【0067】
【表1】



(カ)「【図1】



(キ)「【図2】



(ク)上記(ア)ないし(キ)から、引用例1には[実施例1]として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「保護フィルム(1)として、三菱レイヨン(株)製の紫外線吸収剤を含有するアクリルフィルム:HBD-002(50μm)を用い、
保護フィルム(5)として、日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF-14」(100μm)を使用し、
それぞれその表面に300W・min/m^(2)の放電量でコロナ処理を行い、表面処理後1時間以内に、保護フィルム(1)と(5)のそれぞれに、光重合組成物をワイヤーバーコーター#3を用いて塗工し、硬化性接着剤層(2’)、(4’)を形成し、
その硬化性接着剤層(2’)と(4’)との間に上記のPVA偏光子を挟み、保護フィルム(1)/硬化性接着剤層(2’)/PVA系偏光子(3)/硬化性接着剤層(4’)/保護フィルム(5)からなる積層体を得、
UV照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度500mW/cm^(2)、積算光量800mJ/cm^(2)の紫外線を保護フィルム(5)側から照射して作成した、
偏光板」

(9)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「PVA系偏光子(3)」は、本願補正発明の「偏光子」に相当する。

イ 引用発明の「保護フィルム(1)」は、「三菱レイヨン(株)製の紫外線吸収剤を含有するアクリルフィルム:HBD-002(50μm)を用い」ていることから、アクリル系樹脂フィルムである。そして、引用発明の「保護フィルム(1)」は、「硬化性接着剤層(2’)」を介して「PVA系偏光子(3)」(本願補正発明の「偏光子」に相当。以下「」に続く()内の用語は、対応する本願補正発明の用語を表す。)と、「保護フィルム(1)/硬化性接着剤層(2’)/PVA系偏光子(3)」となる積層体を構成している。したがって、引用発明の「保護フィルム(1)」は、本願発明の「偏光子の一方面に積層される第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム」に相当する。

ウ 引用発明の「保護フィルム(5)」は、「日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF-14」(100μm)」を用いてることから、樹脂フィルムである。そして、引用発明の「保護フィルム(5)」は、「硬化性接着剤層(4’)」を介して「PVA系偏光子(3)」(偏光子)と、「PVA系偏光子(3)/硬化性接着剤層(4’)/保護フィルム(5)」となる積層体を構成している。したがって、引用発明の「保護フィルム(5)」と本願発明の「第2(メタ)アクリル系樹脂フィルム」とは、「偏光子の他方面に積層される第2」「樹脂フィルム」である点で共通する。

エ 引用発明の「保護フィルム(1)」(第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム)は、「三菱レイヨン(株)製の紫外線吸収剤を含有するアクリルフィルム:HBD-002(50μm)」であることから、本願発明の「前記第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有」する構成を具備する。

オ 引用発明の「保護フィルム(5)」(第2樹脂フィルム)は、「日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF-14」(100μm)」であって、紫外線吸収剤を含有していない、すなわち含有量が0重量%であることから、本願発明の「前記第2樹脂フィルムは、紫外線吸収剤の含有量が1重量%以下であ」る構成を具備する。

カ 引用発明の「保護フィルム(5)」(第2樹脂フィルム)は、「日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF-14」(100μm)」であって、前記「ゼオノアフィルム「ZF-14」」は、溶融押出法で作成されるものである(日本ゼオン株式会社、ZEONOR技術レポート1「高機能光学材料ゼオノアフィルム」、2頁、URL:www.zeon.co.jp/content/000015815.pdf を参照。)ことから、本願発明の「第2」「樹脂フィルムは、溶融押出法によって得られたものである」点で一致する。

キ 引用発明の「硬化性接着剤層(2’)」及び「硬化性接着剤層(4’)」は、接着剤の層であって、「UV照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)」の「紫外線」で硬化されている。したがって、引用発明の「硬化性接着剤層(2’)」及び「硬化性接着剤層(4’)」が、いずれも本願発明の「紫外線硬化性接着剤から形成される接着剤層」に相当することは明らかである(なお、段落【0051】、【0052】、【0067】の【表1】の光重合開始剤を参照。)。

ク 引用発明の「保護フィルム(1)」(第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム)及び「保護フィルム(5)」(第2樹脂フィルム)は、上記イ及びウに示したように、それぞれ「硬化性接着剤層(2’)」及び「硬化性接着剤層(4’)」を介して「PVA系偏光子(3)」(偏光子)に積層されている。したがって、引用発明の「偏光板」は、本願発明の「前記第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び第2」「樹脂フィルム」が「接着剤層を介して前記偏光子に積層され」る構成を具備する。

ケ 引用発明は、「保護フィルム(1)」(第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム)、「保護フィルム(5)」、「硬化性接着剤層(2’)(4’)」(接着剤層)及び「PVA系偏光子(3)」(偏光子)を有していることから、本願発明の「偏光板」に相当する。

コ 上記アないしケからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「偏光子と、偏光子の一方面に積層される第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムと、偏光子の他方面に積層される第2樹脂フィルムと、
前記第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有し、
前記第2樹脂フィルムは、紫外線吸収剤の含有量が1重量%以下であり、
前記第2樹脂フィルムは、溶融押出法によって得られたものであり、
前記第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムは、紫外線硬化性接着剤から形成される接着剤層を介して前記偏光子に積層されている、
偏光板。」である点(以下、「一致点」という。)で一致し、次の点で相違する。

・相違点1:
第2樹脂フィルムが、
本願補正発明では、「第2(メタ)アクリル系樹脂フィルム(ただし、グルタルイミド構造を主鎖に有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルム、及び芳香族ビニル構造を有する樹脂を含む(メタ)アクリル系樹脂フィルムを除く。)」であるのに対し、
引用発明では、日本ゼオン社製の紫外線吸収剤を含有しないシクロオレフィンフィルム、ゼオノアフィルム「ZF-14」(100μm)である点。

・相違点2:
偏光板が、
本願補正発明では、「第2(メタ)アクリル系樹脂フィルムの外面に積層され、偏光板を液晶セルに貼合するための粘着剤層とを含」むものであるのに対し、
引用発明では、粘着剤層を有することについて特定されていない点。

・相違点3:
第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムが、
本願補正発明では、「190?380nmの波長全域での透過率が20%以下であ」るのに対し、
引用発明では、190?380nmの波長域での透過率について不明な点。

・相違点4:
第1(メタ)アクリル系樹脂フィルムが、
本願補正発明では、「メタクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を50重量%以上と、アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を0.1重量%以上とを含む(メタ)アクリル系樹脂からなる単層構造のフィルムである」のに対し、
引用発明では、「三菱レイヨン(株)製の紫外線吸収剤を含有するアクリルフィルム:HBD-002(50μm)」を構成する樹脂の分子構造及び層構造について不明な点。

(10)判断
ア 上記相違点1について検討する。
(ア)引用例1には、「本発明の偏光板に使用される保護フィルムは、(1)、(5)の両面とも同一組成であっても異なっていても良い。例えば、・・・略・・・(5)に、アクリル系樹脂フィルムを使用しても何ら差し支えは無い。」(段落【0044】)、「偏光子の両側に保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。たとえば、偏光子の両面にアクリル系フィルムを使用する場合でも、アクリル系ポリマーの種類が互いに異なっていてもよいし、配合する添加剤が互いに異なっていてもよく、何ら限定はされない。」(段落【0045】)と記載されており、当該記載からみて、引用例1には、「第2樹脂フィルム」として、アクリル系ポリマーからなるアクリル系樹脂フィルムを採用することが示唆されている。
(イ)ここで、偏光板において、偏光子の一方面に紫外線吸収剤を含有する保護フィルムを積層された偏光板において、偏光子の他方面に接着剤層を介して積層された紫外線吸収剤を含有していないアクリル系保護フィルムとして、メタクリル酸メチルの重合体であるポリメチルメタクリレートからなるフィルムを用いることは、本件出願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前において周知技術(例.特開2012-3281号公報(特に(実施例1-4)の「第2の保護フィルム(B3)」(段落【0179】、【0216】))を参照。)、特開2012-203211号公報(特に段落【0009】、【0123】、【0124】及び【0135】を参照。)、特開2008-40277号公報(特に段落【0111】、【0112】を参照。))であり、引用発明の「第2樹脂フィルム」に当該周知技術を採用することは、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。
(ウ)そして、上記(イ)で示した周知技術であるメタクリル酸メチルの重合体であるポリメチルメタクリレートは、グルタルイミド構造を主鎖に有する樹脂及び芳香族ビニル構造を有する樹脂を含まないことは、技術常識からみて明らかであるので、引用発明に上記(イ)で示した周知技術を採用して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、引用発明の具体化にともない当業者が適宜なし得る設計的事項である。

イ 上記相違点2について検討する。
(ア)引用例1には、「本発明は、液晶表示装置等に用いられる偏光板及び該偏光板形成用の光硬化性接着剤に関する。」(段落【0001】)、「偏光板は、上記のように、偏光子と接着層と保護フィルムとを必須の構成として含むものであるが、その他の任意の構成を含んでいてもよい。たとえば、任意の位置に必要に応じて反射層、反射防止層、ハードコート層、防汚層、防曇層、スティッキング防止層等を含むことができる。」(段落【0053】)と記載されており、当該記載からみて、引用例1には、液晶表示装置に用いられる偏光板において、一般的に用いられる各種層を引用発明の偏光板に適用することが示唆されている。
(イ)引用例1には、引用発明の偏光板を液晶表示装置の液晶セルに対して、どのような向きで貼り合わせるかについては明記されていないが、当該偏光板の分野において、偏光子や液晶セルを紫外線から保護するために、紫外線吸収剤を含有する保護フィルムを液晶セルに対して遠い側に配置することは、技術常識(例.特開2012-3281号公報(特に段落【0046】、段落【0140】、【図1】を参照。)、特開2012-203211号公報(特に【請求項1】、【請求項4】、【請求項5】、段落【0035】、【0183】を参照。)、特開2008-40277号公報(【請求項3】、【0036】、【0078】、【0110】、【0111】を参照。)、特開2011-203400号公報(特に段落【0002】、【0042】)であることを考慮すると、引用発明においては、紫外線吸収剤を含有する「保護フィルム(1)」(第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム)が液晶セルから遠い側に配置され、結果として引用発明の「第2樹脂フィルム」が液晶セル側に配置されると解するのが自然であるし、そうといえないまでも、少なくとも当業者が適宜なし得たことである。
(ウ)そして、液晶表示装置に用いられる偏光板において、偏光板を液晶セルに貼り合わせるために、偏光板の液晶セル側に配置する保護フィルムの外面に粘着剤層を設けることは、本件優先日前において周知技術(例.特開2012-203211号公報(特に【請求項4】、【請求項5】及び段落【0153】、【0183】を参照。)、特開2014-35393号公報(特に【請求項10】、段落【0142】?【0145】を参照。))であり、引用発明の液晶表示装置に用いられる偏光板に当該周知技術を採用して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、引用発明の具体化にともない当業者が適宜なし得る事項である。

ウ 上記相違点3について検討する。
液晶表示装置に用いられる偏光板において、偏光子や液晶セルを紫外線から保護するために、紫外線吸収剤を含有する保護フィルムの波長380nm以下の紫外線の透過率を20%以下程度とすることは、当該分野において技術常識(例.特開2012-3281号公報(特に【0246】【表5】の「透過率(380nm以下)」の欄の各値を参照。)、特開2011-203400号公報(特に【請求項1】、段落【0002】、【0010】、【0039】、【0042】を参照。)、特開2008-20692号公報(段落【0006】、【0049】を参照。))であるので、引用発明において紫外線吸収剤を含有する「保護フィルム(1)」(第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム)の波長380nm以下の紫外線の透過率を20%以下と設定することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内である。

エ 上記相違点4について検討する。
偏光板の保護フィルムに用いられる(メタ)アクリル系樹脂フィルムとして、メタクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を50重量%以上と、アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含む樹脂からなる単層の樹脂フィルムを用いることは、周知技術(例.特開2012-203211号公報(特に段落【0123】、【0124】、【0135】?【0137】を参照。)、特開2014-35393号公報(特に段落【0174】?【0177】、【0189】を参照。))であって、引用発明の「保護フィルム(1)」(第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム)も、「(メタ)アクリル系樹脂フィルム」であることから、当業者であれば引用発明の「保護フィルム(1)」(第1(メタ)アクリル系樹脂フィルム)として、前記周知技術を採用することは、容易に想到し得たことである。

オ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

カ したがって、本願補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(11) 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成27年8月10日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるものであるところ、そのうち本願補正発明に対応するのは、請求項1の記載を引用する形式で記載された請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)である。請求項1及び4の記載は、上記「第2〔理由〕1(2)」に本件補正前の請求項1及び4として記載したとおりのものである。

2 引用例
引用例の記載事項は、上記「第2〔理由〕2(8)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2〔理由〕1(3)」に記載したとおり、本願補正発明は、本願発明の発明特定事項をすべて有し、これに限定を付加したものに該当するところ、本願補正発明が上記「第2〔理由〕2(10)」に記載したとおり、引用発明及び各周知技術から当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由で、当業者が容易に発明できたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

以上
 
審理終結日 2016-12-02 
結審通知日 2016-12-06 
審決日 2016-12-20 
出願番号 特願2015-48285(P2015-48285)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
渡邉 勇
発明の名称 偏光板及び液晶パネル  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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