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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1324759
審判番号 不服2016-2146  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-12 
確定日 2017-02-09 
事件の表示 特願2014-43806「紫外線照射装置および紫外線照射方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年7月3日出願公開,特開2014-123769〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年10月29日に出願した特願2009-249114号の一部を平成26年3月6日に新たな特許出願としたものであって,その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年1月27日付け :拒絶理由の通知
平成27年3月18日 :意見書,手続補正書の提出
平成27年11月10日付け:拒絶査定(謄本送達日平成27年11月17日)
平成28年2月12日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出

第2 平成28年2月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年2月12日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次の通り補正された(下線部は,補正箇所である。)。
「チャンバ内に設けられ、基板を保持して移動可能に設けられた保持機構と、
前記保持機構に保持され前記チャンバ内を移動している前記基板に紫外線を照射する紫外線照射機構と、
前記チャンバ内の前記基板を加熱する加熱機構と、
前記チャンバ外部に設けられた駆動源、及び、前記保持機構に接続され前記駆動源の駆動力を前記保持機構に伝達する伝達部材、を有する移動機構と、
前記チャンバ内に設けられ、前記保持機構に保持された前記基板に対してエアを噴出し前記基板を浮上させる機構を有するステージと、
を備え、
前記ステージには、前記エアを噴出する複数の開口部が前記ステージの全面に亘って形成され、
前記紫外線照射機構は、前記チャンバに設けられた紫外線照射用の開口部を介して前記チャンバ外部から前記基板に紫外線を照射することを特徴とする紫外線照射装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成27年3月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「チャンバ内に設けられ、基板を保持して移動可能に設けられた保持機構と、
前記保持機構に保持され前記チャンバ内を移動している前記基板に紫外線を照射する紫外線照射機構と、
前記チャンバ内の前記基板を加熱する加熱機構と、
前記チャンバ外部に設けられた駆動源、及び、前記保持機構に接続され前記駆動源の駆動力を前記保持機構に伝達する伝達部材、を有する移動機構と、
前記チャンバ内に設けられ、前記保持機構に保持された前記基板に対してエアを噴出し前記基板を浮上させる機構を有するステージと、
を備え、
前記ステージには、前記エアを噴出する複数の開口部が前記ステージの全面に亘って形成されていることを特徴とする紫外線照射装置。」

2 補正の適否
上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「紫外線照射機構」について,上記1(1)のとおり「前記チャンバに設けられた紫外線照射用の開口部を介して前記チャンバ外部から前記基板に紫外線を照射する」という限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2003-300618号公報(平成15年10月21日出願公開。以下,「引用例1」という。)には,図1ないし4とともに,次の記載がある。
「【0001】【発明の詳細な説明】【発明の属する技術分野】この発明は、液晶パネル用の大型ガラス基板等の寸法が大きな基板を搬送しながら紫外線照射を行なうことでキュアリング作業等を行なうときに使用される基板搬送機構に関するものである。」
「【0001】【従来の技術】従来、液晶パネル用の大型ガラス基板等の露光、現像、洗浄処理後に行われるキュアリング作業は、基板を搬送しながら、その基板の表面に紫外線照射装置から紫外線を照射することで行なわれている。この際、基板を搬送する搬送機構には、次のような搬送機構が知られている。」
「【0002】従来の液晶パネル用の大型ガラス基板等の搬送機構では、基板の進行方向の両端に設けられた多数のガイドローラの回転駆動のみで搬送していた。そのため、基板重量が重いために、基板の中心部に大きなたわみが発生し、搬送時に基板の端面が大きくばたつき(振動して)、基板の端面およびコーナを欠くだけでなく、基板が搬送機構から落下するという問題があった。この基板の落下を防止する対策として、基板の進行方向の両端に多数のガイドローラを設けるだけでなく、基板の中心部(両端のガイドローラの間)に対応する位置に支持ローラを配置し、基板の中心部を支持しながら(基板と接触しながら)、これらのローラを回転駆動させて基板を搬送することが考えられる。」
「【0003】また、特開平11-148902号公報の平板状基板の表面欠陥検査装置に使用されているエアーフローティング機構を、前記の支持ローラの代わりに利用することが考えられる。このエアーフローティング機構は、多数のエアー吹き出し孔を表面に有するテーブルを基板の下方に配置し、基板を圧縮エアーで浮上させながら(基板と非接触で)搬送する。」
「【0006】そこで、本発明は、このような問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、基板のキュアリング作業時に、基板を落下させることなく安定に搬送し、搬送された基板にゴミの付着、または傷や損傷の発生がない、しかも基板の両面を同一光量の紫外線で、簡単かつ同時にキュアリングすることが可能な基板搬送機構を提供することを目的とする。」
「【0007】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、搬送中に基板の表面に紫外線を照射する紫外線照射装置に使用される基板搬送機構において、前記基板搬送機構は、基板の両端を支持して搬送する送りローラと、この送りローラに支持されている前記基板の下方でその基板をエアーにより非接触状態で支持する搬送補助機構とを備え、前記搬送補助機構は、前記基板に沿って配置され所定長さを備えるエアー配管と、このエアー配管に形成されたエアーの吹き上げ孔とを備え、前記エアー配管は、紫外線を透過させる透過部材により形成された基板搬送機構として構成したものである。」
「【0014】図1に示すように、基板搬送機構2は、基板Wの両端を支持して搬送する送りローラ2aと、この送りローラ2aに支持されている基板Wの下方でその基板Wをエアーにより非接触状態で支持する搬送補助機構3とを備えている。」
「【0015】また、基板搬送機構2は紫外線が照射されない待機部A、送出部Cと、紫外線が照射される照射部Bの3セクションに分割されている。待機部Aが後記する紫外線照射部4に基板Wを搬入する工程であり、中央部の照射部Bが基板Wを紫外線で照射することにより基板Wの両面をキュアリングする工程であり、送出部Cが紫外線照射部4から基板Wを搬出する工程である。さらに、各セクションには、基板Wの下側から基板Wの搬送位置を検知する搬送位置センサSE1(基板搬送機構2外側に設置されている)、SE2、SE3、SE4、SE5が設けられ、基板Wの搬送位置をチェックして後記する送りローラ2aの回転を制御する各インダクションモータ2f、2g、2hおよび基板搬送機構2の出入口側に設置されたシリンダ機構により開閉するシャッター5a、5b(図2参照)に信号を送り、基板Wの搬送を制御している。」
「【0016】送りローラ2aは、基板Wの搬送方向に沿って水平にかつ相互に平行に配置した2本のビーム2bに回転自在に水平に支持され、基板Wの両端を支持するように所定間隔で対向配置されている。また、送りローラ2aは、基板Wの搬送方向に列状に多数配置され、回転軸2cに支持され、その回転軸2cはビーム2bを貫通して枢支されており、その回転軸2cの他端部にはスプロケット2dが設けられている。各スプロケット2dにはインダクションモータ2f、2g、2hの駆動が伝達するシリコンベルト2eが掛け渡されている。これらインダクションモータ2f、2g、2hの駆動により送りローラ2aが所定速度で回転して基板Wを搬送するように構成されている。また、インダクションモータ2f、2g、2hは、それぞれが独立して駆動するように構成されている。」
「【0021】エアー配管3aの配置については基板Wの搬送方向に平行、直交または所定角度で斜交する等、本数については1本または複数本等、基板Wを浮上させて安定して搬送でき、かつ基板Wの下側からの紫外線を遮光しない素材であれば特に限定されない。図1においては、前記した待機部A、送出部Cでは基板Wの安定な搬送を重視して、基板Wの搬送方向に平行で、送りローラ2a間のほぼ中央に柵状のエアー配管3aが1本配置され、前記した照射部Bでは基板Wのたわみの防止を重視して、搬送方向に直交するように柵状のエアー配管3aが3本配置されている。」
「【0024】また、エアー配管3aの形状およびエアーの吹き上げ孔3bの形状、大きさ、数等についても、搬送する基板Wに応じて適宜選択すれば良い。例えば、図4のエアー配管3aは、外径10mm、長さ(基板Wと平行部分の長さ)580mmの石英製の円筒柵状のパイプで、その表面に外径1mmの丸状孔を30mm等間隔に配置している。圧縮エアー圧も搬送する基板Wに応じて適宜選択され、多数のエアーの吹き上げ孔3bの全てから均一な圧力で圧縮エアーを吐出することが好ましいが、基板Wのたわみ量により、たわみの大きい基板Wの中心部のエアーの吹き上げ孔3bの圧縮エアー圧を高く設定しても良い。」
【図1】には,基板搬送機構が使用される紫外線装置の要部を示す平面図が記載されており,紫外線照射装置1とされた枠内に送りローラ2a,シリコンベルト2e,インダクションモータ2f,2g,2hが記載されているほか,紫外線照射領域4の枠内には複数のエアー配管3aが記載されている。
【図2】には,基板搬送機構が使用される紫外線装置の要部を示す正面図が記載されており,基板搬送機構2の入口側及び出口側にはそれぞれシャッター5a及び5bが紫外線照射装置1の壁とともに記載されており,紫外線照射部Bの領域には基板搬送機構の上方に紫外線ランプ4aが設けられている。

(イ)上記記載から,引用例1には,次の技術的事項が記載されている。
a 引用例1に記載された技術は,基板を搬送する搬送機構を有し,その基板の表面に紫外線を照射する紫外線照射装置であり(2つの【0001】),基板を落下させることなく安定に搬送し,搬送された基板にゴミの付着,または傷や損傷の発生がないようにすることを課題としたものである(【0006】)。
b 搬送中に基板の表面に紫外線を照射する紫外線照射装置に使用される基板搬送機構において,前記基板搬送機構は,基板の両端を支持して搬送する送りローラと,この送りローラに支持されている前記基板の下方でその基板をエアーにより非接触状態で支持する搬送補助機構とを備え,前記搬送補助機構は,前記基板に沿って配置され所定長さを備えるエアー配管と,このエアー配管に形成されたエアーの吹き上げ孔とを備えている(【0007】)。
c 送りローラは,基板Wの搬送方向に列状に多数配置され,回転軸に支持され,その回転軸の他端部にはスプロケットが設けられ,各スプロケットにはインダクションモータの駆動が伝達するシリコンベルトが掛け渡されている。これらインダクションモータの駆動により送りローラが所定速度で回転して基板を搬送するように構成されている。(【0016】)
d エアー配管の配置については基板を浮上させて安定して搬送できればよく,紫外線照射部では基板のたわみの防止を重視して,搬送方向に直交するように柵状のエアー配管が3本配置され(【0021】),エアー配管の形状およびエアーの吹き上げ孔の形状,大きさ,数等についても,搬送する基板に応じて適宜選択すれば良い(【0024】)。
e 紫外線照射装置は壁等で区画された装置であり,シャッターや壁で外部と区切られており,紫外線照射部では基板搬送機構の上方に紫外線ランプが配置されている(【図1】,【図2】)。

(ウ)これらのことから,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「シャッターや壁で外部と区切られている紫外線照射装置内に設けられ,基板を支持して搬送する送りローラと,前記送りローラに支持され前記紫外線照射装置内を移動している前記基板に紫外線を照射する紫外線ランプと,前記紫外線照射装置内部に設けられたインダクションモータ,及び,前記送りローラに接続され前記インダクションモータの駆動力を前記送りローラに伝達するシリコンベルト,を有する移動機構と,前記紫外線照射装置内に設けられ,前記送りローラに支持された前記基板に対してエアを噴出し前記基板を浮上させるエアー配管と,を備え,
前記エアー配管には,前記エアを噴出する複数の開口部が形成され,前記紫外線ランプは,前記基板に紫外線を照射する紫外線照射装置。」

イ 引用例2
(ア)同じく引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,再公表特許第2005/074020号(平成19年9月13日発行,国際公開日平成17年8月11日。以下,「引用例2」という。)には,図1ないし15とともに,次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、半導体製造装置およびそれを用いた半導体製造方法に関し、詳しくは、半導体装置の製造に必要な複数の処理部に対応する複数の真空槽を隣接して有する半導体製造装置およびそれを用いた半導体製造方法に関する。」
「【背景技術】【0002】基板上に半導体薄膜を製造する場合、一般に、真空槽を利用した半導体製造装置が用いられる。
このような半導体製造装置は、成膜などの半導体装置の製造に必要な処理機能を有する複数の真空槽と、半導体製造処理を施すべき基板を複数の真空槽間で搬送するための搬送機構を備えているのが一般的である。
搬送機構としては、トレーを使用したインライン方式や、真空ロボットとトランスファーチャンバーを利用した枚葉方式が知られている。」
「【0003】インライン方式では、車輪あるいはベアリングを使用してトレーを保持し、チェーンあるいは歯車等を利用して駆動力を与え、トレーの搬送を行う方法が知られている(例えば、特開平2-207546号公報参照)。
また、枚葉方式では、ロボットを配置するトランスファーチャンバーを設置し、このトランスファーチャンバーを中心に各真空槽を設置し、ロボットに取り付けたフォーク等をもって基板を搬送する方法が知られている(例えば、特開平11-222675号公報参照)。」
「【0004】インライン方式では、トレーの保持に、車輪あるいはベアリング等を利用する方式がとられることから、装置構造が複雑になる。
例えば、複数の真空槽を使用する場合、仕込み室や反応室といったように、目的毎に異なる真空槽が用いられるが、高い清浄度が要求される反応室にも可動部分が装備され清浄度が低下するという問題がある。
また、トレーが車輪あるいはベアリング等で保持されることから、装置本体への接触部分が限定され、高周波電源等を用いる場合にはトレーの接地が問題となる。」
「【発明の効果】【0010】本発明によれば、搬送アームがトレーを移動させるときに、一方および他方の真空槽のガイドプレートのガス噴出孔からガスを噴出させ、噴出したガスによって浮上状態にある一方の真空槽のトレーを、搬送アームが一方の真空槽のガイドプレート上から他方の真空槽のガイドプレート上へガイドプレートに沿って移動させることができるので、基板を搬送させるために必要な可動部分や駆動部分を極力少なくすることができ、簡易な構成で精度よく基板を搬送することができる。さらには、隣接する2つの真空槽の一方に搬送アームが設けられることにより、搬送ロボットや投入前の基板等を一時収容しておくためのトランスファーチャンバーを不要とすることができる。
つまり、搬送機構が簡素で済み、かつ、真空槽内から搬送駆動部を不要とした構成であるため、従来のインライン搬送方式および枚葉搬送方式の基板処理装置の様々な上記問題点、すなわち装置構造の複雑化およびそれに伴うコストアップ、搬送駆動部による真空槽内の清浄度の低下、トレーの接地、搬送精度の低下および装置設置面積の増大を解消することができる。」
「【発明を実施するための最良の形態】【0013】本発明の半導体製造装置は、半導体装置の製造に必要な複数の処理部に対応する複数の真空槽と、各真空槽に接続された排気装置と、各真空槽の底に設けられ複数のガス噴出孔を有する板状のガイドプレートと、ガス噴出孔へガスを供給するガス供給源とを備え、複数の真空槽はシャッターを隔てて互いに隣接し、隣接する2つの真空槽の一方は、所定の処理を施すべき基板を搭載するためにガイドプレート上に載置されるトレーと、トレーを一方の真空槽から他方の真空槽へガイドプレートに沿って移動させる搬送アームを有する搬送機能部と、制御機能部とを具備し、この制御機能部が、シャッターを開放して隣接する2つの真空槽を連通し、一方および他方の真空槽のガイドプレートのガス噴出孔からガスを噴出し、噴出したガスによって浮上状態にある一方の真空槽のトレーを、搬送アームにて一方の真空槽のガイドプレート上から他方の真空槽のガイドプレート上へガイドプレートに沿って移動させるように制御するよう構成されてなることを特徴とする。」
「【0014】本発明の半導体製造装置において、半導体製造用の真空槽とは、半導体装置の製造に用いられる真空槽を全て含み、その用途については特に限定されない。ここで、本発明において、半導体装置の製造に必要な処理とは、半導体基板、ガラス基板等の各種基板上に成膜、プラズマ処理、アニール処理等の半導体装置を製造する際に行なわれる各種処理を意味する。そのため、隣接して並んだ複数の真空槽には、半導体装置を製造するための所定の処理機能を有する処理部を処理工程順に有する構成としてもよい。なお、本発明にて製造可能な半導体装置は、上記のような処理が施される半導体装置であり、例えばトランジスタ、メモリ、IC、LSI等の半導体デバイス、有機または無機の太陽電池、液晶、プラズマ、エレクトロルミネッセンス等のディスプレイなどが挙げられる。」
「【0015】真空槽としては密閉可能な構造を有し、半導体装置の製造に必要な処理が行われる際の気圧と温度に耐え得るものであればよく、その形状や材質等については特に制約されない。例えば、密閉可能な蓋をもつステンレス製の槽を真空槽として用いることができる。複数の真空槽は、例えば長手方向にストレートに延びる1つのケーシングをシャッターにて複数に区画することにより構成されている。
各真空槽に接続される排気装置としては、各真空槽を所定の真空度に排気できるものであればよく、特に限定されず、例えば一般的な真空ポンプを用いることができる。また、複数の真空槽に1つずつ排気装置が接続されていてもよいし、複数の真空槽に対して1つの排気装置が接続されていてもよい。」
「【0018】また、ガイドプレートとしては、ガス噴出孔からガスを噴出させてプレートを浮上させ、プレートが移動させられる際のガイドとなり得るものであって、各真空槽内で行なわれる各種処理の気圧、温度等に耐え得るものであれば、その形状や材質等については特に制約されない。例えば、ガス導入口とガス噴出孔を有する中空の板状体をガイドプレートとして用いることができ、その材料には、例えば、ステンレスを用いることができる。そして、シャッターを隔てて複数隣接する真空槽内において、各真空槽内に設けられるガイドプレートはトレー搬送方向にストレート状に配置される。
ガイドプレートのガス噴出孔の直径と間隔は、トレーを浮上させて滑らかな移動を実現させるという観点から、なるべく小さな直径で数多く形成することが好ましく、例えば、直径0.5?4mm程度の孔を10?100mm程度の間隔で形成することが好ましい。」
「【0019】トレーとしては、基板を搭載して複数の真空槽間を移動でき、各真空槽内で行なわれる各種処理の気圧、温度等に耐え得るものであれば、その形状や材質等については特に制約されないが、浮上させられるという観点からなるべく軽量であることが好ましい。例えば、ステンレスからなる板状のものをトレーとして用いることができる。
本発明による半導体製造装置において、トレーは搬送アームによって移動させられる際にガイドプレートに係止する係止部を有していてもよい。この係止部としては、トレーの搬送に干渉せずにガイドプレートに係止できるものであればよく、その構成は特に制約されるものではないが、例えば、ガイドプレートが長手方向を有する方形であって、隣接する複数の真空槽において一方および他方の真空槽のガイドプレートはそれらの長手方向に沿って互いに整列するように配設される場合には、トレーの対向する2つの縁を、ガイドプレートの前記の長手方向に延びる2辺に沿うように直角に折り曲げたような形状であってもよい。また、係止部はガイドプレートの2辺に係止できるような独立した構成物であってトレーに取り付けられるように構成されていてもよい。この対向する係止部とガイドプレートとの間の間隙寸法は合計0.1?3mm程度が好ましい。
トレーに係止部を設けることにより、トレーの移動時に、係止部によってトレーがガイドプレートから外れることなく搬送方向に誘導されるので、精度よく安定してトレーを移動させることができる。」
「【0020】また、この発明による半導体製造装置は、隣接する2つの真空槽において、一方の真空槽に設けられた搬送機能部は、搬送アームを移動させるための駆動部をさらに備え、駆動部は一対のプーリと一対のプーリによって巻き回されるワイヤーとから構成されてもよい。この場合、一方のプーリは、真空槽の外部に設けられた例えばモータのような回転駆動源にて回転駆動されるように構成するのが好ましい。
このような構成によれば、従来のチェーンや歯車のようにピッチの変化に関係なく滑らかに搬送アームを移動させることができる。また、チェーンや歯車等から構成される搬送機構と比較して可動部分を極力少なくできるので、真空槽の清浄度を損なうこともない。」
「【0034】第1および第2真空槽10,20はステンレス製で、内面には鏡面加工が施されている。
また、ガイドプレート12,22もステンレス製で、ガス導入口14,24から導入されたガスをガス噴出孔13,23から噴出できるように中空構造になっており、平面視で長方形の形状を有する。ガイドプレート12,22は、表面に鏡面加工が施され、幅600mm、長さ1000mm、厚さ30mmの寸法を有する。ガス噴出孔13,23の直径は0.5mmで、10mm間隔で5684個形成されている。」
【図1】には,多数のガス噴出孔13,23が形成されたガイドプレート12,22が看取される。

(イ)上記記載から,引用例2には,次の技術が記載されている。
「長手方向にストレートに延びる1つのケーシングをシャッターにて複数に区画することにより構成されている複数の真空槽(【0015】)に設けられ,基板を搭載して複数の真空槽間を移動できるトレーと係止部で係合する搬送アーム(【0019】)と,真空槽の外部に設けられた例えばモータのような回転駆動源,及び搬送アームを移動させるための駆動部である一対のプーリと一対のプーリによって巻き回されるワイヤーと(【0020】),各真空槽内に設けられ,ガス噴出孔からガスを噴出させてトレーを浮上させるガイドプレート(【0018】)と,を備え,ガイドプレートには,複数のガス噴出孔がガイドプレート全面に亘って形成される(図1),半導体装置における搬送装置(【0013】)に関する技術。」

ウ 引用例3
(ア)同じく引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開平7-58189号公報(平成7年3月3日出願公開。以下,「引用例3」という。)には,図1ないし4とともに,次の記載がある。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、半導体装置,液晶ディスプレー,光学装置,磁気ディスク等の製造装置に関する。」
「【0006】【課題を解決するための手段】ごみの付着を低減するには、被処理物の搭載台上での固定のために接触する面積を減らすことでありその手段は、被処理物の固定をその周辺の数個所に留めることである。そしてこの手段によって被処理物が発熱体と非接触となるためにその温度上昇が遅くなるという新たに発生する課題に対して熱伝導加熱から輻射熱による加熱をすることである。」
「【0009】被処理物1は、その周辺を保持する搬送アーム(図示省略)によって紫外線と加熱用輻射線の両方を透過する二枚の板2,3の間に配置した被処理物1の周辺のみ保持する回転可能な支持台4に搭載する。二枚の板2,3の間を処理室5と称する。処理室5内への被処理物1の搬入出口6は、処理室5内が低圧、高圧時にガスの漏れの生じないように気密性を有するものとする。被処理物1は紫外線と加熱用輻射線の両方を透過する二枚の板2,3の一方2の側に主に処理したい面(被処理物の表面と称し、その反対側を裏面と称す)となるように搭載する。二枚の板の内の一方の板2の被処理物1に対して反対側に紫外線供給源である低圧水銀放電灯7を配置し、他方の板3の被処理物1に対して反対側に輻射加熱源であるタングステン・ハロゲン電球8を配置する。被処理物1が支持台4に搭載されると同時に輻射加熱源8に電力が供給され被処理物1を加熱する。搬入出口6を閉じた後、直ぐに酸化性ガスを供給する。酸化性ガスは、板2を貫通する複数個のノズル9より供給し生成ガスの排出を処理室5に設けた排出口10より排出するか、図2に示す様に処理室5の中に配置したガス吹きだし孔11から被処理物1の周辺より供給して板2に設けた排出口12から生成ガスを排出する方法が好ましい。」

(イ)上記記載から,引用例3には,次の技術が記載されている。
「半導体装置,液晶ディスプレー,光学装置,磁気ディスク等の製造装置において(【0001】),被処理物を,紫外線と加熱用輻射線の両方を透過する二枚の板の間に配置し,二枚の板の内の一方の板の被処理物に対して反対側に紫外線供給源である低圧水銀放電灯を配置し,他方の板の被処理物に対して反対側に輻射加熱源であるタングステン・ハロゲン電球を配置する技術。(【0009】)」

エ 引用例4
(ア)同じく引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,実願昭58-129844号(実開昭60-39238号)のマイクロフィルム(昭和60年3月19日出願公開。以下,「引用例4」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
「本考案は紫外線洗浄装置に関するものである。
紫外線ランプより発生するオゾンを利用して汚染物を分解洗浄することが従来より行なわれている。例えばシリコンウエハーに感光レジストを塗付する際の前処理として、主洗浄後にシリコンウエハーに付着した大気中の有機汚染物を塗布直前に追加洗浄することにより分解したり、電子ビームによるスパッタリング蒸着の際に基体に付着した真空ポンプの油などによる有機汚染物を同じく追加洗浄すると塗布膜あるいは蒸着膜の密着性を著しく向上できることが明らかになっている。」(明細書第1ページ第12行-第2ページ第5行)
「図面は装置の断面図を示すが、装置箱1には灯体2が内蔵されて二重構造をなし、発生したオゾンが外部に漏洩しないようになっている。灯体2の内部の上方には紫外線ランプ3としてU字状の350W高出力低圧水銀灯が2本配設され、その背後にはミラー4が設けられて紫外線が下方に向けて照射される。灯体2の天井上面には冷却水路5が固着されて水冷されている。紫外線が照射される灯体2の中央部には円盤状の被洗浄体6が円環状の支持台7によって支持されている。そしてその下方には電熱ヒーターが内蔵された加熱部材8が配設されており、支持台7が円環状であるため、被洗浄体6は下方から加熱されるようになっている。」(明細書第4ページ第8行-第5ページ第3行)
「そして紫外線ランプ2があまり高温にさらされると寿命が短かくなるので、この点からもあまり高温にするのは好ましくない。しかし、この弊害を防止するには紫外線ランプ3の前面に石英ガラスを配して紫外線ランプのみを冷却すればよい。」(明細書第6ページ第2-7行)

(イ)上記記載から,引用例4には,次の技術が記載されている。
「シリコンウエハーに感光レジストを塗付する際の前処理として,シリコンウエハーを洗浄するために用いられる技術であって,紫外線ランプから,紫外線が下方に向けて,被洗浄体に照射される装置において,被洗浄体の下方に電熱ヒーターが内蔵された加熱部材を配置する技術。」

オ 引用例5
(ア)同じく引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2009-23804号公報(平成21年2月5日出願公開。以下,「引用例5」という。)には,図1ないし16とともに,次の記載がある。
「【0018】以下、本発明の一実施形態に係る基板搬送装置1について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る基板搬送装置1は、図1?図6に示すように、基板10を浮上させるエア浮上ステージ(浮上手段)3と、浮上させられた基板10を保持する基板保持機構(保持手段)5と、該基板保持機構5を基板10の搬送方向に移動させる基板搬送機構(駆動手段)7と、浮上状態の基板10を静止状態に固定する基板固定機構(固定手段)9(図7?図9参照)と、エア浮上ステージ3、基板保持機構5、基板搬送機構7および基板固定機構9を制御する図示しない制御部(制御手段)とを備えている。」
「【0019】エア浮上ステージ3は、基板10の搬送方向を長手方向とする平板状に形成され、図示しないベース部上に固定されている。エア浮上ステージ3の上端面には、複数のエア噴出し孔11が全面にわたって所定の間隔で設けられている。エア浮上ステージ3は、浮上エア系統13に接続され、浮上用電磁弁15の作動により、各エア噴出し孔11から上向きに、すなわち、搬送される基板10に対して下方から圧縮エアを吐出して、基板10を浮上させるようになっている。」

(イ)上記記載から,引用例5には,次の技術が記載されている。
「基板搬送装置において,エア浮上ステージの全面にわたって複数のエア噴出し孔を設けて,基板を浮上させる技術。」

カ 引用例6
(ア)同じく引用された,本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2006-19396号公報(平成18年1月19日出願公開。以下,「引用例6」という。)には,図1ないし16とともに,次の記載がある。
「【0053】図4および図5に示すように、本発明の一実施形態におけるレジスト塗布ユニット(CT)82は、プロセスラインAの方向(X方向)に長く延びるステージ112を有し、このステージ112の上で基板Gを同方向(X方向)に平流しで搬送しながら、ステージ112の上方に配置されたレジストノズル114より基板G上にレジスト液Rを供給して、基板上面(被処理面)に一定の膜厚でレジスト塗布膜を形成するように構成されている。ここで、ステージ112は、従来のように基板Gを載置して保持する載置台として機能するのではなく、基板Gを空気圧の力で空中に浮かせるための基板浮上台として機能する。そして、ステージ112の両側に配置されている直進運動型の基板搬送部116が、ステージ112上で浮いている基板Gの両側縁部を着脱可能に保持してプロセスラインAの方向またはステージ長手方向(X方向)に基板Gを搬送するようになっている。レジストノズル114は、移動型または走査型ではなく定置型であり、搬送方向(X方向)においてステージ112の中心部の上方に固定設置されている。」
「【0054】より詳細には、ステージ112は、その長手方向(X方向)において5つの領域M_(1),M_(2),M_(3),M_(4),M_(5)に分割されている(図5)。左端の領域M_(1)は搬入領域であり、上流側隣のユニットつまりオーブンタワー(TB)48のパスユニット(PASS_(R))60(図2)から転送されてきた基板Gは、この領域M_(1)に搬入される。この搬入領域M_(1)には、図示しない搬送アームから基板Gを受け取るための昇降可能なリフトピン118が所定の間隔を置いて複数本(たとえば4本)設けられている。また、この搬入領域M_(1)は浮上式の基板搬送が開始される領域でもあり、この領域内のステージ上面には基板Gを所望の高さ位置H_(a)で浮かせるために高圧または正圧の圧縮空気を噴き出す噴出口120が一定の密度で多数設けられている。ここで、搬入領域M_(1)においてステージ112の上面からみた基板Gの高さ位置または浮上位置H_(a)は、特に高い精度を必要とせず、たとえば100?150μmの範囲内に保たれればよい。また、搬送方向(X方向)において、搬入領域M_(1)のサイズは基板Gのサイズを上回っているのが好ましい。」

(イ)上記記載から,引用例6には,次の技術が記載されている。
「長く延びるステージの上で基板を平流しで搬送する浮上式の基板搬送装置において,ステージ上面には基板を所望の高さ位置で浮かせるために高圧または正圧の圧縮空気を噴き出す噴出口を一定の密度で多数設ける技術。」

キ 引用例7
(ア)本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2008-3200号公報(平成20年1月10日出願公開。以下,「引用例7」という。)には,図1ないし6とともに,次の記載がある。
「【0012】[第1実施形態][液晶装置の製造装置]図1は、本発明の第1実施形態に係る液晶装置の製造装置LS1を示す概略斜視図である。図1において、本実施形態に係る液晶装置の製造装置LS1は、液晶パネル110を載置するステージ2と、該ステージ2を内部に収容する真空チャンバ10と、該真空チャンバ10の外面に設けられた紫外線を透過する窓10Hと、該窓10Hを介して真空チャンバ10の外部からステージ2に向けて紫外線を照射する紫外線照射装置130と、を備えている。」

(イ)上記記載から,引用例7には,次の技術が記載されている。
「チャンバに設けられた窓を介してチャンバ外部からステージに向けて紫外線を照射する技術」

ク 引用例8
(ア)本願の遡及日前に頒布された刊行物である,特開2007-33537号公報(平成19年2月8日出願公開。以下,「引用例8」という。)には,図1ないし8とともに,次の記載がある。
「【0049】ここで説明した貼り合わせ装置は、更に減圧チャンバ15とゲートバルブ17を介して連結されたロードロック16を備えており、ロードロック16内は、図示しない排気手段とリーク手段により、減圧チャンバ15と同じ1Pa程度の真空状態と、大気圧状態にすることができる。ロードロック16には、第1基板1と第2基板2を接着するシール材32をUV硬化させるUV光源13が設けられており、UV照射窓14を通して貼り合わされた基板全面にUV光を照射できるようになっている。」

(イ)上記記載から,引用例8には,次の技術が記載されている。
「チャンバと同じ程度の真空状態と大気圧状態にできるロードロックに設けられたUV照射窓を通して基板全面に紫外線を照射する技術」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「シャッターや壁で外部と区切られている紫外線照射装置」は,本件補正発明の「チャンバ」に相当する。
(イ)引用発明の「基板を支持して搬送する送りローラ」は,本件補正発明の「基板を保持して移動可能に設けられた保持機構」と対比して,「基板を保持する保持機構」という点で一致する。
(ウ)引用発明の「紫外線ランプ」は,本件補正発明の「紫外線照射機構」に相当する。
(エ)引用発明の「インダクションモータ」は,本件補正発明の「駆動源」に相当する。
(オ)引用発明の「シリコンベルト」は,本件補正発明の「伝達部材」に相当する。
(カ)引用発明の「前記基板に対してエアを噴出し前記基板を浮上させるエアー配管」は,本件補正発明の「前記基板に対してエアを噴出し前記基板を浮上させる機構」に相当する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
<一致点>
「チャンバ内に設けられ,基板を保持する保持機構と,前記保持機構に保持され前記チャンバ内を移動している前記基板に紫外線を照射する紫外線照射機構と,駆動源,及び,前記保持機構に接続され前記駆動源の駆動力を伝達する伝達部材,を有する移動機構と,前記チャンバ内に設けられ,前記保持機構に保持された前記基板に対してエアを噴出し前記基板を浮上させる機構と,を備え,前記紫外線照射機構は,前記基板に紫外線を照射する紫外線照射装置。」

<相違点1>
基板を移動させている「保持機構」について,本件補正発明は「保持機構」が移動可能であるのに対し,引用発明は「保持機構」そのものは移動しない点。

<相違点2>
本件補正発明は「チャンバ内の基板を加熱する加熱機構」を備えているのに対し,引用発明は「加熱機構」を備えていない点。

<相違点3>
「駆動源」の配置について,本件補正発明は「チャンバ外部」に配置されているのに対し,引用発明は「チャンバ内部」に配置されている点。

<相違点4>
「基板を浮上させる機構」について,本件補正発明は「ステージ」が「基板を浮上させる機構」を有しており,当該ステージには,エアを噴出する複数の開口部が前記ステージの全面に亘って形成されたものであるのに対し,引用発明は「ステージ」が存在しない点。

<相違点5>
「紫外線照射機構」の配置及び紫外線照射態様について,本件補正発明は「チャンバに設けられた紫外線照射用の開口部」を介して前記「チャンバ外部」から基板に紫外線を照射しているのに対し,引用発明は「チャンバに設けられた紫外線照射用の開口部」を有しておらず,紫外線照射機構も「チャンバ内部」に配置されている点。

(4)判断
以下,相違点1ないし5について検討する。
ア 相違点1について
引用例2には,上記(2)イ(イ)のとおり,「長手方向にストレートに延びる1つのケーシングをシャッターにて複数に区画することにより構成されている複数の真空槽に設けられ,基板を搭載して複数の真空槽間を移動できるトレーと係止部で係合する搬送アームと,真空槽の外部に設けられた例えばモータのような回転駆動源,及び搬送アームを移動させるための駆動部である一対のプーリと一対のプーリによって巻き回されるワイヤーと,各真空槽内に設けられ,ガス噴出孔からガスを噴出させてトレーを浮上させるガイドプレートと,を備え,ガイドプレートには,複数のガス噴出孔がガイドプレート全面に亘って形成される,半導体装置における搬送装置に関する技術」が記載されている。
引用発明と引用例2に記載された技術とは,いずれも液晶を含む半導体製造で用いられる半導体装置での搬送装置であって,気体の噴出によって被搬送物を浮かせながら搬送させる技術という点で共通するものであり,被搬送物の浮上機構とともに用いられる搬送機構として,引用発明のように整列させたローラを回転させて被搬送物を移動させるか,引用例2のように被搬送物と保持機構(搬送アーム)とを有し,保持手段も被搬送手段とともに移動させるかは,どちらも本願出願時に公知の技術であることから,当業者が適宜選択し得る事項であり,引用発明においても,引用例2のように移動する保持機構を採用することで,上記相違点1に係る事項を備えることは,当業者にとって容易になし得たものである。

イ 相違点2について
上記(2)ウ(イ)及び上記(2)エ(イ)で例示されるように,半導体製造で用いられる紫外線照射装置において,チャンバ内に加熱手段を設けたものは,当業者にとって従来周知技術である。
そして,加熱手段を設けるかどうかは,対象とする基板等に応じて適宜選択し得る事項にすぎず,上記相違点2に係る事項を備えたものとすることは,当業者にとって格別のものとは認められない。

ウ 相違点3について
引用例2には,上記(2)イ(イ)のとおり,「長手方向にストレートに延びる1つのケーシングをシャッターにて複数に区画することにより構成されている複数の真空槽に設けられ,基板を搭載して複数の真空槽間を移動できるトレーと係止部で係合する搬送アームと,真空槽の外部に設けられた例えばモータのような回転駆動源,及び搬送アームを移動させるための駆動部である一対のプーリと一対のプーリによって巻き回されるワイヤーと,各真空槽内に設けられ,ガス噴出孔からガスを噴出させてトレーを浮上させるガイドプレートと,を備え,ガイドプレートには,複数のガス噴出孔がガイドプレート全面に亘って形成される,半導体装置における搬送装置に関する技術」が記載されており,ここで引用例2の「真空槽」は本件補正発明における「チャンバ」に相当する。
引用発明と引用例2に記載された技術とは,いずれも液晶を含む半導体製造で用いられる半導体装置での搬送装置であって,気体の噴出によって基板を浮かせながら搬送させる技術という点で共通するものであり,半導体装置における清浄度を損なわないことを課題としている。そうすると,引用発明においても,装置の搬送装置として清浄度を損なわない搬送機構として,引用例2に記載された,搬送機構の駆動源をチャンバ外部に配置するものとし,上記相違点3に係る事項を備えたものとすることは,当業者にとって容易になし得た事項である。

エ 相違点4について
上記(2)イ(イ),上記(2)オ(イ)及び上記(2)カ(イ)で例示されるように,半導体製造で用いられる基板搬送装置において,エアを噴出する複数の開口部を設けたステージを用いることは,当業者にとって従来周知技術である。
そして,引用発明は,半導体製造で用いられる基板搬送装置において,複数の開口部を有するエア噴出管を複数配置することによってエアを噴出するものであって,エアを全面的に噴出するという同一の機能を有する他の構造に置き換えることは,当業者が通常の創作能力を発揮することにすぎないことから,引用発明において,上記従来周知技術である,エアを噴出する複数の開口部が全面に亘って形成されたステージを備えたものとし,上記相違点4に係る事項を備えたものとすることは,当業者にとって容易になし得たものである。

オ 相違点5について
上記(2)キ(イ)及び上記(2)ク(イ)で例示されるように,チャンバに設けられた紫外線照射用の開口部を介して前記チャンバ外部から基板に紫外線を照射する事項は,従来周知技術である。
そうすると,引用発明においても,紫外線照射という同様の目的を有する従来周知技術を採用し,上記相違点5を備えたものとすることは,当業者にとって容易になし得たものである。

カ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用例2に記載された技術並びに引用例2ないし8で例示される上記従来周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

キ したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用例2に記載された技術及び上記従来周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
上記のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下するものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年2月12日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成27年3月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,明細書及び図面の記載から見て,その請求項1に記載された事項により特定される,上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし6及びその記載事項は,上記第2[理由]2(2)アないしカに記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,上記第2[理由]2で検討した本件補正発明から,紫外線照射機構の配置に係る限定事項を削除したものである。

そうすると,本願発明と引用発明とは,上記第2[理由]2(3)に記載した一致点で一致し,相違点1ないし4で相違する。
しかしながら,上記第2[理由]2(4)に記載のとおり,相違点1ないし4は,引用発明及び引用例2に記載された技術並びに引用例2ないし6で例示される従来周知技術に基づいて,当業者が容易になし得た事項である。

よって,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された技術並びに従来周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-07 
結審通知日 2016-12-13 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2014-43806(P2014-43806)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 崇文内田 正和  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 平岩 正一
長清 吉範
発明の名称 紫外線照射装置および紫外線照射方法  
代理人 松本 将尚  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 飯田 雅人  
代理人 宮本 龍  
代理人 志賀 正武  

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