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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1324769
審判番号 不服2016-3745  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-10 
確定日 2017-02-09 
事件の表示 特願2011-223848号「情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年5月9日出願公開、特開2013-83553号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年10月11日の出願であって、平成26年9月2日に手続補正書が提出され、平成27年6月8日付けで拒絶理由が通知され、平成27年8月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月15日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年3月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年3月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
[1]本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年8月10日提出の手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1を下記の(2)に示す請求項1に補正することを含むものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
ユーザの行動情報を取得する行動情報取得部と、
現在地情報を取得する位置情報取得部と、
取得された前記行動情報と、取得された前記現在地情報とに応じて、地図上における選択対象を選択するための選択範囲を設定する選択範囲設定部と、
を備え、
前記選択範囲設定部は、前記行動情報と、前記現在地情報とに応じて、前記ユーザが停止する停止位置を特定し、前記停止位置が前記選択範囲の中心となるように、前記選択範囲を設定する、情報処理装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
ユーザの行動情報を取得する行動情報取得部と、
現在地情報を取得する位置情報取得部と、
取得された前記行動情報と、取得された前記現在地情報とに応じて、地図上における選択対象を選択するための選択範囲を設定する選択範囲設定部と、
を備え、
前記選択範囲設定部は、前記ユーザが移動していると認識された場合に、前記行動情報と、前記現在地情報とに応じて、前記ユーザが停止する停止位置を特定し、前記停止位置が前記選択範囲の中心となるように、前記選択範囲を設定する、情報処理装置。」
(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

[2]本件補正の目的について
本件補正は、「前記選択範囲設定部は、前記行動情報と、前記現在地情報とに応じて、前記ユーザが停止する停止位置を特定し、前記停止位置が前記選択範囲の中心となるように、前記選択範囲を設定する」の記載を、「前記選択範囲設定部は、前記ユーザが移動していると認識された場合に、前記行動情報と、前記現在地情報とに応じて、前記ユーザが停止する停止位置を特定し、前記停止位置が前記選択範囲の中心となるように、前記選択範囲を設定する」の記載にするものであるから、本件補正前の発明特定事項である「選択範囲を設定する」について、「ユーザが移動していると認識された場合に」という条件を付して限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか)について、以下に検討する。

[3]独立特許要件の判断
1.刊行物
(1)刊行物の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-76335号公報(以下、「刊行物」という。)には、情報提供システム、サーバ、端末、及び方法に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

1a)「【請求項1】
端末とサーバとを具備する情報表示システムにおいて、
閲覧するべき登録情報を位置情報と対応させて記録した情報データベースと、
前記端末の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記端末の移動状態に関する状態情報を取得する状態取得部と、
前記登録情報を検索するべき範囲であって前記状態情報に応じて変化する指定検索範囲を前記状態情報に基づいて決定する範囲決定部と、
前記情報データベースに記録された前記登録情報のうちから前記指定検索範囲に含まれる閲覧情報を抽出する情報抽出部と、
前記閲覧情報を表示する表示部と
を備える情報表示システム。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

1b)「【0016】
本実施形態の情報提供システムでは、サーバが、端末の移動速度に応じて変化する情報の抽出範囲をデータベースに予め記録する。端末は、定期的に位置情報を取得してサーバへ送信する。サーバは、端末から受信する位置情報に基づいて端末の移動速度を算出して、移動速度に応じた情報の抽出範囲をデータベースから特定する。サーバは、特定された抽出範囲に登録されている情報を、情報データベースから抽出して端末へ送信する。このような構成とすることによって、ユーザは、移動状態に応じた適切な範囲の情報を、端末上で閲覧することができる。
【0017】
[構成の説明]
はじめに本実施形態における情報提供システムの構成の説明を行う。図1は、本実施形態における情報提供システムの構成を示す図である。
【0018】
本実施形態における情報提供システムは、端末1と、ネットワーク2と、サーバ3とを備える。
【0019】
はじめに、端末1の説明を行う。端末1は、ユーザが使用する携帯電話端末である。端末1は、ネットワーク2を介してサーバ3と通信を行うことが可能である。端末1は、現在の位置情報を取得することが可能である。端末1は、位置情報をサーバ3へ送信して、サーバ3からユーザが閲覧するべき情報(以下、閲覧情報)を取得して表示を行う。なお、本実施形態では端末1を携帯電話端末として説明を行うが、端末1は、携帯電話端末に限定せず、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機、カーナビゲーション端末、情報表示機能を備えたメガネやヘッドマウントディスプレイ等のウェアラブルコンピュータを含む情報表示端末、あるいは乗用車、自転車等に搭載される情報端末等の情報機器を広く適用可能である。
【0020】
端末1は、位置情報取得部11と、入力部12と、通信部13と、記憶部14と、制御部15と、表示部16とを備える。以下、各構成について説明を行う。
【0021】
まず、位置情報取得部11は、端末1の位置情報を取得する。位置情報取得部11は、制御部15と接続されており、制御部15とデータ送受信が可能である。位置情報取得部11は、GPS衛星からの電波受信用アンテナを備え、GPS衛星からの電波を受信して、端末1の位置を算出する。なお、本実施形態において、位置情報は、緯度、経度を含むとして説明を行うが、実際には緯度、経度に加えて高度も取得可能であり、高度を含めた情報としても良い。」(段落【0016】ないし【0021】)

1c)「【0037】
図2を参照して、本実施形態における検索範囲の設定に対する考え方を説明する。図2は、本実施形態における検索範囲の設定に対する考え方を示す図である。本実施形態の検索範囲は、端末1の移動状態に応じて変化する。本実施形態において、端末1の移動状態は、移動方向と、移動速度である。このうち、範囲テーブル321は、端末1の移動速度に検索範囲を対応させて記憶している。図2には、(1)楕円で検索範囲を特定する場合と(2)扇形で検索範囲を特定する場合の2通りの場合を、端末1の移動状態である移動速度(つまり、端末1を持っているユーザや、端末1を備えた自動車等の移動状態)に対応させて示している。範囲テーブル321は、端末1の移動速度に応じた状態として、静止、歩く、早歩き、走る、の4区分を示している。
【0038】
楕円で検索範囲を特定する場合を例として説明を行うと、まず、端末1が静止している場合は、端末1を中心として一定の半径(例えば、rとする。)の円の範囲を検索範囲としている。例えば、端末1が移動しており、端末1の移動速度が歩くスピードである場合、検索範囲は、円の中心が端末1の移動方向前方へ移動した、半径rの円の範囲となる。つまり、検索範囲は、端末1の移動方向前方に対して広く確保され、端末1の移動方向後方は狭く確保される。これは、端末1は、移動方向へ移動しているため、今後、端末1のユーザは、これから向かう移動方向前方の情報を必要とすると考えられ、また、既に通過した移動方向後方の情報をさほど必要とはしないと考えられるからである。」
(段落【0037】及び【0038】)

1d)「【0050】
次に、制御部33は、サーバ3の機能を実行する。制御部33は、CPUで構成される。制御部33は、記憶部32に記録された処理用プログラムを読み込んで実行することにより、サーバ3の機能を実現する。制御部33は、状態取得部331と、範囲決定部332と、情報抽出部333とを備える。以下、状態取得部331と、範囲決定部332と、情報抽出部333とを説明する。
【0051】
まず、状態取得部331は、端末1の移動状態を算出する。状態取得部331は、端末1から端末1の位置情報を受信して、端末1の位置情報に基づいて移動状態を記憶する。本実施形態では、前述のとおり移動状態は、端末1の移動方向と移動速度である。状態取得部331は、算出された移動方向と移動速度とを、端末1の識別子に対応させて記憶しておく。
【0052】
図5を用いて、状態取得部331による移動状態の算出の考え方を説明する。図5は、本実施形態における端末1の位置情報と状態取得部331の算出する移動状態の関係を示した図である。状態取得部331は、端末1から連続して受信する二点の位置情報に基づいて移動状態を算出する。図5において、位置情報aと位置情報a’とは、端末1において、位置情報a’(時刻t’)、位置情報a(時刻t)の順番に連続して測定された位置情報である。状態取得部331は、位置情報a’と位置情報aとの座標に基づいて、位置情報a’と位置情報aとの距離を求める。また、位置情報a’の測定された時刻t'と位置情報aの測定された時刻tとに基づいて、測定時刻間の時間を求める。状態取得部331は、位置情報a’と位置情報aとの距離rとすると、図5に示すように、移動速度=距離(r)/(時刻t-時刻t’)と算出する。また、状態取得部331は、位置情報a’と位置情報aとの座標に基づいて、位置情報a’と位置情報aとを結んだ延長線である移動方向を求める。状態取得部331は、このようにして、移動方向と、移動速度とを算出する。
【0053】
次に、範囲決定部332は、検索範囲を決定する。範囲決定部332は、状態取得部331により算出された移動速度に基づいて、情報データベース34から閲覧情報を抽出するべき指定検索範囲を、範囲テーブル321から特定する。図3を参照して説明すると、例えば、状態取得部331が、端末1の移動速度を「7km/h」と算出したとすると、範囲決定部332は、範囲テーブル321を参照して、速度区分「4km/h以上10km/h未満」に対応する範囲情報「進行方向+300m,後方向+20m,右横方向+50m,左横方向+50m」を特定し、この範囲を指定検索範囲として決定する。
【0054】
次に、情報抽出部333は、閲覧情報を抽出する。情報抽出部333は、範囲決定部332により決定された指定検索範囲に基づいて、情報データベース34に登録された登録情報から指定検索範囲内の位置情報を持つ情報を閲覧情報として抽出する。以下に、情報抽出部333による閲覧情報の抽出処理について説明を行う。
【0055】
図6は、本実施形態における指定検索範囲が円の場合に、情報抽出部333よる閲覧情報の抽出処理を説明する図である。情報抽出部333は、現在の端末1の位置の座標を原点として、処理対象となる情報データベース34の情報(以下、処理対象情報)の座標が、次に示す数式(1)を満たすか否かにより、当該処理対象情報を閲覧情報と決定するか否かを判定する。
【0056】
(数式(1)略)
ここで、数式(1)のX,Yには、処理対象情報の座標(x,y)が対応する。例えば、一つの処理対象情報の点1(x1,y1)は、数式(1)を満たすため閲覧情報と決定される。一方、他の処理対象情報の点2(x2,y2)は、数式(1)を満たさないため閲覧情報とは決定されない。なお、上述において、現在の端末1の座標を原点としているため、処理対象情報の座標、点1(x1,y1)、点2(x2,y2)は、現在の端末1の座標との差分が取られて補正されている。つまり、点1(x1、y1)であれば、現在の端末1の座標(p,q)とすると、(X,Y)=(x1-p、y1-q)となる。
【0057】
次に、図7は、本実施形態における指定検索範囲が楕円の場合に、情報抽出部333よる閲覧情報の抽出処理を説明する図である。情報抽出部333は、現在の端末1の位置の座標を原点として、処理対象情報の座標が、次に示す数式(2)を満たすか否かにより、処理対象情報を閲覧情報と決定するか否かを判定する。
【0058】
(数式(2)略)
ここで、図3に示した「進行方向,後方向,右横方向,左横方向」は、図7の楕円、および数式(2)における「b,-b,a,-a」にそれぞれ対応する。数式(2)のX,Yには、処理対象情報の座標(x,y)が対応する。例えば、一つの処理対象情報の点1(x1,y1)は、数式(2)を満たすため閲覧情報と決定される。一方、他の処理対象情報の点2(x2,y2)は、数式(2)を満たさないため閲覧情報とは決定されない。なお、上述において、現在の端末1の座標を原点としているため、処理対象情報の座標、点1(x1,y1)、点2(x2,y2)は、現在の端末1の座標との差分が取られて補正されている。つまり、点1(x1、y1)であれば、現在の端末1の座標(p,q)とすると、(X,Y)=(x1-p、y1-q)となる。
【0059】
次に、図8は、本実施形態における指定検索範囲が楕円の場合に、移動方向の方向成分を考慮して情報抽出部333よる閲覧情報の抽出処理を説明する図である。情報抽出部333は、現在の端末1の位置の座標を原点として、処理対象情報の座標が、次に示す数式(3)を満たすか否かにより、処理対象情報を閲覧情報と決定するか否かを判定する。
【0060】
(数式(3)略)
ここで、図3に示した「進行方向,後方向,右横方向,左横方向」は、図8の楕円、および数式(3)における「b,-b,a,-a」にそれぞれ対応する。また、中心点(α,β)は、楕円の中心点であり、次に示す数式(4)により、(α’,β’)に補正されて数式(3)へ代入される。現在の端末1の座標は原点である。数式(3)のX’,Y’は、移動方向の方向成分を考慮して補正された処理対象情報の座標(x,y)が対応する。補正後のX’,Y’は、補正前のX,Yに、処理対象情報の座標(x,y)が代入され、次に示す数式(5)により算出され、数式(3)へ代入される。
【0061】
(数式(4)、(5)略)
例えば、一つの処理対象情報の点1(x1,y1)は、数式(3)を満たすため閲覧情報と決定される。一方、他の処理対象情報の点2(x2,y2)は、数式(3)を満たさないため閲覧情報とは決定されない。このようにして情報抽出部333は、指定検索範囲内の閲覧情報を抽出する。なお、上述において、現在の端末1の座標を原点としているため、処理対象情報の座標、点1(x1,y1)、点2(x2,y2)は、現在の端末1の座標との差分が取られて補正されている。つまり、点1(x1、y1)であれば、現在の端末1の座標(p,q)とすると、(X,Y)=(x1-p、y1-q)となる。
【0062】
以上が、状態取得部331と、範囲決定部332と、情報抽出部333との説明である。
【0063】
以上が、本実施形態における情報提供システムの構成の説明である。このように、本実施形態の情報提供システムでは、端末1の移動速度に応じた検索範囲を用いて、ユーザが閲覧するべき情報を抽出する。そのため、本実施形態の情報提供システムは、端末1の移動状態に応じた適切な範囲の情報を、端末1へ出力することができる。」(段落【0050】ないし【0063】)

1e)「【0071】
次に、本実施形態の情報提供システムにより端末1へ閲覧情報を提供する動作方法の説明を行う。図10は、本実施形態の情報提供システムにより端末1へ閲覧情報を提供する動作フローである。
【0072】
(ステップS10)
ユーザは、端末1の入力部12へ情報取得命令を入力する。情報取得要求には、例えば、「レストラン」といったような検索キーが含まれている。端末1の情報取得部151は、ユーザからの情報取得命令の入力を検知すると、入力された検索キーを含めた情報取得要求を、通信部13を介してサーバ13へ送信する。サーバ3の通信部31は、ネットワーク2を介して端末1からの情報取得要求を受信する。制御部33の状態取得部331は、端末1からの情報取得要求を入力して、端末1の状態算出動作を開始する。
【0073】
(ステップS20)
位置情報取得部11は、位置情報を取得する。制御部15は、情報取得要求を送信すると、位置情報取得部11へ位置情報取得を命令する。位置情報取得部11は、位置情報取得命令を受けて定期的な位置情報の取得を開始し、制御部15へ出力する。情報取得部151は、位置情報取得部11から定期的に位置情報を入力すると、位置情報と、位置情報の取得時刻と、端末1の識別子とを格納した位置情報通知メッセージを、通信部13を介してサーバ3へ送信する。なお、位置情報取得部11は、制御部15からの命令を受けて位置情報の取得を開始するのではなく、予め定期的に位置情報を取得していても良い。
【0074】
(ステップS30)
サーバ3の状態取得部331は、移動速度を算出する。状態取得部331は、通信部31を介して、端末1からの位置情報通知メッセージを入力する。状態取得部331は、位置情報通知メッセージに格納された位置情報と、位置情報の取得時刻とを、端末1の識別子に対応させて記憶する。状態取得部331は、図5で説明を行ったように、端末1から取得した連続する2点の位置情報と、位置情報の取得時刻に基づいて、端末1の移動速度を算出する。状態取得部331は、端末1から位置情報を取得する度に、端末1の移動速度を算出する。
【0075】
(ステップS40)
サーバ3の状態取得部331は、端末1の移動方向を算出する。状態取得部331は、移動速度を算出するのと同時に、端末1の移動方向を算出する。状態取得部331は、図5で説明を行ったように、移動速度の算出に用いる2点の位置情報に基づいて、端末1の移動方向を算出する。状態取得部331は、端末1から位置情報を取得する度に、端末1の移動方向を算出する。
【0076】
(ステップS50)
サーバ3の範囲決定部332は、指定検索範囲を取得する。記憶部32の範囲テーブル321は、図3で説明を行ったように、端末1の移動速度に検索範囲を対応させて記憶している。範囲決定部332は、状態取得部331により算出された端末1の移動速度に基づいて、範囲テーブル321から移動速度に対応する検索範囲を指定検索範囲として取得する。範囲決定部332は、状態取得部331が端末1の移動速度を算出する度に、範囲テーブル321から指定検索範囲を取得する。
【0077】
(ステップS60)
サーバ3の情報抽出部333は、閲覧情報を抽出する。情報抽出部333は、情報データベース34から閲覧情報を抽出する。情報データベース34は、図4で説明を行ったように、登録情報と登録情報の位置情報とを対応させて記録している。情報抽出部333は、図6から図8で説明を行ったように、情報データベース34に記録された登録情報のうちから、端末1の位置情報と移動方向を用いて、範囲決定部332により取得された指定検索範囲に含まれる閲覧情報を抽出する。
【0078】
(ステップS70)
端末1の表示部16は、閲覧情報を表示する。サーバ3の情報抽出部333は、抽出した閲覧情報を、通信部31を介して端末1へ送信する。端末1の情報取得部151は、通信部13を介して閲覧情報を受信する。制御部31の表示制御部152は、閲覧情報を表示部16へ表示する。閲覧情報は、情報の一覧として表示されても良いし、単に閲覧情報の件数のみを表示しても良い。また、地図情報に閲覧情報の位置を示して表示しても良いし、この場合、どの範囲が指定検索範囲であったのかをさらに明示しても良い。このような地図情報は、サーバ3の記憶部32や、情報データベース34や、端末1の記憶部14へ記憶させておく。また、端末1の移動中には、閲覧情報のタイトルや名称のみを表示しておき、端末1が静止したときに、閲覧情報の概要を追加して表示してもよい。これにより移動中の情報送受信量を少なくして、表示部16における視認性を高めることができる。さらに、閲覧情報に音声情報が含まれる場合には、端末1の図示されないスピーカやイヤホン等による音声出力部に音声が出力される。このとき、閲覧情報に複数の音声情報が含まれるときには、各音声の音の高さや音の種類を変えるなど、同時に複数の音声をユーザが聞き取れるように出力してもよい。」(段落【0071】ないし【0078】)

(2)上記(1)及び図1ないし図10から分かること
1f)上記(1)1e)段落【0076】の記載からみて、指定検索範囲は、状態取得部331により算出された端末1の移動速度、すなわち状態情報に基づいて範囲決定部332により決定されるものであり、
さらに、指定検索範囲は、位置情報である端末1の現在の位置を原点として定められることが、図6ないし図8及び上記(1)1d)段落【0055】ないし【0063】の記載からみて明らかであって、
上記(1)1e)段落【0077】及び【0078】において、指定検索範囲に含まれることにより抽出された閲覧情報は、地図情報に位置を示して表示されることが記載されていることから、
範囲決定部332は、取得された状態情報と、取得された位置情報とに基づいて、地図情報に位置が表示される閲覧情報を抽出するための指定検索範囲を決定することが分かる。

1g)(1)1c)段落【0038】の記載からみて、指定検索範囲を設定するにあたって、端末1が静止している場合は、端末1を中心として一定の半径の円の範囲を検索範囲としていることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図1ないし図10の記載を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「端末1の移動状態に関する状態情報を取得する状態取得部331と、
端末1の位置情報を取得する位置情報取得部11と、
取得された状態情報と、取得された位置情報とに基づいて、地図情報に位置が表示される閲覧情報を抽出するための指定検索範囲を決定する範囲決定部332と、
を備え、
範囲決定部332は、取得された状態情報と、取得された位置情報とに基づいて、端末1が静止している場合には、端末1を中心として一定の半径の円の範囲となるように、指定検索範囲を設定する、情報表示システム。」

2.本願補正発明と引用発明との対比・判断
引用発明における「端末1の移動状態に関する状態情報を取得する状態取得部331」は、上記1.(1)1b)段落【0019】の記載によれば、「端末1」は、ユーザが使用する携帯電話端末であって、技術常識からみてユーザとともに移動するものであること、及び、「移動状態に関する状態情報」は、上記1.(1)1c)段落【0037】の記載によれば、移動方向と移動速度であるから、本願補正発明における「ユーザの行動情報を取得する行動情報取得部」に相当し、
引用発明における「端末1の位置情報を取得する位置情報取得部11」は、上記1.(1)1b)段落【0019】の記載によれば、「端末1の位置情報」は、ユーザが使用する携帯電話端末であって、技術常識からみてユーザとともに移動するものであって、ユーザの現在地を示す情報に他ならないから、本願補正発明における「現在地情報を取得する位置情報取得部」に相当する。
さらに、引用発明における「状態情報」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願補正発明における「行動情報」に相当し、以下同様に、「位置情報」は「現在地情報」に、「地図情報に位置が表示される閲覧情報」は「地図上における選択対象」に、「抽出」は「選択」に、「指定検索範囲」は「選択範囲」に、「決定する」は「設定する」に、「範囲決定部332」は「選択範囲設定部」に、「情報表示システム」は「情報処理装置」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「範囲決定部332は、取得された状態情報と、取得された位置情報とに基づいて、端末1が静止している場合には、端末1を中心として一定の半径の円の範囲となるように、指定検索範囲を設定する」ことと、本願補正発明における「選択範囲設定部は、前記ユーザが移動していると認識された場合に、前記行動情報と、前記現在地情報とに応じて、前記ユーザが停止する停止位置を特定し、前記停止位置が前記選択範囲の中心となるように、前記選択範囲を設定する」こととは、「選択範囲設定部は、行動情報と、現在地情報とに応じて、選択範囲を設定する」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ユーザの行動情報を取得する行動情報取得部と、
現在地情報を取得する位置情報取得部と、
取得された前記行動情報と、取得された前記現在地情報とに応じて、地図上における選択対象を選択するための選択範囲を設定する選択範囲設定部と、
を備え、
前記選択範囲設定部は、前記行動情報と、前記現在地情報とに応じて、前記選択範囲を設定する、情報処理装置。」

[相違点]
「選択範囲設定部は、行動情報と、現在地情報とに応じて、選択範囲を設定する」ことに関して、本願補正発明においては、「選択範囲設定部は、ユーザが移動していると認識された場合に、行動情報と、現在地情報とに応じて、ユーザが停止する停止位置を特定し、停止位置が選択範囲の中心となるように、選択範囲を設定する」のに対して、引用発明においては、「範囲決定部332は、取得された状態情報と、取得された位置情報とに基づいて、端末1が静止している場合には、端末1を中心として一定の半径の円の範囲となるように、指定検索範囲を設定する」点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。

[相違点について]
地図上における選択対象を選択するための選択範囲を設定するにあたって、ユーザが鉄道などで移動していると認識された場合に、行動情報と現在地情報とに応じてユーザが停止する停止位置を特定し、停止位置が選択範囲の中心となるように選択範囲を設定することは周知の技術である(例えば、特開2004-295625号公報(段落【0066】ないし【0088】並びに図7及び図10の記載)、特開2009-168561号公報(段落【0070】ないし【0078】及び図10の記載)及び特開2009-204569号公報(段落【0138】ないし【0145】及び図2)を参照。)。
よって、引用発明の範囲決定部332において指定検索範囲を設定するにあたって、上記周知の技術を適用して、ユーザが移動していると認識された場合に、状態情報と位置情報とに応じてユーザが停止する停止位置を特定し、停止位置が選択範囲の中心となるように指定選択範囲を設定することにより、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明は、全体としてみても引用発明及び周知の技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

3.まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年9月2日提出の手続補正書により補正された明細書及び平成27年8月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の図面からみて、上記第2[理由][1](1)に記載したとおりのものである。

2.刊行物の記載等
原査定の理由に引用された刊行物及び引用発明は、上記第2[理由][3]1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2[理由][2]で検討した、「選択範囲を設定する」についての「ユーザが移動していると認識された場合」であることの限定を削除したものに相当する。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2[理由][3]2.に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-06 
結審通知日 2016-12-13 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2011-223848(P2011-223848)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01C)
P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 純一  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 松下 聡
三島木 英宏
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム  
代理人 亀谷 美明  

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