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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1324778
審判番号 不服2015-19031  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-22 
確定日 2017-02-28 
事件の表示 特願2014-520271「VLCコードワードを使用したシンタックス要素のコーディング」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月17日国際公開、WO2013/009845、平成26年 9月25日国内公表、特表2014-525180、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2012年7月11日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2011年7月11日 米国、2011年10月27日 米国、2012年7月10日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月18日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年10月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同時に手続補正がなされたものである。

第2.補正の適否
1.補正の内容
平成27年10月22日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の平成27年4月9日付けの手続補正による特許請求の範囲を補正するものであり、本件補正前及び本件補正後の特許請求の範囲は、それぞれ以下のとおりである。(下線は、審判請求人が示した補正箇所である。)
なお、以下、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?18に係る発明を項番にしたがい「補正前発明1」?「補正前発明18」、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明を項番にしたがい「補正発明1」?「補正発明14」という。

(補正前)
【請求項1】
コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行される、ビデオデータのブロックをコーディングする方法であって、
第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶することと、
ベクトルによって表される、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの少なくとも1つのエントリを再構成することと、
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することと
を備える、方法。
【請求項2】
ビデオデータの前記少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することが、ビデオデータの前記少なくとも1つのブロックに関連する少なくとも1つのシンタックス要素をコーディングするために、VLCテーブルの複数のアレイのうちのVLCテーブルのアレイを選択するために、前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の前記指示を記憶することが、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の対応するエントリとは異なる前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記少なくとも1つのエントリの値を記憶することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記少なくとも1つのエントリを再構成することが、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記対応するエントリを前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記少なくとも1つのエントリと交換することを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の前記指示を記憶することが、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記少なくとも1つのエントリと前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の少なくとも1つの対応するエントリとの間の差の値を記憶することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルを再構成することが、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記対応するエントリに前記差の前記値を加算するか、またはそこから減算することを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、ビデオエンコーダによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、ビデオデコーダによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするように構成されたデバイスであって、
第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶することと、
ベクトルによって表される、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの少なくとも1つのエントリを再構成することと、
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することと
を行うように構成されたプロセッサを備える、デバイス。
【請求項10】
ビデオデータの前記少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することが、ビデオデータの前記少なくとも1つのブロックに関連する少なくとも1つのシンタックス要素をコーディングするために、VLCテーブルの複数のアレイのうちのVLCテーブルのアレイを選択するために、前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することを備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の前記指示を記憶することが、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の対応するエントリとは異なる前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記少なくとも1つのエントリの値を記憶することを備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記少なくとも1つのエントリを再構成することが、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記対応するエントリを前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記少なくとも1つのエントリと交換することを備える、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の前記指示を記憶することが、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記少なくとも1つのエントリと前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の少なくとも1つの対応するエントリとの間の差の値を記憶することを備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルを再構成することが、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記対応するエントリに前記差の前記値を加算するか、またはそこから減算することを備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記プロセッサがビデオエンコーダを備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項16】
前記プロセッサがビデオデコーダを備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項17】
コンピューティングデバイスに、
第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶することと、
ベクトルによって表される、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの少なくとも1つのエントリを再構成することと、
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することと
を行わせるように構成された命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするように構成されたデバイスであって、
第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶するための手段と、
ベクトルによって表される、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶するための手段と、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの少なくとも1つのエントリを再構成するための手段と、
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用するための手段と
を備える、デバイス。

(補正後)
【請求項1】
コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行される、ビデオデータのブロックをコーディングする方法であって、
第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの一部のエントリを再構成することと、ここにおいて、前記一部のエントリは、前記差の前記記憶された指示に基づく、
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された一部のエントリを使用することと
を備える、方法。
【請求項2】
ビデオデータの前記少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することが、ビデオデータの前記少なくとも1つのブロックに関連する少なくとも1つのシンタックス要素をコーディングするために、VLCテーブルの複数のアレイのうちのVLCテーブルのアレイを選択するために、前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の前記指示を記憶することが、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記少なくとも1つのエントリと前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の少なくとも1つの対応するエントリとの間の差の値を記憶することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルを再構成することが、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記対応するエントリに前記差の前記値を加算するか、またはそこから減算することを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、ビデオエンコーダによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、ビデオデコーダによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするように構成されたデバイスであって、
第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの一部のエントリを再構成することと、ここにおいて、前記一部のエントリは、前記差の前記記憶された指示に基づく、
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された一部のエントリを使用することと
を行うように構成されたプロセッサを備える、デバイス。
【請求項8】
ビデオデータの前記少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することが、ビデオデータの前記少なくとも1つのブロックに関連する少なくとも1つのシンタックス要素をコーディングするために、VLCテーブルの複数のアレイのうちのVLCテーブルのアレイを選択するために、前記再構成された少なくとも1つのエントリを使用することを備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の前記指示を記憶することが、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記少なくとも1つのエントリと前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の少なくとも1つの対応するエントリとの間の差の値を記憶することを備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルを再構成することが、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル中の前記対応するエントリに前記差の前記値を加算するか、またはそこから減算することを備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記プロセッサがビデオエンコーダを備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項12】
前記プロセッサがビデオデコーダを備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項13】
コンピューティングデバイスに、
第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの一部のエントリを再構成することと、ここにおいて、前記一部のエントリは、前記差の前記記憶された指示に基づく、
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された一部のエントリを使用することと
を行わせるように構成された命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするように構成されたデバイスであって、
第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶するための手段と、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶するための手段と、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの一部のエントリを再構成するための手段と、ここにおいて、前記一部のエントリは、前記差の前記記憶された指示に基づく、
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された一部のエントリを使用するための手段と
を備える、デバイス。

2.補正事項
本件補正により、請求項3、4、11及び12が削除され、これに伴い補正後の請求項の番号が補正された。これは、特許法第17条の2第5項第1号(請求項の削除)を目的とする補正である。
また、本件補正は、補正前発明1、9、17、及び18における第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルのエントリの再構成に関し、補正前の「少なくとも1つのエントリ」を「一部のエントリ」とするとともに、該「一部のエントリ」について、「ここにおいて、前記一部のエントリは、前記差の前記記憶された指示に基づく、」とする補正事項を含んでいる。この補正事項は、本件明細書の段落【0066】?【0067】の記載に基づくものであり、「少なくとも1つのエントリ」を「一部のエントリ」という同等の表現に変えるとともに「差の前記記憶された指示に基づく」との限定を行うものであるから、特許法第17条の2第5項第2号(限定的減縮)を目的とする補正である。また、当該補正事項によって発明の特別な技術的特徴は変更されていない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項?第5項の規定に適合している。

3.独立特許要件
上述のとおり、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むことから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正発明1について
(1-1)補正発明1
補正発明1を以下に再掲し、説明のために(A)ないし(F)の記号を当審において付与した。以下、構成A、構成B等と称することにする。

(A)コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行される、ビデオデータのブロックをコーディングする方法であって、
(B)第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶することと、
(C)前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶することと、
(D)前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの一部のエントリを再構成することと、ここにおいて、前記一部のエントリは、前記差の前記記憶された指示に基づく、
(E)ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの前記再構成された一部のエントリを使用することと
(F)を備える、方法。

(1-2)引用発明及び引用文献の記載
(1-2-1)引用文献1について
原査定の理由に引用された上記引用文献1であるSunil Lee, et.al., "Efficient coefficient coding method for large transform in VLC mode", [online], 5 Oct. 2010, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11, Document: JCTVC-C210(version 2)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「2.2 Efficient coding of last non-zero coefficient in large transforms
Table 1 shows the mapping table of the VLC table indices used to code the last_pos in 16x16 transform. As shown in the table, different VLC table is used for the last_pos coding according to the color component, slice type, PU type, and the last_nonzero_pos_vlc_idxl6 variable. The definition, intialization, and update of the variable last_nonzero_pos_vlc_idx16 are exactly the same as those of the variable last_nonzero_pos_vlc_idx given in Section 3.6.1.2 of [5]. Note that the VLC3 and VLC4 tables are used to code the last_pos in 32x32 and 64x64 transforms, respectively, without the adaptation.」
(邦訳)
「2.2 大きな変換における最後の非ゼロ係数の効率的なコーディング
表1は、16x16変換におけるlast_posを符号化するために使用されるVLCテーブルインデックスのマッピングテーブルを示している。表に示すように、色成分、スライスタイプ、PUタイプ、及びlast_nonzero_pos_vlc_idx16変数にしたがって、異なるVLCテーブルがlast_pos符号化に使用される。変数last_nonzero_pos_vlc_idx16の定義、初期化、及び更新は、[5]の3.6.1.2節で与えられた変数last_nonzero_pos_vlc_idxの定義、初期化、及び更新と同じである。VLC3及びVLC4テーブルは、適応なしで、それぞれ32x32 および64x64変換のlast_posを符号化するために使用されることに留意されたい。」

イ.「


(邦訳)
「表1 16×16変換における最後の非ゼロ係数のためのVLCテーブルインデックス
(表1 省略)」

上記ア.?イ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮して引用文献1の記載を検討する。

(i)引用文献1は、「Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11」という会議における規格提案文書であることから、ビデオコーディングに関する技術について記載されたものである。そして、上記ア.に「2.2 大きな変換における最後の非ゼロ係数の効率的なコーディング」と記載されるように、変換に係る「コーディング」(符号化)技術について記載がある。上記ア.では、16x16変換における符号化について記載されているが、この「16x16」が、コーディング対象データ(すなわち、ビデオコーディングのためのデータであるからビデオデータであると認められる。)のブロックを表していることは符号化における技術常識である。
したがって、引用文献には、「ビデオデータのブロックをコーディングする方法」について記載されているといえる。

(ii)上記ア.に記載されるように、引用文献1には、表1に16x16変換における符号化に使用するVLCテーブルインデックスのマッピングテーブルが示されている。この表1は、例えば、last_nonzero_pos_vlc_idx16の0?16の値に対してChroma(U)行のVLCテーブルインデックス(10や2等)がマッピングされており、last_nonzero_pos_vlc_idx16の値によりVLCテーブルインデックスに対応するVLCテーブルが選択されてChroma(U)の符号化が行われる。
ここで、表1の前記last_nonzero_pos_vlc_idx16行及びChroma(U)行により構成されるテーブルは、Chroma(U)に係るVLCテーブルを選択するためのテーブルとなる。同様に表1の前記last_nonzero_pos_vlc_idx16行及びChroma(V)行により構成されるテーブルは、Chroma(V)に係るVLCテーブルを選択するためのテーブルとなる。そして、それぞれ16x16のブロックのChroma(U)、Chroma(V)を符号化(コーディング)するために、上記2つのテーブルにおいてマッピングされたVLCテーブルインデックス(10や2等)が用いられる。

(iii)上記(i)、(ii)のとおり、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。なお、説明のために(a)ないし(f)の記号を当審において付与した。以下、構成a、構成b等と称することにする。

(引用発明)
(a)ビデオデータのブロックをコーディングする方法であって、
(b)Chroma(U)に係るVLCテーブルを選択するためのテーブルを有することと、
(c)Chroma(V)に係るVLCテーブルを選択するためのテーブルを有することと、
(d)ビデオデータのブロックをコーディングするために、それぞれのテーブルのVLCテーブルインデックスが用いられることと
(e)を備える、方法。

(1-2-2)引用文献2
原査定の理由に引用された上記引用文献2である特開2000-134495号公報には、「色補正装置」(発明の名称)として図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が強調のために付したものである。

ウ.「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示した形態例によって詳細に説明する。
[第1の実施の形態]第1の実施の形態では、ある一つの色補正参照テーブルの色補正値を基準値とし、この基準値を用いてその他の色補正参照テーブルの色補正値を構成する一つの方式を挙げる。色補正参照テーブルは原稿種に対応しているものとし、印刷絵柄用の色補正値を基準値とする。図1は印画紙絵柄用の色補正値構成方式の一例(方式1)を示したものであり、説明を簡単にするために、入力色空間の一つの単位立方体に限定して構成方式を示している。まず、基準値である印刷絵柄用色補正値C_(i)(i=1,・・・,8)と印画紙絵柄用色補正値C’_(i)(i=1,・・・,8)との差分C^_(i )=C’_(i)-C_(i)をとり、閾値dを設定して絶対値と比較する。この例では、次のような結果が得られたと仮定する。」

エ.「【0011】[第2の実施の形態]第2の実施の形態では、ある一つの色補正参照テーブルの色補正値を基準値とし、基準値を用いてその他の色補正参照テーブルの色補正値を構成する、第1の実施の形態とは異なるもう一つの方式を挙げる。色補正参照テーブルは原稿種に対応しているものとし、印刷絵柄用の色補正値を基準値とする。図4は印画紙絵柄用の色補正値構成方式の一例(方式2)であり、第1の実施の形態の場合と同様、説明を簡単にするために、入力色空間の一つの単位立方体に限定して構成方式を示している。この方式で2は、第1の実施の形態における前記差分値C^_(i)(i=1,・・・,8)を予め求めておき、前記基準値C_(i )と足しあわせることによって印画紙絵柄用色補正値C’_(i )を算出する。この場合、メモリには印刷絵柄用色補正値C_(i )(i=1,・・・,8)に加えて、差分値C^_(i)(i=1,・・・,8)を格納しておけばよい。図5は、図4の色補正値構成方式を用いた場合のメモリ容量を表わしたものである。同図に示すように、一データあたりの記憶に要するビット数を削減することができる。これは、色補正値そのものよりも差分値の方が格段に小さい値であり、より少ないビット数で十分であるためである。図6は本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。基本的な動作の流れは図3の場合と同じであり、図3中の置換値格納メモリの代わりに差分値格納メモリ7bにアクセスする点が異なる。そして、原稿種選択信号が印画紙絵柄あるいはジェネレーション絵柄の場合、参照テーブル作成部4では、図4の方式に従って色補正値を構成し、色補正部2へ色補正値をロードする。以上のように、第2の実施の形態によれば、一原稿種に対応する色補正値を基準値として、その他の原稿種に関しては基準値からの差分を用いているため、色補正精度を落とすことなくメモリ容量を削減することができる。」

オ.「【図5】



上記ウ.?オ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用文献2には以下の技術事項が記載されている。

(引用文献2記載の技術事項)
「印刷絵柄用補正値C_(i)(i=1,・・・,8)と印画紙絵柄用補正値C’_(i )(i=1,・・・,8)を用いて色補正を行う色補正方法において、
印刷絵柄用補正値C_(i )と印画紙絵柄用色補正値C’_(i )との差分C^_(i)=C’_(i)-C_(i)を予め求め、基準値である印刷絵柄用補正値C_(i)(i=1,・・・,8)と差分値C^_(i)(i=1,・・・,8)とをメモリに格納しておき、前記基準値C_(i)と差分値C^_(i)を足しあわせることによって印画紙絵柄用色補正値C’_(i)を算出する色補正方法。」

(1-2-3)引用文献3の記載
原査定の理由に引用された上記引用文献3である特開2008-48098号公報には、「画像処理装置、ルックアップテーブルの設定方法」(発明の名称)として図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が強調のために付したものである。

カ.「(実施の形態4)
【0226】
図19は、本発明の実施の形態4に係る画像処理装置の機能構成を示している。
【0227】
図19に示すように、画像処理装置40は、画像処理回路200と、テーブル情報を格納するメモリ等の外部記憶領域210とを有している。

(中略)

【0235】
外部記憶領域(基本テーブル記憶手段、補間テーブル記憶手段)210は、所定の画像処理に対応する基本テーブルを記憶するとともに、この基本テーブルと設定すべき所定のルックアップテーブルとの差分の結果としての補間テーブルを記憶する。

(中略)

【0238】
例えば、画像処理装置40において、図20に示すように第1のLUT(LUT1)221と第2のLUT(LUT2)222とを実装する場合は、基本テーブルを第1のLUT221とし、第2のLUT222は第1のLUT221と補間テーブル230のデータ(補間テーブルデータ)とを基に作成する。

(中略)

【0261】
LUT設定値演算回路203は、第1のDMAコントローラ201の出力である基本テーブルデータと第2のDMAコントローラ202の出力である補間テーブルデータ(補間情報)とを基に、第1の画像処理用LUT205に設定すべき第2のLUT(LUT2)222の値(LUT設定値)をファームウェアで設定された演算方法で演算し(ステップS404)、この得算した結果をLUT演算制御回路204へ出力する。

(中略)

【0269】
本実施の形態4では、設定すべきLUTを求めるためのLUT設定値演算回路203による演算処理は、加算回路による加算処理としたが、本発明はこれに限定されることなく、次のようにしてもよい。」

「【図21】



上記カ.?キ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用文献3には以下の技術事項が記載されている。

(引用文献3記載の技術事項)
「第1のルックアップテーブル及び第2のルックアップテーブルを用いて画像処理を行う方法において、
第1のルックアップテーブルのデータと第2のルックアップテーブルのデータとの差分を補間テーブルのデータとし、基本テーブルである第1のルックアップテーブルと補間テーブルをメモリに格納しておき、基本テーブルである第1のルックアップテーブルの基本テーブルデータと補間テーブルデータとを加算して第2のルックアップテーブルデータを演算する画像処理方法。」

(1-2-4)引用文献4及び引用文献5の記載
原査定の理由に引用された上記引用文献4であるKemal Ugur, et.al., "Appendix to Description of video coding technology proposal by Tandberg Nokia Ericsson", [online], 23 April 2010, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,Document: JCTVC-A119_Appendix_Decoder_Descriptionには、図面とともに以下の事項が記載されている。

ク.「3.6.1.2 Position,levelID, and sign of the last nonzero transform coefficient
(中略)
The VLC table number,n (in VLCn) to be used is determined as follows:
VLC table number depends on idx that is defined in 3.x.x and context variable last_non_zero_idx[idx]. Entries of last_non_zero_vlc_idx: are initially 0 and are updated as the vlc codes are decoded. Table 17 lists the VLC table numbers to be used. To get a VLC table number, idx is used to select a row and nonzero_pos_vlc_idx[idx] indicates individual the element on the row. If nonzero_pos_vlc_idx[idx] is bigger than 16, the last element on the selected row is used.」
(邦訳)
「3.6.1.2 最後の非ゼロ変換係数の位置、レベルID及び符号
(中略)
使用されるVLCテーブル番号n(VLCnにおける)は、以下のように決定される。
VLCテーブル番号は、3.x.xで定義されたidxとコンテキスト変数last_non_zero_idx[idx]によって決まる。last_non_zero_idxのエントリは、最初は0であり、vlcテーブル番号を得るために、idxは行を選択するために使用され、nonzero_pos_vlc_idx[idx]は、行の要素を個別に示す。nonzero_pos_vlc_idx[idx]が16より大きい場合、選択された行の最後の要素が使用される。」

ケ.「



(邦訳)
「表17 last_nonzero係数のためのVLCテーブル番号
(表17 省略)」

また、原査定の理由に引用された上記引用文献5である"Test Model under Consideration(Output Document (draft000))", [online], 28 July 2010, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11, Document: JCTVC-B205には、図面とともに以下の事項が記載されている。

コ.「6,2.2.1 Parsing process for the position of last non-zero coefficient
Input to this process is context variable array lastPosVLC_idx.
The last_pos_table_idx syntax element is decoded from the bitstream using VLC table given by lpVLCTable[lastPosVLC_idx[ctxID]. The values of VLC table array lpVLCTable is given in the below table」
(邦訳)
「6.2.2.1 最後の非ゼロ係数の位置のための解析プロセス」
このプロセスへの入力は、コンテキスト変数アレイlastPosVLC_idxである。
last_Pos_table_idx構文要素は、lpVLCTable[lastPosVLC_idx[ctxID]によって与えられるVLCテーブルを使用してビットストリームから復号される。VLCテーブル配列lpVLCTableの値は下の表に示される。」

サ.「


(邦訳)
「最後の非ゼロ係数のためのVLCテーブル番号」
(表 省略)」

以上のとおり、引用文献4及び引用文献5には、VLCテーブルに関して同様な記載があり、上記ク.?サ.の記載及び関連する図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、以下の技術事項が開示されているといえる。

(引用文献4及び引用文献5記載の技術事項)
「一のインデックスに係る最後の非ゼロ係数のためのVLCテーブルを選択するためのテーブルを有することと、
他のインデックスに係る最後の非ゼロ係数のためのVLCテーブルを選択するためのテーブルを有することと、
それぞれのテーブルのVLCテーブルインデックスが用いられることと
を備える、方法。」

(1-3)対比
補正発明1と引用発明とを対比する。
(i)補正発明1の構成A、Fと引用発明の構成a、eの対比
引用発明のビデオデータのコーディングが、計算機要素のプロセッサによって行われることは自明のことに過ぎないので、引用発明の構成a「ビデオデータのブロックをコーディングする方法であって、」と補正発明1の構成A「コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行される、ビデオデータのブロックをコーディングする方法であって、」は一致する。したがって、引用発明と補正発明1の「方法」は、コーディングする「方法」である点で一致する。

(ii)補正発明1の構成Bと引用発明の構成bの対比
引用発明の「VLCテーブルを選択するためのテーブル」は、last_nonzero_pos_vlc_idx16変数の値(0?16)に応じて複数のテーブルの配列を選択するものであるから、VLCテーブルアレイを選択するテーブルということができ、また、引用発明の「Chroma(U)に係るVLCテーブル」を引用発明の構成cの「Chroma(V)に係るVLCテーブル」と区別するために前者を「第1のVLCテーブル」、後者を「第2のVLCテーブル」と呼称することは任意である。
また、引用発明のコーディングが、計算機要素において行われることは自明であるから、テーブルは計算機要素のメモリに記憶されるものである。
したがって、引用発明の構成b「Chroma(U)に係るVLCテーブルを選択するためのテーブルを有することと、」と補正発明1の構成A「第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶することと、」は一致する。

(iii)補正発明1の構成C、D、Eと引用発明の構成c、dの対比
上記(ii)で検討したことを踏まえれば、引用発明の構成cにおける「Chroma(V)に係るVLCテーブルを選択するためのテーブル」は、補正発明1における「第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル」に相当するものであって、メモリに記憶されるものである。
そして、引用発明では構成dのように「ビデオデータのブロックをコーディングするために、それぞれのテーブルのVLCテーブルインデックスが用いられる」のであるから、一方の「Chroma(V)に係るVLCテーブルを選択するためのテーブル」の「VLCテーブルインデックス」(すなわち「エントリ」)はビデオデータのコーディングに用いられている。
したがって、補正発明1の構成C、D、Eと引用発明の構成c、dとは、「ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルのエントリを使用することと」で共通する。
しかしながら、補正発明1では、「前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶することと、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの一部のエントリを再構成することと、ここにおいて、前記一部のエントリは、前記差の前記記憶された指示に基づく、」の構成を有し、ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルのエントリを使用する際に、「前記再構成された一部のエントリを使用する」ようにしているのに対し、引用発明では、第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶しているため、再構成するための構成を必要とせず、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルのエントリを使用する際に、記憶されたエントリを使用している点で相違している。

(iv)まとめ
上記(i)?(iii)によれば、補正発明1と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

<一致点>
「コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行される、ビデオデータのブロックをコーディングする方法であって、
第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶することと、
ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルのエントリを使用することと
を備える、方法。」

<相違点>
(相違点)
補正発明1では、「前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の少なくとも1つの差の指示を記憶することと、
前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルと第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルとの間の前記差の前記記憶された指示を使用して、前記第1のVLCテーブルアレイ選択テーブルに基づいて、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルの一部のエントリを再構成することと、ここにおいて、前記一部のエントリは、前記差の前記記憶された指示に基づく、」の構成を有し、ビデオデータの少なくとも1つのブロックをコーディングするために、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルのエントリを使用する際に、「前記再構成された一部のエントリを使用する」ようにしているのに対し、引用発明では、第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルをメモリに記憶しているため、再構成するための構成を必要とせず、前記第2のVLCテーブルアレイ選択テーブルのエントリを使用する際に、記憶されたエントリを使用している点で相違する。

(1-4)当審の判断
相違点について検討する。
引用発明では、補正発明1の「第1のVLCテーブルアレイ選択テーブル」、「第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル」にそれぞれ相当する、「Chroma(U)に係るVLCテーブルを選択するためのテーブル」、「Chroma(V)に係るVLCテーブルを選択するためのテーブル」をそれぞれメモリに記憶している。そして、ビデオデータのブロックをコーディングするために、「Chroma(V)に係るVLCテーブル」(第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル)のVLCテーブルインデックス(エントリ)が必要なときには、「Chroma(V)に係るVLCテーブル」(第2のVLCテーブルアレイ選択テーブル)に記憶された「VLCテーブルインデックス」(エントリ)そのものが用いられている。

ここで、引用文献2には、上記(1-2-2)に示したとおり、
「印刷絵柄用補正値C_(i)(i=1,・・・,8)と印画紙絵柄用補正値C’_(i )(i=1,・・・,8)を用いて色補正を行う色補正方法において、
印刷絵柄用補正値C_(i )と印画紙絵柄用色補正値C’_(i )との差分C^_(i)=C’_(i)-C_(i)を予め求め、基準値である印刷絵柄用補正値C_(i)(i=1,・・・,8)と差分値C^_(i)(i=1,・・・,8)とをメモリに格納しておき、前記基準値C_(i)と差分値C^_(i)を足しあわせることによって印画紙絵柄用色補正値C’_(i)を算出する色補正方法。」
という技術事項が、また、引用文献3には、上記(1-2-3)に示したとおり、
「第1のルックアップテーブル及び第2のルックアップテーブルを用いて画像処理を行う方法において、
第1のルックアップテーブルのデータと第2のルックアップテーブルのデータとの差分を補間テーブルのデータとし、基本テーブルである第1のルックアップテーブルと補間テーブルをメモリに格納しておき、基本テーブルである第1のルックアップテーブルの基本テーブルデータと補間テーブルデータとを加算して第2のルックアップテーブルデータを演算する画像処理方法。」
という技術事項が記載されている。
このように、引用文献2及び引用文献3に記載の技術事項は、『複数のテーブルのデータをメモリに格納するにあたり、メモリの量を削減するために、一のテーブルのデータを基本テーブルデータとし、他のテーブルのデータについては基本テーブルデータとの差分データを予め計算して差分データを格納し、他のテーブルが必要な際に、基本テーブルデータと前記差分データとにより他のテーブルを再構成する』というものであって、テーブルの「データ」に係るメモリの削減を目的としており、また、他のテーブルの再構成は、テーブル全体のデータを対象としている。

一方、上述したように、引用発明の各VLCテーブルのエントリは「VLCテーブルインデックス」であることから、引用文献2及び引用文献3に記載の技術事項のように「データ」(数値)をエントリとしたものでなく、引用発明と引用文献2及び引用文献3記載の技術事項とは、テーブルのエントリの対象が相違している。
また、引用発明の「VLCテーブルインデックス」により指示される「VLCテーブル」は、コーディングする際に用いられるものであって、適用されるVLCテーブルが1つ選択されて用いられるものである。これに対し、引用文献2及び引用文献3に記載の技術事項は、テーブル全体のデータを再構成したのち、テーブル全体の数値を特定の処理(色補正や画像処理)に用いるようにしている。このように、引用発明と引用文献2及び引用文献3記載の技術事項とは、テーブルのエントリの再構成における対象の範囲が相違している。
したがって、引用発明と引用文献2及び引用文献3記載の技術事項とを組み合わせることには論理の飛躍があり、相違点の構成を当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。

なお、引用文献4及び引用文献5には、上記(1-2-4)に示したとおり、
「一のインデックスに係る最後の非ゼロ係数のためのVLCテーブルを選択するためのテーブルを有することと、
他のインデックスに係る最後の非ゼロ係数のためのVLCテーブルを選択するためのテーブルを有することと、
それぞれのテーブルのVLCテーブルインデックスが用いられることと
を備える、方法。」
という技術事項が記載されており、引用発明と類似した技術を開示するものの、相違点に係る構成を記載もしくは示唆するものではない。
また、平成27年11月20日付け前置報告書に引用された引用文献6(国際公開第2010/146786号)、引用文献7(特表2009-512075号)、引用文献8(特開2000-244752号)は、「加算を行う際に、ゼロを加算する処理は省略する技術」を開示するものの、相違点に係る構成を記載もしくは示唆するものではない。

以上のとおりであるから、補正発明1が、引用発明及び引用文献2?8記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)請求項2ないし請求項14について
補正発明7、補正発明13、及び補正発明14は、補正発明1と発明のカテゴリや対象が相違(補正発明7、補正発明14は「デバイス」、補正発明13は「コンピュータ可読記憶媒体」)する発明であって、それらの発明は、補正発明1の構成B?構成Eと略同一の構成を有するものであるから、上記(1-3)における相違点と同様の相違点を有しており、上記(1-4)における判断と同じ理由により引用発明及び引用文献2?8に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、補正発明2?補正発明6は、直接的あるいは間接的に補正発明1を引用する発明であり、補正発明8?補正発明11は、直接的あるいは間接的に補正発明7を引用する発明であるから、それらの補正発明も、上記(1-3)における相違点と同様の相違点を有しており、上記(1-4)における判断と同じ理由により引用発明及び引用文献2?8に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、補正発明1?14は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

4.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項?第6項の規定に適合する。

第3.本願発明について
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項?第6項の規定に適合するから、本願の請求項1?14に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲1?14に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-13 
出願番号 特願2014-520271(P2014-520271)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 藤井 浩
渡辺 努
発明の名称 VLCコードワードを使用したシンタックス要素のコーディング  
代理人 福原 淑弘  
代理人 奥村 元宏  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  

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