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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C01G 審判 一部申し立て 1項2号公然実施 C01G 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 C01G |
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管理番号 | 1324835 |
異議申立番号 | 異議2016-700322 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-04-18 |
確定日 | 2016-12-26 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5798702号発明「リチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5798702号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第5798702号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 特許第5798702号の請求項3、4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第5798702号は、平成26年7月30日(パリ条約による優先権主張 2013年8月1日、日本国)を国際出願日とする特願2015-517533号について、平成27年8月28に設定登録がされ、その後、その請求項1、3、4に係る特許に対し、特許異議申立人 日揮触媒化成株式会社により特許異議の申立てがなされ、当審において平成28年9月15日付けで本件特許の請求項1、3、4に係る特許に対する取消理由が通知され、平成28年11月1日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がなされたものである。 第2.訂正の請求 1.訂正の内容 平成28年11月1日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1?6に係る訂正を請求するものである。 (ア)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (イ)訂正事項2 同じく特許請求の範囲の請求項2において、 「前記原料混合組成物のS含有量及びNa含有量を測定し、」の前に、 「スピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物、層構造を備えたリチウムマンガン含有複合酸化物、又は、オリビン構造を備えたリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法において、 硫黄(S)元素を含有し、且つ、ナトリウム(Na)元素を0.1質量%以上含有するマンガン原料としての二酸化マンガンと、リチウム原料と、他の金属原料とを混合して原料混合組成物を調製し、」を追記する。 (ウ)訂正事項3 同じく特許請求の範囲の請求項2において、 「SとNaのモル比率(S/Na)が0.4より高くなるように調整することを特徴とする」を、 「SとNaのモル比率(S/Na)が0.4より高くなるように調整した後、該原料混合組成物を500℃以上で焼成することを特徴とする」と訂正する。 (エ)訂正事項4 同じく特許請求の範囲の請求項2において、 「、請求項1に記載のリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法」を、 「リチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法」と訂正する。 (オ)訂正事項5 同じく特許請求の範囲の請求項3における「請求項1又は2に記載の」を、「請求項2に記載の」と訂正する。 (カ)訂正事項6 同じく特許請求の範囲の請求項4における「請求項1?3の何れかに記載の」を、「請求項2又は3に記載の」と訂正する。 2.訂正の適否 (ア)訂正事項1について 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 (イ)訂正事項2?4について 訂正事項2?4は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用して記載されていたところを、請求項1の記載を引用しないものとする訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、当該訂正事項2?4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 (ウ)訂正事項5および6について 訂正事項5および6は、訂正前の請求項3および4から請求項1を引用する発明を除く訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項5および6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。 (エ)一群の請求項について 訂正前の請求項1?4は、請求項2?4が訂正の請求の対象である請求項1を引用する関係にあるから訂正前において一群の請求項に該当するものであって、訂正事項1?6は、一群の請求項についてされたものである。 よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項および第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを認める。 第3.本件発明 上記第2に記載したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?4に係る発明は、平成28年11月1日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】スピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物、層構造を備えたリチウムマンガン含有複合酸化物、又は、オリビン構造を備えたリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法において、 硫黄(S)元素を含有し、且つ、ナトリウム(Na)元素を0.1質量%以上含有するマンガン原料としての二酸化マンガンと、リチウム原料と、他の金属原料とを混合して原料混合組成物を調製し、 前記原料混合組成物のS含有量及びNa含有量を測定し、原料混合組成物に含有されるSとNaのモル比率(S/Na)が0.4以下である場合には、当該二酸化マンガンに、Sを含む物質を加えることにより前記原料混合組成物に含有されるSとNaのモル比率(S/Na)が0.4より高くなるように調整するか、或いは、前記原料混合組成物にSを加えることにより前記原料混合組成物に含有されるSとNaのモル比率(S/Na)が0.4より高くなるように調整した後、該原料混合組成物を500℃以上で焼成することを特徴とするリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法。 【請求項3】 層構造を有するリチウムマンガン含有複合酸化物以外のリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法において、前記の焼成をした後、リチウムマンガン含有複合酸化物を洗浄することを特徴とする、請求項2に記載のリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法。 【請求項4】 前記他の金属原料の金属元素が、Al、Mg、Ca、Ti、Ba、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法。」 第4.特許異議の申立てについて 特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1?17号証(以下、「甲1?17」という。)を提出し、下記申立理由1)?3)により、訂正前の請求項1、3、4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである旨、主張している。 [証拠] 甲第1号証:別件訴訟(平成24年(ワ)第30098号)において本件特許権者により提出された実験成績証明書(2012年10月16日付け) 甲第2号証:別件訴訟(平成24年(ワ)第30098号)において本件特許権者により提出された訴状(平成24年10月23日付け) 甲第3号証:別件訴訟(平成24年(ワ)第30098号)において本件特許権者により提出された証拠説明書(平成24年10月23日付け) 甲第4号証:別件訴訟(平成24年(ワ)第30098号)の判決書(平成26年7月10日判決言渡) 甲第5号証:別件訴訟(平成24年(ワ)第30098号)の提起前に本件特許権者から本件特許異議申立人に対して送付された警告書(平成24年3月22日付け) 甲第6号証:特開平10-188979号公報 甲第7号証:特開平10-340726号公報 甲第8号証:特開平10-302795号公報 甲第9号証:特開2000-306577号公報 甲第10号証:特開2001-64020号公報 甲第11号証:D.Larcher et al.、Synthesis of MnO2 Phases from LiMn_(2)O_(4) in Aqueous Acidic Media、Journal of the Electrochemical Society、(米国)、Vol.145、No.10、October 1998、第3392-3400頁及び抄訳文 甲第12号証:D.Glover、B.Schumm、Jr.and A.Kozawa(Eds.)、Handbook of ManganeseDioxides Battery Grade、(米国)、International Battery Material Association、1989、表紙、表紙裏、iii頁?v頁、22頁及び23頁並びに抄訳文 甲第13号証:L.A.H.MacLean、The Structureof Manganese Dioxide-Hydrogen Insertion Compounds and Some Related Stability Studies、(英国)、March 1993、表紙、要約及び第60頁並びに抄訳文 甲第14号証:特開2002-304990号公報 甲第15号証:特開2000-327332号公報 甲第16号証:David Linden編、「最新 電池ハンドブック」、初版、株式会社朝倉書店、1996年12月20日発行、表紙、第133?134頁及び奥付 甲第17号証:電池便覧編集委員会編、「電池便覧 第3版」、丸善株式会社、平成13年2月20日発行、表紙、第82頁及び奥付 [申立理由] 1)本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。 2)本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 3)本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において公然実施された発明、または、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5.判断 1.請求項1について 本件訂正によって請求項1が削除されたため、請求項1に係る申立理由1)?3)は、対象となる発明の特許が存在しないものとなった。 2.請求項3、4について 「訂正前の請求項3」、「訂正前の請求項4」は、順に、「訂正前の請求項1又は2」、「訂正前の請求項1?3のいずれか」を引用するものである。 そして、請求項3、4に係る申立理由1)?3)は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3、4の発明に係る申立理由であるところ、本件訂正によって請求項1が削除されたため、訂正後の請求項3、4は、対象となる発明の特許を包含しないものとなった。 すなわち、訂正後の請求項3、4は、訂正前の請求項2に係る「前記原料混合組成物のS含有量及びNa含有量を測定し、原料混合組成物に含有されるSとNaのモル比率(S/Na)が0.4以下である場合には、当該二酸化マンガンに、Sを含む物質を加えることにより前記原料混合組成物に含有されるSとNaのモル比率(S/Na)が0.4より高くなるように調整するか、或いは、前記原料混合組成物にSを加えることにより前記原料混合組成物に含有されるSとNaのモル比率(S/Na)が0.4より高くなるように調整した後、該原料混合組成物を500℃以上で焼成すること」との特定事項を有するものであるのに対して、斯かる点については、甲1?17に何ら記載も示唆もされていないから、当業者が容易になし得たことといえない。 よって、訂正後の請求項3、4に係る発明の特許を申立理由1)?3)によって取り消すことはできない。 第6.むすび 以上のとおり、申立理由1)?3)によっては、訂正後の請求項3、4に係る発明の特許を取り消すことはできない。 そして、本件訂正により、請求項1に係る発明の特許は存在しなくなったので、請求項1に係る発明の特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】 スピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物、層構造を備えたリチウムマンガン含有複合酸化物、又は、オリビン構造を備えたリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法において、 硫黄(S)元素を含有し、且つ、ナトリウム(Na)元素を0.1質量%以上含有するマンガン原料としての二酸化マンガンと、リチウム原料と、他の金属原料とを混合して原料混合組成物を調製し、 前記原料混合組成物のS含有量及びNa含有量を測定し、原料混合組成物に含有されるSとNaのモル比率(S/Na)が0.4以下である場合には、当該二酸化マンガンに、Sを含む物質を加えることにより前記原料混合組成物に含有されるSとNaのモル比率(S/Na)が0.4より高くなるように調整するか、或いは、前記原料混合組成物にSを加えることにより前記原料混合組成物に含有されるSとNaのモル比率(S/Na)が0.4より高くなるように調整した後、該原料混合組成物を500℃以上で焼成することを特徴とするリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法。 【請求項3】 層構造を有するリチウムマンガン含有複合酸化物以外のリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法において、前記の焼成をした後、リチウムマンガン含有複合酸化物を洗浄することを特徴とする、請求項2に記載のリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法。 【請求項4】 前記他の金属原料の金属元素が、Al、Mg、Ca、Ti、Ba、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のリチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2016-12-15 |
出願番号 | 特願2015-517533(P2015-517533) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YAA
(C01G)
P 1 652・ 113- YAA (C01G) P 1 652・ 112- YAA (C01G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 延平 修一 |
特許庁審判長 |
大橋 賢一 |
特許庁審判官 |
新居田 知生 山本 雄一 |
登録日 | 2015-08-28 |
登録番号 | 特許第5798702号(P5798702) |
権利者 | 三井金属鉱業株式会社 |
発明の名称 | リチウムマンガン含有複合酸化物の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所 |
代理人 | 高見 憲 |
代理人 | 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所 |
代理人 | 山口 建章 |
代理人 | 鮫島 正洋 |