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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
管理番号 1324845
異議申立番号 異議2016-700308  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-13 
確定日 2017-01-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5794780号発明「超吸収体の計量供給方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5794780号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第5794780号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5794780号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2008年9月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年9月12日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年8月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成28年4月13日付け(受理日:同年4月14日)で特許異議申立人 株式会社 日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において同年7月6日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年10月5日付け(受理日:同年10月6日)で特許権者 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアから意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年10月17日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年11月18日付け(受理日:同年11月21日)で特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成28年10月5日付け(受理日:同年10月6日)でされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「計量供給される超吸収体を、6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理し、」とあるのを、「計量供給される超吸収体を、周囲温度及び周囲湿度下において、6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理し、」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2ないし8についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7に、「1500g/モル未満の平均分子量を有するポリエチレングルコール」とあるのを、「1500g/モル未満の平均分子量を有するポリエチレングリコール」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項7を引用する請求項8についても、請求項7を訂正したことに伴う訂正をする。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1ないし8に係る発明において、どのような温度条件及び湿度条件で自由降伏強度を測定して、「計量供給される超吸収体」を「6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理」するのか明確でなかったものを、温度条件及び湿度条件を「周囲温度及び周囲湿度下」と特定することによって、どのような温度条件及び湿度条件で自由降伏強度を測定して、「計量供給される超吸収体」を「6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理」するのかを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、願書に添付した明細書の段落【0091】の「この発明に従って、超吸収体は、6kPaの圧密応力sigma_1にて少なくとも0.75kPaの自由降伏強度fcを有するように選択され、またはそれがこの範囲内のfc値をその"ありのままの"状態で有さない場合、該範囲内のfc値を得るために凝集制御剤で処理される。」という記載における「その"ありのままの"状態」とは、超吸収体を凝集制御剤で処理する際の超吸収体のそのままの状態、つまり、何ら意図的に制御されていない周囲環境下において、超吸収体があるがままの状態にあることを意味し、かかる状態を「周囲温度及び周囲湿度下において」という言葉で定義することができることは明らかであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正前の請求項7の「ポリエチレングルコール」という記載は、願書に添付した明細書の段落【0096】の「好ましい凝集制御剤は、1,2-プロピレングリコール、1500g/モル未満の平均分子量を有するポリエチレングリコール、シリコーンオイル、および親水性変性シリコーンオイルである。」という記載からみて、「ポリエチレングリコール」の誤記であることは明らかであり、訂正事項2は、その誤記を訂正するものであるから、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、上記のとおり、明らかな誤記の訂正であり、願書に添付した明細書の段落【0096】の記載に基づくものでもあるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)一群の請求項
訂正前の請求項2ないし8は訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし8は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1及び2は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものである。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1及び2は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書き第3号及び第2号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1及び2は、一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、訂正事項1及び2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項1ないし8について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項1ないし8について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、平成28年10月5日付け(受理日:同年10月6日)で提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
粒状固体でありかつ透過性増強剤で処理された超吸収体の計量供給方法であって、表面架橋されている超吸収体に、または表面架橋と同時に、または部分的に同時に且つ部分的に表面架橋後に、透過性増強剤を適用し、かつ計量供給される超吸収体を、周囲温度及び周囲湿度下において、6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理し、スクリューコンベヤーを用いて前記処理した超吸収体の輸送を行うことにより、前記超吸収体を連続的に正確かつ高速に計量供給できる、超吸収体の計量供給方法。
【請求項2】
一軸スクリューを用いる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
二軸スクリューを用いる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記凝集制御剤が、20℃にて少なくとも20mPasであり、且つ1000mPasを上回らない粘度を有する非水性液体である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記凝集制御剤が、アルコール、ポリグリコール、シリコーンオイル、親水性変性シリコーンオイルおよびパラフィンオイルからなる群から選択された少なくとも1つの試剤である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記凝集制御剤が、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオールおよび1,4-ブタンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコール、シリコーンオイル、および親水性変性シリコーンオイルからなる群から選択された少なくとも1つの試剤である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記凝集制御剤が、1,2-プロピレングリコール、1500g/モル未満の平均分子量を有するポリエチレングリコール、シリコーンオイルおよび親水性変性シリコーンオイルからなる群から選択された少なくとも1つの試剤である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記凝集制御剤が、材料の全量に対して、少なくとも100質量ppmおよびせいぜい5000質量ppmの量で使用される、請求項4から7までのいずれか1項記載の方法。」

2 取消理由の概要
取消理由の概要は次のとおりである。

「(明確性)本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

第1 本件発明
・・・(略)・・・
第2 取消理由(明確性)について
請求項1ないし8の記載によると、本件発明1ないし8は、いずれも、「計量供給される超吸収体を、6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理」することを、その発明特定事項とするものである。 ところで、特許異議申立書に添付された甲第13号証の1(翻訳文として、特許異議申立書に添付された甲第13号証の2を参照。)に記載されているように、超吸収体が吸湿して粉体流動性を失うことは当業者の技術常識であり、また、特許異議申立書に添付された甲第10号証に記載されているように、測定時の湿度条件により超吸収体の自由降伏強度の値は変動するものである。
しかし、請求項1ないし8には、自由降伏強度を測定する際の湿度条件に関して何ら記載されておらず、また、本件特許の願書に添付された明細書にも、自由降伏強度を測定する際の湿度条件に関して何ら記載されていない(本件特許の願書に添付された明細書の段落【0107】には、自由降伏強度の測定方法は、ASTM Standard D 6773-02に記載されている旨記載されているが、自由降伏強度を測定する際の湿度条件については記載されていないし、ASTM Standard D 6773-02において、自由降伏強度を測定する際の湿度条件が規定されているともいえない。また、同じく段落【0112】、【0114】及び【0115】には、凝集制御剤で処理することは記載されているが、自由降伏強度を測定する際の湿度条件については記載されていない。)。
したがって、請求項1ないし8の記載では、どのような湿度条件で自由降伏強度を測定して、「計量供給される超吸収体を、6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理」するのか明確でなく、本件発明1ないし8は明確でない。
よって、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・・・(略)・・・」

3 取消理由についての判断
本件特許発明1ないし8は、上記第3 1のとおりであり、周囲温度及び周囲湿度下において、自由降伏強度を測定して、「計量供給される超吸収体を、6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理」するものである。
したがって、どのような湿度条件で自由降伏強度を測定して、「計量供給される超吸収体を、6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理」するのかは明確である。
よって、本件特許発明1ないし8は明確でないとはいえず、取消理由は解消した。

4 むすび
以上のとおりであるから、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。

なお、平成28年11月18日付け(受理日:同年11月21日)で特許異議申立人が提出した意見書も検討したが、請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。

第4 結語
上記第3のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状固体でありかつ透過性増強剤で処理された超吸収体の計量供給方法であって、表面架橋されている超吸収体に、または表面架橋と同時に、または部分的に同時に且つ部分的に表面架橋後に、透過性増強剤を適用し、かつ計量供給される超吸収体を、周囲温度及び周囲湿度下において、6kPaの圧密応力で0.75から1.5kPaの自由降伏強度を有するように凝集制御剤で計量供給前に処理し、スクリューコンベヤーを用いて前記処理した超吸収体の輸送を行うことにより、前記超吸収体を連続的に正確かつ高速に計量供給できる、超吸収体の計量供給方法。
【請求項2】
一軸スクリューを用いる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
二軸スクリューを用いる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記凝集制御剤が、20℃にて少なくとも20mPasであり、且つ1000mPasを上回らない粘度を有する非水性液体である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記凝集制御剤が、アルコール、ポリグリコール、シリコーンオイル、親水性変性シリコーンオイルおよびパラフィンオイルからなる群から選択された少なくとも1つの試剤である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記凝集制御剤が、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオールおよび1,4-ブタンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリブチレングリコール、シリコーンオイル、および親水性変性シリコーンオイルからなる群から選択された少なくとも1つの試剤である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記凝集制御剤が、1,2-プロピレングリコール、1500g/モル未満の平均分子量を有するポリエチレングリコール、シリコーンオイルおよび親水性変性シリコーンオイルからなる群から選択された少なくとも1つの試剤である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記凝集制御剤が、材料の全量に対して、少なくとも100質量ppmおよびせいぜい5000質量ppmの量で使用される、請求項4から7までのいずれか1項記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-12-21 
出願番号 特願2010-524492(P2010-524492)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲吉▼澤 英一  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 橋本 栄和
加藤 友也
登録日 2015-08-21 
登録番号 特許第5794780号(P5794780)
権利者 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
発明の名称 超吸収体の計量供給方法  
代理人 篠 良一  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 篠 良一  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 礒山 朝美  
代理人 久野 琢也  
代理人 礒山 朝美  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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