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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B22D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B22D |
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管理番号 | 1324864 |
異議申立番号 | 異議2016-700978 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-10-11 |
確定日 | 2017-01-24 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5926230号発明「注入ノズル、注入ノズルの押し付け装置及び鋳造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5926230号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5926230号の請求項1?5に係る特許についての出願は、2004年1月19日を国際出願日とする出願である特願2006-500421号(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年1月20日 欧州特許庁)の一部を、数次の分割を経て、平成25年11月11日に新たな出願としたものであって、平成28年4月28日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 田中 和幸により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 特許第5926230号の請求項1?5の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3.申立理由の概要 特許異議申立人は、以下の2つの理由により本件発明に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)理由1 証拠として(甲第1号証)特開2002-153950号公報、(甲第2号証)米国特許第4669528号明細書、(甲第3号証)特開平2-280950号公報、(甲第4号証)国際公開第95/30501号(以下、各々「刊行物1」、「刊行物2」等という。)を提出し、請求項1?5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 (2)理由2 請求項1?5に係る特許は同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 4.刊行物の記載 (1)刊行物1には、「連続鋳造用浸漬ノズル」に関する発明が記載され、当該ノズルの形状に関し、図1にノズル内孔3を備え、ノズル本体2の上端にフランジ状のヘッド5が一体成形されたものが記載されている。また、当該ノズルをヘッド5の下面5cにてスライドかつ支承するスライドガイド12を伴うノズル交換装置の存在も記載されている。 (2)刊行物2には、「DEVICE FOR INTRODUCING AND EXCHANGING A CASTING TUBE」に関する発明が記載され、レバー12、12’の端部に搭載されたガイドレール9,9’がバネ10、10’の作用で上向きのスラスト力をノズルに対して付与するとした技術的事項が記載されている。 (3)刊行物3には、「溶融金属排出用ノズル装置」に関する発明が記載され、従来例とされた第3図のノズル装置、本発明とされたノズル装置は、段差部であるホルダ部分がテーパ面とされたノズル形状が記載され、当該ノズルを支承する受け部材及び金属製ホルダを備えたとする技術的事項が記載されている。 (4)刊行物4には、「浸漬ノズルの交換装置」に関する発明が記載され、第5図および第6図にはテーパ面が形成されたノズル47が、第1図、第6図、第7図にはノズル47に装着される四角形状のノズルケース48を伴った上で、ガイドアーム44のガイドレール45にスライド可能とされる旨が記載されている。 5.判断 (1)理由1(特許法第29条第2項)について ア.請求項1に係る発明について 請求項1に係る発明と刊行物1ないし刊行物4に記載された発明とを対比すると、当該刊行物1ないし刊行物4のいずれにも、「二つの平坦な支承面であって、注入路の軸と45°の角度をなすとしたものが形成された」ノズルが記載されていない。したがって、請求項1に係る発明は、上記刊行物1ないし刊行物4に記載された発明ないし技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。 特許異議申立人は、上記「二つの平坦な支承面であって、注入路の軸と45°の角度をなすとしたものが形成された」ノズルについて、甲1発明に記載されていない相違点1となるものの、当該相違は甲第3号証にテーパ部5として記載され、甲第4号証にも二つのテーパ部を有すると記載されているから、当該分野で当業者に周知といえ、容易に発明できたものであると主張している(異議申立書第13ページ第9行-19行参照)が、甲第3号証のテーパ部5は、平坦ではなく、二つの支承面としては形成されない単一の円錐面であることが、このテーパ部を支承する受け部材の形状から見ても明らかであるから、請求項1にかかる発明の特定事項と一致しない。また、甲第4号証に関し異議申立人は第5図および第6図にて二つのテーパ部を有する点を看取できるとしている(異議申立書第12ページ第2-4行参照)ものの、第5図図示から見てとれるとおり、ノズルは単一の傾斜面を備える点が明らかであるから、テーパ部の個数は1つであって、二つの平坦な支承面とされていない。そうすると、当該相違点1は当業者に周知なものということができず、かかる主張は理由がない。 イ.請求項2ないし5に係る発明について 請求項2ないし5に係る発明は、請求項1の注入ノズルを挿入及び除去する装置を請求した特許発明であって、「二つの支承面(5)」が「注入路の軸(7)と45°の角度βをなすこと」とされた事項に対応して、「レールガイドシステム」が「注入ノズルの注入路の軸と45°の角度βをなす支承面を有する」との事項、及び「押し付け装置(8)」が「注入ノズルのノズルプレートの二つの平坦な支承面(5)に、注入路の軸に対して斜めの方向であり、注入路に向かう方向の力を付与」し、かつ、「前記力は注入路の軸と45°の角度αをなす方向に付与される」との事項を共通して有する発明である。 そうすると、上記刊行物1ないし4に記載された発明ないし技術的事項には、元々注入ノズルとして二つの平坦な支承面であって、注入路の軸と45°の角度をなすとしたものが形成されたとする事項を伴うものはないとされる以上、上記アと同様の理由により、請求項2ないし5に係る発明も、これらの刊行物1ないし4から当業者が容易になし得るものではない。 以上のとおり、請求項1?5に係る発明は、刊行物1ないし4に記載された発明ないし技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)理由2(特許法第36条第6項第1号)について 特許異議申立人は、本件の特許明細書には、本件特許発明の「注入ノズル」に対する特定事項である「二つの平坦な支承面であって、注入路の軸と45°の角度をなすとしたものが形成された」点が、段落0022に対応する記載がなされているだけであって、ノズルの維持に関連した応力の結果や、角度βが90°以外の場合と比較した結果の違いについてなんら示されていないことを挙げて、発明の作用効果との関係で角度βを45°とした技術的理由を十分に理解することができないとし、発明の詳細な説明において開示された内容を超えて拡張ないし一般化した記載不備があると主張している(異議申立書第18ページ下から9行-19ページ第10行参照)が、特許異議申立人が挙げた理由を見てみると、発明の詳細な説明の記載が十分に理解できないとしているため、特許法第36条第6項第1号に規定された要件と対応しない理由と判断される。加えて、開示範囲を超えた拡張ないし一般化した記載不備の発生について、特許異議申立人は、開示された内容と発明特定事項との対応をなんら示さず申立てをなしているのが明らかであるし、そのような開示範囲を超えた拡張ないし一般化が特許請求の範囲に発生しているとも認められない。更に、申立てに起因した角度βを45°とする事項は、発明の詳細な説明の【0022】だけでなく【0029】-【0030】にも開示がなされており、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないとすることができない。 6.むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-01-11 |
出願番号 | 特願2013-233449(P2013-233449) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B22D)
P 1 651・ 537- Y (B22D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 酒井 英夫 |
特許庁審判長 |
栗田 雅弘 |
特許庁審判官 |
長清 吉範 西村 泰英 |
登録日 | 2016-04-28 |
登録番号 | 特許第5926230号(P5926230) |
権利者 | ベスビウス グループ,ソシエテ アノニム |
発明の名称 | 注入ノズル、注入ノズルの押し付け装置及び鋳造装置 |
代理人 | 亀松 宏 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 中村 朝幸 |
代理人 | 永坂 友康 |