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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1324882
異議申立番号 異議2016-701030  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-01 
確定日 2017-02-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第5930899号発明「板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5930899号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5930899号に係る出願は、平成24年7月20日にされたものであり、平成28年5月13日に特許の設定登録がされた。本件特許異議申立は、その特許に対し、特許異議申立人西郷新(以下、「異議申立人」という。)から平成28年11月1日にされたものである。

第2 本件発明

特許第5930899号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
200℃、49N荷重で測定したメルトマスフローレイト(MFR)が6.0超10グラム/10分未満であり、重量平均分子量(Mw)が15?25万であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5?5.0であり、そしてZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.0?3.0であることを特徴とする板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物を押出発泡してなる板状押出発泡体。」

第3 特許異議の申立ての概要

特許異議申立人は、証拠として甲第1号証(特許第3907285号公報:以下、「甲1」という。)、甲第2号証(特開2001-19787号公報:以下、「甲2」という。)、甲第3号証(特開2009-275184号公報:以下、「甲3」という。)、甲第4号証(特開2009-275185号公報:以下、「甲4」という。)、甲第5号証(特開平5-214147号公報:以下、「甲5」という。)を提出し、本件発明1及び2は、甲1に記載された発明、甲1ないし4に記載された発明、又は、甲3ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。

第4 当審の判断

1.甲1ないし5に記載された事項並びに甲1及び5に記載された発明

(1)甲1に記載された事項並びに甲1に記載された発明

ア 甲1に記載された事項

甲1には、以下の事項が記載されている(以下、「甲1の記載事項」という。)。

(ア)「【請求項1】
ゲルパーミエイション・クロマトグラフィーで測定した重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが2.5?3.5であり、Z平均分子量Mzと重量平均分子量Mwの比Mz/Mwが2.0?3.5であり、重量平均分子量Mwが17万?35万であるポリスチレン系樹脂を押出発泡して得られる密度が0.01?0.05g/cm3 、平均気泡径が0.01?0.8mm、独立気泡率が90%以上であるポリスチレン系樹脂板状押出発泡体。
【請求項2】
Mz/Mwが2.2?3.5である請求項1記載のポリスチレン系樹脂板状押出発泡体。
【請求項3】
Mwが17万?28万である請求項1又は2記載のポリスチレン系樹脂板状押出発泡体」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出発泡法によるポリスチレン系樹脂発泡体、及びその製法に関する。更に詳しくは、微細な気泡を有し、且つ低密度、高発泡倍率、高い独立気泡率であり、断熱効果に優れ、そのため施工時の厚みを薄くできるポリスチレン系樹脂押出発泡体を、安定した条件で、且つ、優れた生産性で製法することができるポリスチレン系樹脂発泡体、及びその製法に関する。」

(ウ)「【0002】
【従来の技術】
ポリスチレン系樹脂の板状の押出発泡体は、主に断熱を目的として、一般建築物や冷凍倉庫の床材や壁材、天井材、畳の芯材などのさまざまな分野で使用されている。
ポリスチレン系樹脂押出発泡体の断熱性を向上させるためには、均一でかつ微細な気泡構造が必要である。しかしながら、気泡径を小さくしようとすると、気泡膜の表面張力の影響で発泡密度が増加し、低密度、高発泡倍率で均一な微細気泡構造を有する押出発泡体を得ることは困難である。また、発泡体の生産性を向上するためには、用いる原料ポリマーの流動性を上げ、可塑化の効率を上げる必要があるが、単にポリスチレン系樹脂の分子量を低下させると発泡時の溶融粘度が低下するため発泡性能が低下する問題が発生する。
(中略)
【0006】
しかし、これらはいずれも発泡密度が0.06?0.1g/cm^(3)であり、低発泡倍率の加熱発泡2次成形性の改良を目的としたものであり、断熱を目的とした低密度、高発泡倍率、高い独立気泡率の板状押出発泡体についてはまったく言及されていない。また、ここで提案されている樹脂を用いたPSP発泡体と本願が目的とする断熱性能に優れた特定の気泡構造を持つ低密度、高発泡倍率、高い独立気泡率の押出発泡体とはまったく異なる利用分野に関する物であり、またここで提案されているシート状発泡体から本願の目的とする効果を類推することは全く不可能である。
このように従来は、押出発泡法において、微細な気泡と、低密度、高発泡倍率、高い独立気泡率を有する断熱性能に優れた発泡体を、安定した条件で、優れた生産性で製造することは困難なことであった。」

(エ)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、押出発泡法において、微細な気泡を有し、且つ低密度、高発泡倍率、高い独立気泡率であり、断熱効果に優れ、そのために施工時の厚みを薄くできるポリスチレン系樹脂押出発泡体、及び、それを安定した条件で製造することのできる、生産性に優れた製法を提供するものである。」

(オ)「【0013】
Mw/Mn及びMz/Mwが小さ過ぎると発泡性能が劣り、均一な気泡構造と充分な発泡密度、発泡倍率、独立気泡率が達成されず、また押出発泡体の安定した製造も難しい。また、低分子成分が多く含まれていてMw/Mnが大き過ぎると、発泡特性、発泡体物性が低下する。Mz/Mwは大きい方が発泡特性に優れるが、Mw、Mnとのバランスから、より好ましい範囲が決定される。また、Mwが17万以下であると、押出発泡体の曲げ強度、圧縮強度などの物性が劣り、35万以上であると押出発泡体の生産性が低下する。」

(カ)「【0018】
押出発泡体の生産性の指標の一つにポリスチレン樹脂の流動性、メルトフローレート(以下「MFR」という。)を用いることができる。樹脂の流動性は分子量、分子量分布によって変えることができる。単に分子量を下げて流動性を調整しただけのポリスチレン系樹脂では、発泡性能が劣り、充分な発泡密度、発泡倍率、独立気泡率を得ることができず、本発明の目的とする微細な気泡を有し、且つ低密度、高発泡倍率、高い独立気泡率で断熱効果に優れる押出発泡体を安定した条件で、優れた生産性で製造することは、分子量、分子量分布が同時に調整された、本発明のポリスチレン系樹脂を用いることにより初めて可能となる。」

(キ)「【0020】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
[スチレン系樹脂の製造]
スチレン100重量部に対し、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.015重量部を添加した重合液を4.1リットルの完全混合型反応器に0.59Kg/Hrで連続的に仕込み、103℃に調整した。これと並列に接続された、合計2.8リットルの攪拌器を備えた3ゾーンで温度コントロール可能な層流型反応器-1にスチレン70重量%、エチルベンゼン30重量%の混合液100重量部に対し、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.030重量部を添加した重合液を0.48Kg/Hrで連続的に仕込み、層流型反応器-1の温度を145℃/155℃/150℃に順次調節した。
【0021】
二つの重合体溶液は混合され、混合された重合体溶液を引き続き合計5.5リットルの静的攪拌器を備え直列に配列された3基の層流型反応器-2に連続的に仕込んだ。この3基の層流型反応器の温度をそれぞれ140℃/150℃/155℃に調整した。重合反応器より連続して排出される重合体溶液を直列に配置した2基の、予熱器として0.6リットルの静的混合器を内蔵した4リットルの脱揮タンクに導いた。予熱器温度を240℃とし、脱揮タンク内で240℃に保ちながら、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズした。重合条件を表1に示した。
また、得られたポリスチレン樹脂のゲルパーミエイション・クロマトマトグラフィーによる分子量測定MFR測定を行った。この結果を表2に示した。
【0022】
[スチレン樹脂の発泡押出し]
得られたポリスチレン樹脂を、単軸押出機、ミキサー、ロータリークーラー、及びダイからなる押出発泡機を用いて、発泡核剤を樹脂に対して1重量部、発泡剤を樹脂に対して5重量部添加し、目開きの間隔が1.8mm、幅が40mmのスリットを有すダイより押し出して板状発泡体を製造した。樹脂の溶融ゾーンの温度は180?200℃、ロータリークーラー温度は150?160℃、ダイ温度を120?130℃に調整した。発泡核剤には日本ミストロン製、ミストロンバーパーを用い、発泡剤にはLPG(ノルマルブタン/イソブタン=70/30<体積分率>)を用いた。得られた発泡体の発泡倍率、平均気泡径、独立気泡率測定を行った。この結果を表2に示した。
【0023】
[分子量測定条件]
使用装置:東ソー製HLC8020、分別カラム:東ソー製TSK-gel-GMH-XL、測定溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:スチレン樹脂10mgを10mlの溶媒に溶解。
[MFR]
ISO・R1133に準じたMFR(g/10min)
(中略)
【0025】
(実施例2)
実施例1の層流型反応器-1の混合液に対し、αメチルスチレンダイマー0.3重量部を添加した以外は実施例1と同様に、表1に示す条件で実施し、得られたポリスチレン樹脂、及び発泡体の評価を行った。結果を表2に示した。」

(ク)「【0026】
【表1】



(ケ)「【0027】
【表2】



(コ)「【0033】
【発明の効果】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡体は、従来のスチレン系樹脂押出発泡体に比較して、微細な気泡を有し、且つ低密度、高発泡倍率、高い独立気泡率であり、断熱効果に優れ、そのために施工時の厚みを薄くでき、且つ、安定した条件で、優れた生産性で製造することができた。」

イ 甲1に記載された発明

甲1には、摘示(ア)ないし(コ)、特に、実施例1又は2の記載から、次の発明が記載されているといえる。

「スチレン100重量部に対し、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.015重量部を添加した重合液を完全混合型反応器に連続的に仕込み、103℃に調整し、これと並列に接続された、層流型反応器-1にスチレン70重量%、エチルベンゼン30重量%の混合液100重量部に対し、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.030重量部を添加した重合液を連続的に仕込み、層流型反応器-1の温度を145℃/155℃/150℃に順次調節し、
混合された二つの重合体溶液を直列に配列された3基の層流型反応器-2に連続的に仕込み、この3基の層流型反応器の温度をそれぞれ140℃/150℃/155℃に調整し、重合反応器より連続して排出される重合体溶液を直列に配置した2基の脱揮タンクに導き、脱揮タンク内で240℃に保ちながら、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズしたポリスチレン樹脂であって、
Mw23.5万、Mw/Mn2.75、Mz/Mw2.08、ISO・R1133に準じたMFR7.8g/10minであり、
板状発泡体が製造されるポリスチレン樹脂。」(以下、「甲1-1発明」という。)

「スチレン100重量部に対し、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.015重量部を添加した重合液を完全混合型反応器に連続的に仕込み、103℃に調整し、これと並列に接続された、層流型反応器-1にスチレン70重量%、エチルベンゼン30重量%の混合液100重量部に対し、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.030重量部、αメチルスチレンダイマー0.3重量部を添加した重合液を連続的に仕込み、層流型反応器-1の温度を145℃/155℃/150℃に順次調節し、
混合された二つの重合体溶液を直列に配列された3基の層流型反応器-2に連続的に仕込み、この3基の層流型反応器の温度をそれぞれ140℃/150℃/155℃に調整し、重合反応器より連続して排出される重合体溶液を直列に配置した2基の脱揮タンクに導き、脱揮タンク内で240℃に保ちながら、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズしたポリスチレン樹脂であって、
Mw21.0万、Mw/Mn3.35、Mz/Mw2.42、ISO・R1133に準じたMFR11.5g/10minであり、
板状発泡体が製造されるポリスチレン樹脂。」(以下、「甲1-2発明」という。)

(2)甲2に記載された事項

甲2には、以下の事項が記載されている(以下、「甲2の記載事項」という。)。

ア「【請求項1】溶融状態のスチレン系樹脂100重量部に対して、発泡剤として二酸化炭素のみを4.0?6.0重量部の割合で圧入、混合し、120?140℃の溶融温度で押出発泡成形することにより、連続気泡構造を有する板状スチレン系樹脂発泡体を製造することを特徴とする板状スチレン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】板状スチレン系樹脂発泡体の密度が0.03?0.05g/cm^(3)、連続気泡率が20?70%、厚みが10mm以上である請求項1記載の板状スチレン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】200℃での溶融流れ速度R1が6?15g/10分であるスチレン系樹脂を使用する請求項1または2記載の板状スチレン系樹脂発泡体の製造方法。」

イ「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、とくに厚肉で、断熱性や遮音性にすぐれるとともに軽量であり、しかも耐熱性にもすぐれた板状スチレン系樹脂発泡体を製造するための、新規な製造方法に関するものである。」

ウ「【0002】
【従来の技術】近年、加熱溶融状態のスチレン系樹脂に発泡剤を圧入、混合し、口金部を通して大気中に押し出して発泡させる、いわゆる押出発泡成形法によって製造された、厚み10mm以上といった厚肉の板状スチレン系樹脂発泡体が、断熱性や遮音性にすぐれるとともに軽量である上、大量生産が可能で安価であるために、建築の分野において、外壁、内壁、床、屋根などにおける断熱材、遮音材などとして多量に使用されるようになってきた。
(中略)
【0004】すなわち板状スチレン系樹脂発泡体は、理論的には、スチレン系樹脂のビカット軟化点(たとえばポリスチレンの場合はおよそ102℃)まで熱変形しないはずであるが、実際のポリスチレンの板状発泡体(密度29kg/m^(3))は80℃近くで熱変形してしまい、また上記のように密度を少し高くして耐熱温度を上げた板状発泡体(40kg/m^(3))でも、およそ90℃程度で熱変形してしまう。
【0005】この主な原因としては、従来の板状スチレン系樹脂発泡体が、(a) 連続気泡率10%以下、独立気泡率85%以上という閉じられた構造を有すること、(b) フロンや炭化水素類、あるいはメチルクロライド、エチルクロライドといったガス抜けの悪い発泡剤を使用して製造されること、があげられる。
【0006】とくにフロンや炭化水素類はガス抜けが悪く、上記のように厚みが10mm以上もある閉じられた構造では、全くガス抜けしないといっても過言ではない。一方、メチルクロライドやエチルクロライドなどのクロライド類は、これまでガス抜けがよいとされてきたものであるが、それでも上記のように厚みが10mm以上もある閉じられた構造では、ガスが完全に抜けるまでに1ヶ月程度は必要である。
【0007】このため従来の発泡体は、上記いずれの発泡剤を使用した場合でも、施工される時点で、その内部に未だ多量のガスが残存したままの状態となっており、当該残存ガスが、
[1] 溶剤効果を生じて樹脂の軟化点を引き下げる働きをするとともに、
[2] 加熱によって膨張して、軟化した樹脂を変形させるように働き、
その結果として発泡体は、前記のように樹脂のビカット軟化点よりかなり低温の段階で熱変形してしまうのである。」(合議体注:○付数字を正しく表示できないので、○付数字1、○付数字2を、それぞれ、[1]、[2]と表記する。)

エ「【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の考察から明らかなように、板状スチレン系樹脂発泡体の耐熱性を高めるには、これまでよりもその連続気泡率を高めて、発泡剤のガス抜けを促進することが肝要である。
(中略)
【0010】またWO96/340382号公報には、押出発泡成形時の樹脂中に、気泡壁を破壊する作用をするカーボンブラックを添加することで、発泡時に意図的に破泡を発生させて、連続気泡率を高めることが記載されている。しかしこの方法で、高い連続気泡率を有する発泡体を製造するためには、樹脂100重量部に対しておよそ1.0?25重量%という多量のカーボンブラックを添加する必要があり、(ニ) かかる多量のカーボンブラックを樹脂中に均一に分散させるには多大なエネルギーと時間とを要するため発泡体の生産性が低下するとともに、発泡体の大幅なコストアップにつながるおそれがある、(ホ) 多量のカーボンブラックによって黒色に着色されてしまうため、他の色に着色できないなどの問題を生じて、発泡体の外観が悪くなる、(ヘ) 多量のカーボンブラックによって押出機内などの生産設備が汚されるため、そのメンテナンスなどに手間がかかり、とくに樹脂替えなどの作業の手間が著しく増加する、といった問題があった。
【0011】本発明の目的は、とくに厚肉で、しかもその内部まで均一に発泡しているために断熱性や遮音性にすぐれるとともに軽量で、なおかつ連続気泡率が高いために耐熱性にもすぐれ、しかも外観もよい板状スチレン系樹脂発泡体を、上記のように種々の問題を有する多量のカーボンブラックを添加せずに、安価かつ大量に、効率よく生産することが可能な、新規な製造方法を提供することにある。」

オ「【0030】上記スチレン系樹脂としては、発泡体を良好に発泡、そして破泡させるために、とくに200℃での溶融流れ速度R_(1)(g/10分)が6?15であるものを使用するのが好ましい。ここでいう、200℃での溶融流れ速度(メルトフローレート:MFR)R_(1)とは、スチレン系樹脂を、日本工業規格JIS K7210「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」に所載の試験方法に則って、同方法に規定された条件8(試験温度:200℃、試験荷重:5.00kgf)にて測定した値を指す。
【0031】スチレン系樹脂の溶融流れ速度R_(1)が前記の範囲未満では、発泡体が連続気泡にならずに独立気泡になりやすい傾向を生じ、あえて連続気泡にしようとすると収縮を起こして、良好な発泡体が得られないおそれがある。また逆に上記の範囲を超えた場合には、張力不足を生じて発泡倍率を上げることができないおそれがある。」

カ「【0041】実施例1
下記の各成分をドライブレンドして混合物を調製した。
・ ポリスチレン〔新日鐵化学(株)製の商品名G-13-30K、溶融流れ速度
R_(1)=7.0g/10分〕
100重量部
・ タルク(発泡核剤) 0.09重量部
・ ステアリン酸モノグリセライド(帯電防止剤)
0.06重量部
2.1重量部
つぎにこの混合物を、第1および第2の2台の押出機を有するタンデム押出機(φ50-φ60)のホッパーに供給し、当該ホッパーに接続された第1押出機内で溶融、混合しつつ、この第1押出機の途中に設けたノズルから、押出機内に、発泡剤としての二酸化炭素を圧入した。二酸化炭素の圧入量は、ポリスチレン100重量部あたり4.5重量部とした。
【0042】そしてさらに溶融、混合した溶融混合物を、第1押出機から第2押出機に連続的に供給し、当該第2押出機内で、135℃まで均一に冷却したのち、この溶融温度を維持しつつ、第2押出機の先端に接続した、図2(a)に示す構造を有し、かつ下記のディメンジョンを有するスリット状の金型を通して、毎時35kgの吐出量で大気中に連続的に押し出して発泡させるとともに、25mmの間隔に配置した一対の板状の成形具間を通して、その厚みが上記成形具の間隔と同じ25mmになるように矯正しつつ冷却して、板状スチレン系樹脂発泡体を製造した。
〈金型〉
幅S_(1)=1.2mm
幅S_(2)=80mm
比S_(2)/S_(1)=67
ランド長さL_(1)=15mm
リップ幅W=50mm
得られた発泡体の密度は40kg/m^(3)、連続気泡率は50%、平均気泡径は0.18mmであった。」

キ「【0053】
【発明の効果】以上、詳述したように本発明によれば、とくに厚肉で、しかもその内部まで均一に発泡しているために断熱性や遮音性にすぐれるとともに軽量で、なおかつ連続気泡率が高いために耐熱性にもすぐれ、しかも外観もよい板状スチレン系樹脂発泡体を、種々の問題を有する多量のカーボンブラックを添加せずに、安価かつ大量に、効率よく生産することが可能となる。」

(3)甲3に記載された事項

甲3には、以下の事項が記載されている(以下、「甲3の記載事項」という。)。

ア「【請求項1】
200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)が1.0?6.0g/10分で、200℃で測定した溶融張力値が11?19gfで、重量平均分子量(Mw)が25万?40万で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5?8.0、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2?3.0であることを特徴とする板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。」

イ「【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的強度に優れたスチレン系板状押出発泡体の製造が可能で、押出発泡性にも優れた板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物及びその製造方法に関わる。」

ウ「【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂組成物からなる板状押出発泡体は、優れた断熱性及び機械的強度を有することから、一般建築物等の床材や壁材、天井材、畳の心材など様々な分野で使用されている。
【0003】
スチレン系樹脂組成物の押出発泡体の製造方法としては、従来より様々な方法が用いられているが、一般にはスチレン系樹脂組成物を押出機で加熱溶融混練した後、発泡剤を添加し、冷却させ、これを低圧雰囲気下に押出発泡させて製造する方法が採用されている。
また発泡剤としては、従来よりフロン系発泡剤が用いられてきたが(特許文献1)、近年の環境問題から炭化水素系発泡剤を使用する割合が増えており、炭化水素系発泡剤に適したスチレン系樹脂組成物が求められている。
【特許文献1】特開平10-182870号公報」

エ「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に炭化水素系発泡剤を使用した板状押出発泡体の製造において、押出発泡性に優れ、機械的強度に優れた板状押出発泡体を製造することに適したスチレン系樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的としている」

オ「【発明の効果】
【0006】
本発明のスチレン系樹脂組成物を用いることで、機械的強度に優れた板状押出発泡体を製造することが可能となり、押出発泡性にも優れる。」

カ「【0007】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)は、1.0?6.0g/10分であり、好ましくは2.0?4.0g/10分である。6.0g/10分を超えると樹脂粘度の不足により、発泡性が悪くなり、圧縮強度等の機械的強度も低下する。逆に、1.0g/10分未満とな
るとスチレン系樹脂組成物の樹脂粘度が上がりすぎ、板状押出発泡体の押出し生産性が低下するため好ましくない。スチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件によるメルトマスフローレイトは、JIS K-7210に基づき測定した。スチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイトは溶融時の流動性を表すパラメータであるが、分子量や分子量分布の制御によって調整することができる。また、重合過程や脱揮工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)やホワイトオイル等の各種添加剤成分、残存スチレンモノマー及び重合溶媒等の低分子量成分は、可塑剤的な効果があることから、メルトマスフローレイトを高める影響がある。」

キ「【0008】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の200℃で測定した溶融張力値は11?19gfで、好ましくは13?19gfである。溶融張力値が11gf未満であると、板状押出発泡体を製造する際の発泡性が悪化し、連続気泡が増えるなどの悪影響がある。また、板状押出発泡体の圧縮強度が低下する。溶融張力値が19gfを超えるとスチレン系樹脂組成物の生産性が著しく低下する。
(中略)
溶融張力値は、スチレン系樹脂組成物の溶融時の弾性的な性質を表すパラメータでであるが、分子量や分子量分布の制御によって調整することができ、分子量を高くするほど溶融張力値を高めることができる。しかしながら、単に分子量を上げるだけでは同時にメルトマスフローレイトが下がりすぎてしまい、板状押出発泡体の生産性が低下してしまう。メルトマスフローレイトを維持したまま溶融張力値を高めるには分子量分布を広くする方法があり、具体的には、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5?8.0、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2?3.0の範囲とすることで本発明のメルトマスフローレイトと溶融張力値のバランスを達成することが可能となる。また、重合過程や脱揮工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)やホワイトオイル等の各種添加剤成分、残存スチレンモノマー及び重合溶媒等の低分子量成分は、可塑剤的な効果があることから、溶融張力値を下げる効果がある。」

ク「【0009】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、25万?40万であり、好ましくは27万?37万であり、更に好ましくは30万?35万である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は3.5?8.0、好ましくは4.0?6.0である。また、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)は2.2?3.0で、好ましくは2.3?2.8ある。重量平均分子量(Mw)及びMw/Mn、Mz/Mwが上記範囲外であると、本発明のメルトマスフローレイトと溶融張力値のバランスを達成することができない。」

ケ「【0010】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の分子量は、スチレンをラジカル重合する際の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。分子量については、低温度で重合を行うなど、重合速度を抑えることで高分子量化することができるが、それだけでは効率が悪く、重合開始剤として、多官能の有機過酸化物を使用することが好ましく、2,2-ビス(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンが好適に使用することができる。また、逆に高温度で重合を行うなど重合速度を高めることで低分子量化することができるが、重合速度をより高めるために単官能の有機過酸化物を使用してもよい。また、連鎖移動剤を添加することにより低分子量化することもできる。重合方法については商業的に連続重合であることが好ましく、スチレンモノマーの濃度が高い重合前半は、分子量を高めるという点で完全混合槽型の反応器を使用したほうが有利である。分子量分布を表す、Mw/Mn及びMz/Mwの制御については、重合前半部分で高分子量成分を生成し、重合後半部分で低分子量成分を生成することによって分子量分布を広めることができる。」

コ「【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のスチレン系樹脂組成物を用いることで、圧縮強度に優れた板状押出発泡体を得ることでき、発泡性にも優れることから、板状押出発泡体の用途に適している。また、本発明のスチレン系樹脂組成物の製造方法により、低コストで板状押出発泡体用途に適したスチレン系樹脂組成物を製造することが可能となる。」

(4)甲4に記載された事項

甲4には、以下の事項が記載されている(以下、「甲4の記載事項」という。)。

ア「【請求項1】
200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)が10?30g/10分で、200℃で測定した溶融張力値が5?15gfで、メタノール可溶分が0.2?1.5質量%で、重量平均分子量(Mw)が15万?25万で、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5?8.0、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2?3.6であることを特徴とする板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。」

イ「【技術分野】
【0001】
本発明は、板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物及びその製造方法に関するもので、難燃剤が分解しないような低温度で押出することが可能で、かつ、発泡性が良好で、機械的強度、難燃性に優れた板状押出発泡体を得ることができる。」

ウ「【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂組成物からなる板状押出発泡体は、優れた断熱性及び機械的強度を有することから、一般建築物等の床材や壁材、天井材、畳の心材など様々な分野で使用されている。
【0003】
スチレン系樹脂組成物の押出発泡体の製造方法としては、従来より様々な方法が用いら
れているが、一般にはスチレン系樹脂組成物を押出機で加熱溶融混練した後、発泡剤を添加し、冷却させ、これを低圧雰囲気下に押出発泡させて製造する方法が採用されている。また発泡剤としては、フロン系発泡剤が用いられてきたが(特許文献1)、近年の環境問題から炭化水素系発泡剤や二酸化炭素、水に代表される無機系発泡剤を使用する割合が増えており、それらの発泡剤に適したスチレン系樹脂組成物が求められている。
【特許文献1】特開平10-182870号公報」

エ「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、炭化水素系発泡剤や二酸化炭素、水に代表される無機系発泡剤を使用した板状押出発泡体の製造において、難燃剤が分解しないような低温度で押出することを可能とし、かつ、発泡性が良好で、機械的強度、難燃性に優れた板状押出発泡体を製造することに適したスチレン系樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的としている。」

オ「【発明の効果】
【0008】
本発明のスチレン系樹脂組成物を用いることで、難燃剤が分解しないような低温度での押出が可能となり、機械的強度と難燃性に優れた板状押出発泡体を製造することが可能となり、押出発泡性にも優れる。」

カ「【0009】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレイト(MFR)は、10?30g/10分であり、好ましくは12?20g/10分である。30g/10分を超えると樹脂粘度が下がりすぎてしまい、発泡性が悪化し、押出が困難となる。逆に、10g/10分未満となるとスチレン系樹脂組成物の樹脂粘度が上がりすぎ、低温度での押出が困難となり、樹脂温度の上昇により難燃剤が分解してしまう。仮に、押出機のシリンダー温度を下げたとしても、剪断発熱により樹脂温度が上昇してしまう。スチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件によるメルトマスフローレイトは、JIS K-7210に基づき測定した。スチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイトは溶融時の流動性を表すパラメータであるが、分子量や分子量分布の制御によって調整することができる。また、重合過程や脱揮工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)やホワイトオイル等の各種添加剤成分、残存スチレンモノマー及び重合溶媒等の低分子量成分は、可塑剤的な効果があることから、メルトマスフローレイトを高める影響がある。」

キ「【0010】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の200℃で測定した溶融張力値は5?15gfである。溶融張力値が5gf未満であると、板状押出発泡体を製造する際の発泡性が悪化し、連続気泡が増えるなどの悪影響がある。また、板状押出発泡体の圧縮強度が低下する。
(中略)
溶融張力値は、スチレン系樹脂組成物の溶融時の弾性的な性質を表すパラメータでであるが、分子量や分子量分布の制御によって調整することができ、分子量を高くするほど溶融張力値を高めることができる。しかしながら、単に分子量を上げるだけでは同時にメルトマスフローレイトが下がりすぎてしまい、板状押出発泡体の生産性が低下してしまう。メルトマスフローレイトを維持したまま溶融張力値を高めるには分子量分布を広くする方法があり、具体的には、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5?8.0、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2?3.6の範囲とすることで本発明のメルトマスフローレイトと溶融張力値のバランスを達成することが可能となる。また、重合過程や脱揮工程で副生成するスチレンオリゴマー(スチレンダイマー、スチレントリマー)やホワイトオイル等の各種添加剤成分、残存スチレンモノマー及び重合溶媒等の低分子量成分は、可塑剤的な効果があることから、溶融張力値を下げる効果がある。」

ク「【0012】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、15万?25万であり、好ましくは20万?24万である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は3.5?8.0、好ましくは4.0?6.0である。また、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)は2.2?3.6で、好ましくは2.3?2.9である。重量平均分子量(Mw)及びMw/Mn、Mz/Mwが上記範囲外であると、本発明のメルトマスフローレイトと溶融張力値のバランスを達成することができない。」

ケ「【0013】
本発明が対象とするスチレン系樹脂組成物の分子量は、スチレンをラジカル重合する際の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。分子量については、低温度で重合を行うなど、重合速度を抑えることで高分子量化することができるが、それだけでは効率が悪く、重合開始剤として、多官能の有機過酸化物を使用することが好ましく、2,2-ビス(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(四官能)、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(二官能)が好適に使用することができる。また、逆に高温度で重合を行うなど重合速度を高めることで低分子量化することができるが、重合速度をより高めるために単官能の有機過酸化物を使用してもよい。また、連鎖移動剤を添加することにより低分子量化することもできる。重合方法については商業的に連続重合であることが好ましく、スチレンモノマーの濃度が高い重合前半は、分子量を高めるという点で完全混合槽型の反応器を使用したほうが有利である。分子量分布を表す、Mw/Mn及びMz/Mwの制御については、重合前半部分で高分子量成分を生成し、重合後半部分で低分子量成分を生成することによって分子量分布を広めることができる。」

コ「【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のスチレン系樹脂組成物を用いることで、低温度での押出が可能となり、難燃性及び圧縮強度に優れた板状押出発泡体を得ることでき、発泡性にも優れることから、板状押出発泡体の用途に適している。また、本発明のスチレン系樹脂組成物の製造方法により、低コストで板状押出発泡体用途に適したスチレン系樹脂組成物を製造することが可能となる。」

(5)甲5に記載された事項並びに甲5に記載された発明

ア 甲5に記載された事項

甲5には、以下の事項が記載されている(以下、「甲5の記載事項」という。)。

(ア)「【請求項1】 目付が310g/m^(2)(20g/100平方インチ)以下、且つ、密度が0.096g/cm^(3)(6ポンド/立方フィート)以下のスチレンのポリマーから成る発泡樹脂であって、前記ポリマーが、(1)メルトインデックスが8以上のスチレンのポリマー、及び/又は(2)少量割合の他の物質と共に用いたときにメルトインデックスが8以上となるようなスチレンのポリマーから成る、前記発泡樹脂。
【請求項2】 メルトインデックスが、8?25である、請求項1に記載の発泡樹脂。
【請求項3】 樹脂が、スチレンホモポリマー及び/又はスチレンを主要割合として含有するコポリマーから成る、請求項1又は2に記載の発泡樹脂。
【請求項4】 実質的に100%の二酸化炭素から成るブローイング剤を用いた押し出しによって発泡した、請求項1?3のいずれかに記載の発泡樹脂。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低密度高メルトインデックスポリスチレン発泡構造物、及びその製造方法に関する。」

(ウ)「【0002】
【従来の技術】押出ポリスチレン発泡体は重要な化学製品である。その用途には、例えば食品のパッケージ物品があり、そして、厚みのある形態では絶縁材料として使用される。更に、ポリスチレン発泡体は、輸送用の優れた衝撃吸収材である。この場合には、小さく分割されたチャンク又は熱形成された構造物の形態で使用される。
【0003】ポリスチレン発泡体は、通常は、物理的ブローイング剤と溶融ポリスチレン樹脂とを加圧下で混合して得られる。更に混合した後に、混合物を適当なダイから低圧雰囲気中に押し出す。約1950年代から今日まで、物理的ブローイング剤として選択されてきたのは、ハロカーボン、炭化水素又はそれらの混合物である。それらの例には、商業的に入手可能なフレオン組成物、及びC_(4)-C_(6)炭化水素があり、イソペンタンが好ましい。なお、フレオン組成物としては、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンがある。これらのブローイング剤は、適正な発泡構造体や優れた表面特性を得るためには効果的ではあるが、それ自身に欠点や不利な点を有する。これらのブローイング剤は、発泡体の生成中及び生成後に大気中に放出され、大気汚染の原因となる。炭化水素ブローイング剤は、これに加えて、火災の原因ともなる。」

(エ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記問題点に鑑み、本発明は、前駆体樹脂としてポリスチレンを用いて、発泡体状のポリスチレン樹脂を提供することを目的とする。該前駆体樹脂としてのポリスチレンは、これまでは優れた発泡構造に転換し得なかったものである。
【0005】更に、本発明の目的は、ブローイング剤として二酸化炭素100%を用いて、特定のグレードのポリスチレン樹脂を発泡せしめる方法を提供することを目的とする。」

(オ)「【0009】本明細書で用いる「メルトインデックス」という用語は、使用するポリスチレンの押出式可塑度計によるフローレートをいう。メルトインデックスを測定するための標準的な試験方法は、ASTM D 1238-79に規定されている。本質的には、メルトインデックスの値は、溶融樹脂の10分間におけるフローレートをグラム数で表したものである。この試験を行う場合には、樹脂中又は上記の樹脂混合物中には、ブローイング剤は含まれていてはいけない。」

(カ)「【0012】本発明で使用する樹脂は、8以上のメルトインデックスを有し、スチレンのホモポリマーか、又はスチレンを主要割合含有するコポリマーである。つまり、50重量%以上のスチレンを含有するが、特に25重量%以上のスチレンを含有しても好ましい。スチレンコポリマーの場合、コモノマーは、如何なるエチレン性不飽和物質でもよく、そのようなものには、共役1,3ージエン、例えば、ブタジエン、イソプレン等がある。
【0013】一般に、有用なスチレンポリマーの平均分子量(Mw)は、100,000?400,000であり、好ましくは150,000?350,000である。スチレン及びp-メチルスチレンから誘導されるホモポリマーが好ましい。Mwが175,000?250,000であるポリスチレンホモポリマーは、本発明の押出プロセスを行うためには特に好ましい熱可塑性樹脂である。その理由は、機械方向及び幅方向の曲げ剛性のバランスが非常に良い発泡体シート原料を提供することができるからである。」

(キ)「【0023】
【実施例】本実施例では、100%の二酸化炭素で発泡せしめたポリスチレンシートの製造について説明する。このポリスチレンはMwが約190,000であり、多分散度が2.5であり、そして、鉱油を3%添加したときのメルトインデックスが15であった。鉱油を添加しない場合のメルトインデックスは約8であった。このポリスチレンは、通常の炭化水素及び/又はCFCを用いた押出発泡操作には適さないと普通は考えられている。押出機は公知のタイプのものであり、タンデムシステムを含むものである。つまり、第一押出機のスクリューの直径は6.35cm(2 1/2インチ)であり、第二押出機のスクリューの直径は8.89cm(3 1/2インチ)である。そして、ダイの直径は6.35(2 1/2)インチである。また、その吐出量は、約66.68kg/時間(約147ポンド/時)である。第一押出機の溶融温度は244.4℃(472゜F)であり、第二押出機のそれは140.6℃(285゜F)であった。押出機には分岐壁から成るダイエクステンションユニットが備えられていた。押し出されたシートの外側表面と接触する壁は、機械方向に対して75度の角度であり、6.35cm(2.5インチ)長であった。内部シート形成表面の角度は、外部シート形成表面に対して4.5度であり、3.175cm(1.25インチ)長であった。ダイエクステンションユニット内は、98.9℃(210゜F)まで冷却した。
【0024】押し出されたシートの密度は0.0577g/cm3(3.6ポンド/立方フィート)であり、その表面は平滑であった。このシートを、以下の特性を有する肉類用パッケージトレーと成した。
【0025】
トレー重量(グラム) 9.1-9.8
サイドクラッシュ(グラム) 1315.44-1723.68
(ポンド) 2.9-3.8
エンドクラッシュ(グラム) 1496.88-1678.32
(ポンド) 3.3-3.7
MD/TD曲げモジュラス比 1.3-1.7
これらの物理的特性は、ポリスチレン発泡体の肉類トレーとして優れたものであった。」

イ 甲5に記載された発明

甲5には、摘示(ア)ないし(キ)、特に実施例の記載から、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる。

「Mwが約190,000であり、多分散度が2.5であり、鉱油を添加しない場合のASTM D 1238-79で測定されたメルトインデックスは約8であるポリスチレンであって、押し出されたシートが製造されるポリスチレン。」

2.対比・判断

(1)本件発明1について

ア 甲1-1発明との対比・判断

本件発明1と甲1-1発明を比較する。
まず、甲1-1発明の「ISO・R1133に準じたMFR」の測定条件は、「ISO・R1133」の条件が「200℃、荷重49N」(特開2009-128638号公報【0069】等参照)であるから、甲1-1発明の「ISO・R1133に準じたMFR7.8g/10min」、「Mw23.5万」、及び、「Mz/Mw2.08」は、それぞれ、本件発明1の「200℃、49N荷重で測定したメルトマスフローレイト(MFR)が6.0超10グラム/10分未満」、「重量平均分子量(Mw)が15?25万」、「Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.0?3.0」に相当する。
甲1-1発明の「板状発泡体が製造されるポリスチレン樹脂」は、本件発明の「板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1-1発明は、
「200℃、49N荷重で測定したメルトマスフローレイト(MFR)が7.8グラム/10分であり、重量平均分子量(Mw)が23.5万であり、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.08である、板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本件発明1の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が「3.5?5.0」であるのに対して、甲1-1発明が「2.75」である点。

上記相違点について検討する。
本件特許明細書には、
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、断熱材等に用いられる板状押出発泡体の製造において、難燃剤が分解し難い低温で押出が可能であり、押出発泡性能に優れ、かつ、製品強度に優れた板状押出発泡体の製造に適したスチレン系樹脂組成物、及び該組成物を材料として用いて製造した板状押出発泡体を提供することである。」(以下、「本件発明の課題」という。)と記載され、
「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、特定のメルトマスフローレイト、特定の重量平均分子量(Mw)、特定の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)、及び特定のZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)を有するスチレン系樹脂組成物を使用することにより、難燃剤が分解しにくい低温でも押出が可能であり、かつ、押出発泡性能に優れ、さらに製品強度に優れた板状押出発泡体の製造に適したスチレン系樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載されており、本件発明1は、上記相違点に係る発明特定事項とすることにより、本件発明の課題を解決したものである。

この点、甲1の摘示(エ)には、解決しようとする課題として、「本発明は、押出発泡法において、微細な気泡を有し、且つ低密度、高発泡倍率、高い独立気泡率であり、断熱効果に優れ、そのために施工時の厚みを薄くできるポリスチレン系樹脂押出発泡体、及び、それを安定した条件で製造することのできる、生産性に優れた製法を提供するものである。」と記載されており、本件発明の課題の「難燃剤が分解し難い低温で押出が可能」との事項が記載ないし示唆されているとはいえない。
さらに、甲1の摘示(オ)の「Mw/Mn及びMz/Mwが小さ過ぎると発泡性能が劣り、均一な気泡構造と充分な発泡密度、発泡倍率、独立気泡率が達成されず、また押出発泡体の安定した製造も難しい。また、低分子成分が多く含まれていてMw/Mnが大き過ぎると、発泡特性、発泡体物性が低下する。」との記載から、甲1-1発明において、「Mw/Mn2.75」を高くすることは、同発明の意図するものでないと解する。よって、上記相違点に関し、「Mw/Mn2.75」の値を、あえて変動させる動機づけはないといえる。
そうすると、甲1-1発明において、「Mw/Mn2.75」の値を変動させて、本件発明の課題を解決する動機づけはないから、「Mw/Mn2.75」の値を変動させることは当業者に容易であるとはいえない。

また、甲3の摘示キの「スチレン系樹脂組成物の200℃で測定した溶融張力値は11?19gfで、好ましくは13?19gfである。溶融張力値が11gf未満であると、板状押出発泡体を製造する際の発泡性が悪化し、連続気泡が増えるなどの悪影響がある。また、板状押出発泡体の圧縮強度が低下する。溶融張力値が19gfを超えるとスチレン系樹脂組成物の生産性が著しく低下する。」、「メルトマスフローレイトを維持したまま溶融張力値を高めるには分子量分布を広くする方法があり、具体的には、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5?8.0、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.2?3.0の範囲とすることで本発明のメルトマスフローレイトと溶融張力値のバランスを達成することが可能となる」との記載から、甲3の記載事項から、確かに、スチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイトを維持したまま溶融張力値を高めるには、Mw/Mnを3.5?8.0Mz/Mwが2.2?3.0の範囲とすることで、メルトマスフローレイトと溶融張力値のバランスを達成することは可能ともいえる。
しかしながら、甲3にも、甲1-1発明において説示したことと同様に、本件発明の課題が記載も示唆もされていないから、甲3の記載事項によっても、「Mw/Mn2.75」の値をより大きい値に変動させて、本件発明の課題を解決する動機づけがあるとはいえない。

甲4は、甲3と同様の記載があり、甲4の摘示キにも、甲3の摘示キと同様のことが記載されているから、甲4の記載事項によっても、同様に「Mw/Mn2.75」の値をより大きい値に変動させて、本件発明の課題を解決する動機づけがあるとはいえない。

そして、本件発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載のとおり、「本発明のスチレン系樹脂組成物は、断熱材等に用いられる板状押出発泡体の製造において難燃剤が分解しにくい低温で押出が可能であり、押出発泡性能に優れ、かつ、製品強度に優れた板状押出発泡体の製造に好適である。」との、格別顕著な効果を奏するものであり、その効果は、甲1、甲3、及び、甲4の記載事項から予測できないものである。

したがって、本件発明1は、甲1-1発明、甲1-1発明及び甲3の記載事項、又は、甲1-1発明及び甲4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。

イ 甲1-2発明との対比・判断

本件発明1と甲1-2発明を比較する。
甲1-2発明の「Mw21.0万」、及び、「Mz/Mw2.42」は、それぞれ、本件発明1の「重量平均分子量(Mw)が15?25万」、「Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.0?3.0」に相当する。
甲1-2発明の「板状発泡体が製造されるポリスチレン樹脂」は、本件発明の「板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1-2発明は、
「重量平均分子量(Mw)が21.0万であり、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.42である、板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1の「200℃、49N荷重で測定したメルトマスフローレイト(MFR)が6.0超10グラム/10分未満」であるのに対して、甲1-2発明は「11.5g/10min」である点。

<相違点2>
本件発明1の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が「3.5?5.0」であるのに対して、甲1-2発明が「3.35」である点。

上記相違点1について検討する。
甲2の摘示オは「スチレン系樹脂としては、発泡体を良好に発泡、そして破泡させるために、とくに200℃での溶融流れ速度R_(1)(g/10分)が6?15であるものを使用するのが好ましい」と記載されているが、その課題は、摘示エから「とくに厚肉で、しかもその内部まで均一に発泡しているために断熱性や遮音性にすぐれるとともに軽量で、なおかつ連続気泡率が高いために耐熱性にもすぐれ、しかも外観もよい板状スチレン系樹脂発泡体を、上記のように種々の問題を有する多量のカーボンブラックを添加せずに、安価かつ大量に、効率よく生産することが可能な、新規な製造方法を提供することにある。」ことであり、本件発明の課題とは異なり、甲2には、本件発明の課題が記載ないし示唆されているとはいえないから、MFRの値を特定させることによって、本件発明の課題を解決する動機づけはないといえる。

上記相違点2に関しては、甲1-1発明の相違点で述べたとおり、甲1-2発明において、「Mw/Mn3.35」の値を、あえて変動させて、本件発明の課題を解決する動機づけはないから、「Mw/Mn3.35」の値を変動させることは当業者に容易であるとはいえないし、甲3又は甲4の記載事項によっても、「Mw/Mn3.35」の値をより大きい値に変動させて、本件発明の課題を解決する動機づけがあるとはいえない。

そして、本件発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載のとおり、「本発明のスチレン系樹脂組成物は、断熱材等に用いられる板状押出発泡体の製造において難燃剤が分解しにくい低温で押出が可能であり、押出発泡性能に優れ、かつ、製品強度に優れた板状押出発泡体の製造に好適である。」との、甲1、甲2、甲3、及び、甲4の記載事項から予測できない、格別顕著な効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、甲1-2発明、甲2の記載事項及び甲3の記載事項、又は、甲1-2発明、甲2の記載事項及び及び甲4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。

ウ 甲5発明との対比・判断

本件発明1と甲5発明を比較する。
まず、甲5の摘示(オ)から、甲5の「ASTM D 1238-79で測定されたメルトインデックス」の測定条件は、「ASTM D 1238-79」の条件が「316℃、5kg重量(49N)」であり(特開平5-194739号公報【0044】参照)、本件発明1のMFRの測定条件である「200℃、49N荷重」とは相違しているが、「49N荷重」は同じであるので、甲5の「ASTM D 1238-79で測定されたメルトインデックス」と、本件発明1の「200℃、49N荷重で測定したメルトマスフローレイト(MFR)」の値が大きく相違しないものと仮定して、以下、検討を進める。

甲5発明の「Mwが約190,000」、「多分散度」、「鉱油を添加しない場合のASTM D 1238-79で測定されたメルトインデックスは約8」、「押し出されたシートが製造されるポリスチレン」は、本件発明1の「重量平均分子量(Mw)が15?25万」、「重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)」、「200℃、49N荷重で測定したメルトマスフローレイト(MFR)が6.0超10グラム/10分未満」、「板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲5発明は、
「200℃、49N荷重で測定したメルトマスフローレイト(MFR)が8グラム/10分であり、重量平均分子量(Mw)が19万である、板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.5?5.0であるのに対して、甲5発明が2.5である点。

<相違点2>
本件発明のZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が2.0?3.0であるのに対して、甲5発明ではそのような特定がない点。

上記相違点を検討する。
甲5発明の課題は、甲5の摘示(エ)から、「駆体樹脂としてポリスチレンを用いて、発泡体状のポリスチレン樹脂を提供することを目的とする。」、「更に、本発明の目的は、ブローイング剤として二酸化炭素100%を用いて、特定のグレードのポリスチレン樹脂を発泡せしめる方法を提供することを目的とする。」ものである。
そうすると、甲5発明の課題と本件発明の課題とは相違するから、甲5発明において、甲5発明の課題を解決しているといえる「Mw/Mn2.5」の値を変動させること、及び、「Mz/Mw」の値を特定させることによって、本件発明の課題を解決する動機付けはないから、「Mw/Mn2.5」の値を変動させること、及び、「Mz/Mw」の値を特定させることは当業者に容易であるとはいえない。

そして、上述のとおり、甲3又は甲4の記載から、確かに、スチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレイトを維持したまま溶融張力値を高めるには、Mw/Mnを3.5?8.0Mz/Mwが2.2?3.0の範囲とすることで、メルトマスフローレイトと溶融張力値のバランスを達成することは可能ともいえる。
しかしながら、甲3又は甲4にも、甲1-1発明において説示したことと同様に、本件発明の課題が記載も示唆もされていないから、甲5発明において、「Mw/Mn2.5」の値をより大きい値に変動させること、及び、「Mz/Mw」の値を特定させて、本件発明の課題を解決する動機づけがあるとはいえない。

そして、本件発明1は、本件特許明細書の【0010】に記載のとおり、「本発明のスチレン系樹脂組成物は、断熱材等に用いられる板状押出発泡体の製造において難燃剤が分解しにくい低温で押出が可能であり、押出発泡性能に優れ、かつ、製品強度に優れた板状押出発泡体の製造に好適である。」との、格別顕著な効果を奏するものであり、その効果は、甲3、甲4、及び、甲5の記載事項から予測できないものである。

したがって、本件発明1は、甲5発明及び甲3の記載事項、又は、甲5発明及び甲4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。

エ 小括

以上のとおりであるから、本件発明1は、
甲1-1発明、甲1-1発明及び甲3の記載事項、又は、甲1-1発明及び甲4の記載事項、
甲1-2発明、甲2の記載事項及び甲3の記載事項、又は、甲1-2発明、甲2の記載事項及び甲4の記載事項、或いは、
甲5発明及び甲3の記載事項、又は、甲5発明及び甲4の記載事項
に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。

(2)本件発明2について

本件発明2は、本件発明1において、「スチレン系樹脂組成物を押出発泡してなる板状押出発泡体」と特定するものであるから、その余のことについて検討するまでもなく、上記(1)で述べたとおり、本件発明1と同様に判断され、本件発明2は、
甲1-1発明、甲1-1発明及び甲3の記載事項、又は、甲1-1発明及び甲4の記載事項、
甲1-2発明、甲2の記載事項及び甲3の記載事項、又は、甲1-2発明、甲2の記載事項及び甲4の記載事項、或いは、
甲5発明及び甲3の記載事項、又は、甲5発明及び甲4の記載事項
に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-01-27 
出願番号 特願2012-161884(P2012-161884)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松岡 美和  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 原田 隆興
橋本 栄和
登録日 2016-05-13 
登録番号 特許第5930899号(P5930899)
権利者 PSジャパン株式会社
発明の名称 板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物  
代理人 齋藤 都子  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  
代理人 中村 和広  
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