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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1325222
審判番号 不服2015-12131  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-26 
確定日 2017-03-07 
事件の表示 特願2012-154077「電気接触子の使用方法及び電気接触子」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日出願公開、特開2012-230117、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年9月22日(優先権主張 平成17年9月22日(以下、「優先日」という。)、優先権主張 平成17年9月27日、優先権主張 平成18年8月2日)を国際出願日とする特願2007-536579号の一部を平成24年7月9日に新たな特許出願としたものであって、平成26年6月26日付けの拒絶理由通知に対して、平成26年8月29日付けで手続補正がなされたが、平成27年3月27日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、平成27年6月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成28年11月11日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年1月13日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)。

「【請求項1】
バーンイン環境下において電気部品の端子を電気接触子に直接接触させることによって電気的に接続する第1ステップと、該電気部品の該端子を該電気接触子から引き離す第2ステップとを、該電気部品を交換しつつ繰り返し行う、電気接触子の使用方法であって、
少なくとも前記端子に接触する前記電気接触子の接触部に、前記端子の表面の半田に含まれるSn(錫)が拡散する接点材料を設けると共に、
該接点材料を、前記半田より引っ張り強度が高く、且つ、前記Snが拡散した合金においても前記半田より引っ張り強度が高くすることにより、
前記第2ステップで、前記電気部品の該端子を前記電気接触子から引き離すときに、前記接触部の表面部分が引き剥がされることを防止し、
前記接点材料は、Pd(パラジウム)-Ag(銀)合金のメッキ層、Agメッキ層及びPd-Ag合金のメッキ層が積層されたもの、Agメッキ層及びPdメッキ層が積層されたもの、又は、Ag-Sn合金のメッキ層から形成されていることを特徴とする電気接触子の使用方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接触子の使用方法に用いる電気接触子。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の理由となった、平成26年6月26日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「理由2
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1、3
・引用文献等 1
・・・
・請求項 1、3
・引用文献等 2
・・・
理由3
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1?3
・引用文献等 1
・・・
・請求項 1、3
・引用文献等 2
・・・
・請求項 1?3
・引用文献等 3
・・・
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2004-093355号公報
2.特開2003-149267号公報
3.特開2004-245669号公報」

2 原査定の理由の判断
(1)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2004-93355号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

a「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プローブピンおよびそれを用いたプローブピン装置に関するものである。さらに詳細には、本発明は、パラジウム合金系のプローブピンおよびそれを用いたプローブピン装置に関するものである。」

b「【0034】
図5および図6は、本発明によるプローブピン装置1の好ましい具体例の概要を示すものである。図5には、本発明によるプローブピン2を複数具備するプローブピン装置1の断面が示されている。これらのプローブピン2は、その先端部が鋭角状に加工されかつその胴体部に絶縁性被覆層3を有するものであって、胴体部に曲げ加工による屈曲を有するものである。」

c「【0038】
この図6に示されるプローブピン装置7は、ウエハ上に形成された多数の集積回路のうち、一列の集積回路を同時に検査するものである。具体的には、このプローブピン装置7は、先ず、ウエハ上の一列の複数の集積回路10のそれぞれの端子にプローブピンを接触させてこれら一列の集積回路10の検査を同時に行い、次いでプローブピン装置7を横にずらして、先に検査を行った隣の一列の集積回路10’の検査を同時に行うことからなる工程を、繰り返すことによって、ウエハ上の全ての集積回路の検査を効率的に行うものである。」

d「【0044】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
<実施例1>
常法に従って、下記の表1に示される組成のPd合金からなる直径75μmの直線状の合金線を得た。この合金線から下記表2に示されるように先端部角度(2θ)を有する長さ(全長)6mmのプローブピンを複数作製した。プローブピン先端部の表面粗さRaは1.0μmとした。また、Si(珪素),C(炭素),O(酸素)の不純物元素量は合計で0.1質量%未満のものを用いた。また、ビッカース硬度HVは400であった。」

e「【0051】
<実施例2および比較例2>
下記の表4に示されるPd合金を使用した以外は実施例1の試料4(先端部角度2θ=60°)と同様にして、プローブピンおよびプローブピン装置を作製した。」

f 表4の記載から、試料9は、Pdが残部、Agが30質量%、Si,C,Oの不純物元素量の合計が0.1質量%未満である、Pd合金であることが読み取れる。

(ア)段落【0038】には「プローブピン」を用いた「プローブピン装置」による「検査」の「工程」が記載されているので、「プローブピンの使用方法」が記載されているといえる。
したがって、段落【0034】及び【0038】の記載から、引用文献1には、「ウエハ上の一列の複数の集積回路10のそれぞれの端子にプローブピンを接触させてこれら一列の集積回路10の検査を同時に行い、次いでプローブピン装置7を横にずらして、先に検査を行った隣の一列の集積回路10’の検査を同時に行うことからなる工程を、繰り返すことによって、ウエハ上の全ての集積回路の検査を行う、プローブピンの使用方法」が記載されているといえる。

(イ)段落【0044】、【0051】及び表4の記載から、引用文献1には、「プローブピンは、Agを30質量パーセント含み残部がPdのPd合金からなる直線状の合金線から作成された」ことが記載されているといえる。

上記(ア)及び(イ)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」)が記載されている。
「ウエハ上の一列の複数の集積回路10のそれぞれの端子にプローブピンを接触させてこれら一列の集積回路10の検査を同時に行い、次いでプローブピン装置7を横にずらして、先に検査を行った隣の一列の集積回路10’の検査を同時に行うことからなる工程を、繰り返すことによって、ウエハ上の全ての集積回路の検査を行う、プローブピンの使用方法であって、
プローブピンは、Agを30質量パーセント含み残部がPdのPd合金からなる直線状の合金線から作成された、プローブピンの使用方法。」

イ 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2003-149267号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【0025】図1、図2の端子(プローブニードル)1、2、図3の端子3は、いずれも、少なくとも表面が、好ましいとした、ベリリウム-銅合金、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、クロム、モリブデン、タングステン又はこれ等を主成分とする材料で形成されている。」

ウ 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2004-245669号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

a「【0041】
次いで、図5(j)に示すように、レジストパターン17の開口部内の金属コンタクタ及び金属配線の上に電界メッキ法によりバンプ状のコンタクト端子7a,7b及び接続端子8a,8bが形成される。即ち、金属コンタクタ16a,16b上にはコンタクト端子7a,7bが形成され、金属配線14a,14b上には接続端子8a,8bが形成される。
【0042】
前記コンタクト端子7a,7bは、プローブ針に相当するものであって、電気的特性試験(プローブ試験)の際に被測定側のICチップの電極端子(パッド又はバンプ)に接触させるものである。つまり、コンタクト端子7a,7bは、フォトリソグラフィ技術によって被測定側ICチップの電極端子の中心座標と同一な個所に形成されたものである。
また、前記接続端子8a,8bは、前記フレキシブルメタル配線5のインナーリードの先端に接続するものである。なお、コンタクト端子7a,7b及び接続端子8a,8bそれぞれは、例えばNi、Pd、Au及びSn-Ag合金の群から選ばれた一の金属からなることが好ましい。」

b「【0051】
次に、動作について説明する。ICチップが複数作製された半導体ウエハWの電気的検査を例えば150℃の温度下で行う場合には、加熱装置29を作動させ半導体ウエハWを加熱し、例えば150℃に温度設定し、その温度を維持する。次いで、ターゲット板26、光学的撮像装置44,45及び静電容量センサ46などから得られた検出データに基づいてステージ27が駆動して半導体ウエハWをプローブカード35に対してアライメントする。」

c「【0053】
その後、ウエハチャック28を上昇させて半導体ウエハW上のICチップの電極端子にコンタクト端子7a,7bの針先を接触させ、更にウエハチャック28を所定量オーバードライブさせてコンタクト端子7a,7bと電極端子とを導通可能な状態にする。」

d「【0054】
この導通可能な状態でテストヘッド31から所定の電気信号を送信し、パフォーマンスボード32、接続リング34、接続部材42、コンタクト端子7a,7b及び電極端子を介してICチップに電気信号を入力すると、この入力信号に基づいた出力信号がICチップの電極端子から接続リング34及びパフォーマンスボード32の電子部品回路37を介してピンエレクトロニクス36に取り込まれ、ICチップの電気的検査が行われる。」

上記a?dの記載から、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
「150℃の温度下で、半導体ウエハW上のICチップの電極端子にコンタクト端子7a,7bの針先を接触させ導通可能な状態にして、ICチップの電気的検査を行う方法であって、
コンタクト端子7a,7bは、Pd、及びSn-Ag合金の群から選ばれた一の金属のメッキ層から形成されている、電気的検査を行う方法。」

(2)対比・判断
平成26年6月26日付け拒絶理由通知(上記「第3 1」)では、請求項2に対して引用文献1及び3を主引例として通知していたところ、補正により当該請求項2が、本願発明1に対応するものとなった。このため、以下では引用発明1及び3を主たる引用発明として、本願発明1との対比及び判断を行う。

ア 引用発明1を主たる引用発明とした場合
(ア)対比
本願発明1と引用発明1を対比する。

a 引用発明1の「集積回路10」、「プローブピン」は、それぞれ、本願発明1の「電気部品」、「電気接触子」に相当する。

b 引用発明1の「ウエハ上の一列の複数の集積回路10のそれぞれの端子にプローブピンを接触させてこれら一列の集積回路10の検査を同時に行」う工程のうち「集積回路10のそれぞれの端子にプローブピンを接触させ」ることは、本願発明1の「電気部品の端子を電気接触子に直接接触させることによって電気的に接続する第1ステップ」に相当する。
プローブピン装置を横にずらす際に、集積回路の端子とプローブピンを引き離すことは常套手段であるので、引用発明1の「次いでプローブピン装置7を横にずら」ことは、本願発明1の「該電気部品の該端子を該電気接触子から引き離す第2ステップ」に相当する。
引用発明1の「先に検査を行った隣の一列の集積回路10’の検査を」「行うことからなる工程を、繰り返すこと」は、「検査」の対象を、先の検査の対象である「集積回路10」から「集積回路10’」へ交換していると捉えることができるから、本願発明1の「該電気部品を交換しつつ繰り返し行う」ことに相当する。

したがって、引用発明1の「ウエハ上の一列の複数の集積回路10のそれぞれの端子にプローブピンを接触させてこれら一列の集積回路10の検査を同時に行い、次いでプローブピン装置7を横にずらして、先に検査を行った隣の一列の集積回路10’の検査を同時に行うことからなる工程を、繰り返すことによって、ウエハ上の全ての集積回路の検査を行う、プローブピンの使用方法」は、本願発明1の「電気部品の端子を電気接触子に直接接触させることによって電気的に接続する第1ステップと、該電気部品の該端子を該電気接触子から引き離す第2ステップとを、該電気部品を交換しつつ繰り返し行う、電気接触子の使用方法」に相当する。

c 引用発明1の「プローブピン」は、合金線から作成されたものであるから、接点部は、合金線であり、
引用発明1の「プローブピンは、Agを30質量パーセント含み残部がPdのPd合金からなる直線状の合金線から作成された」ことと、本願発明1の「前記接点材料は、Pd(パラジウム)-Ag(銀)合金のメッキ層、Agメッキ層及びPd-Ag合金のメッキ層が積層されたもの、Agメッキ層及びPdメッキ層が積層されたもの、又は、Ag-Sn合金のメッキ層から形成されている」こととは、「接点材料は、Pd(パラジウム)-Ag(銀)合金から形成されている」である点で共通する。

すると、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「電気部品の端子を電気接触子に直接接触させることによって電気的に接続する第1ステップと、該電気部品の該端子を該電気接触子から引き離す第2ステップとを、該電気部品を交換しつつ繰り返し行う、電気接触子の使用方法であって、
接点材料は、Pd(パラジウム)-Ag(銀)合金から形成されている電気接触子の使用方法。」

(相違点1)
電気接触子の使用方法が、本願発明1は、「バーンイン環境下」であるのに対して、引用発明1は、そのような特定がない点。
(相違点2)
本願発明1は、「少なくとも前記端子に接触する前記電気接触子の接触部に、前記端子の表面の半田に含まれるSn(錫)が拡散する接点材料を設けると共に、該接点材料を、前記半田より引っ張り強度が高く、且つ、前記Snが拡散した合金においても前記半田より引っ張り強度が高くすることにより、前記第2ステップで、前記電気部品の該端子を前記電気接触子から引き離すときに、前記接触部の表面部分が引き剥がされることを防止」するのに対して、引用発明1は、そのような特定がない点。
(相違点3)
接点材料が、本願発明1は、「Pd(パラジウム)-Ag(銀)合金のメッキ層、Agメッキ層及びPd-Ag合金のメッキ層が積層されたもの、Agメッキ層及びPdメッキ層が積層されたもの、又は、Ag-Sn合金のメッキ層」であるのに対して、引用発明1は、「Agを30質量パーセント含み残部がPdのPd合金からなる直線状の合金線」である点。

(イ)判断
a 特許法第29条第2項について
本願発明1は、「バーンイン環境下」において、「電気接触子の接触部」に「Sn(錫)が拡散する」のであるから、上記相違点1及び2をまとめて検討する。
引用発明1は「プローブピンは、Agを30質量パーセント含み残部がPdのPd合金からなる直線状の合金線」であるが、引用文献1には、バーンイン環境下において、「プローブピン」にSn(錫)が拡散し、Snが拡散した合金においても半田より引っ張り強度を高くして、接触部の表面部分が引き剥がされることを防止することは記載されていない。
また、引用文献2には、表面がパラジウムで形成されているプローブニードルが記載されており(上記「(1)イ」)、引用文献3には、150℃の温度下でICチップの電極端子にコンタクト端子7a,7bの針先を接触させ電気的検査を行い(上記「(1)ウ b及びc」)、コンタクト端子7a,7bは、Pd及びSn-Ag合金の群から選ばれた一の金属からなること(上記「(1)ウ a」)が記載されているが、
引用文献2及び3には、バーンイン環境下において、電気接触子にSn(錫)が拡散し、Snが拡散した合金においても半田より引っ張り強度を高くして、接触部の表面部分が引き剥がされることを防止することは記載されていない。
してみると、引用発明1において、バーンイン環境下において、「プローブピン」にSn(錫)が拡散し、Snが拡散した合金においても半田より引っ張り強度を高くして、接触部の表面部分が引き剥がされることを防止することは、当業者といえども容易であるということはできない。

したがって、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点3について検討するまでもなく、引用発明1及び引用文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

b 特許法第29条第1項第3号について
上記「a」に記載したように、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成は、引用文献1ないし3に記載されておらず、実質的な相違点を有するから、本願発明1は、引用文献1ないし3に記載された発明であるとはいえない。

イ 引用発明3を主たる引用発明とした場合
(ア)対比
本願発明1と引用発明3を対比する。

a 引用発明3の「150℃の温度下で、半導体ウエハW上のICチップの電極端子にコンタクト端子7a,7bの針先を接触させ導通可能な状態にして、ICチップの電気的検査を行う方法」は、本願発明1の「バーンイン環境下において電気部品の端子を電気接触子に直接接触させることによって電気的に接続する第1ステップと、該電気部品の該端子を該電気接触子から引き離す第2ステップとを、該電気部品を交換しつつ繰り返し行う、電気接触子の使用方法」に相当する。

b 引用発明3の「コンタクト端子7a,7bは、Pd、及びSn-Ag合金の群から選ばれた一の金属のメッキ層から形成されている」ことと、本願発明1の「前記接点材料は、Pd(パラジウム)-Ag(銀)合金のメッキ層、Agメッキ層及びPd-Ag合金のメッキ層が積層されたもの、Agメッキ層及びPdメッキ層が積層されたもの、又は、Ag-Sn合金のメッキ層から形成されていること」とは、「前記接点材料は、Ag-Sn合金のメッキ層から形成されていること」である点で共通する。

すると、本願発明1と引用発明3とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
バーンイン環境下において電気部品の端子を電気接触子に直接接触させることによって電気的に接続する第1ステップと、該電気部品の該端子を該電気接触子から引き離す第2ステップとを、該電気部品を交換しつつ繰り返し行う、電気接触子の使用方法であって、
前記接点材料は、Ag-Sn合金のメッキ層から形成されている電気接触子の使用方法。」

(相違点)
本願発明1は、「少なくとも前記端子に接触する前記電気接触子の接触部に、前記端子の表面の半田に含まれるSn(錫)が拡散する接点材料を設けると共に、該接点材料を、前記半田より引っ張り強度が高く、且つ、前記Snが拡散した合金においても前記半田より引っ張り強度が高くすることにより、前記第2ステップで、前記電気部品の該端子を前記電気接触子から引き離すときに、前記接触部の表面部分が引き剥がされることを防止」するのに対して、引用発明3は、そのような特定がない点

(イ)判断
a 特許法第29条第2項について
上記相違点ついて検討する。
引用発明3は「コンタクト端子7a,7bは、Pd及びSn-Ag合金の群から選ばれた一の金属のメッキ層」であるが、引用文献3には、「コンタクト端子7a,7b」にSn(錫)が拡散し、Snが拡散した合金においても半田より引っ張り強度を高くして、接触部の表面部分が引き剥がされることを防止することは記載されていない。
また、引用文献1及び2には、電気接触子にSn(錫)が拡散し、Snが拡散した合金においても半田より引っ張り強度を高くして、接触部の表面部分が引き剥がされることを防止することは記載されていない。
してみると、引用発明3において、「コンタクト端子7a,7b」にSn(錫)が拡散し、Snが拡散した合金においても半田より引っ張り強度を高くして、接触部の表面部分が引き剥がされることを防止することは、当業者といえども容易であるということはできない。

したがって、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明3及び引用文献1、2に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、引用発明3及び引用文献1,2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

b 特許法第29条第1項第3号について
上記「a」に記載したように、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用文献1ないし3に記載されておらず、実質的な相違点を有するから、本願発明1は、引用文献1ないし3に記載された発明であるとはいえない。

(3)本願発明2について
ア 特許法第29条第2項について
上記「(2)ア(イ)a」及び「(2)イ(イ)a」に記載したように、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された事項並びに引用発明3及び引用文献1,2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2は、本願発明1の使用方法に用いる電気接触子としたものであるので、同様に、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 特許法第29条第1項第3号について
本願発明2は、本願発明1の使用方法に用いる電気接触子としたものであるのであるところ、上記「(2)ア(イ)b」及び「(2)イ(イ)b」に記載したように、本願発明1は、引用文献1ないし3に記載された発明であるとはいえないから、同様に、引用文献1ないし3に記載された発明であるとはいえない。

(4)小括
よって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要

「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


請求項1は・・・、「接点材料」を特性、作用により包括的に特定している。
しかしながら、・・・発明の詳細な説明に記載の上記「接点材料」以外の材料を包括的に含む特許請求の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

また、同様に、請求項1を引用する請求項3に係る発明も、発明の詳細な説明に記載したものでない。 」

2 当審拒絶理由の判断
本件補正によって、本願の請求項1に、本件補正前の請求項2に記載の「前記接点材料は、Pd(パラジウム)-Ag(銀)合金のメッキ層、Agメッキ層及びPd-Ag合金のメッキ層が積層されたもの、Agメッキ層及びPdメッキ層が積層されたもの、又は、Ag-Sn合金のメッキ層から形成されている」ことを追加する補正がなされた。このことにより、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとなった。
また、請求項1を引用する請求項2についても、同様に発明の詳細な説明に記載したものとなった。

よって、当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定及び当審の拒絶の理由を検討しても、その理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-20 
出願番号 特願2012-154077(P2012-154077)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G01R)
P 1 8・ 121- WY (G01R)
P 1 8・ 537- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 荒井 誠  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 関根 洋之
須原 宏光
発明の名称 電気接触子の使用方法及び電気接触子  
代理人 佐野 弘  

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