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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60B
管理番号 1325225
審判番号 不服2016-8051  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-01 
確定日 2017-03-07 
事件の表示 特願2013-265945号「キャスターの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日出願公開、特開2014-111443号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月22日に出願した特願2011-96047号の一部を平成25年12月24日に新たな特許出願としたものであって、平成26年11月27日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月25日付けで拒絶理由が通知され、同年8月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年2月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年6月1日付けの手続補正の適否
1.補正の内容
平成28年6月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、次の補正事項を含んでいる。
なお、下線は補正箇所を明示するために付したものである。
(1)補正事項1
特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりとする。
「【請求項1】
車輪を保持する車輪用フレームの天板に貫通部を形成し、前記天板を下方へ押出し加工し、前記貫通部をストレート状の周壁を有する円筒部に形成した後、前記車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で、前記周壁における前記逆さ向きにする前の元の向きでの下部を拡径するとともに、前記周壁における前記元の向きでの上部に段差部を形成して、前記車輪用フレームと一体とした軸受ケースを形成し、前記車輪用フレームを、前記軸受ケースを一体に設けた前記天板付近に重心位置を有する形状とし、前記軸受ケースに軸受を前記元の向きにおける下方より上向きに収容し、前記周壁の前記段差部で前記軸受における前記元の向きでの上部を保持するとともに、前記軸受ケースにおける前記元の向きでの下端周囲を内側へ曲げる絞り加工を行い、前記軸受における前記元の向きでの下部を保持し、前記円筒部の前記周壁の拡径による前記軸受ケースの成形、前記軸受の前記軸受ケースへの収容、並びに、前記軸受ケースの下端周囲の絞り加工の各行程を、前記車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行い、前記軸受を前記軸受ケースのみで固定することを特徴とするキャスターの製造方法。」
(2)補正事項2
明細書の段落【0006】を、次のとおりとする。
「【0006】
請求項1の発明は、車輪を保持する車輪用フレームの天板に貫通部を形成し、前記天板を下方へ押出し加工し、前記貫通部をストレート状の周壁を有する円筒部に形成した後、前記車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で、前記周壁における前記逆さ向きにする前の元の向きでの下部を拡径するとともに、前記周壁における前記元の向きでの上部に段差部を形成して、前記車輪用フレームと一体とした軸受ケースを形成し、前記車輪用フレームを、前記軸受ケースを一体に設けた前記天板付近に重心位置を有する形状とし、前記軸受ケースに軸受を前記元の向きにおける下方より上向きに収容し、前記周壁の前記段差部で前記軸受における前記元の向きでの上部を保持するとともに、前記軸受ケースにおける前記元の向きでの下端周囲を内側へ曲げる絞り加工を行い、前記軸受における前記元の向きでの下部を保持し、前記円筒部の前記周壁の拡径による前記軸受ケースの成形、前記軸受の前記軸受ケースへの収容、並びに、前記軸受ケースの下端周囲の絞り加工の各行程を、前記車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行い、前記軸受を前記軸受ケースのみで固定することを特徴とする。」

2.補正の適否
(1)補正事項1について
補正事項1は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「車輪用フレーム」に関して、「前記車輪用フレームを、前記軸受ケースを一体に設けた前記天板付近に重心位置を有する形状とし、」との限定を付加するとともに、補正前の請求項1に記載した発明の各工程に関して、「前記円筒部の前記周壁の拡径による前記軸受ケースの成形、前記軸受の前記軸受ケースへの収容、並びに、前記軸受ケースの下端周囲の絞り加工の各行程を、前記車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行い、」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、補正事項1による補正は、それぞれ明細書の段落【0023】、【0024】の記載を根拠とするものであり、特許法第17条の2第3項に違反するところはなく、また、同条第4項に違反するところもない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア 引用文献
(ア)引用文献1の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-120505号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。
(ア-1)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、搬送用機器類や各種運搬車などの底部に取り付けて使用されるキャスターに関するものである。」
(ア-2)
「【0002】
【従来の技術】従来、この種のキャスターは、例えば図6に示したように、搬送用機器類や各種運搬車などの底部に固着される台座11の下側に、深溝玉軸受12を介して、車輪用フレーム13の上板13aを回動自在に取り付けたものとしている。図に示したものでは、前記台座11および深溝玉軸受12の内輪12aを止め軸14に固着し、深溝玉軸受12の外輪12bに固着した軸受ケース15に、車輪用フレーム13の上板13aを固着することにより、前記台座11の下側に、深溝玉軸受12を介して、この車輪用フレーム13の上板13aを回動自在に取り付けたものとしている。
【0003】すなわち、上記従来のキャスターは、図7、8に示したように、上部を短径とし下部を長径とした異径円筒体からなる軸受ケース15の長径部15a内に深溝玉軸受12を収容し、長径部15aの下端を折り曲げることにより、この深溝玉軸受12を固着する。そして、前記軸受ケース15の短径部15bを車輪用フレーム13の上板13aに形成した通孔16から突き出させ、軸受ケース15の短径部15bを折り曲げることにより、図9に示したように、車輪用フレーム13の上板13aに軸受ケース15を固着したものとしている。そして、前記図6に示したように、深溝玉軸受12の内輪12aの上側に台座11を位置させると共に、内輪12aの下側に座金17を位置させ、これらに止め軸14を貫通し、この止め軸14の下部をかしめることにより、前記台座11および深溝玉軸受12の内輪12aを止め軸14に固着し、車輪用フレーム13の上板13aが深溝玉軸受12の外輪12bと共に回動するようにしている。そして、前記車輪用フレーム13の上板13aの回動により、車輪用フレーム13の側板13bに軸支されている車輪18が旋回自在となるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のキャスターは、上記したように車輪用フレーム13と軸受ケース15を別体としているため、部品点数が増加すると共に車輪用フレーム13への軸受ケース15の取り付けに手間がかかり、コスト高になるという課題を有していた。
【0005】さらに、従来のキャスターは、上記したように車輪用フレーム13と軸受ケース15を別体とし、軸受ケース15の短径部15bを折り曲げることにより、車輪用フレーム13の上板13aに軸受ケース15を固着したものとしているので、長年の使用などによってその短径部15bの折り曲げが緩んで、車輪用フレーム13と軸受ケース15との固着状態にがたがくるなどして、車輪用フレーム13の上板13aが深溝玉軸受12の外輪12bと共に回動しにくくなって、車輪用フレーム13の側板13bに軸支されている車輪18がスムーズに旋回しないものとなるという課題を有していた。」
(ア-3)
「【0006】そこで、この発明は、上記従来の課題を解決するものであり、車輪用フレームと軸受ケースを一体とし、部品点数を増加させず、コスト高になることはなく、しかも軸受ケースががたつかないものとし、車輪用フレームの上板が回動しにくくなるようなことがなく、車輪用フレームの側板に軸支されている車輪がスムーズに旋回するようにしたキャスターを提供することを目的としてなされたものである。
・・・
【0008】
【発明の実施の形態】以下、この発明のキャスターの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0009】この発明のキャスターは、図1に示したように、搬送用機器類や各種運搬車などの底部に固着される台座1の下側に、深溝玉軸受2を介して、車輪用フレーム3の上板3aを回動自在に取り付けたものとしている。
【0010】図に示す実施形態では、前記台座1および深溝玉軸受2の内輪2aを止め軸4に固着し、車輪用フレーム3の上板3aに形成した軸受ケース5に深溝玉軸受2の外輪2bを固着することにより、前記台座1の下側に、深溝玉軸受2を介して、この車輪用フレーム3の上板3aを回動自在に取り付けたものとしている。
【0011】すなわち、この発明のキャスターは、先ず、図2に示したように、車輪用フレーム3の上板3aの中央に通孔6を形成し、そして図3に示したように、この上板3aを押出し加工することにより前記通孔6の径を拡径すると共に軸受ケース5を形成する。次に、図4に示すように、この軸受ケース5に深溝玉軸受2を収容し、図5に示すように、前記拡径した通孔6の周囲で深溝玉軸受2の外輪2bの下部を保持し、さらに軸受ケース5の上端周囲を絞り加工することにより、深溝玉軸受2の外輪2bの上部を保持することにより、深溝玉軸受2を軸受ケース5に固着したものとしている。そして、前記図1に示したように、この深溝玉軸受2の内輪2aの上側に台座1を位置させると共に、前記内輪2aの下側に座金7を位置させ、これらに止め軸4を貫通し、この止め軸4の下部をかしめることにより、前記台座1および深溝玉軸受2の内輪2aを止め軸4に固着し、車輪用フレーム3の上板3aが深溝玉軸受2の外輪2bと共に回動するようにしている。そのため、この車輪用フレーム3の上板3aの回動により、車輪用フレーム3の側板3bに軸支されている車輪8が旋回自在となる。
【0012】この場合、前記深溝玉軸受2は、内輪2a及び外輪2bの何れの肩も落としていない溝を有しているので、転動ボール9は、これら内輪2a及び外輪2b間に隙間が生ずることなく安定した状態で保持されることになる。さらに、前記深溝玉軸受2が収容されている軸受ケース5は、車輪用フレーム3の上板3aを押出し加工することにより形成され、車輪用フレーム3と一体としているので、この軸受ケース5ががたつくようなことはない。したがって、前記外輪2bと共に回動する車輪用フレーム3の上板3aもがたつくことはなく、回動しにくくなるようなことがなく、車輪用フレーム3の側板3bに軸支されている車輪8もスムーズに旋回するものとなる。」

上記(ア-1)、(ア-2)の記載及び【図6】?【図9】の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「車輪用フレーム13と軸受ケース15を別体とし、
上部を短径とし下部を長径とした異径円筒体からなる軸受ケース15の長径部15a内に深溝玉軸受12を収容し、長径部15aの下端を折り曲げることにより、この深溝玉軸受12を固着し、
前記軸受ケース15の短径部15bを車輪用フレーム13の上板13aに形成した通孔16から突き出させ、軸受ケース15の短径部15bを折り曲げることにより、車輪用フレーム13の上板13aに軸受ケース15を固着する、
キャスターの製造方法。」

また、上記(ア-3)段落【0011】の「そして図3に示したように、この上板3aを押出し加工することにより前記通孔6の径を拡径すると共に軸受ケース5を形成する。」との記載から、一般に板状物を押し出し加工した場合、押し出された部分に凹部が形成されることは明らかであり、またその凹部が「軸受ケース」であれば、軸受の形状に沿った円筒状のものと認められる。
上記(ア-1)、(ア-3)の記載、上記認定事項、及び【図1】?【図5】の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明2」という。)も記載されていると認められる。
「車輪用フレーム3の上板3aの中央に通孔6を形成し、
この上板3aを押出し加工することにより前記通孔6の径を拡径すると共に円筒状の軸受ケース5を形成し、
次に、この軸受ケース5に深溝玉軸受2を収容し、前記拡径した通孔6の周囲で深溝玉軸受2の外輪2bの下部を保持し、さらに軸受ケース5の上端周囲を絞り加工することにより、深溝玉軸受2の外輪2bの上部を保持することにより、深溝玉軸受2を軸受ケース5に固着する
キャスターの製造方法。」

(イ)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実公昭51-24938号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(イ-1)
「第1図に示す構造は外側リング1および内側リング2から成る。内側リングには球4を充填するための孔がある。
外側リング用のハウジングはフランジ5およびリング6の形を具えた板金の深引抜き製品で作られ、フランジとリングとの間の7の部分で1個の折りたたみ部が形成され、同時に、リングの端面は8の部分で内方に曲げられている。外側リング1の保持は折りたたみ部7を形成することまたは折り曲げ部8のいずれによつても実施できる。板金製のこのハウジングを製作するに当つて、その作業段取はリング6を成形するための深引抜きの後、底を凹んだ部分から打ち抜き、打ち抜かれたこの円板は上蓋9として再び構造部材に用いられ、この上蓋の保持方法の1つは前記折りたたみ部7と内側リング2との間で折りたたみ部の下側にその縁部を押し込むこと、また別の方法はフランジ5に上蓋の縁部溶接するかによつてなされる。
内側リング2はリング10内に囲まれた板金製で1個のフランジ13を具えた折り曲げ縁部11,12をもつ。」(2頁3欄20?40行)

(ウ)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-130935号(実開昭64-37360号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ウ-1)
「そこで本考案の目的は、軸受ブラケット及び油受けを共用してすべり軸受ところがり軸受とが選択的に取付け可能になり、部品の種類を少なくなし得る回転電機の軸受支持装置を提供するにある。」(明細書2頁末行?3頁3行)
(ウ-2)
「第6図に示す油受け27は本考案の第4の実施例を示すもので、第3の実施例の油受け25と異なるところは、端面部26に連続して円筒部24よりも径小な円筒部28を形成し、円筒部28の端部にこれを拡開するように円筒部28よりも径大な嵌合凹部11に代わる嵌合凹部29を形成した点にあり、円筒部28と嵌合凹部29との間の段部が環状の受け部30になつている。」(明細書7頁13?20行)

イ 対比・判断
(ア)補正発明と引用発明1との対比・判断
補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「車輪用フレーム13」とその「上板13a」は、補正発明の「車輪を保持する車輪用フレーム」とその「天板」に相当する。
引用発明1の「車輪用フレーム13の上板13aに形成した通孔16」は、通孔16を形成する工程を経ていることを示しているといえるので、補正発明の「車輪を保持する車輪用フレームの天板に貫通部を形成」することを含んでいるといえる。
引用発明1の「上部を短径とし下部を長径とした異径円筒体からなる軸受ケース15」は、短径とした部分と長径とした部分との間に段差が形成されることは明らかであり、円筒体であるので周壁を有していることも明らかであり、そのような形状に形成する工程を経ていることを示しているといえる。そうすると、引用発明1の当該「軸受ケース15」の形状から示される工程は、補正発明の「前記天板を下方へ押出し加工し、前記貫通部をストレート状の周壁を有する円筒部に形成した後、前記車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で、前記周壁における前記逆さ向きにする前の元の向きでの下部を拡径するとともに、前記周壁における前記元の向きでの上部に段差部を形成して、前記車輪用フレームと一体とした軸受ケースを形成」することと、「ストレート状の周壁を有する円筒部と、周壁の上部に段差部とを形成した、軸受ケースを形成」する限りにおいて一致する。
引用発明1の「深溝玉軸受12」は、補正発明の「軸受」に相当する。
引用発明1の「上部を短径とし下部を長径とした異径円筒体からなる軸受ケース15の長径部15a内に深溝玉軸受12を収容」することは、長径部15aが軸受ケース15の下部であることから、深溝玉軸受12を軸受ケース15の下方から上向きに収容することとなり、補正発明の「軸受ケースに軸受を前記元の向きにおける下方より上向きに収容」することと、「軸受ケースに軸受を下方より上向きに収容」する限りにおいて一致する。
引用発明1の「上部を短径とし下部を長径とした異径円筒体からなる軸受ケース15の長径部15a内に深溝玉軸受12を収容し、長径部15aの下端を折り曲げることにより、この深溝玉軸受12を固着」することは、上述のとおり、軸受ケース15の短径とした部分と長径とした長径部15aとの間には段差が形成されていることは明らかであり、深溝玉軸受12及び軸受ケース15の上下関係と併せみれば、補正発明の「周壁の段差部で軸受における元の向きでの上部を保持するとともに、軸受ケースにおける元の向きでの下端周囲を内側へ曲げる絞り加工を行い、軸受における元の向きでの下部を保持」することと、「周壁の段差部で軸受の上部を保持するとともに、軸受ケースの下端周囲を内側へ曲げる絞り加工を行い、軸受の下部を保持」する限りにおいて一致する。また、引用発明1の前記「上部を短絡し・・・(略)・・・この深溝玉軸受12を固着」することは、補正発明の「軸受を軸受ケースのみで固定する」ことに相当する。
引用発明1の「キャスターの製造方法」は、補正発明の「キャスターの製造方法」に相当する。

そうすると、両者は、
「車輪を保持する車輪用フレームの天板に貫通部を形成し、
ストレート状の周壁を有する円筒部と、周壁の上部に段差部とを形成した、軸受ケースを形成し、
軸受ケースに軸受を下方より上向きに収容し、
周壁の段差部で軸受の上部を保持するとともに、軸受ケースの下端周囲を内側へ曲げる絞り加工を行い、軸受の下部を保持し、
軸受を軸受ケースのみで固定するキャスターの製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕
補正発明は、「車輪用フレームを、軸受ケースを一体に設けた天板付近に重心位置を有する形状とし」、「円筒部の周壁の拡径による軸受ケースの成形、軸受の軸受ケースへの収容、並びに、軸受ケースの下端周囲の絞り加工の各行程を、車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」うものであり、と特定されているのに対して、引用発明1は、「車輪用フレーム13」の形状は前記のように特定されておらず、各工程における車輪用フレーム3の向きは逆さ向きとは特定されていない点。
〔相違点2〕
補正発明は、「前記天板を下方へ押出し加工し、前記貫通部をストレート状の周壁を有する円筒部に形成した後、前記車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で、前記周壁における前記逆さ向きにする前の元の向きでの下部を拡径するとともに、前記周壁における前記元の向きでの上部に段差部を形成して、前記車輪用フレームと一体とした軸受ケースを形成し」(以下、「工程1」という。)、その車輪用フレームと一体とした軸受ケースに、「前記元の向きにおける下方より上向きに収容し、前記周壁の前記段差部で前記軸受における前記元の向きでの上部を保持するとともに、前記軸受ケースにおける前記元の向きでの下端周囲を内側へ曲げる絞り加工を行い、前記軸受における前記元の向きでの下部を保持」する(以下、「工程2」という。)と特定されているのに対して、引用発明1は、「軸受ケース15」が車輪用フレーム13とは別体であり、軸受ケース15に深溝玉軸受12を収容した後、「軸受ケース15の短径部15bを車輪用フレーム13の上板13aに形成した通孔16から突き出させ、軸受ケース15の短径部15bを折り曲げることにより、車輪用フレーム13の上板13aに軸受ケース15を固着する」ものであり、前記の各工程を有していない点。

上記各相違点について検討する。
〔相違点1について〕
引用文献2には、外側リング用のハウジングはフランジ5およびリング6の形を具えた板金の深引抜き製品で作られ、フランジとリングとの間の7の部分で1個の折りたたみ部が形成され、同時に、リングの端面は8の部分で内方に曲げられていること、外側リング1の保持は折りたたみ部7を形成することまたは折り曲げ部8のいずれによっても実施できることが記載されている(上記ア(イ)(イ-1)参照)。
引用文献3には、転がり軸受が嵌合する嵌合凹部29と、転がり軸受の外周部端面が突き当たる環状の受け部30とを、径小な円筒部28の端部を拡開して形成することが記載されている(上記ア(ウ)(ウ-2)参照)。
しかしながら、いずれの引用文献にも、相違点1に係る補正発明の「車輪用フレームを、軸受ケースを一体に設けた天板付近に重心位置を有する形状」とすること、及び「円筒部の周壁の拡径による軸受ケースの成形、軸受の軸受ケースへの収容、並びに、軸受ケースの下端周囲の絞り加工の各行程を、車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」うことは記載も示唆もされていない。

相違点1に係る補正発明の構成に関して、本願の明細書には次のとおり記載されている。
「【0023】
また、車輪用フレーム3の形状は、軸受ケース7を一体に設けた天板4付近に重心位置を有しているため、天板4を下方に向け、左右の側板17を上方に向けた逆さ向きの状態で載置する場合に、重心位置が低くく、安定性の良い、いわゆる、座りがいい形状となっている。
【0024】
そのため、図4?図6に示す、円筒部11の周壁10の拡径による軸受ケース7の成形、軸受2の軸受ケース7への収容、並びに、軸受ケース7の下端13周囲の絞り加工の各行程は、車輪用フレーム3の天板4を下方に向け、左右の側板17を上方に向けた逆さ向きの状態で作業を行うことが製造ラインの自動化等において好ましい(図7参照)。
【0025】
この場合、円筒部11の中心軸方向(図中、X方向)に下方から上方へと行われる絞り加工のプレス手段等の動作方向が重力方向と略等しくなることで、プレス手段等の押圧力の損失を少なくして絞り加工を効果的に行い易くするだけでなく、収容口15や左右の側板17が上向きとなっていることにより、軸受2の収容やその後の左右の側板17への車輪18の取り付けも行い易くなり、一連の製造工程が滞りなくスムーズに行われるため、作業効率の向上を図ることができる。」
上記段落【0024】、【0025】の記載によれば、相違点1に係る補正発明の「・・・(略)・・・車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」うことは、「製造ラインの自動化等において好まし」く、「一連の製造工程が滞りなくスムーズに行われるため、作業効率の向上を図ることができる」という作用効果を有しているといえる。
また、上記段落【0023】の記載によれば、相違点1に係る補正発明の「車輪用フレームを、・・・(略)・・・を有する形状」とすることは、「天板4を下方に向け、左右の側板17を上方に向けた逆さ向きの状態で載置する場合に、重心位置が低く、安定性の良い、いわゆる、座りがいい」という作用効果を有しており、上述の「・・・車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」うことに寄与するものといえる。

そうすると、補正発明は、その相違点1に係る構成により「キャスターの製造方法」として有意な作用効果をもたらすものといえ、そのような構成及び作用効果は、引用発明1及び引用文献2、3に記載の事項から当業者が容易に想到し得るとはいえない。
よって、引用発明1を、相違点1に係る補正発明のように構成することは、引用文献2、3に記載の事項から当業者が容易に想到し得るとはいえない。

〔相違点2について〕
相違点2に係る補正発明の「工程1、2」は、相違点1に係る補正発明の「・・・車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」うことにおける各工程の具体的手順を述べたものであり、引用文献2及び3に各工程の一部が示唆されているとしても、上述のとおり「・・・車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」うことを示唆するものではない以上、「工程1、2」が引用文献2及び3の記載から容易想到ということはできない。
よって、引用発明1を、相違点2に係る補正発明のように構成することは、引用文献2、3に記載の事項から当業者が容易に想到し得るとはいえない。

なお、引用文献1には、その段落【0002】、【0003】に記載されたもの、すなわち引用発明1は、段落【0004】、【0005】に記載されたとおり「車輪用フレーム13と軸受ケース15を別体」としていることに起因した課題を有しており(上記ア(ア-2)参照)、その課題を解決するために段落【0006】に記載されたように「車輪用フレームと軸受ケースを一体」とし、段落【0008】?【0012】(上記ア(ア-3)参照)に記載されたものとすることが記載されており、上記ア(ア)で述べたとおり、段落【0008】?【0012】には引用発明2が記載されていると認められる。
そうすると、引用文献1の記載に接した当業者であれば、引用発明1の車輪用フレーム13と軸受ケース15を一体としたものは引用発明2になると理解するのが合理的である。
そして、後記(イ)で説示するとおり、引用発明2は、補正発明の「・・・車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」う構成を有していないので、引用発明1を、相違点2に係る補正発明の構成の内の「車輪用フレームと一体とした軸受ケースを形成」するようにできたとしても、それとともに相違点2に係る補正発明のその余の構成、及び、相違点1に係る補正発明の構成とすることまでもが容易想到ということはできない。

したがって、補正発明は、引用発明1及び引用文献2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)補正発明と引用発明2との対比・判断
補正発明と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「車輪用フレーム3」とその「上板3a」は、補正発明の「車輪を保持する車輪用フレーム」とその「天板」に相当する。
引用発明2の「車輪用フレーム3の上板3aの中央に通孔6を形成」することは、補正発明の「車輪を保持する車輪用フレームの天板に貫通部を形成」することに相当する。
引用発明2の「この上板3aを押出し加工すること」は、補正発明の「天板を下方へ押出し加工」することに相当する。
引用発明2の「この上板3aを押出し加工することにより通孔6の径を拡径すると共に円筒状の軸受ケース5を形成」することは、軸受ケース5が車輪用フレーム3から一体に形成されることは明らかであるので、補正発明の「天板を下方へ押出し加工し、貫通部をストレート状の周壁を有する円筒部に形成した後、車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で、周壁における逆さ向きにする前の元の向きでの下部を拡径するとともに、周壁における元の向きでの上部に段差部を形成して、車輪用フレームと一体とした軸受ケースを形成」することと、「天板を下方へ押出し加工し、貫通部をストレート状の周壁を有する円筒部に形成して、車輪用フレームと一体とした軸受ケースを形成」する限りにおいて一致する。
引用発明2の「深溝玉軸受2」は、補正発明の「軸受」に相当する。
引用発明2の「この軸受ケース5に深溝玉軸受2を収容」することは、補正発明の「軸受ケースに軸受を元の向きにおける下方より上向きに収容」することと、「軸受ケースに軸受を収容」する限りにおいて一致する。
引用発明2の「拡径した通孔6の周囲で深溝玉軸受2の外輪2bの下部を保持し、さらに軸受ケース5の上端周囲を絞り加工することにより、深溝玉軸受2の外輪2bの上部を保持することにより、深溝玉軸受2を軸受ケース5に固着する」ことは、補正発明の「周壁の段差部で軸受における元の向きでの上部を保持するとともに、軸受ケースにおける元の向きでの下端周囲を内側へ曲げる絞り加工を行い、軸受における元の向きでの下部を保持」することと、「軸受の上部を保持するとともに、軸受の下部を保持」する限りにおいて一致する。また、引用発明2の前記「拡径した通孔6の周囲で・・・(略)・・・深溝玉軸受2を軸受ケース5に固着する」ことは、補正発明の「軸受を前記軸受ケースのみで固定すること」に相当する。
引用発明2の「キャスターの製造方法」は、補正発明の「キャスターの製造方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「車輪を保持する車輪用フレームの天板に貫通部を形成し、
前記天板を下方へ押出し加工し、前記貫通部をストレート状の周壁を有する円筒部に形成して、前記車輪用フレームと一体とした軸受ケースを形成し、
前記軸受ケースに軸受を収容し、前記軸受の上部を保持するとともに、前記軸受の下部を保持し、
前記軸受を前記軸受ケースのみで固定するキャスターの製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点3〕
補正発明は、「車輪用フレームを、軸受ケースを一体に設けた天板付近に重心位置を有する形状とし」、「円筒部の周壁の拡径による軸受ケースの成形、軸受の軸受ケースへの収容、並びに、軸受ケースの下端周囲の絞り加工の各行程を、車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」うものであり、と特定されているのに対して、引用発明2は、「車輪用フレーム3」の形状は前記のように特定されておらず、また、軸受ケース5に収容した深溝玉軸受2は拡径した通孔6の周囲で外輪2bの下部を保持され、軸受ケース5の上端周囲を絞り加工することで深溝玉軸受2の外輪2bの上部を保持するものであるので、車輪用フレーム3は上板3aを上にしたまま工程を進めるものであり、各工程における車輪用フレーム3の向きは逆さ向きとはされていない点。
〔相違点4〕
補正発明は、貫通部をストレート状の周壁を有する円筒部に形成した後、「前記車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で、前記周壁における前記逆さ向きにする前の元の向きでの下部を拡径するとともに、前記周壁における前記元の向きでの上部に段差部を形成して」、車輪用フレームと一体とした軸受ケースを形成し(以下、「工程3」という。)、軸受ケースに軸受を「元の向きにおける下方より上向きに」収容し(以下、「工程4」という。)、「周壁の段差部で軸受における元の向きでの上部を保持するとともに、軸受ケースにおける元の向きでの下端周囲を内側へ曲げる絞り加工を行い、軸受における元の向きでの下部を保持し」(以下、「工程5」という。)、と特定されているのに対して、引用発明2は、前記の各工程を有していない点。

上記各相違点について以下検討する。
〔相違点3について〕
上記〔相違点1について〕で述べたと同様に、補正発明は、その相違点3に係る構成により「キャスターの製造方法」として有意な作用効果をもたらすものといえ、そのような構成及び作用効果は、引用発明2及び引用文献2、3に記載の事項から当業者が容易に想到し得るとはいえない。
よって、引用発明2を、相違点3に係る補正発明のように構成することは、引用文献2、3に記載の事項から当業者が容易に想到し得るとはいえない。

〔相違点4について〕
相違点4に係る補正発明の「工程3?5」は、相違点3に係る補正発明の「・・・車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」うことにおける各工程の具体的手順を述べたものであり、引用文献2及び3に各工程の一部が示唆されているとしても、上述のとおり「・・・車輪用フレームの天板を下方に向けた逆さ向きの状態で作業を行」うことを示唆するものではない以上、「工程3?5」が引用文献2及び3の記載から容易想到ということはできない。
よって、引用発明2を、相違点4に係る補正発明のように構成することは、引用文献2、3に記載の事項から当業者が容易に想到し得るとはいえない。

したがって、補正発明は、引用発明2及び引用文献2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括
したがって、補正発明は、引用発明1または2、及び、引用文献2、3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(2)補正事項2について
補正事項2は、補正事項1による補正に伴い発明の詳細な説明の記載を補正するものであり、特許法第17条の2第3項に違反するところはない。

3.むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、請求項1に係る発明は、上記第2の2.(1)で述べたとおり、引用発明1または2、及び、引用文献2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本願については、「引用発明1及び引用文献2、3から容易想到」とした原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-20 
出願番号 特願2013-265945(P2013-265945)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 倉田 和博  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
平田 信勝
発明の名称 キャスターの製造方法  
代理人 牛木 護  
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