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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1325285
審判番号 不服2015-11239  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-16 
確定日 2017-02-16 
事件の表示 特願2012-65592「ノンハロゲン難燃性樹脂組成物およびそれを用いた電線・ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月30日出願公開、特開2013-194214〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月22日を出願日とする特許出願であって、平成26年1月15日に上申書とともに手続補正書が提出され、同年11月20日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月15日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年3月17日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年6月16日に拒絶査定不服審判請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年7月29日付けで前置報告がされたものである。



第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、明りょうでない記載の釈明を目的に平成27年6月16日に提出された手続補正書により適法に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「樹脂成分100質量部に対して金属水酸化物60?100質量部及び窒素系難燃剤5?20質量部を含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物であって、前記樹脂成分100質量部中にポリオレフィン系樹脂50?80質量部及びスチレン系エラストマー20?50質量部を含有するとともに、前記ポリオレフィン系樹脂の一部としてエポキシ基含有エチレン系共重合体を2?15質量部、高密度ポリエチレンを10?30質量部及び酢酸ビニル含有量が20質量部以上50質量部以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する、ノンハロゲン難燃性樹脂組成物。」



第3 原査定の理由
原査定の拒絶理由の概要は、本願請求項1ないし7に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
なお、請求項1は、平成27年6月16日に提出された手続補正書により補正されていない。



第4 特許法第29条第2項(進歩性)
1.引用例の記載
本願出願前に頒布された下記の刊行物には、それぞれ次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付加した。

(1)特開2001-226536号公報(原査定の拒絶理由で引用された引用文献1と同じ。以下、「引用例1」という。)
(1ア)「【請求項1】 (a)ポリオレフィン樹脂20?70重量部、
(b)0.1?20重量%のエポキシ基含有コモノマーとオレフィンとのオレフィン共重合体樹脂5?60重量部、
および
(c)(c1)スチレン系エラストマー、(c2)0.1?20重量%の酸無水物により変性されたスチレン系エラストマーおよび(c3)0.1?20重量%の酸無水物により変性されたポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種の重合体成分5?60重量部
(ただし、成分(a)、(b)および(c)の合計は、100重量部である。)並びに
(c)金属水酸化物30?200重量部を含んでなるオレフィン系樹脂組成物。
【請求項2】 重合体成分(c)の割合は40?10重量部であり、金属酸化物の割合は50?150重量部である請求項1に記載のオレフィン系樹脂組成物。
(当審注:「金属酸化物」は、「金属水酸化物」の誤記であると認める。)
【請求項3】 金属水酸化物は、カップリング剤により表面処理された水酸化マグネシウムである請求項1に記載のオレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】 金属水酸化物は、シランカップリング剤により表面処理された水酸化マグネシウムである請求項3に記載のオレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載のオレフィン系樹脂組成物により被覆された電線。」(特許請求の範囲請求項1?5)

(1イ)「【発明が解決しようとする課題】
本発明は、自動車用電線の被覆材料に要求される耐摩耗性、難燃性、引張特性、柔軟性などの特性をバランスよく満足する、ハロゲンフリーオレフィン系樹脂組成物を提供しようとするものである。」(段落【0004】)

(1ウ)「本発明の組成物に含まれるポリオレフィン樹脂(a)の種類は特に限定されず、オレフィンホモポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなど)、オレフィンコポリマー(例えばエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体など)、オレフィンと他のモノマーとの共重合体(例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体など)を用いることができる。これらは、単独で、または2種以上の混合物(ブレンド)として用いることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリプロピレン/EVAブレンド、ポリプロピレン/EEAブレンド、ポリプロピレン/エチレン-プロピレンゴムブレンドなどが好ましい。
・・・
オレフィン系共重合体樹脂(b)は、0.1?20重量%のエポキシ基含有コモノマーとオレフィンとの共重合体である。エポキシ基含有コモノマーとしては、既知のグリシジル基を有する不飽和化合物、例えばグリシジルメタクリレートなどを用いることができる。オレフィンとしては、例えば炭素数1?6のオレフィン、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテンなどを挙げることができる。これらオレフィンと共に、他の重合性モノマー、例えば酢酸ビニル、アクリレートまたはメタクリレート(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチルなど)を共重合させてもよい。」(段落【0006】?【0008】)

(1エ)「【実施例】
以下、実施例および比較例を示して、本発明をより具体的に説明する。
実施例1?3および比較例1?4
表1?2に示す成分を、示された量で混合し、二軸押出機により250℃で混練した。得られた組成物を、撚線導体0.5sq(7/0.32軟銅線)の周囲に、被覆厚0.3mmで押出成形した。押出成形には、直径がそれぞれ1.6mmおよび1.0mmのダイスおよびニップルを使用し、押出温度は、ダイス210?230℃、シリンダ200?240℃とし、線速100m/分で押出成形した。
なお、表中の略号の意味は以下の通りである。
プロピレンBP:プロピレン-エチレンブロックコポリマー(MFR0.5)(株式会社トクヤマ製RB610A)。
GMA-EVA:グリシジルメタクリレート-エチレン-酢酸ビニル共重合体(住友化学株式会社製ボンドファースト7B;グリシジルメタクリレート含量12重量%、VA含量5重量%)。
SEBS:ポリブタジエンとのブロック共重合体の二重結合を水素添加により飽和させたスチレン系エラストマー(旭化成株式会社製タフテックH1041)。
キスマ5NH:アミノシランカップリング剤により表面処理した水酸化マグネシウム(協和化学株式会社製)。
老化防止剤としては、ヒンダードフェノール系老化防止剤(商品名「トミノックスTT」(吉富製薬株式会社製))を用いた。
実施例1?3および比較例1?4で得た被覆電線について、難燃性、引張強さ/伸び、耐摩耗性を、JASO(日本自動車技術会)D 611に準拠して測定した。耐摩耗性はサンプル数3の平均であり、500回以上を合格とする。柔軟性は、電線折り曲げ時、手感触により評価した。加工性は、電線端末皮剥時、ヒゲの形成の有無により評価した。結果を表1?2に示す。
【表1】

」(段落【0019】?【0022】)

(2)特開平2-75642号公報(原査定の拒絶理由で引用された引用文献2と同じ。以下、「引用例2」という。)
(2ア)「1.ポリオレフィン又はエチレンと他の単量体との共重合体100重量部に対し、無機難燃剤50?200重量部及びメラミンシアヌレート2?30重量部を含有して成ることを特徴とする難燃性組成物。
2.ポリオレフィン又はエチレンと他の単量体との共重合体100重量部に対し、無機難燃剤50?200重量部及びメラミンシアヌレート2?30重量部を含有する難燃性組成物を被覆した電線・ケーブル。」(特許請求の範囲請求項1及び2)

(2イ)「本発明におけるポリオレフィンとしては、例えば、LDPE,LLDPE,HDPEのような各種ポリエチレンやポリブテン-1,ポリプロピレンなどの単量体の単一重合体及びそれらオレフィン単量体類の二種以上の共重合体、例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPR),エチレン-ブテン-1共重合体,エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)のような共重合体類が含まれる。また、エチレンと他の単量体との共重合体は、代表的には、例えば、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA),エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。これらの重合体類や共重合体類は、2種以上を混合して用いることができる。
また、無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、及びクレー,タルク,アルミナ,シリカ等の金属酸化物類が挙げられる。
本発明の組成物には、これらの無機難燃剤と組み合わせてメラミンシアヌレートが配合される。
上記無機難燃剤とメラミンシアヌレートとの配合量は、オレフィン系ベース樹脂100重量部当り、それぞれ50?200重量部(phr)及び2?30重量部(phr)である。両添加成分の添加量が上記範囲を逸脱すると、前記本発明の目的が達成されないので好ましくない。一般に添加量が少ないと難燃化が不充分となり、また多すぎると、組成物の機械的特性が低下する。」(2頁左上欄15行?左下欄2行)

(2ウ)「〔発明の効果〕
以上のように、メラミンシアヌレートを含む本発明の組成物は、次のような効果を有する。
1.メラミンシアヌレートを少量添加するだけで難燃性が顕著に向上する。
2.黒色以外の色物の着色ノンハロゲン化高難燃組成物を作ることができる。
3.水酸化マグネシウムなどの無機難燃材の添加量を減らすことが可能となるため機械的特性の低下を伴わない高難燃性組成物を作ることができる。」(3頁左上欄6?15行)

(3)特開2009-114230号公報(原査定の拒絶理由で引用された引用文献3と同じ。以下、「引用例3」という。)
(3ア)「【請求項1】
エチレン系共重合体のみ、又はエチレン系共重合体並びにポリオレフィン樹脂及び/若しくはスチレン系エラストマーを主成分とする樹脂成分(a)100質量部に対し、水酸化マグネシウムが70?250質量部、水酸化アルミニウムが10?150質量部およびメラミンシアヌレートが0?100質量部含有し、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムの合計が樹脂成分(a)100質量部に対して150?300質量部含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
上記難燃樹脂組成物中のメラミンシアヌレートが樹脂成分(a)100質量部に対し、10?80質量部含有してなる請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
上記樹脂成分(a)中の酢酸ビニル量、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸および不飽和カルボン酸成分の合計が22?70質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物が周りに被覆されていることを特徴とする絶縁電線、ケーブル、光ファイバコード又は光ファイバケーブル。」(特許請求の範囲請求項1?4)

(3イ)「本発明は、難燃性樹脂組成物に関し、詳しくは、焼却廃棄や火災等で絶縁電線が燃焼する際に有毒なハロゲンガスを一切発生せず、電線、ケーブル等に被覆材として使用した状態においては優れた難燃性、機械的強度を有する難燃性樹脂組成物及びこれを被覆した絶縁電線等に関する。」(段落【0001】)

(3ウ)「(a-1)エチレン系共重合体
本発明におけるエチレン系共重合体には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-エチルアクリレ-ト共重合体、エチレン-メタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸アルキル系アクリルゴム、エチレン-アクリル酸アルキル-アクリル酸系アクリルゴムなどが挙げられる。特に、エチレン系共重合体の中で難燃性や耐候性を向上させるためにはエチレン-酢酸ビニル共重合体を使用するのがよい。
樹脂成分(a)には、エチレン系共重合体は必須であり、その含有量は樹脂成分(a)100質量%中20?100質量%が好ましく、さらに好ましくは35?90質量%である。この共重合体の量が少な過ぎると難燃性、耐候性、耐熱性が低下する。
またさらに、樹脂成分(a)においては、このエチレン系共重合体成分の酢酸ビニル量、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸および不飽和カルボン酸成分の合計がその樹脂成分中で22?70質量%であれば、さらに難燃性が大幅に向上することが確認された。」(段落【0009】)

(3エ)「(c)メラミンシアヌレート
本発明の樹脂組成物には、難燃性を向上させるためにメラミンシアヌレート化合物を加えることも出来る。
本発明で用いるメラミンシアヌレートは、粒径が細かい物が好ましく、その平均粒径は好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。また、分散性の面から表面処理されたメラミンシアヌレート化合物が好ましく用いられる。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物としては、例えばメラパー(商品名、チバスペシャリティケミカルズ)や、MC6000(商品名、日産化学(株)製)として上市されているものがある。
本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物として、例えば以下のような構造のメラミンシアヌレートがある。
【化1】

本発明のメラミンシアヌレートは、樹脂組成物には含有してもしなくてもよく、その含有量は樹脂成分(a)100質量部に対し、0?100質量部であり、10?80質量部が好ましく、15?70質量部がさらに好ましい。この含有量が多すぎると、力学的強度が低下したり、耐候性が著しく低下する。これを加えることにより、樹脂組成物に更に高い難燃性を付与することが可能となり、絶縁電線等の難燃性をより向上できる。」(段落【0019】?【0021】)

(3オ)「[実施例および比較例]
表1に各実施例および比較例の樹脂組成物の各成分の含有量を示す(含有量を示す数値は質量部による)。
なお、表中「酸、エステル含有量」とは、樹脂成分(a)においてエチレン系共重合体成分の酢酸ビニル量、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸および不飽和カルボン酸成分の合計量(%)である。
表に示す各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して、各絶縁樹脂組成物を製造した。
表中に示す各成分材料は以下の通りである。
1.エバフレックス EV180[商品名:三井デュポンポリケミカル(株)製]
エチレン-酢酸ビニル共重合体(a-1)
酢酸ビニル含有量:33質量%
2.YX-21K [商品名:東ソー(株)製]
エチレン-酢酸ビニル共重合体(a-1)
酢酸ビニル含有量:41質量%
3.レバプレン800HV [商品名:ランクセス社製]
エチレン-酢酸ビニル共重合体(a-1)
酢酸ビニル含有量:80質量%
4.ベイマックDP [商品名:デュポン社製]
アクリルゴム(a-1)
エチレン-アクリルメチル共重合体ゴム
5.BC8A [商品名:日本ポリプロピレン(株)製]
ブロックポリプロピレン(a-2)
MFR:0.8g/10分
6.ダイナロン1320P [商品名:JSR(株)製]
スチレン系エラストマー(a-3)
水添スチレンーブタジエンゴム
7.アドマーXE070 [商品名:三井化学(株)製]
無水マレイン酸で変性されたポリエチレン
マレイン酸変性量:1質量%
8.キスマ5P [商品名:協和化学工業(株)製]
シランカップリング剤処理水酸化マグネシウム(b)
シランカップリング剤処理:0.3%
9.ハイジライトH42M [商品名:昭和電工(株)製]
無処理水酸化アルミニウム
10.MC6000 [商品名:日産化学(株)製]
メラミンシアヌレート(c)
(その他の添加剤)
11.イルガノックス1010 [商品名:チバスペシャリティケミカルズ製]
ヒンダートフェノール系老化防止剤
12.アデカスタブAO-412S [商品名:旭電化工業(株)製]
チオエーテル系老化防止剤
13.ステアリン酸カルシウム [製造元:日本油脂(株)]
ステアリン酸カルシウム
次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径1.2mmφの錫メッキ軟銅撚線 構成:30本/0.18mmφ)上に、予め溶融混練した表に示す各実施例および比較例の樹脂組成物を押し出し法により被覆して、各々絶縁電線を製造した。外径は3.6mmとした。架橋を行う場合、樹脂組成物の架橋処理は、それぞれの被覆後、電子線を5Mrad照射して行った。
なお、表中に照射量の表示が「-」は照射を行っていない。
得られた絶縁電線について、以下の試験を行い、得られた結果を表1に示した。
(1)引張り強さ、伸び
各絶縁電線の伸び(%)と絶縁電線から被覆層の管状片を作成し、その引張り強さ(MPa)とを、UL1581に準拠し、標線間20mm、引張速度200mm/分の条件で測定した。
引張り強さおよび伸びの要求特性は、それぞれ8MPa以上、150%以上である。
(2)難燃性(VW-1)
各絶縁電線について、UL1581の「Vertical Flame Test」をおこなった。3本のサンプルで試験を行い3本共に合格したものを「合格」、それ以外を「不合格」とした。
(3)外観
外観は、押出し被覆時の外観や絶縁電線の外径の変化の有無、表面状態を目視で調査し、これらが良好であったものは「○」とし、外観に問題が有り、又は押出が出来なかったものは「×」とした。
【表1】

実施例1?7は引張り強さ、伸び等いずれの評価項目においても満足な結果が得られている。特に実施例1?7は、厳しい難燃性試験(VW-1)にも合格する難燃性を有している。したがて、一般用の難燃性絶縁電線としては勿論、電子ワイヤハーネスとしても有用である。」(段落【0032】?【0037】)

(4)特開2003-151376号公報(原査定の拒絶理由で引用された引用文献4と同じ。以下、「引用例4」という。)
(4ア)「【請求項1】 ハロゲン元素を含まないオレフィン系重合体或いは熱可塑性エラストマー100重量部と窒素系難燃剤40?200重量部からなるノンハロゲン難燃性樹脂組成物を導体上に被覆した、硬度(ショアD)が45以下、引張強度が10MPa以上、伸びが350%以上、かつJIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格することを特徴とする難燃性電源コード。
【請求項2】 ハロゲン元素を含まないオレフィン系重合体或いは熱可塑性エラストマー100重量部と窒素系難燃剤40?200重量部、シリコーン系難燃助剤20重量部以下からなるノンハロゲン難燃性樹脂組成物を導体上に被覆した、硬度(ショアD)が45以下、引張強度が10MPa以上、伸びが350%以上、かつJIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格することを特徴とする難燃性電源コード。
【請求項3】 エチレン系共重合体5?95重量部とスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体95?5重量部からなる混合物100重量部に、窒素系難燃剤40?200重量部を配合したノンハロゲン難燃性樹脂組成物を導体上に被覆した、硬度(ショアD)が45以下、引張強度が10MPa以上、伸びが350%以上、かつJIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格することを特徴とする難燃性電源コード。
【請求項4】 エチレン系共重合体5?95重量部とスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体95?5重量部からなる混合物100重量部に、窒素系難燃剤40?200重量部とシリコーン系難燃助剤20重量部以下を配合したノンハロゲン難燃性樹脂組成物を導体上に被覆した、硬度(ショアD)が45以下、引張強度が10MPa以上、伸びが350%以上、かつJIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格することを特徴とする難燃性電源コード。
【請求項5】 前記請求項1?4のいずれかに記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物に、表面処理を施した水酸化マグネシウム100重量部以下を添加したノンハロゲン難燃性樹脂組成物を導体上に被覆した、硬度(ショアD)が45以下、引張強度が10MPa以上、伸びが350%以上、かつJIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格することを特徴とする難燃性電源コード。」(特許請求の範囲請求項1?5)

(4イ)「【発明の属する技術分野】本発明は、ハロゲン元素を含まず優れた難燃性並びに柔軟性(可撓性)を有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物を被覆材料として用いた難燃性電源コードに関するものである。」(段落【0001】)

(4ウ)「【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するために、含水無機化合物難燃剤である水酸化マグネシウムを全く使用しないか、使用しても少量で済むようなノンハロゲン難燃性樹脂組成物とするために、窒素系の難燃剤との組合せにより、或いは更にシリコーン系難燃助剤を組み合わせることにより、高度な難燃性を発現させることを基本とするものである。すなわち、オレフィン系重合体或いは熱可塑性エラストマーの単独又はそれらの混合物をベースポリマーとし、これに窒素系難燃剤40?200重量部、或いはさらにシリコーン系難燃助剤20重量部以下を添加したノンハロゲン難燃性樹脂組成物とすることによって、これを被覆材料とした難燃性電源コードは、硬度(ショアD)が45以下、引張強度が10MPa以上、伸びが350%以上であり、かつJIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格するものとなる。」(段落【0005】)

(4エ)「すなわち、請求項1に記載の難燃性電源ケーブルは、ハロゲン元素を含まないオレフィン系重合体或いは熱可塑性エラストマー100重量部と窒素系難燃剤40?200重量部からなるノンハロゲン難燃性樹脂組成物が、導体上に被覆されるもので、この難燃性樹脂組成物では、燃焼時に窒素ガス等が発生して燃焼を抑制する窒素系難燃剤が添加される。このような窒素系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、粉末メラミン、メラミンシアヌレート等が挙げられるが、なかでもメラミンシアヌレートが好ましく用いられる。そしてその配合量は、ハロゲン元素を含まないオレフィン系重合体或いは熱可塑性エラストマー100重量部に対して、40?200重量部とされる。配合量が40重量部未満では、難燃性電源コードとした場合に、JIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に合格せず、また柔軟性も不充分である。また、その配合量が200重量部を越えると、破断強度等の機械的特性の低下を生じると共に、柔軟性(可撓性)の点でも問題が生じる。」(段落【0007】)

(4オ)「なお、前記オレフィン系重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等の単独重合体やエチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンーエチルアクリレート(EEA)やエチレンプロピレン系ゴム(EPR)等のエチレン系共重合体が好ましく用いられる。」(段落【0008】)

(4カ)「【実施例】
以下に具体的な実施例を示して、ノンハロゲン難燃性樹脂組成物並びにそれらの難燃性樹脂組成物を導体上に被覆した、難燃性電源コードの効果を明らかにする。表1に示す内容の各種ノンハロゲン難燃性樹脂組成物のシートを用いて、硬度(ショアD)、引張強度(MPa)および伸び(%)をJIS規格K7113に基づいて測定した。すなわち、ベースポリマーとしては、オレフィン系単独重合体として、LDPE(メルトフロー比1.5)を、エチレン系共重合体の例として、EVA(VA量20%)、EEA(EA量15%)を、熱可塑性エラストマーの例としてSEBS(スチレン含有量20%)を用い、これらを単独で或いは混合物としたものを用い、これに窒素系難燃剤としてメラミンシアヌレートを、シリコーン系難燃助剤としてシリコーンパウダーを、また必要に応じて添加される脂肪酸で表面処理した水酸化マグネシウム(キスマ5A)を配合して得た、各種ノンハロゲン難燃性樹脂組成物について前述の試験を行った。なお、各材料の配合組成を示す数値は、重量部で示してある。また、これらのノンハロゲン難燃性樹脂組成物を、0.75mm2の銅導体上に、厚さ0.8mmに押出被覆して難燃性電源コードを作製し、JIS規格C3005に基づき60度傾斜燃焼試験を行った。結果を、合格、不合格で記載した。なお合格としたものは、60秒以内に自己消火したものものである。
【表1】

表1から明らかな如く、実施例1?17のノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、硬度(ショアD)、引張強度(MPa)並びに伸び(%)が、いずれも目的とする数値範囲内のものとなっており、優れた柔軟性(可撓性)を有するものである。具体的に述べると、実施例1のLDPE、実施例2および実施例3のEVA、実施例4および実施例5のEEA並びに実施例6および実施例7のSEBSを単独でベースポリマーとしたものは、全て硬度が30?37、引張強度が10.1?13.1MPa、伸びが370?460%と本発明の数値範囲内のものであることが判る。また、実施例12?17に示されるように、エチレン系共重合体(EVA、EEA)と熱可塑性エラストマー(SEBS)の混合物の場合も、それぞれを単独で用いる場合と同様に本発明の数値範囲内のものであった。
さらに実施例8に示すように、SEBS単独をベースポリマーとした場合、或いは実施例11に示すエチレン系共重合体どおし(EVAとEEA)を混合して混合物とした場合、実施例14並びに実施例17に示すエチレン系共重合体と熱可塑性エラストマーを混合した場合のように、混合物をベースポリマーとするノンハロゲン難燃性樹脂組成物では、脂肪酸表面処理水酸化マグネシウムを50重量部添加しても、硬度、引張強度度並びに伸び共に本発明の数値範囲内のものであることがわかる。
また、難燃性に関しても表1から明らかなように、前記ノンハロゲン難燃性樹脂組成物を被覆した難燃性電源コードは、JIS規格C3005の60度傾斜燃焼試験に全て合格するものである。よって、本発明の電源コードは、ハロゲン元素を含まない難燃性電源コードであり、このものは、廃棄後に焼却処理を行ってもダイオキシン等の有害ガスを発生することがなく、また、この難燃性電源コードは、前述の機械的特性を併せて有するものであるから、柔軟性(可撓性)にも優れ、難燃性電源コードとして使用時においても何ら作業性等の問題を生じることもない。」(段落【0014】?【0018】)

(5)特開昭54-77658号公報(原査定の拒絶理由で引用された引用文献6と同じ。以下、「引用例5」という。)
(5ア)「オレフィン重合体と水散化マグネシウムとポリ酢酸ビニルおよびエチレン酢酸ビニル共重合体のいずれか又は両者とより成る自己消火性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)

(5イ)「これらの欠点のない難燃材料としてオレフィン重合体に水酸化マグネシウムを配合した複合材料がある。この複合材料は水酸化マグネンウムの熱分解により発生する水により離燃性を示すものであり、ハロゲンガス等による毒性、腐蝕性のない無公害難燃材料である。
ところがこのオレフィン重合体・水酸化マグネシウム複合材料において、近時要望されているようなUL規格No.94 V-1以上の難燃性を得ようとすると、その組成物に大量の水酸化マグネシウムを配合する必要があり、例えばポリプロピレン-水酸化マグネシウム組成物において水酸化マグネシウムは60重量%以上を必要とする。この場合この組成物の成形に際しての流れ性が悪く、また製品の外観は不良で耐衝撃性も低下し、実用化に当って問題が多い。また薄肉製品の難燃化が困難であり、上記組成物で肉厚3.5mmの試験片ではUL規格No.94 V-1の性能を示し、溶融滴下なしに自己消火するが、電気製品に対して実用される2mm付近の肉厚では試験片は自己消火せず溶融滴下を生ずる。」(1頁右欄13行?2頁左上欄13行)

(5ウ)「本発明で用いられるポリ酢酸ビニル(PVAc)も任意のものが使用できるが、平均重合度が10,000以下のものが好ましい。またエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)は酢酸ビニル含量が0.7重量%以上特に1重量%以上のものが好ましい。またこのエチレン酢酸ビニル共重合体としては、第3成分として酢酸ビニル以外のビニルエステル類、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体のうちの一種またはそれ以上の単量体を共重合させたものも用いることができる。」(2頁左下欄5?14行)

(5エ)「本発明の組成物においては、従来のオレフィン重合体・水酸化マグネシウム系複合難燃材料に対してUL-94規格におけるフレーミンク時間及びクローインク時間が大巾に減少する。その結果同一の水酸化マグネシウム含有量では難燃性が同上し、従って薄肉製品の難燃化が容易となる。また同一の肉厚であれは水酸化マグネシウムの含有量を低減してなお従来と同一の難燃性を得ることができる。これによって高度の難燃性を保持したまま薄肉製品を良好な加工性で成形することができ、その実用価値は極めて大きいといわねばならない。このようなポリ酢酸ビニル乃至はエチレン酢酸ビニル共重合体の難燃性に対する寄与は、これらの物質の単独の性質からは予測し難いものである。以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。
実施例I(実験No.1?18)及び比較例1(実験No.19?24)
脂肪酸金属塩で表面処理を施し、且つ、BET法比表面積12m^(2)/gの水酸化マグネシウム、ホモポリプロピレン(MI6.0、JIS-K6758)、VAC含量20^(WT)%のペレット状EVA、平均重合度1,500(JIS-K6725)のPVAcを、所定の割合で東伸産業(株)製加圧双腕ニーダ-(TD35型)を用い、230℃にて混練し、更にペレタイザーを用いてペレット化した。
・・・表1から明らかな通り、EVA、PVAc又は双方を各々配合したもの(実施例1)はフレーミング、ブローイングが極めて短かく難燃性はV-1?V-0であった。これに対し、それらを配合しないもの、及びポリオレフィン部分をEVA又はPVAcで置換したもの(比較例1)はグロ?イングが60秒以上であったりフレーミング(第2)が30秒以上で滴下を生じたりして何れも難燃性はHBであった。」(3頁左上欄9行?左下欄12行)

(6)特開昭55-139443号公報(原査定の拒絶理由で引用された引用文献7と同じ。以下、「引用例6」という。)
(6ア)「(イ)高密度又は中密度のポリエチレン70?90%、(ロ)エチレン・酢酸ビニル共重合体30?10%から成るベースポリマーへ、3?7PHRのビス〔2-メチル-4-(3-n-アルキル(C_(12)又はC_(14))チオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル)スルフィドと有効量の難燃剤とを配合して成ることを特徴とする耐熱性難燃架橋ポリエチレン組成物。」(特許請求の範囲)

(6イ)「本発明は、特に耐熱老化特性に優れ、ケーブル絶縁体材料として有用な耐熱性難燃ポリエチレン組成物に関する。
従来がら耐熱性の要求される電線、ケーブルの絶縁層には、架橋ポリエチレンが使用されており、また、更に、難燃性を必要とする場合には、ペースポリエチレン中に難燃剤を配合することもすでに行われているところである。
しかるに、かかる従来の耐熱性難燃架橋ポリエチレン組成物では、耐カツトスルー性および耐熱老化特性が不充分であるという欠点があった。
耐カツトスルー性を向上させるには、高密度あるいは中密度のポリエチレンを使用することが考えられるが、一般にこれらのポリエチレンは加工性に乏しく、添加剤の混入が困雌であるという欠点がある。
更に、従来ポリエチレン用に使用されている酸化防止剤は、耐熱特性かさほど良好ではなく、多量に添加するとブルームするという欠点があり、更に、架橋効率を低下させたり汚染性を有するという難点もあった。」(1頁左欄14行?右欄14行)

(6ウ)「本発明において、エチレン・酢酸ビニル共重合体を使用するのは、高密度あるいは中密度ポリエチレンの加工性を補ない、添加剤の相溶性を向上させるためであって、その配合量が10%未満では、効果が不充分であり、逆に30%を越えると、高密度あるいは中密度のポリエチレンによる耐カツトスルー性を減殺するに至る。」(2頁左上欄下から6行?右上欄1行)

2.引用例1に記載された発明
上記引用例1の摘示(1ア)(特に、請求項1?2)及び摘示(1イ)の下線部分によれば、引用例1には、
「(a)ポリオレフィン樹脂20?70重量部、
(b)0.1?20重量%のエポキシ基含有コモノマーとオレフィンとのオレフィン共重合体樹脂5?60重量部、
および
(c)(c1)スチレン系エラストマー、(c2)0.1?20重量%の酸無水物により変性されたスチレン系エラストマーおよび(c3)0.1?20重量%の酸無水物により変性されたポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種の重合体成分10?40重量部
(ただし、成分(a)、(b)および(c)の合計は、100重量部である。)並びに
(d)金属水酸化物50?150重量部を含んでなるハロゲンフリーオレフィン系難燃性樹脂組成物。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3.引用例2?4の記載から導き出される事項
引用例2?4の上記摘示(特に下線部分)から、電線等に用いられる、金属水酸化物系難燃剤を含有してなるノンハロゲンの難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物において、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤を添加することにより、難燃性がさらに向上し、あるいは金属水酸化物の添加量を減らすことが可能となり機械的特性の低下を防ぐことができるということを導くことができる。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ポリオレフィン樹脂」は本願発明における「樹脂成分」に、以下同様に、「金属水酸化物」は「金属水酸化物」に、「(c1)スチレン系エラストマー」は「スチレン系エラストマー」に、それぞれ相当する。そして、引用発明における「エポキシ基含有コモノマーとオレフィンとのオレフィン共重合体樹脂」は「エポキシ基含有エチレン系共重合体」に、「エポキシ基含有オレフィン系共重合体」である限りにおいて相当する。
そして、引用発明における上記各成分の含有割合は、本願発明における上記各成分の含有割合と重複一致することは明らかである。
また、引用発明における「ハロゲンフリーオレフィン系難燃性樹脂組成物」は本願発明における「ノンハロゲン難燃性樹脂組成物」に相当する。
そうすると、両者は、
「樹脂成分100質量部に対して金属水酸化物60?100質量部を含有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物であって、前記樹脂成分100質量部中にポリオレフィン系樹脂50?80質量部及びスチレン系エラストマー20?50質量部を含有するとともに、前記ポリオレフィン系樹脂の一部としてエポキシ基含有オレフィン系共重合体を2?15質量部含有してなる樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の相違点1?4で相違する。

[相違点1]
本願発明では「窒素系難燃剤5?20質量部」を含有すると特定するものであるのに対して、引用発明では特に特定されていない点。

[相違点2]
本願発明では「高密度ポリエチレンを10?30質量部」を含有すると特定するものであるのに対して、引用発明では特に特定されていない点。

[相違点3]
本願発明では「酢酸ビニル含有量が20質量部以上50質量部以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体」を含有すると特定するものであるのに対して、引用発明では特に特定されていない点。

[相違点4]
エポキシ基含有オレフィン系共重合体について、本願発明では「エポキシ基含有エチレン系共重合体」であると特定するものであるのに対して、引用発明では「エポキシ基含有コモノマーとオレフィンとのオレフィン共重合体樹脂」と特定されている点。

5.判断
(1)相違点1について
引用発明は、ポリオレフィン樹脂及び金属水酸化物を含有するハロゲンフリーオレフィン系難燃性樹脂組成物に係るものであるところ、3.で述べたとおり、引用例2?4の記載から導き出される事項として、電線等に用いられる、金属水酸化物系難燃剤を含有してなるノンハロゲンの難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物において、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤を添加することにより、難燃性がさらに向上し、あるいは金属水酸化物の添加量を減らすことが可能となり機械的特性の低下を防ぐことができるということを認めることができる。
そうすると、引用発明において、さらなる難燃性の向上を目的として、あるいは難燃性を維持したまま金属水酸化物の添加量を減らすことによる機械的特性の向上を目的として、さらに窒素系難燃剤を所定量配合することは、当業者が容易になし得ることであるといえる。
そして、窒素系難燃剤を含有としたことによる効果も予測し得る範囲内のものである。

(2)相違点2について
引用例6には、ケーブル絶縁体材料として有用な耐熱性難燃ポリエチレン組成物において、耐カツトスルー性を向上させるには、高密度ポリエチレンを使用することが記載されている(摘示6イ)。
そうすると、電線の被覆材料に用いられるもの(摘示1イ)である引用発明において、耐カツトスルー性を向上させることを目的として、高密度ポリエチレンを所定量配合することは、当業者が容易になし得ることであるといえる。
そして、高密度ポリエチレンを所定量配合したことによる効果も予測し得る範囲内のものである。

(3)相違点3について
前提として、本願発明において、「酢酸ビニル含有量が20質量部以上50質量部以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体」との特定は、本願明細書の段落【0052】の記載からみても、「酢酸ビニル含有量が20質量%以上50質量%以下のエチレン-酢酸ビニル共重合体」の意味であると理解できることから、当該記載は、そのように解するものとする。
引用例3には、絶縁電線等に用いられるノンハロゲン難燃材料に用いられる「(a-1)エチレン系共重合体」として「特に、エチレン系共重合体の中で難燃性や耐候性を向上させるためにはエチレン-酢酸ビニル共重合体を使用するのがよい。」(摘示3ウ)と記載されており、当該エチレン-酢酸ビニル共重合体の具体的なものとして「1.エバフレックス EV180[商品名:三井デュポンポリケミカル(株)製] エチレン-酢酸ビニル共重合体(a-1) 酢酸ビニル含有量:33質量%」や「2.YX-21K [商品名:東ソー(株)製] エチレン-酢酸ビニル共重合体(a-1) 酢酸ビニル含有量:41質量%」(摘示3オ)が記載されている。
引用例4には、難燃性絶縁コードに用いられる、硬度、引張強度及び伸びに優れる、ノンハロゲン難燃性樹脂組成物に用いられる「オレフィン系重合体」として「低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等の単独重合体やエチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンーエチルアクリレート(EEA)やエチレンプロピレン系ゴム(EPR)等のエチレン系共重合体が好ましく用いられる。」(摘示4オ)と記載されており、当該エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)の具体的なものとして「EVA(VA量20%)」(摘示4カ)が記載されている。
引用例5には、ハロゲンガス等による毒性、腐食性がなく、フレーミング時間及びグローイング時間が極めて短かく難燃性に優れる自己消化性樹脂組成物に用いられる「エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)」として「酢酸ビニル含量が0.7重量%以上特に1重量%以上のものが好ましい。」(摘示5ウ)と記載されており、当該エチレン酢酸ビニル共重合体の具体的なものとして「VAC含量20^(WT)%のペレット状EVA」(摘示5エ)が記載されている。
以上のことから、絶縁電線等に用いられるノンハロゲン難燃材料として、酢酸ビニル含量が20?41質量%であるエチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いることで、難燃性、耐候性、硬度、引張強度、伸び等が向上することが理解される。
一方、引用例1には、ポリオレフィン樹脂(a)の種類の例示として、「エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)」(摘示1ウ)が記載されている。
そうすると、引用発明において、難燃性、耐候性、硬度、引張強度、伸びなどを向上させることを目的として、ポリオレフィン樹脂(a)の一部として、酢酸ビニル含量が20?41質量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を所定量配合することは、当業者が容易になし得ることであるといえる。
そして、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を所定量配合したことによる効果も予測し得る範囲内のものである。

(4)相違点4について
引用例1には、引用発明における「エポキシ基含有コモノマーとオレフィンとのオレフィン共重合体樹脂」に関し、「オレフィン系共重合体樹脂(b)は、0.1?20重量%のエポキシ基含有コモノマーとオレフィンとの共重合体である。エポキシ基含有コモノマーとしては、既知のグリシジル基を有する不飽和化合物、例えばグリシジルメタクリレートなどを用いることができる。オレフィンとしては、例えば炭素数1?6のオレフィン、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテンなどを挙げることができる。これらオレフィンと共に、他の重合性モノマー、例えば酢酸ビニル、アクリレートまたはメタクリレート(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチルなど)を共重合させてもよい。」(摘示1ウ)と記載されており、その具体的なものとして、実施例では「GMA-EVA:グリシジルメタクリレート-エチレン-酢酸ビニル共重合体(住友化学株式会社製ボンドファースト7B;グリシジルメタクリレート含量12重量%、VA含量5重量%)。」(摘示1エ)と記載されている。
一方、本願発明においては、「エポキシ基含有エチレン系共重合体」として、「エチレン-酢酸ビニル-メタクリル酸グリシジル共重合体」(段落【0024】)などが例示されており、その具体的なものとして、本願明細書の実施例では「E-GMA:住友化学(株)製、ボンドファーストE(グリシジルメタクリレート含有量12質量%のエポキシ基含有エチレン系共重合体)」(段落【0052】)と記載されている
そうすると、引用発明における「エポキシ基含有コモノマーとオレフィンとのオレフィン共重合体樹脂」は、その具体的な態様として本願発明の「エポキシ基含有エチレン系共重合体」と一致することは明らかである。
してみると、相違点4は、実質的な相違点ではない。

6.小括
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例1?6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。



第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例1?6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について更に検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-13 
結審通知日 2016-12-20 
審決日 2017-01-05 
出願番号 特願2012-65592(P2012-65592)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 亨杉江 渉  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 守安 智
小野寺 務
発明の名称 ノンハロゲン難燃性樹脂組成物およびそれを用いた電線・ケーブル  
代理人 二島 英明  
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