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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1325302
審判番号 不服2016-8089  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-01 
確定日 2017-02-16 
事件の表示 特願2012-117005「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日出願公開、特開2013-242814〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯と本願発明
本願は,平成24年5月22日の出願であって,平成27年9月4日付けで拒絶理由が通知され,同年11月5日に意見書と手続補正書が提出されたが平成28年2月25日付けで拒絶査定がなされ,これを不服として,同年6月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって,本願の請求項5に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成27年11月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項5に記載された以下のとおりのものと認める。

「パネルと,
前記パネルに対する押圧を検出する押圧検出部と,
前記押圧に基づくデータが所定の基準を満たしたら所定の処理を行うように制御する制御部と,を備え,
前記制御部は,通話機能の実行中は,前記パネルの接触の検出かつ前記押圧検出部による押圧の検出に基づいて前記所定の処理を行うように制御し,
前記制御部は,通話機能の実行中は,前記所定の基準を高く設定するように制御することを特徴とする電子機器。」

2 引用発明と周知技術
(1)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-20405号公報(以下,「引用例」という。)には,「通信端末装置及びタッチパネル入力制御方法」(発明の名称)に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0011】
図1は,本発明の一実施の形態に係る通信端末装置10の概略構成を示すブロック図である。
【0012】
通信端末装置10は,制御プログラム101,業務処理プログラム102及び通話処理プログラム103等,動作に必要なプログラムと,各プログラムを実行する際に使用されるメモリ104と,装置全体の動作を制御する中央制御部105と,通信処理動作を制御する通信制御部106と,表示部107の画面表示処理動作を制御する表示制御部108と,タッチパネル109の入力処理を行う入力制御部110と,音声通話に用いられるマイク111及びスピーカ112とを備えている。
【0013】
制御プログラム101は,この通信端末装置10の基本的な機能を実現し,業務処理プログラム102及び通話処理プログラム103の円滑な実行を実現するためのプログラム(OS)である。
【0014】
業務処理プログラム102は,この通信端末装置10を,例えば在庫管理業務等に用いられるハンディターミナルとして機能させるためのプログラムである。また,通話処理プログラム103は,この通信端末装置10をセルラーホンとして機能させるためのプログラムである。
【0015】
メモリ104は,中央制御部105により実行されるプログラムを一時的に格納する。
【0016】
中央制御部105は,この通信端末装置10全体の動作を,主としてタッチパネル109からの入力に基づいて制御する。
【0017】
通信制御部106は,通話処理プログラム103を実行する中央制御部105の制御の下,マイク111及びスピーカ112を用いた通話を実現する。また,業務処理プログラム102を実行する中央制御部105の制御の下,データ通信を行うようにしてもよい。
【0018】
表示制御部108は,中央制御部105の制御の下,表示部107に文字や図形を表示させる。これらの文字や図形には,所定の機能を実現するための機能ボタン(アイコン等)も含まれる。表示部107は液晶パネルや有機ELパネル用いて構成される。
【0019】
入力制御部110は,中央制御部105の制御の下,タッチパネル109への入力操作を検出し,その入力座標を特定する。タッチパネル109は,表示部107に重ねて配置されており,表示部107に表示された機能ボタンの座標領域に入力座標領域が含まれているとき,中央制御部105において,その機能ボタンが押されたと判断することができる。」

イ 「【0020】
次に,通信端末装置10の動作について説明する。
【0021】
まず,図2を参照して,通信端末装置10を用いて実行し得る処理の一例について説明する。
【0022】
始め,通信端末装置10は,倉庫棚の管理業務,即ち,倉庫における在庫商品の管理業務に用いられるハンディターミナルとして使用されている(S201)。このとき,倉庫から離れた場所にある事務所に対して問合せを行う必要が生じると,通信端末装置10はセルラーホン(携帯型電話機)として使用される。即ち,通信端末装置10は,事務所の電話との間で通話回線を介した音声通話(例えば,商品情報の確認)に用いられる(S202)。
【0023】
通話状態にあっても,この通信端末装置10では,タッチパネル109への入力操作を行うことができる(S203)。即ち,通信端末装置10は,通話回線が接続された状態であっても,ハンディターミナルとして動作させることができる。もちろん,タッチパネル109への入力終了後に,音声通話を再開することも可能である。
【0024】
音声通話が終了し,電話回線が切断されると(S204),再度,通常のハンディターミナルとして使用される(S205)。
【0025】
以上の動作において,ハンディターミナルとしての動作及びセルラーホンとして動作の各々は,公知のものと同様であるのでその説明を省略する。以下では,通話状態におけるタッチパネル109への不用意な身体等の接触による誤動作を防止しつつ,通話回線を維持した状態でタッチパネル109への入力操作を可能にする方法について説明する。
【0026】
通話回線が接続されていない状態(以下,通常状態という)では,タッチパネル109への入力は普通に行うことができる。したがって,在庫管理業務を行っている最中であっても,タッチパネル109を用いて電話番号入力,発信操作を行うことができる。
【0027】
中央制御部105は,表示部107の表示内容とタッチパネル109への入力状況に応じて各種機能を実現する。つまり,中央制御部105は,電話機能の選択,電話番号の入力,発信ボタンの押圧があれば,この通信端末装置10をセルラーホンとして機能させる。このとき,中央制御部105,通話処理プログラム103,メモリ104,通話制御部106,マイク111及びスピーカ112が音声通話手段として機能する。
【0028】
音声通話手段としての中央制御部105は,さらに,発信ボタンが押されたことを検出すると,通常状態から通話状態に移行したと判断し,後述するフラグ格納部のフラグ状態を変更する。具体的には,入力制御部110のフラグ格納部に通話フラグをセットする。また,終話ボタンが押されたことを検出すると通話状態から通常状態に移行したと判断し,通話フラグをクリア(リセット)する。」

ウ 「【0029】
入力制御部110は,図3に示すように,フラグ格納部301,検出基準格納部302,及び制御部303を有している。
【0030】
検出基準格納部302には,タッチパネル109からの入力信号の有効・無効を判定する検出基準として,通常状態用の第1の検出基準と,通話状態用の第2の検出基準とが格納されている。
【0031】
制御部303は,フラグ格納部301に通話フラグがセットされているか否か判定し,判定結果に応じて,検出基準格納部302に格納されている第1の検出基準又は第2の検出基準を選択し,タッチパネル109からの入力信号の有効・無効を判定する。つまり,制御部303は,通話状態か否かを判定する判定手段,及び,タッチパネル109の入力検出に用いる検出基準を選択する基準選択手段として働く。
【0032】
このように,通話フラグがセットされているか否かに応じて,即ち,通話回線が接続された状態か否か応じて検出基準(第1又は第2の検出基準)を選択・変更することにより,通話回線接続中におけるタッチパネル109への入力を可能にするとともに,身体の一部がタッチパネル109に不用意に接触することによる誤入力を無効にする。
【0033】
検出基準として,タッチパネル109への接触領域面積に関する閾値(入力許容範囲)を用いることができる。
【0034】
通話中に顔の一部がタッチパネル109に接触する場合,その接触領域は,指やスタイラス等を使って入力操作を行うときよりも広くなりがちである。そこで,予め定めた広さよりも広い領域の入力が検出されたとき,その入力を無効とするよう入力許容範囲を設定する。即ち,通常状態では,指の腹を用いた入力操作を許容するよう,図4(a)に示すように比較的広い範囲(例えば,1cm角)を入力許容範囲401とする。なお,その中心位置402は,接触領域の重心位置座標(検出された複数の入力座標の平均値)とする。
【0035】
一方,通話状態では,精度良く誤動作を防止するため,比較的狭い範囲(例えば,3mm角)を入力許容範囲403とする。この場合,指の腹等による入力は許可されなくなるが,スタイラス(タッチペン)や細い棒などによる入力操作は許容されるため,入力操作に支障はない。
【0036】
また,検出基準として,タッチパネル109への押圧力に関する閾値(押圧力検出閾値)を用いることもできる。意図しないタッチパネル109への接触は,その押圧力が弱い場合が多いので,押圧力検出閾値よりも弱い押圧力による入力を無効とする。通常状態では,指の腹による入力を許容するために,比較的低い閾値を設定する。例えば図5(a)に示すように,10段階レベルでレベル5以上の力で押されたときに有効と判定し,それより弱い力で押された場合は無効と判定する。
【0037】
一方,通話状態では,誤動作を確実に防止するため,比較的高い閾値を設定する。例えば,図5(b)に示すように,10段階レベルでレベル8以上の力で押されたときに有効と判定され,それよりも弱い力で押された場合は無効と判定されるようにする。スタイラス等を用いれば,その先端に押圧力が集中するので,容易に指等を用いた場合に比べて強い力でタッチパネル109を押圧することができる。したがって,入力操作に支障は生じない。
【0038】
なお,図5(a)及び(b)に示すグラブは,タッチパネル109への入力時における押圧力の時間変化を示している。
【0039】
以上のように,検出基準として,入力許容範囲や押圧力検出閾値を用いることにより,タッチパネル109全面での入力操作を可能にしたまま,意図しない体の一部の接触による誤入力を効果的に防止することができる。検出基準として,上述した入力許容範囲と押圧力検出閾値の両方を組み合わせて採用することで,より確実に誤入力を防止することができる。」

エ 「【0040】
以上の動作を纏めると図6のようになる。
【0041】
即ち,通話が開始を検出すると中央制御部105は,入力制御部110に通話フラグをセットする(S601)。
【0042】
入力制御部110は,タッチパネル109への入力の有無を検出すると(S602),通話フラグがセットされているか否かに基づいて通話中か否か判定する(S603)。
【0043】
そして,判定結果に基づいて通常状態用の第1の検出基準又は通話状態用の第2の検出基準を選択し,入力の有効・無効を判断する(S604,S605,S606)。
【0044】
入力が有効と判断されたときは,入力座標位置を特定し,特定した入力座標位置を中央制御部105へ通知する(S607)。他方,入力が無効と判断されたときは,タッチパネル109への入力待ちとなる。
【0045】
中央制御部105は,通話終了を検出すると,通話フラグをクリアする(S608)。
【0046】
以上のようにして本実施の形態に係る通信端末装置10では,音声通話時に顔や手の一部がタッチパネル109に触れたとしても,その接触面積が小さいこと,またはその押圧力が小さいことに基づき,その入力を無効とすることができるので,誤動作を防止することができる。また,通話状態が維持されたまま,スタイラス等の先細の棒を用いることにより,タッチパネル109全面での入力操作を行うことができる。
【0047】
本実施の形態による通信端末装置10では,タッチパネル109への入力操作を制限せず,タッチパネル109の全面で入力操作が可能であるので,画面設計(機能ボタン等の大きさや配置)を自由に行うことができる。」

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,以下の技術事項が読み取れる。

a 引用例の「通信端末装置10」は,「中央制御部105」,「タッチパネル109」,「入力制御部110」を備えている(摘記事項アの【0012】)。
b 引用例の「中央制御部105」は「表示部107の表示内容とタッチパネル109への入力状況に応じて各種機能を実現する」(摘記事項イの【0027】)ものであるが,該「タッチパネル109への入力状況」に関して「検出基準として,タッチパネル109への押圧力に関する閾値(押圧力検出閾値)を用いることもできる。意図しないタッチパネル109への接触は,その押圧力が弱い場合が多いので,押圧力検出閾値よりも弱い押圧力による入力を無効とする。」(摘記事項ウの【0036】)とあるように,「タッチパネル109への押圧力が検出基準(押圧力検出閾値)よりも強い押圧力であれは」入力とみなされるから,結局,「前記タッチパネル109への押圧力が検出基準(押圧力検出閾値)よりも強い押圧力であれば,表示部107の表示内容とタッチパネル109への入力状況に応じて各種機能を実現する中央制御部105」であるといえる。
c 引用例の通信端末装置10が通話状態となった場合の動作に関し,引用例の【図6】のS602及び摘記事項エによれば,タッチパネル109への押圧力による入力の有効・無効の判断の前に「タッチパネル109への入力」の有無を検出しているから,上記bでの検討も踏まえれば,「前記中央制御部105は,通話状態では,前記タッチパネル109への入力有りが検出され,かつ,前記タッチパネル109への押圧力が検出基準(押圧力検出閾値)よりも強い押圧力であれば,表示部107の表示内容とタッチパネル109への入力状況に応じて各種機能を実現」しているといえる。
d 引用例の「入力制御部110」は,「タッチパネル109への入力の有無を検出すると(S602),通話フラグがセットされているか否かに基づいて通話中か否か判定する(S603)。 そして,判定結果に基づいて通常状態用の第1の検出基準又は通話状態用の第2の検出基準を選択し,入力の有効・無効を判断する(S604,S605,S606)。」(摘記事項エの【0042】?【0043】)ものであり,該「通話状態用の第2の検出基準」については「通話状態では,誤動作を確実に防止するため,比較的高い閾値を設定する」(摘記事項ウの【0037】)と記載されている。

そうすると,上記引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「タッチパネル109と,
入力制御部110と,
前記タッチパネル109への押圧力が検出基準(押圧力検出閾値)よりも強い押圧力であれば,表示部107の表示内容とタッチパネル109への入力状況に応じて各種機能を実現する中央制御部105と,を備え,
前記中央制御部105は,通話状態では,前記タッチパネル109への入力有りが検出され,かつ,前記タッチパネル109への押圧力が検出基準(押圧力検出閾値)よりも強い押圧力であれば,表示部107の表示内容とタッチパネル109への入力状況に応じて各種機能を実現し,
前記入力制御部110は,タッチパネル109への入力の有無を検出すると,通話フラグがセットされているか否かに基づいて通話中か否か判定し,判定結果に基づいて通常状態用の第1の検出基準又は通話状態用の第2の検出基準を選択し,入力の有効・無効を判断し,該通話状態用の第2の検出基準は比較的高い閾値である,通信端末装置10。」

(2)周知技術
同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-48669号公報(以下,「周知例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0022】
図1に示すように,第1実施の形態に係る入力装置1は,タッチセンサ11,荷重検出部12,触感呈示部13,表示部14,および,全体の動作を制御する制御部15を備える。
【0023】
タッチセンサ11は,通常は表示部14の前面に配置して,表示部14に表示したキーやボタン等に対する操作者の指などによる押圧入力(タッチ入力)を,対応するタッチセンサ11のタッチ面により受け付ける。このタッチセンサ11は,例えば抵抗膜方式,静電容量方式,光学式等の公知の方式のもので構成する。荷重検出部12は,タッチセンサ11のタッチ面に対する押圧荷重を検出するもので,例えば,歪みゲージセンサや圧電素子等の荷重に対してリニアに反応する素子を用いて構成する。触感呈示部13は,タッチセンサ11を振動させるもので,例えば圧電振動子等を用いて構成する。表示部14は,押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のような入力ボタン等の入力用オブジェクトを表示するもので,例えば,液晶表示パネルや有機EL表示パネル等を用いて構成する。」

例えば上記周知例に記載されているように,「タッチセンサを備えた入力装置において,歪みゲージセンサや圧電素子等を用いて構成された,タッチセンサのタッチ面に対する押圧加重を検出する加重検出部を設けること。」(以下,「周知技術」という。)は周知である。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「タッチパネル109」は本願発明の「パネル」に含まれる。
b 引用発明の「前記タッチパネル109への押圧力が検出基準(押圧力検出閾値)よりも強い押圧力であれば」は本願発明の「前記押圧に基づくデータが所定の基準を満たしたら」に含まれる。
c 引用発明の「各種機能」に関し,引用例に,
「【0027】
中央制御部105は,表示部107の表示内容とタッチパネル109への入力状況に応じて各種機能を実現する。つまり,中央制御部105は,電話機能の選択,電話番号の入力,発信ボタンの押圧があれば,この通信端末装置10をセルラーホンとして機能させる。このとき,中央制御部105,通話処理プログラム103,メモリ104,通話制御部106,マイク111及びスピーカ112が音声通話手段として機能する。
【0028】
音声通話手段としての中央制御部105は,さらに,発信ボタンが押されたことを検出すると,通常状態から通話状態に移行したと判断し,後述するフラグ格納部のフラグ状態を変更する。具体的には,入力制御部110のフラグ格納部に通話フラグをセットする。また,終話ボタンが押されたことを検出すると通話状態から通常状態に移行したと判断し,通話フラグをクリア(リセット)する。」
とあるように,具体的には「電話機能の選択,電話番号の入力」,「発信」,「終話」等の機能を指すものと認められる。
これに対し,本願発明の「所定の処理」に関し,本願明細書に,
「【0060】
ステップS12において通話機能の実行が検出されない,すなわち通話中でないなら,制御部50は,検出された接触に基づいて所定の処理を行うように制御する(ステップS13)。例えば,表示部20において文字入力のキーのオブジェクトが表示された位置に対応する位置のパネル10に接触が検出された場合,制御部50は,当該文字を表示部20に表示する処理を行うように制御する。また,例えば,表示部20において通話または切断のオブジェクトが表示された位置に対応する位置のパネル10に接触が検出された場合,制御部50は,それぞれ通話を開始または切断する処理を行うように制御する。このように,本実施形態において,制御部50は,パネル10による接触の検出に基づいて所定の処理を行うように制御する。」
とあるように,具体的には「文字」を「表示する処理」,「通話を開始または切断する処理」等の処理を指すものと認められる。
そうすると,引用発明の「中央制御部105」は本願発明の「制御部」に相当するものであって,引用発明の「表示部107の表示内容とタッチパネル109への入力状況に応じて各種機能を実現する中央制御部105」は本願発明の「所定の処理を行うように制御する制御部」に相当する。
d 引用発明の「通話状態では」は本願発明の「通話機能の実行中は」に相当する。
e 引用発明の「前記タッチパネル109への入力有りが検出され」とは,その後に押圧力が判定されることを考慮すれば「接触」が検出されていることは明らかであって,本願発明の「前記パネルの接触の検出」に相当するものである。
f 引用発明の「前記タッチパネル109への押圧力が検出基準(押圧力検出閾値)よりも強い押圧力であれば」は本願発明の「押圧の検出に基づいて」に含まれる。
g 上記cでの検討によれば,引用発明の「表示部107の表示内容とタッチパネル109への入力状況に応じて各種機能を実現し」は本願発明の「前記所定の処理を行うように制御し」に相当する。
h 引用発明の「前記入力制御部110」による制御は,「タッチパネル109への入力の有無を検出すると,通話フラグがセットされているか否かに基づいて通話中か否か判定し,判定結果に基づいて通常状態用の第1の検出基準又は通話状態用の第2の検出基準を選択し,入力の有効・無効を判断し,該通話状態用の第2の検出基準は比較的高い閾値である」ものであるが,通話状態での制御については,「通話フラグがセット」されている場合には,「通話中」と「判定」され,「通話状態用の第2の検出基準を選択」し,「該通話状態用の第2の検出基準は比較的高い閾値である」ものであることから,その制御は,本願発明の「通話機能の実行中は,前記所定の基準を高く設定するように制御する」ことに相当するといえる。
i 引用発明の「通信端末装置10」は本願発明の「電子機器」に含まれる。

以上をまとめると,本願発明と引用発明は,以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「パネルと,
前記押圧に基づくデータが所定の基準を満たしたら所定の処理を行うように制御する制御部と,を備え,
前記制御部は,通話機能の実行中は,前記パネルの接触の検出かつ押圧の検出に基づいて前記所定の処理を行うように制御し,
通話機能の実行中は,前記所定の基準を高く設定するように制御することを特徴とする電子機器。」

(相違点1)
本願発明は「パネルに対する押圧を検出する押圧検出部」を備え,「押圧の検出」が該「押圧検出部による」ものであるに対し,引用発明では「タッチパネル109への押圧」がどのように検出されるのかは明らかでない点。

(相違点2)
一致点の「通話機能の実行中は,前記所定の基準を高く設定するように制御する」のが,本願発明では「前記制御部」であるのに対し,引用発明では「入力制御部110」である点。

4 検討
上記各相違点につき検討する。

(相違点1)について
まず,上記「2(2)周知技術」の項で述べたように,「タッチセンサを備えた入力装置において,歪みゲージセンサや圧電素子等を用いて構成された,タッチセンサのタッチ面に対する押圧加重を検出する加重検出部を設けること。」は周知技術であり,引用発明のタッチパネル109についても,その押圧を検出するために歪みゲージセンサや圧電素子等を用いて構成された加重検出部を「押圧検出部」として設けることは当業者が容易になし得たものである。

(相違点2)について
引用発明の「入力制御部110」は「通話フラグがセットされているか否かに基づいて通話中か否か判定し,判定結果に基づいて通常状態用の第1の検出基準又は通話状態用の第2の検出基準を選択」するが,該「通話フラグ」の「セット」に関し,引用例に「音声通話手段としての中央制御部105は,さらに,発信ボタンが押されたことを検出すると,通常状態から通話状態に移行したと判断し,後述するフラグ格納部のフラグ状態を変更する。具体的には,入力制御部110のフラグ格納部に通話フラグをセットする。」(【0028】)と記載されているように,「中央制御部105」が「通話フラグ」の「セット」を行っている。
その上,引用例に「中央制御部105は,この通信端末装置10全体の動作を,主としてタッチパネル109からの入力に基づいて制御する。」(【0016】),「入力制御部110は,中央制御部105の制御の下,タッチパネル109への入力操作を検出し,その入力座標を特定する。」(【0019】)とあるように,引用発明の「中央制御部105」が「入力制御部110」を含めた装置全体の動作を制御するものであることに鑑みれば,引用発明の「通話フラグがセットされているか否かに基づいて通話中か否か判定し,判定結果に基づいて通常状態用の第1の検出基準又は通話状態用の第2の検出基準を選択」する制御を「入力制御部110」に行わせる代わりに「中央制御部105」に行わせることにより,本願発明のように「前記制御部は」,「通話機能の実行中は,前記所定の基準を高く設定するように制御する」よう構成することは,当業者が必要に応じて適宜なし得たものである。

そして,本願発明が奏する効果も引用発明及び周知技術から容易に予測出来る範囲内のものである。

5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-09 
結審通知日 2016-12-13 
審決日 2017-01-04 
出願番号 特願2012-117005(P2012-117005)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 新川 圭二
山田 正文
発明の名称 電子機器  
代理人 太田 昌宏  
代理人 杉村 憲司  
代理人 君塚 絵美  

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