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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1325390
審判番号 不服2016-6431  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-28 
確定日 2017-03-21 
事件の表示 特願2012-521543「コンタクトプローブおよびプローブユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月29日国際公開、WO2011/162362、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年6月23日(優先権主張、平成22年6月25日(以下、「優先日」という。)、平成22年11月15日)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月4日付けの拒絶理由の通知に対し同年8月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月25日付けで拒絶査定(同年2月2日謄本送達)(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、平成28年4月28日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において同年11月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、平成29年1月23日に意見書及び手続補正書(同手続補正書でした補正を、以下、「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれを「本願発明1」等という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定された、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
先細な先端形状を有する第1先端部と、該第1先端部の基端側から延び、前記第1先端部の径と比して大きい径を有する第1フランジ部と、該第1フランジ部の端部であって、前記第1先端部の連結側と異なる端部から延び、前記第1フランジ部の径と比して小さい径を有する第1ボス部と、該第1ボス部の端部であって、前記第1フランジ部の連結側と異なる端部から延び、前記第1ボス部の径と比して小さい径を有する第1基端部とを同軸上に有し、検査対象物と接触する導電性の第1接触部材と、
先細な先端形状をなし、最大の径が前記第1フランジ部と比して小さい第2先端部と、該第2先端部の基端側から延び、前記第1基端部の径と略同一の径を有する第2ボス部とを同軸上に有し、前記検査対象物へ検査用信号を出力する回路基板と接触する導電性の第2接触部材と、
前記第1基端部の径よりも大きい内径で所定ピッチに巻回されている粗巻き部と、前記第2ボス部の径と略等しい内径で密着巻きに巻回されている密着巻き部とを有し、前記粗巻き部の端部が前記第1ボス部に取り付けられており、前記密着巻き部の端部が第2ボス部に取り付けられている前記第1および第2接触部材を同軸的に連結するコイルばねと、
を備え、
前記第1基端部は、軸線方向と平行であり、少なくとも前記第2接触部材に近づく方向へ所定の大きさ以上の荷重を受けた場合、前記密着巻き部と接触することを特徴とするコンタクトプローブ。
【請求項2】
前記第1基端部は、前記第1ボス部との連結側と異なる先端部が、R面取りされていることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトプローブ。
【請求項3】
前記第1フランジ部は、前記第1先端部に連なる側の端部がテーパ状をなすことを特徴とする請求項1または2に記載のコンタクトプローブ。
【請求項4】
前記コイルばねは、前記粗巻き部から前記密着巻き部に向かって段階的に縮径して巻回されているテーパ状をなす連結部を有することを特徴とする請求項1?3のいずれか一つに記載のコンタクトプローブ。
【請求項5】
前記第1基端部の径は、前記第1ボス部に近づくにつれて大きくなることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトプローブ。
【請求項6】
請求項1に記載の複数のコンタクトプローブと、
前記コンタクトプローブを保持する保持部と、
を備えたことを特徴とするプローブユニット。
【請求項7】
前記第1フランジ部は、前記第1先端部に連なる側の端部がテーパ状をなし、
前記保持部は、前記第1フランジ部の前記テーパ状に対応した形状をなす第1テーパ部を有することを特徴とする請求項6に記載のプローブユニット。
【請求項8】
前記保持部は、
前記粗巻き部の径より大きい大径部と、
前記粗巻き部の径より小さく、かつ前記密着巻き部の径より大きい小径部と、
を有することを特徴とする請求項6または7に記載のプローブユニット。
【請求項9】
前記コイルばねは、前記粗巻き部から前記密着巻き部に向かって段階的に縮径して巻回されているテーパ状をなし、
前記保持部は、大径部と小径部との間に、前記コイルばねの前記テーパ状に対応したテーパ状をなす第2テーパ部を有することを特徴とする請求項8に記載のプローブユニット。
【請求項10】
前記第2先端部は、前記第2ボス部と連結する端部側に、先端側の径と比して大きい径を有する第2フランジ部を有し、
前記第2フランジ部は、前記先端側の端部がテーパ状をなし、
前記保持部は、前記第2フランジ部の前記テーパ状に対応した形状をなす第3テーパ部を有することを特徴とする請求項6?9のいずれか一つに記載のプローブユニット。」

第3 原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由
1 原査定の理由の概要
(1)原査定の拒絶理由は、概略、本願の請求項1ないし10に係る発明は、優先日前に頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、引用された文献は次のとおりである。
1.国際公開第2010/016608号
(以下、「引用文献1」という。)
2.米国特許第7154286号明細書
(以下、「引用文献2」という。)
3.特開2006-23177号公報
(以下、「引用文献3」という。)
4.特開2004-309490号公報
(以下、「引用文献4」という。)

(2)請求項1、2、4、5及び7に係る発明についての、より具体的な拒絶理由は、次のとおりである。
引用文献1の段落[0024]-[0028],図1を参照されたい。特に、段落[0025]には、密着巻き部の少なくとも一部が基端部と接触することで、電気導通が実現し、プローブのインダクタンスを低減させることが記載されている。
本願発明と引用文献1に記載の発明とを対比すると、本願発明では、第1基端部の径よりも大きい内径の粗巻き部と、第2ボス部の径(第1基端部の径と同じ径)と等しい内径の密着巻き部とからなるコイルばねを有しているのに対して、引用文献1に記載の発明では、粗巻き部と密着巻き部とが同じ径である点で相違している。
上記相違点について検討するに、引用文献2の特に第2欄第40行-第3欄第11行、FIG.1-3には、巻径を異ならせた「the open coils 28」(本願発明の「粗巻き部」に相当)と、「the closed coils 30」(本願発明の「密着巻き部」に相当)とからなり、「tail 24」(本願発明の「第1基端部」に相当)と「the closed coils 30」とで電気経路を形成することが記載されている。
引用文献1-2に記載の発明は、いずれも第1基端部と密着巻き部とを接続して電気経路を形成して、プローブのインダクタンスを低減するという共通する課題を有するものであるから、引用文献1に記載の発明に、引用文献2に記載の構成を適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
引用文献1に記載の発明では、End cap 31ではなく、第1プランジャ2にコイルばねが接続された構成であり、その構成に引用文献2に記載の構成を適用した場合、すなわち密着巻き部を小径とする場合、第1プランジャ2の径も同様に小径にしなければいけないこと、すなわち第1プランジャの最大径が第2プランジャの最大径より小さくなることは明らかである。

2 当審拒絶理由の概要
(1)当審拒絶理由は、概略、本願の請求項1ないし10に係る発明は、優先日前に頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、引用された文献は次のとおりである(周知例2ないし5は、いずれも周知技術を示す文献として引用されたものである。)。
引用例1.国際公開第2009/011365号
(以下、「引用文献5」という。)
周知例2.特開2003-35722号公報
(以下、「引用文献6」という。)
周知例3.特開平10-239349号公報
(以下、「引用文献7」という。)
周知例4.米国特許第7626408号明細書
(以下、「引用文献8」という。)
周知例5.特開2006-23177号公報
(上記1(1)の引用文献3に同じ。以下、「引用文献3」という。)

(2)請求項1に係る発明についての、より具体的な拒絶理由は、次のとおりである。
引用文献5には、次の発明が記載されていると認められる(特に、[0037]ないし[0039]及び[0049]を参照。また、図7からは、「プランジャ22」における「先端部22a」及び「フランジ部22b」の最大径が、「プランジャ21」の最大径に比して小さい点、並びに、「プランジャ22」の「ボス状の基端部22c」の径及び「バネ部材23」の「密着巻き部23b」の内径が、「プランジャ21」の「軸部21c」の径よりも大きく、かつ「プランジャ21」の「ボス部21b」の径及び「バネ部材23」の「粗巻き部23a」の内径と略同一とされている点が、見て取れる。)。
「先鋭端を有する先端部21aと、先端部21aの基端側に設けられ、先端部21aの径よりも小さい径を有するボス部21bと、ボス部21bの表面のうち先端部21aと接する側と反対側の表面から延出する軸部21cとを備える、プランジャ21と、
先鋭端を有する先端部22aと、先端部22aの基端側に設けられ、先端部22aの径よりも大きい径を有するフランジ部22bと、フランジ部22bの表面から先端部22aと相反する方向へ突出し、フランジ部22bの径よりも小さい径を有するボス状の基端部22cとを有する、プランジャ22と、
プランジャ21に取り付けられる側が粗巻き部23aである一方、プランジャ22に取り付けられる側が密着巻き部23bであり、粗巻き部23aの端部はボス部21bに圧入され、密着巻き部23bの端部は基端部22cに圧入されてなる、バネ部材23と、
を備え、
互いに連結されるプランジャ21、プランジャ22およびバネ部材23は同一の軸線を有し、
プランジャ22における先端部22a及びフランジ部22bの最大径が、プランジャ21の最大径に比して小さく、
プランジャ22のボス状の基端部22cの径及びバネ部材23の密着巻き部23bの内径が、プランジャ21の軸部21cの径よりも大きく、かつプランジャ21のボス部21bの径及びバネ部材23の粗巻き部23aの内径と略同一とされており、
半導体ウェハの電極パッドを先端部22aに接触させると、バネ部材23は収縮しさらに湾曲し、この際、密着巻き部23bの一部はプランジャ21の軸部21cに接触した状態を保持するため、最短経路の電気導通が実現されインダクタンスの増加が抑制される、
プローブ。」(以下、「引用発明」という。)
引用発明において、「プランジャ21」側にもフランジ部を設けることは、当業者が適宜なし得たことである。
引用発明は、「電極パッドを先端部22aに接触させると、バネ部材23は収縮しさらに湾曲し」、その際に「プランジャ21の軸部21c」と「バネ部材23」の「密着巻き部23b」との接触状態を保持し、それにより「最短経路の電気導通が実現されインダクタンスの増加が抑制される」というものであるところ、一方で、一般に、プローブの導通時の電気特性を良好にするため、コイルばねに、粗巻き部よりも小さい径の密着巻き部を設け、該密着巻き部に導電性接触子の軸部が接触状態で差し込まれるようにすることは、周知の技術である(例えば、引用文献6(【0068】ないし【0070】及び図8等)、引用文献7(【0003】、【0033】ないし【0035】及び図7等)を参照。)。
そして、引用発明と当該周知技術とは、プローブの導通時の電気特性を良好にする、という点で課題や作用、機能が共通するから、引用発明において、「バネ部材23」の「湾曲」によって「プランジャ21の軸部21c」と「バネ部材23」の「密着巻き部23b」との接触状態を保持することに代えて、当該周知技術のように、「バネ部材23」の「密着巻き部23b」を「粗巻き部23a」よりも小さい径とし、「バネ部材23」の「密着巻き部23b」に「プランジャ21」の「軸部21c」が接触状態で差し込まれる構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ここで、そのように「バネ部材23」の「密着巻き部23b」に「プランジャ21」の「軸部21c」が接触状態で差し込まれる構成を採用するにあたり、互いに接触状態となる、「バネ部材23」の「密着巻き部23b」の内径と「プランジャ21」の「軸部21c」の径とが略同一となることは、明らかであり、また、引用発明においては、「バネ部材23」の「密着巻き部23b」が「プランジャ22」の「ボス状の基端部22c」に圧入されていることから、「プランジャ22」の「ボス状の基端部22c」についても、「バネ部材23」の「密着巻き部23b」の内径に合わせた径とするのが通常といえる。

第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
ア 優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
(ア)「技術分野
[0001] 本発明は、電気接点部材および当該電気接点部材を用いて構成されるコンタクトプローブに関する。」

(イ)「[0014] 図1は、本発明の一実施の形態に係るコンタクトプローブの構成を示す図である。同図に示すコンタクトプローブ1は、互いに相反する向きに突出した先端部を有する第1プランジャ2および第2プランジャ3と、第1プランジャ2と第2プランジャ3とを連結し、長手方向(図1の上下方向)へ伸縮自在なバネ部材4とを有する。
[0015] コンタクトプローブ1は、プローブホルダ5に収容されており、検査対象であるICチップ等の半導体集積回路100と、検査用の信号を出力する回路基板200との間を電気的に接続し、電気信号の送受信を行う。半導体集積回路100の検査を行う際、第1プランジャ2は半導体集積回路100に設けられる接続用電極101と接触する一方、第2プランジャ3は回路基板200に設けられる接続用電極201と接触する。したがって、第1プランジャ2および第2プランジャ3は、一方が第1電気接点部材であり、他方が第2電気接点部材である。
[0016] 第1プランジャ2は、先端がクラウン形状をなす先端部2a、先端部2aの径よりも大きい径を有するフランジ部2b、フランジ部2bを介して先端部2aと反対方向に突出し、フランジ部2bの径よりも小さい径の円柱状をなし、バネ部材4の端部が圧入されるボス部2c、ボス部2cの径よりも小さい径の円柱状をなし、ボス部2cからフランジ部2bと反対側に延在する基端部2d、を有し、長手方向の中心軸に対して対称な形状をなしている。
[0017] 図2は、第1プランジャ2の構成を示す縦断面図である。第1プランジャ2は、中空部を有する外周部21と、長手方向へ延在して外周部21の中空部を充填する円柱状(丸棒状)の芯部22とを有する。第1プランジャ2の先端部のうち図2の上端部において、外周部21はクラウン形状をなしており、芯部22よりも長手方向へ突出している。このため、外周部21の上端は、半導体集積回路100の検査時に接続用電極101と接触する。外周部21におけるクラウン形状は、例えば旋盤加工時の溝加工によって形成される。
[0018] 外周部21は貴金属合金からなる。この貴金属合金として、例えば銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)を主成分とする合金、パラジウム、銀、銅を主成分とする合金、または銀、白金、亜鉛、金、銅を主成分とする合金などを適用することができる。また、芯部22は、貴金属合金よりも廉価な銅またはアルミニウムなどの導電性材料からなる。これにより、検査を行うことによって外周部21の先端部に付着した半田を削り落とす作業を定期的に行いながら長期にわたって使用することができるとともに、貴金属合金の使用量を抑制してコストを低減することができる。
[0019] 以上の構成を有する第1プランジャ2は、例えば外周側が外周部21に対応する貴金属合金からなる一方、内周側の芯部が芯部22に対応する導電性材料からなる鉛筆状のワーク部材を旋盤加工することによって形成される。
[0020] 第2プランジャ3は、先鋭端を有する先端部3a、先端部3aの径よりも大きい径を有するフランジ部3b、フランジ部3bを介して先端部3aと反対方向に突出し、フランジ部3bの径よりも小さい径の円柱状をなし、バネ部材4の端部が圧入されるボス部3c、ボス部3cの径よりも小さい径の円柱状をなし、ボス部3cからフランジ部3bと反対側に延在する基端部3d、を有し、長手方向と平行な中心軸に対して対称な形状をなしている。
[0021] 図3は、第2プランジャ3の構成を示す縦断面図である。第2プランジャ3は、中空部を有する外周部31と、長手方向に延在して外周部31の中空部を充填し、図3の下端が先鋭端である略棒状の芯部32とを有する。第2プランジャ3の先端部のうち図3の下端部において、芯部32は外周部31よりも長手方向へ突出している。このため、芯部32の下端は回路基板200の接続用電極201と接触する。
[0022] 外周部31は芯部22と同様の導電性材料からなり、芯部32は外周部21と同様の貴金属合金からなる。したがって、第2プランジャ3は、第1プランジャ2と同様、耐久性に優れ、かつ経済的であるという効果を得ることができる。
[0023] 以上の構成を有する第2プランジャ3は、例えば外周側が外周部31に対応する導電性材料からなる一方、内周側の芯部が芯部32に対応する貴金属合金からなる鉛筆状のワーク部材を旋盤加工することによって形成される。
[0024] バネ部材4は均一な径を有し、軸線方向へ伸縮自在な導電性材料からなるコイルバネであり、第1プランジャ2に取り付けられる側が密着巻き部4aである一方、第2プランジャ3に取り付けられる側が粗巻き部4bとなっている。バネ部材4の内径はボス部2c、3cの外径よりも若干小さい。密着巻き部4aの端部はフランジ部2bに当接する一方、粗巻き部4bの端部はフランジ部3bに当接している。
[0025] 半導体集積回路100の検査を行う際、バネ部材4は第1プランジャ2および第2プランジャ3から荷重を受けることによって収縮し、湾曲する。その結果、密着巻き部4aの少なくとも一部が基端部3dと接触する。これにより、第1プランジャ2、バネ部材4および第2プランジャ3を順次経由する最短経路の電気導通が実現される。このようにして最短経路の電気導通を実現することにより、検査時におけるコンタクトプローブ1のインダクタンスの増加を抑制することができる。」

(ウ)「[図1]


ここで、図面の図1から、次のaないしeの点が見て取れる。
a 第1プランジャ2の先端部2a、フランジ部2b、ボス部2cが同軸上にある点。

b 第2プランジャ3の先端部3a、フランジ部3b、ボス部3c及び基端部3dが同軸上にある点。

c 第1プランジャ2のフランジ部2bの径と第2プランジャ3のフランジ部3bの径が略同一である点。

d 第1プランジャ2のボス部2cの径が第2プランジャ3の基端部3dの径よりも大きい点。

e バネ部材4の内径が基端部3dの径よりも大きい点。

イ したがって、上記ア(ア)ないし(ウ)の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(括弧内は、特に関連する記載箇所を示す。以下同じ。)。
「先端がクラウン形状をなす先端部2aと、先端部2aの径よりも大きい径を有するフランジ部2bと、フランジ部2bを介して先端部2aと反対方向に突出し、フランジ部2bの径よりも小さい径の円柱状をなすボス部2cとを同軸上に有し、検査対象であるICチップ等の半導体集積回路に設けられる接続用電極と接触する第1プランジャ2と、(上記ア(イ)[0015]、[0016]、(ウ)a)
先鋭端を有する先端部3aと、先端部3aの径よりも大きい径を有するフランジ部3bと、フランジ部3bを介して先端部3aと反対方向に突出し、フランジ部3bの径よりも小さい径の円柱状をなすボス部3cと、ボス部3cの径よりも小さい径の円柱状をなし、ボス部3cからフランジ部3bと反対側に延在する基端部3dとを同軸上に有し、検査用の信号を出力する回路基板に設けられる接続用電極と接触する第2プランジャ3と、(上記ア(イ)[0015]、[0020]、(ウ)b)
第1プランジャ2と第2プランジャ3とを連結し軸線方向へ伸縮自在なコイルバネであり、第1プランジャ2に取り付けられる側が密着巻き部4aである一方、第2プランジャ3に取り付けられる側が粗巻き部4bとなっている、バネ部材4と、(上記ア(イ)[0014]、[0024])
を有する、コンタクトプローブであって、(上記ア(イ)[0014])
ボス部2c及びボス部3cにはバネ部材4の端部が圧入され、(上記ア(イ)[0016]、[0020])
第1プランジャ2は、貴金属合金からなる外周部21と銅またはアルミニウムなどの導電性材料からなる芯部22とを有し、(上記ア(イ)[0017]、[0018])
第2プランジャ3は、芯部22と同様の導電性材料からなる外周部31と、外周部21と同様の貴金属合金からなる芯部32とを有し、(上記ア(イ)[0021]、[0022])
第1プランジャ2のフランジ部2bの径と第2プランジャ3のフランジ部3bの径が略同一であり、(上記ア(ウ)c)
第1プランジャ2のボス部2cの径が第2プランジャ3の基端部3dの径よりも大きく、(上記ア(ウ)d)
バネ部材4は均一な径を有し、バネ部材4の内径はボス部2cの外径よりも若干小さく基端部3dの径よりも大きく、(上記ア(イ)[0024]、(ウ)e)
バネ部材4は、第1プランジャ2および第2プランジャ3から荷重を受けることによって収縮し、湾曲し、その結果、密着巻き部4aの少なくとも一部が基端部3dと接触する、(上記ア(イ)[0025])
コンタクトプローブ。」

(2)引用文献2
優先日前に頒布された刊行物である引用文献2には、次の事項が記載されている。
(ア)「This invention relates to contact spring probes and, more particularly, to a contact spring probe with a dual tapered spring and plunger retained by the spring.」(第1欄第5ないし7行)(当審訳:この発明は、接触ばねプローブに関し、より詳細には、二重テーパ状ばねと該ばねに保持されたプランジャとを備える接触ばねプローブに関するものである。)

(イ)「Referring to FIGS. 1 and 2, a contact spring probe of the present invention is generally indicated by reference numeral 10. Probe 10 includes a plunger 12 and a spring 14. Plunger 12 includes a tip 16, a shaft 18, a flange or shoulder 20, a body 22 and a tail 24. Plunger 12 may be fabricated by various methods such as machining from a single piece of conductive material such as beryllium copper or steel or the like and may be plated with gold or other material. The tip 16 illustrated is a 120°convex tip which is used to test plated through holes, pads and lands. The smooth cone shape allows plated through holes to be tested with minimal wetness marks to the device or unit under test. The point of the tip 16 is used to test pads and lands. Tip 16 is one example of many probe tips that may be used such as a spear point tip, a flat tip, a 60°chisel tip or an 8-point crown tip, for example. The particular tip configuration may be chosen as appropriate for a particular use or application. It should be understood that the tip illustrated and the types of tips listed hereinabove are for illustrative purposes only and not as limitations or as an exhaustive list.」(第1欄第47ないし66行)(当審訳:図1及び図2を参照すると、本発明の接触ばねプローブは、その全体が参照番号10で示されている。プローブ10は、プランジャ12とばね14とを備えている。プランジャ12は、先端部16と、軸部18と、フランジ又は肩部20と、本体22と、末端部24とを備えている。プランジャ12は、ベリリウム銅や鋼等の導電性材料の単一片から機械加工のような種々の方法により製造されてもよく、金又は他の材料でめっきされてもよい。図に示された先端部16は、120°凸状の先端部であり、めっきされたスルーホール、パッド及びランドを試験するのに使用される。滑らかな円錐形状により、めっきされたスルーホールを、試験されるデバイス又はユニットに対する痕跡を最小にして試験することができる。先端部16の突起が、パッドとランドを試験するのに使用される。先端部16は、例えば、槍状突起の先端部、平坦な先端部、60°のみ状の先端部又は8点突起のクラウン状先端部など、用いることのできる多くのプローブ先端部の一例である。特定の先端部の構成は、特定の用途や応用に適するように選択できる。図示した先端部と先に例示したチップの種類は、例示の目的だけのためであり、限定的な又は網羅的なリストではないことを理解されたい。)

(ウ)「Shaft 18 extends from the tip 16 to the shoulder 20. Shoulder 20 may be an inverted frustoconically shaped element which flares outwardly from shaft 18 to present a flange and then tapers to the body 22. The diameter of the shaft 18 may be approximately equal to the diameter of the body 22. The body 22 is generally elongated and extends to the tail 24 which has a diameter approximately equal to or smaller than the diameter of the plunger body 22.」(第2欄第1ないし8行)(当審訳:軸部18は、先端部16から肩部20まで延在する。肩部20は、フランジ状及び本体22に対するテーパ状をなす、軸部18から外側に広がった円錐台形状の素子であってもよい。軸部18の径は、本体22の径を略等しくすることができる。本体22は全体的に細長で、プランジャ本体22の径と略等しいか又はそれよりも小さい径を有する末端部24まで延在している。)

(エ)「The spring 14 is generally helical. The first closed coils 26 are tightly wound with an inside diameter approximately equal to the diameter of the plunger shaft 18. The first closed coils 26 transition into the open coils 28. The open coils 28 are active with an inside diameter greater than the diameter of the plunger body 22. The open coils 28 transition into the second set of closed coils 30. The second closed coils 30 are tightly wound with an inside diameter equal to or slightly less than the diameter of the plunger Body 22. Spring 14 may be symmetrical with the number of coils in and the inside diameter of the first set of closed coils 26 equal to the number of coils in and the inside diameter of the second set of closed coils 30. A symmetrical configuration of spring 14 helps reduce the cost of manufacturing the spring 14 and assembly of the probe 10. With a symmetrical spring 14 there is no orientation of the spring 14 for assembly. Thus, the plunger 12 may be inserted into either end of the spring 14 to reduce or eliminate assembly complexity, details and errors that may accompany assembly of asymmetrical components.」(第2欄第9ないし28行)(当審訳:ばね14は、全体的にらせん状である。第1閉コイル26は、プランジャ軸部18の径と略等しい内径できつく巻かれている。第1閉コイル26は、開コイル28に遷移する。開コイル28は、プランジャ本体22の径よりも大きい内径を有しアクティブである。開コイル28は、第2組の閉コイル30に遷移する。第2閉コイル30は、プランジャ本体22の径と等しいか又はそれよりも僅かに小さい内径できつく巻かれている。ばね14は、第1組の閉コイル26のコイル数及び内径が、第2組の閉コイル30のコイル数及び内径に等しく、対称形であってもよい。ばね14の対称構造は、ばね14の製造とプローブ10の組立てのコストを減少させるのに役立つ。ばね14が対称形であると、組立ての際にばね14の向きが関係ない。これにより、プランジャ12は、ばね14のいずれの端からも挿入することができ、非対称形の部品の組立てに付随する、組立ての複雑さ、詳細及び誤りを低減又は排除することができる。)

(オ)「The probe 10 is assembled by inserting the plunger 12 into the spring 14. The plunger tail 24 and body 22 are first inserted into the closed coils 26. As the plunger 12 is inserted, the first closed coils 26 are forced apart by frustoconical shoulder 20 until the first closed coils contact a base 32 of the plunger tip 16, and are seated around the shaft 18. The shoulder 20 grip the closed coils to secure the plunger 12 in place. One or more barbs or a flange may also be used to grip the closed coils and secure the plunger 12 in place.」(第2欄第29ないし38行)(当審訳:プローブ10は、プランジャ12をばね14に挿入して組み立てられる。プランジャの末端部24及び本体22は、最初に閉コイル26内に挿入される。プランジャ12が挿入されると、第1閉コイル26は、円錐台形状の肩部20により離間する方向に付勢されるが、第1の閉コイルがプランジャ先端部16の基部32に当接すると、軸部18の周囲に着座する。肩部20は、閉コイルを把持してプランジャ12を適所に固定する。1又はそれ以上の返し又はフランジは、閉コイルを把持してプランジャ12を適所に固定するのに使用できる。)

(カ)「Referring to FIG. 3, probe 10 is shown inserted in a fixture or interposer 50. Fixture 50 includes upper 52 and lower 54 plates. The upper fixture plate 52 includes a tip bore 56 and an open coil bore 58, which are axially aligned. Tip bore 56 has an inside diameter greater than the diameter of the plunger tip 16 and first closed coils 26, and less than the diameter of the open coils 28 of spring 14. The open coil bore 58 has an inside diameter greater than the outside diameter of the open coils 28.」(第2欄第39ないし47行)(当審訳:図3を参照すると、プローブ10は、固定具又はインターポーザ50に挿入された状態で示されている。固定具50は、上部52及び下部54のプレートを含む。上部固定プレート52は、軸方向に整列された、先端穴56と開コイル穴58を備えている。先端穴56は、プランジャの先端部16と第1閉コイル26の径よりも大きく、ばね14の開コイル28の径よりも小さい内径を有している。開コイル穴58は、開コイル28の外径よりも大きい内径を有している。)

(キ)「The lower fixture plate 54 includes an open coil bore 60 and a tail bore 62, which may be axially aligned or the tail bore 62 may be offset to ensure good electrical contact with the closed coils 30. Open coil bore 60 and tail bore 62 have inside diameters generally equal to the open coil bore 58 and tip bore 56 of the upper fixture plate 52, respectively. The thickness of the lower fixture plate 54 may be generally equal to the thickness of the upper fixture plate 52.」(第2欄第48ないし55行)(当審訳:下部固定プレート54は開コイル穴60と末端穴62を備えており、それらは軸方向に整列させることができ、あるいは、閉コイル30との良好な電気的接触を保証するために末端穴62をオフセットすることもできる。開コイル穴60と末端穴62はそれぞれ、上部固定プレート52の開コイル孔58及び先端穴56と略等しい内径を有している。下部固定プレート54の厚さは、上部固定プレート52の厚さと略等しくすることができる。)

(ク)「To assemble the probes 10 in the fixture 50, the closed coils 30 and tails 24 of the probes 10 are inserted into the open coil bores 60 and tail bores 62. The closed coils 30 may extend below the lower surface 64 of the lower fixture plate 54. The upper fixture plate 52 is then placed over the probe tips 16 with the upper fixture plate bores 56 and 58 in axial alignment with the lower fixture plate bores 60 and 62. When assembled, the probes 10 are captured by the fixture 50, which permits the probe tip 16 and closed coils 30 to freely move in and out of the fixture bores 62 and 56 when contacting a device under test, but retains the open coils 28.」(第2欄第56ないし66行)(当審訳:固定具50内でプローブ10を組み立てるために、閉コイル30及びプローブ10の末端部24は、開コイル穴60と末端穴62に挿入される。閉コイル30は、下部固定プレート54の下面64の下方に延在してもよい。上部固定プレート52は、上部固定プレートの穴56及び58を下部固定プレートの穴60及び62と軸方向に整列させた状態で、プローブ先端部16の上方に配置されている。組み立てられるとプローブ10は固定具50によって捕捉されるが、固定具50は、開コイル28を保持したままで、被試験装置に接触した時にプローブ先端部16及び閉コイル30が固定具の孔62及び56を自由に出入りすることを許容している。)

(ケ)「When the probes 10A and 10B are in contact with a device under test 70, each plunger tail 24 extends into the respective closed coils 30 to ensure good and consistent electrical contact from the device under test 70 to the probe tip 16, through the probe body 22 and tail 24 to the closed coils 30 and to the test unit 72. Additionally, the probe's resistance is relatively low because the electrical path is short and only travels laterally through the closed coils 30. The probe body 22 and/or tail 24 may be slightly curved or bent (not shown) to promote contact between the tail 24 and the closed coils 30.」(第3欄第1ないし11行)(当審訳:プローブ10A及び10Bが被試験装置70に接触しているとき、各プランジャの末端部24はそれぞれの閉コイル30内に延在して、被試験装置70からプローブ先端部16へ、プローブ本体22と末端部24を介して閉コイル30へ、更には試験ユニット72へ、良好で安定した電気的接続を保証する。加えて、電気的な経路が短く閉コイル30を横方向に進行するだけなので、プローブの抵抗が比較的小さい。プローブ本体22及び/又は末端部24は、末端部24と閉コイル30との間の接触を促進するために僅かに湾曲又は屈曲(図示せず)させてもよい。)

(コ)「



(3)引用文献3
優先日前に頒布された刊行物である引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、LSIチップ等の半導体デバイスの電気的諸特性を測定する検査用具であるプローブカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プローブカードは、半導体ウエハに数多く形成された半導体チップ等の電気的緒特性を測定するときに用いられる検査用デバイスであり、半導体チップ等の半導体デバイスの電極パッドに合わせて配置された数多くのプローブを有したプローブカードが使用される。即ち、ステージ上に半導体ウエハをセットした後、ステージをプローブカードの方向に移動させ、プローブの先端を半導体チップの電極パッドに押圧接触させる。この状態で半導体チップと半導体テスターとがプローブを介して電気的に接続されるので、半導体デバイスの電気的緒特性を半導体テスターによって測定できるようになっている。このような測定は半導体ウエハの製造工程が終了した後の検査工程で行われている。尚、従来のプローブカードに用いられるプローブの例としては、特許文献1において開示されたもの等が知られている。」

(イ)「【0018】
ここで、プローブPは、図3、図4に示すように、半導体チップの電極に押圧接触する先端部2を有したプランジャー1と、このプランジャー1の上部を突出させ支承するとともに、プランジャー1を付勢突出し、押圧接触させるためのスプリング(図示省略)が内装された略筒状のバレル4とから構成されている。パイプ材から成るバレル4は一端は閉じられており閉じられていない他端の開口部は、カシメ(加締)加工により、棒状部3を出し入れ可能に突出し、かつ、径方向にずれ動かない状態となるよう、極力精密に絞られている。プランジャー1は、金合金、タングステン、銅、その他の導通材料が用いられる。
【0019】
プランジャー1は、前記先端部2と、バレル4に嵌合される棒状部3と、これらの間に形成された大径の補正部5から構成されている。補正部5は、バレル4の外径寸法と同等の寸法を有する筒面5aと、先端部2および棒状部3と円滑に連続するよう形成された先端側テーパ面5c及び基端側テーパ面5bとで形成されている。補正部5の径変化部(筒面5aと基端側テーパ面5bとの間や、先端側テーパ面5cと先端部2との間等)には、断面形状として角R及び隅Rを施してあり、滑らかに形状変化するようにしてある。」

(4)引用文献4
優先日前に頒布された刊行物である引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの検査やウェハテスト用のコンタクトプローブやプローブカード、あるいはLGA(ランド・グリッド・アレイ)・BGA(ボール・グリッド・アレイ)・CSP(チップ・サイド・パッケージ)・ベアチップなどのソケットや、コネクタなどに用いるのに適する導電性接触子に関するものである。」

(イ)「【0015】
コイルばね状導電性接触子3は、ばね材からなる1本の素線をコイル状に巻回して形成されており、上記貫通孔2の中間部の直線同一径孔内に径方向にある程度の遊びをもって受容される所定ピッチ巻きのコイルばね部4と、そのコイルばね部4の軸線方向両端側にてコイルばね部4と同一径にて複数巻きされた後コイルエンドに至るまでの間をテーパ状に密着巻きされた一対の電極ピン部5a・5bとからなる。なお、電極ピン部5a・5bのテーパ状部分は、上記貫通孔2の先細り部2aと概ね補完的形状をなすと共に、その先細りの先端部分を上記直線小孔部2bから外方に突出可能に直線小孔部2bの孔径よりも細くなるまで巻かれている。」

(ウ)「【0027】
図4は、本発明に基づく第2の実施の形態を示す図である。なお、前記図示例と同様の部分については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。この形態にあっては、図における上側絶縁板1の上面に同様に絶縁板からなるストッパ11が積層されており、ストッパ11には貫通孔2に対応する位置に孔11aが設けられている。
【0028】
また、図における下側の一方の電極ピン部5aは前記実施の形態と同様にテーパ状に形成されているが、上側の他方の電極ピン部5cは、コイルばね部4よりも縮径された円筒形状に形成されており、その円筒状電極ピン部5cが上記孔11a内に受容されている。そして、大径のコイルばね部4と小径の円筒状電極ピン部5cとの間の段部がテーパ孔部2aに衝当して、前記実施の形態と同様にコイルばね状導電性接触子3が抜け止めされている。」

(5)引用文献5
ア 優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献5には、次の事項が記載されている。
(ア)「技術分野
[0001] 本発明は、検査対象である半導体ウェハと検査用の信号を生成する回路構造との間を電気的に接続するプローブカードに関する。」

(イ)「[0018] (実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るプローブカードの構成を示す分解斜視図である。図2は、本実施の形態1に係るプローブカードの平面図である。図3は、図2のA-A線部分断面図である。図4は、図2のB-B線断面を配線の一部も含めて模式的に示す図であり、本実施の形態1に係るプローブカードを用いた電気特性検査の概要を示す図である。なお、図4では、実際の検査時と上下を一致させるため、図3とプローブカード1の上下を逆転させている。これらの図1?図4に示すプローブカード1は、検査対象である半導体ウェハ5と検査用の信号を生成する回路構造を具備した検査装置とを電気的に接続する装置である。
[0019] プローブカード1は、円盤状をなし、検査装置との電気的な接続を図る配線基板11と、配線基板11の一方の面に装着され、配線基板11を補強する補強部材12と、配線基板11からの配線を中継するインターポーザ13と、インターポーザ13によって中継された配線の間隔を変換するスペーストランスフォーマ14と、配線基板11よりも径が小さい円盤状をなしてスペーストランスフォーマ14に積層され、検査対象の半導体ウェハ5の配線パターンに対応して複数のプローブ2を収容保持するプローブヘッド15と、配線基板11に固着され、インターポーザ13およびスペーストランスフォーマ14を積層した状態で一括して保持する保持部材16と、保持部材16に固着されてプローブヘッド15の端部を固定するリーフスプリング17と、配線基板11およびインターポーザ13を板厚方向に貫通して埋め込まれる複数のポスト部材18と、を備える。
[0020] 配線基板11は、ベークライトやエポキシ樹脂等の絶縁性材料を用いて形成され、複数のプローブ2と検査装置とを電気的に接続するための配線層がビアホール等によって立体的に形成されている。配線基板11は、板厚方向に貫通された複数の貫通孔部111を有する。なお、図3においては、本来平板状である配線基板11が変形し、その配線基板11の縦断面が波打っている状態を示している。
[0021] 図4に示すように、配線基板11に形成される配線wの一端は、検査装置(図示せず)との接続を行うために配線基板11の表面であって補強部材12が装着された側の表面に配設された複数のオスコネクタ20に接続される。これに対して、配線wの他端は、スペーストランスフォーマ14を介してプローブヘッド15で収容保持するプローブ2に電気的に接続されている。」

(ウ)「[0035] なお、インターポーザ13に適用される接続端子133のプランジャ134、135は互いに異なる形状をなしているが、互いに同じ形状を有するプランジャをバネ部材136によって接続してもよい。また、プランジャ134とプランジャ135を上下逆に配置してもよい。
[0036] スペーストランスフォーマ14は、セラミックス等の絶縁性材料を母材とし、配線基板11と同様、内部の配線層がビアホール等によって立体的に形成されている。スペーストランスフォーマ14はインターポーザ13と略合同な正8角形の表面を有し、薄板状をなしている。
[0037] 図7は、プローブヘッド15要部の構成およびプローブ2の詳細な構成を示す拡大部分断面図である。プローブ2は、スペーストランスフォーマ14と接触するプランジャ21と、プランジャ21と相反する向きに突出し、半導体ウェハ5の電極パッド51に接触するプランジャ22と、プランジャ21、22の間に設けられ、プランジャ21、22を伸縮自在に連結するコイル状のバネ部材23とを備える。互いに連結されるプランジャ21、22、およびバネ部材23は同一の軸線を有している。
[0038] プランジャ21は、先鋭端を有する先端部21aと、先端部21aの基端側に設けられ、先端部21aの径よりも小さい径を有するボス部21bと、ボス部21bの表面のうち先端部21aと接する側と反対側の表面から延出する軸部21cとを備える。一方、プランジャ22は、先鋭端を有する先端部22aと、先端部22aの基端側に設けられ、先端部22aの径よりも大きい径を有するフランジ部22bと、フランジ部22bの表面から先端部22aと相反する方向へ突出し、フランジ部22bの径よりも小さい径を有するボス状の基端部22cとを有する。
[0039] バネ部材23は、プランジャ21に取り付けられる側が粗巻き部23aである一方、プランジャ22に取り付けられる側が密着巻き部23bである。粗巻き部23aの端部はボス部21bに圧入されている。また、密着巻き部23bの端部は基端部22cに圧入されている。
[0040] 以上の構成を有するプローブ2は、プランジャ21をスペーストランスフォーマ14の電極パッド142に接触させた状態(図7に示す状態)で、密着巻き部23bの少なくとも一部が軸部21cに接触している。」

(エ)「[0049] 図7に示す状態からウェハチャック50を上昇させることによって半導体ウェハ5の電極パッド51を先端部22aに接触させると、プランジャ22は上昇し、バネ部材23は収縮し、さらに湾曲する。この際、密着巻き部23bの一部はプランジャ21の軸部21cに接触した状態を保持するため、プランジャ21、バネ部材23の密着巻き部23bおよびプランジャ22を順次経由する最短経路の電気導通が実現され、プローブ2のインダクタンスの増加が抑制されている。」

(オ)「[図7]


ここで、図面の図7からは、次のaないしgの点が見て取れる。
a プランジャ21の先端部21a、ボス部21b及び軸部21cが同軸上にある点。

b プランジャ22の先端部22a、フランジ部22b及び基端部22cが同軸上にある点。

c プランジャ21の軸部21cの径がプランジャ21のボス部21bの径よりも小さい点。

d プランジャ22のフランジ部22bの径がプランジャ21の先端部21aの最大の径よりも小さい点。

e プランジャ22の基端部22cの径がプランジャ21の軸部21cの径よりも大きい点。

f バネ部材23の粗巻き部23aの内径がプランジャ21の軸部21cの径よりも大きい点。

g バネ部材23の密着巻き部23bの内径がプランジャ22の基端部22cの径と略等しい点。

イ したがって、上記ア(ア)ないし(オ)の記載から、引用文献5には、次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。
「先鋭端を有する先端部21aと、先端部21aの基端側に設けられ、先端部21aの径よりも小さい径を有するボス部21bと、ボス部21bの表面のうち先端部21aと接する側と反対側の表面から延出する軸部21cとを同軸上に備え、検査用の信号を生成する検査装置との接続を行うスペーストランスフォーマと接触するプランジャ21と、(上記ア(イ)[0018]、[0021]、(ウ)[0037] 、[0038]、(オ)a)
先鋭端を有する先端部22aと、先端部22aの基端側に設けられ、先端部22aの径よりも大きい径を有するフランジ部22bと、フランジ部22bの表面から先端部22aと相反する方向へ突出し、フランジ部22bの径よりも小さい径を有するボス状の基端部22cとを同軸上に有し、検査対象である半導体ウェハの電極パッドに接触するプランジャ22と、(上記ア(イ)[0018]、(ウ)[0037]、[0038] 、(オ)b)
プランジャ21に取り付けられる側が粗巻き部23aである一方、プランジャ22に取り付けられる側が密着巻き部23bであり、粗巻き部23aの端部がボス部21bに圧入され、密着巻き部23bの端部が基端部22cに圧入されている、プランジャ21、22を伸縮自在に連結するコイル状のバネ部材23と、(上記ア(ウ)[0037]、[0039])
を備える、プローブであって、(上記ア(ウ)[0037])
互いに連結されるプランジャ21、22およびバネ部材23は同一の軸線を有し、(上記ア(ウ)[0037])
プランジャ21の軸部21cの径がプランジャ21のボス部21bの径よりも小さく、(上記ア(オ)c)
プランジャ22のフランジ部22bの径がプランジャ21の最大の径よりも小さく、(上記ア(オ)d)
プランジャ22の基端部22cの径がプランジャ21の軸部21cの径よりも大きく、(上記ア(オ)e)
バネ部材23の粗巻き部23aの内径がプランジャ21の軸部21cの径よりも大きく、(上記ア(オ)f)
バネ部材23の密着巻き部23bの内径がプランジャ22の基端部22cの径と略等しく、(上記ア(オ)g)
プランジャ21をスペーストランスフォーマの電極パッドに接触させた状態で、密着巻き部23bの少なくとも一部が軸部21cに接触しており、半導体ウェハの電極パッドを先端部22aに接触させると、バネ部材23は収縮し、さらに湾曲し、この際、密着巻き部23bの一部はプランジャ21の軸部21cに接触した状態を保持するため、プランジャ21およびプランジャ22を経由する電気導通が実現される、(上記ア(ウ)[0040]、(エ)[0049])
プローブ。」

(6)引用文献6
優先日前に頒布された刊行物である引用文献6には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性接触子の先端部をIC、液晶ディスプレイ基板、プリント配線板等の被検査体に接触させることにより、被検査体の電気的な検査を行う導電性接触子に関し、特に、導電性接触子を収容するホルダ構造に関する。」

(イ)「【0065】(実施の形態5)図8は実施の形態5を示す。この実施の形態のプローブユニット60では、2つの板状の絶縁性のプレート31,32を積層することにより、ホルダ2の本体ブロック4が形成されており、2つのプレート31,32には、導電性接触子3を収容する案内孔9が厚さ方向に貫通している。
【0066】本体ブロック4の上側のプレート31における配線基板20側の端部には、案内孔9の一部を構成する支持孔部32aが形成されている。支持孔部32aは案内孔9の他の部位よりも小径となるように形成されており、後述する導電性接触子3を抜け止めすると共に位置決め状態で支持するように作用する。この支持孔部32aは、埋め込み状にパターン形成された配線基板20の電極部21に対応するように形成されている。
【0067】この実施の形態において、導電性接触子3は、導電性のコイルばね33と、1本の針状体34とからなり、針状体34がコイルばね33の下側の端部に連結された構造となっている。針状体34は抜け止めブロック5の支持孔15から先端部分が突出して検査基板10の電極部11と接触する針状部34aと、針状体部34aの状部に形成された大径の鍔部34bと、鍔部34bから上方に延びる軸部34cとが一体的に形成されることにより構成されている。そして、針状体34はその軸部34cが下側からコイルばね33内に圧入され或いは挿入された後に半田付けされることにより、コイルばね33の下側の端部に連結状態で取り付けられる。
【0068】コイルばね33は、下側の連結部33a及び上側の密着巻き部33bを備えている。連結部33aは針状体34の軸部34cが連結される部位である。
【0069】密着巻き部33bは隣接した線材が密着するように巻回された部分であり、その下部には、針状体34の軸部34cの上部が接触状態で差し込まれている。このように密着巻き部33bに軸部34cが接触するように差し込まれることにより、密着巻き部33bと軸部34cとが良好に導通するため、電気特性が良好となるメリットがある。
【0070】この実施の形態におけるコイルばね33においては、密着巻き部33bに接続部33cが形成されている。接続部33cは隣接した線材が密着した密着巻き部33bの状態のままで、そのコイル径が密着巻き部33bや連結部33aよりも小さくなるように巻回された部分であり、密着巻き部33bの上部に形成されている。
【0071】接続部33cはホルダ本体4における上側のプレート32に形成されている支持孔部32a内に進入可能な径となっており、支持孔部32a内に進入した状態では、支持孔部32aによって抜け止めされると共に、支持孔部32aによって位置決めされる。また、支持孔部32aに進入することにより、接続部33cは配線基板20の電極部21と接触して針状体34からの電気信号を検査基板20に取り出すように作用する。このとき、接続部33cは線材が密着した状態となっているため、電気信号を確実に取り出すことができ、電気的な検査を信頼性のあるものとすることができる。」

(ウ)「【図8】



(7)引用文献7
優先日前に頒布された刊行物である引用文献7には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性針状体を圧縮コイルばねにより弾発付勢して、プリント配線板や半導体素子の検査やウェハテストを行うのに適する導電性接触子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、プリント配線板の導体パターンや半導体製品などの電気的検査を行うためのコンタクトプローブに用いられる導電性接触子には、導電性針状体を筒状のホルダ内に軸線方向に出没自在に支持しかつ突出方向に抜け止めし、導電性針状体を圧縮コイルばねにより突出方向に弾発付勢するようにしたものがある。そのような導電性接触子にあっては、導電性針状体の突出方向先端を検査対象に弾発的に当接させて、電気信号を検査対象と外部回路との間で伝達するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、検査時に検査対象から導電性針状体を介して圧縮コイルばねに電気が流れる場合には、その巻き数の2乗でインダクタンスが増加する。そのため、コンタクトプローブに流れる電気信号が高周波信号(例えば数十MHz?数GHz)である場合には、コイル状の導体に高周波信号が流れることになり、インダクタンス及び抵抗が増大し、検出信号に電気特性の劣化が生じるという問題がある。」

(イ)「【0033】さらに、本発明によれば、図7に示されるようにしても良く、この図7においても、前記図示例と同様の部分には同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。図7に示されるものにあっては、図5の図示例のものに対して一方の導電性接触子を設けずに、圧縮コイルばね5の端部形状で代用するようにしたものである。この例では、圧縮コイルばね5の導電性接触子4を結合しない方の端部を、図7に示されるように、中間部よりも縮径しかつ密着巻きにて形成している。
【0034】したがって、本図示例による導電性接触子にあっては、圧縮コイルばね5の一方の端部により形成された縮径密着巻き部5cを配線パターン8aに接触させて使用する。また、圧縮コイルばね5にあっては、その縮径巻き部5cから中間部の密着巻き部5aまで密着巻きされている。
【0035】この図7においても、その圧縮コイルばね5の密着巻き部5aが上側の導電性接触子4の軸部4cに接触しており、導電性接触子4を通った電気信号が密着巻き部5aを通るため、その導通経路は圧縮コイルばね5の軸線方向に沿うことになり、前記と同様にコイル状に高周波信号が流れることによるインダクタンス及び抵抗の増大が生じることがない。この図7のものは、クリーニングを必要とするのが片方のみの場合に使用すると良く、低廉化を促進するのに適する。」

(ウ)「【図7】



(8)引用文献8
優先日前に頒布された刊行物である引用文献8には、次の事項が記載されている。
(ア)「The subject invention relates to spring probes for electrically accessing various parts of printed circuit boards, semiconductor devices and other electric and electronic components. More particularly, the invention relates to an improved spring probe having an elongated electrically conductive contact and an elongated helical coil disposed about the beam and attached to the contact. The spring includes an offset spring lower end configured so that, when the spring probe is compressed, the elongated contact firmly contacts the spring lower end and establishes a direct electrical path between the contact head and the spring lower end.」(第1欄第12ないし22行)(当審訳:本発明は、プリント回路基板、半導体装置や他の電気・電子部品の様々な部分に電気的にアクセスするためのばねプローブに関する。より詳細には、本発明は、細長い導電性接触子と、梁部の周りに配置され接触子に取り付けられた細長いらせん状コイルとを有する、改良されたばねプローブに関する。ばねは、ばねプローブが圧縮されたときに、細長い接触子がばね下端にしっかりと当接して、接触子頭部とばね下端との間の直接的な電気的経路を確立するよう構成された、オフセットしたばね下端を備えている。)

(イ)「Referring to FIG. 2, an electrical spring probe assembly 34 according to the present invention is shown for connecting an IC package to a printed circuit board. The electrical spring probe 34 includes an elongated contact 13 and a helical compression spring 14. In one preferred embodiment, the contact 13 is in the form of a machined pin. The contact 13 includes a head 9 with a V-shaped slot 8 for contacting an IC package conductor, such as a solder ball lead. In this embodiment the, V-slot head is particularly suitable for contacting a BGA solder ball. It will be understood, however, that head 9 may have other configurations, such as a crown head or such as configurations suitable for contacting other types of leads. For example, the head may have a rounded tip for contacting leads on flat-leaded IC packages such as LGA, MLF, QFN, and strip packages, and the like. The contact also has a flexible beam 12 opposite the head 9 and a shoulder 11 intermediate the head 9 and the beam 12. The shoulder 11 has a diameter that is smaller than the diameter of the head 9 and larger than the diameter of the beam 12.」(第5欄第26ないし44行)(当審訳:図2を参照すると、ICパッケージをプリント回路基板に接続するための、本発明による電気ばねプローブ組立体34が示されている。電気ばねプローブ34は、細長い接触子13とらせん状圧縮ばね14とを備えている。好ましい一実施形態において、接触子13は、機械加工されたピンの形態である。接触子13は、はんだボールリードのようなICパッケージの導体と接触するためのV形溝8を有する頭部9を備えている。本実施形態では、V溝頭部がBGAはんだボールに接触するのに特に適している。しかしながら、頭部9が、クラウン状頭部のような、あるいは他のタイプのリードと接触するのに適した構成のような、他の構成を有してもよいことが理解される。例えば、頭部は、LGA、MLF、QFN、ストリップパッケージ等のフラットリードICパッケージのリードと接触する丸みのある先端部を有することができる。接触子は、頭部9の反対側に可撓性の梁部12を有し、頭部9と梁部12の中間に肩部11を有する。肩部11は、頭部9の径よりも小さくかつ梁部12の径よりも大きい径を有する。)

(ウ)「Still referring to FIG. 2, the compression spring 14 is disposed about the elongated contact 13. The compression spring 14 is generally cylindrically shaped and is formed from material having good spring characteristics, which permits resilient compression of the spring 14. Preferably, the compression spring 14 is formed from a single unitary conductor, which is coiled in a helical fashion. The spring 14 has an upper end 10, a larger diameter middle section 15, and a lower end 19. The spring upper end 10 is attached to the contact shoulder 11. The upper end 10 of the spring 14 has coils 20 that are contiguous. The coil diameter of the upper end 10 is slightly smaller than the diameter of the contact shoulder 11 to provide a tight fit between the upper end 10 and the shoulder 11. In this configuration, the spring 14 can be attached to the contact 13 by pressing the contact shoulder 11 into the spring upper end 10. The spring upper end 10, the beam 9 and the spring middle section 15 are disposed generally along a main axis 16. The spring middle section 15 is of open pitch configuration so that it can be longitudinally compressed under the action of opposing forces.」(第5欄第45ないし64行)(当審訳:さらに図2を参照すると、圧縮ばね14が、細長い接触子13の周りに配置されている。圧縮ばね14は、一般に円筒形であり、良好なばね特性を有する材料からなり、ばね14の弾性圧縮が可能に形成されている。好ましくは、圧縮ばね14は、単一の一体的な導体からなり、らせん状に巻かれて形成されている。ばね14は、上端10、大径の中間部15及び下端19を有する。ばね上端10は、接触子肩部11に取り付けられている。ばね14の上端10は、連続したコイル20を有する。上端10のコイル径は、上端10と肩部11とをきつく固定するため、接触子肩部11の径より僅かに小さい。この構成では、接触子肩部11をばね上端10に圧入して、ばね14を接触子13に取り付けることができる。ばね上端10、梁部9及びばね中間部15は、主軸16にほぼ沿って配置されている。ばね中間部15は、対向する力の作用により長手方向に圧縮可能なように、開放ピッチの構成である。)

(エ)「The spring lower end 19 is tightly wound such that a portion of the coils 18 are contiguous. The coils of the spring lower end 19 have a coil diameter that is less than that of the spring middle section 15. The internal coil diameter of the spring lower end 19 is greater than the diameter of the contact beam 12 to allow the beam 12 to enter into the spring lower end 19 when the spring probe 34 is compressed. The internal coil diameter of the spring lower end 19 is small enough, however, so that the beam 12 is deflected to bias the beam 12 into firm contact with the spring lower end 19 as the electrical spring probe is compressed, as described below.」(第5欄第65行ないし第6欄第8行)(当審訳:ばね下端19は、コイル18の一部が連続するようにきつく巻かれる。ばね下端19のコイルは、ばね中間部15よりも小さいコイル径を有する。ばね下端19のコイル内径は、ばねプローブ34が圧縮されたときにばね下端19に梁部12が入ることができるよう、接触子梁部12の径よりも大きい。しかしながら、ばね下端部19のコイル内径は、以下に記述されるように、電気ばねプローブが圧縮されたとき梁部12が曲げられてばね下端19にしっかりと接触させるよう梁部12を偏倚させるには、十分な小ささである。)

(オ)「The spring lower 19 end is disposed generally along an offset axis 17 that is offset from the main axis 16. The offset coils 18 are in line with adjacent, non-offset coils at an end of the spring middle section 15, which have a diameter greater than that of the offset coils 18 and less than that of the spring middle section 15, with the offset coils 18 being indented from one side of the adjacent non-offset coils. The spring lower end 19 is terminated at a terminus 39 on the same side of the spring as the indentation of the offset coils 18. In this configuration, in operation, when the electrical spring probe 34 is compressed, the offset of the spring lower end 19 helps deflect the contact beam and bias it into firm contact with the contiguous coils 18 of the spring lower end 19 and establishes a direct electrical path between the contact head 9 and the spring lower end 19.」(第6欄第9ないし23行)(当審訳:ばね下端19は、主軸16からオフセットしたオフセット軸17にほぼ沿って配置されている。オフセットしたコイル18は、ばね中間部15の端において、隣接するオフセットしていないコイルと一致するが、オフセットしていないコイルは、オフセットしたコイル18の径よりも大きくかつばね中間部15の径よりも小さい径を有し、オフセットしたコイル18は、隣接するオフセットしていないコイルの一方の側からずらされた状態にある。ばね下端19は、オフセットしたコイル18がずらされたのとばねの同じ側において、末端39で終端される。この構成では、動作時において、電気ばねプローブ34が圧縮されたとき、ばね下端19のオフセットは、接触子の梁部を曲げてそれを偏倚させばね下端19の連続したコイル18にしっかりと接触させるのに役立ち、接触子頭部9とばね下端19との間の直接的な電気的経路を確立する。)

(カ)「FIG.2



2 原査定の理由についての判断
(1)本願発明1について
ア 対比
(ア)本願発明1と引用発明1とを対比する。
a 引用発明1の「第2プランジャ3」において、「フランジ部3b」が「先端部3a」の基端側から延びていることは、「先端部3aと」「ボス部3c」とが「フランジ部2bを介して」「反対方向に突出し」ていることから明らかであるので、引用発明1の「第2プランジャ3」における、「先鋭端を有する先端部3a」、「先端部3aの径よりも大きい径を有するフランジ部3b」、「フランジ部3bを介して先端部3aと反対方向に突出し、フランジ部3bの径よりも小さい径の円柱状をなすボス部3c」及び「ボス部3cの径よりも小さい径の円柱状をなし、ボス部3cからフランジ部3bと反対側に延在する基端部3d」は、本願発明1の「第1接触部材」における、「先細な先端形状を有する第1先端部」、「該第1先端部の基端側から延び、前記第1先端部の径と比して大きい径を有する第1フランジ部」、「該第1フランジ部の端部であって、前記第1先端部の連結側と異なる端部から延び、前記第1フランジ部の径と比して小さい径を有する第1ボス部」及び「該第1ボス部の端部であって、前記第1フランジ部の連結側と異なる端部から延び、前記第1ボス部の径と比して小さい径を有する第1基端部」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明1の「第2プランジャ3は、芯部22と同様の導電性材料からなる外周部31と、外周部21と同様の貴金属合金からなる芯部32とを有」する導電性の部材であるので、引用発明1における、「先鋭端を有する先端部3aと、先端部3aの径よりも大きい径を有するフランジ部3bと、フランジ部3bを介して先端部3aと反対方向に突出し、フランジ部3bの径よりも小さい径の円柱状をなすボス部3cと、ボス部3cの径よりも小さい径の円柱状をなし、ボス部3cからフランジ部3bと反対側に延在する基端部3dとを同軸上に有し、検査用の信号を出力する回路基板に設けられる接続用電極と接触する第2プランジャ3」と、本願発明1における、「先細な先端形状を有する第1先端部と、該第1先端部の基端側から延び、前記第1先端部の径と比して大きい径を有する第1フランジ部と、該第1フランジ部の端部であって、前記第1先端部の連結側と異なる端部から延び、前記第1フランジ部の径と比して小さい径を有する第1ボス部と、該第1ボス部の端部であって、前記第1フランジ部の連結側と異なる端部から延び、前記第1ボス部の径と比して小さい径を有する第1基端部とを同軸上に有し、検査対象物と接触する導電性の第1接触部材」とは、「先細な先端形状を有する第1先端部と、該第1先端部の基端側から延び、前記第1先端部の径と比して大きい径を有する第1フランジ部と、該第1フランジ部の端部であって、前記第1先端部の連結側と異なる端部から延び、前記第1フランジ部の径と比して小さい径を有する第1ボス部と、該第1ボス部の端部であって、前記第1フランジ部の連結側と異なる端部から延び、前記第1ボス部の径と比して小さい径を有する第1基端部とを同軸上に有する導電性の第1接触部材」である点で共通する。

b 引用発明1においては、「第1プランジャ2のフランジ部2bの径と第2プランジャ3のフランジ部3bの径が略同一であ」るので、引用発明1の「第1プランジャ2」における、「先端がクラウン形状をなす先端部2aと、先端部2aの径よりも大きい径を有するフランジ部2bと」からなる構成と、本願発明1の「第2接触部材」における、「先細な先端形状をなし、最大の径が前記第1フランジ部と比して小さい第2先端部」とは、「先細な先端形状をなす第2先端部」である点で共通する。
また、引用発明1においては、「第1プランジャ2のボス部2cの径が第2プランジャ3の基端部3dの径よりも大き」いので、引用発明1の「第1プランジャ2」における、「フランジ部2bを介して先端部2aと反対方向に突出し、フランジ部2bの径よりも小さい径の円柱状をなすボス部2c」と、本願発明1の「第2接触部材」における、「該第2先端部の基端側から延び、前記第1基端部の径と略同一の径を有する第2ボス部」とは、「該第2先端部の基端側から延びる第2ボス部」である点で共通する。
そして、引用発明1の「第1プランジャ2は、貴金属合金からなる外周部21と銅またはアルミニウムなどの導電性材料からなる芯部22とを有」する導電性の部材であるので、引用発明1における、「先端がクラウン形状をなす先端部2aと、先端部2aの径よりも大きい径を有するフランジ部2bと、フランジ部2bを介して先端部2aと反対方向に突出し、フランジ部2bの径よりも小さい径の円柱状をなすボス部2cとを同軸上に有し、検査対象であるICチップ等の半導体集積回路に設けられる接続用電極と接触する第1プランジャ2」と、本願発明1における、「先細な先端形状をなし、最大の径が前記第1フランジ部と比して小さい第2先端部と、該第2先端部の基端側から延び、前記第1基端部の径と略同一の径を有する第2ボス部とを同軸上に有し、前記検査対象物へ検査用信号を出力する回路基板と接触する導電性の第2接触部材」とは、「先細な先端形状をなす第2先端部と、該第2先端部の基端側から延びる第2ボス部とを同軸上に有する導電性の第2接触部材」である点で共通する。

c 引用発明1において、「コイルバネであ」る「バネ部材4」の「粗巻き部4b」の巻回が所定のピッチでなされていることは、明らかであるので、「バネ部材4は均一な径を有し、バネ部材4の内径は」「基端部3dの径よりも大き」いことから、引用発明1の「バネ部材4」における「粗巻き部4b」は、本願発明1の「コイルばね」における、「前記第1基端部の径よりも大きい内径で所定ピッチに巻回されている粗巻き部」に相当する。
また、引用発明1において、「バネ部材4は均一な径を有し、バネ部材4の内径はボス部2cの外径よりも若干小さ」いので、引用発明1の「バネ部材4」における「密着巻き部4a」と、本願発明1の「コイルばね」における、「前記第2ボス部の径と略等しい内径で密着巻きに巻回されている密着巻き部」とは、「密着巻きに巻回されている密着巻き部」である点で共通する。
そして、引用発明1の「第1プランジャ2」の「ボス部2c及び」「第2プランジャ3」の「ボス部3cには」、それぞれ「バネ部材4の端部が圧入される」ところ、引用発明1の「バネ部材4」は、「第1プランジャ2に取り付けられる側が密着巻き部4aである一方、第2プランジャ3に取り付けられる側が粗巻き部4bとなっている」ので、「粗巻き部4b」「の端部が」「第2プランジャ3」の「ボス部3c」に「圧入され」て「取り付けられ」、「密着巻き部4a」「の端部が」「第1プランジャ2」の「ボス部2c」に「圧入され」て「取り付けられる」ものといえる。
さらに、引用発明1の「バネ部材4」は、「第1プランジャ2と第2プランジャ3とを連結し軸線方向へ伸縮自在な」ものであるから、「第1プランジャ2と第2プランジャ3とを」同軸的に「連結」するものといえる。
したがって、引用発明1における、「第1プランジャ2と第2プランジャ3とを連結し軸線方向へ伸縮自在なコイルバネであり、第1プランジャ2に取り付けられる側が密着巻き部4aである一方、第2プランジャ3に取り付けられる側が粗巻き部4bとなっている、バネ部材4」と、本願発明1における、「前記第1基端部の径よりも大きい内径で所定ピッチに巻回されている粗巻き部と、前記第2ボス部の径と略等しい内径で密着巻きに巻回されている密着巻き部とを有し、前記粗巻き部の端部が前記第1ボス部に取り付けられており、前記密着巻き部の端部が第2ボス部に取り付けられている前記第1および第2接触部材を同軸的に連結するコイルばね」とは、「前記第1基端部の径よりも大きい内径で所定ピッチに巻回されている粗巻き部と、密着巻きに巻回されている密着巻き部とを有し、前記粗巻き部の端部が前記第1ボス部に取り付けられており、前記密着巻き部の端部が第2ボス部に取り付けられている前記第1および第2接触部材を同軸的に連結するコイルばね」である点で共通する。

d 引用発明1において、「バネ部材4は、第1プランジャ2および第2プランジャ3から荷重を受けることによって収縮し、湾曲し、その結果、密着巻き部4aの少なくとも一部が基端部3dと接触する」ところ、「第2プランジャ3」の「基端部3d」が、「軸線方向」と平行に、かつ「第1プランジャ2」に近づく方向に、所定の大きさ以上の「荷重を受けることによって」、「密着巻き部4aの少なくとも一部」に「接触」した状態となることは、明らかである。
したがって、引用発明1において、「バネ部材4は、第1プランジャ2および第2プランジャ3から荷重を受けることによって収縮し湾曲し、その結果、密着巻き部4aの少なくとも一部が基端部3dと接触する」ことは、本願発明1において、「前記第1基端部は、軸線方向と平行であり、少なくとも前記第2接触部材に近づく方向へ所定の大きさ以上の荷重を受けた場合、前記密着巻き部と接触すること」に相当する。

e 引用発明1の「コンタクトプローブ」は、次の相違点は除いて、本願発明1の「コンタクトプローブ」に相当する。

(イ)したがって、上記(ア)aないしeから、本願発明1と引用発明1とは、
「先細な先端形状を有する第1先端部と、該第1先端部の基端側から延び、前記第1先端部の径と比して大きい径を有する第1フランジ部と、該第1フランジ部の端部であって、前記第1先端部の連結側と異なる端部から延び、前記第1フランジ部の径と比して小さい径を有する第1ボス部と、該第1ボス部の端部であって、前記第1フランジ部の連結側と異なる端部から延び、前記第1ボス部の径と比して小さい径を有する第1基端部とを同軸上に有する導電性の第1接触部材と、
先細な先端形状をなす第2先端部と、該第2先端部の基端側から延びる第2ボス部とを同軸上に有する導電性の第2接触部材と、
前記第1基端部の径よりも大きい内径で所定ピッチに巻回されている粗巻き部と、密着巻きに巻回されている密着巻き部とを有し、前記粗巻き部の端部が前記第1ボス部に取り付けられており、前記密着巻き部の端部が第2ボス部に取り付けられている前記第1および第2接触部材を同軸的に連結するコイルばねと、
を備え、
前記第1基端部は、軸線方向と平行であり、少なくとも前記第2接触部材に近づく方向へ所定の大きさ以上の荷重を受けた場合、前記密着巻き部と接触する、コンタクトプローブ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明1では、「コイルばね」の「粗巻き部」が取り付けられる側の「第1接触部材」が、「検査対象物と接触」し、「コイルばね」の「密着巻き部」が取り付けられる側の「第2接触部材」が、「前記検査対象物へ検査用信号を出力する回路基板と接触する」のに対し、
引用発明1では、「バネ部材4」の「粗巻き部4b」が取り付けられる側の「第2プランジャ3」が、「検査用の信号を出力する回路基板に設けられる接続用電極と接触」し、「バネ部材4」の「密着巻き部4a」が取り付けられる側の「第1プランジャ2」が、「検査対象であるICチップ等の半導体集積回路に設けられる接続用電極と接触する」点。

(相違点2)
本願発明1では、「第2接触部材」の「第2先端部」の「最大の径が」「第1接触部材」の「第1フランジ部と比して小さい」のに対し、
引用発明1では、「第1プランジャ2のフランジ部2bの径と第2プランジャ3のフランジ部3bの径が略同一であ」る点。

(相違点3)
本願発明1では、「コイルばね」の「密着巻き部の端部」が取り付けられている「第2接触部材」の「第2ボス部」が、「第1接触部材」の「第1基端部の径と略同一の径を有する」とともに、「コイルばね」の「密着巻き部」の「内径」が「前記第2ボス部の径と略等しい」のに対し、
引用発明1では、「第1プランジャ2のボス部2cの径が第2プランジャ3の基端部3dの径よりも大きく」、また、「バネ部材4は均一な径を有し、バネ部材4の内径はボス部2cの外径よりも若干小さ」い点。

イ 判断
技術的なつながりを考慮し、上記相違点1及び2についてまとめて検討するに、検査用信号の出力基板側の接触部材における最大の径を、検査対象物側の接触部材における最大の径よりも小さくする点については、引用文献2ないし4のいずれにも記載されておらず周知技術であったともいえないから、引用発明1において、「検査用の信号を出力する回路基板に設けられる接続用電極と接触する」側のプランジャの先端部の最大の径を、「検査対象であるICチップ等の半導体集積回路に設けられる接続用電極と接触する」側のプランジャのフランジ部の径よりも小さくして、本願発明1の上記相違点1及び2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、上記相違点3については検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10は、いずれも、本願発明1を更に限定したものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明1及び引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本願の請求項1ないし10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえず、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

3 当審拒絶理由についての判断
(1)本願発明1について
ア 対比
(ア)本願発明1と引用発明5とを対比する。
a 引用発明5の「プランジャ21」における、「先鋭端を有する先端部21a」は、本願発明1の「第1接触部材」における、「先細な先端形状を有する第1先端部」に相当する。
また、引用発明5の「プランジャ21」における、「先端部21aの基端側に設けられ、先端部21aの径よりも小さい径を有するボス部21b」と、本願発明1の「第1接触部材」における、「該第1フランジ部の端部であって、前記第1先端部の連結側と異なる端部から延び、前記第1フランジ部の径と比して小さい径を有する第1ボス部」とは、「前記第1先端部の基端側から延びる第1ボス部」である点で共通する。
さらに、引用発明5においては、「プランジャ21の軸部21cの径がプランジャ21のボス部21bの径よりも小さ」いので、引用発明5の「プランジャ21」における、「ボス部21bの表面のうち先端部21aと接する側と反対側の表面から延出する軸部21c」は、本願発明1の「第1接触部材」における、「該第1ボス部の端部であって、前記第1フランジ部の連結側と異なる端部から延び、前記第1ボス部の径と比して小さい径を有する第1基端部」に相当する。
そして、引用発明5の「プランジャ21」が導電性の部材であることは、「プランジャ21」「を経由する電気導通が実現され」ることから明らかであるので、引用発明5における、「先鋭端を有する先端部21aと、先端部21aの基端側に設けられ、先端部21aの径よりも小さい径を有するボス部21bと、ボス部21bの表面のうち先端部21aと接する側と反対側の表面から延出する軸部21cとを同軸上に備え、検査用の信号を生成する検査装置との接続を行うスペーストランスフォーマと接触するプランジャ21」と、本願発明1における、「先細な先端形状を有する第1先端部と、該第1先端部の基端側から延び、前記第1先端部の径と比して大きい径を有する第1フランジ部と、該第1フランジ部の端部であって、前記第1先端部の連結側と異なる端部から延び、前記第1フランジ部の径と比して小さい径を有する第1ボス部と、該第1ボス部の端部であって、前記第1フランジ部の連結側と異なる端部から延び、前記第1ボス部の径と比して小さい径を有する第1基端部とを同軸上に有し、検査対象物と接触する導電性の第1接触部材」とは、「先細な先端形状を有する第1先端部と、前記第1先端部の基端側から延びる第1ボス部と、該第1ボス部の端部であって、前記第1フランジ部の連結側と異なる端部から延び、前記第1ボス部の径と比して小さい径を有する第1基端部とを同軸上に有する導電性の第1接触部材」である点で共通する。

b 引用発明5においては、「プランジャ22のフランジ部22bの径がプランジャ21の最大の径よりも小さ」いので、引用発明5の「プランジャ22」における、「先鋭端を有する先端部22aと、先端部22aの基端側に設けられ、先端部22aの径よりも大きい径を有するフランジ部22bと」からなる構成と、本願発明1の「第2接触部材」における、「先細な先端形状をなし、最大の径が前記第1フランジ部と比して小さい第2先端部」とは、「先細な先端形状をなし、最大の径が前記第1接触部材と比して小さい第2先端部」である点で共通する。
また、引用発明5においては、「プランジャ22の基端部22cの径がプランジャ21の軸部21cの径よりも大き」いので、引用発明5の「プランジャ22」における、「フランジ部22bの表面から先端部22aと相反する方向へ突出し、フランジ部22bの径よりも小さい径を有するボス状の基端部22c」と、本願発明1の「第2接触部材」における、「該第2先端部の基端側から延び、前記第1基端部の径と略同一の径を有する第2ボス部」とは、「該第2先端部の基端側から延びる第2ボス部」である点で共通する。
そして、引用発明5の「プランジャ22」が導電性の部材であることは、「プランジャ22を経由する電気導通が実現され」ることから明らかであるので、引用発明5における、「先鋭端を有する先端部22aと、先端部22aの基端側に設けられ、先端部22aの径よりも大きい径を有するフランジ部22bと、フランジ部22bの表面から先端部22aと相反する方向へ突出し、フランジ部22bの径よりも小さい径を有するボス状の基端部22cとを同軸上に有し、検査対象である半導体ウェハの電極パッドに接触するプランジャ22」と、本願発明1における、「先細な先端形状をなし、最大の径が前記第1フランジ部と比して小さい第2先端部と、該第2先端部の基端側から延び、前記第1基端部の径と略同一の径を有する第2ボス部とを同軸上に有し、前記検査対象物へ検査用信号を出力する回路基板と接触する導電性の第2接触部材」とは、「先細な先端形状をなし、最大の径が前記第1接触部材と比して小さい第2先端部と、該第2先端部の基端側から延びる第2ボス部とを同軸上に有する導電性の第2接触部材」である点で共通する。

c 引用発明5において、「コイル状のバネ部材23」の「粗巻き部23a」の巻回が所定のピッチでなされていることは、明らかであるので、「バネ部材23の粗巻き部23aの内径がプランジャ21の軸部21cの径よりも大き」いことから、引用発明5の「バネ部材23」における「粗巻き部23a」は、本願発明1の「コイルばね」における「前記第1基端部の径よりも大きい内径で所定ピッチに巻回されている粗巻き部」に相当する。
また、引用発明5において、「バネ部材23の密着巻き部23bの内径がプランジャ22の基端部22cの径と略等し」いので、引用発明5の「バネ部材23」における「密着巻き部23b」は、本願発明1の「コイルばね」における、「前記第2ボス部の径と略等しい内径で密着巻きに巻回されている密着巻き部」に相当する。
そして、引用発明5の「バネ部材23」は、「プランジャ21に取り付けられる側が粗巻き部23aである一方、プランジャ22に取り付けられる側が密着巻き部23bであり、粗巻き部23aの端部がボス部21bに圧入され、密着巻き部23bの端部が基端部22cに圧入されている」ので、「粗巻き部23aの端部が」「プランジャ21」の「ボス部21bに圧入され」て「取り付けられ」、「密着巻き部23bの端部が」「プランジャ22」の「基端部22cに圧入され」て「取り付けられる」ものといえる。
さらに、引用発明5の「バネ部材23」は、「プランジャ21、22を伸縮自在に連結する」ものであって、「互いに連結されるプランジャ21、22およびバネ部材23は同一の軸線を有」するので、「プランジャ21」及び「プランジャ22」を同軸的に「連結」するものといえる。
したがって、引用発明5における、「プランジャ21に取り付けられる側が粗巻き部23aである一方、プランジャ22に取り付けられる側が密着巻き部23bであり、粗巻き部23aの端部がボス部21bに圧入され、密着巻き部23bの端部が基端部22cに圧入されている、プランジャ21、22を伸縮自在に連結するコイル状のバネ部材23」は、本願発明1における、「前記第1基端部の径よりも大きい内径で所定ピッチに巻回されている粗巻き部と、前記第2ボス部の径と略等しい内径で密着巻きに巻回されている密着巻き部とを有し、前記粗巻き部の端部が前記第1ボス部に取り付けられており、前記密着巻き部の端部が第2ボス部に取り付けられている前記第1および第2接触部材を同軸的に連結するコイルばね」に相当する。

d 引用発明5において、「プランジャ21をスペーストランスフォーマの電極パッドに接触させた状態で、密着巻き部23bの少なくとも一部が軸部21cに接触しており、半導体ウェハの電極パッドを先端部22aに接触させると、バネ部材23は収縮し、さらに湾曲し、この際、密着巻き部23bの一部はプランジャ21の軸部21cに接触した状態を保持する」ところ、「プランジャ21の軸部21c」が、「軸線」の方向と平行に、かつ「プランジャ22」に近づく方向に、所定の大きさ以上の荷重を受けることによって、「密着巻き部23bの少なくとも一部」「に接触した状態」となることは、明らかである。
したがって、引用発明5において、「プランジャ21をスペーストランスフォーマの電極パッドに接触させた状態で、密着巻き部23bの少なくとも一部が軸部21cに接触しており、半導体ウェハの電極パッドを先端部22aに接触させると、バネ部材23は収縮し、さらに湾曲し、この際、密着巻き部23bの一部はプランジャ21の軸部21cに接触した状態を保持する」ことは、本願発明1において、「前記第1基端部は、軸線方向と平行であり、少なくとも前記第2接触部材に近づく方向へ所定の大きさ以上の荷重を受けた場合、前記密着巻き部と接触すること」に相当する。

e 引用発明5の「プローブ」は、「接触」によって「電気導通が実現される」ものであるので、次の相違点は除いて、本願発明1の「コンタクトプローブ」に相当する。

(イ)したがって、上記(ア)aないしeから、本願発明1と引用発明5とは、
「先細な先端形状を有する第1先端部と、前記第1先端部の基端側から延びる第1ボス部と、該第1ボス部の端部であって、前記第1フランジ部の連結側と異なる端部から延び、前記第1ボス部の径と比して小さい径を有する第1基端部とを同軸上に有する導電性の第1接触部材と、
先細な先端形状をなし、最大の径が前記第1接触部材と比して小さい第2先端部と、該第2先端部の基端側から延びる第2ボス部とを同軸上に有する導電性の第2接触部材と、
前記第1基端部の径よりも大きい内径で所定ピッチに巻回されている粗巻き部と、前記第2ボス部の径と略等しい内径で密着巻きに巻回されている密着巻き部とを有し、前記粗巻き部の端部が前記第1ボス部に取り付けられており、前記密着巻き部の端部が第2ボス部に取り付けられている前記第1および第2接触部材を同軸的に連結するコイルばねと、
を備え、
前記第1基端部は、軸線方向と平行であり、少なくとも前記第2接触部材に近づく方向へ所定の大きさ以上の荷重を受けた場合、前記密着巻き部と接触する、コンタクトプローブ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明1では、「コイルばね」の「粗巻き部」が取り付けられる側の「第1接触部材」が、「検査対象物と接触」し、「コイルばね」の「密着巻き部」が取り付けられる側の「第2接触部材」が、「前記検査対象物へ検査用信号を出力する回路基板と接触する」のに対し、
引用発明5では、「バネ部材23」の「粗巻き部23a」が取り付けられる側の「プランジャ21」が、「検査用の信号を生成する検査装置との接続を行うスペーストランスフォーマと接触」し、「バネ部材23」の「密着巻き部23b」が取り付けられる側の「プランジャ22」が、「検査対象である半導体ウェハの電極パッドに接触する」点。

(相違点2)
本願発明1では、「第1接触部材」が「該第1先端部の基端側から延び、前記第1先端部の径と比して大きい径を有する第1フランジ部」を有し、「第2接触部材」の「第2先端部」の「最大の径が」「第1接触部材」の「第1フランジ部と比して小さい」のに対し、
引用発明5では、「プランジャ21」にはフランジ部がなく、「プランジャ22のフランジ部22bの径がプランジャ21の最大の径よりも小さ」い点。

(相違点3)
本願発明1では、「コイルばね」の「密着巻き部の端部」が取り付けられている「第2接触部材」の「第2ボス部」が、「第1接触部材」の「第1基端部の径と略同一の径を有する」のに対し、
引用発明5では、「プランジャ22の基端部22cの径がプランジャ21の軸部21cの径よりも大き」い点。

イ 判断
技術的なつながりを考慮し、上記相違点1及び2についてまとめて検討するに、検査用信号の出力基板側の接触部材における最大の径を、検査対象物側の接触部材における最大の径よりも小さくする点については、引用文献3及び6ないし8のいずれにも記載されておらず周知技術であったともいえない(なお、引用文献5には、「インターポーザ13に適用される接続端子133のプランジャ134、135」に関して「プランジャ134とプランジャ135を上下逆に配置してもよい。」との記載(上記1(5)ア(ウ)[0035])があるが、この記載も、検査用信号の出力基板側の接触部材における最大の径を、検査対象物側の接触部材における最大の径よりも小さくする点について示唆するものではない。)から、引用発明5において、「検査用の信号を生成する検査装置との接続を行うスペーストランスフォーマと接触する」側のプランジャの先端部の最大の径を、「検査対象である半導体ウェハの電極パッドに接触する」側のプランジャのフランジ部の径よりも小さくして、本願発明1の上記相違点1及び2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、上記相違点3については検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明5並びに引用文献3及び6ないし8に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10は、いずれも、本願発明1を更に限定したものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明5並びに引用文献3及び6ないし8に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本願の請求項1ないし10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえず、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-06 
出願番号 特願2012-521543(P2012-521543)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 濱本 禎広  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 関根 洋之
大和田 有軌
発明の名称 コンタクトプローブおよびプローブユニット  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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