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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G10L
管理番号 1325410
審判番号 不服2015-18537  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-13 
確定日 2017-02-21 
事件の表示 特願2012-514054「再認識および統計的分類を使用する認識」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月9日国際公開、WO2010/141513、平成24年11月15日国内公表、特表2012-529080〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)6月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月4日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年5月23日付けで手続補正がなされ、平成26年5月22日付けで拒絶理由が通知され、同年11月26日付けで手続補正がなされたが、平成27年6月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月13日付けで拒絶査定不服の審判が請求され、同時に誤訳訂正書による手続補正がなされ、さらに、審判合議体からの要請により、平成28年9月15日に技術説明の面接が行われたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成27年10月13日付けの誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、独立請求項である請求項1、6、及び8に係る発明はそれぞれ次のとおりのものである。

「【請求項1】
コンピュータ実装認識システムであって、
複数のコンテキスト特定文法をそれぞれ並行に用いて、同一の入力に対し、独立した認識処理を行い、複数の認識結果を対応する複数の認識パスに沿って生成するよう構成された複数のコンテキスト特定制約の制約コンポーネントと
前記複数の認識結果の再認識のために用いられるパスの各々に割り当てられた重みに基づいて前記複数の認識結果を再認識し、単一の認識結果を求めるよう構成された調整コンポーネントと、
を備えることを特徴とするシステム。」
「【請求項6】
コンピュータ実装認識方法であって、前記方法はコンピュータ可読命令を実行するコンピュータシステムにより実行され、前記方法は、
発話入力を処理するための別々のコンテキスト特定文法を受信するステップと、
前記コンテキスト特定文法をそれぞれ並行に用いて、前記発話入力を独立して認識し、
複数の中間認識結果を生成するステップと、
前記認識パスの各々に割り当てられた重みに基づいて前記複数の中間認識結果を調整して単一の最終認識結果を生成するステップと、
を備えることを特徴とする方法。」
「【請求項8】
プロセッサによって実行されるコンピュータ実行可能命令を備えるコンピュータ読取可能記憶媒体であって、
複数の認識結果にそれぞれ対応する複数の認識パスに沿って同じ入力に対し独立の認識処理を実行するよう構成された複数のコンテキスト特定制約の制約コンポーネントと、
前記複数の認識結果の再認識のために用いられるパスの各々に割り当てられた重みに基づいて前記複数の認識結果を再認識し、最終認識結果を求めるよう構成された調整コンポーネントと、
を備えることを特徴とする、コンピュータ読取可能記憶媒体。」

第3 原査定の拒絶理由等
平成26年5月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由のうち、上記請求項1、6、8に係る発明の発明特定事項に含まれる「重み」に関係する実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)についての理由を摘記すると次のとおりである。(なお、下線は当審で付与した。)

「(理由A)
この出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。



(中略)

【請求項15について】
請求項15には「相対的重みを、前記ダイナミックに生成された文典を利用した再認識を用いて、前記複数の中間認識結果を並行して調整することの各々に割り当てる」と記載されている。
しかしながら、「相対的重み」とはいかなるものであって、いかように用いられるのかが不明確である。また、「調整することの各々に割り当てる」との記載についても、「調整すること」自体は動作であるから、それに重さを割り当てるとは何を表したいのかが日本語として不明確である。
また、当該記載について、発明の詳細な説明における対応箇所を参照すると、段落【0034】及び【0042】には「再認識方法に関して、任意に、回帰などの統計的分析を行って相対的重さを再認識ダイナミック文典におけるパスに割り当てることも可能である。」及び「ステップ700において、回帰などの統計的分析を行う。分析をすべてのパス上で同時に実施する。ステップ702において、相対的重さを再認識ダイナミック文典における各パスに割り当てる。ステップ704において、パスの中間認識結果の生成を所定の時間待つ。ステップ706において、時間内生成した中間認識結果に基づいて最後の認識結果を生成する。」との記載がなされている。当該記載によれば、統計的分析はパスに対して行っているものと理解されるが、本願発明において「パス」とは何を指し示しているのかが技術的に不明であり、ステップ702が中間認識結果の生成に係るステップ704よりも前に行われていることからしても、相対的重みを算出する処理がいかように実施されるのかが全く不明である。よって、本願の発明の詳細な説明は、請求項15に係る発明を当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
さらに、上述のように、発明の詳細な説明においては、相対的重さの割当ては中間認識結果の生成よりも前に行われることが記載されているのであるから、中間調整結果の調整のために用いることはできず、請求項の記載は発明の詳細な説明に記載されたものでもない。」

そして、平成27年6月24日付けの拒絶査定においては、本願は、実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を含む上記理由Aによって拒絶をすべきものであるとするとともに、その備考欄には、実施可能要件に関して以下のとおり記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

「・請求項 1-17
出願人は、平成26年11月26日付けでした手続補正によって当該補正前の請求項15を削除するとともに、請求項1に当該補正前の請求項15に対応する記載として以下の記載を追加した。
「前記認識パスの各々に割り当てられた重みに基づいて前記複数の認識結果を再認識し、単一の認識結果を求めるよう構成された調整コンポーネント」
そして、出願人は、同日付け意見書において、パス、重み等がいかなるものかは明確であるから、本願発明は明確であり、発明の詳細な説明の記載は本願発明を実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものである旨を主張している。

しかしながら、意見書の記載によれば、まずパスとは、認識パスを指すことが主張され、請求項1の記載もそのように補正されたが、発明の詳細な説明の段落[0042]等によれば、相対的重さを割り当てられるパスは「再認識ダイナミック文典における各パス」であるから、出願人の主張とは齟齬を生じている。そして、「再認識ダイナミック文典」なるものが[図3]におけるステップ316において生成されるものであり、かつ、「文典」が「文法」の誤訳であるとしたとき、技術常識に鑑みて、文法がパスを有するとはいかなる状態を指すものかが不明なのであるから、発明の詳細な説明において、何に重みが割り当てられるのかは当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
また、重みについて、出願人は複数の認識結果から抽出された分類特徴に基づいて統計的分析を行うことによって算出されるものである旨を主張しているが、再認識のための統計的分析を分類特徴に対して行う旨の記載は発明の詳細な説明にはされておらず、出願人の主張は根拠が不明である。そもそも、重みが統計的分析によっていかように算出され、なにをどのように調整して再認識のために用いるのかが発明の詳細な説明には何ら記載されていないのであるから、発明の詳細な説明は重みがいかなるものかを当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載しているとはいえない。
以上から、発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明がいかように再認識を行った単一の認識結果を求めるのかについて当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものとは依然としていえないことから、特許法第36条第4項第1号の規定により拒絶されるべきものである。
(中略)
請求項2-17に関しても同様である。」

第4 当審の判断
1.請求項1ないし5、8ないし11に係る発明について
請求項1に係る発明が備える「調整コンポーネント」は、「前記複数の認識結果の再認識のために用いられるパスの各々に割り当てられた重みに基づいて前記複数の認識結果を再認識し、単一の認識結果を求めるよう構成された」ものであり、上記「重み」は、発明の詳細な説明に記載の「相対的重さ」に対応するものである。
そして、発明の詳細な説明における「相対的重さ」についての記載は、
「再認識方法に関して、任意に、回帰などの統計的分析を行って相対的重さを再認識ダイナミック文典におけるパスに割り当てることも可能である。他の領域知識322の出力を制御して各再認識プロセスのためのダイナミック文典316を左右することができる。」(段落【0034】)、
「図7は、図5の方法の付加の態様を示す。ステップ700において、回帰などの統計的分析を行う。分析をすべてのパス上で同時に実施する。ステップ702において、相対的重さを再認識ダイナミック文典における各パスに割り当てる。ステップ704において、パスの中間認識結果の生成を所定の時間待つ。ステップ706において、時間内生成した中間認識結果に基づいて最後の認識結果を生成する。」(段落【0042】)
のみであり、これらの記載からみて、「相対的重さ」は「回帰などの統計的分析を行う」ことによって求められると解される。
しかしながら、統計的分析として回帰分析を行うとしても、分析の対象となる変数や、変数の関係を表すモデルについて発明の詳細な説明には何ら具体的な説明がなされていない。また、回帰分析を行った結果と相対的重さとの関係についても何ら具体的な説明がなされていない。さらに、上記「分析をすべてのパス上で同時に実施する」という記載については、パス上で分析を実施するということが技術的にどのようなことを意味しているのかが不明であり、かつ、どのようにして同時に実施するのかも不明である。したがって、回帰分析に関する技術常識を勘案しても、回帰分析を用いてどのように相対的重さを求めるのかが不明である。
また、「回帰など」と記載されているから、統計的分析の手法は回帰分析に限られるものではないが、発明の詳細な説明には他の統計的分析の手法や分析の対象等について何ら具体的な記載がなされていないから、統計的分析全般に関する技術常識を総合しても、何からどのようにして相対的重さを求めるのかは不明である。
さらに、上記段落【0034】及び【0042】の記載によると、「相対的重さ」は「再認識ダイナミック文典におけるパスに割り当てる」ものであるが、「再認識ダイナミック文典におけるパス」が何を意味するのかがそもそも不明であるとともに、「相対的重さ」を当該「パス」に「割り当てる」ということが技術的にどのようなことを意味するのかも不明である。
そして、再認識ダイナミック文典におけるパスに割り当てられた「相対的重さ」が再認識時にどのように用いられるのかについて、発明の詳細な説明には何ら記載されていないから、再認識の手順等から「相対的重さ」について推察することもできない。

以上のとおりであるから、出願時の技術常識を参酌しても、当業者が、発明の詳細な説明の記載から、「相対的重さ」を何からどのように求めるのかについてや、「相対的重さ」を何にどのように割り当てるのかについて理解することはできない。その結果、「相対的重さ」に基づいてどのように再認識するのかについて理解することもできず、したがって、発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明の「前記複数の認識結果の再認識のために用いられるパスの各々に割り当てられた重みに基づいて前記複数の認識結果を再認識し、単一の認識結果を求めるよう構成された調整コンポーネント」について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
また、同様の理由で、請求項1の従属請求項である請求項2ないし5に係る発明、「前記複数の認識結果の再認識のために用いられるパスの各々に割り当てられた重みに基づいて前記複数の認識結果を再認識し、最終認識結果を求めるよう構成された調整コンポーネント」を備える請求項8に係る発明、及び、当該請求項8の従属請求項である請求項9ないし11に係る発明についても、発明の詳細な説明には当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。

次に、審判請求人の主張等について検討する。
(1)意見書における主張について
審判請求人(出願人)は平成26年11月26日付け意見書において、
「また、「重み」とは認識経路の各々に、他の認識経路との関係において割り当てられた、重みのことであり、所望の単一の認識結果を求めるよう、複数の認識結果から抽出された分類特徴に基づいて統計的分析を行うことにより算出される(例えば、本願明細書、段落〔0020〕、〔0029〕、〔0034〕、〔0042〕)。
そして、分類特徴とは、これらに限定されないが、認識文字列、発話レベルおよびサブ発話レベル信頼スコア、会話カバー範囲(例えば、会話として仮定された発話の一部)、認識における相対遅延(例えば、並行の場合)、コンテキストの事前確率(例えば、ユーザが企業名を求める頻度対ユーザがスポーツスコアを求める頻度)、各コンテキスト特定認識の相対難易度(例えば、コンテキスト認識精度内におけるコンテキスト特定文典のパープレキシティ)、各文典の(例えば、ウェブ探索文典が多種類のクエリを受けることができる)許容性、および認識結果におけるコンセンサスを含むことができる(本願明細書、段落〔0035〕)。
本願発明においては、該重みに基づいて、複数の認識結果を再認識して、単一の認識結果を求める。以上、補正後の請求項に記載の事項は明確であると思量する。」
と主張している。
そこで、まず、発明の詳細な説明に記載の認識システムについて検討すると、「図3は、再認識を利用する、制約が音声認識のための文典であるコンテキスト特定制約認識システム300を示す。」(段落【0024】)、及び、「図4は、統計的分類を利用する、制約が並行の音声認識のための文典であるコンテキスト特定制約認識システム400を示す。」(段落【0029】)と記載されているように、再認識を利用するコンテキスト特定制約認識システム300及び統計的分類を利用するコンテキスト特定制約認識システム400という2種類の認識システムが記載されている。
そして、請求項1に係る発明は「前記複数の認識結果の再認識のために用いられるパスの各々に割り当てられた重みに基づいて前記複数の認識結果を再認識し、単一の認識結果を求めるよう構成された調整コンポーネント」(下線は当審で付与した。)を備えたものであるから、図3に示される再認識を利用するコンテキスト特定制約認識システム300に対応するものであると認められる。
一方、審判請求人(出願人)の上記主張に含まれる上記「分類特徴」は、
「【0020】
あるいは、調整コンポーネント110は、認識結果108から抽出された分類特徴に基づいて作動する統計的分類器を用いて認識結果108を調整し、単一の調整結果102を生成する。」、
「【0029】
図4は、統計的分類を利用する、制約が並行の音声認識のための文典であるコンテキスト特定制約認識システム400を示す。複数の数字上および/または分類の特徴402は、すべての結果(例えば、結果308、結果314など)、もしかすると認識タスクに関係のある他の領域知識322から導出することができる。統計的分類器は、各結果と実際のユーザ入力との類似度を決定するために用いられる。もっとも高い分類スコアを有する結果は、最後の認識結果320として選択することができ、分類スコアは、最後の認識信頼度に正規化することができる。」
という記載(なお、下線は当審で付与した。)からみて、図4に示される統計的分類を利用するコンテキスト特定制約認識システム400で用いられるものであると認められる。
そうすると、審判請求人(出願人)の上記主張は、請求項1に係る発明が対応する実施の形態とは異なる実施の形態に基づくものであるから採用することはできない。
(2)審判請求書における主張について
審判請求人は平成27年10月13日付け審判請求書において、
「なお、重みに関して、明細書は以下の事項を開示している。
『再認識方法に関して、任意に、回帰などの統計的分析を行って相対的重さを再認識ダイナミック文典におけるパスに割り当てることも可能である。他の領域知識322の出力を制御して各再認識プロセスのためのダイナミック文典316を左右することができる。』(明細書、段落〔0034〕)
また、統計的分類に関して、明細書は以下の事項を開示している。
『図4は、統計的分類を利用する、制約が並行の音声認識のための文典であるコンテキスト特定制約認識システム400を示す。複数の数字上および/または分類の特徴402は、すべての結果(例えば、結果308、結果314など)、もしかすると認識タスクに関係のある他の領域知識322から導出することができる。統計的分類器は、各結果と実際のユーザ入力との類似度を決定するために用いられる。もっとも高い分類スコアを有する結果は、最後の認識結果320として選択することができ、分類スコアは、最後の認識信頼度に正規化することができる。』(明細書、段落〔0029〕)
以上、重みがどのように統計的分析によって算出され、再調整のために用いるのかは明確である。従って、請求項1に係る記載は明確であり、当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものであり、補正後の請求項1は特許法第36条第6項第2号、及び同条第4項第1号の規定により拒絶されるべきものではない。 」
と主張している。
しかしながら、上記段落【0034】に記載の「統計的分析」は、図3に記載のような認識を利用するコンテキスト特定制約認識システム300で行われるものであるのに対して、上記段落【0029】の記載の「統計的分類」は、図4に記載のような統計的分類を利用するコンテキスト特定制約認識システム400で利用されるものであって、上記「統計的分析」とは関係のないものであるから、出願人の上記主張を採用することはできない。
(3)面接における説明について
本願の技術説明を目的とした平成28年9月15日付けの面接において、審判請求人は、請求項1に係る発明が図3に記載の再認識を利用するコンテキスト特定制約認識システム300に対応するものであると認めた上で、請求項1に係る発明の「重み」は、図3に記載の「認識1」?「認識N」の結果として得られる「信頼スコア」を正規化したものであるという、上記(1)及び(2)の主張とは異なる説明をするとともに、その根拠として、明細書の段落【0027】及び【0034】を挙げた。
しかしながら、上記段落【0027】及び【0034】のいずれにも、「重み」あるいは「相対的重さ」が、図3に記載の「認識1」?「認識N」の結果として得られる「信頼スコア」を正規化したものであることは、文言として明記されていない。また、上記段落【0027】には「ダイナミック文典316は、すべての認識結果から導出された競合エントリを含むように構築され、認識結果のベストNおよび/または認識ラティス(recognition lattice)の認識文字列、解釈および信頼スコアを含むことができる。オリジナルの発話入力302の再認識は、このダイナミック文典316に対して行われる。信頼スコアを含む再認識318の結果は、最後の認識結果320として見なされる。」と記載されており、ダイナミック文典には「信頼スコア」を含むことができると記載されているものの、それを正規化したものが請求項1に係る発明の「重み」(「相対的重さ」)であることは、技術常識を参酌しても当業者にとって自明のことであるとは認められない。さらに、段落【0034】の「回帰などの統計的分析を行って」との関係から見ても、正規化は統計的分析の際に行われる前処理にすぎず、回帰分析でもないので、段落【0034】の記載を勘案しても、請求項1に係る発明の「重み」が、図3に記載の「認識1」?「認識N」の結果として得られる「信頼スコア」を正規化したものであることは、自明のことであるとは認められない。
したがって、審判請求人の上記説明を採用することはできない。

2.請求項6及び7に係る発明について
請求項6については、平成27年10月13日付けの誤訳訂正書による補正によって請求項の番号が繰り上がっただけで、その記載は補正前の請求項9の記載と同じである。
そうすると、上述した請求項1に係る発明とは異なり、請求項6に係る発明において「重み」が割り当てられるのは「前記認識パス」すなわち「前記コンテキスト特定文法をそれぞれ並行に用いて、前記発話入力を独立して認識し、複数の中間認識結果を生成するステップ」のパスであるから、拒絶査定でも指摘しているように、「相対的重さを再認識ダイナミック文典におけるパスに割り当てる」という明細書の段落【0034】及び【0042】の記載とも整合しないから、発明の詳細な説明には、請求項6に係る発明の重みの割り当てについて当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
さらに、請求項6に係る発明の「重み」すなわち「相対的重さ」を何からどのように求めるのかについても、「1.請求項1ないし5、8ないし11に係る発明について」で述べたのと同様の理由により、発明の詳細な説明には当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
以上のとおりであるから、発明の詳細な説明には、請求項6及び7に係る発明の「前記認識パスの各々に割り当てられた重みに基づいて前記複数の中間認識結果を調整して単一の最終認識結果を生成するステップ」について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-29 
結審通知日 2016-09-30 
審決日 2016-10-12 
出願番号 特願2012-514054(P2012-514054)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 間宮 嘉誉  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 井上 信一
國分 直樹
発明の名称 再認識および統計的分類を使用する認識  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 大牧 綾子  
代理人 小野 新次郎  

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