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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1325447
審判番号 不服2016-11504  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-01 
確定日 2017-03-14 
事件の表示 特願2012-252568「接続コネクタ及びコネクタユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日出願公開、特開2014-102910、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月16日の出願であって、平成27年12月18日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月1日付けで手続補正され、同年5月11日付け(発送日:同年5月17日)で拒絶査定され、これに対し、同年8月1日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)され、同年8月25日付けで前置報告書が作成されたものである。

第2 原査定の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (刊行物については引用刊行物一覧参照)
請求項1に係る発明について:刊行物1,4(,5)
(1)刊行物1記載の発明
刊行物1には、図7,8に対応して次の発明が記載されている。

「一方向に延在し、第一端部(13)と第二端部(14)とを有する複数の接続配線(12)と、
該複数の接続配線(12)の前記第一端部(13)に取り付けられる第一保持具(5)と
、前記複数の接続配線(12)の前記第二端部(14)に取り付けられる第二保持具(5)と、を備え、
前記第一保持具(5)及び前記第二保持具(5)には、前記第一保持具(5)同士あるいは前記第二保持具(5)同士を連結する嵌合凸部(9)及び嵌合凹部(10)が形成され、
前記第一保持具(5)の前記嵌合凸部(9)同士の間隔と、前記第二保持具(5)の前記嵌合凸部(9)同士の間隔とが同じである接続コネクタ。」

(2)対比
請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、両者の相違点は次のとおりである。

(相違点)
請求項1に係る発明では「第一保持具の嵌合凸部同士の間隔と、第二保持具の嵌合凸部同士の間隔とが互いに異なっている」点。

(3)検討
嵌合接続する接続部材に、誤嵌合を防止し方向性を与えるため「嵌合凸部の間隔を異ならせる」ことは、拒絶理由通知で提示した刊行物4における凸部(9,9,9)が非対称に設けられていることからも明らかなように周知の技術手段である。

よって、刊行物1記載の発明において嵌合すべき保持具の誤嵌合を防止するため、第一保持具の嵌合凸部同士の間隔と、第二保持具の嵌合凸部同士の間隔とを互いに異ならせることは、上記周知の技術手段に倣って、当業者が容易になし得た事項である。

(4)出願人の主張の検討
出願人が「引用文献4の明細書中では、かかる凸部9及び凹部8の配置の技術的意義については、明確に述べられていませんし、その示唆もありません。」と主張しているので検討する。

コネクタの技術分野において「凹凸配置で誤嵌合を防止する」ことは、コード化(キー)技術として、例えば、刊行物5(5,6,7,8)記載のように技術常識である。

よって、出願人の上記主張は採用できない。

(他の請求項に係る発明について):刊行物1-5

引用刊行物一覧
1.国際公開第2009/040276号
2.実願昭50-146464号(実開昭52-059263号)のマイクロフィルム
3.特開2007-242473号公報
4.特開平11-258267号公報(周知の技術手段を示す刊行物)
5.特開平11-126654号公報(周知の技術手段を示す刊行物)


第3 本件補正の適否
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
一方向に延在し、第一端部と第二端部とを有する複数の接続配線と、
該複数の接続配線の前記第一端部に取り付けられる第一保持具と、前記複数の接続配線の前記第二端部に取り付けられる第二保持具と、を備え、
前記第一保持具及び前記第二保持具には、前記第一保持具同士あるいは前記第二保持具同士を連結する嵌合凸部及び嵌合凹部が形成され、
前記第一保持具の前記嵌合凸部同士の間隔と、前記第二保持具の前記嵌合凸部同士の間隔とが互いに異なっており、
前記第一保持具と前記第二保持具との各々が、ひとつの嵌合面当り2つの同一形状の嵌合凸部、又は、2つの同一形状の嵌合凹部を有することを特徴とする接続コネクタ。」
と補正し、あわせて明細書を補正するものである。

2 補正の目的、新規事項、シフト補正について
本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「第一保持具」及び「第二保持具」について「各々が、ひとつの嵌合面当り2つの同一形状の嵌合凸部、又は、2つの同一形状の嵌合凹部を有する」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である国際公開第2009/040276号明細書の第6ページ第23行ないし第7ページ第29行及び図面FIG1ないしFIG4には、本願補正発明に則って整理すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「一方向に延在し、Endbereiche 13とEndbereiche 14とを有する複数のEinpresspins 2と、
該複数のEinpresspins 2の前記Endbereiche 13に取り付けられるersten Verbindungselements 1と、前記複数のEinpresspins 2の前記Endbereiche 14に取り付けられるzweiten Verbindungselements 1と、を備え、
前記ersten Verbindungselements 1及び前記zweiten Verbindungselements 1には、前記ersten Verbindungselements 1同士あるいは前記zweiten Verbindungselements 1同士を連結するSteckstifte 9及びStecklocher 10が形成され、
前記ersten Verbindungselements 1と前記zweiten Verbindungselements 1との各々が、ひとつのSeitenwand 3, 4当り2つの同一形状のSteckstifte 9、又は、2つの同一形状のStecklocher 10を有する Verbindungselemente 1 mit eingefuhrten Einpresspins 2。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭50-146464号(実開昭52-59263号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、第1図ないし第4図とともに、次の事項が記載されている。

「図において9は半田付性が良好になるように半田メッキや錫メッキを施したリード線、10は同様彦表面処理を施したやゝ太い補強線で、リード線9の中間部位コ形に折曲して折曲部12を形成しである。そして第2図に示すように補強線10を両端に、その間に数本のリード線9を介在させた状態で配列し、コ形折曲部12の上下を絶縁部材11により一体に固装する。絶縁部材11は樹脂等でモールドして形成するものである。尚折曲部12は必ずしもコ字形に折曲げることを要しない。
以上の構成から成る本考案の小基板取付具は、第4図に示すように主基板2に電子部品を取付け半田付した後、リード線9の先端13、14を主基板2と小基板6に各々形成した取付穴に挿通して折曲げ、半田付することにより小基板を固定し、又電気的接続を同時に効率良く行うことができるのである。更に小基板に調整用部品を設ける必要がある場合にも新たな調整用端子8を設けることなくリード線9のコ形折曲部12に調整用素子15のリードを巻付け半田付することにより、容易に調整作業を行うことができるのである。」(第3ページ第8行ないし第4ページ第9行)

(3)刊行物3
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2007-242473号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図5とともに、次の事項が記載されている。

ア 「【0038】
このように形成された多極コネクタ1は、図5に示すように実装基板に実装して用いられる。
図5は、多極コネクタ1の実装状態を示す図であり、(A)は、下実装基板11に実装された状態を示し、(B)はさらに上実装基板12に実装された状態を示す。
【0039】
下実装基板11は筐体にネジ止め等により固定されている。この下実装基板11には、二つの多極コネクタ用ランド110が形成されている。多極コネクタ用ランド110は、それぞれにコネクタピン2A?2Jがマウントされる長方形状のランド群からなり、各ランドは下側接続部24と略同じ面積に形成されている。また、二つの多極コネクタ用ランド110は、下実装基板11の長手方向の中心で且つ短手方向の両端にそれぞれ形成されている。そして、多極コネクタ1を実装する際には、多極コネクタ用ランド110に半田ペーストが塗布される。」

イ 「【0043】
このような実装が行われ電子機器が形成される場合、筐体、下実装基板11、上実装基板12、多極コネクタ1にはそれぞれ寸法公差が存在する。しかしながら、本実施形態の多極コネクタ1を用いることで、湾曲部22で上下方向の公差や実装基板長手方向の位置公差を補正して、実装時に発生するこれらの方向に対する応力を緩和することができる。また、湾曲部23で実装基板短手方向の位置公差を補正して、実装時に発生するこの方向に対する応力を緩和することができる。また、この電子機器を使用する場合、振動が外部から加わるが、湾曲部22で上下方向や実装基板長手方向の振動による応力を緩和し、湾曲部23で実装基板短手方向の振動による応力を緩和することができる。そして、このように応力が緩和されることで、動作時に高温になっても、半田接合が破壊されないので、高信頼性の電気機器を構成することができる。」

(4)刊行物4
原査定の拒絶理由に周知例として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-258267号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図1ないし図7とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブレッドボードを用いた試験回路製作時に該ブレッドボードに差し込んで使用するコネクタピンユニットに関し、詳細には、外部接続コネクタへの接続ピンのピッチ変換を可能とするとともに接続ピンの数を任意に設定できる汎用性に富むブレッドボード用コネクタピンユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】ブレッドボード(breadboard)とは、任意の電子回路をその上に実装して結線できるようにした回路試験用の実装基板であり、実装した電子回路が設計どおりに働くかどうかを試験し、必要な時にいつでも容易に変更できるような方法で(素子の最終的な位置を考慮することなく)電子回路を組み立てる所謂ブレッドボーディング(breadboarding)を行うための実装基板である。」

イ「【0024】図1?図5において、ブレッドボード用コネクタピンユニット20は、合成樹脂を充填した略直方体形状の筺体1と、前記筺体1の上面1aからピン中心間距離がP1=100mil(2.54mm)で平行に突出する2本の接続ピン3、4と、前記各接続ピン3、4と一対一に対応して各々前記筺体内部で導電するとともに前記筺体1の下面1bからピン中心間距離が100mil(2.54mm)の整数倍の寸法で平行に突出する2本の接続ピン5、6と、から成るブレッドボード用コネクタピンユニット20であって、前記筺体1の側面に他のブレッドボード用コネクタピンユニット20′と脱着自在に連結する連結手段7が配設されている構造である(請求項1に対応)。」

ウ 「【0026】次に、上記連結手段7は如何なる構造のものであっても良い訳であるが、本発明者の研究によれば、筺体1自身に連結手段を備え且つ最も構造が簡単で製造コストが有利な連結手段は、相対向する側面1c,1dに設けた凸部9と凹部8とによる嵌合手段であることが判明した(請求項4に対応)。
【0027】図1?図7に示される実施の形態では、上記凸部9と凹部8は図1の正面図と図5の中央縦断面図から判るように、直径Φ=1.2mm、高さ(深さ)H=1.9mm程度の円柱状の凸部9と略同形の円柱状の凹部8で構成されている。連結手段としては上記実施の形態で示した凹部8と凸部9の緊密な嵌め合わせが最も適合することが本発明者の試験によって見出されたが、連結の位置関係が決まる形状であれば(不都合な例としては1個の円柱状の凹部と凸部では嵌合してもぐるぐる回るので不適である)如何なる形状・配置でもよい。尤も筺体1内部で上下対応する接続ピン(例えば図1の接続ピン3と5や接続ピン4と6)の導通をとる必要があるので、嵌合手段の配置はこれを考慮することが肝要である。」

上記記載事項及び図1ないし図7の図示内容を、本願補正発明に則って整理すると、刊行物4には次の事項が記載されている。

「筺体1には、筺体1同士を連結する円柱状の凸部9及び円柱状の凹部8が形成され、前記筺体1の前記円柱状の凸部9は、位置関係が決まる形状であれば如何なる形状・配置でもよいブレッドボード用コネクタピンユニット。」

(5)刊行物5
原査定の拒絶査定に周知例として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-126654号公報(以下、「刊行物5」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0019】特に、雄コネクタ2の第1および第2の穴部となる斜め差し防止溝7,8は、直方体ハウジング10の底面の長手方向の中心線に沿って形成し、また雌コネクタ1の第1および第2の突起となる斜め差し防止ピン5,6は、凹部状ハウジング9の内側の底面の長手方向の中心線に沿って形成される。
【0020】かかる構造のコネクタにおいては、直方体状の雄コネクタハウジング10が雌コネクタハウジング9に対して垂直で且つ正規姿勢で位置決めされた場合には、雌コネクタ1側の斜め差し防止ピン5,6と、雄コネクタ2側の斜め差し防止溝7,8が一致し、両ブロックの挿入が可能になる。」

イ 「【0023】また、図2(b)に示すように、雄コネクタハウジング10が雌コネクタハウジング9に対して垂直に且つ正規姿勢から180度回転した状態で位置決めされた場合には、雌コネクタ1の長さの異なる斜め差し防止ピン5,6がそれぞれ雄コネクタ2の斜め差し防止溝7,8に一致しないため、両ブロックの挿入は不可能になる。」

(6)刊行物6
前置報告書に周知例として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願平1-41682号(実開平2-133879号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物6」という。)には、図1及び図2とともに、次の事項が記載されている。

「第1図において、1はプリント配線板であり、2はプリント配線板1に取付けた雄形コネクタからなる接栓部、3は装置本体のバックパネル4に取付けた雌形コネクタである。5は雄形コネクタ2を跨げかつコネクタ2に平行してプリント配線板1に取付けられた帯状の嵌合部材である。この嵌合部材5の挿入方向端部6には所望数の切欠部7が等間隔に設けられており、この切欠部7は嵌合部材5の両側面8、9より陥没させるか切込み等を入れておくことにより、所望箇所を切り取るか折り取って、切り欠き10を形成することができる。
11は雌形コネクタ3に隣接させてバックパネル4に取付けられる角柱部材であって、嵌合部材5の切り欠き10が対向する位置に、突起部材12を装着するための取付け穴13が穿設されており、本実施例においては、突起部材12としてL字形の金具が螺着されている。」(第5ページ第1行ないし第18行)

4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「Endbereiche 13」は本願補正発明の「第一端部」に相当し、以下同様に、「Endbereiche 14」は「第二端部」に、「Einpresspins 2」は「接続配線」に、「ersten Verbindungselements 1」は「第一保持具」に、「zweiten Verbindungselements 1」は「第二保持具」に、「Steckstifte 9」は「嵌合凸部」に、「Stecklocher 10」は「嵌合凹部」に、「Seitenwand 3, 4」は「嵌合面」に、「Verbindungselemente 1 mit eingefuhrten Einpresspins 2」は「接続コネクタ」に、それぞれ相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。

[一致点]
「一方向に延在し、第一端部と第二端部とを有する複数の接続配線と、
該複数の接続配線の前記第一端部に取り付けられる第一保持具と、前記複数の接続配線の前記第二端部に取り付けられる第二保持具と、を備え、
前記第一保持具及び前記第二保持具には、前記第一保持具同士あるいは前記第二保持具同士を連結する嵌合凸部及び嵌合凹部が形成され、
前記第一保持具と前記第二保持具との各々が、ひとつの嵌合面当り2つの同一形状の嵌合凸部、又は、2つの同一形状の嵌合凹部を有する接続コネクタ。」

[相違点]
本願補正発明は、「前記第一保持具の前記嵌合凸部同士の間隔と、前記第二保持具の前記嵌合凸部同士の間隔とが互いに異なって」いるのに対し、引用発明は、かかる構成を有しない点。

5 当審の判断
以下、相違点について検討する。

刊行物2に記載された小基板取付具及び刊行物3に記載された多極コネクタは、いずれも接続コネクタとして単独で用いられるものであり、本願補正発明の第一保持具(あるいは前記第二保持具)に相当する構成同士を連結することにより用いられることを前提とするものではなく、接続コネクタとして、本願補正発明とは前提とする構成が異なると認められる。

そして、刊行物4に記載されたブレッドボード用コネクタピンユニットは、接続コネクタではあるものの、本願補正発明のように、回路基板同士を接続することを前提としていないので、本願補正発明のように、第一保持具及び第二保持具を有するものではない。
さらに、刊行物4に記載された円柱状の凸部9が、ブレッドボード用コネクタピンユニットの連結手段であり、本願補正発明の嵌合凸部に相当すると解して、「位置関係が決まる形状であれば如何なる形状・配置でもよい。」(段落【0027】)との記載を勘案したとしても、そもそもブレッドボード用コネクタピンユニットは、第一保持具及び第二保持具を有していないので、1つのブレッドボード用コネクタピンユニットあたり1つの筺体1を有するのみであるから、2つの円柱状の凸部9の間隔を複数の筺体1の間で異ならせる態様は見出せない。

さらに、刊行物5の記載事項及び刊行物6の記載事項は、いずれも雄コネクタと雌コネクタとを連結するためのものであって、本願補正発明のように、回路基板同士を接続する接続コネクタに関するものではなく、接続コネクタとして、1つのコネクタに嵌合凸部及び嵌合凹部を有するものでもないし、雄コネクタ(本件補正発明の第一保持具及び第二保持具に相当)同士を連結することに関するものでもない。

したがって、刊行物2の記載事項ないし刊行物6の記載事項からは、第一保持具の嵌合凸部同士の間隔と、第二保持具の嵌合凸部同士の間隔とを互いに異ならせることにより、接続コネクタの上下の向きを間違えないようにする技術手段は見出せず、また、接続コネクタにおいて、第一保持具の嵌合凸部同士の間隔と第二保持具の嵌合凸部同士の間隔とを互いに異ならせることが周知であったとも認められない。

また、刊行物1のFIG1及びFIG2には、そもそも上下の向きを間違えても支障のないVerbindungselementes 1 mit eingefuhrten Einpresspins 2の形状が記載されており、接続コネクタとして、上下の向きを間違えて連結する恐れがあるという課題を有していないので、仮に前記技術手段が見出せたとしても、引用発明に前記技術手段を適用する動機付けがあるとはいえない。

そうであれば、引用発明、刊行物2ないし刊行物6の記載事項に基づいて、上記相違点における本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

そして、本願補正発明は、上記相違点における本願補正発明の構成によって「接続コネクタを連結する際に、接続コネクタの上下の向きを間違えて連結することを防止できる」(段落【0009】、【0026】参照。)という格別顕著な効果を奏する。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2ないし刊行物6の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、本件補正のうち請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合する。
そして、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項ない第6項の規定に適合する。

第4 本願発明
本件補正は、上記のとおり、特許法第17条の2第3項ない第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

そして、本願補正発明は、前記第3の5のとおり、引用発明及び刊行物2ないし刊行物6の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願補正発明を直接または間接的に引用する本願の請求項2及び3に係る発明は、本願補正発明をさらに限定したものであるから、引用発明及び刊行物2ないし刊行物6の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-27 
出願番号 特願2012-252568(P2012-252568)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (H01R)
P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 仁石川 貴志  
特許庁審判長 阿部 利英
特許庁審判官 小関 峰夫
内田 博之
発明の名称 接続コネクタ及びコネクタユニット  
代理人 小室 敏雄  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 松沼 泰史  

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