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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1325653
審判番号 不服2016-2553  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-19 
確定日 2017-02-28 
事件の表示 特願2013-504110「共通電極の駆動方法及び回路、ならびに液晶ディスプレー」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月20日国際公開、WO2011/127841、平成25年 6月20日国内公表、特表2013-525832〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2011年4月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2010年4月16日 中国)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月17日付けの拒絶理由通知に対して同年5月25日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年10月13日付け(同年同月19日送達)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年2月19日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

1 本願発明

本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「液晶ディスプレーであって、
液晶パネルと、
液晶パネルを駆動する駆動装置とを備え、
前記液晶パネルは、アレイ基板とカラーフィルタ基板とをセル化することで形成され、それらの間に液晶層が充填され、前記駆動装置は、ゲート駆動装置、データ駆動装置および共通電極駆動装置を備え、
前記共通電極駆動装置は、アレイ基板上の各行画素の蓄積電極線に印加する第1共通電極信号および前記アレイ基板において各行画素の画素電極と一緒に液晶容量を形成する共通電極に印加する第2共通電極信号を生成し、かつ生成した第1共通電極信号をそれぞれ各行の画素に入力し、生成した第2共通電極信号を前記共通電極に入力し、
前記第1共通電極信号は、跳躍変化時に対応する行の画素のゲートに印加されるゲート信号と反対であり、
対応する行の画素に印加される、前記第1共通電極信号と前記ゲート信号は、同期して跳躍変化し、
跳躍変化後の前記第1共通電極信号のレベルと跳躍変化前の前記第1共通電極信号のレベルとの差の極性は、跳躍変化後の対応する行の画素に印加される前記ゲート信号のレベルと跳躍変化前に対応する行の画素に印加される前記ゲート信号のレベルとの差の極性と反対であり、
前記共通電極駆動装置は、
前記第2共通電極信号を生成する第1駆動信号生成ユニットと、
跳躍変化シーケンス信号を生成し、前記跳躍変化シーケンス信号を前記第1駆動信号生成ユニットが生成する前記第2共通電極信号に重畳して前記第1共通電極信号を生成する第2駆動信号生成ユニットと、を備えることを特徴とする液晶ディスプレー。」


2 引用例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の基礎となる出願の日前に頒布された刊行物である特開平6-43427号公報(平成6年2月18日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄膜トランジスタを用いた液晶表示装置のアクティブマトリクス駆動を行う駆動回路に関する。
【0002】
【従来の技術】アクティブマトリクス駆動を行う液晶表示装置は、図3に示すように、直交する複数のソースライン11とゲートライン12との各交点に、薄膜トランジスタQをマトリクス状に接続した構成である。そして、各薄膜トランジスタQには、画素ごとに液晶層を介して対向電極との間に形成される画素容量CPと、この画素容量CPで保持する電荷を補うための補助容量CSとが接続されている。また、これら画素容量CPと補助容量CSとの各対向電極に対し、それぞれ画素容量対向電極電圧Vcomと補助容量対向電極電圧VSとが印加されている。ゲートライン12に印加されるゲート信号VGがアクティブにされ薄膜トランジスタQが導通すると、ソースライン11に送られて来た表示信号Vsigに応じて、画素容量CPと補助容量CSとに電荷が蓄積される。従って、この電荷によって前記画素の液晶を駆動することができる。」

b「【0022】
本実施例の駆動回路は、図1に示すように、液晶表示装置1における各画素の画素容量CPと補助容量CSとの各対向電極に印加する画素容量対向電極電圧Vcomと補助容量対向電極電圧VSとを、対向電極電源回路5から供給する。ただし、補助容量対向電極電圧VSについては、対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して液晶表示装置1に供給する。電圧推移回路6は、対向電極電源回路5が出力する補助容量対向電極電圧VSを、所定のタイミングで一旦低下させる回路であり、後に説明する走査回路4が各ゲート信号VGをアクティブにする期間に同期して、この補助容量対向電極電圧VSを低下させる。
【0023】
シリアル信号としてシフトレジスタ2に入力された表示信号Vsigは、シフトレジスタ2によってパラレル信号に変換され、シフトレジスタ2からドライバ回路3を介し液晶表示装置1の各ソースライン11に送られる。シフトレジスタ2は、シリアル信号として順次送られて来る表示信号Vsigを液晶表示装置1の桁数分だけシフトしてから一斉に並列に出力することにより、シリアル信号の表示信号Vsigを1行分のパラレル信号の表示信号Vsigに変換する回路である。ドライバ回路3は、このシフトレジスタ2から出力される1行分の表示信号Vsigを一旦ラッチし、液晶表示装置1の各ソースライン11に出力する回路である。また、このドライバ回路3は、画素容量対向電極電圧Vcomに対する表示信号Vsigの正負を交互に切り換えて、ソースライン11に送り、液晶には信号の交流成分のみが印加されるようにしている。」

c「【0026】
上記構成の駆動回路の動作を図2に基づいて説明する。
【0027】
液晶表示装置1の或るゲートライン12のゲート信号VGが立ち上がりアクティブになると、前記図3に示した薄膜トランジスタQが導通する。薄膜トランジスタQに接続される画素容量CPと補助容量CSとの電位が、そのときソースライン11に送られた表示信号Vsigのレベルまで上昇又は下降する。ただし、ゲート信号VGが立ち下がり非アクティブに戻ると、画素容量CPと補助容量CSとに蓄積された電荷の一部が、薄膜トランジスタQのゲートと画素との間のゲート容量CGに奪われることになる。これによって、従来技術においてゲート信号VGが立ち下がった際に、画素容量CPの電位VPが低下していた。
【0028】
ところが、本発明では、ゲート信号VGが立ち上がりアクティブとなっている期間に、電圧推移回路6が補助容量対向電極電圧VSを低下させる。従って、補助容量CSは、この補助容量対向電極電圧VSが低下した状態で、表示信号Vsigによる充電を受ける。ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSがもとの電位に上昇すると、薄膜トランジスタQに接続する側に電荷が供給されて電位VPを押し上げようとする。」

d 図2及び図2に対応する「【0028】‥‥‥ゲート信号VGが立ち上がりアクティブとなっている期間に、電圧推移回路6が補助容量対向電極電圧VSを低下させる。‥‥‥ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSがもとの電位に上昇する」との記載から、「補助容量対向電極電圧VSは、ゲート信号VGが立ち下がっている場合に、VS=Vcomであり、ゲート信号VGが立ち上がっている場合に、VS=Vcom-VSa(VSaは補助容量対向電極電圧VSを低下させる電位差である。)である」ことが示されている。
また、図2には、「画素容量対向電極電圧Vcomは一定である」ことが示されている。

ア 上記a(段落【0001】)には、「液晶表示装置のアクティブマトリクス駆動を行う駆動回路」が記載されている。

イ 上記a(段落【0002】)には、「直交する複数のソースライン11とゲートライン12との各交点に、液晶表示装置は、薄膜トランジスタQをマトリクス状に接続した構成であり、各薄膜トランジスタQには、画素ごとに液晶層を介して対向電極との間に形成される画素容量CPと、この画素容量CPで保持する電荷を補うための補助容量CSとが接続されている」ことが記載されている。

ウ 上記a(段落【0002】)には、「これら画素容量CPと補助容量CSとの各対向電極に対し、それぞれ画素容量対向電極電圧Vcomと補助容量対向電極電圧VSとが印加され」ることが記載されており、 ここで、上記b(段落【0022】)の「画素容量対向電極電圧Vcomと補助容量対向電極電圧VSとを、対向電極電源回路5から供給し、ただし、補助容量対向電極電圧VSについては、対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して液晶表示装置1に供給する。」との記載から、画素容量対向電極電圧Vcomと補助容量対向電極電圧VSは、対向電極電源回路5から供給されるものであり、補助容量対向電極電圧VSについては、対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して液晶表示装置1の補助容量CSの対向電極に印加されるものといえるから、引用例には、「画素容量CPと補助容量CSとの各対向電極に対し、それぞれ、対向電極電源回路5から供給される画素容量対向電極電圧Vcomと、対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して供給される補助容量対向電極電圧VSが印加される」ことが記載されているということができる。


(ア)上記b(段落【0022】)には、「電圧推移回路6は、対向電極電源回路5が出力する補助容量対向電極電圧VSを、所定のタイミングで一旦低下させる回路であり、走査回路4が各ゲート信号VGをアクティブにする期間に同期して、この補助容量対向電極電圧VSを低下させる」ことが記載されている。
ここで、対向電極電源回路5が出力する補助容量対向電極電圧VSを、所定のタイミングで一旦低下させる回路である電圧推移回路6について、上記c(段落【0028】には、「ゲート信号VGが立ち上がりアクティブとなっている期間に、電圧推移回路6が補助容量対向電極電圧VSを低下させ、ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSがもとの電位に上昇する」ことが記載されていることから、引用例には、「電圧推移回路6は、対向電極電源回路5が出力する補助容量対向電極電圧VSを、走査回路4が各ゲート信号VGを立ち上がりアクティブにする期間に同期して、補助容量対向電極電圧VSを低下させ、ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSがもとの電位に上昇する」ことが記載されているということができる。

(イ)上記(ア)に関連して、引用例の図2、段落【0028】には、「補助容量対向電極電圧VSは、ゲート信号VGが立ち下がっている場合に、VS=Vcomであり、ゲート信号VGが立ち上がっている場合に、VS=Vcom-VSa(VSaは補助容量対向電極電圧VSを低下させる電位差である。)である」ことが示されており(上記d)、上記(ア)において、「電圧推移回路6は、対向電極電源回路5が出力する補助容量対向電極電圧VSを、走査回路4が各ゲート信号VGを立ち上がりアクティブにする期間に同期して、補助容量対向電極電圧VSを低下させ、ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSがもとの電位に上昇する」することは、「電圧推移回路6は、対向電極電源回路5が出力する補助容量対向電極電圧VSを、走査回路4が各ゲート信号VGを立ち上がりアクティブにする期間に同期して、補助容量対向電極電圧VSをVS=Vcom-VSa(VSaは補助容量対向電極電圧VSを低下させる電位差である。)とし、ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSをもとの電位であるVS=Vcomとする」ことということができる。

オ 引用例の図2には、「画素容量対向電極電圧Vcomは一定である」ことが示されている(上記d)。

カ 上記b(段落【0023】)には、「表示信号Vsigは、ドライバ回路3を介し液晶表示装置1に送られる」ことが記載されている。

したがって、上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしカを総合すると、引用例には、次の事項が記載されている(以下、引用発明という。)。

「 液晶表示装置のアクティブマトリクス駆動を行う駆動回路であって、
直交する複数のソースライン11とゲートライン12との各交点に、液晶表示装置は、薄膜トランジスタQをマトリクス状に接続した構成であり、
各薄膜トランジスタQには、画素ごとに液晶層を介して対向電極との間に形成される画素容量CPと、この画素容量CPで保持する電荷を補うための補助容量CSとが接続されており、
画素容量CPと補助容量CSとの各対向電極に対し、それぞれ、対向電極電源回路5から供給される画素容量対向電極電圧Vcomと、対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して供給される補助容量対向電極電圧VS が印加され、
電圧推移回路6は、対向電極電源回路5が出力する補助容量対向電極電圧VSを、走査回路4が各ゲート信号VGを立ち上がりアクティブにする期間に同期して、補助容量対向電極電圧VSをVS=Vcom-VSa(VSaは補助容量対向電極電圧VSを低下させる電位差である。)とし、ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSをもとの電位であるVS=Vcomとし、
画素容量対向電極電圧Vcomは一定であり、
表示信号Vsigは、ドライバ回路3を介し液晶表示装置1に送られる、
液晶表示装置のアクティブマトリクス駆動を行う駆動回路。」


3 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明は「液晶表示装置のアクティブマトリクス駆動を行う駆動回路」であって、「液晶表示装置」は、「駆動回路」からみて「アクティブマトリクス駆動」が行われる表示装置自体と捉えることができ、ここで、液晶表示装置を液晶表示パネルにより構成することは常套手段であるから、引用発明の「液晶表示装置」は、本願発明の「液晶パネル」に相当する。

(2)引用発明の「駆動回路」は、「液晶表示装置のアクティブマトリクス駆動を行う」ものであるから、本願発明の「液晶パネルを駆動する駆動装置」に相当する。
また、本願発明の「液晶ディスプレー」は、「液晶パネルと、液晶パネルを駆動する駆動装置とを備え」るものであるから、引用発明の「液晶表示装置」及び「液晶表示装置のアクティブマトリクス駆動を行う駆動回路」を併せたものは、本願発明の「液晶ディスプレー」に相当する。

(3)引用発明の「液晶表示装置」は、「直交する複数のソースライン11とゲートライン12との各交点に、薄膜トランジスタQをマトリクス状に接続した構成であり、各薄膜トランジスタQには、画素ごとに液晶層を介して対向電極との間に形成される画素容量CPと、この画素容量CPで保持する電荷を補うための補助容量CSとが接続されて」いることから、ソースライン11、ゲートライン12及び薄膜トランジスタQが配列された構成であるということができ、これをアレイ基板で形成されることは常套手段であり、また、液晶表示装置の各薄膜トランジスタQと対向電極との間に液晶層が充填されているということができる。
したがって、引用発明において「液晶表示装置は、直交する複数のソースライン11とゲートライン12との各交点に、薄膜トランジスタQをマトリクス状に接続した構成であり、各薄膜トランジスタQには、画素ごとに液晶層を介して対向電極との間に形成される画素容量CPと、この画素容量CPで保持する電荷を補うための補助容量CSとが接続されて」いることと、本願発明の「前記液晶パネルは、アレイ基板とカラーフィルタ基板とをセル化することで形成され、それらの間に液晶層が充填され」ることとは、「前記液晶パネルは、アレイ基板で形成され、液晶層が充填され」る点で共通する。

(4)
ア 引用発明の「走査回路4」は、「各ゲート信号VGを立ち上がりアクティブにする」ものであって、「ゲート駆動装置」ということができ、引用発明の「駆動回路」(本願発明の駆動装置」に相当(上記(2)))を構成するものであるから、引用発明の「駆動回路」が「走査回路4」を有することは、本願発明の「前記駆動装置は、ゲート駆動装置」を備えることに相当する。

イ 引用発明の「表示信号Vsig」は、「ドライバ回路3を介し液晶表示装置1に送られる」ものであって、表示信号はデータを含む信号と捉えることができるから、「ドライバ回路3」は「データ駆動装置」ということができる。そして、引用発明の「駆動回路」(本願発明の「駆動装置」に相当(上記(2)))を構成するものであるから、引用発明の「駆動回路」が「ドライバ回路3」を有することは、本願発明の「前記駆動装置は、」「データ駆動装置」を備えることに相当する。

ウ 引用発明において、「画素容量CPと補助容量CSとの各対向電極」は、「共通電極」と捉えることができるから、各対向電極に画素容量対向電極電圧Vcom、補助容量対向電極電圧VSを印加する、引用発明の「対向電極電源回路5」及び「電圧推移回路6」は、本願発明の「共通電極駆動装置」に相当する。
そして、「対向電極電源回路5」及び「電圧推移回路6」は、引用発明の「駆動回路」(本願発明の駆動装置」に相当(上記(2)))を構成するものであるから、引用発明の「駆動回路」が「対向電極電源回路5」及び「電圧推移回路6」を有することは、本願発明の「前記駆動装置は、」「共通電極駆動装置」を備えることに相当する。

(5)

(ア)引用発明において、「補助容量対向電極電圧VS」は、「補助容量CS」の、「共通電極」である「対向電極」(上記(4)ウ)に対し印加される電圧であるから、本願発明の「第1共通電極信号」に相当する。
そして、「補助容量CS」は、「画素容量CPで保持する電荷を補うための補助容量CS」であるから、画素容量CPとともに電荷を蓄積するものであり、ここで、アレイ基板上の各行画素の補助容量CSの対向電極に電極線を設けることは常套手段であって、この電極線を蓄積電極線というとすると、引用発明の「補助容量CS」の「対向電極」に対し、印加される「補助容量対向電極電圧VS」は、本願発明の「アレイ基板上の各行画素の蓄積電極線に印加する第1共通電極信号」に相当する。

(イ)また、引用発明において、「対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して供給される補助容量対向電極電圧VS」は、「対向電極電源回路5」及び「電圧推移回路6」(本願発明の「共通電極駆動装置」に相当(上記(4)ウ))が「補助容量対向電極電圧VS」を生成することと捉えることができ、上記(ア)を踏まえると、引用発明において、「対向電極電源回路5」及び「電圧推移回路6」が「補助容量対向電極電圧VS」を生成し、「補助容量CS」の「対向電極」に対し、「補助容量対向電極電圧VS 」を印加することは、本願発明の「前記共通電極駆動装置は、アレイ基板上の各行画素の蓄積電極線に印加する第1共通電極信号」「を生成」し「かつ生成した第1共通電極信号をそれぞれ各行の画素に入力」することに相当する。

イ 引用発明において、「対向電極電源回路5から供給される画素容量対向電極電圧Vcom」は、「画素容量CP」に対する「共通電極」である「対向電極」(上記(4)ウ)に対し印加される電圧であるから、本願発明の「第2共通電極信号」に相当する。
一方、引用発明において「画素容量CP」の「対向電極」は、画素の画素電極と液晶容量を形成する電極であるということができ、また、対向電極を、アレイ基板において各行画素の画素電極と一緒に液晶容量を形成する共通電極として構成することは常套手段である。
そして、「画素容量対向電極電圧Vcom」を供給する「対向電極電源回路5」は、「画素容量対向電極電圧Vcom」を生成するものということができ、「電圧推移回路6」とともに、本願発明の「共通電極駆動装置」に相当するものである(上記4(ウ))から、引用発明において、「対向電極電源回路5」が「画素容量対向電極電圧Vcom」を生成し、「画素容量CP」の「対向電極」に対し、「画素容量対向電極電圧Vcom」を印加することは、本願発明の「前記共通電極駆動装置は、」「前記アレイ基板において各行画素の画素電極と一緒に液晶容量を形成する共通電極に印加する第2共通電極信号を生成し、生成した第2共通電極信号を前記共通電極に入力」することに相当する。

(6)引用発明は、「対向電極電源回路5が出力する補助容量対向電極電圧VSを、走査回路4が各ゲート信号VGを立ち上がりアクティブにする期間に同期して、補助容量対向電極電圧VSをVS=Vcom-VSa(VSaは補助容量対向電極電圧VSを低下させる電位差である。)とし、ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSをもとの電位であるVS=Vcomと」するものであって、「補助容量対向電極電圧VS」(本願発明の「第1共通電極信号」に相当(上記(5)ア(ア))は、ゲート信号VGの立ち上げに同期して低下させ、ゲート信号VGの立ち下げに同期して上昇させているから、ゲート信号VGと反対方向の電圧を印加するものということができ、また、このような電圧の変化時は、跳躍変化時ということができる。
そして、ゲート信号を行の画素に印加することは常套手段であるから、引用発明において「対向電極電源回路5が出力する補助容量対向電極電圧VSを、走査回路4が各ゲート信号VGを立ち上がりアクティブにする期間に同期して、補助容量対向電極電圧VSをVS=Vcom-VSa」とし、「ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSをもとの電位であるVS=Vcomと」することは、本願発明の「前記第1共通電極信号は、跳躍変化時に対応する行の画素のゲートに印加されるゲート信号と反対であり、対応する行の画素に印加される、前記第1共通電極信号と前記ゲート信号は、同期して跳躍変化」することに相当する。

(7)上記(6)に記載したように、引用発明は、ゲート信号VGの立ち上げに同期して低下させ、ゲート信号VGの立ち下げに同期して上昇させているから、ゲート信号VGと反対方向の電圧を印加するものということができ、また、このような電圧の変化時は、跳躍変化時ということができる。
したがって、ゲート信号VGの跳躍変化後の補助容量対向電極電圧VSと跳躍変化前の補助容量対向電極電圧VS との差の極性は、跳躍変化後の対応する画素に印加されるゲート信号VGのレベルと跳躍変化前に対応する画素に印加されるゲート信号VGのレベルとの差の極性と反対であるということができ、また、ゲート信号を行の画素に印加することは常套手段であるから、引用発明において、ゲート信号VGの立ち上げに同期して低下させ、ゲート信号VGの立ち下げに同期して上昇させること(上記(6))は、本願発明の「跳躍変化後の前記第1共通電極信号のレベルと跳躍変化前の前記第1共通電極信号のレベルとの差の極性は、跳躍変化後の対応する行の画素に印加される前記ゲート信号のレベルと跳躍変化前に対応する行の画素に印加される前記ゲート信号のレベルとの差の極性と反対であ」ることに相当する。

(8)
ア 引用発明は、「画素容量CP」の「対向電極に対し、」「対向電極電源回路5から供給される画素容量対向電極電圧Vcom」が「印加され」るものであるから、画素容量対向電極電圧Vcom を供給する対向電極電源回路5は、画素容量対向電極電圧Vcomを生成する駆動信号生成回路と捉えることができ、ここで、「対向電極電源回路5」は「電圧推移回路6」とともに、本願発明の「共通電極駆動装置」に相当し(上記(4)ウ)、「画素容量対向電極電圧Vcom」は本願発明の「第2共通電極信号」に相当する(上記(5)イ)から、引用発明において、「画素容量対向電極電圧Vcom 」を供給する「対向電極電源回路5」を備えていることは、本願発明の「前記共通電極駆動装置は、前記第2共通電極信号を生成する第1駆動信号生成ユニット」「を備え」ていることと、「前記共通電極駆動装置は、前記第2共通電極信号を生成する第1駆動信号生成回路」「を備え」ている点で共通する。

イ 引用発明は、「補助容量CS」の「対向電極」に対し、「対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して供給される補助容量対向電極電圧VS が印加され」るものであって、補助容量対向電極電圧VSは、対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して補助容量CSの対向電極に印加されるから、電圧推移回路6は、補助容量対向電極電圧VSを生成する駆動信号生成回路と捉えることができる。
ここで、補助容量対向電極電圧VSについて、引用発明は、ゲート信号VGが立ち下がっている状態においては、補助容量対向電極電圧VSは、画素容量対向電極電圧Vcom の電圧レベルであり(VS=Vcom)、 ゲート信号VGが立ち上がりアクティブとなっている状態では、 補助容量対向電極電圧VSは、画素容量対向電極電圧Vcom を基準に、VSaのみ低下する(VS=Vcom-VSa)ものであるから、補助容量対向電極電圧VSは、画素容量対向電極電圧Vcom を基準に推移するということができ、このように ゲート信号VGに応じて、Vcomを基準にVSaのみ変化する信号は、跳躍変化シーケンス信号ということができる。
したがって、引用発明における「電圧推移回路6」(「電圧推移回路6」は「対向電極電源回路5」とともに、本願発明の「共通電極駆動装置」に相当(上記(4)ウ))は、跳躍変化シーケンス信号を生成し、跳躍変化シーケンス信号を、画素容量対向電極電圧Vcomを基準に重畳してするものということができるから、上記アをも踏まえると、本願発明の「前記共通電極駆動装置は、」「跳躍変化シーケンス信号を生成し、前記跳躍変化シーケンス信号を前記第1駆動信号生成ユニットが生成する前記第2共通電極信号に重畳して前記第1共通電極信号を生成する第2駆動信号生成ユニットと、を備え」ていることと、「前記共通電極駆動装置は、」「跳躍変化シーケンス信号を生成し、前記跳躍変化シーケンス信号を第2共通電極信号に重畳して前記第1共通電極信号を生成する第2駆動信号生成回路と、を備え」ている点で共通する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>

「液晶ディスプレーであって、
液晶パネルと、
液晶パネルを駆動する駆動装置とを備え、
前記液晶パネルは、アレイ基板で形成され、液晶層が充填され、前記駆動装置は、ゲート駆動装置、データ駆動装置および共通電極駆動装置を備え、
前記共通電極駆動装置は、アレイ基板上の各行画素の蓄積電極線に印加する第1共通電極信号および前記アレイ基板において各行画素の画素電極と一緒に液晶容量を形成する共通電極に印加する第2共通電極信号を生成し、かつ生成した第1共通電極信号をそれぞれ各行の画素に入力し、生成した第2共通電極信号を前記共通電極に入力し、
前記第1共通電極信号は、跳躍変化時に対応する行の画素のゲートに印加されるゲート信号と反対であり、
対応する行の画素に印加される、前記第1共通電極信号と前記ゲート信号は、同期して跳躍変化し、
跳躍変化後の前記第1共通電極信号のレベルと跳躍変化前の前記第1共通電極信号のレベルとの差の極性は、跳躍変化後の対応する行の画素に印加される前記ゲート信号のレベルと跳躍変化前に対応する行の画素に印加される前記ゲート信号のレベルとの差の極性と反対であり、
前記共通電極駆動装置は、
前記第2共通電極信号を生成する第1駆動信号生成回路と、
跳躍変化シーケンス信号を生成し、前記跳躍変化シーケンス信号を前記第2共通電極信号に重畳して前記第1共通電極信号を生成する第2駆動信号生成回路と、を備えることを特徴とする液晶ディスプレー。」


<相違点>

(ア)本願発明は、「前記液晶パネルは、アレイ基板とカラーフィルタ基板とをセル化することで形成され、それらの間に」液晶層が充填されているのに対し、引用発明は、液晶層を有するものの、どの部分に液晶層を有するのか特定がない点。

(イ)跳躍変化シーケンス信号を重畳する「第2共通電極信号」について、本願発明は「第1駆動信号生成ユニットが生成する」前記第2共通電極信号に重畳するのに対し、引用発明は、このような特定がない点。

(ウ)第1駆動信号生成回路、第2駆動信号生成回路について、本願発明は、「第1駆動信号生成ユニット」、「第2駆動信号生成ユニット」であるのに対し、引用発明は、ユニットであるとの特定がない点。

4 判断

<相違点>(ア)について
一般に、前記液晶パネルをアレイ基板とカラーフィルタ基板とをセル化することで形成し、それらの間に液晶層を設けることは、例えば、特開2006-201764号公報(段落【0029】「‥‥‥図2を参照すると、液晶表示パネルは、アレイ基板、液晶層、及びアレイ基板との合体を通じてその間に液晶層を介在させるカラーフィルタ基板を含む。」参照。なお、セル化することは自明である。)に記載されているように周知であるから、引用発明の液晶パネルとして、アレイ基板とカラーフィルタ基板とをセル化することで形成され、それらの間に液晶層が充填されている周知な液晶パネルを用いることは、当業者が容易に想到し得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(ア)に係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>(ウ)について
<相違点>(イ)に係る本願発明が「対向電極電源回路5」を備えていることに鑑み、<相違点>(ウ)について先に検討する。

一般に、特定の機能を有する回路を、ユニット化することは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、引用発明において、「対向電極電源回路5」(本願発明の第1駆動信号ユニットに対応(上記3(8)ア))及び「電圧推移回路6」(本願発明の第2駆動信号ユニットに対応(上記3(8)イ))をユニット化することは当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(ウ)に係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>(イ)について
引用発明は、「対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して供給される補助容量対向電極電圧VS が印加され」るものであって、「補助容量対向電極電圧VS 」については、「走査回路4が各ゲート信号VGを立ち上がりアクティブにする期間に同期して、補助容量対向電極電圧VSをVS=Vcom-VSa(VSaは補助容量対向電極電圧VSを低下させる電位差である。)とし、ゲート信号VGが立ち下がると共に補助容量対向電極電圧VSをもとの電位であるVS=Vcomと」するものである。
ここで、補助容量対向電極電圧VSは、「対向電極電源回路5から電圧推移回路6を介して供給される」ものであって、電圧推移回路6はVcomを用いるものであるから、電圧推移回路6には、対向電極電源回路5が出力するVcomが供給されることは当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明における電圧推移回路6において、Vcomを基準にVSaのみ変化する信号(本願発明の「跳躍変化シーケンス信号」に相当(上記3(8)イ)。)を生成するにあたり、同じ「駆動装置」内に設けられた対向電極電源回路5が生成する画素容量対向電極電圧Vcomを重畳の基準として用いることに格別の困難性を有しない。
一方、引用発明の「対向電極電源回路5」をユニット化することは当業者が適宜なし得る事項である(上記<相違点>(ウ)について)。
したがって、本願発明のように、跳躍変化シーケンス信号を「第1駆動信号生成ユニットが生成する」第2共通電極信号に重畳することに格別の困難性を有さない。

よって、本願発明の<相違点>(イ)に係る構成のようにすることは格別なことではない。


そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用発明及び周知な事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-14 
結審通知日 2016-09-16 
審決日 2016-10-19 
出願番号 特願2013-504110(P2013-504110)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 酒井 伸芳
関根 洋之
発明の名称 共通電極の駆動方法及び回路、ならびに液晶ディスプレー  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  

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