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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F16L
管理番号 1325699
審判番号 不服2016-411  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-08 
確定日 2017-03-28 
事件の表示 特願2013-509245号「コネクタアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月10日国際公開、WO2011/140281、平成25年9月9日国内公表、特表2013-534993号、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)5月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年5月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりある。
平成24年12月19日 :特許協力条約第34条補正の翻訳文提出
平成27年3月19日付け :拒絶理由の通知
平成27年6月22日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年8月31日付け :拒絶査定
平成28年1月8日 :審判請求書の提出
平成28年9月26日付け :拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」とい
う。)の通知
平成28年12月27日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1-21に係る発明(以下、「本願発明1-21」という。)は、平成28年12月27日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-21に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】
コネクタアセンブリであって、
第1の端部および第2の端部を有し、第1および第2の端部の間に延在する第1の流体通路を有する雌型連結器を備え、前記第2の端部は第1の導管に嵌合するように構成され、前記雌型連結器は、前記雌型連結器の外表面に配置された第1の保持装置フランジを有し、前記雌型連結器は、前記外表面に配置された第2の保持装置フランジを有し、さらに、
前記雌型連結器によって担持された保持装置を備え、前記保持装置は、前記第1の流体通路内に配置可能な部分を有し、前記保持装置は、前記流体通路の外部に配置され、かつユーザが外部から接触可能なブリッジを有し、さらに、
前記雌型連結器の前記第1の端部に挿入することができる第1の端部を有する雄型連結器を備え、前記雄型連結器は、第2の導管に嵌合するように構成された第2の端部を有し、前記雄型連結器は、その第1および第2の端部の間に延在する第2の流体通路を有し、前記雄型連結器は溝を有し、
前記雌型連結器および前記雄型連結器が結合され、前記第1および第2の流体通路が互いに連通すると、前記保持装置の前記部分は、前記雄型および雌型連結器の分離を阻止するために前記雄型連結器の前記溝内に収容可能であり、前記保持装置の前記ブリッジは前記第1および第2の保持装置フランジの間に固定され、前記ブリッジは前記第1の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向内側に位置し、前記ブリッジは前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外側に位置しており、前記第1の保持装置フランジは、径方向において、前記第2の保持装置フランジの径方向の最も外側の表面全体よりも径方向外側に大きく延在して、前記ブリッジは、前記コネクタアセンブリの使用中に前記第1の保持装置フランジによって誤まって取外されないように保護される、コネクタアセンブリ。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願発明1は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載の技術的事項及び刊行物3に記載の技術的事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2004-211891号公報
刊行物2:米国特許出願公開第2007/59972号明細書
刊行物3:特表2007-508496号公報

2.原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア.刊行物1には、「チェッカー付きコネクタ」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている(下線部は当審で付与した。以下同様。)。
(ア)「【0001】
本発明は、例えば自動車におけるエンジンの冷却系統や吸気系統などにおける流体配管に好ましく使用されるコネクタに関し、特に接続が確実になされたかどうかをチェックする機能を備えたチェッカー付きコネクタに関する。」

(イ)「【0021】
図1に示すように、このコネクタ10は、接続すべき一方の管の端部に取付けられるプラグ20と、他方の管の端部に取付けられるソケット40と、ソケット40に装着される屈曲ワイヤで形成されたストッパ60とで構成されている。
【0022】
図2を併せて参照すると、ソケット40は、その一端に、図示しない接続すべき他方の管、例えばホース、チューブ等が接続される取付け口41を有し、他端に、前記プラグ20を受け入れる挿入口43を有している。取付け口41は、ソケット本体部に対して約60度の角度で屈曲されて延出するように形成されている。取付け口41の先端部には環状のリブ42が形成され、接続される管に対する抜け止め効果を高めている。」

(ウ)「【0028】
第3拡径部46外周の切欠き溝53の上半部には、切欠き溝53の対向縁部から突出する一対のリブ54が形成され、これらのリブ54がストッパ60を挟んで確実に保持するようにしている。また、第3拡径部46外周の切欠き溝53の途中の部分には、周方向に沿った断面がV字状の凹部55が形成されている。」

(エ)「【0031】
図5に示すように、ストッパ60は、全体として門形に屈曲させたワイヤ等で構成されている。ストッパ60の中央部61は、前記膨出壁部52の外周に適合する屈曲部をなしている。ストッパ60の中央部61から所定距離だけ離れた部分は、互いに平行になるように屈曲された両腕部63をなし、両腕部63先端の両端部62は、ソケット40の軸方向、挿入口43側に向けてほぼ90°で前方に屈曲されている。更に、前方に屈曲した両端部62から基部寄り部分には、内側に円弧状に屈曲したプラグ当接部64が形成されている。」

(オ)「【0033】
図2及び図7(a)に示すように、このとき、ストッパ60の両腕部63は、ソケット40の切欠き溝53に挿入されて、その一部が切欠き溝53の内周から内側に突出した状態となり、特にプラグ当接部64は、内側に大きく突出する。」

(カ)「【0035】
一方、プラグ20は、図1及び図4(b)に示すように、その軸方向に沿った断面において、先端側から、第1テーパ部22と、ストレート部23と、第2テーパ部24とを連続して形成した形状をなすと共に、第2テーパ部24の頂部外周に、環状溝部25と位置決め用突起26とが形成された構造をなしている。なお、環状溝部25の代わりに、ストッパ60が係合可能な環状の段部を形成してもよい。」

(キ)「【0043】
この状態で、プラグ20の位置決め用突起26をソケット40のガイド溝51に挿入しながら、プラグ20をソケット40の挿入口43に挿入していくと、プラグ20の第1テーパ部22が、ソケット20内に配置されたシールリン、グ50内に当接し、シールリング50をソケット20内壁に押し付けながら、プラグ20が押し込まれる。」

(ク)「【0046】
こうしてプラグ20を最後まで押し込んでいくと、図7(c)に示すように、ストッパ60がプラグ20の環状溝部25に嵌合する。その結果、ストッパ60の両腕部63とプラグ当接部64とが、プラグ20の環状溝部25の内壁に係合し、プラグ20がソケット40に対して抜け止めされて連結が完了する。」

(ケ)「【0047】
このとき、ストッパ60の中央部61は、ソケット4のリブ54と同等な高さか、あるいはそれよりも低くなるので、作業者は、ストッパ60の中央部61とソケット40のリブ54とを指で触ってストッパ60が突出していないことを知ることによって、接続が完了したことを確認できる(前記数式3参照)。なお、本発明において、同等な高さとは、指で触ったときにほぼ面一であることを確認できる程度に同じ高さであることを意味し、必ずしも正確に同じ高さである必要はない。また、ストッパ60の中央部61がリブ54よりも低くなるようにして、指で触ったときにリブ54だけが突出した状態となるようにしてもよい。」

以上の記載事項から次の事項が認定できる。
(コ)コネクタ10は、上記(ア)に記載されるように「流体配管に好ましく使用されるコネクタ」であるから、コネクタ10のソケット40は、その一端と他端との間に延在する流体通路を有しているもの認められる。同様に、コネクタ10のプラグ20も、その一端と他端との間に延在する流体通路を有しているもの認められる。

(サ)上記(ウ)には、「これらのリブ54がストッパ60を挟んで確実に保持するようにしている。」と記載され、上記(ケ)には、「このとき、ストッパ60の中央部61は、ソケット4のリブ54と同等な高さか、あるいはそれよりも低くなる」と記載され、併せて図2、4を参照すると、ストッパ60の中央部61は一対のリブ54の間に固定されるものと認められる。

これらの記載事項(ア)?(ケ)、認定事項(コ)、(サ)及び図面内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に倣って整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「流体配管に使用されるコネクタ10であって、
一端に取付け口41を他端に挿入口43を有し、一端と他端との間に延在する第1の流体通路を有するソケット40を備え、前記一端の取付け口41にホース等が接続され、前記ソケット40は、第3拡径部46の外周に一対のリブ54が形成され、
前記ソケット40に装着されるストッパ60を備え、前記ストッパ60は、ソケット40の切欠き溝53の内周から内側に突出する状態となる両腕部63及びプラグ当接部64を有し、前記ストッパ60は、作業者が指で触ることができる中央部61を有し、
前記ソケット40の前記挿入口43に挿入されるプラグ20を備え、前記プラグ20は、接続すべき管の端部に取り付けられ、前記プラグ20は、その一端と他端との間に延在する第2の流体通路を有し、前記プラグ20は環状溝部25を有し、
前記ソケット40と前記プラグ20との連結が完了すると、前記ストッパ60の両腕部63及びプラグ当接部64は、プラグ20をソケット40に対して抜け止めするために前記プラグ20の環状溝部25に係合し、前記ストッパ60の前記中央部61は前記一対のリブ54の間に固定され、前記中央部61は前記リブ54よりも低くなる、流体配管に使用されるコネクタ10。」

イ.刊行物2の記載事項
刊行物2には、図面とともに以下の事項が記載されている(当審仮訳も併せて掲載する。)。
(ア)「[0055] Firstly, FIGS. 1 to 3 are described below. They show the coupling 10 of the connection and the tube 12 onto which it is fitted. The tube presents a substantially radial catch surface 14 that is remote from its free end 12 A.」
「まず、図1から3について、以下説明する。これらは、接続機構の継手10と継手が取り付けられる管12を示している。管は、自由端部12Aから離れたところに実質的にラジアルなキャッチ面14を有している。」

ウ.刊行物3の記載事項
刊行物3には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0054】
図2および図3は止め金バネ11の付加的な詳細を示している。注目すべきは止め金バネの中央部分が、上向きの傾斜した湾曲部25を経由して傾斜脚部24に接続される水平のベース脚部26を有することである。傾斜脚部24は湾曲部23を経由してバネ脚部27へ移り、バネ脚部27は湾曲部28を経由してラッチ機能を提供する止め金脚部29へ移る。
【0055】
対応する湾曲部30は止め金脚部29の自由端部に配置され、湾曲部30の後ろに上向きに湾曲したバネ端部32を備える自由前端部を有する底脚部31が続く。止め金バネ11は正確には図3の中心線に対して鏡面対称であり、したがって、他方側は同一であるため、片側だけ説明すればよい。
【0056】
プラグ部分10はさらに、プラグ7の機械的安定性を向上させるビーズ状の補強エッジ22を形成している。」

(イ)「【0066】
スロット34は、より大きな直径を有するガイドビード40の領域に配置され、これにより、最大直径を有するノズルの円筒形表面4が制御クリップ14を半径方向外側向きに拡大させても、制御クリップ14は半径方向外側向きのスロット34との連結状態を保持する。」

(2)対比
ア.本願発明1と刊行物1発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、刊行物1発明の「流体配管に使用されるコネクタ10」は本願発明1の「コネクタアセンブリ」に相当し、以下同様に、「ソケット40」は「雌型連結器」に、「ホース等」は「第1の導管」に、「一対のリブ54」は「第1の保持装置フランジ」及び「第2の保持装置フランジ」に、「保持装置」は「ストッパ60」に、「中央部61」は「ブリッジ」に、「プラグ20」は「雄型連結器」に、「接続すべき管」は「第2の導管」に、「環状溝部25」は「溝」に、それぞれ相当する。

イ.刊行物1発明の「ソケット40」の「一端」、「他端」は、それぞれ、本願発明1の「雌型連結器」の「第2の端部」、「第1の端部」に相当する。
そして、刊行物1発明では、「前記一端の取付け口41にホース等が接続され」るところ、上記(1)ア.(イ)(段落【0022】)の「取付け口41の先端部には環状のリブ42が形成され、接続される管に対する抜け止め効果を高めている。」との記載、及び、図4を参照すると、ソケット40の一端はホース等に嵌合するように構成されているものと認められる。
したがって、刊行物1発明の「一端に取付け口41を他端に挿入口43を有し、一端と他端との間に延在する第1の流体通路を有するソケット40を備え、前記一端の取付け口41にホース等が接続され、前記ソケット40は、第3拡径部46の外周に一対のリブ54が形成され」という構成は、本願発明1の「第1の端部および第2の端部を有し、第1および第2の端部の間に延在する第1の流体通路を有する雌型連結器を備え、前記第2の端部は第1の導管に嵌合するように構成され、前記雌型連結器は、前記雌型連結器の外表面に配置された第1の保持装置フランジを有し、前記雌型連結器は、前記外表面に配置された第2の保持装置フランジを有し」という構成に相当する。

ウ.刊行物1発明の「両腕部63及びプラグ当接部64」は、「ソケット40の切欠き溝53の内周から内側に突出する状態となる」部分であり、併せて図2、7を参照すると、上記「両腕部63及びプラグ当接部64」は、ストッパ60の、ソケット40の第1の流体通路内に配置可能な部分であるものと認められる。
また、刊行物1発明の「ストッパ60」の「中央部61」は、「一対のリブ54の間に固定され」る部分であり、併せて図2、4、7を参照すると、上記「中央部61」は、ソケット40の第1の流体通路の外部に配置されるものと認められる。
したがって、刊行物1発明の「前記ソケット40に装着されるストッパ60を備え、前記ストッパ60は、ソケット40の切欠き溝53の内周から内側に突出する状態となる両腕部63及びプラグ当接部64を有し、前記ストッパ60は、作業者が指で触ることができる中央部61を有し」という構成は、本願発明1の「前記雌型連結器によって担持された保持装置を備え、前記保持装置は、前記第1の流体通路内に配置可能な部分を有し、前記保持装置は、前記流体通路の外部に配置され、かつユーザが外部から接触可能なブリッジを有し」という構成に相当する。

エ.刊行物1発明の「プラグ20」は、「接続すべき管の端部に取り付けられ」るとともに、「前記ソケット40の前記挿入口43に挿入される」ものであり、併せて、段落【0057】の「プラグ20aの後端部は、図示しないチューブに接続され、あるいは配管接続すべき装置に連結される。」との記載、及び、図1、4を参照すると、上記「プラグ20」は、その一端においてソケット40の挿入口43に挿入され、その他端(後端部)において接続すべき管の端部に取り付けられるものと認められる。そして、刊行物1発明の「プラグ20」の「一端」、「他端」は、それぞれ、本願発明1の「雄型連結器」の「第1の端部」、「第2の端部」に相当する。
したがって、刊行物1発明の「前記プラグ20は、接続すべき管の端部に取り付けられ」という構成と、本願発明1の「前記雄型連結器は、第2の導管に嵌合するように構成された第2の端部を有し」という構成は、「前記雄型連結器は、第2の導管に取り付けられるように構成された第2の端部を有し」という構成の限度で一致する。
以上から、刊行物1発明の「前記ソケット40の前記挿入口43に挿入されるプラグ20を備え、前記プラグ20は、接続すべき管の端部に取り付けられ、前記プラグ20は、その一端と他端との間に延在する第2の流体通路を有し、前記プラグ20は環状溝部25を有し」という構成と、
本願発明1の「前記雌型連結器の前記第1の端部に挿入することができる第1の端部を有する雄型連結器を備え、前記雄型連結器は、第2の導管に嵌合するように構成された第2の端部を有し、前記雄型連結器は、その第1および第2の端部の間に延在する第2の流体通路を有し、前記雄型連結器は溝を有し」という構成は、
「前記雌型連結器の前記第1の端部に挿入することができる第1の端部を有する雄型連結器を備え、前記雄型連結器は、第2の導管に取け付けられるように構成された第2の端部を有し、前記雄型連結器は、その第1および第2の端部の間に延在する第2の流体通路を有し、前記雄型連結器は溝を有し」という構成の限度で一致する。

オ.図4を参照すると、刊行物1発明の「ソケット40」の「第1の流体通路」と「プラグ20」の「第2の流体通路」は、ソケット40とプラグ20との連結が完了すると、互いに連通するものと認められる。
また、刊行物1発明の「ストッパ60の中央部61」は、「前記リブ54よりも低くなる」ものであるから、一対のリブ54の径方向外側端部の径方向内側に位置するものと認められる。そして、ストッパ60の中央部61が一対のリブ54の径方向外側端部の径方向内側に位置する以上、ストッパ60の中央部61は、コネクタ10の使用中にリブ54によって誤まって取外されないように保護されるものと認められる。
したがって、刊行物1発明の「前記ソケット40と前記プラグ20との連結が完了すると、前記ストッパ60の両腕部63及びプラグ当接部64は、プラグ20をソケット40に対して抜け止めするために前記プラグ20の環状溝部25に係合し、前記ストッパ60の前記中央部61は前記一対のリブ54の間に固定され、前記中央部61は前記リブ54よりも低くなる」という構成と、
本願発明1の「前記雌型連結器および前記雄型連結器が結合され、前記第1および第2の流体通路が互いに連通すると、前記保持装置の前記部分は、前記雄型および雌型連結器の分離を阻止するために前記雄型連結器の前記溝内に収容可能であり、前記保持装置の前記ブリッジは前記第1および第2の保持装置フランジの間に固定され、前記ブリッジは前記第1の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向内側に位置し、前記ブリッジは前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外側に位置しており、前記第1の保持装置フランジは、径方向において、前記第2の保持装置フランジの径方向の最も外側の表面全体よりも径方向外側に大きく延在して、前記ブリッジは、前記コネクタアセンブリの使用中に前記第1の保持装置フランジによって誤まって取外されないように保護される」という構成は、
「前記雌型連結器および前記雄型連結器が結合され、前記第1および第2の流体通路が互いに連通すると、前記保持装置の前記部分は、前記雄型および雌型連結器の分離を阻止するために前記雄型連結器の前記溝内に収容可能であり、前記保持装置の前記ブリッジは前記第1および第2の保持装置フランジの間に固定され、前記ブリッジは前記第1の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向内側に位置し、前記ブリッジは、前記コネクタアセンブリの使用中に前記第1の保持装置フランジによって誤まって取外されないように保護される」という構成の限度で一致する。

以上から、本願発明1と刊行物1発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
「コネクタアセンブリであって、
第1の端部および第2の端部を有し、第1および第2の端部の間に延在する第1の流体通路を有する雌型連結器を備え、前記第2の端部は第1の導管に嵌合するように構成され、前記雌型連結器は、前記雌型連結器の外表面に配置された第1の保持装置フランジを有し、前記雌型連結器は、前記外表面に配置された第2の保持装置フランジを有し、さらに、
前記雌型連結器によって担持された保持装置を備え、前記保持装置は、前記第1の流体通路内に配置可能な部分を有し、前記保持装置は、前記流体通路の外部に配置され、かつユーザが外部から接触可能なブリッジを有し、さらに、
前記雌型連結器の前記第1の端部に挿入することができる第1の端部を有する雄型連結器を備え、前記雄型連結器は、第2の導管に取り付けられるように構成された第2の端部を有し、前記雄型連結器は、その第1および第2の端部の間に延在する第2の流体通路を有し、前記雄型連結器は溝を有し、
前記雌型連結器および前記雄型連結器が結合され、前記第1および第2の流体通路が互いに連通すると、前記保持装置の前記部分は、前記雄型および雌型連結器の分離を阻止するために前記雄型連結器の前記溝内に収容可能であり、前記保持装置の前記ブリッジは前記第1および第2の保持装置フランジの間に固定され、前記ブリッジは前記第1の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向内側に位置し、前記ブリッジは、前記コネクタアセンブリの使用中に前記第1の保持装置フランジによって誤まって取外されないように保護される、コネクタアセンブリ。」

そして、本願発明1と刊行物1発明は、以下の点で相違する。
<相違点1>
「雄型連結器」に関し、
本願発明1では、「第2の導管に『嵌合する』ように構成された第2の端部を有し」ているのに対し、
刊行物1発明では、「前記プラグ20は、接続すべき管の端部に『取り付けられ』」る点。

<相違点2>
「保持装置フランジ」及び「保持装置(ブリッジ)」に関し、
本願発明1では、「前記ブリッジは前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外側に位置しており、前記第1の保持装置フランジは、径方向において、前記第2の保持装置フランジの径方向の最も外側の表面全体よりも径方向外側に大きく延在して」いるのに対し、
刊行物1発明では、そのように特定されていない点。

(3)判断
事案にかんがみ相違点2について検討する。
上記(1)ウ.(ア)、(イ)の記載事項及び図面内容を総合すると、刊行物3には、以下の技術的事項(以下、「刊行物3に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「ガイドビード40と前記ガイドビード40よりも径方向外側に延在する補強エッジ22を有するプラグ7。」

刊行物3に記載の技術的事項の「補強エッジ22」は、刊行物3の図1、5、15等を参照すると、補強エッジ22はプラグ7の本体部であるプラグ部分10(「雌型連結器」に相当する。)の一部であり、補強エッジ22自体がプラグ7のプラグ部分10(「雌型連結器」に相当する。)の外表面を構成していると認められ、加えて、補強エッジ22はプラグ部分10(「雌型連結器」に相当する。)の端部を折り返した形状を有していると認められるので、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項の「前記(雌型連結器の外表面に配置された)第1の保持装置フランジ」に相当するものとはいえない。
同様に、刊行物3に記載の技術的事項の「ガイドビード40」は、刊行物3の図1、5、15等を参照すると、ガイドビード40はプラグ7の本体部であるプラグ部分10(「雌型連結器」に相当する。)の一部であり、ガイドビード40自体がプラグ7のプラグ部分10(「雌型連結器」に相当する。)の外表面を構成していると認められ、加えて、ガイドビード40はプラグ部分10(「雌型連結器」に相当する。)の半径方向外側に略斜めに延びる形状を有していると認められるので、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項の「前記(雌型連結器の外表面に配置された)第2の保持装置フランジ」に相当するものとはいえない。
そうすると、刊行物3には、少なくとも、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項のうちの「前記第1の保持装置フランジは、径方向において、前記第2の保持装置フランジの径方向の最も外側の表面全体よりも径方向外側に大きく延在して」いるという事項は、記載されていないものと認められる。
したがって、刊行物3に記載の技術的事項を、刊行物1発明に適用したとしても、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。

なお、上記(1)ウ.(ア)(段落【0054】、【0055】)及び図2、3には、一対の湾曲部25、25、傾斜脚部24、24、湾曲部23、23、バネ脚部27、27、湾曲部28、28、止め金脚部29、29、湾曲部30、30、底脚部31、31及びバネ端部32、32と、ベース脚部26とを有する止め金バネ11(「保持装置」に相当する。)が記載されている。
そして、ベース脚部26は、一対の湾曲部25、25、傾斜脚部24、24、湾曲部23、23、バネ脚部27、27、湾曲部28、28、止め金脚部29、29、湾曲部30、30、底脚部31、31及びバネ端部32、32を接続する部分であるから、本願発明1の「ブリッジ」に相当するものといえる。
しかしながら、図2、5等を参照すると、ベース脚部26(「ブリッジ」に相当する。)はガイドビード40の径方向外側端部の径方向内側に位置しているものと認められる。
そうすると、仮に、刊行物3に記載の技術的事項の「ガイドビード40」が相違点2に係る本願発明1の発明特定事項の「前記(雌型連結器の外表面に配置された)第2の保持装置フランジ」に相当するものと解釈したとしても、刊行物3には、ベース脚部26(「ブリッジ」に相当する。)とガイドビード40との位置関係について、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項のうちの「前記ブリッジは前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外側に位置しており」という事項とは正反対の事項が記載されているものといえる。
したがって、たとえ、刊行物3に記載の技術的事項の「補強エッジ22」及び「ガイドビード40」が、それぞれ、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項の「前記(雌型連結器の外表面に配置された)第1の保持装置フランジ」及び「前記(雌型連結器の外表面に配置された)第2の保持装置フランジ」に相当するものと解釈して、刊行物3に記載の技術的事項を、刊行物1発明に適用したとしても、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項のうちの「前記ブリッジは前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外側に位置しており」という事項を想到することは、当業者にとって容易であるとはいえない。

また、刊行物2は、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項と直接関連するものではない。

(4)小括
以上から、刊行物1発明において、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは当業者にとって容易とはいえないから、本願発明1は、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載の技術的事項及び刊行物3に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明2-13、20は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載の技術的事項及び刊行物3に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
独立請求項に係る発明である本願発明14、19、21は、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項と同様の発明特定事項を有するものであるから、本願発明1と同様に、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載の技術的事項及び刊行物3に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
そして、本願発明15-18は、本願発明14をさらに限定したものであるので、本願発明14と同様に、当業者が刊行物1発明、刊行物2に記載の技術的事項及び刊行物3に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
[理由1]
本願発明1は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明及び刊行物1に記載の技術的事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2004-211891号公報

[理由2]
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)本願請求項1において、保持装置のブリッジと第2の保持装置フランジの径方向外側端との位置関係を特定することができない。
本願請求項14、19、21についても同様に、上記位置関係を特定することができない。
(2)本願請求項19には、「線バネのブリッジが第1および第2の保持装置フランジの間に固定される」点について何ら規定されておらず、どのようにして、「前記ブリッジは、前記コネクタアセンブリの使用中に前記第1の保持装置フランジによって誤まって取外されないように保護される」という機能が得られるのか、不明である。
(3)本願請求項19に記載の「前記第1および第2の連結器が結合され、前記第1および第2の流体通路が互いに連通する第1の状況」と「前記第1および第2の連結器が結合され、前記第1および第2の流体通路が互いに連通する第2の状況」との差異が不明である。

よって、本願発明1、14、19、21、及び、それらを直接的又は間接的に引用する本願発明2-13、15-18、20は、明確ではない。

2.当審拒絶理由の判断
(1)理由1について
ア.刊行物の記載事項及び刊行物発明
刊行物1には、「チェッカー付きコネクタ」に関し、上記第3 2.(1)ア.で摘記した事項に加え、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0052】
このソケット40aは、リブ54の一方に、切欠き部54aが形成されている点が、前記実施形態と異なっている。この実施形態では、コネクタを接続した後に、ストッパ60を引き上げて接続を解除する必要が生じたとき、上記切欠き部54aを通してマイナスドライバの先端部を挿入し、ストッパ60の中央部61の下方にもぐり込ませて、てこの原理でストッパ60を強制的に引き上げて、コネクタの接続を解除することができる。」

そして、上記第3 2.(1)ア.で示したとおり、刊行物1には刊行物1発明が記載されていると認められる。

イ.対比
本願発明1と刊行物1発明との一致点及び相違点については、上記第3 2.(2)で示したとおりである。

ウ.判断
事案にかんがみ、相違点2について検討する。
上記ア.(ア)の記載事項及び図面内容を総合すると、刊行物1には、図9に係る例として、以下の技術的事項(以下、「刊行物1に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「マイナスドライバの先端部を挿入し、ストッパ60の中央部61の下方にもぐり込ませて、てこの原理でストッパ60を強制的に引き上げて、コネクタの接続を解除することができるように、リブ54の一方に切欠き部54aを形成してなるソケット40a。」

しかしながら、刊行物1に記載の技術的事項を、刊行物1発明の「ソケット40」に適用したとしても、刊行物1発明の「一対のリブ54」のうちの一方に切欠き部を形成するにとどまり、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項である「前記ブリッジは前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外側に位置しており、前記第1の保持装置フランジは、径方向において、前記第2の保持装置フランジの径方向の最も外側の表面全体よりも径方向外側に大きく延在して」いるという構成には至らない。
したがって、刊行物1に記載の技術的事項を、刊行物1発明に適用したとしても、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。

エ.小括
以上から、刊行物1発明において、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を想到することは当業者にとって容易とはいえないから、本願発明1は、当業者が刊行物1発明及び刊行物1に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
本願発明2-13、20は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が刊行物1発明及び刊行物1に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
独立請求項に係る発明である本願発明14、19、21は、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項と同様の発明特定事項を有するものであるから、本願発明1と同様に、当業者が刊行物1発明及び刊行物1に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
そして、本願発明15-18は、本願発明14をさらに限定したものであるので、本願発明14と同様に、当業者が刊行物1発明及び刊行物1に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、当審拒絶理由で通知した理由1によっては、本願を拒絶することはできない。

(2)理由2について
ア.理由2(1)について
平成28年12月27日に提出された手続補正書により、請求項1には「前記ブリッジは前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外側に位置しており」との記載が、請求項14には「前記第2の部分は前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外側に位置しており」との記載が、請求項19には「前記ブリッジは、前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外側に位置しており」との記載が、請求項21には「前記第2の部分は前記第2の保持装置フランジの径方向外側端部の径方向外
側に位置しており」との記載が、それぞれ追加された。
よって、当審拒絶理由で通知した理由2(1)は解消した。

イ.理由2(2)について
平成28年12月27日に提出された手続補正書により、請求項19には「前記線バネのブリッジは、前記第1および第2の保持装置フランジの間に固定され」との記載が追加された。
よって、当審拒絶理由で通知した理由2(2)は解消した。

ウ.理由2(3)について
平成28年12月27日に提出された手続補正書により、補正前の請求項19の「前記第1および第2の連結器が結合され、前記第1および第2の流体通路が互いに連通する第1の状況において、・・・前記第1および第2の流体通路が互いに連通する第2の状況において、・・・」との記載は、「前記第1および第2の連結器が結合され、前記第1および第2の流体通路が互いに連通する状況において、・・・または・・・」との記載に補正された。
よって、当審拒絶理由で通知した理由2(3)は解消した。

オ.小括
以上の補正により、当審拒絶理由で通知した理由2は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-14 
出願番号 特願2013-509245(P2013-509245)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (F16L)
P 1 8・ 121- WY (F16L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 正木 裕也  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 尾崎 和寛
森林 宏和
発明の名称 コネクタアセンブリ  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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