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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
管理番号 1325711
審判番号 不服2014-19958  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-03 
確定日 2017-03-10 
事件の表示 特願2010-525845「バロマシクロビル多形体」拒絶査定不服審判事件〔平成21年4月2日国際公開、WO2009/042081、平成22年12月24日国内公表、特表2010-540440〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2008年9月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年9月21日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年9月12日に手続補正書が提出され、平成25年5月15日付けで拒絶理由が通知され、同年11月19日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年5月30日付けで拒絶査定がされ、同年10月3日に拒絶査定不服審判が請求され、同年11月21日に審判請求書を補正する手続補正書が提出され、その後、平成28年3月4日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月20日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の発明は、平成28年9月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】粉末X線回折図において、22.9°±0.2°、18.6°±0.2°、19.5°±0.2°、24.3°±0.2°、20.8°±0.2°、21.8°±0.2°、27.0°±0.2°、14.7°±0.2°、15.5°±0.2°、25.5°±0.2°、及び29.9°±0.2°に2θ角ピークを含む特徴的なスペクトルを示す、結晶性ステアリン酸バロマシクロビル。」
なお、ステアリン酸バロマシクロビルは、この出願の明細書(以下「本願明細書」という。)の段落【0004】によれば、「EPB-348」ともよばれ、その化学構造は、この出願の図1Aに記載された、以下のとおりである。

この化合物は、この出願の図1Bに記載された広域スペクトル抗ヘルペス剤であるH2G

のプロドラッグである。

第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した拒絶の理由は、理由1?3からなる。
そのうちの理由3の概要は、この出願の請求項1?12に係る発明は、その出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、より詳しくは、刊行物1及び12に記載された発明並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。そして、本願発明は、拒絶理由が通知された補正前の請求項1における「粉末X線回折図において・・・に特徴的な吸収ピークを有する」という不明瞭な記載を、「粉末X線回折図において・・・に2θ角ピークを含む特徴的なスペクトルを示す」との記載に改めたものである。

刊行物1:特表2002-522439号公報(原審における引用文献2;本願明細書の段落【0006】に提示された国際公開00/8025号のパテントファミリーである。)
刊行物2:特開平6-192228号公報(当審において新たに引用)
刊行物3:特開平7-53581号公報(同)
刊行物4;特公昭52-45716号公報(同)
刊行物5:特開昭61-263985号公報(同)
刊行物6:特開平4-235188号公報(同)
刊行物7:Pharmaceutical Research,12(7),1995,p.945-954(同;刊行物8に対応する特許第4790194号に対する無効審判(無効2013-800037号)(以下「アトルバスタチン無効審判」という。)で提出された甲第5号証;当審手持ちの文献は、最初の頁の右上に「甲第5号証」及び「無効審判請求13-000351」の表示があり、抄訳付き)
刊行物8:特開2003-73353号公報(当審において新たに引用)
刊行物9:Chemistry & Industry,21,1989,p.527-529(同;アトルバスタチン無効審判で提出された甲第8号証;当審手持ちの文献は、最初の頁の右上に「甲第8号証」及び「無効審判請求13-000354」の表示があり、抄訳付き)
刊行物10:日本化学会編,「第4版 実験化学講座1 基本操作I」,第2刷,丸善,平成8年4月5日,p.184-186(当審において新たに引用)
刊行物11:玉虫伶太、井上祥平、梅澤喜夫、小谷正博、鈴木紘一、務台潔編,「エッセンシャル化学辞典」,第1版第1刷,1999年3月10日,東京化学同人,p.155(同)
刊行物12:国際公開第03/002564号(同;本願明細書の段落【0006】に提示された文献である。)
刊行物2?11は、技術常識を示すために引用するものである。

第4 当審の判断
当審は、当審が通知した拒絶の理由のとおり、本願発明は、上記刊行物1及び12に記載された発明並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。
その理由は、以下のとおりである。

(1)刊行物に記載された事項

ア 刊行物1:特表2002-522439号公報
(1a)「【請求項8】式:
【化2】

(式中、R_(10) はC_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキル、R_(11) はイソプロピルまたはイソブチルである)で示される化合物の製造方法であって、式:
【化3】

(式中、R_(25) は水素または-C(O)NR_(27)R_(28)(式中、R_(27) およびR_(28) は独立に低級アルキル、フェニルおよびベンジルから選ばれるか、またはR_(27) とR_(28) とがそれらが結合している窒素原子と一緒になってピロリジニル基またはピペリジニル基を形成する)、R_(26) は低級アルキル、フェニルまたはベンジルである)で示される化合物を式:
【化4】

(式中、X_(2) はハロゲンまたはスルホネート脱離基、P_(1) はN-保護基、R_(10) およびR_(11) は前記と同じ)で示される化合物と反応させることを含む方法。」(3?4頁、特許請求の範囲の請求項8)
(1b)「【請求項15】式:
【化5】

(式中、R_(10) はC_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキル、R_(11) はイソプロピルまたはイソブチルである)で示される化合物の製造方法であって、式:
【化6】

(式中、R_(9) はアルコール保護基)で示される化合物を式:
【化7】

(式中、X_(2) はハロゲンまたはスルホネート脱離基、P_(1) はN-保護基、R_(10) およびR_(11) は前記と同じ)で示される化合物と、LiH、NaH、KH、NaOH、KOH、リチウムジイソプロピルアミド、LiN(Si(CH_(3))_(3))_(2) または立体的に嵩張ったアミン塩基から選ばれる塩基の存在下で反応させることを含む方法。」(5?6頁、請求項15)
(1c)「【請求項53】式:
【化19】

(式中、R_(10) はC_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキル、R_(11) はイソプロピルまたはイソブチルである)で示される化合物の製造方法であって、式:
【化20】

【化21】

または
【化22】

(式中、R_(10) はC_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキル、R_(11) はイソプロピルまたはイソブチル、P_(1) はN-保護基である)で示される化合物を加水分解することを含む方法。」(14?16頁、特許請求の範囲の請求項53)
(1d)「【請求項63】式:
【化30】

(式中、R_(10) はC_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキル、R_(11) はイソプロピルまたはイソブチルである)で示される化合物の製造方法であって、
式:
【化31】

(式中、R_(10) およびR_(11) は前記と同じ、P_(1) はベンジルオキシカルボニルである)で示される化合物を、Pd/BaSO_(4) およびPd/BaCO_(3) から選ばれる水素化触媒で水素化することを含む方法。」(20?21頁、特許請求の範囲の請求項63)
(1e)「【0001】(技術分野)
本発明は、非環状ヌクレオシドの分野に関し、とりわけヘルペスおよびレトロウイルス感染に対して有用な化合物の合成およびその新規な中間体に関する。
【0002】(背景技術)
国際特許出願第WO97/30051およびWO97/30052(ともに1997年8月21日公開;その内容を参照のため本明細書中に引用する)には、式I:
【0003】

(式中、(a)R_(1) が-C(O)CH(CH(CH_(3))_(2))NH_(2) または-C(O)CH(CH(CH_(3))CH_(2)CH_(3))NH_(2) であり、R_(2) が-C(O)C_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキルであるか;または
(b)R_(1) が-C(O)C_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキルであり、R_(2) が-C(O)CH(CH(CH_(3))_(2))NH_(2) または-C(O)CH(CH(CH_(3))CH_(2)CH_(3))NH_(2) であり;
R_(3) はOHまたはHである)で示されるある種の非環状ヌクレオシドの調製および抗ウイルス活性が記載されている。
国際特許出願第WO98/34917(その内容を参照のため本明細書中に引用する;1998年8月13日公開(本件出願の優先日の後である))には、上記化合物およびその新規な中間体の幾つかの合成経路が記載され特許請求されている。」
(1f)「【0090】実施例14
(R)-9-[2-(ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの他の調製方法
(a)(R)-9-[4-(N-ベンジルオキシカルボニル-L-バリルオキシ)-2-(ステアロイルオキシメチル)ブチル]グアニンの調製
500mL容丸底フラスコに、WO98/34917の実施例30(e)の生成物(10.4g、20.0ミリモル)、実施例37(a)の生成物(11.7g、24.2ミリモル)、DMAP(52mg、0.43ミリモル)およびTHF(170mL)を加えた。混合物を室温で4時間攪拌した。水(10mL)を加え、溶媒を減圧下で蒸発させた(約45℃の浴温)。残留するTHFを酢酸エチル(40mL)で追跡した。残渣を酢酸エチル(200mL)に溶解し、溶液を飽和重炭酸ナトリウム(3×100mL)、ついで水(100mL)で洗浄し、有機溶液を減圧下で蒸発させた(約45℃の浴温)。残留する酢酸エチルをイソプロパノール(25mL)で追跡して粗製の形態の所望の生成物を14gのオレンジ色の粘性の固体として得た。
【0091】(b)(R)-9-[2-(ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの調製
実施例14(a)の粗製の生成物を入れたフラスコにイソプロパノール/THF(4/1、100mL)を加え、混合物を45?50℃に加熱して固形分を溶解した。溶液を室温に冷却した。別の500mL容の丸底フラスコに10%Pd/C(1.00g)を加え、フラスコを真空にし、窒素ガスを3回充填した。ついでイソプロパノール/THF(4/1、25mL)を加えた。ついで、35mLのイソプロパノール/THF(4/1)ですすぎながら実施例14(a)の生成物の溶液を触媒フラスコに加えた。ついで、反応フラスコを真空にし、窒素ガスを3回充填した。ついで、溶液を40?45℃に16時間加熱した。ついで、水素を充填したバルーンを冷却器と置換し、反応混合物を65℃に25分間加熱した。ついで、反応混合物をセライト(6.05g)で濾過し、濾過ケーキをイソプロパノール/THF(4/1、2×50mL)で洗浄した。濾液を真空下で濃縮し(浴温45℃)、残渣をイソプロパノール(50mL)で追跡した。
【0092】フラスコにイソプロパノール(50mL)を加え、混合物を80℃に加熱して固形分を溶解した。酢酸イソプロピル(150mL)を加え、加熱を続けて生成した固体を溶解した。固形分がすべて溶解したら、溶液を室温に冷却し、12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、乾燥して薄灰色の固体(9.0g)を得た。この固体を活性炭(2.25g)およびイソプロパノール(200mL)とともに500mL容の丸底フラスコに加えた。混合物を60?65℃で1時間加熱し、ついでセライト(6.0g)で濾過した。セライトケーキを熱イソプロパノール(65℃、2×50mL)で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した(浴温50℃)。イソプロパノール(40mL)を残渣に加え、混合物を80℃に加熱して固形分を溶解した。酢酸イソプロピル(120mL)を加え、加熱を続けて生成した沈殿を溶解した。溶液を室温に冷却し、12時間攪拌した。得られた固体を濾過し、乾燥して所望の生成物を白色固体(7.7g)として得た。
【0093】別法として、水素化反応の粗製の生成物をイソプロパノール(50mL)と混合し、混合物を65?70℃に加熱して固形分を溶解した。アセトニトリル(65mL)を温度を55℃以上に維持する速度にて添加漏斗で滴下して加えた。アセトニトリルの添加の間に綿毛状の灰色の沈殿が生成した。アセトニトリルの添加完了後、混合物を65℃で30分間加熱し、ついで蒸気ジャケット付き(steam jacketed)漏斗中、セライトのパッドで濾過した。濾液を濃縮し、残留するアセトニトリルをイソプロパノール(70mL)で追跡した。得られた固体をイソプロパノール/酢酸イソプロピル(30/90mL)から再結晶させ、室温で6時間攪拌後、固形分を濾過し、乾燥して所望の生成物を白色の固体(6.72g)として得た。」
(1g)「【0099】実施例17
(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの他の調製方法
マグネチックスターラーおよび温度プローブを備えた500mL容の3つ首フラスコにWO98/34917の実施例30(f)の生成物(5.5g)、THF(65mL)およびイソプロパノール(65mL)を加えた。この透明な溶液に窒素ガスを3回通し、5%Pd/BaCO_(3)(0.6g)を加えた。混合物を40℃にて水素充填バルーンの下で16時間攪拌した。反応混合物をセライト濾過し、濾液を蒸発乾固して白色の固体を得た。この固体をイソプロパノール(25mL)に70℃にて溶解し、酢酸イソプロピル(100mL)を加えた。得られた混合物を室温に冷却し、1時間攪拌した。得られた固体を濾過し、真空下で乾燥させて所望の生成物を白色固体(3.39g)として得た。」
(1h)「【0104】実施例22
(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの他の調製方法
(a)(2R)-4,4-ジエトキシ-2-ステアロイルオキシメチルブタノールの調製
窒素導入口およびメカニカルスターラーを備えた12リットル容の4つ首モートンフラスコにステアリン酸ビニル(3202g、9.375モル)を入れた。50℃の水浴により加熱を施した。ステアリン酸ビニルが溶解するにつれて浴温は35℃に下がり、攪拌を開始した。加熱および攪拌をステアリン酸ビニルが完全に溶解するまで続けた。WO98/34917の実施例14(b)の生成物(1800g、9.375モル)およびリパーゼPS30(45g、2.5重量%)を加えた。懸濁液を35?37℃で22時間攪拌した。反応混合物をヘプタン(2.5L)中の37.5%メチルt-ブチルエーテルを加えて反応停止させた。ついで混合物をセライト濾過し、セライトをヘプタン(12L)中の37.5%メチルt-ブチルエーテルで洗浄した。有機濾液をコンバインし、水(10L)および23%NaCl溶液(10L)で洗浄した。有機溶液を蒸発させ、メチレンクロライド(4L)を加えた。この溶液を最初の容量の約半分まで蒸発させた。さらに4Lのメチレンクロライドを加え、溶液を5℃にて一夜放置した。
【0105】(b)(2S)-4,4-ジエトキシ-2-ステアロイルオキシメチル-ブチルトルエンスルホネートの調製
【0106】

【0107】・・・溶媒を蒸発させて所望の生成物を濃い油状物(5947g)として得た。
【0108】(c)(3S)-3-ステアロイルオキシメチル-4-トルエンスルホニルオキシブチルアルデヒドの調製
【0109】

【0110】・・・沈殿を濾過し、真空オーブン中、窒素ガスを通して20時間、室温にて乾燥させて所望の生成物(2860g)を得た。
【0111】(d)(2S)-4-N-カルボニルベンジルオキシ-L-バリニルオキシ-2-ステアロイルオキシメチル-ブチルトルエンスルホネートの調製
【0112】

【0113】・・・有機溶液を濃縮し、所望の生成物の約65%w/wの溶液として貯蔵した。
【0114】(e)2-アミノ-6-ヨード-(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(N-ベンジルオキシカルボニル-L-バリルオキシ)ブチル]プリンの調製
【0115】

【0116】・・・濾液を濃縮して所望の生成物(19.6g)を得た。
【0117】(f)(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(N-ベンジルオキシカルボニル-L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの調製
【0118】

【0119】・・・濃縮して所望の生成物を濃いシロップ(8.98g)として得た。
【0120】(g)(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(バリルオキシ)ブチル]グアニンの調製
100mL容のシェーカーにイソプロパノール(45mL)に溶解した(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(N-ベンジルオキシカルボニル-L-バリルオキシ)ブチル]グアニン(4.53g、6.03ミリモル)を入れ、ついで4%Pd/C(450mg)を加えた。得られた混合物を5psiの水素圧で3日間振盪した。混合物を濾過し、真空濃縮して蝋状の固体を得た。この物質に熱イソプロパノール(12mL)を加え、酢酸イソプロピル(24mL)を加えた。混合物を40℃にゆっくりと冷却し、ついで0℃で1時間攪拌した。沈殿を濾過し、酢酸イソプロピル(5mL)で洗浄し、ついで乾燥させて所望の生成物(1.53g)を得た。」
(1i)「【0121】実施例23
(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの他の調製方法
(a)(2S)-4-N-t-ブチルオキシカルボニル-L-バリニルオキシ-2-ステアロイルオキシメチル-ブチルトルエンスルホネートの調製
【0122】

【0123】・・・有機溶液を真空下で濃縮して所望の生成物(3.67g)を得た。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0124】(b)2-アミノ-6-ヨード-(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(N-t-ブチルオキシカルボニル-L-バリルオキシ)ブチル]プリンの調製
【0125】

【0126】・・・沈殿を濾過し、アセトニトリル(2×5mL)で洗浄し、乾燥して所望の生成物(2.79g)を得た。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0127】(c)(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(N-t-ブチルオキシカルボニル-L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの調製
・・・この混合物のHPLC分析は・・・所望の生成物が得られたことを示していた。
【0128】(d)(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(バリルオキシ)ブチル]グアニンの調製
20mL容のバイアル(攪拌棒/窒素)にメチレンクロライド(3.1mL)およびトリフルオロ酢酸(0.33mL)に溶解した(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(N-t-ブチルオキシカルボニル-L-バリルオキシ)ブチル]グアニン(0.218g、0.29ミリモル)を加えた。得られた混合物を25℃で14時間攪拌した。混合物をメチレンクロライド(10mL)で希釈し、7%重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮して所望の生成物(161mg)を得た。」
(1j)「【0129】実施例24
(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの他の調製方法
(a)(2S)-4-N-アリルオキシカルボニル-L-バリニルオキシ-2-ステアロイルオキシメチル-ブチルトルエンスルホネートの調製
【0130】

【0131】・・・有機溶液を真空下で濃縮して所望の生成物(20.6g)を得た。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0132】(b)2-アミノ-6-ヨード-(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(N-アリルオキシカルボニル-L-バリルオキシ)ブチル]プリンの調製
【0133】

【0134】・・・沈殿を濾過し、アセトニトリル(2×25mL)で洗浄し、乾燥して所望の生成物(12.28g)を得た。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0135】(c)(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(N-アリルオキシカルボニル-L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの調製
・・・有機相を真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(9/1 メチレンクロライド/メタノール)にかけて所望の生成物を蝋状物(0.67g)として得た。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0136】(d)(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(バリルオキシ)ブチル]グアニンの調製
4mL容のバイアル(攪拌棒/窒素)にTHF(1.0mL)に溶解した実施例24(c)の生成物(0.07g、0.10ミリモル)およびトリフェニルホスフィン(1.6mg)およびPd_(2)(dba)_(3)(1.4mg)およびピロリジン(0.071g)を加えた。得られた混合物を25℃で14時間攪拌した。混合物を真空下で濃縮し、イソプロパノールで希釈し、4℃で攪拌した。得られた沈殿を濾過して所望の生成物(33mg)を得た。」

イ 刊行物2:特開平6-192228号公報
(2a)「【請求項1】結晶状態の下記式


で表わされる(R)-(-)-2-シクロヘプチル-N-メチルスルフォニル-[4-(2-キノリニルメトキシ)-フェニル]-アセトアミド。
【請求項2】非結晶性(R)-(-)-2-シクロヘプチル-N-メチルスルフォニル-[4-(2-キノリニルメトキシ)-フェニル]-アセトアミドを、場合により水の存在下に、不活性有機溶媒中に懸濁させ、それが定量的に結晶性変態に転換されるまで高められた温度で処理し、得られる結晶性変態の結晶を慣用の方法で分離し、そして存在するかも知れない溶媒残渣を除去するために+20°?+70℃の温度で一定重量になる迄乾燥することを特徴とする請求項1記載の結晶性活性化合物の製造方法。」(2頁、特許請求の範囲の請求項1及び2)
(2b)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、(R)-(-)-2-シクロヘプチル-N-メチルスルフォニル-[4-(2-キノリニルメトキシ)-フェニル]-アセトアミドの結晶形、その製造方法及び薬品におけるその利用に関する。
【0002】【従来の技術】ロイコトリエン(leukotriene)合成の阻害剤である下記式(I)
【0003】


【0004】の(R)-(-)-2-シクロヘプチル-N-メチルスルフォニル-[4-(2-キノリニルメトキシ)-フェニル]-アセトアミド、その製造方法及び薬品におけるその利用は既にEP344,519に記載されている。
【0005】そこに記載された製造方法によると、式(I)の化合物は非結晶性粉末状態で得られる。溶媒和物を含まない結晶性変態(solvate-free crystalline modification)は今まで知られていない。
【0006】しかし、非結晶状態の式(I)の化合物は、特に固形薬品の製造において重大な欠点を有することが明らかとなった。このように非晶質状態の式(I)の化合物を含有する薬品は、例えば非常に不十分な貯蔵安定性しか示さない。調合剤を30℃を超える温度で比較的長期間貯蔵する場合におこりがちなこの物理的不安定性は、吸収効率及びこれら調合剤の安全性を損なう。」
(2c)「【0007】【発明が解決すべき課題】それ故薬品製造のために、上記欠点をもたない式(I)の化合物の安定な形態を入手可能とすることが非常に重要である。
【0008】【課題を解決するための手段】公知の非結晶形と比較して、増大した物理的安定性と低減した圧力感受性に特徴を有し、それ故種々の薬品の製造のために非結晶形より相当適している、新規な結晶形の化合物(R)-(-)-2-シクロヘプチル-N-メチルスルフォニル-[4-(2-キノリニルメトキシ)-フェニル]-アセトアミドが今回見出された。」

ウ 刊行物3:特開平7-53581号公報
(3a)「【請求項1】L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩を水溶媒下で結晶化させることを特徴とする結晶質L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩の製造法。」(2頁、特許請求の範囲の請求項1)
(3b)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、医薬品、化粧品、食品および動物飼料などに有用なL-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩の結晶(以下、結晶質L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩と称する。)の製造法に関する。
【0002】【従来技術および課題】現在市販されているL-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩は非晶質であるため、保存時吸湿しやすく粉末の団塊化を生じやすい。また、L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩自身の化学的安定性が充分でなく、他の薬物との配合時に影響を与えることが多い。さらに、ケーキングを生じたり、流動性が不十分なため製剤化に際して支障をきたすことが多く、実用面で支障になる品質のバラツキが生じやすい。従って、安定な結晶質L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩として提供されることが望まれている。 L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩の結晶化の例としては、L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩の水溶液にメタノールを加え、得られた沈澱物を水-メタノールから再結晶する方法[ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレティン(Chem. Pharm. Bull.)、17、381(1969)およびケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレティン(Chem. Pharm. Bull.)、30、1024(1982)]、L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩を含有する水溶液にアルコール類またはアセトンなどを添加して該結晶を得る方法(特開昭59-51293号)が知られているが、これらの方法は結晶の純度、安定性、結晶化の簡便性などの点で十分とは言えない。」
(3c)「【0023】・・・
実施例1
非晶質L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩20gに1リットルの水を加え2W/V%とし、50?60℃に加温溶解した。得られた溶液をろ過し、ろ液を減圧下で濃縮し、80mlの溶液を得た。得られた溶液のL-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩の濃度[析出したAPMgと水に溶けているAPMgの合計重量(g)/水の体積(ml)]×100(%)は25W/V%であった。その後、室温まで冷却し、結晶を析出させて目的の結晶を得た。得られた結晶についてDSCチャートにより確認した結果、全て結晶質L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩であることが判明した。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0028】試験例1
実施例1で得られた結晶質L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩について密閉容器中、60℃下での残存率を測定し、非晶質L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩[ホスピタンC(商品名)、昭和電工(株)製]と比較することによりその安定性を評価した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
60℃下の安定性(残存率%)
2週 1カ月 2カ月 3カ月 6カ月
本発明での結晶 99.9 99.1 98.4 97.6 95.3
非晶質 99.0 96.5 93.9 90.5 78.5
【0030】表1から明らかなように、本発明による結晶は優れた安定性を有する。」

エ 刊行物4;特公昭52-45716号公報
(4a)「1 親水性溶媒と水からなる含水溶媒中で、アンピシリンまたはその塩類、シリル誘導体に、水酸化ナトリウムまたはナトリウム塩を作用させてアンピシリンナトリウム塩を生成させ、含水溶媒系から晶出させることを特徴とするアンピシリンナトリウム塩I型結晶の製造法。」(4頁、特許請求の範囲)
(4b)「本発明は、アンピシリンナトリウム塩の製造法に関するものである。
半合成ペニシリンの1つであるアンピシリンは、グラム陽性およびグラム陰性菌によつて引き起される種々の感染症に対して有効であるため、広く繁用されている。現在アンピシリンは、一般に遊離型とナトリウム塩が用いられている。このうち遊離型のものには、結晶形の無水物(特公昭41-8349)およびトリハイドレート(米国特許3157640)があり、これらはその無晶形のものに比し,安定であることが知られているが、ナトリウム塩の結晶性と安定性については十分研究されていない。」(1頁1欄27行?2欄2行)
(4c)「本発明方法によればアンピシリンナトリウム塩は、安定な結晶形(I型と称する)として得ることができる。このI型結晶は、たとえばアンピシリンナトリウム塩の水溶液を凍結乾燥して得られる無晶形のものと比較すると、たとえば40℃、関係湿度52.4℃条件で保存した場合の残存率および吸湿平衡は、第4図および第5図に示すごとく、I型結晶が顕著にすぐれている・・・。」(2頁3欄31?40行)
(4d)「

」(7頁、第4図)
(4e)「

」(7頁、第5図)

オ 刊行物5:特開昭61-263985号公報
(5a)「1.(6R,7R)-7-〔(Z)-2-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-メトキシイミノアセトアミド]-3-(1-キヌクリジニウムメチル)-3-セフエム-4-カルボキシレートまたは(6R,7R)-7-〔(Z)-2-(5-アミノ-1-チア-2,4-ジアゾール-3-イル)-2-メトキシイミノアセトアミド〕-3-(1-キヌクリジニウムメチル)-3-セフエム-4-カルボキシレ-トであるセフアロスポリン誘導体の結晶性無水物、0.5水和物、1水相物または3水和物。
2.(6R,7R)-7-〔(Z)-2-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-メトキシイミノアセトアミド〕-3-(1-キヌクリジニウムメチル)-3-セフエム-4-カルボキシレートまたは(6R,7R)-7-〔(Z)-2-(5-アミノ-1-チア-2,4-ジアゾール-4-イル)-2-メトキシイミノアセトアミド〕-3-(1-キヌクリジニウムメチル)-3-セフエム-4-カルボキシレートであるセフアロスポリン誘導体の無定形物を、水性有機溶媒に溶解し、得られる溶液を有機溶媒に加え、もしくは冷却し、次いで必要に応じて乾燥することを特徴とするセフアロスポリン誘導体の結晶性無水物、0.5水和物、1水和物または3水和物の製造法。」(1頁、特許請求の範囲の請求項1及び2)
(5b)「〈背景技術〉
7-位に2-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-メトキシイミノアセトアミド基を有するセフアロスポリン誘導体が、強力な抗菌活性を有する抗生物質として知られている。
例えば、下記式

で表される(6R,7R)-7-〔(Z)-2-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-メトキシイミノアセトアミド]-3-(1-キヌクリジニウムメチル)-3-セフエム-4-カルボキシレートは、ベタイン構造を有し、各種のグラム陽性菌、グラム陰性菌に対して強力な抗菌活性を有するセフアロスポリン誘導体(特開昭59-239292号公報)である。
これらのセフアロスポリン誘導体は、分子中に有するβ-ラクタム環の加水分解が起り易く、通常化学的に不安定である。」(2頁左上欄14行?右上欄下から4行)
(5c)「したがつて、かかるセファロスポリン誘導体を医薬として用いる場合、安定な形態で使用することが非常に重要である。
〈発明の開示〉
本発明の目的は、(6R,7R)-7-〔(Z)-2-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-メトキシイミノアセトアミド)-3-(1-キヌクリジニウムメチル)-3-セフエム-4-カルボキシレートまたはその誘導体の安定化された結晶性化合物を提供することにある。」(2頁右上欄下から3行?左下欄8行)
(5d)「(2) 3水和物,1水和物,0.5水和物,無水物を褐色バイアルに熔封後85℃で保存し、高速液体クロマドグラフィーで分析した。結果を下表に示す。(残存率,%)

試料 \ 経時 10日後 24日後
無定形物 0 0
3水和物 97.0 86.8
1水和物 96.1 85.5
0.5水和物 98.3 86.3
無水物 97.5 86.0
」(8頁右上欄下から4行?左下欄)

カ 刊行物6:特開平4-235188号公報
(6a)「【請求項1】粉末X線回折により、面間隔12.8、8.8、5.6、4.44、4.36、4.2Åに主ピークを示す回折パターンを有する(+)-(5R,6S)-6-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-3-(3-ピリジル)-7-オキソ-4-チア-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-2-カルボン酸ピバロイルオキシメチルエステルの結晶。
【請求項2】(+)-(5R,6S)-6-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-3-(3-ピリジル)-7-オキソ-4-チア-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-2-カルボン酸ピバロイルオキシメチルエステルの良溶媒溶液に、該良溶媒と混和性の貧溶媒を添加、撹拌し、30℃以下に冷却して、粉末X線回折により、面間隔12.8、8.8、5.6、4.44、4.36、4.2Åに主ピークを示す回折パターンを有する(+)-(5R,6S)-6-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-3-(3-ピリジル)-7-オキソ-4-チア-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-2-カルボン酸ピバロイルオキシメチルの結晶を得ることを特徴とする該結晶の製造方法。」(2頁、特許請求の範囲の請求項1及び2)
(6b)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は医薬用の抗菌化合物として有用なペネム化合物の結晶およびその製造方法に関する。
【0002】【従来の技術および課題】特開昭62-263183号には、ある種の2-ピリジル-ペネム化合物が開示されており、そのうち、特に、式:

で表される(+)-(5R,6S)-6-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-3-(3-ピリジル)-7-オキソ-4-チア-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-2-カルボン酸ピバロイルオキシメチルエステルは、特に、経口投与によりグラム陰性菌のみならずグラム陽性菌にも優れた抗菌活性を有する有用なペネム化合物であり、その実用化が検討されている。しかし、該ペネム化合物は、優れた抗菌活性を示す一方、これまで無晶形でしか得られておらず、この無晶形の固体は安定性が不十分で、通常の条件下で長時間保存すると変色し、製剤化に際し、有効成分の含量低下を来す問題がある。また、無晶形の固体を実質的に純粋なものとするには、煩雑な精製工程を要する問題がある。そこで、本発明者らは、これらの問題点を解決するために、優れた抗菌活性を示す該ペネム化合物を保存安定性の良い形状として得るべく鋭意検討の結果、該ペネム化合物が安定な結晶として得られること、結晶化により容易に精製できること、さらに、結晶の残留溶媒の面から、医薬として有利な水-エタノール系より結晶が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(6c)「【0010】実施例1
前記参考例で得られた(+)-(5R,6S)-6-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-3-(3-ピリジル)-7-オキソ-4-チア-1-アサビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-2-カルボン酸ピバロイルオキシメチルエステルの無晶形の粉末19.5gをエタノール98ミリリットルに溶解した。この溶液を31℃に加温し、32℃に加温した水146ミリリットルを加え、活性炭(白サギP、武田薬品工業(株)製)0.98gを加えて10分間撹拌した。ついで、活性炭を濾去し、エタノール20ミリリットルと水29ミリリットルの混液で洗浄した。濾液を25?30℃で1時間撹拌した後、10℃で冷却し、さらに1時間撹拌した。晶出した結晶を濾取し、エタノール20ミリリットルと水39ミリリットルの混液および水120ミリリットルで順次洗浄し、減圧下35℃で約5時間乾燥すると白色の粉末として該エステルの結晶16.6gが得られた。融点:95?96℃
・・・・・・・・・・・・・・・
【0014】実験例
本発明の方法で製造したエステルの結晶形粉末および参考例により製造した無晶形粉末のそれぞれを60℃の温度で密栓容器中暗所に保存し、残存率を調べた。
粉末の種類 保存条件 残存率
無晶形粉末 60℃ 14日間 37.7%
実施例1の結晶形粉末 60℃ 19日間 98.7%
実施例2の結晶形粉末 60℃ 14日間 98.9%


キ 刊行物7:Pharmaceutical Research,12(7),1995,p.945-954
訳文で示す。
(7a)「医薬品固体:法規制考慮への戦略的アプローチ」(945頁、標題)
(7b)「医薬品固体の対象における興味は、“適切な”分析手法を用いて原薬の多形、水和、又は無定形を検出すべきであるとする、食品医薬品局(FDA)の原薬ガイドラインに部分的に由来する。これらのガイドラインは、原薬の結晶形態を制御することの重要性を示す。ガイドラインはまた、原薬の結晶形態を制御すること、及びバイオアベイラビリティが影響されるならば、その制御方法の妥当性を実証することは、申請者の責任であるとしている。
したがって、新薬申請(NDA)は、特にバイオアベイラビリティが問題となる場合には、固体状態に関する情報が含まれていなければならないことが明らかである一方で、申請者は、情報収集への科学的アプローチやどのような情報が必要とされるのかについて、確信が持てないであろう。この総説は、一連のガイドラインや規則ではなく、フローチャートの形でコンセプトやアイディアを示すことにより、こうした不確かさの大部分を取り除くための戦略的なアプローチを提供することを目的とする。個別の化合物はそれぞれ、アプローチの柔軟性を必要とする特有の特性を有するため、このことは特に重要である。ここで提案されるこの研究は、臨床試験用新医薬品(IND)申請プロセスの一部分である。
固体の医薬物質は、広範囲であり且つ概して予測のできない、様々な固体状態特性を示す。それでもなお、多くの事例において、適切な分析的手法を用いて基本的な物理化学的性質を申請することは、固体状態での挙動に関する科学的及び規制上の決定のための戦略を提供する。医薬品開発の初期段階において、固体状態での挙動に関する基本的な疑問に取り組むことにより、申請者とFDAの両者は、医薬物質の固体状態特性の何らかの変動が与え得る効果を評価しやすくなる。この分野に関してはその結果としてもたらされる両者の初期段階での関わりは、臨床試験中に用いられる物質の均質性を保障しやすくするだけではなく、医薬品開発の臨床段階に入る前に固体状態での問題点を完全に解決することにもつながる。これらの科学的研究がもたらす更なる利益は、医薬物質の固体形態を充分に記述する、固体状態についての有意義な規格の確立である。これらの規格はしたがって、サプライヤー又は化学工程における一部変更承認を促進する。」(945頁左欄1行?右欄15行)
(7c)「既に述べたように、原薬の多形及び水和物の存在について調べることが得策である。というのは、これらは医薬品製造プロセスの何れかの段階で、又は原薬若しくは製剤の貯蔵に際して遭遇し得るからである。」(946頁左欄下から5?末行)
(7d)「A.多形の形成?多形は発見されているか?
多形決定ツリーの最初のステップは、多形は可能かという質問への回答を試みるために、その物質を多数の異なる溶媒から結晶化させることである。溶媒は、最終結晶化工程で用いられるもの、及び製剤化や加工工程で用いられるものを含み、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ヘキサン、及び適切であればこれらの混合物を使用できる。」(946頁右欄19?28行)
(7e)「フローチャート/多形決定ツリー」と題する図1(946頁)は、左上の「多形は発見されているか?」で始まり、左下には以下の記載がある。
「多形のための試験
-X線粉末回折
-示差走査熱量分析
-顕微鏡
-赤外吸収スペクトル
-固体NMR」
「溶媒和物又は水和物のためのフローチャート」と題する図6(949頁)、「脱溶媒した溶媒和物のためのフローチャート」と題する図9(951頁)、「非晶質固体のためのフローチャート」と題する図11(952頁)にも試験の手段が挙げられている。
(7f)「大変少ない例外を除き、市販されている結晶性医薬物質に含まれている構造的な溶媒は、水である。」(949頁左欄19?20行)
(7g)「フローチャートの次の質問は、“アモルファス形態は、異なる物理的特性を有するか?”である。この質問に対する回答は、ほとんどの場合において確実に“イエス”であろう。一般に、結晶形態とは異なる点が3つ考えられる。1)アモルファス形態のほうが、溶解性が高いであろうこと。2)アモルファス形態のほうが、より広範に水を吸収すること。3)アモルファス形態のほうがしばしば、化学的に安定性が低いこと。アモルファス形態への別の重要な疑問は、“結晶化するか、それはどのように、いつ”ということである。予期しない結晶化は、溶解性と溶解速度に影響し、製剤化での別な障害につながるため、この疑問は非常に重要である。アモルファス形態を意図的に結晶化させる試みは、アモルファス形態の結晶化に関連するパラメータ情報をもたらす。特有な質問として、(1)“アモルファス形態は、熱及び/又は湿気にさらすことで結晶化するか?”、(2)“いかなるその他の要因(たとえば、機械的圧力及び種晶添加がアモルファス形態の結晶化をもたらすか?”、が挙げられる。」(952頁右欄10?27行)

ク 刊行物8:特開2003-73353号公報
(8a)「【請求項1】CuK_(α) 放射線を使用して測定した2θ値:11.9または22.0うちの少なくとも一つを含有するX線粉末回折を有する結晶性形態Iのアトルバスタチン水和物。
・・・・・・・・・・・・・・・
【請求項9】CuK_(α) 放射線を使用して測定した2θ値:9.0および20.5を含有するX線粉末回折を有する結晶性形態IIのアトルバスタチンまたはその水和物。」(特許請求の範囲の請求項1及び9)
(8b)「【0001】【発明の背景】本発明は、医薬として有用である新規な結晶性形態の化学名〔R-(R^(*),R^(*))〕-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-〔(フェニルアミノ)カルボニル〕-1H-ピロール-1-ヘプタン酸ヘミカルシウム塩によって知られているアトルバスタチン、この化合物を製造および単離する方法、この化合物および医薬的に許容し得る担体を含有する医薬組成物、および医薬的治療方法に関するものである。本発明の新規な結晶性化合物は・・・有用な血中脂質性低下剤および血中コレステロール低下剤である。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0007】上記米国特許の方法は、大規模な生産に対して適当でない濾過および乾燥特性を有しそして熱、光、酸素および湿気から保護しなければならない無定形のアトルバスタチンを開示している。」
(8c)「【0008】驚くべきことにはそして意外にも、アトルバスタチンは結晶性の形態で製造することができるということが見出された。すなわち、本発明は、形態I、形態IIおよび形態IVと称される新規な結晶性形態のアトルバスタチンを提供する。形態Iのアトルバスタチンは、従来の無定形の生成物よりも小さい粒子およびより一様な大きさの分布からなり、そしてより有利な濾過および乾燥特性を示す。さらに、形態Iのアトルバスタチンは、無定形の生成物よりも純粋でありそしてより安定である。」
(8d)「【0038】本発明は、結晶性形態Iのアトルバスタチンを与える条件下で溶剤中の溶液からアトルバスタチンを結晶化させることからなる結晶性形態Iのアトルバスタチンの製法を提供する。結晶性形態Iのアトルバスタチンが形成される正確な条件は、経験的に決定することができそして実施に適当であることが見出される多数の方法を与えることができる。
【0039】すなわち、例えば、結晶性形態Iのアトルバスタチンは、調節された条件下における結晶化によって製造することができる。特に、それは、例えば酢酸カルシウムなどのようなカルシウム塩の添加によって、相当する塩基性塩、例えばアルカリ金属塩、例えばリチウム、カリウム、ナトリウム塩など;アンモニアまたはアミン塩;好ましくはナトリウム塩の水溶液から、または、無定形のアトルバスタチンを水に懸濁することによって製造することができる。一般に、ヒドロキシル性補助溶剤、例えば低級アルカノール、例えばメタノールなどの使用が好ましい。
【0040】所望の結晶性形態Iのアトルバスタチンを製造するための出発物質が相当するナトリウム塩の溶液である場合は、一つの好ましい製法は、約5v/v%以上のメタノール、好ましくは約5?33v/v%のメタノール、特に好ましくは約10?15v/v%のメタノールを含有する水中のナトリウム塩の溶液を、約70℃までの高い温度、例えば約45?60℃、特に好ましくは約47?52℃で、酢酸カルシウムの水溶液で処理することからなる。一般に、アトルバスタチンのナトリウム塩2モルに対して酢酸カルシウム1モルを使用することが好ましい。これらの条件下において、カルシウム塩形成ならびに結晶化は、好ましくは高い温度、例えば上述した温度範囲内で実施しなければならない。出発溶液に、例えば約7w/w%のような少量のメチル第3ブチルエーテル(MTBE)を含有させることが有利であるということが見出された。しばしば、結晶性形態Iのアトルバスタチンを一貫して製造するために、結晶性形態Iのアトルバスタチンの“種子(seeds)”を結晶化溶液に加えるのが望ましいということが見出されている。
【0041】出発物質が無定形のアトルバスタチンまたは無定形および結晶性形態Iのアトルバスタチンの組み合わせである場合は、所望の結晶性形態Iのアトルバスタチンは、必要な形態への変換が完了するまで、約40v/v%まで、例えば約0?20v/v%、特に好ましくは約5?15v/v%の補助溶剤、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトンなどを含有する水中に固体を懸濁し次いで濾過することによって得ることができる。しばしば、結晶性形態Iのアトルバスタチンへの完全な変換を確保するために、結晶性形態Iのアトルバスタチンの“種子”を懸濁液に添加することが望ましいということが見出されている。このようにする代わりに、主として無定形のアトルバスタチンからなる水湿潤ケーキを、有意な量の結晶性形態Iのアトルバスタチンが存在するまで、高い温度、例えば約75℃まで、特に好ましくは約65?70℃の温度で加熱し、それによって無定形/懸濁液形態Iの混合物を上述したようにスラリー化することができる。」
(8e)「【0042】結晶性形態Iのアトルバスタチンは、無定形のアトルバスタチンよりも著しく容易に単離し、そして冷却後結晶化媒質から濾過し、洗浄しそして乾燥することができる。例えば、結晶性形態Iのアトルバスタチンの50mlのスラリーの濾過は、10秒以内に完了した。無定形のアトルバスタチンの同様な量の試料は、濾過するのに1時間以上を必要とした。」
(8f)「【0043】本発明は、また結晶性形態IIのアトルバスタチンを与える条件下でアトルバスタチンを溶剤に懸濁することからなる結晶性懸濁IIのアトルバスタチンの製法を提供する。形態IIの結晶性アトルバスタチンが形成される正確な条件は、経験的に決定することができそして実施に適当であることが見出される方法を与えることができる。
【0044】すなわち、例えば、出発物質が無定形、無定形および形態Iの組み合わせまたは結晶性形態Iのアトルバスタチンである場合は、所望の形態IIの結晶性アトルバスタチンは、必要な形態への変換が完了するまで、固体を、約40?50%の水を含有するメタノールに懸濁し次いで濾過することによって得ることができる。」
(8g)「【0060】【実施例】実施例 1
〔R-(R^(*),R^(*))〕-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-〔(フェニルアミノ)カルボニル〕-1H-ピロール-1-ヘプタン酸ヘミカルシウム塩(形態Iのアトルバスタチン)
方法A
(2R-トランス)-5-(4-フルオロフェニル)-2-(1-メチルエチル)-N,4-ジフェニル-1-〔2-(テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-6-オキソ-2H-ピラン-2-イル)エチル〕-1H-ピロール-3-カルボキサミド(アトルバスタチンラクトン)(米国特許第5,273,995号)(75kg)、メチル第3ブチルエーテル(MTBRE)(308kg)、メタノール(190L)の混合物を、48?58℃で水酸化ナトリウムの水溶液(950L中5.72kg)と40?60分反応させて開環したナトリウム塩を形成させる。25?35℃に冷却した後、有機層を捨てそして水性層を再びMTBE(230kg)で抽出する。有機層を捨て、そしてナトリウム塩のMTBE飽和水溶液を、47?52℃に加熱する。この溶液に、水(410L)に溶解した酢酸カルシウム半水和物(11.94kg)の溶液を、少なくとも30分にわたって加える。酢酸カルシウム溶液の添加後直ぐに、結晶性形態Iのアトルバスタチンのスラリー(水11Lおよびメタノール5L中の1.1kg)を、種子として混合物に加える。それから、混合物を少なくとも10分51?57℃に加熱し、そしてそれから15?40℃に冷却する。混合物を濾過し、水(300L)およびメタノール(150L)の溶液で洗浄し、次いで水(450L)で洗浄する。固体を、真空下60?70℃で3?4日間乾燥して結晶性形態Iのアトルバスタチン(72.2kg)を得た。
方法B
無定形のアトルバスタチン(9g)および結晶性形態Iのアトルバスタチン(1g)を、水(170ml)およびメタノール(30ml)の混合物中において約40℃で全体で17時間撹拌する。混合物を濾過し、水ですすぎ、そして減圧下70℃で乾燥して結晶性形態Iのアトルバスタチン(9.7g)を得た。」
(8h)「実施例 2
〔R-(R^(*),R^(*))〕-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-〔(フェニルアミノ)カルボニル〕-1H-ピロール-1-ヘプタン酸ヘミカルシウム塩(形態IIのアトルバスタチン)
無定形および結晶性形態Iのアトルバスタチンの混合物(100g)を、メタノール(1200ml)および水(800ml)の混合物に懸濁し、そして3日間撹拌する。この物質を濾過し、減圧下70℃で乾燥して結晶性形態IIのアトルバスタチンを得た。」

ケ 刊行物9:Chemistry & Industry,21,1989,p.527-529
訳文で示す。
(9a)「プロセスの開発における多形」(527頁、標題)
(9b)「結晶性製品は、一般に、単離し、精製し、乾燥するのに、そしてバッチプロセスにおいては取扱い、製剤化するのに、最も容易である。」(527頁左欄1?3行)
(9c)「多形は、同一分子の単位セル内での結合方法が異なる結晶格子をもつ。その相違は、セル内の分子の詰め込み方の違いや立体配置の変化を反映しており、大きなものであり得る。水素結合は、医薬産業にとって興味のあるほとんどの分子に関係するであろう。」(527頁左欄15?20行)
(9d)「可能性のあるいかなる多形が得られるかは、結晶化が生じる温度、溶媒の性質(親水性か、疎水性か)、そして結晶化が始まる過飽和の程度、といった様々なファクターに依存するようである。種結晶の使用は、目的とする多形を得るために有用である。」(527頁右欄9?14行)
(9e)「少数の化合物しか開発に至らないうえ、市販されるものはさらに少ない。各開発候補品に進展のための最良の機会を与えるには、多形が現れるのを成行き任せにしてその結果混乱を来すよりも、多形について調査するほうが良いと思われる。多形を得ようとする試みにおいて用いられる手法には、急速に溶液を冷却するか、溶質の溶けにくい第二の溶媒を加えるか、過剰の固体を溶媒と共に激しく攪拌するか、過剰の固体を高沸点溶媒と共に加熱するか、昇華させるか、及び溶液のpHを急激に変化させて酸性又は塩基性の物質を沈殿させるかという方法により、異なる温度下で様々な溶媒(極性及び非極性、親水性及び疎水性)から結晶化させることが含まれる。」(528頁左欄2?14行)

コ 刊行物10:日本化学会編,「第4版 実験化学講座1 基本操作I」,第2刷,丸善,平成8年4月5日,p.184-186
(10a)「a.再結晶
物質の精製法として蒸留法,および再結晶法は基本的操作である.再結晶は,加熱下で溶質を溶媒に溶解して飽和溶液とし,次にこの溶液を冷却すると溶質の溶解度が下がり,過剰の溶質は沈殿(結晶)し,一方,不純物は飽和溶液に達せず,そのまま溶液に留まる.・・・不純物・・・は再結晶により除去できることになる.
(i)試料の純度 再結晶を行う試料の純度は特に有機物では最初に薄層クロマトグラフィーで確認しておく.その際,用いた展開剤の極性と薄層上のR_(f) 値との関係は再結晶の溶媒選択に役立つし,また不純物の大よその極性も分かる.精製する物質の純度は高い方が望ましく,純度があまりにも低すぎる場合には、蒸留,カラムクロマトグラフィーや活性炭による脱色を行うなどして,夾雑物をある程度除去しておいた方がよい.勿論,精製が可能かどうかは再結晶の原理からみて,溶解度曲線の形に関係するので,不純物が多い場合にも,純粋な結晶が得られることも少なくない.
(ii)溶媒の選択 再結晶溶媒の選択には一定の規則があるわけでなく,試行錯誤により選択するのが基本である.したがって,試料約20mg程度を試験管で溶媒に対する溶解性や結晶性を調べてみるとよい.既知化合物であれば,化合物辞典などで再結晶溶媒や溶解度を調べるのがよい^(1)).未知化合物においても,同族体の既知化合物のデータを参照するとよい.しかし,古くから,同族体は同族体をよく溶かすという経験則があり,これを基本にして選ぶとよい選択ができる.つまり精製しようとする化合物が,水素結合性であるのか非水素結合性か,極性基または疎水基をもっているかどうか,イオン性であるかどうかなどである.一般には水素結合性,極性を考慮すれば,次の6種の溶媒の中から選択すれば十分であろう.
ヘキサン<ベンゼン<酢酸エチル<アセトン<エタノール<水(極性小から大)
さらにこの中間の極性のものが欲しい場合には,2種の溶媒を混合するか,表4・5を参考にされたい.その際,極性値(誘電率ε,溶解度パラメーターδ,極性値E_(T);ε,δ,E_(T) は数字が大きいと極性が大きい)や沸点,融点を選択の基準とすればよい.反応性溶媒や沸点が高い溶媒はできれば避けた方がよい.このような溶媒では有機物の再結晶中に脱離や置換が起きた多数の例がある.
(iii)加熱溶解 溶解は三角フラスコを用いて水浴中でふりまぜながら行うが,溶解しにくい結晶の場合には,結晶を粉砕して,環流下,マグネチックスターラーでかくはんしながら1時間ほど加熱溶解させる.超音波による溶解法も試みてみてもよい.
(iv)結晶化 結晶が析出する速さ,大きさや形は放冷速度,溶媒,濃度などによって異なる.時には結晶組成が異なってしまうこともある.一般に低融点のものや分子量の大きな物質は結晶化しにくい傾向がある.結晶化が起きにくい場合には,○1放冷を徐々に行う(湯浴に浸したままにしておく).○2結晶の種を入れる.○3管壁をガラス棒などで擦り,種をつくる.○4冷蔵庫内に数日から数か月放置する.○5混合溶媒にして溶解度を下げる.○6自然蒸発を待つ.急冷すると結晶にならず,オイル状となり精製ができないことも多い.論文中には記載がないが,X線構造解析用の結晶が放置したNMR試料管中から偶然得られたということも少なくない.
(v)純度の確認 物質の純度はクロマトグラフィー,各種スペクトル,元素分析などの危機分析が最近の微量分析の方法であるが,融点測定も手軽にできる方法でありおろそかにしてはいけない.融点は,物質が不純であれば文献値よりも低下し,不明瞭になる.また融点測定時に液晶状態が観測される場合もあるから注意されたい.」(184頁20行?186頁末行)
(10b)「

」(186頁)

サ 刊行物11:玉虫伶太、井上祥平、梅澤喜夫、小谷正博、鈴木紘一、務台潔編,「エッセンシャル化学辞典」,第1版第1刷,1999年3月10日,東京化学同人,p.155
(11a)「グアニン[guanine] C_(5)H_(5)N_(5)O,分子量151.13.核酸の構成成分であるプリン塩基* の一つ.2種の互変異性体が可能であるが,主としてケト形(ラクタム

形)で存在する(図).無色針状晶.融点360℃(分解).水,エタノールに不溶,酸,アルカリには易溶.RNAまたはDNAを加水分解すると遊離する.」(155頁左欄35行?下から3行)

シ 刊行物12:国際公開第03/002564号
訳文で示す。
(12a)「背景技術
下記式XXで示されるステアリン酸バロマシクロビルは、VZV及び他のヘルペスウイルス及びHIVの治療に有用な非環状ヌクレオシドアナログである。

本発明者らの以前の特許出願WO98/34917号、米国特許第6184376号及びWO00/08025号には種々の合成経路が記載されており、そのうちの幾つかは下記式I/IIで一般的に示される重要なアセタール中間体を経ている:・・・」(1頁10行?2頁2行)

(2)刊行物1に記載された発明
刊行物1は、式I

(式中、(a)R_(1) が-C(O)CH(CH(CH_(3))_(2))NH_(2) または-C(O)CH(CH(CH_(3))CH_(2)CH_(3))NH_(2) であり、R_(2) が-C(O)C_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキルであるか;または
(b)R_(1) が-C(O)C_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキルであり、R_(2) が-C(O)CH(CH(CH_(3))_(2))NH_(2) または-C(O)CH(CH(CH_(3))CH_(2)CH_(3))NH_(2) であり;
R_(3) はOHまたはHである)で示される化合物が抗ウイルス活性を有することが知られていることを背景技術として、ヘルペスおよびレトロウイルス感染に対して有用な化合物の合成及びその新規な中間体に関して記載した特許文献である(摘示(1e))。
刊行物1の特許請求の範囲には、上記化合物のうちの、式:

(式中、R_(10) はC_(3)?C_(21) 飽和またはモノ不飽和の任意に置換されたアルキル、R_(11) はイソプロピルまたはイソブチルである)で示される化合物の、それぞれ異なる製造方法が、請求項8、15、53、63に記載されている(摘示(1a)?(1d))。その明細書には、上記の化合物又は中間体の合成について記載した実施例が、多数含まれ、そのうちの、実施例14、17、22、23、24は、(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニン、すなわち、上記請求項に記載された式において、R_(10) がC_(17) 飽和アルキルでありR_(11) がイソプロピルであるものの、合成実施例である(摘示(1f)?(1j))。上記実施例14には、上記化合物をイソプロパノール/酢酸イソプロピル(30/90mL)から再結晶させ、濾過、乾燥して白色の固体を得たことも記載されている(摘示(1f))。再結晶の結果得られる固体は、結晶であると認められる。
したがって、刊行物1には、
「(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの結晶」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているということができる。

(3)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニン」は、刊行物1においては、その上位概念の化合物を表す請求項8、15、53、63の化学式では、グアニン部分の構造が互変異性体のうちのエノール形で表現されている。
しかし、化合物のグアニンは2種の互変異性体を有し、主としてそのうちのケト形で存在するとの技術常識(摘示(11a))、及び、この出願の明細書(以下「本願明細書」という。)の段落【0006】?【0007】において、提示文献として国際公開第00/8025号(刊行物1とパテントファミリーの関係にある文献である。)を挙げて、この文献が「バロマシクロビルに関する様々な合成経路を記載している」としていること、及び、同じく提示文献として挙げた国際公開第03/2564号(刊行物12である。)でも、同じ文献を挙げて「下記式XXで示されるステアリン酸バロマシクロビルは、VZV及び他のヘルペスウイルス及びHIVの治療に有用な非環状ヌクレオシドアナログである。

本発明者らの以前の特許出願WO98/34917号、米国特許第6184376号およびWO00/08025号には種々の合成経路が記載されており」(摘示(12a))と記載されていることからすると、引用発明の「(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニン」は、刊行物12に記載される上記のケト形の化学構造をとるものであることが、当業者には明らかである。
これは、本願発明の「ステアリン酸バロマシクロビル」(図1A)と同じ化学構造の化合物である。
そして、引用発明の化合物が「結晶」であることは、「結晶性」の化合物であることを意味する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「結晶性ステアリン酸バロマシクロビル」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:
本願発明は、結晶性ステアリン酸バロマシクロビルが、請求項1に記載されたX線回折パターンの2θの数値の組で特定されたものであるのに対し、引用発明においては(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニンの結晶(結晶性ステアリン酸バロマシクロビル)がそのように特定されたものではない点

(4)相違点についての判断

ア 結晶を得ることの動機付けについて
刊行物2(特開平6-192228号公報)は、結晶性(R)-(-)-2-シクロヘプチル-N-メチルスルフォニル-[4-(2-キノリニルメトキシ)-フェニル]-アセトアミドに係る文献であるところ、同文献には、非結晶状態のアセトアミドは、固形薬品の製造において重大な欠点を有しており、結晶性のアセトアミドは、非結晶状態のアセトアミドと比較して、物理的安定性に優れている旨が記載されている(摘示(2a)?(2c))。
刊行物3(特開平7-53581号公報)は、結晶質L-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩の製造法に係る文献であるところ、同文献には、非晶質のL-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩は、保存時において吸湿しやすく、実用面で支障が生じやすいため、安定な結晶質のL-アスコルビン酸-2-燐酸エステルマグネシウム塩が望ましい旨が記載されている(摘示(3a)?(3c))。
刊行物4(特公昭52-45716号公報)は、アンピシリンナトリウムの製造法に係る文献であるところ、同文献には、アンピシリンナトリウムのI型結晶は、無晶型のものと比較すると、例えば40℃、関係湿度52.4℃条件で保存した場合の残存率及び吸湿平衡が顕著に優れている旨が記載されており(摘示(4a)(4c)?(4e))、アンピシリン遊離型も、結晶形の無水物及びトリハイドレートが無晶形のものに比し安定である旨が記載されている(摘示(4b))。
刊行物5(特開昭61-263985号公報)は、セフアロスポリン誘導体に係る文献であるところ、同文献には、セフアロスポリン誘導体は、加水分解が起こり易く化学的に不安定であり、無定形物は85℃10日後に残存率0であるところ、結晶性無水物、0.5水和物、1水和物及び3水和物は残存率96.1%以上と安定である旨が記載されている(摘示(5a)?(5d))。
刊行物6(特開平4-235188号公報)は、ペネム化合物の結晶、その製造方法及び抗菌剤に係る文献であるところ、同文献には、ペネム化合物の無晶形の固体は安定性が不十分で製剤化に際し有効成分の含量低下を来す問題があり、該化合物の結晶形粉末は保存安定性が良い旨が記載されている(摘示(6a)?(6c))。
刊行物8(特開2003-73353号公報)は、アトルバスタチンに係る文献であるところ、同文献には、結晶性形態Iのアトルバスタチンは、無定形のアトルバスタチンよりも、有利な濾過及び乾燥特性を示し、純粋であり、より安定である旨が記載されている(摘示(8a)?(8c)(8e))。
以上によると、本願優先日当時、一般に、医薬化合物については、安定性、純度、扱いやすさ等の観点において結晶性の物質が優れていることから、医薬化合物を結晶化することについては強い動機付けがあり、結晶化条件を検討したり、結晶多形を調べることは、当業者がごく普通に行うことであるものと認められる。
そして、ステアリン酸バロマシクロビルは、治療上有効とされる抗ヘルペスウイルス剤であって(摘示(1e)、(11a))、医薬化合物なのであるから、刊行物1に開示された(R)-9-[(2-ステアロイルオキシメチル)-4-(L-バリルオキシ)ブチル]グアニンについて、当業者が、結晶を得ようとして結晶化条件を検討したり、得られた結晶について分析することには、十分な動機付けを認めることができる。

イ 特定の工程を採用する点及びX線粉末回折の2θの数値で特定されたものである点について

(ア)特定の工程を採用する点について
請求項1に記載されたX線回折パターンの2θの数値の組で特定された結晶性ステアリン酸バロマシクロビルは、本願明細書の段落【0027】の表1を参照すると、「多形体A」と称するものである。
この多形体Aの結晶を得るために本願明細書が開示した方法には、以下のものが含まれる:
a 段落【0039】の以下の記載
「幾つかの実施形態では、多形体Aを以下のように調製する方法が提供される。バロマシクロビル及び低級アルカノール溶媒の混合物(溶媒1L当たりバロマシクロビル100gの割合)を攪拌し、適当な内部温度に加熱して、完全に溶解させた。当該溶液を温度勾配管理下で攪拌しながら冷却し、バロマシクロビルの大部分(ほとんど)を結晶化させた。得られた混合物を濾過して、得られた固体を空気乾燥した後真空炉乾燥し、多形体Aに富んだバロマシクロビルである白色固体を得た。」;
b 実施例3の段落【0111】?【0113】の10g規模の再結晶化についての以下の記載
「[第1の10g規模再結晶化]
EPB 348(ロット番号:146756)の試料10.1gを、100mLの無水エタノール(Aaper、USP)から再結晶化させた。完全な溶解を達成する前に、内部温度を68℃に上げる必要があった。当該溶液を75℃で1時間攪拌した後、加熱を止め、攪拌混合物を磁気的に攪拌しながら一晩で室温までゆっくりと冷却した。得られた結晶塊を濾過し、50℃で一定重量となるまで乾燥させて、9.3gの白色固体(試料52772-2-7)を得た。
[第2の10g規模再結晶化]
再現性を実証するために、プロセスをEPB 348の同じロット10.0gから出発して繰り返した。単離及び乾燥の後、9.3gの白色固体(試料52772-3-17)が得られた。プロトンNMRによると、この物質はEPB 348の元の試料と一致していた。
[第3の10g規模再結晶化]
プロセスを繰り返したが、プロセスをより商業的に実現可能にするために、特別変性アルコール(SDA)3Cと同等の新たに調製した変性アルコールを用いた。この変性アルコールは、5容量の2-プロパノールを95容量の無水エタノールに添加し、得られた溶液をよく混合して調製した。この3C変性アルコール100mLに10.0gのEPB 348を添加し、得られた混合物を70℃の内部温度に加熱し、磁気的に攪拌しながらゆっくりと室温に戻した。内部温度を定期的に確認し、図6に示されるようなグラフにした。当該混合物は61.5℃で完全な溶液であったが、55.3℃の内部温度に冷却した時点では固体が形成されていた。攪拌懸濁液を室温に冷却した後、濾過し、空気乾燥させ、次いで真空炉乾燥して(50℃、大気圧のおよそ半分の真空、低速窒素スイープ)、9.37gの白色固体(試料52772-5-8)を得た。」(X線回折パターンは図7)、
並びに、同様の混合アルコールを用いての、100g規模の再結晶化についての記載(続く段落【0114】?【0115】)、並びに実施例4(段落【0147】?【0149】)の4kg規模及び30kg規模の再結晶化についての記載;
c 段落【0150】以降の実施例5の「溶媒再結晶化」に関し、図10A?図10Dに記載された、1-ブタノールからの再結晶化、DMFからの再結晶化、アセトニトリルと酢酸エチル(3:12)からの再結晶化、DMFとアセトニトリル(12:3)からの再結晶化;
d 段落【0150】以降の実施例5の「非競合的スラリー実験」に関し、段落【0198】の表11に記載された、出発形態がB1、B2、B3、B4、Fなど(これらは、図10A?図10Dに記載された様々な溶媒からの再結晶化で得られるものである)何れから出発しても、形態A(多形体A)となること。
ところで、結晶を得るために、溶液から結晶化させる方法は、文献を挙げる必要もないほど極めて一般的なものである。結晶化溶媒として、エタノールは、極めて一般的であり、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、DMF(ジメチルホルムアミド)も極めて一般的であり、酢酸エチルや、アセトニトリルも、一般的である(摘示(7d)、(10b))。これら溶媒の混合溶媒を用いることも、当業者が通常行うことである(摘示(10a))。
また、結晶を得るために、過剰の固体を溶媒とともに激しく攪拌する方法も、刊行物9(Chemistry & Industry,21,1989,p.527-529)(化学物質の結晶、特に結晶多形の研究の重要性を指摘する文献である。)にも記載されるように当業者が通常採用する方法であり(摘示(9e))、刊行物2及び刊行物8においても、懸濁液を養生する方法が採用されている(摘示(2a)、(8d)(8f)?(8h))。また、分散媒として、結晶化溶媒として普通に使われるものを化合物の溶解度が小さい温度で用い得ることは、当業者が直ちに理解できることである。
そうすると、本願明細書が開示した方法は、当業者が通常採用しないような手法を用いているものではなく、特殊な条件設定が必要であるというものでもないから、多形体Aの結晶性ステアリン酸バロマシクロビル、すなわち請求項1に記載されたX線回折パターンの2θの数値の組で特定された、結晶性ステアリン酸バロマシクロビルは、当業者が通常なし得る範囲の試行錯誤で得られた結果物である結晶に過ぎないものというべきである。

(イ)そして、結晶性が期待される医薬化合物の分析のために、X線粉末回折を行うことは、通常のことであるから(例えば、刊行物7(Pharmaceutical Research,12(7),1995,p.945-954)(医薬品固体を得るための手法に係る総説的な文献である。)の摘示(7e)参照)、相違点1に係る、X線回折パターンの2θの数値で特定されたものである点は、当業者が、得られた結晶について、その分析において通常用いるX線粉末回折を行った場合に得られる結果を、提示しただけのことに過ぎない。

ウ 以上によれば、本願発明は、特定の結晶性ステアリン酸バロマシクロビルに係る発明であるところ、刊行物1により開示されたステアリン酸バロマシクロビルの結晶について、結晶多形の探索を意図し、汎用の溶媒に溶解及び/又は懸濁させて、結晶化させるという、当業者が通常採用する手法を採用して、諸条件を検討したり、得られた結晶について分析することにより得られた結果物である結晶に過ぎないものであるから、引用発明において、相違点に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(5)効果について

ア 本願発明の効果は、本願明細書の段落【0009】の記載からみて、「安定な結晶形態のバロマシクロビル」を提供すること、特に「最も結晶性が高く、且つ熱力学的に最も安定な多形体」を提供することであると認められる。
しかし、この効果は、以下に示すように、格別の効果であるとはいえない。
上記(4)アのとおり、結晶が無定形よりも安定性を有することは、当業者の技術常識であるということができる。
本願明細書の記載から、多形体Aの安定性が、通常の結晶から予測し得る範囲を超える顕著なものであるとまで認めることはできない。

イ なお、本願明細書では、カー指数により、流動性についての検討がされているが、以下に示すように、当業者が本願発明の技術上の意義を理解することができるように記載されていない。
すなわち、本願明細書には、段落【0211】?【0212】に「カー指数及び定性的流動性の概要を下記表13にまとめる」として、以下の表13

が記載されている。
そして、同じく段落【0038】の表2及び段落【0121】の表4には、ステアリン酸バロマシクロビルのバッチ「146756」(注:実施例2及び3によれば「出発物質」である。)及び6個のバッチのカー指数の数値が記載され、最も小さい1個が38で、残りは全て40を超えている。
一方、段落【0003】?【0006】には、ステアリン酸バロマシクロビルの従来技術に関連して「得られた物質は多くの場合、流動性及び凝集性に極めて乏しく、取り扱い及び処理の大きな妨げとなるという問題があった。以前のバロマシクロビルを用いた第1相臨床試験及び第2相臨床試験では、液体懸濁液を採用することにより、物質の物理的性質による取り扱い及び処理における困難を回避していた」との記載がある。
これらの記載からは、上記表2及び4に記載されたバッチにおいて「極めて低い」又は「とても低い」と評価される流動性をもつものが、従来技術と比べて、実用上、どのような利点があるのか、理解することができない。
また、仮に流動性の改善があったとしても、当業者の予測を超える顕著な効果でない限り、当業者が通常の試行錯誤により得られた結晶がその性質を備えていた、というだけのことであって、格別の効果であるとすることができない。

ウ 以上によれば、本願発明の結晶性形態の作用効果について、格別顕著なものとまでいうことはできない。

(6)まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1及び12に記載された発明並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び12に記載された発明並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-11 
結審通知日 2016-10-13 
審決日 2016-10-25 
出願番号 特願2010-525845(P2010-525845)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 聖子  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 冨永 保
中田 とし子
発明の名称 バロマシクロビル多形体  
代理人 大井 道子  
代理人 安部 誠  

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