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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
管理番号 1325849
異議申立番号 異議2016-700488  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-30 
確定日 2017-02-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5841801号発明「粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5841801号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを認める。 特許第5841801号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由
1 手続の経緯

特許第5841801号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成23年10月20日に特許出願され、平成27年11月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人土屋篤志(以下、単に「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年9月13日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年11月11日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して異議申立人から平成28年12月20日付けで意見書が提出されたものである。

2 訂正の適否についての判断

(1) 訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。

請求項1に係る「着色層の側における可視光正反射率が2.0%以内」を、「着色層の側における可視光正反射率が0.68%以下」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記訂正事項に関連する記載として、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には「着色層の側における可視光正反射率」の具体例である、実施例2の可視光正反射率が「0.68%」であり、また、同じく実施例1、3の可視光正反射率が、それぞれ「0.19%」、「0.10%」であることが記載されているものと認められる(【0051】の【表1】参照。)。
そして、上記訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、可視光正反射率の上限値を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、この訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1?6について訂正を認める。

3 特許異議の申立てについて

(1) 本件発明

本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明6」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
プラスチック材料からなる基材層と、
前記基材層の一方の主表面に積層されている着色層と、
前記基材層の他方の主表面に積層されている粘着剤層と、
を備え、
前記着色層の厚みは、1?10μmであり、
前記着色層の側における可視光正反射率が0.68%以下であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記プラスチック材料がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記基材層に黒色顔料が添加されていることを請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記黒色顔料がカーボンブラックである請求項3に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記着色層が黒色印刷層である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを含有している請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粘着テープ。」

(2) 取消理由の概要

訂正前の請求項1?6に係る特許に対して平成28年9月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

請求項1?6に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明、並びに、引用文献2、3に記載された公知の技術事項、及び/又は、技術常識に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、請求項1?6に係る特許は、取り消されるべきものである。〔特許異議の申立ての理由(イ)〕

(3) 引用文献1(甲第1号証)の記載事項

引用文献1(甲第1号証;特開平9-197104号公報)には、以下のことが記載されている。(当審注:下線は当審において付記したものである。以下同じ。)

1-ア 「【請求項1】着色したノングレア層を有する物品。
【請求項2】ノングレア層の色相が灰色から黒色である請求項1に記載の物品。
・・・中略・・・
【請求項9】正反射率が0.7%?2.7%である請求項1ないし8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】物品が着色したノングレア層をフィルム上に有するノングレアシートである請求項1ないし9のいずれか一項に記載の物品。」

1-イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防眩性、像鮮明性、透過でのギラツキ、白っぽさの低減及び耐損傷性等のハードコート性などに優れる着色したノングレア層を有する物品に関する。」

1-ウ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、防眩性と像鮮明性のバランス及びハードコート性に優れ、更に外光の写り込みによる白っぽさを低減したノングレア層を有する物品の開発を目的とする。」

1-エ 「【0010】本発明において、着色したノングレア層の色相は灰色から黒色にすることが画像品位を保持する点から好ましい。ノングレア層の着色剤としては顔料、染料が挙げられる。ノングレア層の形成に使用される紫外線硬化型樹脂への紫外線照射に対しての耐性からは顔料の方が好ましいが、有機溶剤への溶解等の作業性を考慮すると染料、油溶性色素の方が扱い易い。染料、油溶性色素としては、例えば赤色、黄色、青色、緑色等の染料、油溶性色素を任意の割合で混合して灰色や黒色としたものが使用でき、有機溶剤への溶解性から分散染料、水不溶性有機色素、例えば日本化薬社製のKayalon Polyester Colours、Kayaset Coloursが挙げられる。配合量としては、ノングレア層の形成に使用される紫外線硬化樹脂固形分に対して0.2?5重量%が好ましい。又、着色したノングレア層の厚さは、2?7μmが好ましい。
【0011】又、本発明において、着色したノングレア層を有する物品を表示装置に使用した場合、その像鮮明度が、像鮮明度測定装置の透過法による光学くし幅0.125mmの測定で、10%?50%、正反射率が0.7%?2.7%であるものが好ましい。
【0012】本発明において、物品はノングレア層を必要とするものであれば特に制限なく、例えば他の物品にノングレア能を付与するために使用される、ノングレアシート、偏光板、楕円偏光板、さらに表示表面上に着色したノングレア層を有するCRT(カソードレイチューブ)、PD(プラズマディスプレイ)等の表示装置があげられる。尚、着色したノングレア層は通常物品の片側表面に配置される。
【0013】本発明の物品の一種であるノングレアシートは、合成樹脂製のフィルム上に着色したノングレア層を形成したものである。着色したノングレア層の厚さは、2?7μmが好ましい。その厚さが2μm未満では支持体フィルムとの密着性、ハードコート性に乏しい場合があり、7μmを超えると表面の凹凸構造がなだらかなものとなりやすく目的の凹凸構造を形成しにくくなる場合がある。
【0014】このノングレアシートで使用する合成樹脂製のフィルムは透明なフィルムが好ましい。その素材としては、例えばポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などがあげられるが、ポリエステルやトリアセチルセルロースのような光線透過率や強度に優れるものが好ましい。その厚さに特に制限はないが、通常1mm以下、好ましくは10?500μmである。」

1-オ 「【0017】本発明の物品の一種であるノングレアシートの構成図の一例を図1に示した。1がノングレア層、2が透明支持フィルムである。なお3は必要に応じて設けられる接着剤層である。かかるノングレアシートは、防眩を目的とする面に接着する方式などにより適用されるが、表示装置等の既成物品への適用や湾曲面あるいは大面積面等への適用が容易な利点を有している。」

1-カ 「【0023】ノングレアシート、偏光板または楕円偏光板には、適用対象への接着等を目的に、必要に応じて接着剤層を設けることができる。その接着剤層の形成には、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤やホットメルト系接着剤などを用いうる。透明性や耐候性等に優れるものが好ましい。接着剤層の付設は、塗工方式やセパレータ上に設けた接着剤層を上記のシート等に貼り合わせる方式などで行ってよい。なお接着剤層が粘着層の場合には、実用に供するまでの間その表面をセパレータ等で保護しておくことが好ましい。」

1-キ 「【0025】
【実施例】
実施例1
コールターカウンター法での平均粒径が1.0μmの湿式-沈澱法による合成シリカ粒子12部(重量部、以下同じ)、紫外線硬化型のアクリルウレタン系オリゴマー100部及びイルガキュアー184を5部、着色剤としてKayaset AN(日本化薬社製)1.3部を酢酸エチルとトルエン溶液で高速撹拌して固形分25重量%の混合分散液を調製し、それを厚さ125μmのポリエステルフィルムの片面にマルチコーター(ヒラノテクシード社製)により0.75m/minの速度でディップコートし溶媒を乾燥後、高圧水銀ランプ(80W/cm)にて紫外線を照射、硬化処理し、厚さ2.8μmの本発明の着色ノングレアシートを得た。この着色ノングレアシートの外光の写り込みによる白っぽさを目視で、像鮮明度を写像性測定器(スガ試験機(株)ICM-1D)を使用して透過法により、また正反射率を分光光度計により、さらにヘイズ値をヘイズメータにより、それぞれ測定した。結果を表1に示した。
【0024】実施例2
湿式-沈澱法による合成シリカ粒子の添加量を12部とし、KayasetANの添加量を3部とした以外は、実施例1に準じて操作を行ない、本発明の着色ノングレアシートを得た。写り込みの白っぽさ、像鮮明度、正反射率、ヘイズ値の結果は表1に示した。
・・・中略・・・
【0027】
【表1】
表1
像鮮明度 正反射率 ヘイズ 写り込みの白っぽさ
実施例1 40.0% 1.46% 9.8% 僅かに白っぽい
実施例2 43.3% 1.75% 14.6% 白っぽさ無し
比較例1 47.1% 1.48% 11.1% 白っぽい
比較例2 44.3% 0.61% 21.5% 極めて白っぽい
【0028】像鮮明度:JIS K-7105(1981)に従い、写像性測定器(スガ試験機(株)ICM-1D)を用い、透過法による像鮮明度を測定した。
正反射率:分光光度計にて測定した。
曇度(ヘイズ):JIS K-7105(1981)に従い、積分球式光線透過装置(東京電色(株)”ヘイズメータTC-H3DP”)を用いて、曇度(ヘイズ)を測定した。」

1-ク 「【図1】



(4) 引用文献1(甲第1号証)に記載の発明

引用文献1の上記1-ア?1-クの記載、特に、上記1-クの【図1】のノングレアシートの断面図及び当業者の技術常識からみて、引用文献1には、支持フィルムと、前記支持フィルムの一方の主表面に積層されているノングレア層と、前記支持フィルムの他方の主表面に積層されている接着剤層と、を備えたノングレアシートが、また、上記1-アより、ノングレア層は着色したものであり、上記1-エより、該着色したノングレア層の厚さは、2?7μmが好ましい旨も記載されているといえる。
また、上記1-アより、該着色したノングレア層を有する物品の正反射率が0.7%?2.7%であることが記載されているが、この正反射率が、着色したノングレア層の側における測定値であることは当然であるといえる。
さらに、引用文献1には、「正反射率を分光光度計にて測定」することのみ言及しており、分光光度計の具体的な装置名や測定方法については触れていないが、正反射率を分光光度計にて測定する際、市販されている一般的な分光光度計を用いて、JIS規格(R3106)に基づく方法で、可視光波長域(380?780nm)で行うことは、技術常識であるといえる(要すれば、特開2007-248528号公報の【0053】の欄等、特開2010-96842号公報の【0082】の欄等、特開2002-63852号公報の【0023】の欄等、それぞれ参照されたい。)ので、引用発明の「正反射率」とは、「可視光正反射率」と言い換えることができると認められる。

以上のことから、引用文献1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「支持フィルムと、前記支持フィルムの一方の主表面に積層されている着色したノングレア層と、前記支持フィルムの他方の主表面に積層されている接着剤層と、を備え、前記着色したノングレア層の厚さは、好ましくは2?7μmであり、前記着色したノングレア層の側における可視光正反射率が0.7%?2.7%であるノングレアシート。」

(5) 判断

ア 取消理由通知に記載した取消理由について

(ア) 特許法第29条第2項について

本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明は、着色層の側における可視光正反射率を「0.7%?2.7%」と規定するものであって、着色層の側における可視光正反射率を「0.68%以下」とする事項を有していない。そして、引用文献1の【0005】によれば、引用発明の課題は、「防眩性と像鮮明性のバランス及びハードコート性に優れ、更に外光の写り込みによる白っぽさを低減したノングレア層を有する物品の開発を目的とする」ことであるところ、引用文献1の(可視光)正反射率が0.61%である比較例2の「写り込みの白っぽさ」の評価が「極めて白っぽい」であり、また、同じく(可視光)正反射率が1.46%や1.48%である実施例1及び比較例1の同評価が「僅かに白っぽい」及び「白っぽい」であるから、引用文献1に接した当業者であれば、引用発明である着色層の側における可視光正反射率「0.7%?2.7%」について、さらに、白っぽさを低減するために、その下限値を「0.7%」より大きくしようと試みることはあっても、当該下限値を「0.7%」よりさらに小さくしようとすることはなく、また、引用文献1のその他の記載を参照しても、(可視光)正反射率の下限値を「0.7%」よりさらに小さくすることについての記載も示唆も見当たらない。
さらに、同じく上記取消理由で引用した引用文献2(特開2000-313858号公報)、及び、引用文献3(特開2011-170105号公報)を含めて、可視光正反射率を「0.68%以下」とすることを開示ないし示唆する証拠や技術常識も見当たらない。
そして、当該事項である「着色層の側における可視光正反射率が0.68%以下であること」により、本件発明1は、映り込みやギラツキを大幅に抑制するという顕著な効果を奏するものであり、本件発明1は、引用発明、並びに、引用文献2、3に記載された公知の技術事項、及び/又は、技術常識に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ) 異議申立人の主張について

a 異議申立人は、平成28年12月20日に提出された意見書第3頁において、『甲第1号証には、「可視光正反射率が0.68%以下」とすることの明示の記載はないものの、甲1発明(当審注:引用発明と同じ。)において、「可視光正反射率」を望ましい数値範囲に限定することは単なる設計事項乃至当業者が容易になし得ることである。』と主張しているが、単なる設計事項等の主張にとどまり、映り込みやギラツキを大幅に抑制するために、可視光反射率を0.68%以下と規定することについての新たな開示や示唆、及び技術常識も提示していないことから、異議申立人の上記主張は採用できない。

b 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由について

(a) 理由(ア)(特許法第29条第1項第3号の規定について)

上記「(5)ア(ア)」で検討したとおり、本件発明1と引用発明との間には、「着色層の側における可視光正反射率が0.68%以下であること」という実質的な相違点が存在するから、本件発明1及びその下位概念である本件発明2?6は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明ではない。
なお、異議申立人が平成28年12月20日に提出された意見書においては、当該理由(ア)について、何ら言及していない。

(b) 理由(ウ)(特許法第36条第6項第1号の規定について)

異議申立人は、同意見書第1?2頁において、依然として『本件訂正後の特許発明1に係る請求項1、及び請求項1の従属項2?6は、いずれもサポート要件(特許法第36条第6項第1号)に違反する取消理由(同法第113条第4号)を有する。』と主張している。
本件特許明細書の【0004】、【0005】の記載を踏まえると、本件発明が解決しようとする技術課題は、「粘着テープの艶消し性を向上させ、特に粘着テープ背面の映り込みやギラツキを低減させる技術」を提供することにあるといえる。
そして、同じく【0006】、【0007】の記載によれば、プラスチック材料からなる基材層と、前記基材層の一方の主表面に積層されている着色層と、前記基材層の他方の主表面に積層されている粘着剤層と、を備えた粘着テープにおいて、前記着色層の側における可視光正反射率をある所定の数値範囲以内することで、上記技術課題の解決を図るものである。
ここで、本件特許明細書で実際に実施例で用いられ、効果が確認されている粘着テープの着色層の側における可視光正反射率は、【0051】の【表1】に記載されているように、0.19%(実施例1)、0.68%(実施例2)、0.10%(実施例3)であって、いずれも0.68%以下の粘着テープである。一方、比較例で用いられている粘着テープの着色層の側における可視光正反射率は、同じく【0051】の【表1】に記載されているように、5.04%(比較例1)であって、同じく【0052】の記載によれば、「映り込みやギラツキが顕著」とのことであるから、着色層の側における可視光正反射率が0.68%以下である実施例1?3と同様の効果を確認することはできない。
したがって、これら実施例1?3である着色層の側における可視光正反射率が0.68%以下の粘着テープを用いた場合に上記技術課題を解決できることが確認されているといえる。
よって、本件発明は、「着色層の側における可視光正反射率が0.68%以下であること」を発明特定事項の一つとするものであるから、本件発明は、上記技術課題を解決し得るものとして、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。

(c) 理由(エ)(特許法第36条第4項第1号の規定について)

異議申立人は、同意見書第2頁において、依然として『本件訂正後の特許発明1に係る請求項1、及び請求項1の従属項2?6は、いずれも実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)に違反する取消理由(同法第113条第4号)を有する。』と主張している。
本件特許明細書の【0013】、【0016】、及び、【0015】、によれば、それぞれ、「図1は、実施の形態に係る粘着テープ10の構成を示す概略断面図である。粘着テープ10は、基材層20、着色層30および粘着剤層40を備える。」、「着色層30は基材層20の一方の主表面に積層されている。本実施の形態において、着色層30は、可視光正反射率を2.0%以下とするための層であり、たとえば黒色インクを基材層20に印刷することで形成される黒色印刷層である。この他、着色層30は、グラビア印刷、スクリーン印刷などの方法で形成されうる。着色層30の厚さは、特に限定されないが、たとえば、1μm?10μmである。」、及び、「基材層20自体は、透明でも不透明でも良いが、可視光正反射率をより低減化させる観点から、基材層20にカーボンブラックなどの黒色顔料が添加されていてもよい。すなわち、プラスチック材料にカーボーンブラック等の黒色顔料を添加してフィルム状やシート状に成形したものが好ましい。基材層20の厚さは特に限定されないが、たとえば、5?500μm、好ましくは10?100μmである。」と記載されていることから、着色層の側における可視光正反射率は、着色層となるインクとして、例えば黒色インクを適宜選択することによって決定付けられるものであるが、さらに、基材層20にカーボンブラックなどの黒色顔料を添加することによって、前記可視光正反射率を低減できることも理解できることから、本件特許明細書に接した当業者であれば、何らかの着色インク、例えば黒色インクを選択し、場合によっては、基材層20に、カーボンブラック等の黒色顔料を適宜添加することによって、着色層の側における可視光正反射率を0.68%以下にできることは、当業者に自明である。
また、粘着テープの着色層の側における可視光正反射率は、同じく【0014】によれば、「本発明において、可視光正反射率は、以下の如く測定される値である。
装置:U-4100 Spectrophotometer(日立社製)
波長領域:380nm?780nm
光入射角度:5°
波長走査速度(スキャンスピード):300nm/分
380nm?780nmの波長領域における正反射率の平均値を算出し、可視光正反射率とした。」とのことであるから、上記装置を使用し、上記測定条件に基づけば、本件発明1でいう可視光正反射率が求められることも当業者には自明である。
そして、上記の「(b) 理由(ウ)(特許法第36条第6項第1号の規定について)」で述べたとおり、本件発明で特定されている「着色層の側における可視光正反射率が0.68%以下」を満たす粘着テープを用いれば、本件発明の技術課題を解決し得ることが、実施例・比較例として示された実験データによって裏付けられている(実現性の裏付けがある)と認められる。
以上のことから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「発明の解決課題やその解決手段その他のその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」が明確かつ十分に、記載されていると認められる。

4 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料からなる基材層と、
前記基材層の一方の主表面に積層されている着色層と、
前記基材層の他方の主表面に積層されている粘着剤層と、
を備え、
前記着色層の厚みは、1?10μmであり、
前記着色層の側における可視光正反射率が0.68%以下であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記プラスチック材料がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記基材層に黒色顔料が添加されていることを請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記黒色顔料がカーボンブラックである請求項3に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記着色層が黒色印刷層である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを含有している請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粘着テープ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-01-23 
出願番号 特願2011-230985(P2011-230985)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 113- YAA (C09J)
P 1 651・ 536- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 桜田 政美  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 國島 明弘
原 賢一
登録日 2015-11-20 
登録番号 特許第5841801号(P5841801)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 粘着テープ  
代理人 大井 道子  
代理人 大井 道子  
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